(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】イオン移動度分析装置および蒸気試料を分析する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/622 20210101AFI20230628BHJP
【FI】
G01N27/622
(21)【出願番号】P 2019225473
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-06-17
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500107762
【氏名又は名称】ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ディー.ガードナー
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー エー.エイスマン
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン ウォルニック
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第19807699(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0151545(US,A1)
【文献】米国特許第02945951(US,A)
【文献】米国特許第06978039(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2001/0030285(US,A1)
【文献】米国特許第06144029(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0029474(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0179515(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0036977(US,A1)
【文献】米国特許第04644167(US,A)
【文献】特開2005-174619(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0038245(US,A1)
【文献】特表2011-503805(JP,A)
【文献】特開2015-072902(JP,A)
【文献】特表2017-529547(JP,A)
【文献】特表2013-531342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60-G01N 27/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気試料を受容するように構成されるマルチリングイオン源であって、前記マルチリングイオン源は一連のリングを含み、前記マルチリングイオン源の各リングはイオン化層をその内面上に含み、前記蒸気試料の少なくとも一部を帯電させ、イオン化蒸気試料を生成するように構成される、前記マルチリングイオン源、
を備え
、
さらに、前記マルチリングイオン源の下流に位置している逆電界イオン化ディスクを備える、前記蒸気試料を分析するためのイオン移動度分析装置。
【請求項2】
前記イオン化蒸気試料を前記イオン移動度分析装置の分析部に向けるように構成される前記マルチリングイオン源の下流に位置している電圧パルスを受信するための静電ゲート、
をさらに備える、請求項1に記載の前記イオン移動度分析装置。
【請求項3】
前記一連のリングの前記リングは、互いから電気的に絶縁される、請求項1に記載の前記イオン移動度分析装置。
【請求項4】
前記一連のリングの各リングは、そこを通る通路アレイを含む、請求項1に記載の前記イオン移動度分析装置。
【請求項5】
前記通路アレイは、ハニカムパターンを有する、請求項4に記載の前記イオン移動度分析装置。
【請求項6】
前記一連のリングは、軸沿いに同軸で直列に配置される、請求項1に記載の前記イオン移動度分析装置。
【請求項7】
前記一連のリングの各リングは、隣接するリングに間隙を含むように配置される、請求項1に記載の前記イオン移動度分析装置。
【請求項8】
前記逆電界イオン化ディスクは、前記静電ゲートの上流に位置している、請求項
2に記載の前記イオン移動度分析装置。
【請求項9】
前記逆電界イオン化ディスクは、イオン化コーティングを含む上流対向面を備える、請求項
1に記載の前記イオン移動度分析装置。
【請求項10】
前記逆電界イオン化ディスクは、そこを介してエアバッファガスを通すように構成されるアパーチャアレイを含む、請求項
1に記載の前記イオン移動度分析装置。
【請求項11】
前記逆電界イオン化ディスクは、前記一連のリングの直径に等しい直径を有する、請求項
1に記載の前記イオン移動度分析装置。
【請求項12】
前記一連のリングの各リングは、約2mm厚である、請求項1に記載の前記イオン移動度分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、イオン移動度分析装置に関し、より具体的には特にイオン移動度分析装置のためのイオン源に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな装置が、イオン移動度分析装置の分野において知られている。具体的に、装置及び方法は、気相分子をイオン化し、電界を通してそれらを検出器に駆動することが知られている。イオン化源と検出器との間の所定の空間を横断するのにイオンが必要する時間は、イオン構造の特性であり、元の分子の同定についての情報を提供する。
【0003】
従来の方法及びシステムは、一般に、それらの意図された目的には十分であるとみなされている。しかしながら、改善された信頼性及び再現性を有するイオン化部についての必要性が当該技術に依然としてある。また、経済的に実現可能である、これらのような改善及び構成要素についての必要性が当該技術に相変わらずある。本開示は、これらの残存する課題のうちの少なくとも1つに対する解決策を提供することができる。
【発明の概要】
【0004】
蒸気試料を分析するためのイオン移動度分析装置は、蒸気試料を受容するためのマルチリングイオン源を含み、その中でマルチリングイオン源は、一連のリングを含み、マルチリングイオン源の各リングは、その内面上にイオン化層を含み、このイオン化層は、蒸気試料の少なくとも一部を帯電させ、イオン化蒸気試料を生成する。
【0005】
イオン移動度分析装置は、イオン化蒸気試料をイオン移動度分析装置の分析部に向けるために、マルチリングイオン源の下流に位置している電圧パルスを受信する静電ゲートを含むことができる。一連のリングは、互いから電気的に絶縁され、約2ミリメートル厚であることができる。一連のリングは、同軸で直列に配置され、等しい直径を有することができる。一連のリングの各リングは、隣接するリング間に間隙を含むことができる。
【0006】
一連のリングの各リングは、そこを通る通路アレイを含むことができる。通路アレイの各通路は、イオン化層を含むことができる。イオン化層は、ニッケル63、または同様のものを含むことができる。通路アレイは、ハニカムまたは碁盤格子または同様のパターンを有することができる。
【0007】
また、イオン移動度分析装置は、逆電界イオン化ディスクを含み、この逆電界イオン化ディスクは、一連のリングの直径に等しい、または類似した直径を有し、マルチリングイオン源の下流で静電ゲートの上流にあることができる。逆電界イオン化ディスクは、イオン化層を含む上流対向面を備えることができる。イオン化層は、ニッケルコーティングまたはニッケルホイルを備えることができる。逆電界イオン化ディスクは、そこを介してエアバッファガスを通すように構成されるアパーチャアレイを含むことができる。また、イオン移動度分析装置は、マルチリングイオン源なしで逆電界イオン化ディスクを使用することにより操作されることができる。
【0008】
イオン移動度分析装置を使用して蒸気を分析する方法は、蒸気試料を一連のイオン化リングに通し、一連のイオン化リングを使用して蒸気試料をイオン化し、イオン化蒸気を生成し、バッファガスを一連のイオン化リングの下流に位置しているイオン化ディスクに通してイオン化蒸気を緩衝し、下流のイオン移動度分析装置の分析部にイオン化蒸気の少なくとも一部を渡すことを備える。イオン化ディスクは、分析部からベータ粒子をそらすことができる。
【0009】
本開示のシステム及び方法のこれらの特徴、及び他の特徴は、図面と併せて好ましい実施形態の以下の詳細な説明から当業者により容易に明らかになるであろう。
【0010】
そのため、本発明に関連する当業者は、過度な実験なく本発明の装置及び方法を行い、用いる方法を容易に理解し、それらの好ましい実施形態は、ある特定の図面を参照して本明細書の下記に詳細に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】マルチリングイオン源を示すイオン移動度分析装置の概略図である。
【
図2】パターン化された断面を示す、
図1のイオン源の斜視図である。
【
図3】逆電界イオン化ディスクを示す、
図1の逆電界部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、同様の参照番号が本発明の同様の構造特徴または態様を特定する、図面に参照を行う。説明及び例示のために、限定ではないが、本発明に従うマルチリングイオン源を含むイオン移動度分析装置の例示的な実施形態の部分図を
図1に示し、参照記号100によって全体的に示す。本発明、またはその態様に従うマルチリングイオン源の他の実施形態を、記述される通りに
図2~3に提供する。本発明のこれらの方法及びシステムを使用して、気体試料のイオン化を改善することができる。
【0013】
ここで、
図1~3を参照して、蒸気試料102を分析するためのイオン移動度分析装置100は、この蒸気試料102を受容するマルチリングイオン源104を含み、その中でマルチリングイオン源104は、一連のリング106を含む。マルチリングイオン源104の各リング106は、蒸気試料102の少なくとも一部を帯電させ、イオン化蒸気試料112を生成するために、イオン化層108をその内面110上に含む。
【0014】
イオン移動度分析装置100は、マルチリングイオン源104の下流に位置している電圧パルスを受信し、イオン化蒸気試料112をイオン移動度分析装置100の分析部116に向ける静電ゲート114を含む。分析部116内にあると、イオン化蒸気試料112のイオンは、それらの質量電荷比及び衝突断面に基づき電界中で分離する。イオンの到達時間を検出器で測定し、飛行時間を使用してイオン同一性を決定する。
【0015】
一連のリング106の各リングは、互いから電気的に絶縁され、約2ミリメートル厚である。一連のリング106は、同軸で直列に配置され、等しい直径を各有する。一連のリング106の各リングは、隣接するリング106との間に間隙118を含む。この配置は、イオン化領域を介して電界分布を改善するため、蒸気試料102中に形成されるイオンは、放射状に分散し、分析部116に到達する可能性がより高い。
【0016】
一連のリング106の各リングは、そこを通る通路アレイ120を含む。通路アレイ120の各通路122は、イオン化層108を含む。イオン化層108は、ニッケル63コーティングまたはホイルを含むことができる。通路アレイ120は、ハニカムまたは碁盤格子または同様のパターンを有することができる。このパターンは、イオン化面を増大し、蒸気試料102の完全イオン化の確率を改善する。
【0017】
イオン移動度分析装置100は、逆電界イオン化ディスク124を含み、この逆電界イオン化ディスクは、一連のリング106の直径に等しい、または類似した直径を有し、マルチリングイオン源104の下流で、静電ゲートの上流に位置している。逆電界イオン化ディスク124は、イオン化層127を含む上流対向面126を備える。イオン化層127は、ニッケルコーティングまたはホイルであることができる。また、逆電界イオン化ディスク124は、そこを介してエアバッファガス130を通すアパーチャアレイ128を含む。イオン化ディスク124及び一連のリング106は、既存の分光器中に組み込まれ、既存のイオン化部に取って代わることができる。また、イオン移動度分析装置100は、マルチリングイオン源104なしで逆電界イオン化ディスク124を使用することによって操作されることができる。
【0018】
イオン移動度分析装置100を使用して蒸気試料102を分析する方法は、蒸気試料102を一連のイオン化リング106に通し、一連のイオン化リング106を使用して蒸気試料106をイオン化し、イオン化蒸気112を生成し、バッファガス130を一連のイオン化リング106の下流に位置しているイオン化ディスク124に通し、イオン化蒸気112の少なくとも一部をイオン移動度分析装置の分析部116に渡すことを備える。イオン化ディスク124は、ベータ粒子を分析部116からそらす。イオン化ディスク124は、イオン化面を含む。この構成は、イオン化が静電ゲートを越えて生じていた先ほどの課題を解決するのに役立つ。イオン化面に上流方向を示すことにより、ベータ粒子を分析部116からそらす。
【0019】
本開示の方法及びシステムは、上述され、図面に示される通りに、向上した信頼性及び安定性を有する優れた特性を備える分析装置を提供する。本開示の装置及び方法が実施形態を参照して示され、記述されているが、当業者は、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、それらに変更及び/または修正を行うことができることを容易に理解するであろう。