(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】多スペクトル撮像デバイス
(51)【国際特許分類】
G01J 3/26 20060101AFI20230628BHJP
H04N 25/70 20230101ALI20230628BHJP
【FI】
G01J3/26
H04N25/70
(21)【出願番号】P 2018555601
(86)(22)【出願日】2017-04-27
(86)【国際出願番号】 FR2017000076
(87)【国際公開番号】W WO2017187029
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2019-12-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-06
(32)【優先日】2016-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510195308
【氏名又は名称】シリオス テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100105393
【氏名又は名称】伏見 直哉
(72)【発明者】
【氏名】ティセラン、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ルー、ローラン
(72)【発明者】
【氏名】ユベール、マーク
(72)【発明者】
【氏名】ソーゲ、ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ファイオーラ、オレリアン
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】伊藤 幸仙
【審判官】上田 泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/015493(WO,A2)
【文献】特表2011-527828(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0268146(US,A1)
【文献】特開2014-225667(JP,A)
【文献】特開2015-200640(JP,A)
【文献】特開2010-50725(JP,A)
【文献】特開2012-169489(JP,A)
【文献】米国特許第11143554(US,B2)
【文献】欧州特許第3449228(EP,B1)
【文献】特表2016-528496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00 - 3/52
H04N 25/00 - 25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板(SS)上に形成され、ピクセルのマトリクスから構成され、複数の区画(CP1、CP2、CP3)を備え、それぞれの区画の中心に該ピクセルのうちの一つの感光性の領域(PS1、PS2、PS3)が存在する感光性検出器(DET)と、
該ピクセルのマトリクスに対応し、ピクセルごとに一つのマイクロレンズが備わり、該区画のそれぞれの上に該マイクロレンズのうちの一つが備わり、それぞれのマイクロレンズは、一つのピクセルの感光性の領域に入射光を集光させるマイクロレンズ(ML1,ML2,ML3)のアレイと、
該ピクセルのマトリクスに対応する、個別のフィルタ(λ1,λ2,λ3)のマトリクスによって形成されるフィルタモジュール(MF)と、を備えた多スペクトル撮像デバイスであって、
該マイクロレンズのアレイは該検出器と直接接触し、該フィルタモジュールは、該マイクロレンズのアレイと接触した第2の基板(SUB、
SIL)上に製造され、該フィルタモジュール(MF)は、該フィルタ(λ1,λ2,λ3)がマイクロレンズ(ML1,ML2,ML3)に向き合うように、該マイクロレンズ(ML1,ML2,ML3)のアレイに支えられ、
該フィルタモジュール(MF)は、その周縁で接着剤の縁(ST)によって該検出器(DET)に結合され、該フィルタモジュールと該検出器との間には接着剤が存在しない多スペクトル撮像デバイス。
【請求項2】
該フィルタモジュール(MF)がアライメントパターンを備えた請求項1に記載の多スペクトル撮像デバイス。
【請求項3】
該フィルタモジュール(MF)がスペーサー(SP)によって隔てられた2枚のミラー(MIR1,MIR1;M1,M2)から構成され、該フィルタモジュールは複数のフィルタセル(IF11,IF12,...,IF44)を有し、該フィルタセルのそれぞれは少なくとも2個のフィルタ(FP1,FP2)を有する請求項1または2に記載の多スペクトル撮像デバイス。
【請求項4】
該フィルタ(FP1,FP2,FP3)の少なくとも1個が帯域伝送機能を有する請求項3に記載の多スペクトル撮像デバイス。
【請求項5】
該フィルタセルの少なくとも一部(IF11,IF12,IF13,IF14)は、第1の帯に一直線に配置されている請求項3または4に記載の多スペクトル撮像デバイス。
【請求項6】
該フィルタセルの少なくとも一部(IF21-IF24)は、第1の帯とは別で第1の帯に平行な第2の帯に一直線に配置されている請求項5に記載の多スペクトル撮像デバイス。
【請求項7】
該フィルタ(FP1,FP2,FP3)の隣接する少なくとも二個がクロストーク障壁によって隔てられている請求項3から6のいずれかに記載の多スペクトル撮像デバイス。
【請求項8】
該フィルタ(FP1,FP2,FP3)の少なくとも1個がパンクロマチックである請求項3から7のいずれかに記載の多スペクトル撮像デバイス。
【請求項9】
該検出器(DET)はCMOS技術で一体化されている請求項1から8のいずれかに記載の多スペクトル撮像デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多スペクトル撮像デバイス(イメージングデバイス)に関する。
【背景技術】
【0002】
分光分析は、固体状、液体状または気体状媒体の化合物の化学的構成要素を見つけ出そうとする。分光分析は、反射または透過において媒体の吸収スペクトルを記録することを含む。媒体と相互作用を生じた光は、所定の波長帯において吸収される。選択的な吸収は、媒体の構成要素の一部または全部の特徴を与える。測定されるスペクトルの波長域は、紫外域、及び/または可視光域、及び/または(近、中、遠)赤外域であってよい。
【0003】
上記の分析は、通常、分光計を使用して実施される。
【0004】
分光計には、少なくとも一つのファブリー-ペローフィルタを使用するものがある。
【0005】
そのようなフィルタは、スペーサーと呼称される、(通常、空気、二酸化ケイ素のような低屈折率の)材料からなる平行平面板であることを想起すべきである。スペーサーは2枚のミラーの間に存在する。フィルタは、真空中の薄膜蒸着によって製造されることが多い。このように、中央波長λを中心とする帯域を有するフィルタに対して、第1のミラーは、高屈折率材料H及び低屈折材料Bの層のm個の反復からなる。ここで、それぞれの層は、λ/4の光学的厚さを有する。該ミラーは半反射性の薄い金属層でもよい。スペーサーは、λ/4の光学的厚さの低屈折材料Bの2個の層であることが多い。一般的に、第2のミラーは第1のミラーと対称である。スペーサーの幾何学的厚さを変えることによって、光学的厚さがλ/2の倍数に等しい中央波長に該フィルタを調整することができる。
【0006】
公知技術の一つは、分析対象の帯域ごとに一つのフィルタを含むフィルタモジュールに依存する。帯域の数がnであれば、n個のフィルタを製造するには、n個の別個の真空蒸着作業が必要となる。したがって、小さなセットでは、コストは非常に高く(実際には帯域の数nに比例し)、十分な大きさのセットの場合に限り、真に有利となる。さらに、この構成の小型化の可能性は限定されており、多数のフィルタを提供することを考えるのは困難である。
【0007】
より最近開発された代替技術は、基板に垂直な平面のプロファイルが、平行ではなく楔形に配置された2枚のミラーを備えたファブリー-ペローフィルタを使用する。Oxyとされる上記の平面において、軸Ox及びOyは、それぞれ基板と同一方向及び基板と垂直であり、スペーサーのOy方向の厚さは、測定される場所の、Ox軸に沿った位置の関数として線形に変化する。
【0008】
特許文献1(US2006/029413)は、そのようなフィルタモジュールを含む波長分光装置を開示している。上記の装置において調整波長は、軸Oxに沿って連続的に変化することとなる。
【0009】
上記の種々の技術によって、連続スペクトルが望ましい場合には、十分なスペクトル分解能で対象を分析することが可能となる。
【0010】
これらの技術は、求める成分を特定するために、比較的狭い有限個の帯域(すなわち、連続的なスペクトルと比較して離散的なスペクトル)で十分である状況においてもうまく適用される。
【0011】
しかし、これらの技術は、分析される対象を不可分の存在、すなわち3次元に分解できない存在として考えるので、特に、単一の対象の内部において光の透過または反射の変化を識別するには適していない。
【0012】
特許文献2(FR2904432)は、マトリクス構造の光学的フィルタ及び結合したイメージセンサを示している。そのアイデアは、種々の色を把握することができる。詳細には、可視域のスペクトルにおいて取得された三原色(赤、緑、青)から開始して、ほとんどの色を再現することができる。
【0013】
上記の状況において、検出器のマトリクスの表面に配置されたフィルタのマトリクスが使用される。フィルタのマトリクスは、ベイヤーフィルタ(”Bayer” filter)であるが、このことは本発明にとって重要ではない。検出器のマトリクスは、アクティブピクセルセンサ相補型MOS(APS CMOS)マトリクスである。上記の検出器のマトリクスは、半導体基板上に電子回路及び電気接点とともに配置された感光性の領域を有する半導体基板上に実現される。
【0014】
個別ピクセルに関し、感光性の領域は全面積の一部のみであり、残りの面積は制御用エレクトロニクスが占める。したがって、ピクセルの感光性の領域に入射光を集光させるために、ピクセルごとにマイクロレンズを備える必要がある。フィルタのマトリクスは、検出器と接触して配置され、組立品は、検出器-フィルタ-マイクロレンズを含む積み重ねからなるコンポーネントの形態となる。
【0015】
実際に、マイクロレンズの形状は特徴的であるので、マイクロレンズ上にフィルタのマトリクスを堆積させることを考えることはできない。さらに、マイクロレンズは樹脂からなるので、有機材料上に無機のフィルタを製造するのは困難な場合がある。
【0016】
他方、フィルタをマイクロレンズの下に配置する場合に、フィルタへの入射ビームの開口角は大きい。フィルタの応答は、この入射角と密接に関連している。このことは、スペクトル応答の変化となる。
【0017】
この主題に関し、特許文献3(US2014/0268146)は、検出器が追加される、一体的な帯域フィルタを備えたマイクロレンズのアレイを開示している。さらに、マイクロレンズのアレイと検出器との間にはディフレクタが存在している。
【0018】
フィルタへの入射角のこの問題を避けるために、マイクロレンズを省略することを考えることもできる。しかし、感光性の領域は、ピクセルの全面積と比較して小さな面積を示す。マイクロレンズによってもたらされる感度の増加は約50%である。したがって、マイクロレンズを省略することによって感度を失うのが適切ではないことは明らかである。
【0019】
また、そのようなコンポーネントの製造歩留まりは比較的低いことに言及すべきである。全体歩留まりは、以下の三つの歩留まりの積にほぼ等しい。
【0020】
検出器製造歩留まり
フィルタマトリクス製造歩留まり、及び
マイクロレンズアレイ製造歩留まり
上記の製造作業を重ねると、全体歩留まりは減少するという結果となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】US2006/0209413
【文献】FR2904432
【文献】US2014/0268146
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、上記の制約を示さない多スペクトル撮像デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明によれば、多スペクトル撮像デバイスは、ピクセルのマトリクスから構成された感光性検出器と、該ピクセルのマトリクスに対応するマイクロレンズのアレイと、該ピクセルのマトリクスに対応する、個別のフィルタのマトリクスによって形成されるフィルタモジュールと、を備える。上記のデバイスは、該マイクロレンズのアレイは該検出器と直接接触し、該フィルタモジュールは、該マイクロレンズのアレイと接触した基板上に製造されたことを特徴とする。
【0024】
フィルタへの入射角に関連する問題を避けるためには、マイクロレンズの上にフィルタを配置するのが有利である。
【0025】
マイクロレンズを維持することによってデバイスの感度は維持される。
【0026】
製造歩留まりに関し、本発明のデバイスは優れた利点を有する。特に、分類された検出器と結合させるために、フィルタモジュールを分類することができる。
【0027】
さらに、フィルタモジュール及び検出器に対して選択された構成における自由度が高い。解像度、感度、ノイズなどの撮像装置の特定の性質を強化するために、多数の検出器に対してフィルタリング処理を適応させることができる。
【0028】
該フィルタモジュールは、その周縁で接着剤によって該検出器に結合されているのが有利である。
【0029】
全表面にわたって存在する接着剤とは対照的に、該フィルタモジュールと該検出器との間には接着剤が存在しない。
【0030】
この解決策の第1の利点は、マイクロレンズの光学機能を維持することであり、それによって感光領域への光束を50%増加させる。接着剤はレンズの屈折率と近い屈折率を有するので、該フィルタモジュールと該検出器との間に接着剤が存在するとマイクロレンズの効率を大幅に減少させる。
【0031】
この解決策の第2の利点は、該フィルタモジュールと該マイクロレンズとの間に必然的に存在する空気の層に起因する干渉縞が、接着剤が存在する場合と対比して大幅に少なくなる(約10倍少ない)ということである。
【0032】
さらなる特徴によれば、該フィルタモジュールがアライメントパターンを備えている。
【0033】
好ましい実施形態において、該フィルタモジュールがスペーサーによって隔てられた2枚のミラーから構成され、該フィルタモジュールは複数のフィルタセルを有し、該フィルタセルのそれぞれは少なくとも2個のフィルタを有する。
【0034】
該フィルタの少なくとも1個が帯域伝送機能を有するのが好ましい。
【0035】
特定の配置において、該フィルタセルの少なくとも一部は、第1の帯に一直線に配置されている。
【0036】
同様に、該フィルタセルの少なくとも一部、第1の帯とは別で第1の帯に平行な第2の帯に一直線に配置されている。
【0037】
該フィルタの隣接する少なくとも二個がクロストーク障壁によって隔てられているのが有利である。
【0038】
他のさらなる特徴によれば、該検出器はCMOS技術で一体化されている。
【0039】
オプションとして、該フィルタの少なくとも1個がパンクロマチック(全整色性)である。
【0040】
広いスペクトル帯域のフィルタを採用する利点は、それが画像の光度測定の基準を与えることである。スペクトル帯域において積分される光束のレベルは、「色」帯域に含まれる光束に等しい。このことは、パンクロマチックなピクセルに隣接する、飽和するピクセルを防止するのに役立つ。
【0041】
本発明を、説明のための実施形態の以下の記載により、また添付の図面を参照することにより、より詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1a-
図1bは、1次元のフィルタセルの原理図であり、
図1aは、より詳細にセルの平面図であり、
図1bは、より詳細にセルの断面図である。
【
図2】
図2a-
図2cは、フィルタモジュールを製造するための第1の技術の三段階を示す図である。
【
図3】
図3a-
図3fは、フィルタモジュールを製造するための第2の技術の六段階を示す図である。
【
図4】2次元のフィルタモジュールの原理図である。
【
図5】遮蔽格子を備え、64個のフィルタを有するフィルタモジュールの図である。
【
図6】それぞれのセルが9個のフィルタを備えるフィルタモジュールの図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
二以上の図面に存在する構成要素にはそれぞれの図面で同じ符号を与えている。
【0044】
複数のほぼ同じフィルタセルを有するフィルタモジュールについて説明する。
【0045】
図1a及び1bを参照すると、フィルタセルは、帯を形成するように連続して一列に配置された、3個のファブリー-ペロー型の干渉フィルタFP1、FP2及びFP3を備える。
【0046】
該セルは、たとえば、ガラスまたは二酸化ケイ素からなる基板SUB上の積み重ねから構成される。該積み重ねは、第1のミラーMIR1、スペーサーSP及び第2のミラーMIR2を備える。
【0047】
各フィルタの中央波長を規定するスペーサーSPは、所定のフィルタに対して一定であり、フィルタごとに変化する。各フィルタはほぼ長方形の面を有するので、フィルタモジュールの断面は階段状である。
【0048】
薄膜技術でフィルタモジュールを製造する第1の方法を例として示す。
【0049】
図2aを参照して、基板SUB上に、最初に第1のミラーMIR1、続いてスペーサーSPを規定する一つまたは複数の誘電体層TFを堆積させる。ミラーは金属または誘電体である。
【0050】
【0051】
最初に、第2及び第3のフィルタFP2及びFP3において、第2のフィルタFP2におけるスペーサーSPの厚さを規定するためにエッチングする。
【0052】
その後、第3のフィルタFP3において、第3のフィルタFP3におけるスペーサーSPの厚さを規定するためにエッチングする。
【0053】
第1のフィルタFP1におけるスペーサーSPは堆積厚さを有する。
【0054】
図2cを参照して、3個のフィルタを完成させるために第2のミラーMIR2をスペーサーSP上に堆積させる。
【0055】
スペーサーSPは、誘電体TFを堆積させ、続いて上述のようにエッチングして得てもよいが、複数の薄い層を続けて堆積させることによって得ることもできる。
【0056】
例として、800ナノメータ(nm)から1000nmの波長領域は、スペーサーの光学的厚さを1.4λ0/2から2.6λ0/2の範囲で変更することによってカバーすることができる(λ0=900nm及びn=1.45に対して、eは217nmから403nmの範囲にわたり変化)。
【0057】
ここで、スペーサーの厚さは、探査する範囲において一つの伝送帯のみを得るように、十分に小さい必要があることに注目すべきである。特に、この厚さが大きいほど、条件[ne=kλ/2]を満たす波長の数が多くなる。
【0058】
フィルタモジュールを製造する第2の方法を以下に説明する。
【0059】
図3aを参照して、シリコン基板SILの底面OX1及び上面OX2を熱によって酸化させることによって該方法は始まる。
【0060】
図3bを参照して、基板の底面及び上面OX1及びOX2を、それぞれ、感光性の樹脂からなる底面の層PHR1及び上面の層PHR2によって覆う。その後、フォトリソグラフィによって、底面の層PHR1に長方形の開口を形成する。
【0061】
図3cを参照して、底面OX1上の熱による酸化物を、底面の層PHR1に形成された長方形の開口に合わせてエッチングする。その後、底面の層及び上面の層PHR1及びPHR2を除去する。
【0062】
図3dを参照して、長方形の開口に合わせて、基板SILに異方性エッチング(たとえば、結晶の向き1-0-0)を実施する。ここで、底面OX1の熱による酸化物はマスクとして機能し、上面OX2の熱による酸化物はエッチング停止層として機能する。エッチングは、水酸化カリウム(KOH)または水酸化トリメチルアンモニウム(TMAH)の溶液を使用したウェットであっても、プラズマ中のドライであってもよい。この操作の結果は、長方形の開口の底面に酸化物の膜のみが残る。
【0063】
【0064】
最初に、第2及び第3のフィルタFP2及びFP3において、第2のフィルタFP2におけるスペーサーSPの厚さを規定するためにエッチングする。
【0065】
その後、第3のフィルタFP3において、第3のフィルタFP3におけるスペーサーSPの厚さを規定するためにエッチングする。
【0066】
図3fを参照して、第1及び第2のミラーM1及びM2を基板SILの底面及び上面OX1及びOX2の表面に堆積させる。
【0067】
オプションとして、底面及び上面OX1及びOX2の一方または両方の表面に不活性化層(図示せず)を堆積させることによってフィルタモジュールの製造を終了することも可能である。
【0068】
このように、本発明によって、1次元空間と関係づけられた、並べられた複数のフィルタの組を製造することが可能となる。
【0069】
図4を参照して、本発明によって、2次元空間にフィルタセルを配置させることができる。そのような配置は、しばしばマトリクスと呼称される。
【0070】
4個の同一の水平方向の帯がそれぞれ4個のセルを備える。図の上部に見える第1の帯は、マトリクスの第1の行に対応し、セルIF11からIF14を備える。第2、第3及び第4の帯は、それぞれ、セルIF21からIF24、セルIF31からIF34、及びセルIF41からIF44を備える。
【0071】
j番目の水平の帯に所属するセルIFjkは、セルIF1k,IF2k,...,IF4kを備えるk番目の鉛直の帯の一部でもあるので、上記の配置はマトリクスといわれる。
【0072】
図5を参照して、一つのフィルタがそれに隣接するフィルタに部分的に重なるのを防止し、クロストークに関する問題を最小化するために、フィルタモジュールの種々のフィルタは十分に間隔を空けるのが望ましい。これを実施するため、全てのフィルタの境界を定めるクロストーク障壁を構成する、フィルタモジュール上の格子(図において黒で示す)を追加することも可能である。この格子は、吸収性であるべきである。例として、吸収性の格子は、黒クロム(クロム+酸化クロム)を堆積しエッチングして製造してもよく、他方、反射性格子は、クロムを堆積しエッチングして製造してもよい。
【0073】
図6を参照して、それぞれのフィルタセルは9個のフィルタを有する。これらのセルのそれぞれは、正方形の形状であり、その中に別個の波長λ1,λ2,λ3,λ4,...,λ9に調整された対応するフィルタが存在する。
【0074】
本図において、わかりやすくするために、セル間の間隔は2個のフィルタ間の間隔と比較して大きくしている。いうまでもなく、実際には、セル間及びフィルタ間の間隔は同じである。
【0075】
このようにフィルタモジュールは、種々のフィルタによって生成される光束を測定することのできる検出器と結合している。検出器は複数の区画から構成される。
【0076】
図7を参照すると、
図6に示すフィルタモジュールMFが見られる。
【0077】
検出器DETは、シリコンからなる基板SS上にCMOS技術を使用して製造される。正方形状のそれぞれの区画CP1、CP2、CP3の中心に感光性の領域PS1、PS2、PS3が存在する。
【0078】
それぞれの区画CP1、CP2、CP3の上には、区画の辺と同じ直径のマイクロレンズML1、ML2、ML3が存在する。
【0079】
フィルタモジュールMFは、フィルタλ1,λ2,λ3がマイクロレンズML1、ML2、ML3に向き合うように、マイクロレンズML1、ML2、ML3のアレイに支えられる。
【0080】
このモジュールMFの位置合わせは、フォトリソグラフィの当業者に知られた技術であるアライメントパターンによって実施する。したがって、この技術についてここで詳細には記載しない。
【0081】
フィルタモジュールMFは、接着剤からなる縁STによって検出器DETに固定される。
【0082】
アイデアを明確にするために、ピクセルは通常5マイクロメータのオーダーのサイズを有することを明示する。
【0083】
本発明の上述の実施形態は、具体的な性質のために選択されたものである。しかし、本発明に含まれるすべての実施形態を網羅的に識別することは不可能である。特に、記載されたいずれの手段も、本発明の範囲を超えることなく、等価の手段と置き換えてもよい。