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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/32 20200101AFI20230628BHJP
   D06F 33/34 20200101ALI20230628BHJP
   D06F 33/36 20200101ALI20230628BHJP
   D06F 33/52 20200101ALI20230628BHJP
   D06F 33/54 20200101ALI20230628BHJP
   D06F 33/56 20200101ALI20230628BHJP
【FI】
D06F33/32
D06F33/34
D06F33/36
D06F33/52
D06F33/54
D06F33/56
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017134564
(22)【出願日】2017-07-10
(65)【公開番号】P2019013627
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-04-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 啓太
(72)【発明者】
【氏名】久野 功二
(72)【発明者】
【氏名】西村 好美
(72)【発明者】
【氏名】池田 恭雄
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】窪田 治彦
【審判官】長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-80998(JP,A)
【文献】特開2004-350981(JP,A)
【文献】特開平11-239691(JP,A)
【文献】特開2000-350884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F33/32,33/34,33/36,33/52,33/54,33/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物が収容される回転槽と、
前記回転槽内に設けられ、モータにより回転される撹拌体と、
前記回転槽が前記撹拌体と一体に回転する状態になる第1クラッチ位置と、前記回転槽が前記撹拌体から切離された状態になる第2クラッチ位置との間で切替可能に設けられたクラッチと、給水槽回転運転を実行する運転制御部とを備えた洗濯機であって、
前記運転制御部は、洗い行程の初期に給水槽回転運転を実行する場合において、前記回転槽内へ給水開始した後、前記クラッチを前記第1クラッチ位置に切り替える切替動作を行なったときに、前記切替動作が成功した場合には、前記回転槽の給水槽回転運転を実施し、前記切替動作が失敗した場合には、前記切替動作が成功した場合の単位時間あたりの給水量よりも少ない給水量によって前記回転槽内の水位を設定量上昇させて、前記クラッチの切替動作を再実行するように構成された洗濯機。
【請求項2】
前記運転制御部は、前記切替動作が失敗した場合には、前記クラッチを駆動するクラッチ駆動部の駆動力の強さを変更するように構成された請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
水位を検出する水位検出部を備え、
前記運転制御部は、前記クラッチの切替動作が成功したときの前記回転槽内の水位を検出し、前記クラッチの切替動作を複数回実施して前記回転槽内の水位が高くなった場合に、前記給水槽回転運転時の前記回転槽の回転数を低下するように構成された請求項1記載の洗濯機。
【請求項4】
前記運転制御部は、前記クラッチの切替動作を設定回数実行しても、前記切替動作が失敗したときには、前記撹拌体を回転させる洗い運転を実行し、その後、前記クラッチの切替動作を実行し、前記切替動作が成功したときには、前記回転槽の給水槽回転運転を実施し、前記切替動作が失敗したときには、前記回転槽の給水槽回転運転を実施しないで、前記撹拌体を正逆回転させる通常の洗い運転を実行するための給水を実行するように構成された請求項1記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄性能を高めるために、洗い行程の初期の給水時に、「給水槽回転運転」を実行する洗濯機が知られている。この「給水槽回転運転」では、洗い行程の初期において、回転槽内へ給水開始した後、予め決められた低い水位まで給水された時点で、クラッチ切替動作を行ない、回転槽を回転させる運転が実行される。これにより、洗い行程の早い段階から、洗濯物に濃縮洗剤成分を浸透させることにより、洗浄性能を高めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-80998公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記給水槽回転運転を実行する場合、クラッチ切替動作を実行する必要があるが、クラッチ切替動作に長時間を要したり、クラッチ切替不良が発生したりすることがあった。クラッチ切替不良が発生した場合には、給水時に回転槽を回転させることができないため、洗浄性能が高くならないことから、必要とする洗浄性能を得るためには、洗い時間、即ち、洗濯時間を長くしなければならなかった。
【0005】
そこで、給水槽回転運転を実行する構成でありながら、クラッチ切替動作を安定的に且つ確実に実行することができる洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の洗濯機は、洗濯物が収容される回転槽と、前記回転槽内に設けられ、モータにより回転される撹拌体と、前記回転槽が前記撹拌体と一体に回転する状態になる第1クラッチ位置と、前記回転槽が前記撹拌体から切離された状態になる第2クラッチ位置との間で切替可能に設けられたクラッチと、給水槽回転運転を実行する運転制御部とを備えた洗濯機であって、前記運転制御部は、洗い行程の初期に給水槽回転運転を実行する場合において、前記回転槽内へ給水開始した後、前記クラッチを前記第1クラッチ位置に切り替える切替動作を行なったときに、前記切替動作が成功した場合には、前記回転槽の給水槽回転運転を実施し、前記切替動作が失敗した場合には、前記回転槽の給水槽回転運転を実施しないで、前記切替動作が成功した場合の単位時間あたりの給水量よりも少ない給水量によって前記回転槽内の水位を設定量上昇させて、前記クラッチの切替動作を再実行するように構成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態による洗濯機の破断側面図
図2】洗濯機の電気的構成を示すブロック図
図3】洗い行程の運転制御のフローチャート
図4】洗い行程の水位の変化を示す図
図5】第2実施形態の図3相当図
図6】第3実施形態の制御を説明する表を示す図
図7】第4実施形態の制御を説明するものであり、回転給水時の回転槽の回転数の変化を示す図
図8】第5実施形態の制御を説明する表を示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態による洗濯機を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において実質的に同一の構成部品には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態による洗濯機について、図1から図4を参照して説明する。この第1実施形態の洗濯機1は、縦軸形であり、例えば乾燥機能を備えた全自動洗濯機である。この乾燥機能は無くても良い。図1において、外箱2は矩形箱状をなしていて、この外箱2と、当該外箱2の上部に装着されたトップカバー3とにより、洗濯機1の外殻が形成されている。外箱2の下面には脚部4が設けられている。外箱2の内部には、水槽5と、この水槽5内に配設された回転槽6とが設けられている。
【0009】
これら水槽5と回転槽6は、共に有底円筒状をなしていて、それぞれの軸中心線が上下方向に指向する縦軸状に配置されている。水槽5は、吊り棒7aを主体とする弾性吊持機構7を介して外箱2に弾性的に吊持されている。水槽5は、貯水が可能な構成となっている。
【0010】
回転槽6は、周壁部に多数の孔部8を有している。回転槽6の底部には、水槽5に通じる通水部9が形成されている。回転槽6の上端開口部の周縁部には、回転バランサ10が設けられている。回転槽6内には、図示しない洗濯物が収容される。回転槽6は、洗い時には洗濯槽として、脱水時には脱水槽として、そして乾燥時には乾燥槽として機能する。回転槽6は、縦軸状の回転中心軸を回転中心として回転可能である。
【0011】
回転槽6内底部には、撹拌体11が回転可能に配設されている。前記水槽5の底部には、排水口5aが形成されており、この排水口5aには、排水弁12及び排水管12aが接続されている。さらに水槽5には、排水口5aに連通して水位検知用のエアトラップ5bが形成されている。
【0012】
水槽5の外底部には、モータ13が配設されている。このモータ13はアウターロータ形であり、モータ13の内部にクラッチ14が配設されている。クラッチ14は、撹拌体11に連結された撹拌軸11aと回転槽6に連結された回転軸6aとを一体的に回転させる場合(即ち、回転槽6が撹拌体11と一体に回転する状態となる第1クラッチ位置、回転槽・撹拌体連結モード)と、撹拌軸11aのみを回転させる場合(即ち、回転槽6が撹拌体11から切離された状態になる第2クラッチ位置、撹拌体モード)とを切り替える構成となっている。
【0013】
クラッチ14は、図2に示すクラッチ駆動部である例えばクラッチモータ15により駆動される。つまり、クラッチモータ15を所定動作させることにより、クラッチ14が回転槽・撹拌体連結モード(第1クラッチ位置)とされる。また、この状態から、クラッチモータ15を所定動作させることにより、クラッチ14が撹拌体モード(第2クラッチ位置)とされる。尚、クラッチモータ15は、例えばギアドモータで構成されており、印加電圧のデューティ比等を制御することにより、クラッチ14を駆動する駆動力の強さ(即ち、クラッチモータ15のトルク)を複数段階に変更することが可能なように構成することが好ましい。
【0014】
また、排水弁12は、図2に示す排水弁モータ16により動作する。つまり、排水弁モータ16を所定動作させることにより、排水弁12が開放される(即ち、脱水運転状態)。また、この状態から、排水弁モータ16を所定動作させることにより、排水弁12が閉鎖される(即ち、洗い運転状態、または、すすぎ運転状態)。
【0015】
水槽5の上面には、環状をなす槽カバー18が設けられていて、この槽カバー18に、二つ折りの内蓋19が開閉可能に設けられている。上記トップカバー3には、内蓋19の上方に位置させて、回転槽6に対して洗濯物を出し入れするための洗濯物出入口(図示しない)が形成されているとともに、この洗濯物出入口(即ち、回転槽6の上部)を開閉する二つ折りの蓋21が設けられている。尚、内蓋19、蓋21は、二つ折りタイプに限定されるものではない。
【0016】
トップカバー3の後部には、乾燥用の温風供給装置22が配設されている。この温風供給装置22は、機外の空気を吸い込んで吐出部22aから回転槽6内に吐出するファン23(図2参照)と、回転槽6内に吐出する空気を加熱するヒータ24(図2参照)などを備えて構成されている。ファン23及びヒータ24により生成された温風は、前記吐出部22aから主に回転槽6内に供給された後、孔部8を通して、回転槽6と水槽5との間にも供給される。そして、水槽5内の温風は、詳しい温風経路は図示しないが、水槽5の側壁に形成された排出ダクト(図示せず)から外部に出て、一部は回転槽6内に戻され、残りは機外に排出されるようになっている。
【0017】
更に、トップカバー3の後部には、給水弁30が設けられており、回転槽6内(水槽5内)に給水するようになっている。トップカバー3の前部の上面には、操作パネル31が設けられている。この操作パネル31には、使用者により操作される各種の操作スイッチ32(図2参照)が設けられている。また、操作パネル31には、各種選択、設定内容、運転状況などを表示する表示部33(図2参照)が設けられている。
【0018】
また、図1において、水槽5の外面には、水槽5の振動を検出する振動検出手段としての加速度センサ34が設けられている。この加速度センサ34は、振動の大きさ(加速度の大きさ)に応じた信号を出力する。この場合、振動の大きさは、例えば振動レベル0~512まで区分されている。
【0019】
また、排水口5aと排水弁12との間の排水路には、循環ポンプ35の吸込み口が接続されている。この循環ポンプ35の吐出口には循環パイプ36が接続されている。この循環パイプ36は、水槽5の側方を通って上方へ導かれ、槽カバー18を貫通して回転槽6上方に臨んでいる。この循環ポンプ35と循環パイプ36とで循環機構37を構成している。
【0020】
さて、洗濯機1の電気的構成を示す図2において、制御装置41は、マイクロコンピュータを主体に構成されたもので、洗濯機の作動全般を制御する機能を有する。この制御装置41は、運転制御部としての機能を備えている。
【0021】
制御装置41には、入力側の機器として、前記各種の操作スイッチ32、前記加速度センサ34、水槽5内(即ち、回転槽6)の水位を検知する水位センサ42、蓋21の開閉(開放と閉鎖)を検知する蓋開閉センサ43、モータ13の回転速度(即ち、回転槽6の回転数)を検知する回転センサ44、モータ13に流れる電流を検知する電流センサ45、クラッチ14が第1クラッチ位置であるか第2クラッチ位置であるかを検出するクラッチ位置検出器50、水槽5内(即ち、回転槽6)の水の温度を検出する水温検出部である水温センサ51、洗濯機1の周辺の温度、即ち、外気温を検出する外気温検出部である外気温センサ52が接続されている。
【0022】
制御装置41は、上記入力側の機器からの各入力信号、並びに予め記憶された制御プログラムに基づいて、出力側の機器である、前記表示部33、前記モータ13、前記給水弁30、前記クラッチモータ15、前記排水弁12を作動させる排水弁モータ16、前記ファン23、前記ヒータ24、前記循環ポンプ35、風呂水ポンプ46、ブザー47を、それぞれ駆動回路48を介して制御するようになっている。なお、駆動回路48は夫々対応する機器の駆動回路を総称している。
【0023】
次に、制御装置41が実行する給水槽回転運転について、図3及び図4を参照して説明する。図3のフローチャートは、制御装置41の洗い行程の運転制御の内容を示す。まず、洗い行程の初期においては、ステップS10にて、制御装置41は、回転槽6内に投入された洗濯物の重量を検出する。
【0024】
この洗濯物重量検出は、回転槽6内に洗濯物を収容した状態でモータ13に一定の電力を与えて撹拌体11を回転させて得られた回転数と、回転槽6内に洗濯物が収容されていない状態でモータ13に一定の電力を与えて撹拌体11を回転させて得られている回転数との比較から、洗濯物重量(重量)を検出するものである。この場合、クラッチ14は、第2クラッチ位置に切替えられている。上記洗濯物重量の検出データは、水位設定などに用いられる。尚、洗濯物重量検出は、モータ13に流れる電流に基づいて洗濯物の重量を検出するように構成しても良い。
【0025】
続いて、ステップS20へ進み、給水を実行する。この給水は、排水弁12を閉塞した状態で、給水弁30を開放して回転槽6内(水槽5内)に給水し、図4中の直線P1で示すように水位が上昇し、設定された水位(例えば給水量が25lに相当する水位、図4中のa1参照)になると、給水を停止する。そして、ステップS30へ進み、クラッチ14の切替動作を実行する。この場合、クラッチモータ15を駆動することにより、クラッチ14を第2クラッチ位置から第1クラッチ位置に切り替える処理を実行する。
【0026】
この後、ステップS40へ進み、クラッチ位置検出器50からの検出信号に基づいてクラッチ切替が成功したか否かを判断する。ここで、クラッチ切替が成功したときには(YES)、ステップS50へ進み、モータ13を駆動することにより回転槽6を回転させながら、回転槽6内に給水する回転給水(即ち、給水槽回転運転)を実行する。この場合、図4中の直線P2で示すように、水位が上昇し、洗剤濃縮撹拌が実行され、濃縮された洗剤が洗濯物に良好に含浸していく。そして、水位が第2の設定水位(図4中のa2参照)まで上昇すると、給水を一時停止し、クラッチ切替を実行し、クラッチ14を第1クラッチ位置から第2クラッチ位置に切り替える。
【0027】
続いて、回転槽6内への給水を再開し、水位が所定水位(例えば洗濯物の重量に応じて設定された水位、図4中のa3参照)まで上昇すると、給水を終了する(ステップS60)。尚、水位がa2からa3まで上昇するときに(図4中の直線P3参照)、撹拌体11を正逆回転させる運転を実行することが好ましい。この後は、ステップS70へ進み、通常の洗い運転、即ち、撹拌体11を正逆回転させる洗い運転を実行する。これ以降は、図示はしないが、通常の洗濯運転制御が実行されるように構成されている。
【0028】
また、上記ステップS40において、クラッチ切替が失敗したときには(NO)、ステップS80へ進み、回転槽6内へ所定の給水量例えば10lの水を追加給水し、水位を設定量上昇させて例えば給水量が35lの水位(図4中のa11参照)にする。この給水動作を、図4中の直線P4で示す。そして、ステップS90へ進み、クラッチ14の切替動作を実行する。この場合、クラッチモータ15を駆動することにより、クラッチ14を第2クラッチ位置から第1クラッチ位置に切り替える処理を実行する。
【0029】
この後、ステップS100へ進み、クラッチ位置検出器50からの検出信号に基づいてクラッチ切替が成功したか否かを判断する。ここで、クラッチ切替が成功したときには(YES)、ステップS50へ進み、回転槽6を回転させながら回転槽6内に給水する回転給水(即ち、回転槽6の給水槽回転運転)を実行する。この場合、図4中の直線P5で示すように、水位が上昇し、洗剤濃縮撹拌が実行され、濃縮された洗剤が洗濯物に良好に含浸していく。そして、水位が第2の設定水位(図4中のa2参照)まで上昇すると、給水を一時停止し、クラッチ切替を実行し、クラッチ14を第1クラッチ位置から第2クラッチ位置に切り替える。
【0030】
続いて、回転槽6内への給水を再開し、水位が所定水位(例えば洗濯物の重量に応じて設定された水位、図4中のa3参照)まで上昇すると、回転給水を終了する(ステップS60)。尚、水位がa2からa3まで上昇するときに(図4中の直線P6参照)、撹拌体11を正逆回転させる運転を実行することが好ましい。この後は、前述したように、ステップS70へ進み、通常の洗い運転を実行する。これ以降は、通常の洗濯運転制御が実行される。
【0031】
また、上記ステップS100において、クラッチ切替が失敗したときには(NO)、ステップS110へ進み、クラッチ切替をn回(即ち、設定回数)実行したか否かを判断する。nは、クラッチ切替動作の繰り返し回数(即ち、試行回数)であり、予め決めた数値例えば5に設定されている。このステップS110において、クラッチ切替をn回実行していないときは(NO)、ステップS80へ進み、所定の給水量例えば10lの水を追加給水して水位を上げる。そして、ステップS90へ進み、クラッチ14の切替動作を実行し、以下、前述した処理を繰り返し実行する。
【0032】
一方、上記ステップS110において、クラッチ切替をn回実行したときには(YES)、ステップS120へ進み、撹拌体11を回転させる。この場合、現在、給水されている水位で設定時間(例えば数十秒程度の時間)、撹拌体11を正逆回転させる、即ち、洗い運転を実行する。これにより、撹拌体11上の洗濯物の位置や状態を変更させることにより、クラッチ切替動作が成功し易くなるようにする。この後、ステップS130へ進み、クラッチ14の切替動作を実行する。
【0033】
そして、ステップS140へ進み、クラッチ位置検出器50からの検出信号に基づいてクラッチ切替が成功したか否かを判断する。ここで、クラッチ切替が成功したときには(YES)、ステップS50へ進み、回転槽6を回転させながら回転槽6内に給水する回転給水(即ち、給水槽回転運転)を実行する。これ以降の処理は、前述したように実行する。
【0034】
また、上記ステップS140において、クラッチ切替が失敗したときには(NO)、ステップS150へ進み、給水槽回転運転を実行しないで、通常の洗い運転を実行するための給水を実行する。この場合、図4中の直線P7で示すように、水位が上昇し、所定水位(例えば洗濯物の重量に応じて設定された水位、図4中のa3参照)まで上昇すると、ステップS70へ進み、通常の洗い運転、即ち、撹拌体11を正逆回転させる洗い運転を実行する。これ以降は、通常の洗濯運転制御が実行される。
【0035】
このような構成の本実施形態においては、洗い行程の初期に給水槽回転運転を実行する場合において、回転槽6内へ給水開始した後、クラッチ14を第2クラッチ位置から第1クラッチ位置に切り替える切替動作を行なったときに、切替動作が成功した場合には、前記回転槽の給水槽回転運転を実施し、クラッチ切替動作が失敗した場合には、回転槽6内の水位を設定量上昇させて、クラッチ14の切替動作を再実行するように構成したので、給水槽回転運転を実行する構成でありながら、クラッチ切替動作を安定的に且つ確実に実行することができる。
【0036】
また、上記実施形態では、クラッチ14の切替動作を設定回数n(例えば5回)実行しても、クラッチ切替動作が失敗したときには、撹拌体11を回転させる洗い運転を実行し、その後、クラッチ14の切替動作を実行し、このクラッチ切替動作が成功したときには、給水槽回転運転を実施し、上記クラッチ切替動作が失敗したときには、給水槽回転運転を実施しないように構成したので、クラッチ切替動作が成功する可能性を高くすることができる。尚、設定回数nは、5に限られるものではなく、2、3、4または6以上の数値であっても良い。
【0037】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態を示すものである。尚、第1実施形態と同一構成には同一符号を付している。この第2実施形態では、制御装置41は、クラッチ切替動作が失敗した場合に、回転槽6内の水位を設定量上昇させると共に、クラッチ14を駆動するクラッチモータ15(クラッチ駆動部)の駆動力の強さを変更するように構成した。
【0038】
具体的には、図5に示すように、第1実施形態のステップS80とステップS90との間に、ステップS85の処理を加入する。このステップS85では、クラッチ14を駆動するクラッチモータ15の駆動力の強さを段階的に変更する。この場合、クラッチモータ15は、印加電圧のデューティ比等を制御することにより、クラッチ14を駆動する駆動力の強さ(即ち、クラッチモータ15のトルク)を複数の段階に変更することが可能な構成となっており、ステップS85を実行するときに、クラッチ14を駆動する駆動力の強さを例えば1段階強く変更するように構成されている。尚、駆動力の強さを最大まで強くしたら、その後は、反対に例えば1段階弱く変更するように構成しても良い。この構成の場合、駆動力の強さを最小まで弱くしたら、その後は、反対に例えば1段階強く変更するように構成しても良い。
【0039】
上述した以外の第2実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じ構成となっている。従って、第2実施形態においても、第1実施形態とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第2実施形態によれば、クラッチ切替動作が失敗した場合に、回転槽6内の水位を設定量上昇させると共に、クラッチ14を駆動するクラッチモータ15の駆動力の強さを変更するように構成したので、クラッチ14の切替が成功する可能性を一層高くすることができる。
【0040】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態を示すものである。尚、第1実施形態と同一構成には同一符号を付している。この第3実施形態では、制御装置41は、クラッチ切替動作が失敗した場合に、洗濯物重量を加味して、回転槽6内の水位またはクラッチ駆動部(クラッチモータ15)の駆動力の強さを変更するように構成した。
【0041】
具体的には、図6に示す表の左側部分のように、検出した洗濯物重量に対応して、1回目のクラッチ切替動作を実行する水位(例えば給水量)と、クラッチモータ15の駆動力の強さ(例えばクラッチモータ15に印加する電圧のデューティ比、具体的には、クラッチモータ15のON時間及びOFF時間)とを設定する。尚、クラッチモータ15は、設定されたON時間及びOFF時間の割合(デューティ比)で通電されるように構成されている。
【0042】
例えば、洗濯物重量が4kg以下のときには、給水量が25lとなる水位、ON時間を1.0秒、OFF時間を0.7秒に設定する。洗濯物重量が4kgを越え且つ6kg以下のときには、給水量が30lとなる水位、ON時間を1.0秒、OFF時間を0.8秒に設定する。洗濯物重量が6kgを越え且つ8kg以下のときには、給水量が35lとなる水位、ON時間を1.2秒、OFF時間を1.0秒に設定する。洗濯物重量が8kgを越え且つ10kg以下のときには、給水量が40lとなる水位、ON時間を1.4秒、OFF時間を1.2秒に設定する。クラッチ切替動作の繰り返し回数n(即ち、試行回数、図6の表では、変更回数と称している)は、いずれの洗濯物重量の場合も例えば5とする。
【0043】
また、図6の表の左側部分で示すように設定して、給水槽回転運転のためのクラッチ切替を実行しても、5回切り替えが失敗したときには、次回の洗濯運転において、図6の表の右側部分で示すように、検出した洗濯物重量に対応して、1回目のクラッチ切替動作を実行する水位(例えば給水量)と、クラッチモータ15の駆動力の強さ(クラッチモータ15のON時間及びOFF時間)と、クラッチ切替動作の変更回数(クラッチ切替動作の繰り返し回数n)とを設定して、クラッチ切替を実行するように構成されている。
【0044】
例えば、洗濯物重量が4kg以下のときには、給水量が40lとなる水位、ON時間を1.2秒、OFF時間を1.0秒、変更回数を6回に設定する。洗濯物重量が4kgを越え且つ6kg以下のときには、給水量が45lとなる水位、ON時間を1.2秒、OFF時間を1.2秒、変更回数を7回に設定する。洗濯物重量が6kgを越え且つ8kg以下のときには、給水量が50lとなる水位、ON時間を1.4秒、OFF時間を1.2秒、変更回数を8回に設定する。洗濯物重量が8kgを越え且つ10kg以下のときには、給水量が55lとなる水位、ON時間を1.4秒、OFF時間を1.4秒、変更回数を9回に設定する。
【0045】
上述した以外の第3実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じ構成となっている。従って、第3実施形態においても、第1実施形態とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第3実施形態によれば、クラッチ切替動作が失敗した場合に、洗濯物重量を加味して、回転槽6内の水位またはクラッチモータ15の駆動力の強さを変更するように構成したので、クラッチ14の切替が成功する可能性をより一層高くすることができる。
【0046】
また、第3実施形態では、図6の表の左側部分で示すように設定して、給水槽回転運転のためのクラッチ切替を実行しても、5回切り替えが失敗したときには、次回の洗濯運転において、図6の表の右側部分で示すように、水位、ON時間及びOFF時間、変更回数を設定して、クラッチ切替を実行するように構成したので、クラッチ14の切替が成功する可能性をより一層高くすることができる。
【0047】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態を示すものである。尚、第1実施形態と同一構成には同一符号を付している。この第4実施形態では、制御装置41は、クラッチ切替動作が成功したときの水位を検出し、この検出した水位に基づいて回転槽6の回転給水時(即ち、給水槽回転運転時)の回転数を変更するように構成した。
【0048】
具体的には、図7に示すように、クラッチ切替動作が1回で成功した場合には、そのときの回転槽6内の水位を検出し、この検出した水位(例えば第1実施形態の場合、給水量が25lの水位)に基づいて回転給水の回転槽6の回転数を例えば80rpmに設定している。
【0049】
そして、クラッチ切替動作がリトライ1回で(即ち、2回目のクラッチ切替動作で)成功した場合には、そのときの回転槽6内の水位を検出し、この検出した水位(例えば第1実施形態の場合、給水量が35lの水位)に基づいて回転給水の回転槽6の回転数を例えば60rpmに設定している。
【0050】
更に、クラッチ切替動作がリトライ2回以上で(即ち、3回目以降のクラッチ切替動作で)成功した場合には、そのときの回転槽6内の水位を検出し、この検出した水位(例えば第1実施形態の場合、給水量が45l以上の水位)に基づいて回転給水の回転槽6の回転数を例えば40rpmに設定している。
【0051】
上述した以外の第4実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じ構成となっている。従って、第4実施形態においても、第1実施形態とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第4実施形態によれば、クラッチ切替動作が成功したときの水位を検出し、この検出した水位に基づいて回転槽6の回転給水時の回転数を変更するように構成したので、クラッチ切替動作を複数回実施して、水位が高くなった場合に、回転給水の回転槽6の回転数を低下させることが可能となるので、回転給水時(即ち、給水槽回転運転時)に回転槽6から水があふれたりすることなどを防止できる。
【0052】
尚、第1実施形態のように、クラッチ切替動作の実行回数に水位が対応している構成の場合には、クラッチ切替動作の実行回数に基づいて回転槽6の回転給水時の回転数を変更するように構成しても良い。また、第3実施形態のように、洗濯物重量に応じてクラッチ切替動作を実行する水位が変わるような構成の場合には、クラッチ切替動作が成功したときの水位を検出し、この検出した水位に基づいて回転槽6の回転給水時の回転数を変更するように構成することが好ましい。
【0053】
(第5実施形態)
図8は、第5実施形態を示すものである。尚、第1実施形態と同一構成には同一符号を付している。この第5実施形態では、制御装置41は、クラッチ切替動作が失敗した場合に、水温を加味して、回転槽6内の水位またはクラッチモータ15(クラッチ駆動部)の駆動力の強さを変更するように構成した。
【0054】
具体的には、回転槽6内に給水された水の温度を検出し、図8に示す表の左側部分のように、検出した水温に対応して、1回目のクラッチ切替動作を実行する水位と、クラッチモータ15の駆動力の強さ(例えばクラッチモータ15に印加する電圧のデューティ比、具体的には、クラッチモータ15のON時間及びOFF時間)とを設定する。
【0055】
例えば、水温が10℃以下のときには、給水量が25lとなる水位、ON時間を1.0秒、OFF時間を0.7秒、変更回数(クラッチ切替動作の繰り返し回数n)を5回に設定する。水温が10℃を越え且つ20℃以下のときには、給水量が30lとなる水位、ON時間を1.0秒、OFF時間を0.8秒、変更回数を5回に設定する。水温が20℃を越え且つ30℃以下のときには、給水量が35lとなる水位、ON時間を1.2秒、OFF時間を1.0秒、変更回数を5回に設定する。
【0056】
また、図8の表の左側部分で示すように設定して、給水槽回転運転のためのクラッチ切替を実行しても、5回切り替えが失敗したときには、次回の洗濯運転において、図8の表の右側部分で示すように、検出した水温に対応して、1回目のクラッチ切替動作を実行する水位(例えば給水量)と、クラッチモータ15の駆動力の強さ(クラッチモータ15のON時間及びOFF時間)と、クラッチ切替動作の変更回数(クラッチ切替動作の繰り返し回数n)とを設定して、クラッチ切替を実行するように構成されている。
【0057】
例えば、水温が10℃以下のときには、給水量が45lとなる水位、ON時間を1.2秒、OFF時間を1.0秒、変更回数を6回に設定する。水温が10℃を越え且つ20℃以下のときには、給水量が50lとなる水位、ON時間を1.2秒、OFF時間を1.2秒、変更回数を7回に設定する。水温が20℃を越え且つ30℃以下のときには、給水量が55lとなる水位、ON時間を1.4秒、OFF時間を1.2秒、変更回数を8回に設定する。
【0058】
上述した以外の第5実施形態の構成は、第1実施形態の構成と同じ構成となっている。従って、第5実施形態においても、第1実施形態とほぼ同じ作用効果を得ることができる。特に、第5実施形態によれば、クラッチ切替動作が失敗した場合に、水温を加味して、回転槽6内の水位またはクラッチモータ15の駆動力の強さを変更するように構成したので、クラッチ14の切替が成功する可能性をより一層高くすることができる。
【0059】
また、第5実施形態では、図8の表の左側部分で示すように設定して、給水槽回転運転のためのクラッチ切替を実行しても、5回切り替えが失敗したときには、次回の洗濯運転において、図8の表の右側部分で示すように、水位、ON時間及びOFF時間、変更回数を設定して、クラッチ切替を実行するように構成したので、クラッチ14の切替が成功する可能性をより一層高くすることができる。
【0060】
(その他の実施形態)
以上説明した複数の実施形態に加えて以下のような構成を加えても良い。
第5実施形態においては、水温を加味して回転槽6内の水位またはクラッチモータ15の駆動力の強さを変更するように構成したが、これに限られるものではなく、外気温(即ち、洗濯機周辺の温度)を加味して回転槽6内の水位またはクラッチモータ15の駆動力の強さを変更するように構成しても良い。また、水温及び外気温を加味して回転槽6内の水位またはクラッチモータ15の駆動力の強さを変更するように構成しても良い。
【0061】
また、上記各実施形態においては、クラッチ切替動作が失敗した場合に、回転槽6内の水位を設定量上昇させる(即ち、給水量を段階的に増やす)際に、給水量を例えば10l追加するように構成したが、これに限られるものではなく、10l未満の任意な値としても良いし、10l以上の任意な値としても良く、適宜適切な値に設定すれば良い。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
図面中、1は洗濯機、2は外箱、5は水槽、6は回転槽、11は撹拌体、13はモータ、14はクラッチ、15はクラッチモータ、30は給水弁、41は制御装置(運転制御部)、42は水位センサ、44は回転センサ、50はクラッチ位置検出器、51は水温センサ、52は外気温センサである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8