(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ブラシ生検装置、キット及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 10/02 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
A61B10/02 140
A61B10/02 150
(21)【出願番号】P 2019551912
(86)(22)【出願日】2017-12-11
(86)【国際出願番号】 US2017065646
(87)【国際公開番号】W WO2018107175
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-12-09
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519209347
【氏名又は名称】マラノウスカ-ステガ,ザネッタ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マラノウスカ-ステガ,ザネッタ
(72)【発明者】
【氏名】ステガ,ダミアン
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-021607(JP,U)
【文献】国際公開第2010/085841(WO,A1)
【文献】実開平02-053710(JP,U)
【文献】米国特許第08348856(US,B1)
【文献】特開昭64-002634(JP,A)
【文献】特開2002-143132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 10/00-10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮内膜組織試料採取装置であって、
(a)同軸構造体であって、
内部真空を維持するように構成された壁を有し、かつ、近接端及び末端を有する可撓性挿管と、
同軸構造体を形成する、前記可撓性挿管内の可撓性張力移動可能構造体であって、前記可撓性挿管の前記近接端を越えて延びる第1端部と、第1状態では前記可撓性挿管の末端を越えて延び、第2状態では前記可撓性挿管の前記末端内に後退させられるように構成された第2端部と、を有する可撓性張力移動可能構造体と、
前記第2端部における細胞試料採取構造体と、
ピストンであって、前記細胞試料採取構造体に先行し、前記可撓性挿管の内壁に乗り、前記可撓性張力移動可能構造体の前記第1状態から前記第2状態への後退により、前記第2端部に対して前記可撓性挿管内の前記内部真空を引くように構成されており、対応する前記ピストンの後退が、前記可撓性挿管外部の媒体をピストンより末端側の前記可撓性挿管内に引く、ピストンと、
を有する同軸構造体と、
(b)エラストマを含み、前記可撓性挿管を囲む開口を有するスカートストッパであって、
停止位置へのスティクション力に打ち勝つのに十分な手動力の下で、前記可撓性挿管の外面に沿って滑ることによって、前記可撓性挿管上で位置が変更可能であるように構成され、
前記可撓性張力移動可能構造体の操作中に、頸部に接触する前記スカートストッパを用い、前記スカートストッパに対する前記可撓性挿管の圧縮力の下で、定義された第1挿入深度で前記可撓性挿管を維持するように構成され、
それにより、前記定義された挿入深度での前記細胞試料採取構造体によるサンプリングを可能にする、
スカートストッパと、を備え、
前記同軸構造体は、
頸管外口の外の停止位置で制約された前記スカートストッパと、頸管内口を越えて延びる末端で、人間の前記頸部に挿入されるように構成され、
前記可撓性張力移動可能構造体及び前記細胞試料採取構造体を、前記末端を越えて延長し、続けて前記末端を後退することにより、前記内部真空によって引き出された細胞と吸引を含む子宮内膜生検試料を取り出すように構成され、及び
意図しない領域からの試料採取から保護された前記可撓性挿管内に含まれる前記細胞試料採取構造体を有する子宮から引き出されるように構成される、組織試料採取装置。
【請求項2】
前記可撓性張力移動可能構造体は、前記第2端部において無外傷球状部で終端する、請求項1に記載の組織試料採取装置。
【請求項3】
前記細胞試料採取構造体は、ブラシを含む、請求項1又は2に記載の組織試料採取装置。
【請求項4】
前記ブラシは、前記可撓性張力移動可能構造体から半径方向に延びる複数のブラシ毛を含む、請求項3に記載の組織試料採取装置。
【請求項5】
前記ブラシは、前記第2端部からの距離に対して相対的に次第に小さくなる断面を有する、請求項3又は4に記載の組織試料採取装置。
【請求項6】
前記ブラシは、らせん状断面輪郭を有する、請求項3又は4に記載の組織試料採取装置。
【請求項7】
前記同軸構造体は、
前記可撓性張力移動可能構造体が前記第2状態にある状態で、前記頸管外口内に前記定義された第1挿入深度まで挿入され、かつ、前記スカートストッパが前記頸部に当接し、
前記頸管内口を経た前記細胞試料採取構造体が子宮内膜付近の前記子宮内にある状態で、前記第1状態に延伸され、
子宮内膜細胞を取り去るために、ユーザによって前記可撓性張力移動可能構造体の前記第1端部の軸及び回転移動により操作され、
前記内部真空を引くように、かつ、前記可撓性挿管の前記末端内に前記細胞試料採取構造体の周囲の液体試料を引き込むように、前記ピストンの前記可撓性挿管の内壁に対する移動を生じさせるために、前記子宮内で前記第2状態に後退させられ、
前記可撓性張力移動可能構造体が前記第2状態にある状態で前記頸管外口から後退させられるように、
さらに構成されている、請求項1に記載の組織試料採取装置。
【請求項8】
前記可撓性張力移動可能構造体は、スパイラル状にねじれた可撓性ガイドワイヤを含む、請求項1~7の何れか一項に記載の組織試料採取装置。
【請求項9】
前記可撓性挿管は、1mmと3mmの間の外径と、20cmと50cmの間の長さと、を有する、請求項1~8の何れか一項に記載の組織試料採取装置。
【請求項10】
前記スカートストッパは、人間の膣を通してほぼ前記頸部に挿入されるようにされた前記可撓性挿管の外面上のフランジ状要素を含み、前記可撓性挿管は、前記子宮内から子宮内膜生検試料を取り出すために前記子宮の頸管内口内に前記定義された第1挿入深度まで挿入され、前記子宮内膜生検試料が第2深度位置で得られた後で前記子宮の前記頸管外口から引き出されるように構成され、
当該子宮内膜組織試料採取装置は、
前記可撓性張力移動可能構造体が前記第2状態にある状態で、頸管口内に前記定義された第1挿入深度まで挿入され、
前記子宮内膜組織試料採取装置が前記子宮内にある状態で前記第1状態に延伸され、
子宮内膜細胞を取り去るように前記可撓性張力移動可能構造体の前記第1端部の軸及び回転移動により操作され、
前記子宮内膜組織試料採取装置の周囲の液体試料を前記可撓性挿管の前記末端に引き込むために前記内部真空を引くように、前記子宮内で前記第2状態に後退させられ、
前記可撓性張力移動可能構造体が前記第2状態にある状態で、前記頸管外口から後退させられるようにさらに構成されている、請求項1~9の何れか一項に記載の組織試料採取装置。
【請求項11】
複数の可撓性挿管は、それぞれ、細胞試料採取構造体の少なくとも2つの異なる物理的構成に関連付けられている、請求項10に記載の組織試料採取装置。
【請求項12】
複数の可撓性挿管であって、それぞれの可撓性挿管が、内部真空を維持するように構成された末端、各細胞試料採取構造体、及び、各可撓性挿管内の各可撓性張力移動可能構造体を有し、前記複数の可撓性挿管、及び、各可撓性張力移動可能構造体が複数の同軸構造体を形成する、複数の可撓性挿管と、
係合させるとユーザインターフェースから前記可撓性張力移動可能構造体それぞれに張力と圧迫とが伝えられて前記それぞれの可撓性張力移動可能構造体を前記第1状態と前記第2状態との間で遷移させ、係合解除されると前記ユーザインターフェースから前記それぞれの可撓性張力移動可能構造体に張力と圧迫とが伝えられないように、それぞれの同軸構造体のそれぞれの可撓性張力移動可能構造体を前記ユーザインターフェースに選択的に係合させるように構成されたハウジングと、
を含む、請求項1~11の何れか一項に記載の組織試料採取装置。
【請求項13】
前記子宮内膜生検試料を取り出す間、前記スティクション力は、前記スカートストッパに接した前記可撓性挿管の非強制的圧迫に対して、前記可撓性挿管の外面上に位置する前記スカートストッパを保持する、請求項1に記載の組織試料採取装置。
【請求項14】
複数試料生検装置であって、
同時利用可能な複数の可撓性挿管と、
複数の可撓性移動可能構造体であって、各それぞれの可撓性移動可能構造体は、それぞれの同時利用可能な前記可撓性挿管とともに同軸構造体を形成するために、それぞれの同時利用可能な可撓性挿管内にあり、
各可撓性移動可能構造体が、それぞれの同時利用可能な前記可撓性挿管の近接端から延びる第1端部と、第1状態ではそれぞれの同時利用可能な前記可撓性挿管の末端から延び、第2状態ではそれぞれの同時利用可能な前記可撓性挿管の前記末端内に後退させられるように構成された第2端部と、を有し、
各可撓性移動可能構造体のそれぞれの前記第2端部が細胞試料採取構造体を有する、前記複数の可撓性移動可能構造体と、
係合されるとユーザインターフェースから単一のそれぞれの前記可撓性移動可能構造体に張力と圧迫とが伝えられて単一のそれぞれの前記可撓性移動可能構造体を前記第1状態と前記第2状態との間で遷移させ、係合解除されると前記ユーザインターフェースから単一のそれぞれの前記可撓性移動可能構造体に張力と圧迫とが伝えられないように、単一のそれぞれの前記可撓性移動可能構造体を前記複数の同時利用可能な可撓性挿管のうちの1つ内で前記ユーザインターフェースに選択的に個別に係合させるように構成されたハウジングと、
を含む、複数試料生検装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子宮の生体検査を行うためのシステム及び方法を提供する。より具体的には、本発明は、子宮内膜を破壊し、子宮内膜から細胞を試料採取し、同時に、掻爬ブラシ及び吸引器によって試料を採取する装置である。
【背景技術】
【0002】
本技術は、米国特許第9,351,712号、第8,920,336号、第8,517,956号、及び第8,348,856号の改良に相当し、これら特許はそれぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。これらの特許はさらに、参照により本明細書に明示的に組み込まれるCook Medical Tao BrushTM I.U.M.C Endometrial Sampler及びPipelle子宮内膜生検装置(Sierecki AR,Gudipudi DK, Montemarano N, Del Priore G., “Comparison of endometrial aspiration biopsy techniques: specimen adequacy”. J Reprod Med. 53(10):760-4, 2009 Oct参照)の改良に相当する。
【0003】
図1A及び
図1Bに示すように、Tao Brush
TMは、ブラシが子宮の基底部に達したときの外傷を低減するために先端に玉を有する。
図1Aに、挿管から延伸されたブラシを示し、
図1Bには後退させられたブラシを示す。ガイドワイヤ上に、ブラシに近接して、ワイヤを心合わせするために設けられた内側スリーブがあるが、これは締まり嵌めをもたらさず、ガイドワイヤを後退させたときに真空引きしない。Tao Brush
TMによって採取される試料は、ブラシ毛によって子宮内膜から掃き取り又は掻爬された細胞である。それぞれ参照によりその全体が明示的に本明細書に組み込まれる、米国特許第4,227,537号、3,877,464号;第9,078,642号、第5,916,175号、第5,954,670号、6,059,735号、第6,610,005号、第7,767,448号、第8,827,923号、第8,439,847号、第8,251,918号、第7,749,173号、第5,546,265号、第3,881,464号、第4,108,162号、第8,968,213号、第8,323,211号、第D658,388号、第5,713,369号、第5,546,265号、第4,235,244号、第4,754,764号、第4,763,670号、第4,966,162号、第5,146,928号、第5,253,652号、第4,662,381号、第5,217,024号、第5,279,307号、第6,336,905号も参照されたい。
【0004】
図2A及び
図2Bに、ブラシ毛の反対側の端部に取っ手が見える、Tao Brush
TMを示す。
【0005】
図3A~
図3Dに、Tao Brush
TMの使用法を示す。製造業者(Cook Medical)は、以下の使用説明を提供している。
【0006】
1.CytoRich(R)Brush Cytology Preservative(AutoCyte,Inc.,米国ノースカロライナ州エルロン大学)が8ml入ったねじ蓋付き試験管を、処置場所における試験管立てに配置する。
2.患者を砕石位にする。
3.ブラシ試料採取器を外側挿管内に完全に後退させる。(
図2)
4.装置を基底部のレベルまで徐々に挿入する。(
図3A)
5.外側挿管を取っ手まで完全に引き戻す。ブラシ試料採集器を十分に回転させる。(
図3B)
2つの方法が推奨されている。
1)ブラシ試料採集器を、取っ手上の基準マークが360°回転の完了を示すまで時計回りに回転させ、次に、取っ手上の基準マークが360°回転の完了を示すまで反時計回り(反対方向)に回転させる。
2)ブラシ試料採集器を、一方向にのみ4回又は5回、360°完全に回転させることによって回転する。注:取っ手上の基準マークが360°回転の完了を示す。
6.子宮内膜試料を原位置で捕捉するために、外側挿管をブラシ上で先端まで押し、装置を取り出す(
図3C)。通常の子宮内膜腔は収縮状態にあり、従って、ブラシは子宮内膜表面全体と直接接触することになる。
7.装置を直ちに8mlのCytoRich(R)Brush Cytology Preservative内に浸漬する。
8.挿管を後退させてブラシを保存液にさらす。
9.挿管をしっかりと保持し、ブラシを挿管に出し入れして、付着した細胞及び組織を洗い出す。(
図3C)注:収集物は保存液中で最大数週間まで安定である。
10.ブラシアセンブリを試験管から取り出し、ねじ蓋を元に戻し、試験管を処理のために検査所に提出する。
【0007】
汚染されていない子宮内膜培養物を得るために、
1.無菌の潤滑剤なしの膣鏡の挿入後、綿棒によりポビドンヨード溶液で子宮頸膣部及び子宮頸管を消毒する。注:ポビドンによる子宮頸膣部の十分な消毒を確実にするために、綿棒を子宮頸管内に約1.5cm挿入する。
2.この使用説明の前項のステップ3からステップ6に従って子宮内膜腔にブラシを挿入する。取っ手上の基準マークが360°回転の完了を示す。
3.試料採集器を取り出す。
4.ブラシの丸い先端を95%アルコールガーゼで拭う。
5.挿管を引き戻す。無菌スライドガラス上に直接塗抹を引くことによって形態評価(必要な場合)の準備をし、直ちにスプレー凝固する。
6.培養検査のために、ブラシを無菌Stuarts Transportation Medium中に入れ、5秒間攪拌する。
【0008】
図5A~
図5Cに示すように挿管内に試料を吸引するが、露出したブラシのないPipelle生検器具を、
図4A及び
図4Bに示す。
【0009】
図6及び
図7に、参照により明示的に本明細書に組み込まれ、掻爬組織試料採取生体検査に加えて吸引生体検査を実装することによってTao Brush
TM設計を改良する、米国特許第9,351,712号、第8,920,336号、第8,517,956号、及び第8,348,856号による設計を示す。これは、ブラシを挿管内に引き込むと子宮から流体試料を引き込む締まり嵌めプランジャを生検ブラシに近接して設けることによって実現される。
【0010】
しかし、Tao BrushTM設計及び米国特許第9,351,712号、第8,920,336号、第8,517,956号、及び第8,348,856号の設計によると、ブラシは、恣意的距離又は推定距離だけ、又は子宮基底部を押すブラシの先端によって抵抗を受けるまで挿入され、これは無用に組織損傷、場合によっては合併症を起こす危険がある。
【0011】
米国特許第9,351,712号、第8,920,336号、第8,517,956号、及び第8,348,856号は、ガイドワイヤを備えた細い円筒形の管と、ガイドワイヤの端部にある生検試料採取装置とを有し、Cook Medical(米国インディアナ州ブルーミントン)のTao BrushTM I.U.M.C. Endometrial Samplerに類似し、挿管内に配置され、ワイヤが挿管を通して引き出されると真空引きし、ガイドワイヤの周囲の流体を挿管内に吸い込むピストン状構造体となるように改変された、子宮内生検試料採取装置について記載している。知られているPipelle子宮内膜吸引キュレットなどの真空生検試料採集装置は、真空を生じさせ、類似の原理によってその真空を挿管内に引き込むが、末端にブラシ又はその他の生検試料採集装置がない。
【0012】
この装置は、ほとんど、又はまったく不快感なしに子宮内膜腔内に容易に通ることができる、直径1mm~3mm、長さ30cm~40cmの同軸「ストロー」1である。この装置は、柔軟性があるが、頸部を通過するのに十分な力を加えるのに十分な剛性を有する。不透性の管である外側挿管の中央において、より薄い内側挿入部2を管3の端部を越えて子宮内に延伸させることができる。生検ブラシから近接した位置に吸引要素4があり、この吸引要素4は、ガイドワイヤが引き出されると液体を挿管内に引き込む。内部オブチュレータが子宮を破壊して子宮の生検試料を解き放し、収集する。組織試料採取装置は、対向する近接端と末端とを備えた、スパイラル状にねじれた可撓性ワイヤを含む。また、ブラシ全体を硬くすることなく追加的な剛性をもたせるために、ワイヤのかなりの部分を覆うプラスチック管も含む。
【0013】
ワイヤの末端部に沿って、組織試料を収集するために使用されるブラシ毛を含むブラシがある。ブラシ毛は、スパイラル状にねじれたワイヤ内の末端付近に固定され、ワイヤの末端に向かうほどより太く先細になっている。装置の末端からブラシ毛が先細にされていることにより、子宮内膜腔の形状のために子宮内膜のより大域的な組織収集が可能になる。ねじれたワイヤの最末端上には無外傷球状部がある。プラスチック管とねじりワイヤとは、ねじりワイヤよりも長さが短い挿管内に収容され、それによって、挿管をプラスチック管に沿ってねじりワイヤの末端の無外傷球状部まで移動させることによって、挿入時及び組織収集後の取り出し時にブラシを覆うことができるようになっている
【0014】
挿入中にブラシを保護するために、挿入前に挿管をねじりワイヤの末端の上方の所定位置に移動させることができる。挿入中にブラシを覆わせることによって、患者にとっての快適性も増し、意図しない領域から組織を収集しないようにブラシを保護する。装置が適切な収集深度まで挿入された後、挿管がねじりワイヤの近接端に向かって戻され、ブラシを露出させ、組織試料の収集を可能にする。挿管は、ブラシを完全に露出させるように動かされても良く、又はブラシの各部分を露出させるように段階的に動かされてもよい。これにより、医師は患者の解剖学的構造に基づいてブラシの有効収集面積を調整することができる。
【0015】
ワイヤを覆うプラスチック管は、ブラシの末端からプラスチック管の近接端まで、子宮に挿入されたブラシの正確な長さを示すマークによって、プラスチック管に沿ってセンチメートル単位で目盛りが付けられている。これにより、臨床医はブラシが子宮内にどれだけ深く挿入されているかを知ることができる。挿管は、プラスチック管とほぼ同じ長さであり、挿入前にはブラシ毛を覆うように所定位置にある。挿管は、プラスチック管上の目盛りが挿管を通して見えるように、透明材料で形成されてもよい。挿入深度を測定することができることによって、収集された組織試料が正しい領域からのものである確実性が高められる。適正な領域から組織試料が収集された後、組織試料採取装置が挿入されたままの状態で、ブラシを取り出す前にブラシ毛を覆うように挿管をねじりワイヤの末端に沿って戻すことができる。これにより、取り出し中に挿管内でブラシ上の組織試料が保護されるようにすることができる。
【0016】
さらに、可撓性管に沿った目盛りは、医師が露出しているブラシ毛の長さを測定することができるようにする。医師が挿管をその挿入位置から取っ手に向かって引くとき、挿管が引かれる距離が長いほど多くのブラシ毛が露出される。目盛り(定規)はこの測定の目視確認を可能にし、医師がブラシ毛を特定の長さのみ正確に露出させることができるようにする。この測定は、医師が組織の試料採取を行う位置をより良好に制御することができるようにし、事前の検査時に測定された、又は患者の履歴に基づいて推定された子宮の大きさなどの患者の特定のパラメータに基づいて、医師がブラシの長さを調整することができるようにする。ブラシ露出の制御により、試料採取精度及び患者の快適さが増す。
【0017】
内部オブチュレータが細い円筒状管内に引き戻されるのと同時に、装置は破壊された試料を外側管内に収集するために弱い吸引を生じさせる。次に、装置全体が子宮から引き出され、体外でこのプロセスを逆に行うことによって試料が収集される。
【0018】
2つ以上の生検方法を組み合わせて1つの装置に組み込むことにより、痛み、不快感、及び不便さ、例えば、十分かつ正確な検体を得るための再処置がなくなる。複数の試料収集方法、例えば物理的手段による破壊と吸引とを併用することによって、個々の方法のより穏やかな適用を可能にし、激しい破壊、例えばD&C及び強力な吸引を、例えば同時に適用される穏やかな破壊と穏やかな吸引に置き換えることができる。1つの装置における複数のより穏やかな方法の組み合わせは、どのような単独の方法よりも安全かつより効果的である。
【0019】
以下を参照されたい(それぞれ参照によりその全体が明示的に本明細書に組み込まれる)。
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【発明の概要】
【0020】
本発明の好ましい一実施形態は、Cook Medical(米国インディアナ州ブルーミントン)のTao BrushTMI.U.M.C Endometrial Samplerに類似し、円筒形の管を囲んで、管の挿入を子宮外口を越える固定距離までに制限する頸部ストップが設けられるように改変された、ガイドワイヤと端部における生検試料採取装置と、を備えた細い円筒状管を提供する。
【0021】
この機構は、米国特許第9,351,712号、第8,920,336号、第8,517,956号、及び第8,348,856号による、細い円筒状管の管腔内に液体試料を引き込むための吸引装置と組み合わせることができる。
【0022】
装置は、子宮の内面(子宮内膜)から組織試料を収集することを意図したものである。装置は、カテーテルの末端にブラシを有する。ブラシは、子宮内膜の試料を穏やかに採取することを意図している。装置の近接端は、医師による扱いを容易にするための取っ手を有する。装置は、末端でブラシを覆ったり露出させたりするように、装置の長さに沿って(取っ手に対して相対的に)動かすことができる比較的硬い外側挿管を有する。
【0023】
装置は、外側挿管の末端の周囲にスカートストッパを有する。スカートは、頸部に対して装置を位置決めすることを意図したものであり、所定位置に固定されてもよく、又は(頸部に当接するとガイドワイヤ及び挿管を操作してもスカートストッパの位置が変わらないように、配置後に所定位置に軸方向に固定されたままとなるのに十分な締まり嵌め状態で)外側挿管に沿って手動でスライド可能であってもよい。挿管に沿ったスカートストッパの定量的位置合わせを可能にするために、好ましくは一連の軸方向マークが設けられる。スカートストッパは、好ましくは、丸みのある縁を備え、所望の特性を備えるとともに意図しない外傷を避けるのに十分な弾性を有する、ゴム、シリコーン、又はプラスチックなどのエラストマからなる。
【0024】
装置は、スカートが頸部に達してそれ以上は進めなくなるまで、ブラシが外側挿管によって覆われた状態で患者内部に前進させられるように意図されている。スカートが頸部に当たって停止した後、ガイドワイヤを挿管に対して相対的に動かすことによってブラシを挿管の端部を越えて前進させてブラシを子宮内部で露出させ、組織試料採取を可能にする。
【0025】
装置は、カテーテルの主軸に固定されたOリングも有する。外側挿管とOリングとは互いに封止を生じさせ、ガイドワイヤとブラシとが挿管内に引き込まれると組織試料を固定するためにカテーテルの末端において吸引(真空)を生じさせる。
【0026】
装置は、ブラシが外側挿管によって覆われた状態で患者から取り出される。ガイドワイヤが挿管内に引き込まれると挿管の末端に接して封止することができる無外傷球状部を、ブラシの末端に設けてもよい。挿管内へのガイドワイヤの引き込みを制限するためにストップが設けられてもよい。例えば、挿管内部の固定位置に取り付けられた環状又は円筒状部材が、Oリングを妨げ、それによって後退を制限してもよい。
【0027】
装置は好ましくは無菌であり、使い捨て専用とされる。
【0028】
本発明の別の実施形態によると、1回で採取される複数の生検試料を取得し、分離することが可能な複数試料生検装置が提供される。この実施形態によると、生検器具が頸管口又は肛門などの解剖学的開口部に入れられる。前述のスカートと類似した突起が開口部の外側部分に対する相対的な位置基準を与えるので有利である。この突起は、設計の一部、又は所望の挿入深度基準機能を実現するために追加された要素であってもよい。
【0029】
この実施形態による生検装置は、例えば頸管内試料採取器、子宮内膜試料採取器、パンチ試料採取器、及び吸引付き子宮内膜試料採取器など、それぞれが同じか又は異なっていてもよい複数の生検試料採取器具を提供する。各器具は、器具試料採取ヘッドを挿管の端部を越えて延ばし、挿管に対して相対的にねじり、挿管内で器具試料採取ヘッドを後退させるために、ガイドワイヤによって操作可能な、1.5mm~4mmの管などの挿管内部の装置として提供される。
【0030】
挿管に対して相対的な生検器具の前進の制御を行うことに加えて、各挿管は開口部に選択的に挿入され、生検器具が挿管内に後退させられた状態で器官内に前進し、生検器具が挿管内に後退させられた状態で器官から取り出されるように制御可能である。
【0031】
場合によっては、挿管自体が、生検器具を所望の領域に向けるように屈曲可能又は角度方向に誘導可能であってもよい。屈曲可能挿管は単軸であってもよく、すなわち、典型的には、挿管の壁に取り付けられたケーブル、ガイドワイヤ又はフィラメントなどの張力要素にかかる張力の結果としての挿管の端部の湾曲であってもよい。湾曲の角度と、器官に対する挿管の回転角度とを制御することによって、適度な制御範囲がもたらされる。
【0032】
同様に、パンチ、又はスネア、又はカプセル化生検装置も張力によって制御することができ、これはワイヤ又はポリマーフィラメントであってもよい。従って、単一自由度(前進/後退)を有する単一ガイドワイヤの場合が最も簡略な事例であり、追加の制御及び自由度を設けてもよい。
【0033】
場合によっては、例えば短管内において、又は開口部に対する器官の末梢部において、「ブラインド」試料採取を行うことができる。
【0034】
また他の事例では、例えばより大きな器官の内腔内において、何らかの撮像ガイダンスが好ましい場合もある。従って、装置が内視鏡とともに使用されてよく、及び/又は、1mm~3mm内視鏡カメラなどの内視鏡カメラを含んでもよい。一般には、このような装置は、照明と撮像の両方のために先端から撮像装置までの光ファイバに依存する。しかし、本技術の一実施形態によると、撮像装置回路とレンズとが内視鏡の先端にあり、内視鏡は、生検試料採取装置の端部付近に配置されて生体検査処置の直接的かつリアルタイムの撮像を実現する。
【0035】
例えば、On Semiconductor社は、MT9V115 1/13” VGA、OV6922 1/18”1/4VGA撮像装置、及びOVM6946 1/18” 400×400撮像装置など、様々な適合する装置を提供しており、これらの装置を、画像を電気的相互接続を介して(又は無線で)データストリームとして送信する超小型モジュールの一部として含めてもよい。撮像装置は、典型的には、生検器具に面する視野を備え、1組のLED、又はLED照明ファイバがこの視野を照明する。カメラはすべての動作モード、すなわちすべての試料採取処置で必要というわけではないが、カメラを備える場合は、処置全体を通して開口部内に挿入されたままとすることができる。カメラは、挿管の端部付近にあってよく、処置の間、生検器具のそれぞれの挿管とともに器官内に前進させることができる。
【0036】
撮像装置からの映像信号は、生検器具を制御するガイドワイヤを電力及び/又は信号搬送路として使用して搬送することができるので有利である。なお、動作電圧は一般に低く、例えば<3.3Vであり、従って、万一、漏電があっても患者にとって危険な条件は存在しない。しかし、危険をさらに低減し、信号品位を向上させるために、電力搬送部材を絶縁してもよい。例えば近傍の無線受信機への無線送信も備えることができ、それによって有線送信の必要をなくすことができる。その場合、装置は内蔵バッテリを有するか、又は、導線を介して動作電力を受け取ってもよく、この導線はガイドワイヤを含むことができるので有利である。好ましいガイドワイヤは多重撚り線であるため、撚り線が互いに絶縁されていれば、電力と接地、さらには信号も送信することができる。ガイドワイヤが非絶縁でなければならない説得力ある理由がないため、これによって既存の構造体の拡張された活用がわずかな追加コストと複雑化で可能になる。
【0037】
本実施形態による生検装置は、様々な生検器具を備えたバレルカートリッジを、角度方向にずらされた各位置に備える。特定の器具を選択的に作動させる一つの方法は、ユーザによって制御されるマニピュレータが複数の生検先端部のうちの1つに対する機能的制御、例えば挿管の延伸と後退、及びガイドワイヤの延伸、後退、回転を行う、単一の作動位置をバレルに設けることである。上述のように、別の作動フィラメントにかかる張力による挿管の屈曲のための機能も備えてもよい。バレル内の残りの生検器具はそれぞれの非配備位置に拘束、例えば所定位置に固定されたままとすることができる。
【0038】
バレルは挿管よりも直径が大きいため、バレルは開口部の外部に保持され、それぞれの生検器具の係合と係合解除とを行うための機構も開口部の外部にあり、この機構は、例えば所定の位置まで回転して1つの器具を解放する一方、他の器具を後退位置にロックしてもよい。このようにして、比較的大型のバレル、例えば8mm~20mmのバレルに、2個~12個の生検器具を備えておくことができる。バレル機構の端部は、器官内への挿管の挿入距離を制限するとともに明瞭な位置基準を示すスカートとしての役割を果たすので有利である。
【0039】
一実施形態によると、装置内の各生検器具は分離しており、制御切り替えがない。従って、4つの配備可能な生検器具を備えた生検装置の場合、カートリッジから延びるそれぞれのガイドワイヤを備えた4つの別々の挿管がある。これにより、医師は標準設計品又は特注設計品の中からそれぞれの処置のために適切な生検器具を選択することができる。作動器具が使用中の間、使用していない器具は器官の外部にとどまる。場合によっては、複数の器具を器官内に前進させることができ、例えば、その場合、内視鏡が利用可能な器具の1つとして備えられ、特定の生検器具又は単一の生検器具に連結されていない。
【0040】
一方、第2実施形態では、別々の生検器具それぞれについて挿管、ガイドワイヤ、及び屈曲ワイヤと機械的に別々に係合する機構が設けられ、カートリッジから単一の制御システムが延びていてもよい。例えば、作動位置にあるそれぞれの生検器具と個別に係合するように、多方向クランプ、バヨネットソケット、クイックリリース、又は磁気機構を設けてもよい。カートリッジは、典型的には丸く、処置中は開口部に中心があり、それによって非配備生検装置は使用されていないときにはカートリッジ内で中心から外れている。ロックアウト/クランプ制御機構の回転、及び心合わせなどにより作動位置に移動されると、それぞれの生検器具の制御機構も接続され、作動させられる。このとき、作動生検器具にカメラが取り付けられてもよい。あるいは、カメラは生検器具に事前に挿入され、生検器具とは別に配置されてもよい。
【0041】
場合によっては、例えば機械式制御機構をラッチし、挿管を所望の挿入深度まで延伸し、ブラシを回転させるとともに、挿管を後退及び/又は生検ブラシを挿管内に後退させるために、電気式機構がカートリッジに設けられてもよい。典型的には、生検ブラシの延伸及び軸方向操作はユーザにより制御され、自動ではないが、完全に自動化された生体検査も可能である。
【0042】
各生検器具が、移動を所定の範囲内に制御し、制限するための機械的リミッタを有することが好ましく、その場合、所定の範囲は、それぞれの用途の意図された使用法に応じて様々な生検器具ごとに異なっていてもよい。軸方向の制御限界が挿入開口部の周囲の外面とバレルの端部とを基準にしており、開口部内に滑り込まずにこの位置基準を維持するためにバレルの周囲のリング又は突起が使用されるので有利である。
【0043】
例えば、頸管内ブラシは典型的には挿管を開口部を0cm~2cm越えて延伸させ、子宮内膜ブラシは典型的には挿管を頸管を2cm~10cm越えて子宮内に延伸させ、ブラシ生検器具は挿管の端部を1cm~3cm越えて延びる。頸管内ブラシ及び子宮内膜ブラシは、吸引を備えても備えなくてもよく、吸引はブラシを制御するガイドワイヤが挿管内に引き込まれるとプランジャの機械的動作により実現されるか、又は挿管を通してカートリッジ又はその先からもたらされる真空によって実現されてもよい。
【0044】
パンチャ又はカップ生検器具は、典型的にはビデオ撮像装置を使用した目視観察下で使用され、使用中にはユーザが装置を制御することが想定されているため、この状況では機械的に制約されることがより少ない。
【0045】
従って、本設計は、器官の異なる領域から、互いに分離された状態を維持して、1回に複数の生体組織を採取することを可能にする。患者の観点からは、試料採取処置が容易になされ、時間と経済的負担との組み合わせが一般には別々の生検器具を使用する場合よりも少なくなるので、これは有利である。また、複数の生体検査処置に使用される単一の撮像装置との併用性も効率的である。最後に、標準の取っ手から取り外すカートリッジの場合、カートリッジは、1人の患者からの試料を整理し、標識付けする効率的な方法を提供し、同じ患者及び同じ器官からの様々な試料の病理学検査を効率化する。最後に、各試料は開口部を基準にして正確に深度標識付けされるため、正確な深度基準を示さない従来の生検器具と比較して臨床的に重要な情報が得られる。なお、マイクロSDカードなどのメモリカードをカートリッジに付随させてもよく、メモリカードには自動的に記録され維持される各生検器具のビデオ及び/又は操作履歴情報が含まれ、手軽に病理学者に渡したり患者の記録の一部としたりすることができる。
【0046】
従って、1つの目的は、組織試料採取装置であって、内部真空を維持するように構成された末端部を少なくとも有する可撓性挿管と、前記挿管を子宮内の頸部を通して固定深度に維持するように構成されたスカートストッパと、同軸構造体を形成する、前記挿管内の移動可能構造体とを含み、前記移動可能構造体は、前記挿管の近接端から延びる第1端部と、第1状態では前記挿管の末端から延び、第2状態では前記挿管の前記末端内に後退させられるように構成された第2端部とを有し、前記移動可能構造体の前記第2端部は、先に吸引要素がある細胞試料採取構造体を有し、前記同軸構造体は、前記挿管の前記近接端における前記移動可能構造体の前記第1端部上の張力の結果として、前記移動可能構造体が前記第1状態から前記第2状態に後退して、前記挿管外部の媒体をピストンより末端側の前記挿管内に移動させる吸引を生じさせる、組織試料採取装置を提供することである。
【0047】
前記移動可能構造体は前記第2端部において無外傷球状部で終端してもよい。
【0048】
前記細胞試料採取構造体はブラシを含み得る。
【0049】
前記ブラシは、前記移動可能構造体から半径方向に延びる複数のブラシ毛を含み得る。前記ブラシは、前記第2端部からの距離に対して相対的に次第に小さくなる断面を有し得る。前記ブラシはらせん状断面輪郭を有してもよい。
【0050】
前記同軸構造体は、子宮内膜生検試料を取り出すために人間の子宮の頸管口内に所定の深度まで挿入され、前記子宮の前記頸管口から引き出されるように構成され得る。
【0051】
前記同軸構造体は、前記移動可能構造体が前記第2状態にある状態で、前記頸管口内に所定の深度まで挿入され、前記細胞試料採取構造体が前記子宮内にある状態で、前記第1状態に延伸され、前記子宮内の細胞を取り去るために、ユーザによって前記移動可能構造体の前記第1端部の移動により操作され、前記挿管の末端内に前記細胞試料採取構造体の周囲の液体試料を引き込むように真空を生じさせるために、前記子宮内で前記第2状態に後退させられ、前記移動可能構造体が前記第2状態にある状態で前記頸管口から後退させられるようにさらに構成され得る。
【0052】
前記移動可能構造体は、スパイラル状にねじれた可撓性ガイドワイヤを含み得る。
【0053】
前記挿管は、1mm~3mmの外径と、20cm~50cmの長さとを有し得る。
【0054】
また、1つの目的は、組織試料採取方法であって、内部真空を維持するように構成された末端部と、人間の頸部への可撓性挿管の挿入深度を制限するように構成された前記可撓性挿管の周囲のスカートと、同軸構造体を形成する、前記挿管内の移動可能構造体とを少なくとも有する前記可撓性挿管を含む同軸構造体であって、前記移動可能構造体が、前記挿管の近接端から延びる第1端部と、第1状態においては前記挿管の末端から延び、第2状態においては前記挿管の前記末端内に後退させられるように構成された第2端部とを有し、前記移動可能構造体の前記第2端部が、先にピストンがある細胞試料採取構造体を有する、前記同軸構造体を設けることと、前記移動可能構造体を前記第1状態から前記第2状態に後退させて真空を生じさせるように、前記挿管の前記近接端における前記移動可能構造体の第1端部に張力を加えることとを含む、組織試料採取方法を提供することである。
【0055】
前記同軸構造体は、子宮内膜生検試料を取り出すために人間の子宮の頸管口内に所定の深度まで挿入され、前記子宮の頸管口から引き出されるように構成され得る。
【0056】
この方法は、前記移動可能構造体が第2状態にある状態で、前記同軸構造体の前記末端部を子宮の頸管口内に所定の深度まで挿入することと、前記細胞試料採取構造体が前記子宮内にある状態で前記同軸構造体の前記末端部を前記第1状態に延伸させることと、前記子宮内の細胞を取り去るように前記移動可能構造体の前記第1端部を操作することと、前記細胞試料採取構造体の周囲の液体試料を前記挿管の前記末端内に引き込むように真空を生じさせるために、前記子宮内で前記同軸構造体を前記第2状態に後退させることと、前記移動可能構造体が前記第2状態にある状態で、前記同軸構造体の前記末端部を前記頸管口から後退させることと、をさらに含み得る。
【0057】
前記細胞試料採取構造体は、前記移動可能構造体から半径方向に延びる複数のブラシ毛を有するとともに無外傷球状部で終端するブラシを含み得る。
【0058】
前記移動可能構造体は、スパイラル状にねじれた可撓性ガイドワイヤを含んでよく、前記方法は、前記細胞試料採取構造体を回転させるように前記ガイドワイヤをひねることをさらに含み得る。
【0059】
さらに他の目的は、可撓性同軸生検装置であって、管状挿管の外部に対して内部真空を維持するように構成された壁を有する管状挿管と、前記管状挿管の頸管内への挿入の深度を制限するように構成された、前記管状挿管の外面上のフランジ状要素と、前記管状挿管内の移動可能ワイヤと、組織の表面を破壊するように構成され、前記要素に対して末端側の移動可能構造体に取り付けられ、前記移動可能要素が第1状態に配置されると前記管状挿管の末端から突出し、前記移動可能要素が第2状態に配置されると前記管状挿管の末端内に収容されるように構成された細胞試料採取装置と、を含む、可撓性同軸生検装置を提供することである。
【0060】
前記細胞試料採取装置は、移動可能ワイヤから外側に延び、末端において無外傷球状部で終端する複数のブラシ毛を含み得る。
【0061】
装置は、子宮内部から子宮内膜生検試料を取り出すために人間の子宮の頸管口に所定の深度まで挿入し、子宮内膜生検試料が得られた後に子宮の頸管口から引き出されるように構成され得る。
【0062】
装置は、さらに、前記移動可能ワイヤが前記第2状態にある状態で所定の深さまで頸管口に挿入され、前記細胞試料採取装置が子宮内にある状態で前記第1状態に延伸され、前記移動可能ワイヤの第1端部の移動によって子宮内膜細胞を取り去るように操作され、前記細胞試料採取装置の周囲の液体試料を前記管状挿管の末端内に引き込むように真空を引くために、子宮内で前記第2状態に後退させられ、前記移動可能ワイヤが前記第2状態にある状態で前記頸管口から後退させられるように構成され得る。
【0063】
装置は、前記移動可能ワイヤが前記管状挿管内に引き込まれると前記管状挿管内に負圧を生じさせる要素をさらに含み得る。
【0064】
上述の生検ブラシは、肛門生検ブラシとしての使用のために改変することも可能であり、子宮内膜生検ブラシと肛門生検ブラシとを一緒にキットとして、又は任意により(単一ブラシ用の)保存溶液の小瓶とともに単独で、又はキットのための複数の保存液の小瓶とともに提供されてもよい。キットは、無菌パッケージであることが好ましく、パッケージは二重に包装されてもよく、生検ブラシと、保存液の小瓶と、任意により細胞学的試料採取のために許容可能な潤滑剤と、任意により使い捨ての無菌シート又はドレープとを収容する。
【0065】
肛門生検ブラシは、医師又は介護人と患者開口部との間の作業距離がより短いため、より短い点が子宮内生検ブラシとは異なる。子宮内用の場合、挿管は典型的には長さが20cm~25cmであり、長さ4cmのブラシを備え、ガイドワイヤが2cm露出し、それによりワイヤは長さ26cm~31cmとなり、ワイヤが結合される取っ手の端部を越え、挿管上の末端から約4cmの位置にスカートを備える。
【0066】
肛門生検ブラシ挿管は、典型的には長さが8cm~12cmであり、末端から約4cmの位置にスカートを備える。例えば、肛門生検ブラシは、末端から4cmの位置にスカートを備え、直腸内で挿管の端部を越えて最大6cmまで試料採取するための長さ14cm~18cmのガイドワイヤを有する、長さ8cmの挿管を有してもよい。
【0067】
従って、キットは、約20cmの挿管長を有する長い子宮内生検装置と、約8cmの挿管長を有する短い肛門生検装置と、細胞保存液の2つの小瓶と、水性の細胞学的に許容可能な潤滑剤(例えば、好ましくはカルボマーを含まないsurgilube(R))のパケットと、無菌ドレープと、添付の標識説明書(必要に応じてパッケージに印字されていてもよい)とを含み得る。ブラシが後退位置にある状態で、挿管又はブラシの端部に潤滑剤が付かないように注意して、スカート又はフランジと先端部との間の挿管の外面に任意の潤滑剤を塗布する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1A】挿管に対して延伸状態と後退状態にある従来技術のTao Brushと、内部オブチュレータと、例えばブラシ、先細らせん状ねじ、ループ又はブラシ要素付きループなどとすることができる破壊要素とを示す図である。
【
図1B】挿管に対して延伸状態と後退状態にある従来技術のTao Brushと、内部オブチュレータと、例えばブラシ、先細らせん状ねじ、ループ又はブラシ要素付きループなどとすることができる破壊要素とを示す図である。
【
図2A】挿管に対して延伸状態と後退状態にある従来技術のTao Brushと、内部オブチュレータと、例えばブラシ、先細らせん状ねじ、ループ又はブラシ要素付きループなどとすることができる破壊要素とを示す図である。
【
図2B】挿管に対して延伸状態と後退状態にある従来技術のTao Brushと、内部オブチュレータと、例えばブラシ、先細らせん状ねじ、ループ又はブラシ要素付きループなどとすることができる破壊要素とを示す図である。
【
図3A】Tao Brush
TMの使用説明図を示す図である。
【
図3B】Tao Brush
TMの使用説明図を示す図である。
【
図3C】Tao Brush
TMの使用説明図を示す図である。
【
図3D】Tao Brush
TMの使用説明図を示す図である。
【
図4A】それぞれ延伸状態及び後退状態の従来技術のPipelle子宮内膜生検装置を示す図である。
【
図4B】それぞれ延伸状態及び後退状態の従来技術のPipelle子宮内膜生検装置を示す図である。
【
図5A】生体検査処置におけるPipelle装置の使用法を示す図である。
【
図5B】生体検査処置におけるPipelle装置の使用法を示す図である。
【
図5C】生体検査処置におけるPipelle装置の使用法を示す図である。
【
図6】米国特許第9,351,712号、第8,920,336号、第8,517,956号、及び第8,348,856号による、吸引を備えた改良型子宮内膜生検ブラシを示す図である。
【
図7】米国特許第9,351,712号、第8,920,336号、第8,517,956号、及び第8,348,856号による、吸引を備えた改良型子宮内膜生検ブラシを示す図である。
【
図8】本発明によるガイドワイヤ及び生検ブラシを示す図である。
【
図9】本発明によるシャツストッパを示す図である。
【
図10】本発明による、スカートストッパが備え付けられた細い挿管を示す図である。
【
図11】本発明による、手動取っ手と、スカートストッパと、挿管と、ガイドワイヤと、ブラシと、Oリングとを備えた完全な生検装置を示す図である。
【
図12】独立して制御可能な生検複数試料生検装置の構成を示す図であり、4つの同様の生検試料採取器具を示す図である。
【
図13】独立して制御可能な生検複数試料生検装置の構成を示す図であり、4つの異なる生検試料採取器具を示す図である。
【
図14】バレルカートリッジにおける単一生検試料採取器具の操作を可能にするセレクタの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
実施例1
本発明の好ましい一実施形態は、外径約2.25mm、内径1.2mmの薄壁管を有し、長さが20cmと50cmの間、例えば22cmの子宮内生検装置からなる。この管は、例えばナイロン製の、透明で、曲げられるが自己支持型であるプラスチック管とすることができる。ガイドワイヤは、好ましくは、直径約0.1mm~0.2mmで、使用中にブラシの延伸と後退のための力を伝達するのに十分な機械的特性を有する、ねじりステンレススチールワイヤである。ガイドワイヤの末端には、先端に無外傷球状部を備える
図8及び
図11に示す生検ブラシがある。ブラシは、長さ約4cmで、延伸時には挿管の端部を約2cm越えて延びる。Oリングは、好ましくは、挿管の端部を再係合する問題を回避するために、全移動範囲にわたって挿管内に留まる。例えば、Oリング(又はより一般的には、ワイヤに取り付けられたプランジャ)は、例えば、延伸時に挿管の端部から2mm~5mmの位置にある。
【0070】
外径約2.25mm、内径1.2mmの外側薄壁管を有し、長さが8cmと12cmの間、例えば8cmの肛門生検装置も提供されてもよい。この管は、例えばナイロン製の、透明で、曲げられるが自己支持型であるプラスチック管とすることができる。ガイドワイヤは、好ましくは、直径約0.1mm~0.2mmで、使用中にブラシの延伸及び後退のための力を伝達するのに十分な機械的特性を有するねじりステンレススチールワイヤである。ガイドワイヤの末端には、先端に無外傷球状部を備える
図8及び
図11に示す生検ブラシがある。肛門生検装置用のブラシは、長さが4cmであってもよく、ブラシが延伸されると挿管の端部から2mm~5mmの位置にOリング又はプランジャを備える。
【0071】
ワイヤは、医師又は生検装置操作者が、挿管の近接端を基準にしたブラシ挿入を推定することができるように、1cm刻みなど一定間隔で印が付けられている。
【0072】
子宮又は肛門に入る一端に、生検ブラシが形成されている。
図11に示すガイドワイヤの周囲の締まり嵌めOリングが、ピストンの役割を果たし、オブチュレータが外側薄壁管を通って引き出されると吸引を生じる。
【0073】
別の実施形態では、Oリングは先端から約2.5cmの位置に配置されてよく、ブラシは先端から約1.5cm延び、両者の間に約1cmの裸ワイヤがある。
【0074】
図9、
図10及び
図11に示すように、末端付近の薄壁管の外面の周囲にスカートストッパが設けられ、スカートストッパは固定位置にあってもよく、手動でスライド可能であってもよい。スカートは、直径が約1cmであり、ナイロン、ポリウレタン、シリコーン、ネオプレン、又はその他の医療上受容可能なプラスチック又はゴムからなってよい。典型的には、スカートは所定位置に固定され、挿管の所定位置に接着(例えば紫外線硬化メチルメタクリル接着剤)されるか又はモールド成形される。
【0075】
生検装置は以下のように使用される。
【0076】
ブラシを外側挿管内に完全に後退させる。
【0077】
スカートストッパが頸部の外口に達するまで、挿管を膣を通して頸部に挿入する。ブラシの先端は基底部からずれていなければならない。
【0078】
外側挿管を、止まるまで、すなわち取っ手に当接するまで後方に引く。次に、挿管を保持しながら取っ手を回すことによってブラシを回転させる。例えば、取っ手上の基準マークが360°の1回転の完了を示すまでブラシを時計回りに回転させ、次に、取っ手上の基準マークが-360°の1回転の終了を示すまで反時計回りに回転させてもよい。あるいは、4回又は5回、360°回転させることによって一方向にのみ回転ブラシを回転させてもよい。場合によっては、ブラシの位置を軸方向に変えてもよいが、試料採取が完了するまでブラシを挿管内に引き込んではならない。
【0079】
ブラシによる試料採取後、挿管がストップ(例えば取っ手の縁)に当たるまで取っ手でガイドワイヤを引き、それによって先端の周囲の流体を挿管内に吸引し、次に挿管内にブラシを引き込む。
【0080】
装置を膣から引き出した後、ブラシと、挿管に入った流体とをフォルマリンなどの細胞保存液中に浸漬し、ブラシを流体に浸漬された挿管に出し入れすることによって、試料をブラシから保存液中に洗い出す。
【0081】
本発明は、例えば、異常を診断するために、子宮の内部の試料採取を行うために使用することができる。これにより、癌を検出又は除去することができる。これにより、不妊症の原因を特定するために十分な組織試料を得ることができる。
【0082】
肛門ブラシも同様に採用される。そのような生検器具は、解剖学的により到達しやすいため、典型的には子宮頸管内ブラシ生検器具よりも短い挿管及びガイドワイヤを有する。例えば、挿管は長さが10cm~15cmであってよく、ブラシは挿管の端部を2cm~6cm越えて延びてもよい。上述の子宮頸管ブラシ生検器具と同様に、好ましくは、挿入のための物理的基準距離を与えるために、挿管を越える肛門内への挿管の挿入を防止するスカートが設けられる。場合によっては、どの程度の挿入深度で試料を採取すべきかを医師が決定することができるように、挿管上でスカートの位置が変更可能であってもよい。この再調整は、スカートストッパに接して挿管の非強制的圧迫を加えることにより加えられるよりも多くの力を必要とし、その結果、使用中にはその位置が維持されるが、生検器具が体外にあるときにはスティクション力に打ち勝つことができるので、有利である。
【0083】
実施例2
第2実施形態によると、1回に採取される複数の生検試料を取得し、分離することができる、複数試料生検装置が提供される。従って、これは複数の生検ブラシ又は器具と、器具をその中で延伸及び後退させる複数の挿管とを必要とする。
【0084】
上述のようにスカートストッパなどの挿入深度位置基準が備えられてもよい。ただし、複数生検器具システムが、開口部の外部で保持される機構を有する場合、器具の直径を、追加の構造体なしにストッパの役割を果たすのに十分な大きさとしてもよい。
【0085】
1つの設計によると、挿管とガイドワイヤ制御機構とを含む各生検器具が分離している。1組の生検器具が1つの外側管ハウジング内にまとめられる。管は、単一の生検器具をハウジングの端部を越えて、生検組織を採集する開口部又は管部内に前進させることができるように、末端が円錐形内部輪郭を有する。場合によっては、生体検査の内視鏡ガイダンスが望まれることがあり、その場合、内視鏡と照明とを支持する第2挿管も前進させることができる。内視鏡挿管は、可視化のためにマグネシウムを射出してもよいが、マグネシウムは取り去った細胞を洗い流し、試料採取の位置的精度を低下させるため、ブラシ生検の場合、これは好ましくない。CO2などの不活性ガスも、知られている方法で挿管を通して射出してもよい。
【0086】
例えば、6本の別々のブラシをハウジング内に備える生検ブラシを3mm管内に設けてもよい。引き込み過ぎを防止するために、ハウジング内の各挿管の近接端にステップを設けてもよい。医師に挿入深度に関して知らせるために、各挿管上に印を付けてもよい。場合によっては、医師が開口部内の一連の深度において段階的試料採取をしたい場合があり、それぞれの挿管が、挿入深度を制限するストッパを有してもよく、深度に達したときに医師に触覚フィードバックを与えるので有利である。このストッパは、単純なOリング又はクランプであってよく、処置の前に医師が生検試料採取器具ごとに調整する。各試料採取器具のガイドワイヤも深度限界を有してもよい。当然ながら、生検器具が完全に挿管内に引き込まれた状態の後退位置が一方の極限に相当し、ガイドワイヤが挿管の端部を越えてどこまで遠くに延伸させられるかを制御するために、操作端にクランプ又はリミッタを設けてもよい。
【0087】
この第1設計では、各生検ブラシは、挿入リミッタと後退リミッタとが任意で追加された、知られている種類のものであってよく、実際、複数生検試料採取セッションを配置するためのハウジング自体が生検ブラシとは独立に設けられてもよい。
【0088】
一般に、ハウジングは別個のスカートストッパを不要にするが、ハウジングがスカートストッパで終端してもよい。
【0089】
実施例3
複数試料生検装置の第2設計によると、単一のマニピュレータがハウジングから延び、それ自体が複数の生検器具を収容する。
【0090】
上述のように、スカートストッパなどの挿入深度位置基準を設けてもよい。ただし、複数生検器具システムが、開口部の外部で維持される機構を有する場合、器具の直径を、追加の構造体なしにストッパの役割を果たすのに十分な大きさとしてもよい。
【0091】
従って、選択的に係合可能な結合部が、単一のガイドワイヤと様々な器具との間に設けられる。結合部は、把持要素、取っ手、又は旋回機構などの医師操作インターフェースまで延びるガイドワイヤを、各器具の個別ガイドワイヤに結合する。複数の器具は、ハウジングの役割を果たす回転バレル内に設けられるので有利である。各生検器具は、操作ガイドワイヤと係合されると、それぞれの挿管とともに挿入距離だけ前進させることができ、次に、生検ヘッドを挿管を越えて前進させ、ねじるか又はその他の方法で操作して生検試料を得ることができる。その後、生検ヘッドが挿管内に引き戻され、次に挿管が生検ヘッドカバーとともにカートリッジ内に引き戻され、バレルがひねられ、次に別の生検器具を係合させることができる。
【0092】
従って、結合部は、挿管及びそれぞれの挿管内のガイドワイヤを別々に結合し、制御する、同軸結合部である。例えば、カートリッジ内で挿管の端部が、磁気透過可能なスチールリングで終端してもよい。このようにして、挿管の接続及び取り外しのために磁気結合部を使用することができる。また、典型的には電磁石、又は電磁石リリースを備えた永久磁石である、別の磁石によって、非作動生検器具を所定位置に保持してもよい。ガイドワイヤは、ばね荷重クランプによって外部操作ガイドワイヤに選択的に接続することができる。バレルを回転させるとばね荷重クランプが解放され、次の戻り止め位置に達すると、ばねクランプと位置合わせされた次の生検器具と再係合する。バレル内では、生検器具からのガイドワイヤがそれぞれの挿管の近接端を越えて延びる。
【0093】
バレルは、典型的には少なくとも、患者内への挿管の所望の挿入深度と同じ長さである。従って、12cmの挿入深度を有することが望まれる場合、バレル機構は13cm~16cmの長さとすることができる。
【0094】
図12に示すように、カートリッジ内に複数の同様のブラシが備えられている。
図13では、カートリッジ内に複数の異なるブラシが備えられている。カートリッジは、係合している生検器具のための出口を有する。各ブラシはそれ自体に附随する挿管を有し、挿管はどの器具が係合しているかに応じて独立して患者内に前進させることができる。ハウジングの近接端にある機構が、回転角度、それぞれの作動器具の挿管の器具前進制御機構へのラッチ、医師による操作のためのガイドワイヤ制御機構へのそれぞれの作動器具のガイドワイヤのクランプ、及び場合によっては挿管の偏向角度などのその他の制御により、バレル位置の選択を制御する。
図12に、それぞれのブラシが挿管内に引き戻されると試料採取真空を引くように備えられた、各試料採取ブラシにすぐ近接して設けられた球状部を示す。
【0095】
図14に、1つのガイドワイヤが医師によって自由に操作され、一方、他のガイドワイヤの操作のためのアクセスができないようにロックされるバレル内の機構の一部の端面図を示す。
図13では、1つの生検器具のみがこのような特徴を有する。生検試料採取器具は、例えば、頸管内試料採取器、子宮内膜試料採集器、パンチ試料採集器、及び吸引付き子宮内膜試料採集器であってもよい。
【0096】
場合によっては、挿管自体が、生検器具を所望の領域に向けるように屈曲可能又は角度方向に誘導可能であってもよい。屈曲可能挿管は、単軸であってもよく、すなわち、典型的には、図示されていない、挿管の壁に取り付けられたケーブル、ガイドワイヤ又はフィラメントなどの張力要素にかかる張力の結果としての挿管の端部の湾曲であってもよい。湾曲の角度と、器官に対する挿管の回転角度とを制御することによって、適度な制御範囲がもたらされる。同様に、パンチ、又はスネア、又はカプセル化生検装置も張力によって制御することができ、これはワイヤ又はポリマーフィラメントであってもよい。従って、単一自由度(前進/後退)を有する単一ガイドワイヤの場合が最も簡略な事例であり、追加の制御及び自由度を設けてもよい。これらの器具のための制御機構は機構を介して選択的に係合させてもよく、又はユーザに個別に提供されてもよい。ハウジング内の様々な生検器具とともに使用することができるように、内視鏡撮像装置(図示せず)を、好ましくはハウジングの機構として設けてもよい。例えば、光ファイバ照明付き1mm~3mm内視鏡カメラ、例えばOn Semiconductor社のOVM6946 1/18”400×400撮像装置を設けてもよい。