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特許7303651レーザースキャン用警報システムおよびレーザースキャン用警報方法
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  • 特許-レーザースキャン用警報システムおよびレーザースキャン用警報方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】レーザースキャン用警報システムおよびレーザースキャン用警報方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
G01C15/00 103E
G01C15/00 103A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019063173
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020165652
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】糀 徹太郎
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-328022(JP,A)
【文献】特開2018-084435(JP,A)
【文献】登録実用新案第3056493(JP,U)
【文献】特開2013-242642(JP,A)
【文献】特開2012-203616(JP,A)
【文献】特開2008-101416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平回転する本体を備えたレーザースキャナと、
前記本体が水平回転しつつ照射されるレーザースキャン光の照射が予定される範囲をスキャン警告範囲とし、当該スキャン警告範囲に対して、レーザースキャン光の照射が予定される旨を警告する警告電波信号の放射を行うレーザースキャン用警報装置と、
前記レーザースキャン用警報装置からの前記警告電波信号を受信可能な端末と
を有し、
前記端末は、前記警告電波信号を受信した場合に前記レーザースキャナの動作の停止を指示する信号を出力するレーザースキャン用警報システム。
【請求項2】
前記スキャン警告範囲は、レーザースキャン光が照射されている水平角度位置から特定の水平角度の範囲である請求項1に記載のレーザースキャン用警報システム。
【請求項3】
前記スキャン警告範囲は、レーザースキャン光の水平スキャン回転に伴って水平回転する請求項1または2に記載のレーザースキャン用警報システム。
【請求項4】
前記スキャン警告範囲が複数の範囲に分割されており、
前記警告は、前記複数の範囲毎に異なる内容が設定されている請求項1~3のいずれか一項に記載のレーザースキャン用警報システム。
【請求項5】
水平回転する本体を備えたレーザースキャナにおけるレーザースキャン用警報方法であって、
前記本体が水平回転しつつレーザースキャン光の照射が行われ、
前記レーザースキャン光の照射が予定される範囲に対して、レーザースキャン光の照射が予定される旨を警告する警告電波信号の放射を行い、
前記警告電波信号を受信した端末に前記レーザースキャナの動作の停止を指示する信号を出力させるレーザースキャン用警報方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザースキャンの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザースキャナが知られている。レーザースキャナの動作として、水平回転しつつ全周あるいはある角度範囲をレーザースキャンする動作がある。ところで、工事現場や建設現場等でレーザースキャナを用いた点群データンの取得の際、他の作業を行いたい場合が有る。
【0003】
この場合、他の作業を行う作業員がレーザースキャンの対象とならないようにすることが求められる。特許文献1には、画像解析から歩く人等の動体を検出し、当該動体のレーザースキャンデータを利用しないようにする技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許開2012-207929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、人等の動体のレーザースキャンデータの利用を制限する技術であるが、動体の影になった部分のレーザースキャンは改めて行う必要がある。このような背景において、本発明では、より簡便な方法で人がレーザースキャンの対象とならないようにする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、水平回転する本体を備えたレーザースキャナと、前記本体が水平回転しつつ照射されるレーザースキャン光の照射が予定される範囲をスキャン警告範囲とし、当該スキャン警告範囲に対して、レーザースキャン光の照射が予定される旨を警告する警告電波信号の放射を行うレーザースキャン用警報装置と、前記レーザースキャン用警報装置からの前記警告電波信号を受信可能な端末とを有し、前記端末は、前記警告電波信号を受信した場合に前記レーザースキャナの動作の停止を指示する信号を出力するレーザースキャン用警報システムである。
【0007】
本発明において、前記スキャン警告範囲は、レーザースキャン光が照射されている水平角度位置から特定の水平角度の範囲である態様が挙げられる。本発明において、前記スキャン警告範囲は、レーザースキャン光の水平スキャン回転に伴って水平回転する態様が挙げられる。本発明において、前記スキャン警告範囲が複数の範囲に分割されており、前記警告は、前記複数の範囲毎に異なる内容が設定されている態様が挙げられる。
【0010】
本発明は、水平回転する本体を備えたレーザースキャナにおけるレーザースキャン用警報方法であって、前記本体が水平回転しつつレーザースキャン光の照射が行われ、前記レーザースキャン光の照射が予定される範囲に対して、レーザースキャン光の照射が予定される旨を警告する警告電波信号の放射を行い、前記警告電波信号を受信した端末に前記レーザースキャナの動作の停止を指示する信号を出力させるレーザースキャン用警報方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便な方法で人がレーザースキャンの対象とならないようにする技術が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態のレーザースキャナの斜視図である。
図2】実施形態の原理を示す上面図である。
図3】実施形態の原理を示す斜視図である。
図4】実施形態のブロック図である。
図5】処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.第1の実施形態
(装置の概要)
図1には、レーザースキャナ100が示されている。レーザースキャナ100は、三脚102の上に固定された台座101を有している。三脚102が地上や床等の上に設置され、それにより、レーザースキャナ100の設置が行なわれる。台座101上には、本体103が回転自在な状態で保持されている。本体103は、台座101上で水平回転する。この水平回転は、本体103に内蔵された水平回転モーターによって行われる。
【0015】
本体103は、双頭構造の略逆U字形状を有し、双頭構造の間の部分に鉛直回転部104を備える。鉛直回転部104は、水平方向を回転軸とした鉛直回転を行う。鉛直回転部104は、本体103の内部に配置された鉛直回転モーターによって駆動され、鉛直回転する。
【0016】
鉛直回転部104には、測距用のレーザー光の発光と受光を行う光学部105が設けられている。光学部105から測距用レーザー光(出射光)が外部へ向けて照射される。そして対象物で反射した測距光(計測光:入射光)が光学部105から鉛直回転部104に取り込まれる。この例では、1条の測距用レーザー光が照射される。もちろん、複数条の測距光を照射する形態も可能である。
【0017】
本体103は、スキャン警告光発光部106を備えている。このスキャン警告光は、水平回転しつつ照射されるレーザースキャン光の照射が予定される範囲に選択的に照射される。このレーザースキャン光の照射が予定される範囲がスキャン警告範囲となる。
【0018】
スキャン警告範囲に選択的にスキャン警告光が放射されるように、スキャン警告光発光部106の光学系が調整されている。スキャン警告光は、人間が視認できる波長のものが選択される。スキャン警告光は、連続光であってもよいし、パルス光(点滅光)であってもよい。
【0019】
(警告光について)
図2は、レーザースキャナ100を鉛直上方から見た状態が示されている。レーザースキャナ100は、本体103の水平回転と鉛直回転部104の鉛直回転を同時に行ないつつ、光学部105から10kHz~1MHzの間隔で間欠的に測距光が放射されることで、周囲全体に対するレーザースキャンを行う。勿論、スキャン範囲を限定したレーザースキャンも可能である。
【0020】
図2の視点(鉛直上方から見た視点)から見ると、スキャン光(測距光)が180°異なる双方向に照射され、それが水平回転する。この例では、鉛直上方から見て本体103が時計回り方向(右回り)に回転する。この水平回転は、例えば30秒~180秒で半回転する速度で行なわれる。
【0021】
スキャン警告光は、レーザースキャン光の掃引予定となるある角度範囲に対して行われる。すなわち、スキャン警告光は、水平方向におけるレーザースキャン光のスキャン予定範囲にレーザースキャン光の照射に先立って照射される。水平方向におけるレーザースキャン光のスキャン予定範囲は、図2のように水平回転する。スキャン警告光もレーザースキャン光と共に同様に水平回転する。スキャン警告範囲の角度範囲は、例えば15°~45°程度である。この角度範囲は所望する範囲で設定可能である。レーザースキャン光は、鉛直上方から見て双方向に照射されるので、スキャン警告範囲も同様に上方から見て双方向に設定される。
【0022】
図3にレーザースキャナ光110とスキャン警告光120のビーム形状を示す。スキャンビームは、鉛直回転するので鉛直360°の範囲に渡って行われる(なお下方は、本体103があるので、有効なスキャン点は取得できない)。これに対して、上下角方向のスキャナ警告光120のビーム範囲は、上角方向(仰角方向)+15°~+30°、下角方向(俯角方向)-5°~-10°といった程度に設定される。これは、レーザースキャナ100から見て、極端な上方向や下方向に人がいる状況を想定していないからである。
【0023】
(制御ブロック図)
図4にレーザースキャナ100の制御ブロック図を示す。図4には、スキャン警告光発光部106、測距光送光部202、測距光受光部203、測距計算部204、水平駆動モーター/エンコーダ205、鉛直駆動モーター/エンコーダ206、記憶部207、受信部208、CPU209が示されている。
【0024】
スキャン警告光発光部106は、図2図3に示すスキャン警告光120を発光する。測距光送光部202は、測距光の発光素子、その周辺回路、光学系を有している。測距光受光部203は、対象物(反射点)から反射してきた測距光(検出光)を受光する受光素子、その周辺回路、光学系を有している。
【0025】
これら光学系には、出射光と入射光を分離する光学系が含まれている。レーザースキャナの光学系については、通常のレーザースキャナと同じである。
【0026】
測距計算部204は、本体103内に設けられた基準光路を伝搬してきた基準光と検出光(入射光)との到達時間差または位相差から測距対象物(反射点)までの距離を算出する。
【0027】
水平駆動モーター/エンコーダ205は、本体103の水平回転を行うためのモーター、本体103の水平回転の角度を計測するエンコーダ、およびそれの周辺回路を有する。鉛直駆動モーター/エンコーダ206は、鉛直回転部104の鉛直回転を行うためのモーター、鉛直回転部の鉛直回転の角度を計測するエンコーダ、およびそれらの周辺回路を有する。記憶部207は、半導体メモリや各種の記憶媒体により構成され、レーザースキャナ100の動作に必要なプログラム、設定データ、レーザースキャンの結果得られる三次元点群データを記憶する。
【0028】
受信部208は、外部の機器からの通信を受信する。通信は、無線LAN回線やBluetooth(登録商標)が利用されるが、電話回線、各種の無線回線、光通信回線等であってもよい。CPU209は、レーザースキャナ100の動作全体を統括する。また、後述する処理を実行する。
【0029】
この例において、レーザースキャナ100のレーザースキャンの予定範囲に入る可能性のある人は、レーザースキャナ100のスキャン動作の一時停止および再開を指示できる携帯機器を携帯している。この携帯機器は、専用のものでもよいし、当該機能を実行するプログラムをインストールしたスマートフォンでもよい。
【0030】
例えば、レーザースキャナ100のスキャン範囲で何かの作業を行う作業員がいるとする。この場合、当該作業員に上記の携帯機器を携帯させる。そして、当該作業員がスキャン警告光を認識したら、上記の携帯機器を操作し、レーザースキャナ100のスキャン動作を一時停止させる。もちろん、レーザースキャン100の一時停止を行わずに、当該作業員がレーザースキャンの予定範囲から退避する場合も有り得る。
【0031】
(処理の一例)
以下、処理の手順の一例を示す。以下に示す処理を実行するプログラムは、記憶部207または適当な記憶領域や記憶媒体に記憶され、CPU209により実行される。このプログラムをサーバに記憶させ、そこからダウンロードして利用する形態も可能である。
【0032】
図5は、処理の一例の手順を示すフローチャートである。レーザースキャナ100によるレーザースキャンが開始されると(ステップS101)、警告処理が開始される(ステップS102)。この例では、図2,3に示す状態でスキャン警告光120がレーザースキャナ100から放射(照射)される。
【0033】
例えば、スキャン警告範囲の角度範囲を、レーザースキャン光を起点として42°とする。また、スキャン速度は30秒で本体103が水平方向に半回転する速度であるとする。この場合、1秒で6°つまりω=6°/秒の角速度で水平方向のスキャンが行なわれることになる。
【0034】
上記の場合のスキャン警告範囲の角度範囲は、42°であるので、水平スキャンの角速度がω=6°/秒であるとすると、スキャン警告範囲の時間範囲が42°/6°=7秒となる。これは、レーザースキャナ100のスキャン光が届く範囲にいる人が、スキャン警告光を認識した時点から7秒後に、スキャン光の照射に遭遇することを意味する。
【0035】
この場合、警告光を認識した人は、7秒以内にレーザースキャン光が当たらない場所に退避する、あるいはレーザースキャンの停止操作を行うことで、当該作業員がレーザースキャンの対象となる問題を回避できる。
【0036】
例えば、何らかの作業を行う作業員がレーザースキャナ100のスキャン動作の一時停止および再開を指示できる携帯機器を携帯しているとする。そして、当該作業員がスキャン警告光を認識した段階で当該携帯機器を操作し、レーザースキャナ100の動作の停止を指示したとする。この結果、当該携帯機器からレーザースキャナ100のレーザースキャンを停止させる停止信号が出力される。
【0037】
レーザースキャナ100が、上記の停止信号を受信すると(ステップS103)、スキャン動作を停止する(ステップS104)。そして、当該作業員の退避が終了した後、上記携帯機器が操作され、スキャン開始の信号が送信され、それをレーザースキャナ100が受信すると(ステップS105)、スキャンが再開される(ステップS106)。なお、停止信号を受け、スキャンを停止してから規定の期間(例えば、10秒~20秒程度)が経過後にスキャンを自動で再開する設定も可能である。
【0038】
2.第2の実施形態
警告手段として、光でなく音を利用する形態も可能である、この場合、指向性のスピーカを用いて図2,3に示すスキャン警告光120の範囲にスキャン警告音を放射する。
【0039】
3.第3の実施形態
警告手段として、電波(スキャン警告電波)を利用する形態も可能である。図6に一例を示す。この場合、指向性のアンテナを用いてスキャン警告電波130がレーザースキャナ100から放射される。放射の範囲は、図2,3のスキャン警告光120の場合と同じである。このスキャン警告電波120が、レーザースキャナ100の周囲にいるユーザ140が携帯する携帯機器(例えば、スマートフォン)150で受信されると、当該携帯機器150が警告の報知を行う。報知の方法としては、携帯機器150の振動や携帯機器150から発せられる警告音による方法が挙げられる。
【0040】
携帯機器150がスキャン警告電波を受信した段階で、携帯機器150からレーザースキャナ100に一時停止信号の送信を行ってもよい。この信号は、無線LAN回線等を用いて送信される。レーザースキャナ100は、この一時停止信号を受信し、レーザースキャンを一時停止する。
【0041】
レーザースキャナ100のレーザースキャンの再開は、携帯機器150からの再開を指示する信号の受信、停止から予め定めた時間が経過した段階での自動再開が挙げられる。
【0042】
4.第4の実施形態
警告範囲を複数に分割し、警告の内容に重みづけを与えても良い。例えば、レーザースキャン光から20°~40°の第1の角度範囲では相対的に弱い警告が行なわれ、20°未満の第2の角度範囲では、相対的に強い警告が行なわれる。
【0043】
例えば、スキャン警告光を利用する場合において、第1の角度範囲では、0.2秒間隔のパルス発光のスキャン警告光120の放射がレーザースキャナ100から行なわれ、第2の角度範囲では、0.1秒間隔のパルス発光のスキャン警告光120の放射がレーザースキャナ100から行なわれる。警告を受けるユーザは、パルス発光の間隔の違いから、レーザースキャンの対象となるタイミングを推し量ることができる。
【0044】
上記の警告内容の重み付けとしては、スキャン警告光の強度の差、スキャン警告音の音程や音の大きさの違い、パルス発生されるスキャン警告音のパルス間隔の違い、スキャン警告電波に警報の程度の違いの情報を含ませる場合等が挙げられる。
【0045】
5.第5の実施形態
市場で入手できるレーザースキャナにスキャン警告光発光部を外付けで装着した構成も可能である。これは、スキャン警告音やスキャン警告電波を利用する場合も同様である。
【0046】
6.第6の実施形態
第1~第4の実施形態の複数を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0047】
100…レーザースキャナ、102…三脚、103…本体、104…鉛直回転部、105…光学部、106…スキャン警告光発光部、110…スキャンビーム、120…スキャン警告光、130…スキャン警告電波、140…作業員、150…携帯機器。

図1
図2
図3
図4
図5
図6