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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ドレン中和器
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/66 20230101AFI20230628BHJP
【FI】
C02F1/66 510Q
C02F1/66 521D
C02F1/66 530B
C02F1/66 530K
C02F1/66 530P
C02F1/66 530Q
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019223777
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021090922
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】小島 輝明
(72)【発明者】
【氏名】星野 健太
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-137249(JP,A)
【文献】特開2006-175301(JP,A)
【文献】特開2011-046568(JP,A)
【文献】特開2012-005980(JP,A)
【文献】特開2013-071114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/66
F24H 9/00 - 9/45
F24H 1/06
F24H 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレン導入管を固定するための金属製の留め具と、
前記留め具が固定可能であるドレン導入口と第1満水電極と第2満水電極を容器の上面に有し、ドレン排口を前記容器の側壁に有したドレン中和器において、
前記ドレン導入口、前記第1満水電極、前記第2満水電極の順で、これらを一方向に並べて配置し、
前記第1満水電極と前記留め具は互いの金属部分が接触する距離にあり、
前記ドレン導入口の下方には中和室と、該中和室内に中和剤とを備え、
前記ドレン導入口と前記第1満水電極の間に前記容器の外方向に向けて起立する第1起立壁を設け、
前記容器の上面を基点にした前記第1起立壁の外方向への高さは、前記ドレン導入口と前記第1満水電極のいずれの高さより高くしたことを特徴とするドレン中和器。
【請求項2】
前記第1満水電極と前記第2満水電極の間に前記容器の外方向に向けて起立する第2起立壁を備え、
前記容器の上面を基点にした前記第2起立壁の外方向への高さは、前記第1満水電極と前記第2満水電極のいずれの高さより高くしたことを特徴とする請求項1に記載のドレン中和器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、潜熱回収型給湯器に組み込まれるドレン中和器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来例として、熱交換器で発生した強酸性のドレンの中和処理を行うドレン中和器において、その容器内の水位の異常な上昇を検知するための水位検知用の満水電極を備えたものが知られている。
このドレン中和器では、容器内に中和剤を備え、この中和剤の中をドレンが通過することで中和され安全に排水できる。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-223653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このドレン中和器の前記満水電極の近傍にはドレン導入口が配置されており、前記満水電極はねじ形状を有する電極部にリード線部を友締めする構造であり、また、前記ドレン導入口はクイックファスナなどの金属製の留め具でドレン導入管を接続し固定する構造となっている。
【0005】
ドレン中和器内の中和剤の量は有限であるため、中和剤が消耗すると、中和剤の交換または補充を行うか、あるいはドレン中和器自体の交換が必要になる。また、ドレン中和器内に堆積した不純物がドレン中和器の異常水位の原因となってしまうため、不純物の除去のためにドレン中和器を清掃するかあるいはドレン中和器自体の交換が必要になる。
【0006】
ドレン中和器の交換を行う場合は、前記電極部と前記リード線部とを有する前記満水電極と、ドレン導入口に固定したドレン導入管と留め具を、それぞれドレン中和器から外し、新しいドレン中和器へ交換のあと、前記満水電極を新しいドレン中和器へ固定し、ドレン導入管を留め具にてドレン導入口へ固定する作業を行う必要がある。
この時、前記満水電極と前記金属製の留め具が接触し短絡してしまうと、誤作動を起こすなどの満水電極の作動が安定しない問題となる。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決すべく検討なされたもので、その目的は留め具と満水電極の接触を防止して、メンテナンス性を向上できるドレン中和器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1では、ドレン導入管を固定するための金属製の留め具と、前記留め具が固定可能であるドレン導入口と第1満水電極と第2満水電極を容器の上面に有し、ドレン排口を前記容器の側壁に有したドレン中和器において、前記ドレン導入口、前記第1満水電極、前記第2満水電極の順で、これらを一方向に並べて配置し、前記第1満水電極と前記留め具は互いの金属部分が接触する距離にあり、前記ドレン導入口の下方には中和室と、該中和室内に中和剤とを備え、前記ドレン導入口と前記第1満水電極の間に前記容器の外方向に向けて起立する第1起立壁を設け、前記容器の上面を基点にした前記第1起立壁の外方向への高さは、前記ドレン導入口と前記第1満水電極のいずれの高さより高くしたことを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2では、前記第1満水電極と前記第2満水電極の間に前記容器の外方向に向けて起立する第2起立壁を備え、前記容器の上面を基点にした前記第2起立壁の外方向への高さは、前記第1満水電極と前記第2満水電極のいずれの高さより高くしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1によれば、前記ドレン導入口と前記第1満水電極の間に容器の外方向に向けて起立する第1起立壁を設けたので、メンテナンスなどでドレン中和器を交換する場合に、クイックファスナなどの留め具を取り付ける際や、前記第1満水電極を取り付ける際に、前記留め具と前記第1満水電極との電気的な接触を防止でき、従って接触による誤作動を防止することができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0011】
本発明の請求項2によれば、前記第1満水電極と前記第2満水電極の間に容器の外方向に向けて起立する第2起立壁を設けたので、メンテナンスなどでドレン中和器を交換する場合に、前記第1満水電極および前記第2満水電極を容器に固定する場合に、前記第1満水電極と前記第2満水電極との電気的な接触を防止でき、従って接触による誤作動を防止することができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1における給湯器の概略説明図
図2】本発明の実施形態1におけるドレン中和器の縦断面図
図3】本発明の実施形態1におけるドレン中和器の上面の斜視図
図4】本発明の実施形態1におけるドレン中和器の平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係るドレン中和器の実施の形態を図面に基づいて説明する。
1は本実施形態の潜熱回収型熱源機としての潜熱回収型給湯機、2は石油等の燃料を燃焼させるバーナ、3はバーナ2に燃焼用の空気を供給する送風機、4はバーナ2の上方に備えられた燃焼室、5は燃焼室4内に収容された熱交換部である。
【0014】
熱交換部5は、バーナ2の燃焼により発生した燃焼ガスから顕熱を回収し一次受熱管6を流通する被加熱流体としての水を加熱するフィンチューブ式の一次熱交換器7と、一次熱交換器7を通過した燃焼ガスから潜熱を回収し二次受熱管8を流通する被加熱流体としての水を加熱する二次熱交換器9とから構成されており、一次熱交換器7、二次熱交換器9の順に通過した燃焼ガスは排気口10より潜熱回収型給湯機1外に排気される。
【0015】
11は燃焼ガス中の水蒸気が二次熱交換器9の二次受熱管8を流通する水と熱交換して露点以下の温度となることにより生成される強酸性のドレンを回収するドレン受けで、二次熱交換器9の下方に配置されているものである。
また、12はドレン受け11で回収されたドレンをドレン中和器13に導くドレン導入管である。
【0016】
14は内部に炭酸カルシウムからなる中和剤15を充填して収容する略直方体の容器で、この容器14の上面14aには筒状のドレン導入口17と一対の満水電極18を有している。
この満水電極18はドレン導入口17に近い第1満水電極19と、第1満水電極19よりも遠い第2満水電極20を、上面14aに略垂直に貫通して容器14内に延設することで、容器14内のドレンの水位を検知し、ドレンが所定の水位に到達したときに容器14から溢れること防止するために潜熱回収型給湯機1を停止する。
【0017】
ここで、図2に基づいて、留め具100の固定について説明する。
クイックファスナなどの金属製の留め具100は、ドレン導入口17とドレン導入管12との接続位置に上面14aの面に対して水平方向に差し込んで固定する。
具体的には、ドレン導入口17の上端にフランジ部を、ドレン導入管12の端部付近に鍔部をそれぞれ設けてあり、フランジ部の下側と鍔部の上側とを留め具100で押えて軸方向への抜けを防止する。
【0018】
次に、図3に基づいて満水電極の構成を説明する。
第1満水電極19は、ねじ頭部19bとねじ形状のねじ部19cを有する電極部19aと、リード線被覆部19eと金属製のリード線端子部19fを有するリード線部19dとを備え、ねじ部19cを上面14aの外側から内側へねじ込み固定する。
第2満水電極20についても第1満水電極19に準じた構成となる。
【0019】
図4は、第1満水電極19と留め具100を固定した一実施例である。
第1満水電極19を上面14aへ固定すると、金属部分であるリード線端子部19fの位置は、電極部19aを締めきった位置で決定される。
【0020】
これにより、第1満水電極19の金属部分であるリード線端子部19fと、金属製の留め具100は、接近して配置されており、それぞれの固定のありようによっては互いの金属部分が接触する距離にある。
【0021】
しかし、本発明では、ドレン導入口17と第1満水電極19の間に容器14の外方向に向けて起立する第1起立壁91を設けてあり、容器14の上面14aを基点にした第1起立壁91の外方向への高さは、ドレン導入口17と第1満水電極19のいずれの高さより高くした。
また、第1起立壁91の長さは、ねじ部19cの軸中心から、リード線被覆部19eとリード線端子部19fの境目までの長さの倍程度の長さを有している。
【0022】
このため、ドレン中和器13を交換した場合で、ドレン導入管12を固定するクイックファスナなどの留め具100をドレン導入口17に固定し、第1満水電極19を容器14に固定した際に、留め具100と第1満水電極19のリード線端子部19fとの接触を防止でき、従ってこれらの接触による誤作動を防止することができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0023】
また、第1満水電極19と第2満水電極20との間に容器14の外方向に向けて起立する第2起立壁92を設けてあり、容器14の上面14aを基点にした第2起立壁92の外方向への高さは、第1満水電極19と第2満水電極20のいずれの高さより高くした。
また、第2起立壁92の長さは、第1起立壁91の長さに準じた長さとしている。
このため、ドレン中和器13を交換する場合で、第1満水電極19および第2満水電極20を容器14に固定する際に、第1満水電極19のリード線端子部と第2満水電極20のリード線端子部との接触を防止でき、従ってこれらの接触による誤作動を防止することができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0024】
31は容器14の一側壁23に水平方向に延設された筒状のドレン排出口で、容器14内に貯留され中和されたドレンを中和器13外に排出させる。
【0025】
32はドレン排出口31に接続されドレン中和器13から排出される中和後のドレンを外部に排水するドレン排水管、33は給水源から供給される水を熱交換部5に流通させる給水管、34は熱交換部5で加熱された湯を流通させ、所定箇所に設けられた給湯栓(図示せず)に湯を供給する給湯管、35は給水管33から分岐した給水バイパス管である。
【0026】
36は給湯管34と給水バイパス管35との接続部に設けられ、給湯管34からの湯と給水バイパス管35からの水とを混合し、その混合比を可変できる混合弁、37は給水管33に設けられ給水温度を検出する給水温度センサ、38は給水管33に設けられ流量を検出する流量センサ、39は給湯管34に設けられ熱交換部5で加熱された湯の温度を検出する熱交出口温度センサ、40は混合弁36より下流側の給湯管34に設けられ混合弁36で混合された湯の温度を検出する給湯温度センサである。
【0027】
41は潜熱回収型給湯機1の操作指示を行うリモコンで、リモコン41には、潜熱回収型給湯機1の運転のオンオフを指示する運転スイッチ42と、給湯温度を設定するための給湯温度設定スイッチなどの操作部43と、潜熱回収型給湯機1の状態や給湯設定温度などを表示する表示部44を備えている。
【0028】
45はマイクロコンピュータを主体として、この潜熱回収型給湯機1の満水電極18、給水温度センサ37、流量センサ38、熱交出口温度センサ39、給湯温度センサ40の信号とリモコン41からの信号を受け、送風機3、混合弁36等の各アクチュエータの駆動を制御する制御手段であり、この制御手段45は、潜熱回収型給湯機1の運転時間を積算して記憶するタイマ46を有している。
このタイマ46が所定積算時間をカウントすることで、中和剤15が消耗して無くなる前に表示部44に中和剤15の交換または補充を促す表示を実施する。
【0029】
次に、この一実施形態の潜熱回収型給湯機1の動作について説明する。
リモコン41の運転スイッチ42がオン状態のときに、所定箇所に設けられた給湯栓(図示せず)が開栓され、流量センサ38が最低作動流量以上の流量を検出して燃焼要求が発生したと制御手段45が判断すると、送風機3および燃料ポンプ(図示せず)を駆動させバーナ2での燃焼を開始させるものである。
【0030】
バーナ2の燃焼により発生した燃焼ガスは、一次熱交換器7を流通し、一次熱交換器7を通過した後、二次熱交換器9を流通し、二次熱交換器9を通過した後、排気口10から潜熱回収型給湯機1外へ排出されるものである。
また、給水源から供給された水は、給水管33から供給され、給水管33から二次受熱管8に導かれ、二次受熱管8から一次受熱管6へと順に流通して、二次熱交換器9および一次熱交換器7にて燃焼ガスとの熱交換により加熱される。
そして、一次受熱管6から給湯管34へ導かれ、混合弁36の開度調整によって給湯設定温度に温調された湯が最終的に給湯栓から給湯される。
【0031】
この時、二次熱交換器9において、二次受熱管8を流通する水と燃焼ガスとが熱交換され、燃焼ガス中の水蒸気が露点以下となることにより生成されたドレンは、ドレン受け11で回収されてドレン導入管12を介してドレン中和器13のドレン導入口17に流入する。
ドレンはドレン導入口17から容器14内に落下し、容器14内に備える中和剤15によって中和され、容器14の側壁23に有するドレン排出口31からドレン中和器13外に排出され、所定箇所の下水に排水される。
また、ドレン中和器13の中和剤15はドレンの通過量に応じて徐々にドレンと反応して減少する。中和剤15は給湯機1の使用状態によって数年から10数年かけて減少し、無くなる前に中和剤15を補給するかドレン中和器13自体を交換するものである。
【0032】
ドレン中和器13内のドレンの水位は、通常時には図2の一点鎖線で示したドレン排出口31の水位を維持し、給湯機1の運転で新たに発生し、ドレン導入口17から追加された分量のドレンがドレン排出口31から順次排水される。
しかし、ドレンには燃焼空気に含まれる不純物が混入するため、長年にわたり給湯機1が使用されることで、前記不純物の堆積等のゴミ29がドレン排出口31を塞いだときには、ドレンの水位が上昇する。ドレンの水位が上昇して満水電極18まで到達した後、制御手段45は第1満水電極19と第2満水電極20の間の抵抗値が所定値以下を検出すると給湯機1の運転を停止すると共に、表示部44にドレン中和器13の異常で満水が発生していることを表示する。
【0033】
ドレン中和器13のメンテナンス時期到来の判定について説明する。
ドレン中和器13に充填される中和剤15の充填量は予め決められており、その充填量に対して中和可能な総ドレン量も中和剤(炭酸カルシウム)と水(ドレン)との化学反応式から容易に導出できる。
本実施形態では、タイマ46が所定積算時間(給湯機の運転積算時間)をカウントすることで、中和剤15が消耗して無くなる前に表示部44に中和剤15の交換または補充、あるいはドレン中和器13自体の交換といったドレン中和器13のメンテナンス時期が到来したと判断し、その旨を報知するものである。
【0034】
なお、本発明は先に説明した一実施形態に限定されるものでなく、本実施形態では、潜熱回収型給湯機1を例に挙げて説明したが、床暖房パネルやパネルコンベクタ等の放熱端末を有し、バーナで加熱した温水を循環させて暖房運転を行える潜熱回収型の温水暖房装置に適用してもよいものである。
【0035】
また、本実施形態で用いたその他の構成は一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図しておらず、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
12 ドレン導入管
13 ドレン中和器
14 容器
14a 上面
15 中和剤
17 ドレン導入口
19 第1満水電極
20 第2満水電極
23 側壁
31 ドレン排出口
50 中和室
91 第1起立壁
92 第2起立壁
100 留め具
図1
図2
図3
図4