(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】無人航空機制御通信システム及び無人航空機
(51)【国際特許分類】
G05D 1/10 20060101AFI20230628BHJP
B64C 13/18 20060101ALI20230628BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230628BHJP
H04B 10/114 20130101ALI20230628BHJP
【FI】
G05D1/10
B64C13/18 Z
B64C39/02
H04B10/114
(21)【出願番号】P 2019236579
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】591094804
【氏名又は名称】東洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188662
【氏名又は名称】浅見 浩二
(74)【代理人】
【識別番号】100177895
【氏名又は名称】山田 一範
(72)【発明者】
【氏名】藤田 日出生
(72)【発明者】
【氏名】ベッカリ アブデルモウラ
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上空に位置する無人航空機と地上に設置された地上側装置とを含み、前記無人航空機と前記地上側装置との間で光信号を用いたデータ通信を実行するための無人航空機制御通信システムであって、
前記地上側装置は、
相互に区別するための識別情報をそれぞれ含んだ複数の光信号からなる光信号群を、相互の光軸間隔が徐々に広がるように概略放射状に空間に照射する光信号群照射部と、
前記無人航空機からの光信号を受光して電気信号に変換する地上側受光素子とを備え、
前記無人航空機は、
前記光信号群を構成する何れかの光信号を受光して電気信号に変換する少なくとも1の航空機側受光素子と、
前記光信号群を構成する何れかの光信号を再帰反射させるレトロリフレクタと、
前記レトロリフレクタによる再帰反射光の光路に位置し、前記再帰反射光の通過と遮断を制御可能な光シャッタと、
飛行制御を含む各種の制御を行うための航空機側制御部とを備え、
前記航空機側制御部は、
少なくとも1の前記航空機側受光素子が受光した光信号の前記識別情報を用いて前記無人航空機の位置及び姿勢状態を推定する位置・姿勢推定処理と、
前記光シャッタを制御することで前記無人航空機から前記地上側装置に対する送信データとしての通信用光信号を生成する通信用光信号生成処理とを実行する
無人航空機制御通信システム。
【請求項2】
前記無人航空機は、複数の前記航空機側受光素子を備え、
前記航空機側制御部は、複数の前記航空機側受光素子が受光した光信号の前記識別情報を用いて前記無人航空機の姿勢状態として水平面内での向きを推定する前記位置・姿勢推定処理を実行する
請求項1に記載の無人航空機制御通信システム。
【請求項3】
前記無人航空機は、中心が同一直線上に存在しない少なくとも3の前記航空機側受光素子を備え、
前記航空機側制御部は、少なくとも3の前記航空機側受光素子が受光した光信号の前記識別情報を用いて前記無人航空機の姿勢状態として傾きを推定する前記位置・姿勢推定処理を実行する
請求項1または2に記載の無人航空機制御通信システム。
【請求項4】
前記無人航空機は、
複数の前記航空機側受光素子と、
複数の前記航空機側受光素子が受光した光信号の前記識別情報の組み合わせと前記無人航空機の高さとの関係を高さ関係情報として記憶する記憶部とを備え、
前記航空機側制御部は、前記高さ関係情報を用いて前記無人航空機の位置として高さを推定する前記位置・姿勢推定処理を実行する
請求項1から3の何れかに記載の無人航空機制御通信システム。
【請求項5】
前記地上側装置は、前記地上側受光素子が前記再帰反射光から変換した前記電気信号から前記識別情報を取得する処理と、取得した前記識別情報を付加識別情報としてそれぞれさらに含んだ複数の前記光信号からなる前記光信号群を生成する処理とを実行する地上側制御部をさらに備え、
前記光信号群照射部は、前記付加識別情報をそれぞれさらに含んだ複数の前記光信号からなる前記光信号群を、相互の光軸間隔が徐々に広がるように概略放射状に空間に照射し、
前記航空機側制御部は、前記付加識別情報を、前記レトロリフレクタの位置に存在する前記航空機側受光素子が受光した光信号の前記識別情報とみなして、前記無人航空機の位置及び姿勢状態を推定する前記位置・姿勢推定処理を実行する
請求項1から4の何れかに記載の無人航空機制御通信システム。
【請求項6】
前記送信データは、前記航空機側制御部による前記無人航空機の位置及び姿勢状態の推定結果の情報を含み、
前記航空機側制御部は、前記光シャッタを制御することで前記推定結果の情報を含む前記送信データとしての前記通信用光信号を生成する前記通信用光信号生成処理を実行する
請求項1から5の何れかに記載の無人航空機制御通信システム。
【請求項7】
上空に位置し、地上に設置された地上側装置との間で光信号を用いたデータ通信を実行する無人航空機であって、
相互に区別するための識別情報をそれぞれ含んだ複数の光信号からなる光信号群であって、前記地上側装置から相互の光軸間隔が徐々に広がるように概略放射状に空間に照射された前記光信号群を構成する何れかの前記光信号を受光して電気信号に変換する少なくとも1の航空機側受光素子と、
前記光信号群を構成する何れかの光信号を再帰反射させるレトロリフレクタと、
前記レトロリフレクタによる再帰反射光の光路に位置し、前記再帰反射光の通過と遮断を制御可能な光シャッタと、
飛行制御を含む各種の制御を行うための航空機側制御部とを備え、
前記航空機側制御部は、
少なくとも1の前記航空機側受光素子が受光した光信号の前記識別情報を用いて前記無人航空機の位置及び姿勢状態を推定する位置・姿勢推定処理と、
前記光シャッタを制御することで前記無人航空機から前記地上側装置に対する送信データとしての通信用光信号を生成する通信用光信号生成処理とを実行する
無人航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上空に位置する無人航空機と地上に設置された地上側装置とを含み、無人航空機と地上側装置との間での光信号を用いたデータ通信と無人航空機の位置及び姿勢状態の推定とを実行するための無人航空機制御通信システム、及びその無人航空機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無人航空機が種々の用途で利用されている。例えば特許文献1には、無人航空機が、GPS受信機で受信した位置情報を利用してセンサ装置の上空まで移動し、当該センサ装置からセンサデータを受信する技術が開示されている。また、特許文献1には、センサデータを収集した無人航空機が所定の場所に着地し安定性を確保した状態で、近くの基地局にセンサデータを送信する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、GPSの測位誤差が要因となって、無人航空機が自身の位置を正確に把握できない場合がある。そのため、例えば無人航空機を充電する場合において、無人航空機の充電可能な地点への正確な着地が困難となる可能性がある。
【0005】
また、特許文献1に記載の技術では、無人航空機は、データを当該無人航空機が所定の地点に着地した後でないと他の装置に送信することができない。一方で、無人航空機が無線通信手段を用いて地上の装置に当該データを送信する場合でも、離着陸のための電力消費及び無線通信手段によるデータ送信のための電力消費が発生し、結果として無人航空機の飛行時間が短くなってしまう。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、無人航空機の正確な位置及び姿勢状態の推定と、簡略化した構成で無人航空機と地上装置との間の通信とを実行することが可能な無人航空機制御通信システム及び無人航空機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る無人航空機制御通信システムは、上空に位置する無人航空機と地上に設置された地上側装置とを含み、前記無人航空機と前記地上側装置との間で光信号を用いたデータ通信を実行するための無人航空機制御通信システムであって、前記地上側装置は、相互に区別するための識別情報をそれぞれ含んだ複数の光信号からなる光信号群を、相互の光軸間隔が徐々に広がるように概略放射状に空間に照射する光信号群照射部と、前記無人航空機からの光信号を受光して電気信号に変換する地上側受光素子とを備え、前記無人航空機は、前記光信号群を構成する何れかの光信号を受光して電気信号に変換する少なくとも1の航空機側受光素子と、前記光信号群を構成する何れかの光信号を再帰反射させるレトロリフレクタと、前記レトロリフレクタによる再帰反射光の光路に位置し、前記再帰反射光の通過と遮断を制御可能な光シャッタと、飛行制御を含む各種の制御を行うための航空機側制御部とを備え、前記航空機側制御部は、少なくとも1の前記航空機側受光素子が受光した光信号の前記識別情報を用いて前記無人航空機の位置及び姿勢状態を推定する位置・姿勢推定処理と、前記光シャッタを制御することで前記無人航空機から前記地上側装置に対する送信データとしての通信用光信号を生成する通信用光信号生成処理とを実行することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る無人航空機制御通信システムは、前記無人航空機が、複数の前記航空機側受光素子を備え、前記航空機側制御部が、複数の前記航空機側受光素子が受光した光信号の前記識別情報を用いて前記無人航空機の姿勢状態として水平面内での向きを推定する前記位置・姿勢推定処理を実行することを特徴としてもよい。
【0009】
また、本発明に係る無人航空機制御通信システムは、前記無人航空機が、中心が同一直線上に存在しない少なくとも3の前記航空機側受光素子を備え、前記航空機側制御部が、少なくとも3の前記航空機側受光素子が受光した光信号の前記識別情報を用いて前記無人航空機の姿勢状態として傾きを推定する前記位置・姿勢推定処理を実行することを特徴としてもよい。
【0010】
また、本発明に係る無人航空機制御通信システムは、前記無人航空機が、複数の前記航空機側受光素子と、複数の前記航空機側受光素子が受光した光信号の前記識別情報の組み合わせと前記無人航空機の高さとの関係を高さ関係情報として記憶する記憶部とを備え、前記航空機側制御部が、前記高さ関係情報を用いて前記無人航空機の位置として高さを推定する前記位置・姿勢推定処理を実行することを特徴としてもよい。
【0011】
また、本発明に係る無人航空機制御通信システムは、前記地上側装置が、前記地上側受光素子が前記再帰反射光から変換した前記電気信号から前記識別情報を取得する処理と、取得した前記識別情報を付加識別情報としてそれぞれさらに含んだ複数の前記光信号からなる前記光信号群を生成する処理とを実行する地上側制御部をさらに備え、前記光信号群照射部が、前記付加識別情報をそれぞれさらに含んだ複数の前記光信号からなる前記光信号群を、相互の光軸間隔が徐々に広がるように概略放射状に空間に照射し、前記航空機側制御部が、前記付加識別情報を、前記レトロリフレクタの位置に存在する前記航空機側受光素子が受光した光信号の前記識別情報とみなして、前記無人航空機の位置及び姿勢状態を推定する前記位置・姿勢推定処理を実行することを特徴としてもよい。
【0012】
また、本発明に係る無人航空機制御通信システムは、前記送信データが、前記航空機側制御部による前記無人航空機の位置及び姿勢状態の推定結果の情報を含み、前記航空機側制御部が、前記光シャッタを制御することで前記推定結果の情報を含む前記送信データとしての前記通信用光信号を生成する前記通信用光信号生成処理を実行することを特徴としてもよい。
【0013】
本発明に係る無人航空機は、上空に位置し、地上に設置された地上側装置との間で光信号を用いたデータ通信を実行する無人航空機であって、相互に区別するための識別情報をそれぞれ含んだ複数の光信号からなる光信号群であって、前記地上側装置から相互の光軸間隔が徐々に広がるように概略放射状に空間に照射された前記光信号群を構成する何れかの前記光信号を受光して電気信号に変換する少なくとも1の航空機側受光素子と、前記光信号群を構成する何れかの光信号を再帰反射させるレトロリフレクタと、前記レトロリフレクタによる再帰反射光の光路に位置し、前記再帰反射光の通過と遮断を制御可能な光シャッタと、飛行制御を含む各種の制御を行うための航空機側制御部とを備え、前記航空機側制御部は、少なくとも1の前記航空機側受光素子が受光した光信号の前記識別情報を用いて前記無人航空機の位置及び姿勢状態を推定する位置・姿勢推定処理と、前記光シャッタを制御することで前記無人航空機から前記地上側装置に対する送信データとしての通信用光信号を生成する通信用光信号生成処理とを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、少なくとも1以上の前記航空機側受光素子が受光した光信号の前記識別情報を用いて前記無人航空機の位置及び姿勢状態を推定し、さらに光シャッタを制御することで再帰反射光の通過と遮断して無人航空機から地上側装置に対する送信データとしての通信用光信号を生成しているので、全体の構成を簡略化することが可能となる。
【0015】
また、複数の航空機側受光素子が受光した光信号の識別情報を用いて無人航空機の姿勢状態としての水平面内での向きを推定する構成をとれば、所望の方向に向くように無人航空機の制御を行うことが可能となる。また、中心が同一直線上に存在しない少なくとも3の航空機側受光素子が受光した光信号の識別情報を用いて無人航空機の姿勢状態としての傾きを推定する構成をとれば、無人航空機の位置と姿勢状態とをより正確に制御することが可能となる。また、識別情報の組み合わせと無人航空機の高さとの関係を示す高さ関係情報を用いて無人航空機の位置としての高さを推定する構成をとれば、無人航空機の位置と姿勢状態とをより正確に制御することが可能となる。
【0016】
また、地上側受光素子が再帰反射光から変換した電気信号から識別情報を付加識別情報としてそれぞれさらに含んだ複数の光信号からなる光信号群を生成し、付加識別情報をレトロリフレクタの位置に存在する航空機側受光素子が受光した光信号の識別情報とみなして無人航空機の位置及び姿勢状態を推定する構成をとれば、受光素子を無人航空機に追加で設置せずに、より詳細な無人航空機の位置及び姿勢状態を推定することが可能となる。
【0017】
また、航空機側制御部が無人航空機の位置及び姿勢状態の推定結果の情報を含む通信用光信号を生成する構成をとれば、地上側装置も当該推定結果を把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施の形態としての無人航空機制御通信システム1の構成を表した説明図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る無人航空機30の構成例について説明するための図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る航空機側制御部340が生成する通信用光信号の例について説明する図である。
【
図4】第1の実施の形態に係る無人航空機制御通信システム1における無人航空機30の航空機側制御部340による高さ及び水平面内での向きの推定処理について説明するための図である。
【
図5】第1の実施の形態に係る無人航空機制御通信システム1における無人航空機30の航空機側制御部340による傾きの推定処理について説明する説明図である。
【
図6】第1の実施の形態に係る無人航空機30の航空機側受光素子310の配置例について説明するための図である。
【
図7】第1の実施の形態に係る航空機側制御部340による位置・姿勢推定処理のフローチャート例である。
【
図8】第2の実施の形態としての無人航空機制御通信システム2の構成を表した説明図である。
【
図9】第2の実施の形態に係る光信号群照射部110が照射する光信号のデータ構成の例について説明するための図である。
【
図10】第2の実施の形態に係る地上側制御部150による付加識別情報を含む光信号群の照射に係るフローチャート例である。
【
図11】第2の実施の形態に係る地上側制御部150による位置・姿勢推定処理のフローチャート例である。
【
図12】第2の実施の形態に係る地上側制御部150による通信用光信号生成処理のフローチャート例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施の形態に係る無人航空機制御通信システム1の例について説明する。
図1は、第1の実施の形態としての無人航空機制御通信システム1の構成を表した説明図である。
図1には、無人航空機制御通信システム1の構成例が水平方向から見た図として示されている。この
図1に示すように、無人航空機制御通信システム1は、地上側装置10と、入出力装置20と、無人航空機30とを含む。
【0020】
地上側装置10は、光信号群照射部110と、ビームスプリッタ120と、地上側受光素子130と、分離回路140と、地上側制御部150とを含む。地上側装置10は、
図1に示す例では、無人航空機30が着地するための着地面Gより下側に位置する。ここで例えば、着地面Gには無人航空機30の充電装置が備えられてもよい。
【0021】
光信号群照射部110は、相互に区別するための識別情報をそれぞれ含んだ複数の光信号からなる光信号群を、相互の光軸間隔が徐々に広がるように概略放射状に空間に照射する。ここで、識別情報は、それぞれの光信号を識別することが可能な情報である。例えば、識別情報と光信号との対応関係は、地上側装置10と無人航空機30との間で予め共有されてもよいし、識別情報が2次元座標として無人航空機30が判別できるように示されてもよい。
【0022】
また、「相互の光軸間隔が徐々に広がるように概略放射状に空間に照射する」とは、例えば、隣り合う2つの光信号の光軸に所定の間隔が存在し、光信号が進むに従って当該間隔が広がるように、概略放射状に空間に照射することをいう。
図1に示す一例の場合、光信号1101~1107は、光信号群照射部110の照射口から無人航空機30が存在する上方向に進むに従って光軸間の距離が広がっている。
【0023】
以下、第1の実施の形態では、光信号群の2次元面での概念図を用いて説明するが、勿論3次元空間における光信号群の照射でも同様である。その場合、例えば、
図1に示す光信号1101~1107の手前や奥方向にも所定の光軸間隔を空けて光信号を照射することが可能である。また、それぞれの光信号は、
図1においては、指向性を有するように描かれているが、広がりを有するように照射されてよい。なお、光信号群照射部110は、例えばDLP(Digital Light Processing)(登録商標)により実現される。その場合、光信号群照射部110は、複数の画素に対応する、相互に区別するための識別情報を含む(複数の光信号に対応する)複数の投影光をDLPにより投影する。
【0024】
ビームスプリッタ120は、無人航空機30からの光信号を分割する。ビームスプリッタ120は、分割した光信号のうちのいずれかが地上側受光素子130に入射するように配置される。地上側受光素子130は、光信号を受光して電気信号に変換する。
図1に示す一例の場合、地上側受光素子130は、ビームスプリッタ120により分割された光信号を受光して電気信号に変換する。分離回路140は、地上側受光素子130が光信号から変換した電気信号を、所定の周波数帯毎の電気信号に分離する。
【0025】
地上側制御部150は、地上側装置10全体の各種処理の制御を行う。例えば、地上側制御部150は、分離回路140が分離した複数の電気信号から所定のデータを取得する。
【0026】
入出力装置20は、種々の情報の入出力処理を行う。例えば、入出力装置20は、地上側装置10による光信号群の照射に関する情報の入力を受け付け地上側装置10へ送信し、一方で地上側装置10から無人航空機30の制御に関する情報を受信しユーザへ出力してもよい。なお、地上側装置10の光信号群照射部110は、入出力装置20による入力ではなく地上側制御部150の制御に応じて、光信号群の照射を行ってよい。
【0027】
無人航空機30は、ドローンとも称される、人が搭乗しない航空機である。無人航空機制御通信システム1の無人航空機30は、航空機側受光素子311及び312と、光シャッタ340と、レトロリフレクタ350とを含む。
【0028】
ここで、
図2も同時に参照して、無人航空機30の詳細な構成例について説明する。
図2は、第1の実施の形態に係る無人航空機30の構成例について説明するための図である。無人航空機30は、航空機側受光素子311及び312と、レトロリフレクタ320と、光シャッタ330と、航空機側制御部340と、記憶部350と、駆動部360とを含む。
【0029】
航空機側受光素子311及び312(以下、複数の航空機側受光素子を区別する必要が無い場合は、単に航空機側受光素子310と称する)は、光信号群を構成する何れかの光信号を受光して電気信号に変換する。それぞれの航空機側受光素子310は、無人航空機30のそれぞれ異なる箇所に配置され、通常それぞれ異なる光信号を受光する。
【0030】
図1に示した例の場合、航空機側受光素子311は光信号1103を、航空機側受光素子312は光信号1104を受光する。光信号1103は識別情報PX3を、光信号1104は識別情報PX4を含む。なお、無人航空機30は、
図1及び
図2に示した例では2つの航空機側受光素子311及び312を備えているが、航空機側受光素子310を1つだけ備えてもよいし、3以上の航空機側受光素子310を備えてもよい。
【0031】
レトロリフレクタ320は、光信号群を構成する何れかの光信号を再帰反射させる。以下、レトロリフレクタ320により再帰反射された光信号を「再帰反射光」と称する。レトロリフレクタ320は、例えばコーナーキューブリフレクタである。光シャッタ330は、再帰反射光の光路に位置し、後述する航空機側制御部320の制御に基づいて再帰反射光の通過と遮断を制御する。光シャッタ330は、例えば、ねじれネマティック液晶を用いた液晶シャッタにより実現される。
【0032】
航空機側制御部340は、無人航空機30の飛行制御を含む各種の制御を行う。航空機側制御部340は、後述する駆動部360を制御して無人航空機30の飛行制御を行う。
【0033】
また、航空機側制御部340は、少なくとも1の航空機側受光素子310が受光した光信号の識別情報を用いて無人航空機30の位置及び姿勢状態を推定する位置・姿勢推定処理を実行する。識別情報は、上述したように、それぞれの光信号を識別することが可能な情報であり、それぞれの光信号は、予め定められた方向に向かって照射されるため、航空機側制御部340は、航空機側受光素子310が受光した光信号の識別情報を用いて自身の位置及び姿勢状態を推定することができる。
【0034】
ここで、無人航空機30の位置とは、例えば無人航空機30の水平面内での位置や着地面Gからの高さなどをいう。また、無人航空機30の姿勢状態とは、例えば無人航空機30の水平面内での向きや無人航空機30の傾きなどをいう。航空機側制御部340が推定する位置や姿勢状態の対象によって、望ましい航空機側受光素子310の数(識別情報の数)は異なる。
【0035】
このように、航空機側制御部340が位置・姿勢推定処理を実行し無人航空機30の位置及び姿勢状態を推定することで、無人航空機30の正確な位置への飛行制御が可能となる。航空機側制御部340による位置・姿勢推定処理の詳細については後述する。
【0036】
また、航空機側制御部340は、光シャッタ330を制御することで無人航空機30から地上側装置10に対する送信データTDとしての通信用光信号を生成する通信用光信号生成処理を実行する。具体的には、航空機側制御部340は、光シャッタ330のオンオフを制御し再帰反射光を明滅させて、当該送信データTDとしての通信用光信号を生成する通信用光信号生成処理を実行する。ここでの送信データTDは、例えば無人航空機30が撮影手段を用いて撮影で取得した画像データや、録音手段を用いて取得した音声データなどである。また、通信用光信号は、送信データTDを再帰反射光に含ませることで生成される光信号である。航空機側制御部340は、送信データTDを地上側装置10へ送信する必要がある場合に、通信用光信号を生成してよい。
【0037】
図1に示す例について説明する。レトロリフレクタ320は、光信号1105を再帰反射させている。ここで、航空機側制御部340は、レトロリフレクタ320が再帰反射させた光に対し光シャッタ330を制御し、送信データTDを含む通信用光信号1108を生成している。通信用光信号1108は、光信号群照射部110に対し入射する。ここで、光信号群照射部110とレトロリフレクタ320との間にビームスプリッタ120が配置されているため、通信用光信号1108は、ビームスプリッタ120に入射して2つの光に分割され、一方が地上側受光素子130に入射する。
【0038】
図3は、第1の実施の形態に係る航空機側制御部340が生成する通信用光信号の例について説明する図である。
図3には、通信用光信号の例の概念図が示されている。
図3に示すように、航空機側制御部340は、光シャッタ330を制御して、識別情報を含む光信号に、送信データTDを重畳させるように通信用光信号を生成する。ここで、送信データTDの信号が識別情報を含む光信号の周波数よりも高い周波数となるように生成されることで、識別情報と送信データTDとを両方ひとつの信号に含ませることが可能となる。
【0039】
このように、無人航空機30から地上側装置10へのデータを、地上側装置10から照射された光信号を利用して送信することができる。航空機側制御部340が通信用光信号生成処理を実行し通信用光信号を生成する際に、地上側装置10から照射された光信号を利用するの、無人航空機30の全体の構成を簡略化させたり、消費電力量を抑えて飛行時間を増大させたりすることが可能となる。
【0040】
図2に戻って説明を続ける。記憶部350は、無人航空機30の各種制御及び処理に関する情報を記憶する。記憶部350は、例えば識別情報とそれぞれの光信号との対応付けを示す情報や無人航空機30が取得した種々のデータなどを記憶する。
【0041】
駆動部360は、航空機側制御部340による制御に基づいて無人航空機30の飛行や離着地を行う。駆動部360は、複数の回転翼を有し、複数の回転翼の回転により無人航空機30を飛行させる。
【0042】
以上のように、無人航空機制御通信システム1によれば、地上側装置10の光信号群照射部110が、識別情報をそれぞれ含んだ複数の光信号からなる光信号群を、相互の光軸間隔が徐々に広がるように概略放射状に空間に照射し、一方で、地上側装置10の航空機側制御部340が、少なくとも1の航空機側受光素子310が受光した光信号の識別情報を用いて無人航空機30の位置及び姿勢状態を推定し、さらに光シャッタ330を制御して地上側装置10に対する送信データTDとしての通信用光信号を生成しているので、地上側装置10からの光信号により無人航空機30の位置及び姿勢状態の制御とデータの送信とを行うことができるため、無人航空機30全体の構成を簡略化することが可能となる。
【0043】
続いて、
図4~
図6を参照して、第1の実施の形態に係る無人航空機制御通信システム1における航空機側制御部340の位置・姿勢推定処理の例について説明する。
【0044】
航空機側制御部340は、無人航空機30が複数の航空機側受光素子310を備える場合、複数の航空機側受光素子310が受光した光信号の識別情報を用いて無人航空機30の姿勢状態として水平面内での向きを推定する位置・姿勢推定処理を実行してもよい。複数の航空機側受光素子310が無人航空機30における予め定められた箇所に配置されているので、複数の航空機側受光素子310が受光した光信号の識別情報から水平面内での向きの推定が可能である。
【0045】
また同様に、航空機側制御部340は、無人航空機30が複数の航空機側受光素子310を備える場合、高さ関係情報をさらに用いて無人航空機30の姿勢状態として高さを推定する位置・姿勢推定処理を実行してもよい。ここで、高さ関係情報は、光信号の識別情報の組み合わせと無人航空機30の高さとの関係を示す情報である。複数の光信号は光信号群照射部110により概略放射状に照射され、上方向に進むに従って光軸間隔が広がるため、例えば無人航空機30の同じ水平面内の位置や向きが変化しない場合でも、無人航空機30の高さによって複数の航空機側受光素子310が受光する光信号の識別情報の組み合わせが異なってくる。従って、無人航空機30の記憶部350が予め高さ関係情報を記憶しておくことで、航空機側制御部340は、複数の航空機側受光素子310が受光した光信号の識別情報及び高さ関係情報を用いて無人航空機30の高さを推定できる。
【0046】
図4に示す一例について説明する。
図4は、第1の実施の形態に係る無人航空機制御通信システム1における無人航空機30の航空機側制御部340による高さ及び水平面内での向きの推定処理について説明するための図である。
図4において、通信用光信号1108については省略されている。ここで、無人航空機30aの航空機側受光素子311a及び312aは、それぞれ光信号1103、1104を受光して、無人航空機30aの航空機側制御部340は、識別情報PX3及びPX4を取得する。一方、無人航空機30aよりも低い位置で飛行している無人航空機30bの航空機側受光素子311b及び312bは、それぞれ光信号1103、1105を受光し、無人航空機30bの航空機側制御部340は、識別情報PX3及びPX5を取得する。
【0047】
このように、高さが相違する無人航空機30aと無人航空機30bとの間で航空機側制御部340が取得する識別情報が異なっている。ここで、記憶部360は、識別情報PX3及びPX4に対応する無人航空機30の高さ、並びに識別情報PX3及びPX5に対応する無人航空機30の高さを、高さ関係情報として記憶している。そのため、航空機側制御部340は、識別情報PX3及びPX4を取得した場合は無人航空機30aの高さを、識別情報PX3及びPX5を取得した場合は無人航空機30bの高さを、それぞれ推定できる。
【0048】
なお、航空機側制御部340は、少なくとも1の航空機側受光素子310が受光する光信号の識別情報の変化から無人航空機30の移動方向や加速度を推定してもよい。航空機側制御部340は、推定した無人航空機30の移動方向や加速度を用いて無人航空機30の水平面内での向きをさらに推定してもよい。また、航空機側制御部340は、航空機側受光素子310のうちいずれかに対応する識別情報を取得できなかった場合、すなわち何れかの航空機側受光素子310が光信号を受光していないと判断できる場合、他の航空機側受光素子310が受光した光信号の識別情報を用いて、何れの方向に無人航空機30が移動すれば光信号を受光していない航空機側受光素子310が光信号を受光できるようになるのか判断してもよい。
【0049】
ところで、一般的に、無人航空機30は、傾きが一定である場合が多い。しかし、無人航空機30の移動状態や周辺状況によっては、無人航空機30が傾いている可能性があり、航空機側制御部340は無人航空機30の高さを正確に推定できない可能性がある。そのため、航空機側制御部340は、無人航空機30が、中心が同一直線上に存在しない少なくとも3以上の航空機側受光素子310を備える場合、少なくとも3以上の航空機側受光素子310が受光した光信号の識別情報を用いて無人航空機30の姿勢状態として傾きを推定する位置・姿勢推定処理を実行してもよい。少なくとも3の航空機側受光素子310の中心が同一直線上に存在しない場合、無人航空機30が何れの方向に傾いた場合でも、少なくとも3の航空機側受光素子310が受光する光信号を変化させることができ、光信号の識別情報から無人航空機30の傾きの推定できるため、より正確な無人航空機30の位置の推定や姿勢制御などが可能となる。
【0050】
図5に示す一例について説明する。
図5は、無人航空機制御通信システム1における無人航空機30の航空機側制御部340による傾きの推定処理について説明する説明図である。
図5において、無人航空機30a及び30bは、それぞれ中心が同一直線上に存在しない3の航空機側受光素子311a~313a、311b~313bを備えていて、また、無人航空機30aは接地面Gに対し平行状態である一方で、無人航空機30bは傾いている。なお、
図5において、レトロリフレクタ320及び光シャッタ330は省略されている。ここで、無人航空機30a及び30bがそれぞれ航空機側受光素子311a及び312a、311b及び312bが受光する光信号の組み合わせは同じになるため、位置・姿勢推定処理の実行結果として無人航空機30aと30bとの間で位置及び姿勢状態を区別することができない。しかし、無人航空機30a及び30bが、それぞれ
図5に示すようにさらなる航空機側受光素子313a、313bを備えることで傾きの推定ができる。
【0051】
なお、
図5においては、無人航空機制御通信システム1が2次元面における例として説明したが、実際に無人航空機30が何れの方向への傾きを推定可能にするためには、少なくとも3以上の航空機側受光素子310の中心が、同一直線上に存在していないことを要する。
図6は、無人航空機30の航空機側受光素子310の配置例について説明するための図である。
図6(a)には、航空機側受光素子311c~313cを備えた無人航空機30cが示されている。このように、例えば航空機側受光素子311c~313cが、底面に同一直線状に存在しないように配置されていれば無人航空機30の傾きが推定可能である。また、全ての航空機側受光素子310が同一直線上に存在していない条件が満たされれば、
図6(b)の航空機側受光素子313dのように、少なくとも3の航空機側受光素子310の一部が、例えば無人航空機30の側面等の底面以外に備えられていてもよい。
【0052】
続いて、
図7のフローチャートを参照して、第1の実施の形態に係る航空機側制御部340による位置・姿勢推定処理の動作について説明する。ここでは、光信号群照射部110から光信号群の照射が既に開始されているものとする。
図7を参照すると、航空機側制御部340は、航空機側受光素子310が光信号を受光して当該光信号から変換した電気信号を検出する(ステップS101)。ここで、航空機側制御部340は、無人航空機30が備えるそれぞれ航空機側受光素子310においてステップS101を実行する。
【0053】
電気信号を検出すると、航空機側制御部340は、光信号から変換されて検出した電気信号から識別情報を取得する(ステップS102)。識別情報を取得すると、航空機側制御部340は、取得した識別情報を用いて無人航空機30の位置及び姿勢状態を推定する(ステップS103)。ここで、航空機側制御部340は、無人航空機30が備える航空機側受光素子310の数に応じて推定する無人航空機30の位置及び姿勢状態の内容を決定してもよい。
【0054】
無人航空機30の位置及び姿勢状態を推定すると、航空機側制御部340は、無人航空機30の位置及び姿勢状態の推定結果を出力し、航空機側制御部340は動作を終了する(ステップS104)。ここで、航空機側制御部340は、例えば光シャッタ330を制御することで、無人航空機30の位置及び姿勢状態の推定結果の情報を含む送信データTDとしての通信用光信号を生成する通信用光信号生成処理を実行してもよい。推定結果の情報を含む送信データTDとしての通信用光信号を生成することで、推定結果を地上側装置10と無人航空機30との間で共有することができる。
【0055】
[第2の実施の形態]
図8は、第2の実施の形態としての無人航空機制御通信システム2の構成を表した説明図である。なお、第1の実施の形態と同様の構成箇所に同一符号を付している。また、第1の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0056】
地上側制御部150は、地上側受光素子130が再帰反射光から変換した電気信号から識別情報を取得する処理と、取得した識別情報を付加識別情報としてそれぞれさらに含んだ複数の光信号からなる光信号群を生成する処理とを実行する。ここで、付加識別情報は、光信号群照射部110が照射した光信号群のうちレトロリフレクタ320に入射した光信号の識別情報である。地上側制御部150による上記処理に際し、分離回路140は、地上側受光素子130が送信データTDを含んだ通信用光信号を受光して電気信号に変換した場合、通信用光信号から変換された電気信号を、識別情報を含む信号と送信データTDを含む信号とに分離し、地上側制御部150は、分離回路140が分離した識別情報を含む信号から識別情報を取得してよい。
【0057】
光信号群照射部110は、付加識別情報をそれぞれさらに光信号からなる光信号群を、相互の光軸間隔が徐々に広がるように概略放射状に空間に照射する。ここで照射される光信号は、それぞれが含む識別情報とは別に付加識別情報を含む。なお、ここでの光信号群照射部110によるそれぞれの光信号群の照射方法は、第1の実施の形態と同様である。航空機側制御部340は、航空機側受光素子310が付加識別情報を含んだ光信号を受光して当該光信号から変換した電気信号から、付加識別情報を取得する。ここで、航空機側制御部340は、取得した付加識別情報を、レトロリフレクタ320の位置に存在する航空機側受光素子310が受光した光信号の識別情報とみなして、無人航空機30の位置及び姿勢状態を推定する位置・姿勢推定処理を実行する。
【0058】
航空機側制御部340が取得した付加識別情報は、レトロリフレクタ320に入射した光信号の識別情報である。そのため、航空機側制御部340による位置・姿勢推定処理の実行に際し、無人航空機30におけるレトロリフレクタ320が配置された箇所に航空機側受光素子310が存在するものとみなすことができる。すなわち、航空機側制御部340による位置・姿勢推定処理において必要な航空機側受光素子310のいずれかをレトロリフレクタ320で肩代わりさせることができる。
【0059】
図8に示す一例について説明する。識別情報PX5を含む光信号1105は、レトロリフレクタ320により再帰反射された後、光シャッタ330により送信データTDが重畳されて、通信用光信号1108として地上側受光素子130に入射している。地上側受光素子130は、通信用光信号1108を受光して電気信号に変換する。分離回路140は、識別情報PX5を含む信号と送信データTDの信号とに分離する。地上側制御部150は、分離回路140が分離した識別情報PX5の信号を取得して、元々含まれている識別情報PX1~PX5とは別に、識別情報PX5を付加識別情報としてそれぞれさらに含んだ光信号1101~1107からなる光信号群を生成する。光信号群照射部110は、当該光信号1101~1107を概略放射状に空間に照射する。無人航空機30の航空機側制御部340は、航空機側受光素子311及び312が受光した光信号1103及び1104が含む付加識別情報としての識別情報PX5を取得して、レトロリフレクタ320の位置に航空機側受光素子310が存在しているとみなして、識別情報PX3、PX4及びPX5を用いて位置・姿勢推定処理を実行する。
【0060】
このように、地上側装置10が、再帰反射光から取得した識別情報を、付加識別情報として光信号に付加して無人航空機30に伝えることで、無人航空機30に追加で受光素子を搭載する作業を行うことなく、無人航空機30の位置及び姿勢状態の推定処理をより高精度に行うことが可能となる。なお、
図8で示した一例では、2の航空機側受光素子310と1の地上側受光素子130とを用いていたが、第2の実施の形態に係る無人航空機30が備える航空機側受光素子310の数は、係る例に限定されない。例えば無人航空機30が1の航空機側受光素子310のみを備える場合などにおいて、航空機側制御部340は、1の航空機側受光素子310が受光した光信号の識別情報と1の地上側受光素子130が受光した再帰反射光の識別情報とを用いて位置・姿勢推定処理を実行し、無人航空機30の位置や姿勢状態としての水平方向の向きを推定してもよい。
【0061】
ここで、
図9を参照して、第2の実施の形態に係る光信号群照射部110が照射する光信号のデータ構成の例について説明する。この
図9に示すように、光信号には、識別情報以外に、上述した付加識別情報も追加で含まれる。また、光信号は、無人航空機30に対するコマンドを示す情報を含んでもよい。ここでのコマンドは、例えば無人航空機30の各種制御の実行に係る命令である。このように、地上側制御部150が光信号群照射部110により照射される光信号に種々の情報を含ませることで、無人航空機30の柔軟な制御が可能となる。
【0062】
続いて、
図10のフローチャートを参照して、第2の実施の形態に係る地上側制御部150による付加識別情報を含む光信号群の照射に係る動作例について説明する。
図10を参照すると、地上側制御部150は、識別情報をそれぞれ含んだ複数の光信号からなる光信号群の相互の光軸間隔が徐々に広がるように概略放射状に空間に照射を開始する(ステップS201)。
【0063】
光信号群を照射すると、地上側制御部150は、地上側受光素子130が再帰反射光を検出していないと判定した場合(ステップS202のN)、ステップS202へと復帰する。一方で、地上側制御部150は、地上側受光素子130が再帰反射光を検出したと判定した場合(ステップS202のY)、再帰反射光から変換された電気信号から識別情報を取得する(ステップS203)。
【0064】
識別情報を取得すると、地上側制御部150は、取得した識別情報を付加識別情報として含んだ光信号からなる光信号群を生成する(ステップS204)。付加識別情報を含んだ光信号からなる光信号群を生成すると、地上側制御部150は、光信号群照射部110を制御して当該光信号群の照射を開始して(ステップS205)、地上側制御部150の動作は終了する。
【0065】
続いて、
図11のフローチャートを参照して、第2の実施の形態に係る地上側制御部150による位置・姿勢推定処理の動作例について説明する。ここでは、光信号群照射部110から光信号群の照射が既に開始されているものとする。
図11を参照すると、航空機側制御部340は、航空機側受光素子310が光信号を受光して当該光信号から変換した電気信号を検出する(ステップS301)。ここで、航空機側制御部340は、無人航空機30が備えるそれぞれ航空機側受光素子310においてステップS301を実行する。
【0066】
電気信号を検出すると、航空機側制御部340は、光信号から変換された電気信号から識別情報を取得する(ステップS302)。識別情報を取得し、航空機側制御部340は、光信号から変換された電気信号から付加識別情報をさらに取得しなかった場合(ステップS303のN)、取得した識別情報を用いて無人航空機30の位置及び姿勢状態を推定し(ステップS304)、ステップS306へ進む。ここで、航空機側制御部340は、無人航空機30が備える航空機側受光素子310の数に応じて推定する無人航空機30の位置及び姿勢状態の内容を決定してもよい。
【0067】
一方、識別情報を取得し、航空機側制御部340は、光信号から変換された電気信号から付加識別情報をさらに取得した場合(ステップS303のY)、取得した識別情報及び付加識別情報を用いて無人航空機30の位置及び姿勢状態を推定する(ステップS305)。無人航空機30の位置及び姿勢状態を推定すると、航空機側制御部340は、無人航空機30の位置及び姿勢状態の推定結果を出力し(ステップS306)、航空機側制御部340は動作を終了する。
【0068】
続いて、
図12のフローチャートを参照して、第2の実施の形態に係る地上側制御部150による通信用光信号生成処理の動作例について説明する。
図12を参照すると、航空機側制御部340は、データ送信の発生を検出する(ステップS401)。データ送信の発生を検出すると、航空機側制御部340は、航空機側受光素子310により光信号から変換された電気信号から付加識別情報を取得しなかった場合(ステップS402のN)、ステップS402へ復帰する。
【0069】
一方、データ送信の発生を判定し、航空機側制御部340は、光信号から変換された電気信号から付加識別情報を取得した場合(ステップS402のY)、送信データTDの送信が可能であると判断する(ステップS403)。送信データTDの送信が可能であると判断すると、航空機側制御部340は、光シャッタ330を制御することで、送信データTDを含む通信用光信号を生成し(ステップS404)、航空機側制御部340は動作を終了する。
【0070】
なお、第2の実施の形態においては、無人航空機30が2つの航空機側受光素子310を備える例について説明したが、無人航空機30が備える航空機側受光素子310は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。上述したように、付加識別情報を、レトロリフレクタ320の位置に存在する受光素子310が受光した光信号の識別情報とみなしてよく、例えば、無人航空機30が1つの航空機側受光素子310を備える場合、航空機側制御部340は、1つの識別情報と1つの付加識別情報を用いて無人航空機30の水平面内での向きを推定してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 無人航空機制御通信システム
10 地上側装置
110 光信号群照射部
120 ビームスプリッタ
130 地上側受光素子
140 分離回路
150 地上側制御部
20 入出力装置
30 無人航空機
310 航空機側受光素子
320 レトロリフレクタ
330 光シャッタ
340 航空機側制御部
350 記憶部
360 駆動部