(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】詰め物用糸とその製造方法及びこれを用いた詰め物体
(51)【国際特許分類】
D06M 15/564 20060101AFI20230628BHJP
D02G 3/44 20060101ALI20230628BHJP
D02G 3/34 20060101ALI20230628BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20230628BHJP
D06M 15/55 20060101ALI20230628BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
D06M15/564
D02G3/44
D02G3/34
D06M15/263
D06M15/55
D06M15/643
(21)【出願番号】P 2019045886
(22)【出願日】2019-03-13
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】山内 一平
(72)【発明者】
【氏名】丸石 皓美
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-270424(JP,A)
【文献】特開2011-246850(JP,A)
【文献】登録実用新案第3197328(JP,U)
【文献】特開2020-143396(JP,A)
【文献】特開2012-067429(JP,A)
【文献】特開2016-27213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715、
D02G1/00-3/48、D02J1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種類の長繊維A
(芯糸)及び長繊維B
(花糸)で構成される詰め物用糸であって、
前記長繊維A
(芯糸)は前記長繊維B
(花糸)に比べて相対的に短く、
前記長繊維A
(芯糸)及び前記長繊維B
(花糸)は
絡み合って一体化されており、
前記長繊維A(芯糸)は、ポリエステル異収縮混繊糸であり、
前記長繊維B(花糸)は、単繊維繊度が3decitex以上、かつ中空率が30%を超えるポリエステル中空糸であり、
前記詰め物用糸には架橋剤として、少なくともウレタン系架橋剤、アクリル系架橋剤又はエポキシ系架橋剤が付与されキュアリングにより固定されており、
前記詰め物用糸は、JIS L 1903-1998「羽毛製品に用いられる充填材料用羽毛の試験方法」に準拠した測定方法で140mm以上のかさ高性があることを特徴とする詰め物用糸。
【請求項2】
前記詰め物用糸には、さらに表面処理剤が付与されてなる請求項1に記載の詰め物用糸。
【請求項3】
前記架橋剤は少なくともウレタン系架橋剤であり、前記表面処理剤は少なくともシリコーン系樹脂である請求項2に記載の詰め物用糸。
【請求項4】
前記ポリエステル異収縮混繊糸は、断面が三角形状の2種類のポリエチレンテレフタレートフィラメント繊維の混繊糸である請求項1~3のいずれか1項に記載の詰め物用糸。
【請求項5】
前記詰め物用糸の単位長さ当たりの質量は0.01~3g/mの範囲である請求項1~4のいずれか1項に記載の詰め物用糸。
【請求項6】
前記長繊維Bと前記長繊維Aの重量比は、前記長繊維Bと前記長繊維Aを母数にしたとき、前記長繊維Bの割合は51~99質量%である請求項1~5のいずれか1項に記載の詰め物用糸。
【請求項7】
前記長繊維Bは、前記長繊維Aに比べて1.1~100倍長い請求項1~6のいずれか1項に記載の詰め物用糸。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の詰め物用糸の製造方法であって、
長繊維A
(芯糸)と長繊維B
(花糸)は、交絡加工、エアージェット加工
、及び長繊維A
(芯糸)に対して長繊維B
(花糸)を噴射させる加工から選ばれる少なくとも一つの加工により一体化されている
ことを特徴とする詰め物用糸
の製造方法。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の詰め物用糸が、側地生地に充填されていることを特徴とする詰め物体。
【請求項10】
前記詰め物体は、洗濯機で洗濯可能である請求項
9に記載の詰め物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長繊維で構成される詰め物用糸とその製造方法及びこれを用いた詰め物体に関する。
【背景技術】
【0002】
羽毛布団、羽毛ジャケットなどの羽毛製品に充填される羽毛は、一般的には水鳥の羽毛が使用されている。水鳥としてはグース(ガチョウ)、ダック(アヒル)、北極圏の海岸線に生息するアイダー(野生の鴨)などである。羽毛には、胸毛にあたるダウンと、羽根と呼ばれるフェザーがあり、ともに羽毛製品に使われている。羽毛の産地はポーランド、ハンガリーなどの中欧、スカンジナビア半島を含む北欧、中国などである。羽毛は、嵩高性に優れ、暖かく、掛け布団や羽毛ジャケットの羽毛製品として高級素材の地位を占めている。
【0003】
しかし、天然の羽毛は水鳥に依存しており、その供給量には限度がある上、自然条件や厄病(例えば鳥ウィルス)の影響によって供給量も変動するという問題がある。あるいは自然保護の観点から、野生の鳥を捕捉することには限度がある。その上、天然の羽毛は、洗いが不充分であると悪臭の原因となるため、事前に悪臭の原因となる汚物を除去し、羽毛の洗浄の程度を見る清浄度と酸素計数を一定のレベルに保つ管理が必要である。加えて、羽毛布団、羽毛ジャケットなどの羽毛製品の洗濯は容易ではないという基本的な問題がある。
【0004】
そこで、従来から詰め綿については多くの提案がある。特許文献1にはポリエステル繊維を加熱処理により収縮させて捲縮を発現させ、嵩高と弾力性を持たせることが提案されている。本出願人は特許文献2~3において芯糸と花糸を交絡した詰め綿を提案している。特許文献4には芯糸に花糸を巻き付けて絡ませた詰め綿が提案されている。さらに特許文献5には、糸長差を有する糸条を噴射気流により旋回させて嵩高加工することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-93513号公報
【文献】特開2012-067429号公報
【文献】特開2012-067430号公報
【文献】特開2016-027213号公報
【文献】特開2017-122304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記従来技術の詰め物体は、かさ高性に優れるが、市場においては、更なるかさ高性の向上も求められている。
本発明は、上記要求を満たすためにかさ高であり、保温性も高い詰め物用糸とその製造方法及びこれを用いた詰め物体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の詰め物用糸は、少なくとも2種類の長繊維A(芯糸)及び長繊維B(花糸)で構成される詰め物用糸であって、
前記長繊維A(芯糸)は前記長繊維B(花糸)に比べて相対的に短く、
前記長繊維A(芯糸)及び前記長繊維B(花糸)は絡み合って一体化されており、
前記長繊維A(芯糸)は、ポリエステル異収縮混繊糸であり、
前記長繊維B(花糸)は、単繊維繊度が3decitex以上、かつ中空率が30%を超えるポリエステル中空糸であり、
前記詰め物用糸には架橋剤として、少なくともウレタン系架橋剤、アクリル系架橋剤又はエポキシ系架橋剤が付与されキュアリングにより固定されており、
前記詰め物用糸は、JIS L 1903-1998「羽毛製品に用いられる充填材料用羽毛の試験方法」に準拠した測定方法で140mm以上のかさ高性があることを特徴とする。
【0008】
本発明の詰め物用糸の製造方法は、前記の詰め物用糸の製造方法であって、長繊維A(芯糸)と長繊維B(花糸)は、交絡加工、エアージェット加工、及び長繊維A(芯糸)に対して長繊維B(花糸)を噴射させる加工から選ばれる少なくとも一つの加工により一体化されていることを特徴とする。
本発明の詰め物体は、前記の詰め物用糸が、側地生地に充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、長繊維Aは長繊維Bに比べて相対的に短く、長繊維A及び長繊維Bは一体化されており、詰め物用糸には架橋剤として、少なくともウレタン系架橋剤、アクリル系架橋剤又はエポキシ系架橋剤等の樹脂系架橋剤が付与されキュアリングにより固定されていることにより、かさ高でありへたりにくく、保温性も高い詰め物用糸及びこれを用いた詰め物体を提供できる。また耐洗濯性もあり、洗濯しても長繊維Aと長繊維Bは分離することはなく、長繊維であるから詰め綿の片寄りも少ない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本発明の一実施例における交絡糸の側面図である。
【
図2】
図2は本発明の一実施例における長繊維エアー交絡糸の製造方法の模式的説明図である。
【
図3】
図3は本発明の一実施例で使用する長繊維A(芯糸)のポリエステル異収縮混繊糸の断面写真である。
【
図4】
図4は本発明の一実施例で使用する長繊維B(花糸)のポリエステル中空糸の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の詰め物用糸は、少なくとも2種類の長繊維A及び長繊維Bで構成される。長繊維A及び長繊維B以外の繊維を加えることは任意であるが、詰め物用糸を100質量%としたとき長繊維A及び長繊維B合計で70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上である。長繊維A及び長繊維Bは一体化されている。ここで一体化とは、繊維同士が絡み合ったり巻き付いた状態をいう。長繊維Aは長繊維Bに比べて相対的に短い。長繊維Aと長繊維Bとの長さの差を設けることでかさ高性を出す。
【0012】
本発明において、長繊維Bは単繊維繊度が3decitex以上のポリエステル中空糸を使用するのが好ましい。これによりかさ高性と保温効果が高くなる。単繊維繊度が3decitex未満では、かさ高性と保温効果は期待できない。なお、decitexはTとも表示する。
【0013】
詰め物用糸には架橋剤として、少なくともウレタン系架橋剤、アクリル系架橋剤又はエポキシ樹脂架橋剤が付与されキュアリングにより固定されている。前記架橋剤を用いることによりかさ高性及び耐洗濯性を向上させることができる。さらに、表面処理剤として平滑性を向上させる樹脂剤、例えば、シリコーン系樹脂を併用するのが好ましい。特にシリコーン系樹脂剤とウレタン系架橋剤の併用が好ましい。
【0014】
前記詰め物用糸のJIS L 1903-1998「羽毛製品に用いられる充填材料用羽毛の試験方法」に準拠した測定方法で140mm以上のかさ高性があることが好ましい。
【0015】
長繊維Aは、ポリエステル異収縮混繊糸であることが好ましい。異収縮混繊糸とは、熱収縮差の異なる複数種類のフィラメント繊維を混繊し、熱収縮差を6%、好ましくは8%以上とした糸のことである。このようなポリエステル異収縮混繊糸としては、ユニチカファイバー社製、商品名“シルミー”がある。このポリエステル異収縮混繊糸は、断面が三角形状の2種類のポリエチレンテレフタレートフィラメント繊維を混繊し、熱収縮差は8%である。
【0016】
長繊維Bは、単繊維繊度が3decitex以上かつ中空率が30%を超えることが好ましい。これにより、かさ高性と保温性を高く維持できる。
【0017】
詰め物用糸の単位長さ当たりの質量は0.01~3g/mが好ましく、0.02~1.5g/mがさらに好ましい。この範囲であると、詰め物加工にする際の取り扱いに便利である。
【0018】
花糸(長繊維B)と芯糸(長繊維A)の重量比は、花糸(長繊維B)と芯糸(長繊維A)を母数にしたとき、花糸(長繊維B)の割合は51~99質量%(wt%)の範囲が好ましい。更に好ましくは80~98wt%の範囲、特に好ましくは85~97wt%の範囲である。前記範囲であれば、芯糸(長繊維A)による固定一体化はしっかりしたものとなり、かつ風合いも良好となる。
【0019】
長繊維Bは、長繊維Aに比べて1.1~100倍長いことが好ましく、より好ましくは2~100倍であり、さらに好ましくは4~60倍である。この範囲であると、長繊維Bが長い分だけループ繊維になり、かさ高くできる。
【0020】
長繊維A及び長繊維Bは、交絡加工、エアージェット加工、巻き付け加工及び長繊維Aに対して長繊維Bを噴射させる加工から選ばれる少なくとも一つの加工により一体化されているのが好ましい。交絡加工は長繊維Aと長繊維Bの走行方向に対して垂直方向に圧空を噴射するエアー交絡機による加工である。エアージェット加工はいわゆるタスラン加工であり、長繊維Aと長繊維Bに対して進行方向に圧空を押し込む加工である。巻き付け加工は長繊維Aに対して長繊維Bを巻き付け、一体化する加工である。長繊維Aに対して長繊維Bを噴射させる加工は、長繊維Aに長繊維Bを噴射させ絡めたり旋回させる加工である。
【0021】
本発明の詰め物用糸は、布団、毛布、寝袋、枕、クッション、マット、ぬいぐるみ、ひざ掛け、ジャケット、シャツ、パンツ、スカート、ベスト、コート、防寒衣料、インナー衣料及びネックウォーマーから選ばれる少なくとも一つの詰め物体に充填されている。
【0022】
前記詰め物体は洗濯機で洗濯可能である。洗濯ができるウォッシャブル性があることから、寝具類はホテル用、レンタル用、災害用、病院用、老人施設用などに好適であり、衣類はスポーツ用に好適である。
【0023】
本発明の詰め物用糸は、そのままカートン容器に収納してもよいし、複数本束ね、その長さ方向の周囲にフィルムが円筒状にラッピングしてもよい。このような包装体を使用すると、梱包及び輸送に便利なだけでなく、詰め物を製造する際に、側地内に詰め物用糸を充填する際にも便利である。すなわち、筒状体のフィルムの端から詰め物用糸を露出させ、この露出部を側地の端に配置して抑え、フィルムを抜くだけで側地内に詰め物用糸を収納できる。
【0024】
本発明の詰め物体は、長繊維詰め物用糸を詰め物の長さ方向に配列して充填され、詰め物の幅方向に縫製された複数本のキルト糸により側地と固定されているのが好ましい。これにより、固定箇所の間で詰め物用糸の長さは変化することはなく、長繊維AとBは一体化しているので、洗濯を繰り返しても詰め綿の動きは制限され、片寄りが少なく、かさも高い詰め物製品となる。なお、本発明の詰め物体は、長繊維詰め物用糸とともに、その他長繊維詰め物を用いてもよく、その他長繊維詰め物と本発明の長繊維詰め物用糸とを混合して、複数本のキルト糸により側地と固定してもよい。また、他の羽毛、人工羽毛、短繊維綿と併用してもよい。
【0025】
以下図面を用いて説明する。各図面において、同一符号は同一部分を示す。また以下においては、長繊維詰め物用糸は一例として交絡糸の場合を説明する。
図1は本発明の一実施例における長繊維詰め物用糸の側面図である。この長繊維詰め物用糸1は、芯糸2(長繊維A)と花糸3(長繊維B)の構成繊維が互いに絡まっており、花糸3(長繊維B)が開繊されて部分的にループ状繊維を形成している。
【0026】
図2はエアー交絡糸の製造方法を示す模式的説明図である。巻き糸体4から芯糸4a(長繊維A)を引き出し、巻き糸体5から花糸5a(長繊維B)引き出し、2個のフィードローラ6、7と糸ガイド8を通過させてエアー交絡装置10に供給する。エアー交絡装置10に圧力空気11を供給すると、糸道9内の繊維は開繊されたり旋回されることにより、互いに交絡する。12は混繊交絡糸である。芯糸の供給速度は10~200m/分、花糸の供給速度は20~10000m/分、巻き取り速度10~200m/分、空気圧力0.01~1.0MPaの交絡ノズルで混繊交絡処理を施した後、デリベリローラ13とワインダーローラ14を通過後の糸を巻き糸体20に巻き取る。この方法は、糸の巻き取り速度を20~1500m/分と高速化でき、生産性が高いところに利点がある。
【0027】
得られた交絡糸に、シリコーン系樹脂及び樹脂架橋剤が付与されキュアリングにより固定されている。シリコーン樹脂としては、分子末端がハイドロジェン基(-OH)、ビニル基(-CH=CH2)等を有する反応性シリコーン処理剤を使用するのが好ましい。例えば、松本油脂製薬社製“テロン E-530”バルキーシリコン、“テロン E-731”等のソフトシリコン樹脂を使用できる。樹脂架橋剤としては、ウレタン系架橋剤、例えば日華化学社製樹脂、アクリル系架橋剤、例えばDIC社製樹脂、及びエポキシ系架橋剤、例えばDIC社製樹脂から選ばれる少なくとも1種類の架橋剤を併用するのが好ましい。この中でもシリコーン系樹脂とウレタン系架橋剤の併用が好ましい。シリコーン樹脂100質量部に対する架橋剤の割合は、1~100質量部が好ましい。シリコーン系樹脂と架橋剤の合計付与量は、乾燥重量で詰め綿に対し0.1~10質量%付与するのが好ましい。次に熱処理工程において、140~190℃で1~20分間熱処理し、シリコーン系樹脂をキュアリング固定する。
【実施例】
【0028】
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
各物性の測定方法について説明する。
<かさ高性の測定方法>
かさ高性は、JIS羽毛試験方法(JIS L 1903-1998 羽毛製品に用いられる充填材料用羽毛の試験方法)に準拠した方法で中綿材(詰め物用糸)を測定した。内径29cm、高さ50cmのシリンダー容器に30gの中綿材を入れ、120gの荷重用円盤(おもり)を2分間のせた後の中綿材の高さを測定する。おもりの3カ所を1mm単位まで測定する。弾力のある良質の中綿材ほどこの値が大きい。この際に、10本以上の中綿材(詰め物用糸)を束ねて長さ50cmにカットして30gを採取し、採取した束状の中綿材(詰め物用糸)を手で解しながら測定器にパラパラと30g入れ、測定器に入り切らない場合は溢れた中綿材(詰め物用糸)を、手で軽く押して溢れないように入れた。
<洗濯評価>
得られた長繊維詰め綿を一方向に引き揃え、長繊維詰め綿シートをタテ30cm、ヨコ30cm角の側地に40g充填して詰め物体とした。家庭用洗濯機を使用し、市販洗剤(花王社製「アタック」)30gを加えて水で洗濯し、濯ぎを2回し、その後乾燥した。この洗濯工程を5回繰り返した後、特開2012―067429に記載している方法により高さを測定し、洗濯後の詰め物体の高さの減少割合を算出した。減少割合が10%以内のものをAとした。
<平滑性評価>
長繊維詰め綿の製造工程において、乾燥機出口から詰め綿を巻き上げる際に詰め綿がコンベアに付着していないか及び詰め綿同士が付着していないかを確認し、付着していないものはA、付着することにより生産性が低下するものはBとする。
【0029】
【0030】
(実施例1)
芯糸として、ユニチカファイバー社製、商品名“シルミー”、繊度:33decitex、フィラメント数:18本(33T/18F)を用いた。このポリエステル異収縮混繊糸は、断面が三角形状の2種類のポリエチレンテレフタレートフィラメント繊維を混繊し、熱収縮差は8%である。断面写真を
図3に示す。花糸として、
図4に示す中空糸、繊度:39decitex、フィラメント数:12本(39T/12F、単繊維繊度3.25T/F)を用いた。中空率は35%であった。
図2に示すエアー交絡装置を使用し、表2に示す条件で詰め物用糸を作製した。
次に表面処理工程において、ウレタン系架橋剤を付与した。ウレタン系架橋剤としては、日華化学社製樹脂、5質量%、の水溶液を使用し、付与量は乾燥重量で詰め綿に対し1.5~3.5質量%散布した。次に熱処理工程において、表3に示す条件で熱処理し、ウレタン系架橋剤を熱キュアリング固定した。得られた詰め物用糸の結果は表4に示す。
【0031】
(実施例2)
実施例1で得られた詰め物用糸を使用し、表面処理工程においてウレタン樹脂架橋剤としては、日華化学社製樹脂、5質量%、シリコーン系樹脂剤として松本油脂製薬社製“テロン E-530”を0.5%質量%の水溶液を使用し、付与量は乾燥重量で詰め綿に対し1.5~3.5質量%散布した。熱処理条件は実施例1と同様とした。得られた詰め物用糸の結果は表4に示す。
【0032】
(実施例3)
実施例1で得られた詰め物用糸を使用し、表面処理工程において、アクリル系架橋剤としては、DIC社製樹脂、10質量%の水溶液を使用し、付与量は乾燥重量で詰め綿に対し1.5~3.5質量%散布した。熱処理条件は実施例1と同様とした。得られた詰め物用糸の結果は表4に示す。
【0033】
(実施例4)
実施例1で得られた詰め物用糸を使用し、表面処理工程において、エポキシ系架橋剤としては、DIC社製樹脂、10質量%の水溶液を使用し、付与量は乾燥重量で詰め綿に対し1.5~3.5質量%散布した。熱処理条件は実施例1と同様とした。得られた詰め物用糸の結果は表4に示す。
【0034】
(比較例1)
芯糸として、ユニチカファイバー社製、商品名“シルミー”、繊度:33decitex、フィラメント数:18本(33T/18F)を用いた。このポリエステル異収縮混繊糸は、断面が三角形状の2種類のポリエチレンテレフタレートフィラメント繊維を混繊し、熱収縮差は8%である。断面写真を
図3に示す。花糸として、
図4に示す中空糸、繊度:39decitex、フィラメント数:12本(39T/12F、単繊維繊度3.25T/F)を用いた。中空率は35%であった。
図2に示すエアー交絡装置を使用し、表2に示す条件で詰め物用糸を作製した。
次に表面処理工程において、シリコーン系樹脂とシリコーン系架橋剤を付与した。シリコーン系樹脂としては、松本油脂製薬社製“テロン E-530”、10質量%、架橋剤として同社製“マーポテロン E-722” 、0.5質量%の水溶液を使用し、付与量は乾燥重量で詰め綿に対し1.5~3.5質量%散布した。次に熱処理工程において、表3に示す条件で熱処理し、シリコーン系樹脂を熱キュアリング固定した。得られた詰め物用糸の結果は表4に示す。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
表4から明らかなとおり、実施例1~4は比較例1に比べて高いかさ高性が確認できた。特に実施例2は平滑性もあり、風合いもよく、好ましい詰め物用糸であった。
以上の実施例から明らかなとおり、本発明の詰め物体は、かさ高性があり、へたりにくく、保温性も高く、耐洗濯性も高いことが確認できた。
【0039】
本発明の詰め物用糸は、布団、毛布、寝袋、枕、クッション、マット、ぬいぐるみ、ひざ掛け、ジャケット、シャツ、パンツ、スカート、ベスト、コート、防寒衣料、インナー衣料、作業着及びネックウォーマーから選ばれる少なくとも一つの詰め物体に充填されている。
【符号の説明】
【0040】
1 詰め物用糸
2,4a 芯糸(長繊維A)
3,5a 花糸(長繊維B)
4,5,20 巻き糸体
6,7 フィードローラ
8 糸ガイド
9 交絡機の糸道
10 エアー交絡装置
11 圧力空気
12 混繊交絡糸
13 デリベリローラ
14 ワインダーローラ