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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】床構造、建物及び梁
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/02 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
E04B5/02 C
E04B5/02 N
E04B5/02 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019143978
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021025308
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】若木 健吾
(72)【発明者】
【氏名】前田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 靖典
(72)【発明者】
【氏名】大下 薫
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬司
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-081161(JP,A)
【文献】実開昭55-157522(JP,U)
【文献】特開2005-248575(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/00 - 5/48
E04B 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎梁と、床受梁と、床版と、床版位置決め部材と、を備え、
前記床受梁は、前記基礎梁と該基礎梁に対向する基礎梁との間に架け渡されて支持され、前記床版の少なくとも一方の端部が前記床受梁に支持される床構造であって、
前記床受梁は、前記基礎梁の上端の高さよりも上方に突出する本体部と、前記床受梁の上端よりも低い位置で水平方向に突出する床受部と、を有し、
前記床版の少なくとも一方の端部が前記床受部によって支持され、
前記床受梁の上端が前記床版の上端よりも下方に位置し、
前記床版位置決め部材は、前記床版と隣接する床受梁との間、又は前記床版と壁版との間に配置される楔状部、及び、間隔をあけて配置された一対の前記楔状部を連結する連結部を有し、
前記連結部は前記楔状部の基端部を連結すると共に、前記床受梁の上端を覆うように配置され、
前記連結部の上端が前記床版位置決め部材の上端であり、前記連結部の上端の高さが、前記床版の上端の高さと同じか、前記床版の上端の高さよりも低くなるように配置されていることを特徴とする床構造。
【請求項2】
前記床受梁の断面形状はハット型である、請求項1に記載の床構造。
【請求項3】
前記床版の下端は、前記基礎梁の上端よりも高い位置にある、請求項1又は2に記載の床構造。
【請求項4】
前記床版と前記基礎梁との間に、前記床版を支持する床受部材と、該床受部材を支持する嵩上げ部材とが配置されている、請求項1~3の何れか一項に記載の床構造。
【請求項5】
前記床版を支持する床受部材と、壁版を支持する壁受け部材とが同一形状の部材である、請求項3に記載の床構造。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の床構造を備えることを特徴とする建物。
【請求項7】
請求項1に記載の床受梁としての梁であって、
断面形状がハット型であることを特徴とする梁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床構造、建物及び梁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の床構造として、例えばALCパネル等の床版を、布基礎等の立ち上がり部の天面から下方に吊下げるように保持された床受梁によって下方から支持するものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、布基礎の天面上に載置された中央連結材と、この中央連結材の両端から基礎の両側面に沿ってそれぞれ下方に延びる一対の立部材と、各立部材の下端から外側へ突出する受部材と、からなる梁受金物を備え、基礎の両側に延在してALCパネル等の床版を下方から支持する床受梁の端部を、上記梁受金物の各受部材上に接合する構成とした床構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-3930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような床構造にあっては、床版を受ける床受梁が、基礎梁の天面から下方に吊下げられるように保持されているため、床下空間が当該床受梁によって分断されてしまい、設備点検や配管敷設のための十分な空間を床下に確保することが困難となっていた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、設備点検や配管敷設のための十分な床下空間を確保可能な床構造、建物及び梁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る床構造は、基礎梁と、床受梁と、床版と、を備え、
前記床受梁は、前記基礎梁と該基礎梁に対向する基礎梁との間に架け渡されて支持され、前記床版の少なくとも一方の端部が前記床受梁に支持される床構造であって、
前記床受梁は、前記基礎梁の上端の高さよりも上方に突出する本体部と、前記床受梁の上端よりも低い位置で水平方向に突出する床受部と、を有し、
前記床版の少なくとも一方の端部が前記床受部によって支持されることを特徴とするものである。
【0008】
なお、本発明の床構造にあっては、前記床受梁の断面形状はハット型であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の床構造にあっては、前記床構造はさらに床版位置決め部材を有し、
前記床版位置決め部材は、前記床版と隣接する床受梁との間、又は前記床版と壁版との間に配置される楔状部を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明の床構造にあっては、前記床版の下端は、前記基礎梁の上端よりも高い位置にあることが好ましい。
【0011】
また、本発明の床構造にあっては、前記床受梁の上端が前記床版の上端よりも下方に位置し、
前記床版位置決め部材は、間隔をあけて配置された一対の前記楔状部を連結する連結部を有し、前記連結部の上端の高さが、前記床版の上端の高さと同じか、前記床版の上端の高さよりも低くなるように配置されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の床構造にあっては、前記床版と前記基礎梁との間に、前記床版を支持する床受部材と、該床受部材を支持する嵩上げ部材とが配置されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の床構造にあっては、前記床版を支持する床受部材と、壁版を支持する壁受け部材とが共通の部材であることが好ましい。
【0014】
また、本発明の建物は、上記の何れかの床構造を備えることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の梁は、上記床受梁としての梁であって、断面形状がハット型であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、設備点検や配管敷設のための十分な床下空間を確保可能な床構造、建物及び梁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態としての床構造の断面図である。
図2図1の床構造における床版と床受梁と床版位置決め部材とを示す斜視図である。
図3図1の床構造における床受梁を単独で示す斜視図である。
図4】(a)は、図3に示す床受梁の正面図であり、(b)は平面図であり、(c)は左側面図である。
図5】(a)~(c)は、床受梁の変形例を示す側面図である。
図6】(a)~(g)は、床受梁の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図において共通する構成には同一の符号を付している。
【0019】
図1は、本実施形態の床構造1を備える建物100の縦断面を示している。
【0020】
ここで、一例としての建物100の全体構成について説明する。建物100は、例えば、鉄骨造の骨組みを有する2階建ての住宅とすることができる。また、建物100は、地盤に固定された基礎構造体と、当該基礎構造体上に固定される上部構造体と、で構成される。
【0021】
基礎構造体は、上部構造体の下方に位置し、その骨組みを支持するものであり、例えば、鉄筋コンクリート造の基礎とすることができる。上部構造体は、複数の柱と、柱間に架設された複数の梁とで構成される骨組み(躯体)と、この躯体の外周側に配置される外壁と、躯体を構成する梁上に配置される各階の床及び屋根と、を備える構成とすることができる。なお、骨組みを構成する部材は、予め規格化(標準化)され、予め工場にて製造されたのち建築現場に搬入されて組み立てられるものとすることができる。
【0022】
建物100は、建物100の外周を取り囲む外壁101(外周壁)を備え、外壁101は、例えば軽量気泡コンクリート(ALC)等からなる複数のパネル状の外壁材102と、断熱層を構成する断熱材103、及び内層材104等を有する構成とすることができる。
【0023】
図1に示すように、本実施形態における床構造1は、基礎梁10と、床受梁20と、床版30と、床版位置決め部材40とを備える。なお、図2は、床構造1における床受梁20と床版30と床版位置決め部材40を示した斜視図である。また、図3は、床構造1における床受梁20を単独で示す斜視図であり、図4(a)、(b)、及び(c)はそれぞれ、正面図、平面図、左側面図(端面図)である。
【0024】
本例の基礎梁10は、基礎の立ち上がり部で構成することができる。なお、基礎梁10は図示例のような基礎の立ち上がり部に限られるものではなく、例えば、断面T字状の布基礎の立ち上がり部で構成してもよいし、他の形態であってもよい。
【0025】
床受梁20は、基礎梁10と、基礎梁10に対向する基礎梁10との間に架け渡されて支持される長尺部材とすることができる。なお、床受梁20は対向する基礎梁10の天面10a上に直接載置してもよいし、後述する嵩上げ部材60のような他の部材を介して基礎梁10に支持されていてもよい。また、床受梁20は鉄鋼等の金属製の部材とすることができるが、材料は特に限定されず、金属以外でもよい。また、床受梁20を鉄鋼等の金属製の部材とする場合は、耐食性の高い溶融亜鉛-アルミニウム-マグネシウム合金めっき鋼板製とすることが望ましく、これによれば、部材の腐食を抑制して、耐久性を高めることができる。
【0026】
床受梁20は、基礎梁10の上端(本例では天面10a)の高さよりも上方に突出する本体部21と、床受梁20の上端(本例では、天板部21aの天面21t)よりも低い位置で水平方向に突出する一対の床受部22、23と、を有する。
【0027】
本例の床受梁20は、床受梁20の長手方向に垂直な断面(横断面)の形状がハット型となっている。ここで、「ハット型」とは、図1~4に示すように、中央の天板部21aと、天板部21aの両端部から下方に延びる一対の側板部21b、21cと、一対の側板部21b、21cのそれぞれの下端部から外側に突出する一対のフランジ状の床受部22、23と有する形状を意味し、各部に部分的な凹凸が形成されている形状も含むものである。なお、本例の床受梁20は、図4(c)に示すように端面の形状が左右対称となっているが、左右対称でなくてもよい。図1~4に示す床受梁20では、天板部21aと一対の側板部21b、21cとが本体部21を構成している。なお、図6(a)、(b)、(e)、(f)、(g)にそれぞれ示す床受梁20d、20f、20h、20i、20jは、横断面の断面形状がハット型となる例である。
【0028】
床版30は、少なくとも一方の端部30aを、床受梁20の床受部22、23により支持される。なお、床版30の両方の端部30a、30bを、対向する一対の床受梁20の床受部22、23により支持するようにしてもよい。床版30は、例えば、軽量気泡コンクリート(ALC)等からなるパネル形状(矩形板状)の床材とすることができるが、材料、形状等は特に限定されない。
【0029】
図1に示す床構造1において、床版30の一方の端部30aは床受梁20の床受部22に支持され、他方の端部30bは他の床受部材50によって支持されている。なお、床版30の他方の端部30bを基礎梁10の天面10a上に載置する構成としてもよい。つまり、床版30の他方の端部30bは基礎梁10により直接支持されていてもよい。また、床版30の他方の端部30bを他の床受梁20の床受部22、23で支持してもよい。
【0030】
ここで、床受部材50は、水平に延びる平坦な床受部51と、床受部51の一端部から立ち上がる側壁部52とを有する。床版30の端部30bは、床受部材50の床受部51に載置されている。床受部51は、嵩上げ部材60を介して基礎梁10によって下方から支持されている。なお、床受部材50及び嵩上げ部材60の形状は適宜変更可能である。
【0031】
本例の床受部材50は、外壁材102を支持する壁受け部材70と同一形状(共通の部材)とし、部材の共通化を図っている。これにより、部品数を削減することができるので、部品の製造コストを低減することができる。なお、本例では壁受け部材70と基礎梁10の間に嵩上げ部材60が配置されている。
【0032】
嵩上げ部材60は、基礎梁10の天面10aと床受部材50の床受部51の下面との間に配置され、基礎梁10と床受部材50との間に換気用の通気路を形成することができる形状であることが好ましい。本例では、床受部材50よりも長さの短い複数の嵩上げ部材60を、床受部材50の長手方向に間隔をあけて配置する構成としており、隣り合う嵩上げ部材60と嵩上げ部材60との間の空間が換気用の通気路となる。このような構成により、基礎の一部に換気用の開口を設ける場合に比べて、広い範囲で連続的な換気用の通気路を形成することができる。なお、本例の嵩上げ部材60は、金属製の角パイプ部材で構成されているが、その材料及び形状は適宜変更可能である。嵩上げ部材60を金属製の部材とした場合、樹脂製の部材に比べて耐久性が高いため長期の使用に適しているという利点がある。
【0033】
床受部材50の側壁部52と、床版30との間には、位置決め部材80が配置されている。位置決め部材80は、基端側に比べて先端が細く(厚みが薄く)なる楔状部81と、床受部材50の側壁部52の上端に係合する係合部82とを備える。楔状部81は、床版30と隣接する床受部材50の側壁部52との間に先端側から差し込まれて、床版30と側壁部52との間隔を押し広げるように配置される。このような楔状部81を有する位置決め部材80及び床版位置決め部材40によって、床版30の位置決めを行うことができる。
【0034】
床版位置決め部材40は、床版30と隣接する床版30との間、床版30と隣接する床受梁20との間、又は、壁版(外壁材102)と床版30との間に配置され、床版30の位置決めを行う部材である。床版位置決め部材40によって、床版30の位置ずれを防止することができる。なお、壁版とは、外壁101を構成する外壁材102に限らず、例えば、屋内にある界壁を構成する壁材等も含む。
【0035】
床版位置決め部材40は、少なくとも1つの楔状部41を有する。楔状部41は、基端側に比べて先端側が細く(厚みが薄く)なっている。図1、2に示すように、楔状部41は、例えば、床版30と隣接する床受梁20の本体部21等の部材との間に先端側から差し込まれて、床版30と隣接する部材の間隔を押し広げるように配置される。このような楔状部41を有する床版位置決め部材40によって、床版30の位置決めを行うことができる。
【0036】
床版位置決め部材40は、例えば硬質発泡体又はゴム等の材料で形成することができ、この場合、製造コストが低く、且つ、水平振動時の床版30の破損を抑制することもできる。なお、床版位置決め部材40の材料は特に限定されない。図1、2に示す床版位置決め部材40は、相互に間隔をあけて平行に配置された一対の楔状部41と、当該一対の楔状部41の基端部を連結する連結部42とで構成されている。図1に示すように、連結部42は、設置された状態において、床受梁20の天板部21aによって支持される。なお、床版位置決め部材40の形状は適宜変更可能であり、例えば、一対の楔状部41を連結部42で連結せずに、それぞれ図1に示す位置決め部材80のような形状を有する単独の部材としてもよい。また、床版位置決め部材40は必須の構成ではなく、例えば、床版30と床受梁20の床受部22、23とをボルト等の締結具で締結すること等により、床版30を床受梁20に固定するようにしてもよい。
【0037】
本実施形態の床構造1にあっては、対向する一対の基礎梁10の間に架け渡され、基礎梁10の上端の高さよりも上方に突出する本体部21を有する床受梁20と、床受梁20の上端(天板部21aの天面21t)よりも低い位置で水平方向に突出する床受部22、23によって支持される床版30とを備えている。このような構成により、床下空間Sが床受梁20によって分断されないため、設備点検や配管敷設のための十分な床下空間Sを確保することができる。
【0038】
ここで、床版30の下端(下面30d)は、基礎梁10の上端(天面10a)よりも高い位置にあることが好ましい。このような構成により、床版30と基礎梁10との間に通気用の空間(通気路)を形成することができる。また、床版30全体が、基礎梁10よりも上方に位置することで、床下空間Sをより広く確保することができる。
【0039】
同様に、床受梁20の下端(床受部22、23の下面)も、基礎梁10の上端(天面10a)よりも高い位置にあることが好ましい。すなわち、床受梁20全体が基礎梁10よりも上方に位置することで、床下空間Sをより広く確保することができる。
【0040】
また、本実施形態の床構造1のように、床受梁20が基礎梁10の天面10aよりも上方で基礎梁10によって下方から支持されている場合には、床受梁20が基礎梁10の天面10aから吊り下げられるように保持される場合に比べて、床受梁20が振動し難くなる。これにより、床受梁20が振動することによる騒音の発生を抑制することができるとともに、床受梁20の振動を抑制するための機構等も不要になり、コストも低減することができる。
【0041】
また、本実施形態の床構造1では、床受梁20の上端(天板部21aの天面21t)が床版30の上端(天面30c)よりも下方に位置しているため、床版位置決め部材40を床版30よりも突出しないように配置することが容易となる。すなわち、床版位置決め部材40の連結部42の上端(天面42a)の高さは、床版30の上端(天面30c)の高さと同じか、当該床版30の上端の高さよりも低くなるように配置されていることが好ましい。このように床版位置決め部材40が床版30の上方に突出しないようにすることで、床版30上方に配置される床断熱材等と干渉し難くなるため仕上げ等の施工が容易となる。なお、本例では、連結部42の天面42aが、床版30の天面30cと同一平面上に位置するように構成されており、これにより、上記仕上げ等の施工がより容易となる。
【0042】
ここで、床受梁20の上端から下端までの高さは、床版30の厚さよりも小さくなっていることが好ましい。これによれば、床下空間Sを広く確保し易くなり、また、床版位置決め部材40を配置する空間も確保し易くなる。
【0043】
また、床受部22、23は、床受梁20の下端部に設けられていることが好ましく、これによれば、床受梁20が床版30の下方に大きく突出し難くなるため、床下空間Sを広く確保し易くなる。
【0044】
また、本実施形態の床構造1では、図2に示すように床版30と床版30との間に床受梁20を配置している。これにより、床受梁20に直接柱を接合し易くなり、床版30に柱を通すための切欠き加工等を行う必要がなくなるため、施工の手間を大幅に削減することが可能となる。また、床受梁20に孔を設けておけば、床を貫通する設備配線・配管スペースに利用することができ、床版30を切削加工する必要がないので施工の手間を削減することができる。
【0045】
また、本実施形態の床構造1では、床版位置決め部材40を用いて床版30の位置決めを行う乾式工法を採用しているため、モルタルで床版30の位置決めを行う湿式の工法に比べて施工管理が容易であり、且つ、工期を短縮することができる。また、床版30と基礎梁10との間に通気路を形成することも容易となる。
【0046】
また、本実施形態の床構造1では、外壁材102等の壁版を支持する壁受け部材70から独立した床受梁20、床受部材50及び嵩上げ部材60を用いて床版30を支持することで、壁版の高さに影響を及ぼすことなく床版30の高さを所望の高さに設定することができる。
【0047】
また、本実施形態においては、床受梁20を金属製の一枚の板を折り曲げ加工するだけで形成することができる形状としている。このような構成により、床受梁20の製造過程で溶接又はボルト締結等の作業が不要となり、床受梁20の製造コストを低減することが可能となる。
【0048】
図5(a)~(c)及び図6(a)~(g)は、図1~4に示す床受梁20の変形例としての床受梁20a~20jの端面図である。なお、上述した床受梁20と基本的な機能が同一である部分は、図中、同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
図5(a)に示す床受梁20aは、H形鋼の下側フランジ21eを両側に伸ばした形状である。具体的に、床受梁20aは、水平方向に延びる天板部21a(上側フランジ)と、天板部21aの中心から垂下するウェブ21dと、ウェブ21dの下端に連なり、天板部21aと平行な下側フランジ21eとを有する。天板部21aよりも水平方向にそれぞれ突出する下側フランジ21eの両端部が床受部22、23となる。
【0050】
図5(b)に示す床受梁20bは、角パイプ部材で構成される本体部21の下面に平板24(平坦な矩形板状の長尺部材)を溶接等により固定したものである。具体的に、角パイプ部材で構成される本体部21は、中央の天板部21aと、天板部21aの両端部から下方に垂下する一対の側板部21b、21cと、一対の側板部21b、21cの下端を連結する底板部21fとを有する。また、底板部21fに固定された平板24の両端部が床受部22、23となる。
【0051】
図5(c)に示す床受梁20cは、角パイプ部材で構成される本体部21の両側面にそれぞれ断面L字状のアングル材25の垂直部を溶接等により固定したものである。各アングル材25の水平部が床受部22、23となる。
【0052】
図6(a)に示す床受梁20dはハット型の一例である。床受梁20dは、中央の天板部21aと、天板部21aの両端部から下方に向けて斜めに延びる一対の側板部21b、21cと、一対の側板部21b、21cのそれぞれの下端部から外側に延びる一対の下側水平部26aと、下側水平部26aの外端部から垂直に立ち上がる垂直部26bと、垂直部26bの上端部から外側に向けて水平に延びる上側水平部26cとを有する。一対の上側水平部26cがそれぞれ床受部22、23を構成する。床受梁20dを構成する金属製の板の折り曲げ等により床受部22、23に連続する下側水平部26a及び垂直部26bを形成することにより、床受部22、23を補強することができ、床受梁20dの長手方向の剛性を高めることができる。
【0053】
図6(b)に示す床受梁20eは、ハット型の一例であり、それぞれのフランジ状の床受部22、23の外端部から垂下する垂直部27aと、垂直部27aの下端から内側に延びる水平部27bとを有する。床受梁20eを構成する金属製の板の折り曲げ等により床受部22、23に連続する垂直部27aと水平部27bを形成することにより、床受部22、23を補強することができ、床受梁20eの長手方向の剛性を高めることができる。
【0054】
図6(c)に示す床受梁20fは、図5(a)に示す床受梁20aと同様の形状を、折り曲げた2枚の板部材28a、28bを接合して形成したものである。
【0055】
図6(d)に示す床受梁20gは、図6(c)に示す床受梁20fの天板部21aの両端部をそれぞれ下方に折り曲げて垂直部21gを形成したものである。これにより、天板部21aを補強することができ、床受梁20gの長手方向の剛性を高めることができる。
【0056】
図6(e)に示す床受梁20hは、ハット型の一例であり、天板部21aの中央に、下方に突出する補強リブ21hが天板部21aの折り曲げにより形成されている。これにより、天板部21aを補強することができ、床受梁20hの長手方向の剛性を高めることができる。
【0057】
図6(f)に示す床受梁20iは、ハット型の一例であり、図6(e)に示す床受梁20hの一対の側板部21b、21cを斜めに傾けた形状の一例である。
【0058】
図6(g)に示す床受梁20jは、ハット型の一例であり、図4(c)に示す床受梁20の天板部21aの幅を小さくした形状の一例である。
【0059】
本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲で記載された内容を逸脱しない範囲で、様々な構成により実現することが可能である。例えば、上記実施形態では、建物100の一階床の床構造1として説明したが、これに限られず、2階以上の床を支持する梁(躯体)を基礎梁として用いることで、2階以上の床にも採用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1:床構造
10:基礎梁
10a:基礎梁の天面(基礎梁の上端)
20:床受梁
21:本体部
21a:天板部
21b、21c:側板部
21d:ウェブ
21e:下側フランジ
21f:底板部
21g:垂直部
21h:補強リブ
21t:天板部の天面(床受梁の上端)
22、23:床受部
24:平板
25:アングル材
26a:下側水平部
26b:垂直部
27a:垂直部
27b:水平部
28a、28b:板部材
30:床版
30a、30b:床版の端部
30c:床版の天面(床版の上端)
30d:床版の下面(床版の下端)
40:床版位置決め部材
41:楔状部
42:連結部
42a:連結部の上端
50:床受部材
51:床受部
52:側壁部
60:嵩上げ部材
70:壁受け部材
80:位置決め部材
81:楔状部
82:係合部
100:建物
101:外壁
102:外壁材(壁版)
103:断熱材
104:内層材
S:床下空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6