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特許7303749TIM-1を標的とするキメラ抗原受容体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】TIM-1を標的とするキメラ抗原受容体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230628BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230628BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230628BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230628BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230628BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20230628BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230628BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230628BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230628BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230628BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALI20230628BHJP
   C12N 5/0787 20100101ALI20230628BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230628BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 48/00 20060101ALN20230628BHJP
   A61K 35/76 20150101ALN20230628BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/13
C07K19/00
C07K16/28
C07K14/725
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N5/10
C12N5/0783
C12N5/0786
C12N5/0787
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K35/17
A61P35/00
A61P37/04
A61K48/00
A61K35/76
【請求項の数】 52
(21)【出願番号】P 2019558994
(86)(22)【出願日】2018-01-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 US2018013551
(87)【国際公開番号】W WO2018132695
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2021-01-08
(31)【優先権主張番号】62/445,976
(32)【優先日】2017-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519254945
【氏名又は名称】セルダラ メディカル、エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】515268102
【氏名又は名称】セルデックス セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホー、リ - チン
(72)【発明者】
【氏名】マーシュ、ジュニア、ヘンリー、シー.
(72)【発明者】
【氏名】ケラー、タイボー
(72)【発明者】
【氏名】シュタットハイム、テランス、エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ミュラド、ジョアナ、エム.
(72)【発明者】
【氏名】レダー、ジェイク
【審査官】新留 豊
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-507118(JP,A)
【文献】特表2015-527070(JP,A)
【文献】特表2005-535294(JP,A)
【文献】特表2007-525434(JP,A)
【文献】国際公開第2015/142675(WO,A2)
【文献】特表2009-515897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q1/00-3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)TIM-1に結合する抗原結合ドメイン、
(ii)膜貫通ドメイン、および
(iii)少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む、単離されたキメラ抗原受容体(CAR)であって、
前記抗原結合ドメインは、
(a)配列番号204に示すアミノ酸配列に含まれるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む重鎖可変領域(VH)と、
(b)配列番号205に示すアミノ酸配列に含まれるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)と
を含む、単離されたCAR。
【請求項2】
(a)前記CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3は、それぞれ、配列番号239に示すアミノ酸配列、配列番号240に示すアミノ酸配列、および配列番号241に示すアミノ酸配列を含み、
(b)前記CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3は、それぞれ、配列番号242に示すアミノ酸配列、配列番号243に示すアミノ酸配列、および配列番号244に示すアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の単離されたCAR。
【請求項3】
(a)前記VHは、前記CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含み、配列番号204に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有し、
(b)前記VLは、前記CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含み、配列番号205に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、
請求項1または2に記載の単離されたCAR。
【請求項4】
(a)前記VHは、配列番号204に示すアミノ酸配列を含み、
(b)前記VLは、配列番号205に示すアミノ酸配列を含む、
請求項1~3の何れか1項に記載の単離されたCAR。
【請求項5】
前記抗原結合ドメインは、
(a)一本鎖Fv(scFv)断片、ダイアボディ、Fab、F(ab’)2断片、Fab’断片、またはFv断片を含む抗体断片であり、および/または、
(b)ヒト化されているか、またはキメラ化されている、
請求項1~4の何れか1項に記載の単離されたCAR。
【請求項6】
前記抗原結合ドメインは、
(i)N末端からC末端に向けて前記VH、リンカーおよび前記VLを含むか、
(ii)N末端からC末端に向けて前記VL、リンカーおよび前記VHを含む、
scFv断片を含む、

請求項1~5の何れか1項に記載の単離されたCAR。
【請求項7】
前記抗原結合ドメインは、配列番号210に示すアミノ酸配列を含む、請求項1~6の何れか1項に記載の単離されたCAR。
【請求項8】
前記抗原結合ドメインは、配列番号211に示すアミノ酸配列を含む、請求項1~6の何れか1項に記載の単離されたCAR。
【請求項9】
(i)TIM-1に結合する抗原結合ドメイン、
(ii)膜貫通ドメイン、および
(iii)少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメイン
を含む、単離されたキメラ抗原受容体(CAR)であって、
前記抗原結合ドメインは、
(a)配列番号206に示すアミノ酸配列に含まれるCDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む重鎖可変領域(VH)と、
(b)配列番号207に示すアミノ酸配列に含まれるCDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)と
を含む、単離されたCAR。
【請求項10】
(a)前記CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3は、それぞれ、配列番号245に示すアミノ酸配列、配列番号246に示すアミノ酸配列、および配列番号247に示すアミノ酸配列を含み、
(b)前記CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3は、それぞれ、配列番号248に示すアミノ酸配列、配列番号249に示すアミノ酸配列、および配列番号250に示すアミノ酸配列を含む、
請求項9に記載の単離されたCAR。
【請求項11】
(a)前記VHは、前記CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含み、配列番号206に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有し、
(b)前記VLは、前記CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含み、配列番号207に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、
請求項9または10に記載の単離されたCAR。
【請求項12】
(a)前記VHは、配列番号206に示すアミノ酸配列を含み、
(b)前記VLは、配列番号207に示すアミノ酸配列を含む、
請求項9~11の何れか1項に記載の単離されたCAR。
【請求項13】
前記抗原結合ドメインは、
(i)一本鎖Fv(scFv)断片、ダイアボディ、Fab、F(ab’)2断片、Fab’断片、またはFv断片を含む抗体断片であり、および/または、
(ii)ヒト化されているか、またはキメラ化されている、
請求項9~12の何れか1項に記載の単離されたCAR。
【請求項14】
前記抗原結合ドメインは、
(i)N末端からC末端に向けて前記VH、リンカーおよび前記VLを含むか、
(ii)N末端からC末端に向けて前記VL、リンカーおよび前記VHを含む、
scFv断片を含む、

請求項9~13の何れか1項に記載の単離されたCAR。
【請求項15】
前記抗原結合ドメインは、配列番号212に示すアミノ酸配列を含む、請求項9~14の何れか1項に記載の単離されたCAR。
【請求項16】
前記抗原結合ドメインは、配列番号213に示すアミノ酸配列を含む、請求項9~15の何れか1項に記載の単離されたCAR。
【請求項17】
以下の特徴の1以上を有する、請求項1~16の何れか1項に記載の単離されたCAR:
(I)前記抗原結合ドメインは、細胞毒性薬にコンジュゲートされている、
(II)前記抗原結合ドメインは、リンカー、スペーサー、またはヒンジによって、前記膜貫通ドメインに結合されている、
(III)前記膜貫通ドメインは、
(III-i)CD28、CD3イプシロン、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、TCRアルファ、TCRベータ、及びCD3ゼータからなる群から選択されるタンパク質C
の膜貫通ドメインに由来する、
(IV)前記細胞内シグナル伝達ドメインは、
(IV-i)リンパ球受容体鎖、TCR/CD3複合体タンパク質、Fc受容体サブユニット、IL-2受容体サブユニット、CD3ζ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD66d、CD278(ICOS)、FcεRI、DAP10、及びDAP12からなる群から選択されるタンパク質の細胞内シグナル伝達ドメインであるか、または
(IV-ii)CD3ζに由来する、且つ/或いは
(V)CARは、さらに、
(V-i)MHCクラスI分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、Tollリガンド受容体、B7-H3、BAFFR、BTLA、BLAME(SLAMF8)、CD2、CD4、CD5、CD7、CD8アルファ、CD8ベータ、CD11a、LFA-1(CD11a/CD18)、CD11b、CD11c、CD11d、CD18、CD19、CD19a、CD27、CD28、CD29、CD30、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD84、CD96(Tactile)、CD100(SEMA4D)、CD103、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、CD160(BY55)、SELPLG(CD162)、DNAM1(CD226)、Ly9(CD229)、SLAMF4(CD244、2B4)、ICOS(CD278)、CEACAM1、CDS、CRTAM、DAP10、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB1、ITGB2、ITGB7、KIRDS2、LAT、LFA-1、LIGHT、LTBR、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、PAG/Cbp、PD-1、PSGL1、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAMF7、SLP-76、TNFR2、TRANCE/RANKL、VLA1、VLA-6、及びCD83に特異的に結合するリガンドからなる群から選択されるタンパク質、または
(V-ii)CD28、4-1BB(CD137)、及びDAP10からなる群から選択されるタンパク質
に由来する1つ以上の共刺激ドメインを含む。
【請求項18】
(I)前記膜貫通ドメインが、CD28TMのアミノ酸配列(配列番号215)を含むCD28の膜貫通ドメインを含み、
(II)前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ζCYPのアミノ酸配列(配列番号219)を含むCD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインを含む、
請求項1~17のいずれか1項に記載の単離されたCAR。
【請求項19】
(i)272H-BB(配列番号222)、
(ii)272H-CD28(配列番号223)、または
(iii)272H-DAP10(配列番号224)
のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の単離されたCAR。
【請求項20】
配列番号223のアミノ酸配列を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の単離されたCAR。
【請求項21】
(i)2592H-BB(配列番号226)、
(ii)2592H-CD28(配列番号227)、
(iii)2592H-DAP10(配列番号228)、または
(iv)2592L-CD28(配列番号229)
のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項9~16のいずれか1項に記載の単離されたCAR。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載のCARをコードする、単離された核酸。
【請求項23】
前記CARの前記VHおよび前記VLをそれぞれコードする、配列番号254および配列番号255の配列を含む、請求項22に記載の単離された核酸。
【請求項24】
配列番号260または配列番号261の配列を含む、請求項22または23に記載の単離された核酸。
【請求項25】
配列番号272~275の配列のいずれかを含む、請求項22~24のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項26】
配列番号273の配列を含む、請求項22~25のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項27】
前記CARの前記VHおよび前記VLをそれぞれコードする、配列番号256および配列番号257の配列を含む、請求項22に記載の単離された核酸。
【請求項28】
配列番号262または配列番号263の配列を含む、請求項22または27に記載の単離された核酸。
【請求項29】
配列番号276~279の配列のいずれかを含む、請求項22、26および27のいずれか1項に記載の単離された核酸。
【請求項30】
請求項22~29のいずれか1項に記載の核酸配列を含む、ベクター。
【請求項31】
さらに、
(i)シグナルペプチド、
(ii)T2Aリボソームスキップ配列、
(iii)選択マーカー、
(iv)プロモーター、
(v)ポリ(A)テール、
(vi)3’UTR、
(vii)自殺機構、
(viii)1つ以上の共抑制性受容体、及び/または、
(ix)腫瘍微小環境内で濃縮されたマトリックスメタロプロテアーゼの存在下で開裂される基質ペプチド(「マスクされたCAR」)
をコードする核酸配列を含む、請求項22~29のいずれか1項に記載の単離された核酸または請求項30に記載のベクター。
【請求項32】
配列番号304の核酸配列を含む、請求項31に記載の単離された核酸またはベクター。
【請求項33】
(i)請求項1~21のいずれか1項に記載のCAR、または
(ii)請求項1~21のいずれか1項に記載のCARをコードする核酸もしくはベクター、または請求項22~32のいずれか1項に記載の核酸もしくはベクターを含む、組み換え細胞または単離された細胞。
【請求項34】
(i)請求項19~21のいずれか1項に記載のCAR、および/または
(ii)請求項19~21のいずれか1項に記載のCARをコードする核酸もしくはベクター、または請求項25、26、29、および32のいずれか1項に記載の核酸もしくはベクターを含む、請求項33に記載の組み換え細胞または単離された細胞。
【請求項35】
(i)請求項20に記載のCAR、および/または
(ii)請求項20に記載のCARをコードする核酸もしくはベクター、または請求項26もしくは32に記載の核酸もしくはベクターを含む、請求項33に記載の組み換え細胞または単離された細胞。
【請求項36】
請求項20に記載のCARを含む、T細胞である、請求項33または35に記載の組み換え細胞または単離された細胞。
【請求項37】
(I)(I-i)請求項1~21のいずれか1項に記載のCARまたは(I-ii)請求項33~36のいずれか1項に記載の組み換え細胞もしくは単離された細胞
を含む、医薬組成物。
【請求項38】
(I)において、請求項36に記載の組み換え細胞もしくは単離された細胞である、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
請求項1~21のいずれか1項に記載のCARを発現するように改変された免疫細胞を含む医薬組成物であって、
(I)対象における免疫細胞媒介反応を刺激するために用い、
(II)対象においてTIM-1を発現する細胞の好ましくない増殖と関連する疾患、障害、または状態を治療するために用いおよび/または
(III)対象におけるがんの治療に使用される、
ことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項40】
(I)前記改変免疫細胞が、GM-CSF、IL-6、RANTES(CCL5)、TNF-α、IL-4、IL-10、IL-13およびIFN-γの1つ以上を含む、サイトカイン及びケモカインの産生の増加によって測定される免疫反応を誘導し、
(II)前記改変免疫細胞が、T細胞であり、
(III)前記改変免疫細胞が、請求項33~36のいずれか1項に記載の組み換え細胞もしくは単離された細胞であるか、または請求項22~32のいずれか1項に記載の核酸もしくはベクターを含み、
(IV)前記対象に別の療法または治療薬が施され、且つ/あるいは
(V)別の治療薬が前記改変免疫細胞と組み合わせて投与され、前記治療薬が、(V-i)CAR分子を発現する細胞の有効性を高めるものであり、および/または
(V-ii)CAR分子を発現する細胞の投与に伴う1つ以上の副作用を改善するものである、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
対象において改変免疫細胞集団を拡大するため、または持続性の改変免疫細胞集団を生成するための、請求項1~21のいずれか1項に記載のCARを発現する免疫細胞、請求項22~32のいずれか1項に記載の核酸もしくはベクターを含む免疫細胞、または請求項33~36のいずれか1項に記載の組み換え細胞もしくは単離された細胞である免疫細胞を含む、医薬組成物であって、前記改変免疫細胞は、投与後、少なくとも1ヶ月間は前記対象内に残り、前記改変免疫細胞集団は、
(i)前記対象に投与された少なくとも1つの改変免疫細胞、
(ii)前記対象に投与された改変免疫細胞の後代、
(iii)それらの組み合わせ、及び/または
(iv)記憶T細胞を含む、
医薬組成物。
【請求項42】
請求項22~32のいずれか1項に記載の単離された核酸またはベクターを免疫細胞に導入することを含む、CAR発現免疫細胞を産生するin vitroの方法。
【請求項43】
前記免疫細胞は、T細胞であり、前記単離された核酸またはベクターは、請求項26に記載の単離された核酸または請求項30に記載のベクターである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記リンカーは、配列番号201に示すアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、請求項6または14に記載の単離されたCAR。
【請求項45】
(II)において、前記リンカー、前記スペーサー、または前記ヒンジは、
(II-i)CD28、CD8α、免疫グロブリン定常領域もしくはそのバリアント、免疫グロブリンヒンジ領域、IgG4ヒンジ領域、免疫グロブリンCH1/CL領域、Fc領域、免疫グロブリンCH2ドメイン、免疫グロブリンCH3ドメイン、および/またはそれらの任意の組み合わせからなる群の1つ以上、または
(II-ii)CD28Hのアミノ酸配列(配列番号214)に対して少なくとも90%の同一性を有する、CD28
に由来し、
(III)において、前記CD28は、CD28TMのアミノ酸配列(配列番号215)に対して少なくとも90%の同一性を有し、
(IV-ii)において、前記CD3ζは、CD3ζCYPのアミノ酸配列(配列番号219)に対して少なくとも90%の同一性を有し、
(V-ii)において、前記CD28、4-1BB(CD137)、及びDAP10からなる群から選択されるタンパク質は、CD28CYP(配列番号217)、BBCYP(配列番号216)、もしくはDAP10CYP(配列番号218)のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、請求項17に記載の単離されたCAR。
【請求項46】
(A)前記抗原結合ドメインが、CD28Hのアミノ酸配列(配列番号214)に対して少なくとも90%の同一性を有するCD28のヒンジを介して前記膜貫通ドメインに結合され、及び/または
(B)前記CARは、さらに、CD28、4-1BB、またはDAP10に由来する1つ以上の共刺激ドメインであって、CD28CYP(配列番号217)、BBCYP(配列番号216)、もしくはDAP10CYP(配列番号218)のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する共刺激ドメインを含む、請求項18に記載の単離されたCAR。
【請求項47】
前記ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、およびインビトロ転写ベクターからなる群から選択される、請求項30に記載のベクター
【請求項48】
(i)前記シグナルペプチドは、配列番号230のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、または配列番号280によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有し、
(ii)前記T2Aリボソームスキップ配列は、配列番号231のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、または配列番号281によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有し、
(iii)前記選択マーカーは、配列番号232のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、または配列番号282によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、切断CD19(tCD19)を含む、請求項31に記載のベクター
【請求項49】
(a)初代ヒト細胞もしくは他の哺乳類細胞であるか、またはそれに由来するか、
(b)Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー細胞、好酸球、NK/T細胞、マクロファージ、及び単球から選択される、免疫細胞であるか、および/または
(c)T細胞、T細胞前駆細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT(TEFF)細胞、記憶T細胞、幹細胞記憶T(TSCM)細胞、中央記憶T(TCM)細胞、エフェクター記憶T(TEM)細胞、高分化型エフェクター記憶T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞、デルタ/ガンマT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞、及びリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞から選択される、請求項33に記載の細胞
【請求項50】
前記細胞は、
(i)活性化CARまたは抑制性CARを含む、別のCARを発現する、
(ii)自殺遺伝子を含む、
(iii)別の抗原に特異的である、
(iv)pp65CMV特異的T細胞、CMV特異的T細胞、EBV特異的T細胞、水痘ウイルス特異的T細胞、インフルエンザウイルス特異的T細胞、および/またはアデノウイルス特異的T細胞である、
(v)生存促進シグナルを過剰発現する、
(vi)抗生存シグナルを逆転する、
(vii)Bcl-xLまたはBCL-2を過剰発現する、
(viii)細胞死遺伝子の発現を抑制するまたはその機能を阻害する、
(ix)hTERTを過剰発現する、
(x)Fas発現を排除する、
(xi)TGFβドミナントネガティブ受容体を発現する、
(xii)その内因性TCRの発現を野生型T細胞と比較して低減または排除する、
(xiii)免疫抑制性メディエーターを避ける、
(xiv)ホーミング機構を含む、
(xv)前記CARがTIM-1に結合すると、抗腫瘍細胞傷害性を示す、
(xvi)TIM-1発現細胞への曝露時に、GM-CSF、IL-6、RANTES(CCL5)、TNF-α、IL-4、IL-10、IL-13、およびIFN-γのうちの1つ以上を含む、サイトカイン及び/又はケモカインの産生を増大する、
(xvii)TIM-1発現細胞への曝露時に、乳酸デヒドロゲナーゼ産生で測定される、細胞傷害活性を示す、および/または
(xviii)前記CARがTIM-1に結合すると、活性化または刺激されて増殖する、
の特徴の1つ以上を組み込むようにさらに改変または選択される、請求項49に記載の細胞
【請求項51】
1つ以上の腫瘍関連抗原に特異的に結合する1つ以上のさらなる薬剤を含む、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項52】
(I)前記対象における免疫細胞媒介反応は、前記CARがTIM-1に結合すると、前記改変された免疫細胞が活性化または刺激されて増殖し、それにより、前記対象において免疫細胞媒介反応を刺激することを特徴とし、
(II)前記対象におけるTIM-1を発現する細胞の好ましくない増殖と関連する疾患、障害、または状態の治療は、前記CARがTIM-1に結合すると前記改変免疫細胞が活性化または刺激されて増殖し、それにより、TIM-1を発現する細胞の好ましくない増殖と関連する疾患、障害、または状態を治療し、がん、自己免疫、感染症、及び炎症性疾患から選択される状態の治療のために用いられることを特徴とし、且つ/あるいは
(III)前記対象におけるがんの治療は、
(III-i)前記対象が固形腫瘍を有し、
(III-ii)前記がんの細胞はTIM-1を発現し、
(III-iii)前記がんは、腎細胞癌、卵巣明細胞癌、及び肺癌から選択され、
(III-iv)前記対象が腫瘍を有し、前記腫瘍の増殖及び/または体積を低減するために使用され、及び/または
(III-v)前記治療される対象は、少なくとも1つの化学療法剤に耐性である、
ことを特徴とする、請求項39に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の開示
本出願は、2017年1月13日に出願された米国仮出願第62/445,976号の利益を主張する。当該仮出願は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列の開示
本出願は、その開示の一部として、2018年1月12日に作成され、193,169バイトのサイズを有する「56867o1000.txt」と命名されたファイルに生物学的配列表を含む。当該配列表は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0003】
本明細書に開示する本発明は、抗原であるT細胞免疫グロブリンドメイン・ムチンドメイン1(TIM-1)タンパク質に結合するキメラ抗原受容体(CAR)及びかかるCARの使用に関する。具体的には、TIM-1に結合する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体を提供する。抗TIM-1 CAR構築物をコードするヌクレオチド配列、及び抗TIM-1 CAR構築物を含むアミノ酸配列が含まれる。かかる構築物をコードする核酸を含むベクター、かかる構築物を発現する細胞、医薬組成物、ならびにかかる組成物を作成及び使用する方法も提供する。
【背景技術】
【0004】
卵巣癌は、最も致命的な婦人科悪性腫瘍であり、米国では、毎年22,000人超の女性が診断され、14,000人超が死亡する(Siegel et al.CA Cancer J Clin 2016、66(1):7-30)。5年生存率は過去40年間でほとんど改善されておらず、ほとんどの症例が診断されるステージである転移性卵巣癌の患者では、今のところ30%(最高で)未満である(Siegel et al.CA Cancer J Clin 2016、66(1):7-30)。卵巣癌の特定の亜型では、さらに予後が悪くなる。卵巣明細胞癌(OCCC)は、地域により違いはあるものの、上皮性卵巣癌の症例の5~25%を占め、日本では世界の他の地域よりも発生率が高い(Okamoto et al.Int J Gynecol Cancer 2014 Nov、24(9):S20-5.)。OCCCは、進行期では予後不良であり、救済療法に対する反応率が極めて低く、無増悪生存期間は6ヶ月未満である(Crotzer et al.Gynecol Oncol.2007、105:404-408、Mabuchi et al.J Gynecol Oncol.2016、27:e31、Takano et al.Int J Gynecol Cancer.2008、18:937-942)。従って、生存率を改善し、この癌の治療の意図を治療的なものに向けるためには、従来の卵巣癌治療の診療に直交するアプローチが必要である。
【0005】
腎細胞癌は、もう1つの重要な悪性腫瘍であり、成人の悪性腫瘍の3%、及び腎腫瘍の95%を占める。欧州連合では、2012年に100,000人当たり約85人の新たな患者と35人の死亡が報告された。この割合は、2015年単独で新たな患者が約61,000人のアメリカ合衆国と同程度である。現在、完全な外科的切除が、局所進行性のRCCまたは限局性転移性疾患の患者における腎細胞癌の唯一の根治的治療である。しかしながら、これらの患者は、全身性の進行を発症させるリスクが高く、完全に転移性の疾患に対する選択肢はさらにいっそう限られる。
【0006】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法とは、特定の抗原の認識を可能にする受容体を発現するように患者のリンパ球を遺伝的に改変する新たなタイプの免疫療法を表す。抗原を認識すると、これらの改変T細胞は、それらを強力な細胞キラーに変換させるシグナル伝達ドメインを介して活性化される。このアプローチは、化学療法難治性の血液悪性腫瘍の多くの患者で治癒可能性を示している(Kalos et al.Sci Transl Med.2011、3:95ra73、Maus et al.Cancer Immunol Res.2013、1:26-31、Porter et al.N Engl J Med.2011、365:725-733)が、固形腫瘍では同様の成功が実現されていない。以下を含めたいくつかの理由が、この有効性の違いを説明し得る:免疫抑制性の腫瘍微小環境の存在、T細胞が媒介する殺傷に対する感受性が低いこと、及びon-target off-tumor toxicityを最小限にするために必要な腫瘍選択的標的化の欠如(Lamers et al.J Clin Oncol 2006、24:e20-22)。
【0007】
T細胞免疫グロブリンドメイン・ムチンドメイン(TIM)タンパク質をコードする遺伝子のファミリー(ヒトで3種類及びマウスで8種類)が記載されている。Kuchroo et al.,Nat Rev Immunol 3:454-462(2003)、McIntire et al.,Nat Immunol 2:1109-1116(2001)。TIM遺伝子ファミリーのメンバーは、ヒトでは5q33.2及びマウスでは11B1.1の染色体領域に存在し、アレルギー及び自己免疫疾患に関連している。Shevach,Nat Rev Immunol 2:389-400(2002)、Wills-Karp et al.,Nat Immunol 4:1050-1052(2003)。
【0008】
TIMファミリーのメンバーの1つであるTIM-1は、A型肝炎ウイルス細胞受容体(HAVcr-1)としても知られ、元はA型肝炎ウイルス(HAV)の受容体として発見された(Kaplan et al,EMBO J 15(16):4282-96(1996))。この遺伝子は、のちに腎損傷分子1(KIM-1)としてクローニングされた(Ichimura et al.,J Biol Chem 273:4135-4142(1998)、Han et al.,Kidney Int 62:237-244(2002))。
【0009】
Kaplanらは、この受容体を発現するアフリカミドリザル腎臓(AGMK)初代細胞株のcDNAライブラリからA型肝炎ウイルスの細胞受容体を単離した。米国特許第5,622,861号を参照されたい。そのヒト相同体であるhHAVcr-1(TIM-1としても知られる)がFeigelstock et al.,J Virology 72(8):6621-6628(1998)に記載された。同じ分子は、腎臓への損傷後の腎組織で上方制御されることが分かった腎損傷関連分子(KIM)として、PCT公開第WO97/44460及び第WO98/53071号ならびに米国特許第6,664,385号に記載された。
【0010】
TIM-1は、1型膜タンパク質であり、新規な6システインの免疫グロブリン様ドメイン及びムチンのトレオニン/セリン/プロリンリッチ(T/S/P)ドメインを含む。TIM-1は、元はラットで同定された。TIM-1は、マウス、アフリカミドリザル、及びヒトで発見されている(Feigelstock et al.,J Virol 72(8):6621-8(1998)。アフリカミドリザルの相同分子種がヒトTIM-1と最も密接に関連しており、358個の整列アミノ酸に関して77.6%のアミノ酸同一性を示している。ラット及びマウスの相同分子種は、アフリカミドリザルより短い整列配列のセグメントに関してではあるが、それぞれ、50%(155/310)及び45.6%(126/276)のアミノ酸同一性を示す。TIM-1のIg様ドメインに対するモノクローナル抗体は、インビトロでA型肝炎ウイルス感染を防ぐことが分かっている。Silberstein et al.,J Virol 75(2):717-25(2001)。さらに、KIM-1は、正常な腎臓では低レベルで発現することが分かったが、その発現は、虚血後の腎臓では劇的に増加する。Ichimura et al.,J Biol Chem 273(7):4135-42(1998)。
【0011】
TIM-1は、喘息に関与しているマウスシンテニー領域のTaprとして知られるヒト第5染色体の領域に位置する。Tapr、すなわち、主要なT細胞制御座位は、気道過敏性の発症を制御する。Wills-Karp,Nature Immunology 2:1095-1096(2001)、McIntire et al.,Nature Immunology 2:1109-1116(2001)。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、TIM-1を標的とするキメラ抗原受容体に関する。
【0013】
1つの実施形態では、本発明は、TIM-1に結合する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。
【0014】
該CARの抗原結合ドメインは、TIM-1に結合する抗体またはその抗原結合断片であり得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、該抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、多特異性抗体、ヒト化抗体、四量体抗体、四価抗体、多重特異性抗体、一本鎖抗体、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、scFc融合タンパク質、一本鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組み換え抗体、ハイブリッド抗体、変異型抗体、CDR移植抗体、Fabを含む抗体断片、F(ab’)2、Fab’断片、Fv断片、一本鎖Fv(scFv)断片、Fd断片、dAb断片、ダイアボディ、ナノボディ、二価ナノボディ、サメ可変IgNARドメイン、VHH抗体、ラクダ抗体、及びミニボディからなる群から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態では、該抗体またはその抗原結合断片は、ヒトIgG抗体またはその抗原結合断片である。
【0017】
好ましい実施形態では、該抗原結合ドメインは、FabまたはscFvである。
【0018】
いくつかの態様では、該抗原結合ドメインは、TIM-1の細胞外ムチンドメイン領域に結合し得る。
【0019】
別の態様では、該抗原結合ドメインは、TIM-1(配列番号315)の192~197位のアミノ酸残基に対応するアミノ酸配列LPRQNH(配列番号97)に結合し得る。
【0020】
さらに別の態様では、該抗体またはその抗原結合断片は、TIM-1に対する結合をめぐって、Ab1.29、Ab2.70.2、もしくはAb2.59.2のVL鎖のアミノ酸配列(配列番号203、205、もしくは207)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する、または、配列番号253、255、もしくは257によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するVL鎖を含み、かつ、Ab1.29、Ab2.70.2、もしくはAb2.59.2のVH鎖のアミノ酸配列(配列番号202、204、もしくは206)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する、または、配列番号252、254、もしくは256によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するVH鎖を含む抗体と競合し得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、該抗体またはその抗原結合断片は、Ab1.29、Ab2.70.2、もしくはAb2.59.2のVL鎖のアミノ酸配列(配列番号203、205、もしくは207)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する、または、配列番号253、255、もしくは257によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するVL鎖を含み、かつ、Ab1.29、Ab2.70.2、もしくはAb2.59.2のVH鎖のアミノ酸配列(配列番号202、204、もしくは206)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する、または、配列番号252、254、もしくは256によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するVH鎖を含む。
【0022】
該抗原結合ドメインのVL及びVH鎖は、可動性リンカーによって結合され得る。好ましい実施形態では、該可動性リンカーは、(G4S)3すなわち(GGGGSGGGGSGGGGS)リンカーであり、任意に、配列番号201のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するか、または、配列番号251によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する。
【0023】
ある特定の実施形態では、該抗原結合ドメインは、scFv 1.29H、1.29L、2.70.2H、2.70.2L、2.59.2H、もしくは2.59.2Lのアミノ酸配列(配列番号208、209、210、211、212、もしくは213)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有し得るか、または、配列番号258、259、260、261、262、もしくは263によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する。
【0024】
1つの態様では、該抗原結合ドメインのVL鎖は、該CARのN末端に位置する(該VL鎖は、該CARのVH鎖に対してN末端に位置する)。
【0025】
別の態様では、該抗原結合ドメインのVH鎖は、該CARのN末端に位置する(該VH鎖は、該CARのVL鎖に対してN末端に位置する)。
【0026】
いくつかの実施形態では、該抗原結合ドメインは、任意にCD28、CD8α、免疫グロブリン定常領域もしくはそのバリアント、免疫グロブリンヒンジ領域、IgG4ヒンジ領域、免疫グロブリンCH1/CL領域、Fc領域、免疫グロブリンCH2ドメイン、免疫グロブリンCH3ドメイン、及び/またはそれらの任意の組み合わせからなる群の1つ以上に由来するリンカー、スペーサー、またはヒンジによって、膜貫通ドメインに結合される。
【0027】
ある特定の実施形態では、該リンカー、スペーサー、またはヒンジは、CD28に由来し、任意にCD28Hのアミノ酸配列(配列番号214)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するか、または配列番号264によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する。
【0028】
1つの態様では、該抗原結合ドメインは、細胞毒性薬にコンジュゲートされ得る。
【0029】
該膜貫通ドメインは、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CDS、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、TCRアルファ、TCRベータ、またはTCRゼータからなる群から選択されるタンパク質に由来する膜貫通ドメインを含み得る。好ましい実施形態では、該膜貫通ドメインは、CD28に由来し、任意にCD28TMのアミノ酸配列(配列番号215)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するか、または配列番号265によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する。
【0030】
該細胞内シグナル伝達ドメインは、リンパ球受容体鎖、TCR/CD3複合体タンパク質、Fc受容体サブユニット、またはIL-2受容体サブユニットの細胞内シグナル伝達ドメインであり得る。好ましい実施形態では、該細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζに由来し、任意にCD3ζCYPのアミノ酸配列(配列番号219)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するか、または配列番号269によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する。
【0031】
本発明のCARは、さらに、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原I(LFA-1)、CD2、CD5、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、DAP10、及びCD83に特異的に結合するリガンドからなる群から選択されるタンパク質に由来する1つ以上の共刺激ドメインを含み得る。
【0032】
好ましい実施形態では、該1つ以上の共刺激ドメインは、CD28、4-1BB(CD137)、及びDAP10からなる群から選択されるタンパク質に由来し、任意に、CD28CYP(配列番号217)、BBCYP(配列番号216)、もしくはDAP10CYP(配列番号218)のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するか、または配列番号266、267、もしくは268によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する。
【0033】
1つの態様では、該抗原結合ドメインは、2.70.2Hのアミノ酸配列(配列番号210)を含むscFvを含み、該膜貫通ドメインは、CD28TMのアミノ酸配列(配列番号215)を含むCD28の膜貫通ドメインを含み、該細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζCYPのアミノ酸配列(配列番号219)を含むCD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0034】
別の態様では、該抗原結合ドメインは、2.59.2H(配列番号212)または2592L(配列番号213)のアミノ酸配列を含むscFvを含み、該膜貫通ドメインは、CD28TMのアミノ酸配列(配列番号215)を含むCD28の膜貫通ドメインを含み、該細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζCYPのアミノ酸配列(配列番号219)を含むCD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0035】
該抗原結合ドメインは、任意にCD28Hのアミノ酸配列(配列番号214)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する、または配列番号264によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するCD28のヒンジを介して膜貫通ドメインに結合され得る。
【0036】
本発明のCARは、さらに、任意にCD28CYP(配列番号217)、BBCYP(配列番号216)、もしくはDAP10CYP(配列番号218)のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する、または配列番号266、267、もしくは268によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するCD28、4-1BB、またはDAP10に由来する1つ以上の共刺激ドメインを含み得る。
【0037】
1つの態様では、該CARは、2592H-BBのアミノ酸配列(配列番号220)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する、または配列番号270によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0038】
1つの態様では、該CARは、2592H-BBのアミノ酸配列(配列番号221)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する、または配列番号271によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0039】
1つの態様では、該CARは、2.70.2H-BBのアミノ酸配列(配列番号222)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する、または配列番号272によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0040】
1つの態様では、該CARは、2.70.2H-CD28のアミノ酸配列(配列番号223)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する、または配列番号273によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0041】
1つの態様では、該CARは、2.70.2H-DAP10のアミノ酸配列(配列番号224)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する、または配列番号274によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0042】
1つの態様では、該CARは、2592H-BBのアミノ酸配列(配列番号225)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する、または配列番号275によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0043】
1つの態様では、該CARは、2592H-BBのアミノ酸配列(配列番号226)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する、または配列番号276によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0044】
1つの態様では、該CARは、2.59.2H-CD28(配列番号227)もしくは2.59.2L-CD28(配列番号229)のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する、または配列番号277もしくは279によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0045】
1つの態様では、該CARは、2.59.2H-DAP10のアミノ酸配列(配列番号228)に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する、または配列番号278によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、本発明のCARを発現する細胞傷害性免疫細胞は、当該CARがTIM-1に結合した場合に活性化または刺激されて増殖し得る。
【0047】
いくつかの実施形態では、該CARは、細胞傷害性免疫細胞の表面で発現された場合に、TIM-1を発現する細胞を殺傷するように該細胞傷害性免疫細胞に指示する。
【0048】
いくつかの実施形態では、該細胞傷害性免疫細胞は、Tリンパ球である。
【0049】
本発明はまた、前述の実施形態のいずれかによる少なくとも1つのCARを発現する組み換え細胞または単離された細胞を提供する。いくつかの実施形態では、該細胞はヒトまたは他の哺乳類細胞であり得る。好ましい実施形態では、該細胞は、ヒト初代細胞であるか、またはそれに由来する。
【0050】
いくつかの実施形態では、該組み換え細胞または単離された細胞は、免疫細胞であり得る。1つの態様では、この免疫細胞は、T及びBリンパ球、ナチュラルキラー細胞、好酸球、NK/T細胞、マクロファージ、ならびに単球から選択される。別の態様では、該免疫細胞は、T細胞またはT細胞前駆細胞である。
【0051】
いくつかの実施形態では、該免疫細胞は、T細胞、CD4T細胞、CD8T細胞、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT(TEFF)細胞、記憶T細胞、幹細胞記憶T(TSCM)細胞、中央記憶T(TCM)細胞、エフェクター記憶T(TEM)細胞、高分化型エフェクター記憶T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞、デルタ/ガンマT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞、及びリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞から選択される。1つの態様では、前述の実施形態のT細胞は、その内因性TCRが発現されない、機能的に発現されない、または野生型T細胞と比較して低いレベルで発現されるように改変される。
【0052】
別の態様では、前述の実施形態のいずれかの免疫細胞は、MHCでもMHCでもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、前述のいずれかによる組み換え細胞または単離された細胞は、以下の改変のうちの1つ以上を組み込むようにさらに改変され得る:別のCAR、任意に活性化CARまたは抑制性CARを発現する、特定の条件下で発現し得る自殺遺伝子を含む、別の抗原、任意に腫瘍抗原に特異的である、生存促進シグナルを過剰発現する、抗生存シグナルを逆転する、Bcl-xLまたはBCL-2を過剰発現する、BakまたはBaxが含まれるがこれに限定されない細胞死遺伝子の発現を抑制するまたはその機能を阻害する、hTERTを過剰発現する、Fas発現を排除する、TGFβドミナントネガティブ受容体を発現する、免疫抑制性メディエーターを避ける、及び/またはホーミング機構を含む。いくつかの実施形態では、該細胞は、pp65CMV特異的T細胞、CMV特異的T細胞、EBV特異的T細胞、水痘ウイルス特異的T細胞、インフルエンザウイルス特異的T細胞、及び/またはアデノウイルス特異的T細胞から選択される。
【0054】
本発明はさらに、医薬的有効量の前述のいずれかの細胞またはCARを含む医薬組成物を提供する。
【0055】
本発明はまた、TIM-1に結合する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離された核酸配列を提供する。
【0056】
該単離された核酸は、先の態様及び実施形態の特徴のいずれかを有するCARをコードし得る。
【0057】
1つの態様では、該単離された核酸配列は、さらに、T2Aリボソームスキップ配列を含み、任意に配列番号231のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するか、または配列番号281によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する。
【0058】
いくつかの実施形態では、該単離された核酸配列はさらに、選択マーカーをコードする配列を含む。1つの態様では、該選択マーカーは、切断CD19(tCD19)であり、任意に配列番号232のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するか、または配列番号282によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する。
【0059】
別の態様では、該単離された核酸配列はさらに、自殺機構をコードする配列を含む。
【0060】
別の態様では、該単離された核酸配列はさらに、1つ以上の共抑制性受容体、例えば、CTLA-4またはPD-1のシグナル伝達ドメインを含み(「iCAR」)、及び/または、腫瘍微小環境内で濃縮されたマトリックスメタロプロテアーゼの存在下で開裂される基質ペプチドを発現する(「マスクされたCAR」)。
【0061】
さらに別の態様では、該単離された核酸配列はさらにシグナルペプチドを含み、任意に配列番号230のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するか、または配列番号280によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する。
【0062】
本発明はさらに、先の実施形態のいずれか1つのキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含むベクターを提供する。
【0063】
該ベクターはさらに、T2Aリボソームスキップ配列を含む場合があり、任意に配列番号231のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するか、または配列番号281によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する。
【0064】
該ベクターはさらに、選択マーカーをコードする核酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、該選択マーカーは、切断CD19(tCD19)の場合があり、任意に配列番号232のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有するか、または配列番号282によってコードされるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、もしくは100%の同一性を有する。
【0065】
該ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターからなる群から選択され得る。
【0066】
1つの態様では、該ベクターはさらに、プロモーターを含む。
【0067】
別の態様では、該ベクターは、インビトロで転写されたベクターである。
【0068】
別の態様では、該ベクターはさらに、ポリ(A)テール及び/または3’UTRを含む。
【0069】
本発明はさらに、前述の実施形態のいずれかのキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含む単離された細胞を提供する。
【0070】
いくつかの実施形態では、該細胞は、細胞傷害性免疫細胞であり、任意にT細胞、CD4T細胞、CD8T細胞、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT(TEFF)細胞、記憶T細胞、幹細胞記憶T(TSCM)細胞、中央記憶T(TCM)細胞、エフェクター記憶T(TEM)細胞、高分化型エフェクター記憶T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞、デルタ/ガンマT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞、及びリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞から選択される。
【0071】
いくつかの実施形態では、該細胞は、CARがTIM-1に結合すると、抗腫瘍細胞傷害性を示す。
【0072】
いくつかの実施形態では、該CAR発現細胞は、TIM-1発現細胞への曝露時にサイトカイン及びケモカインの産生を増大する。好ましい実施形態では、該産生されるサイトカイン及びケモカインは、GM-CSF、IL-6、RANTES(CCL5)、TNF-α、IL-4、IL-10、IL-13、またはIFN-γのうちの1つ以上である。
【0073】
いくつかの実施形態では、該細胞は、TIM-1発現細胞への曝露時に、任意に乳酸デヒドロゲナーゼ産生で測定される細胞傷害活性を示す。
【0074】
いくつかの実施形態では、該細胞は、別の抗原、任意に腫瘍抗原に対して特異的である場合があり、pp65CMV特異的T細胞、CMV特異的T細胞、EBV特異的T細胞、水痘ウイルス特異的T細胞、インフルエンザウイルス特異的T細胞、及び/またはアデノウイルス特異的T細胞から選択される場合があり、生存促進シグナルを過剰発現させるため、抗生存シグナルを逆転させるため、Bcl-xLまたはBCL-2を過剰発現させるため、BakまたはBaxが含まれるがこれに限定されない細胞死遺伝子の発現を抑制するまたはその機能を阻害するため、hTERTを過剰発現させるため、Fasを欠損させるため、またはTGFβドミナントネガティブ受容体を発現させるためにさらに改変される場合があり、免疫抑制性メディエーターを避けるためにさらに改変される場合があり、さらにホーミング機構を含み、及び/または、さらに別のCAR、任意に活性化または抑制性CARを含む場合がある。
【0075】
本発明はまた、前述の実施形態のいずれかのCARまたは単離された細胞の治療有効量を含む治療用または医薬組成物を提供する。
【0076】
本発明はまた、前述の実施形態のいずれかを含むCARもしくは単離された細胞または組成物の治療有効量を投与することを含む免疫療法の方法を包含する。いくつかの実施形態では、本方法は、がん、自己免疫、感染症、及び炎症性疾患から選択される状態の治療に使用され得る。
【0077】
本発明はまた、対象における免疫細胞媒介反応を刺激する方法を包含し、該方法は、それを必要とする対象に対して、(i)TIM-1に結合する抗原結合ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、及び(iii)少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARを発現するように改変された免疫細胞の有効量を投与することを含み、該改変免疫細胞は、該CARがTIM-1に結合すると活性化または刺激されて増殖し、それにより、当該対象において免疫細胞媒介反応を刺激する。
【0078】
本発明はまた、対象においてTIM-1を発現する細胞の好ましくない増殖と関連する疾患、障害、または状態を治療する方法を提供し、該方法は、それを必要とする対象に対して、(i)TIM-1に結合する抗原結合ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、及び(iii)少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARを発現するように遺伝的に改変された免疫細胞の有効量を投与することを含み、該改変免疫細胞は、該CARがTIM-1に結合すると活性化または刺激されて増殖し、それにより、TIM-1を発現する細胞の好ましくない増殖と関連する疾患、障害、または状態を治療する。
【0079】
本発明はさらに、対象におけるがんの治療方法を包含し、該方法は、それを必要とする対象に対して、(i)TIM-1に結合する抗原結合ドメイン、(ii)膜貫通ドメイン、及び(iii)少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARを発現するように改変された免疫細胞の有効量を投与することを含む。
【0080】
いくつかの実施形態では、該対象における免疫反応は、サイトカイン及びケモカインの産生を介して測定される。好ましい実施形態では、該サイトカイン及びケモカインは、GM-CSF、IL-6、RANTES(CCL5)、TNF-α、IL-4、IL-10、IL-13、またはIFN-γである。
【0081】
いくつかの実施形態では、該改変免疫細胞は、T細胞である。該T細胞は、自己T細胞でもドナー由来T細胞でもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、該方法は、固形腫瘍であるがんの治療に使用される。該がんは、癌腫、黒色腫、肉腫、神経膠腫、及び皮膚癌からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、該腫瘍細胞はTIM-1を発現する。
【0083】
いくつかの実施形態では、該がんは、腎細胞癌、卵巣明細胞癌、または肺癌である。好ましい実施形態では、該がんは、卵巣明細胞癌または腎細胞癌である。
【0084】
前述の方法の改変免疫細胞は、局所的に、腸内に、または非経口的に投与され得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、該改変免疫細胞は、腫瘍増殖及び/または腫瘍体積を低下させる。
【0086】
該方法の対象は、少なくとも1つの化学療法剤に耐性であり得る。
【0087】
1つの態様では、該方法はさらに、対象に別の療法を施すことを含む。いくつかの実施形態では、該療法は、化学療法、放射線療法、毒素系療法、放射化学系療法、または外科的療法である。
【0088】
前述の方法のいずれについても、該改変細胞は、別の治療薬と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態では、該治療薬は、CAR分子を発現する細胞の有効性を高める。いくつかの実施形態では、該治療薬は、CAR分子を発現する細胞の投与に伴う1つ以上の副作用を改善する。
【0089】
これらの方法の改変免疫細胞は、前述のいずれかのCARを発現する場合もあれば、前述のいずれかの当該CARをコードする核酸を発現する場合もある。
【0090】
本発明はまた、対象において持続性の改変免疫細胞集団を生成する方法を提供し、該方法は、前述の実施形態のいずれかのキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含む免疫細胞を当該対象に投与することを含み、該改変免疫細胞は、投与後、少なくとも1ヶ月間は該対象内に残る。該持続性の改変免疫細胞集団は、対象に投与された少なくとも1つの改変免疫細胞、対象に投与された改変免疫細胞の後代、またはそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、該持続性の改変免疫細胞集団は、記憶T細胞を含む。いくつかの実施形態では、該持続性の改変免疫細胞集団は、投与後少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヵ月、少なくとも11ヵ月、少なくとも12ヵ月、少なくとも18ヵ月、少なくとも2年、または少なくとも3年間、該対象内に残る。
【0091】
本発明はまた、対象において改変免疫細胞集団を拡大する方法を包含し、該方法は、前述の実施形態のいずれかのキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を含む免疫細胞を当該対象に投与することを含み、該投与された改変免疫細胞は、該対象内で子孫細胞の集団を産生する。いくつかの実施形態では、該子孫細胞の集団は、投与後少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヵ月、少なくとも11ヵ月、少なくとも12ヵ月、少なくとも18ヵ月、少なくとも2年、または少なくとも3年間、該対象内に残る。
【0092】
本発明はさらに、前述の実施形態のいずれかのキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を発現するように改変された免疫細胞、及び医薬的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物を企図する。該組成物はさらに、1つ以上の腫瘍関連抗原に特異的に結合する1つ以上のさらなる薬剤を含み得る。該組成物は、局所的に、腸内に、または非経口的に投与するのに適し得る。
【0093】
本発明はまた、前述の実施形態のいずれかのキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸配列を免疫細胞に導入することを含む、CAR発現免疫細胞の産生方法を包含する。本発明はまた、前述の実施形態のいずれかの核酸配列を免疫細胞に導入することを含む、CAR発現免疫細胞の産生方法を包含する。
【0094】
本発明はまた、免疫細胞を、前述の実施形態のいずれかのベクターで形質導入することを含む、CAR発現免疫細胞の産生方法を提供する。
【0095】
CAR発現免疫細胞の該産生方法の1つの態様では、該CAR発現免疫細胞は、フローサイトメトリーまたは免疫蛍光アッセイを介して測定される当該CARの発現に基づいて単離される。これらの方法の別の態様では、該CAR発現免疫細胞は、CD3及びtCD19発現が高い。これら方法のさらに別の態様では、該CAR発現免疫細胞は、磁気ビーズ、可溶性抗体、及び/またはサイトカインへの曝露を介して刺激されて増殖する。1つの態様では、該CAR発現免疫細胞は、OKT3及びIL-2への曝露を介して刺激されて増殖する。
【0096】
本発明はまた、インビトロ転写RNAまたは合成RNAを細胞に導入することを含む、RNA改変細胞集団の生成方法を包含し、該RNAは、先行請求項のいずれかに記載のCAR分子をコードする核酸を含む。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】TIM-1 CARの一般的な概略図を含む。
図2図2A~2Cは、様々なTIM-1 CARを示す概略図を含む。図2Aは、1つの起こり得るCARの組織、すなわち、抗TIM-1 ScFv、CD28ヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD28細胞質/共刺激ドメイン、及びCD3ζ細胞質/細胞内シグナル伝達ドメインを示す。図2Bは、3種の異なる抗体、すなわち、Ab1.29、Ab2.70.2、及びAb2.59.2由来のVLならびにVH領域に関する2種の異なる抗TIM-1 ScFv構造(VL-リンカー-VH及びVH-リンカー-VL)を示す。これら6種のscFvの配列は、配列番号208、209、210、211、212、及び213に提供される。図2Cは、様々なTIM-1 CARをコードする6種の異なる遺伝子構築物を示す。これらのCAR遺伝子構築物は、シグナルペプチドの後に、順に、抗TIM-1 ScFv、CD28ヒンジ及び膜貫通ドメイン、CD28/4-1BB/DAP10共刺激ドメイン、CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン、T2Aリボソームスキップ配列、ならびに切断CD19をコードする遺伝子が続くことを特徴とする。
図3】インビトロアッセイ用の単離されたCAR発現細胞の可能性がある製造方法を示すフローチャートを含む。
図4】TIM-1 CAR T細胞の例示的なフローサイトメトリー分析の表にまとめた結果を含む。この分析は、生きていた細胞(「生」)のパーセンテージ、CD3であった生細胞のパーセンテージ(「CD3」)、CD4であったCD3細胞のパーセンテージ(「CD4[CD3]」)、CD8であったCD3細胞のパーセンテージ(「CD8[CD3]」)、TIM-1 CARを発現する生細胞のパーセンテージ(「TIM-1 CAR」)、及び切断CD19を発現するCD3細胞のパーセンテージ(「CD19[CD3]」)を示す。
図5図5A~5Eは、様々な細胞型への曝露時にTIM-1 CAR T細胞のIFN-γ産生をpg/mL単位で示すデータを含む。図5Aは、IFN-γ産生を(左から右へ)対照ベクター形質導入細胞、129H(129H-CD28)CAR T細胞、272H(272H-CD28)CAR T細胞、129HtCD19(129H-CD28+tCD19)CAR T細胞、272HtCD19(272H-CD28+tCD19)CAR T細胞、及び7種の他の培地または細胞対照について示す。図5Bは、IFN-γ産生を(左から右へ)対照ベクター形質導入細胞、272H(272H-CD28)CAR T細胞、272HtCD19(272H-CD28+tCD19)CAR T細胞、及び7種の他の培地または細胞対照について示す。図5A及び図5Bに関しては、IFN-γ産生は、(左から右へ)細胞との共培養なし、Caki-1(腎癌)細胞、A549(肺癌)細胞、及びIGROV-1(卵巣癌)細胞への曝露時に測定した。図5Cは、IFN-γ産生を(左から右へ)2592H(2592H-CD28)CAR T細胞、2592L(2592L-CD28)CAR T細胞、及びmock形質導入細胞について、(左から右へ)EL4(非TIM-1発現)細胞、A549細胞、Caki-1細胞、IGROV-1細胞、及び抗TIM-1抗体の存在下でのIGROV-1細胞への曝露時で示す。図5Dは、IFN-γ産生を(左から右へ)mock形質導入細胞、2592H(2592H-CD28)CAR T細胞、及び272H(272H-CD28)CAR T細胞について、EL4細胞(左)、及びIGROV-1細胞(右)への曝露時で示す。図5Eは、IFN-γ産生を2592H(2592H-CD28)CAR T細胞(左)、及びmock形質導入細胞(右)について、(左から右へ)IGROV-1細胞、抗TIM-1抗体の存在下でのIGROV-1細胞、及び培地対照との22時間のインキュベーション後で示す。
図6図6A~6Bは、GM-CSF産生を、(左から右へ)培地対照、EL-4細胞、Caki-1細胞、A549細胞、IGROV-1細胞、及び抗TIM-1抗体の存在下でのIGROV-1細胞への曝露時で報告するデータを含む。これらのレベルは、図6Aでは、(左から右へ)対照ベクター形質導入細胞、272H(272H-CD28)CAR T細胞、及び272HtCD19(272H-CD28+tCD19)CAR T細胞について、ならびに図6Bでは、mock形質導入細胞、2592H(2592H-CD28)CAR T細胞、及び2592L(2592L-CD28)CAR T細胞について報告されている。
図7図7A~7Bは、IL-6産生を、(左から右へ)培地対照、EL-4細胞、Caki-1細胞、A549細胞、IGROV-1細胞、及び抗TIM-1抗体の存在下でのIGROV-1細胞への曝露時で報告するデータを含む。これらのレベルは、図7Aでは、(左から右へ)対照ベクター形質導入細胞、272H(272H-CD28)CAR T細胞、及び272HtCD19(272H-CD28+tCD19)CAR T細胞について、ならびに図7Bでは、mock形質導入細胞、2592H(2592H-CD28)CAR T細胞、及び2592LCAR T細胞について報告されている。
図8図8A~8Bは、TNF-α産生を、(左から右へ)培地対照、EL-4細胞、Caki-1細胞、A549細胞、IGROV-1細胞、及び抗TIM-1抗体の存在下でのIGROV-1細胞への曝露時で報告するデータを含む。これらのレベルは、図8Aでは、(左から右へ)対照ベクター形質導入細胞、272H(272H-CD28)CAR T細胞、及び272HtCD19(272H-CD28+tCD19)CAR T細胞について、ならびに図8Bでは、mock形質導入細胞、2592H(2592H-CD28)CAR T細胞、及び2592L CAR T細胞について報告されている。
図9図9A~9Bは、RANTES産生を、(左から右へ)培地対照、EL-4細胞、Caki-1細胞、A549細胞、IGROV-1細胞、及び抗TIM-1抗体の存在下でのIGROV-1細胞への曝露時で報告するデータを含む。これらのレベルは、図9Aでは、(左から右へ)対照ベクター形質導入細胞、272H(272H-CD28)CAR T細胞、及び272HtCD19(272H-CD28+tCD19)CAR T細胞について、ならびに図9Bでは、mock形質導入細胞、2592H(2592H-CD28)CAR T細胞、及び2592L CAR T細胞について報告されている。
図10図10A~10Bは、IL-10産生を、(左から右へ)培地対照、EL-4細胞、Caki-1細胞、A549細胞、IGROV-1細胞、及び抗TIM-1抗体の存在下でのIGROV-1細胞への曝露時で報告するデータを含む。これらのレベルは、図10Aでは、(左から右へ)対照ベクター形質導入細胞、272H(272H-CD28)CAR T細胞、及び272HtCD19(272H-CD28+tCD19)CAR T細胞について、ならびに図10Bでは、mock形質導入細胞、2592H(2592H-CD28)CAR T細胞、及び2592L CAR T細胞について報告されている。
図11図11A~11Bは、IL-4産生を、(左から右へ)培地対照、EL-4細胞、Caki-1細胞、A549細胞、IGROV-1細胞、及び抗TIM-1抗体の存在下でのIGROV-1細胞への曝露時で報告するデータを含む。これらのレベルは、図11Aでは、(左から右へ)対照ベクター形質導入細胞、272H(272H-CD28)CAR T細胞、及び272HtCD19(272H-CD28+tCD19)CAR T細胞について、ならびに図11Bでは、mock形質導入細胞、2592H(2592H-CD28)CAR T細胞、及び2592L CAR T細胞について報告されている。
図12図12A~12Bは、IL-13産生を、(左から右へ)培地対照、EL-4細胞、Caki-1細胞、A549細胞、IGROV-1細胞、及び抗TIM-1抗体の存在下でのIGROV-1細胞への曝露時で報告するデータを含む。これらのレベルは、図12Aでは、(左から右へ)対照ベクター形質導入細胞、272H(272H-CD28)CAR T細胞、及び272HtCD19(272H-CD28+tCD19)CAR T細胞について、ならびに図12Bでは、mock形質導入細胞、2592H(2592H-CD28)CAR T細胞、及び2592L CAR T細胞について報告されている。
図13図13A~13Cは、培地中の乳酸デヒドロゲナーゼ検出を介して示される、TIM-1 CARのインビトロ細胞傷害性データを含む。各群において、左側のバーは、EL4細胞に対する細胞傷害性を報告し、右側のバーは、IGROV-1細胞に対する細胞傷害性を報告している。図13Aでは、細胞傷害性を、対照ベクター形質導入細胞、272H(272H-CD28)CAR T細胞、及び272HtCD19(272H-CD28+tCD19)CAR T細胞について、がん細胞と様々な比にて報告している。図13Bでは、細胞傷害性を、mock形質導入細胞及び2592L CAR T細胞について報告している。図13Cでは、細胞傷害性を、mock形質導入細胞及び2592H(2592H-CD28)CAR T細胞について報告している。
図14】インビボアッセイ用の単離されたCAR発現細胞の可能性がある製造方法を示すフローチャートを含む。
図15A】mock形質導入細胞、ならびに2592HtCD19(2592H-CD28+tCD19)、2592LtCD19、及び272HtCD19(272H-CD28+tCD19)構築物で形質導入された細胞について図14に示す通りに製造された細胞に関する成長曲線を含む。
図15B】mock形質導入細胞、ならびに2592HtCD19(2592H-CD28+tCD19)、2592LtCD19、及び272HtCD19(272H-CD28+tCD19)構築物で形質導入された細胞について図14に示す通りに製造された細胞に関する細胞生存率の評価を含む。
図16】形質導入細胞のフローサイトメトリーによる特徴づけ用の3種の抗体カクテルを示す表を含む。
図17図16のAb1の構成を用いて検出された、図14に示す通りに製造された形質導入細胞のフローサイトメトリー分析を表にまとめた結果を含む。
図18】A549細胞、Caki-1細胞、IGROV-1細胞、EL4細胞、及び培地単独に曝露された1:1比のmock形質導入細胞、2592HtCD19(2592H-CD28+tCD19)CAR T細胞、2592LtCD19 CAR T細胞、及び272HtCD19(272H-CD28+tCD19)CAR T細胞について、IFN-γ産生を測定する24時間機能分析の結果を含む。また、がん細胞単独の対照も含む。いずれの場合も、分析のために細胞を緩衝液に1:4で希釈した。
図19】インビボ抗TIM-1 CAR T有効性試験のためのマウスの処理群の配置図を含む。
図20図20A~20Bは、SCID-beigeマウスにおけるインビボ抗TIM-1 CAR Tの有効性試験の結果を含む。2.5×10個のIGROV-1細胞を単独で投与したか、または、7.5×10個のmock形質導入細胞またはCAR形質導入細胞とともに投与した。この混合物を、マウスが5匹であった対照群を除き、1群当たり10匹のマウスに対して、皮下投与により、0日でSCID-beigeマウスの右脇腹に注入した。図20Aは、週2回測定した腫瘍サイズをmm単位で示す。これらの線(上から下へ)は、CAR Tの投与なし(食塩水)、mock CAR T、2592H_tCD19 CAR T、2592L_tCD19 CAR T、及び272H_tCD19 CAR Tに対応する。図20Bは、20日目に測定した腫瘍サイズの比較を示す。データは、(左から右へ)食塩水のみ、7.5×10個のmock形質導入細胞、7.5×10個の2592H_tCD19 CAR T細胞、及び7.5×10個の272H_tCD19 CAR T細胞と混合した2.5×10個のIGROV-1細胞に対応する。腫瘍サイズは、平均体積±SEMとそれに続くマンホイットニー検定を用いた統計分析として報告している。CAR T細胞処理は、腫瘍増殖の有意な阻害を示した(、p=0.02、**、p=0.002)。
図21】卵巣癌のマウスモデルにおけるインビボ生存分析の結果を含む。IGROV-1腫瘍細胞が確立したSCID-beigeマウスに対して、食塩水(第1群、点線)、7.5×10個のmock CAR T細胞(第2群、実線、黒丸)、または7.5×10個の抗TIM-1 CAR T細胞(第3群、実線、白丸)を腹腔内注射した。このグラフは、マウスの生存率の結果を示す。ログランク(マンテルコックス)検定は、抗TIM-1 CAR T細胞を受けたマウス(第3群)は、食塩水のみ(第1群、p=0.0043**)またはmock CAR T細胞(第2群、p<0.0001****)を受けたマウスよりも統計的に長期間生存したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0098】
本発明の態様は、概して、新規なTIM-1結合性キメラ抗原受容体(CAR)の構築及び使用に関する。具体的には、本発明のCARは、TIM-1に結合する抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。本発明はまた、これらのCARをコードするポリヌクレオチド、これらのCARをコードするポリヌクレオチドを含むベクター、これらのCARを発現する細胞を含む組成物、ならびにこれらのCAR及びCAR発現細胞を作製ならびに使用する方法を提供する。本発明はまた、対象における悪性TIM-1発現と関連する状態、例えば、がんの治療方法を提供する。これらのCAR、及び特にこれらのCARをコードする核酸配列を含む単離された細胞を用いて、TIM-1発現細胞の好ましくない増殖と関連する疾患、障害、または状態が治療され得る。特定の実施形態では、これらの細胞を用いてがんが治療され得る。
【0099】
CARの標的:TIM-1
本発明のCARは、T細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン1タンパク質(TIM-1)、別名HAVCR1、HAVCR、HAVCR-1、KIM-1、KIM1、TIM、TIM1、TIMD-1、TIMD1、CD365、及びA型肝炎ウイルス細胞受容体1に結合する抗原結合ドメインを含む。一般に、TIM-1は、1型細胞表面糖タンパク質からなる群に属し、その構造は、N末端の免疫グロブリン(Ig)様ドメイン、異なる長さのムチンドメイン、単一の膜貫通ドメイン、及びC末端の短い細胞質尾部を含む。ヒトでは、TIM-1は、第5染色体上の遺伝子位置5q33.3(NCBI)でHAVCR1遺伝子によってコードされる。ヒトTIM-1は、GenBankアクセッション番号AAC39862.1で与えられるアミノ酸配列、または、非ヒト種、例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿等由来の同等の残基を有する。1つの態様では、TIM-1は、配列番号315で与えられる配列、または、非ヒト種、例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿等由来の同等の残基である。
【0100】
T細胞免疫グロブリン・ムチン1/腎損傷分子1(TIM-1/KIM1)は、健康な組織では表面発現が限定されるタンパク質である。卵巣癌の場合、OCCC腫瘍の>93%がTIM-1発現の試験で陽性であった一方、他の型の卵巣癌はTIM-1陰性であった(Lin et al.Am J Surg Pathol.2007、31:371-381)。以下の例は、TIM-1発現悪性腫瘍の治療に使用することができるTIM-1結合ドメインを含むキメラ抗原受容体を記載する。健康な組織におけるTIM-1発現の欠乏は、オンターゲットオフターゲット効果(on target off target effect)が限定された好ましい治療域を提供すると予想される。出願人の知る限り、この標的はT細胞系の介入に使用されたことはない。
【0101】
過去に用いられたがん治療に対する画一的な治療法は、ほとんど成功しないことが証明されている。その代わり、特定のがん型の脆弱性を選択的に標的とし、これを利用する合理的に設計された治療が、今までに例のない治療反応を誘発しているとともに、最も成功し続けるであろう。我々は、CAR構築物に形式を合わせた場合に、TIM-1標的細胞を認識し、CAR T細胞を活性化する強力な抗TIM-1抗体を特定している。さらに、抗TIM-1 CAR T細胞は、インビボで投与された場合にTIM-1卵巣腫瘍細胞の増殖を防ぐ。OCCCに対するこの有効なCAR T免疫療法の開発は、卵巣癌の治療において大幅な進歩を表す。さらに、この方法はまた、腎細胞癌を含め、他のTIM-1がんの治療に適切であると期待される。
【0102】
本明細書における例では、ヒト完全長抗体由来の抗TIM-1 scFvの使用を介した卵巣明細胞癌等のある特定のがんにて選択的に発現する標的としてのTIM-1の標的化の可能性を説明する。
【0103】
抗原結合ドメイン
本発明は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び1つ以上の細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。該抗原結合ドメインは、TIM-1に結合する標的特異性の結合因子を含む。
【0104】
該抗原結合ドメインは、TIM-1に結合するポリペプチドに由来し得る。いくつかの実施形態では、該ポリペプチドは、TIM-1に結合する受容体または受容体の一部であり得る。別の実施形態では、該抗原結合ドメインは、HAVC、TIM-4、及びTIM-1自体を含むがこれらに限定されないTIM-1に結合するリガンドに由来し得る。
【0105】
別の実施形態では、該抗原結合ドメインは、TIM-1に結合する抗体またはその抗原結合断片に由来し得る。抗体断片の例としては、断片抗原結合(Fab)断片、F(ab’)断片、Fab’断片、Fv断片、組み換えIgG(rIgG)断片、一本鎖抗体断片、一本鎖可変断片(scFv)、単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片、ダイアボディ、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、該抗体は、可変重鎖領域及び/または可変軽鎖領域、例えば、scFvを含む一本鎖抗体断片である。
【0106】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部を含む抗体断片である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である。
【0107】
抗体断片は、インタクトな抗体のタンパク分解及び組み換え宿主細胞による産生が挙げられるがこれらに限定されない様々な技術によって作製することができる。いくつかの実施形態では、該抗体は、組み換え的に産生された断片、例えば、天然には生じない配置、例えば、合成リンカー、例えば、ペプチドリンカーによって結合された2つ以上の抗体領域もしくは鎖を備えたもの、及び/または、天然に存在するインタクトな抗体の酵素消化では産生されない可能性がある配置を含む断片である。いくつかの態様では、該抗体断片はscFvである。
【0108】
いくつかの態様では、該抗原結合ドメインは、1つ以上の特定の機能的特色、例えば、特定のエピトープ、例えば、他の抗体のものと同様または重複するエピトープへの結合を含めた結合特性、他の抗体と結合を競合する能力、及び/または特定の結合親和性を有する抗体またはその抗原結合断片に由来し得る。好ましい実施形態では、該抗体またはその抗原結合断片は、TIM-1に結合する。ある特定の態様では、それらはヒトTIM-1、例えば、配列番号315に記載のヒトTIM-1に結合する。別の態様では、該抗体またはその抗原結合断片は、TIM-1への結合をめぐって、Ab1.29、Ab2.70.2、またはAb2.59.2と競合する。さらに別の態様では、該抗体またはその抗原結合断片は、Ab1.29及びAb2.70.2またはAb2.59.2と同じエピトープビンに結合する(米国特許第8,067,544B2号参照)。
【0109】
いくつかの実施形態では、該抗原結合ドメインは、TIM-1の細胞外ドメイン内の1つ以上のアミノ酸を含むエピトープに結合し(または完全にその中にあり)及び/またはTIM-1の細胞外部分の膜近位領域内の1つ以上のアミノ酸を含むエピトープに結合する(または完全にその中にある)。いくつかの実施形態では、該抗体は、TIM-1のムチンドメイン、TIM-1のIgV様ドメイン、及び/またはTIM-1の細胞外部分の膜最近位の100、90、80、75、70、65、60、55、50、45、44、43、43、41、もしくは40アミノ酸部分内の少なくとも1つのアミノ酸を含むエピトープに結合するか、または完全にその中にある。いくつかの実施形態では、かかる部分またはドメインは、該抗原結合ドメインのTIM-1への結合に必要である。いくつかの実施形態では、該エピトープは、TIM-1のムチンドメイン内にある、もしくは完全にその中にある1つ以上のアミノ酸を含む(またはさらに含む)。いくつかの実施形態では、かかる部分またはドメインは、該抗原結合ドメインのTIM-1への結合に必要である。いくつかの実施形態では、該抗原結合ドメインは、かかる部分の配列を含む、またはそれからなる、またはそれから本質的になり、完全長TIM-1の全配列を含まないペプチドに特異的に結合する。例えば、該抗原結合ドメインは、MHCの溝にて、MHCに対する反応性なしで、TIM-1由来のペプチドに結合するTCR様の様式で結合し得る。
【0110】
いくつかの実施形態では、該エピトープは、配列番号97に記載の配列を有する部分等の、配列番号315に記載のヒトTIM-1配列の残基192~197に相当するTIM-1部分内の1つ以上のアミノ酸を含むか、その部分内にあるか、またはその部分を含む。いくつかの実施形態では、該エピトープは、1つ以上の隣接残基を含み得る。特定の態様では、該エピトープは、アミノ酸配列PMPLPRQNHEPVATを含み得る。いくつかの実施形態では、該抗原結合ドメインは、かかるエピトープに結合することが知られる抗TIM-1抗体の配列を含み得る。1つの態様では、本発明のCARは、米国特許第8,067,544号に開示の抗TIM-1抗体の配列を含む抗原結合ドメインを含み得る。当該配列は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0111】
いくつかの実施形態では、該エピトープは、配列番号315に記載のヒトTIM-1配列の64位のヒスチジンに対応するTIM-1の位置にアミノ酸(ヒスチジン等)を含み、いくつかの実施形態では、かかるアミノ酸は、TIM-1に対する抗原結合ドメインの結合にとって重要である。いくつかの実施形態では、該エピトープは、配列番号315に記載のヒトTIM-1配列の67位のグルタミン酸に対応するTIM-1の位置にアミノ酸(グルタミン酸等)を含み、いくつかの実施形態では、かかるアミノ酸は、TIM-1に対する抗原結合ドメインの結合にとって重要である。
【0112】
いくつかの実施形態では、該エピトープは、Ab1.29、Ab2.70.2、またはAb2.59.2等の参照抗体によって特異的に結合されるエピトープと同じアミノ酸の1つ以上と同じであるか、類似しているか、重複しているか、またはこれを含む。いくつかの実施形態では、該同じ1つ以上のアミノ酸は、提供される抗体及び参照抗体の結合にとって重要である。
【0113】
いくつかの実施形態では、無関係の非TIM-1タンパク質に対する抗TIM-1抗原結合ドメインの結合の程度は、ヒトTIM-1に対する該抗原結合ドメインの結合の約40%未満である。いくつかの実施形態では、提供される抗原結合ドメインの中には、非ヒトTIM-1または他の非TIM-1タンパク質に対する結合が、ヒトTIM-1に対する該抗体の結合の約30%以下、約20%以下、または約10%以下である抗原結合ドメインがある。
【0114】
いくつかの実施形態では、該抗原結合ドメインは、Ab1.29、Ab2.70.2、もしくはAb2.59.2、またはその抗原結合断片と同じまたは重複するTIM-1のエピトープと結合をめぐって競合し、及び/またはこれに結合する。
【0115】
いくつかの実施形態では、該抗原結合ドメインは、Ab1.29、Ab2.70.2、及びAb2.59.2等の抗体に存在するCDRと異なる重鎖及び軽鎖CDRを備えた抗体またはその抗原結合断片に由来する。例えば、提供される抗体及びその抗原結合断片の中には、抗体に結合されるものと同じまたは重複するTIM-1のエピトープと結合をめぐって競合する、及び/またはこれに結合するにもかかわらず、異なるCDR、例えば、異なる重鎖及び/または軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含むものがある。いくつかの実施形態では、該提供される抗体は、配列番号202に記載のVH領域、及び/または配列番号203に記載のVL領域に存在するような、Ab1.29に指定された抗体に存在するCDRと異なる重鎖及び軽鎖CDRを含む。いくつかの実施形態では、該提供される抗体は、配列番号204に記載のVH領域、及び/または配列番号205に記載のVL領域に存在するような、Ab2.70.2に指定された抗体に存在するCDRと異なる重鎖及び軽鎖CDRを含む。いくつかの実施形態では、該提供される抗体は、配列番号206に記載のVH領域、及び/または配列番号207に記載のVL領域に存在するような、Ab2.59.2に指定された抗体に存在するCDRと異なる重鎖及び軽鎖CDRを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、該抗原結合ドメイン、それを含むCAR、及びかかるCARを含む細胞は、TIM-1陰性細胞、例えば、当技術分野で既知の及び/または本明細書に記載の特定の細胞と比較して、TIM-1発現細胞に対して結合選好を示す。いくつかの実施形態では、TIM-1発現細胞に対して、非発現細胞と比較して有意に高い結合度が測定される場合に結合選好が観察される。場合によっては、TIM-1またはTIM-1発現細胞に対して観察される結合度の合計は、非TIM-1特異的ドメイン、CAR、または細胞に対して観察されるものとほぼ同じであるか、少なくともその程度であるか、またはそれより大きい。提供される実施形態のいずれにおいても、親和性や競合等の結合特性の比較は、同じまたは類似のアッセイによる測定を介し得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、該抗原結合ドメインは、TIM-1結合抗体のCDR配列を含むscFvを含む。CDRは、従来の方法を用いて決定され得る。所与のCDRまたはFRの正確なアミノ酸配列の境界は、多数の周知のスキームのいずれかを用いて容易に決定することができる。該スキームに含まれるのは、Kabat et al.(1991),”Sequences of Proteins of Immunological Interest,”5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(「Kabat」付番スキーム),Al-Lazikani et al.,(1997)JMB 273,927-948(「Chothia」付番スキーム),MacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996),”Antibody-antigen interactions:Contact analysis and binding site topography,”J.Mol.Biol.262,732-745.”(「Contact」付番スキーム),Lefranc M P et al.,”IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains,”Dev Comp Immunol,2003 January、27(1):55-77(「IMGT」付番スキーム),及びHonegger A and Pluckthun A,”Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool,”J Mol Biol,2001 Jun.8、309(3):657-70,(「Aho」付番スキーム)に記載のものである。
【0118】
ある実施形態では、該抗原結合ドメインを含む配列はさらに、リーダー配列またはシグナル配列を含む。該抗原結合ドメインがscFvを含む実施形態では、該リーダー配列は、該scFvのアミノ末端に位置し得る。いくつかの実施形態では、該重鎖可変領域がN末端の場合、該リーダー配列は、該重鎖可変領域のアミノ末端に位置し得る。いくつかの実施形態では、該軽鎖可変領域がN末端の場合、該リーダー配列は、該軽鎖可変領域のアミノ末端に位置し得る。該リーダー配列は、任意の適切なリーダー配列を含み得る。本発明の実施形態では、該リーダー配列は、配列番号280に記載の核酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、該リーダー配列は、配列番号230に記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、該リーダー配列は、配列番号230に記載のアミノ酸配列を含み得る。本発明の単離された細胞の成熟形態では、該リーダー配列は存在しない場合がある。
【0119】
好ましい実施形態では、該抗原結合ドメインは、Ab1.29、2.70.2、または2.59.2のCDR配列を含むscFvを含む。
【0120】
好ましくは、本発明のCARにおける抗原結合ドメインは、抗TIM-1 scFvであり、該抗TIM-1 scFvの核酸配列は、配列番号258、259、260、261、262、または263に記載の配列を含む。1つの実施形態では、該抗TIM-1 scFVは、配列番号208、209、210、211、212、または213のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。別の実施形態では、本発明のCARの抗TIM-1 scFV部分は、配列番号208、209、210、211、212、または213に記載のアミノ酸配列を含む。
【0121】
特に、好ましい実施形態では、本発明のCARにおける抗原結合ドメインは、Ab2.59.2、Ab2.70.2、もしくはAb1.29の抗体またはその抗原結合断片に由来する。Ab2.59.2は、配列番号207(配列番号257によりコードされる)のVL鎖と、配列番号248、249、及び250(配列番号298、299、及び300によりコードされる)の軽鎖CDRならびに配列番号206(配列番号256によりコードされる)のVH鎖と、配列番号245、246、及び247(配列番号295、296、及び297によりコードされる)の重鎖CDRを含む。Ab2.70.2は、配列番号205(配列番号255によりコードされる)のVL鎖と、配列番号242、243、及び244(配列番号292、293、及び294によりコードされる)の軽鎖CDRならびに配列番号204(配列番号254によりコードされる)のVH鎖と、配列番号239、240、及び241(配列番号289、290、及び291によりコードされる)の重鎖CDRを含む。Ab1.29は、配列番号203(配列番号253によりコードされる)のVL鎖と、配列番号236、237、及び238(配列番号286、287、及び288によりコードされる)の軽鎖CDRならびに配列番号202(配列番号252によりコードされる)のVH鎖と、配列番号233、234、及び235(配列番号283、284、及び285によりコードされる)の重鎖CDRを含む。
【0122】
ヒンジ
【0123】
いくつかの実施形態では、該CARは、リンカー、スペーサー、またはヒンジ配列を抗原結合ドメインと膜貫通ドメインの間に含む。当業者には、ヒンジ配列が可動性を促進する短いアミノ酸配列であることが理解されよう(例えば、Woof et al.,Nat.Rev.Immunol.,4(2):89-99(2004)を参照されたい)。ヒンジ配列は、任意の適切な分子由来の、またはそれから得られる任意の適切な配列であり得る。いくつかの実施形態では、ヒンジ配列の長さは、CARとTIM-1結合性エピトープ間の距離を基に最適化してもよく、例えば、膜近位TIM-1エピトープの場合はより長いヒンジが最適であり得る。
【0124】
いくつかの実施形態では、該CAR、例えば、その抗原結合部分はさらに、ヒンジ、リンカー、またはスペーサーを含む。該ヒンジは、免疫グロブリンFc領域、例えば、IgG1 Fc領域、IgG2 Fc領域、IgG3 Fc領域、IgG4 Fc領域、IgE Fc領域、IgM Fc領域、またはIgA Fc領域の少なくとも一部に由来する場合も、それを含む場合もある。ある特定の実施形態では、該スペーサードメインは、そのCH2及びCH3ドメインに含まれるIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgE、IgM、またはIgAの免疫グロブリンFc領域の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、該スペーサードメインはまた、対応する免疫グロブリンヒンジ領域の少なくとも一部を含み得る。いくつかの実施形態では、該ヒンジは、改変免疫グロブリンFc領域、例えば、改変IgG1 Fc領域、改変IgG2 Fc領域、改変IgG3 Fc領域、改変IgG4 Fc領域、改変IgE Fc領域、改変IgM Fc領域、または改変IgA Fc領域の少なくとも一部に由来するか、それを含む。該改変免疫グロブリンFc領域は、該スペーサードメインのFc受容体(FcR)に対する結合不全を引き起こす1つ以上のアミノ酸置換、修飾、または欠失をもたらす1つ以上の突然変異(例えば、点突然変異、挿入、欠失、重複)を有し得る。いくつかの態様では、該改変免疫グロブリンFc領域は、FcγRI、FcγR2A、FcγR2B1、FcγR2B2、FcγR3A、FcγR3B、FcεRI、FcεR2、FcαRI、Fcα/μR、またはFcRnが含まれるがこれらに限定されない1つ以上のFcRに対する該スペーサードメインの結合不全を引き起こす1つ以上のアミノ酸置換、修飾、または欠失をもたらす1つ以上の突然変異を考慮して設計され得る。
【0125】
いくつかの態様では、免疫グロブリン定常領域の一部が、抗原結合ドメイン、例えば、scFvと膜貫通ドメインの間のスペーサー領域の役割を果たす。該スペーサーは、該スペーサーが存在しない場合と比較して、抗原結合後の細胞の反応性を高める長さのものであることができる。いくつかの例では、該スペーサーは、12アミノ酸長前後であるか、12アミノ酸長未満である。例示的なスペーサーは、少なくとも、約10~229アミノ酸、約10~200アミノ酸、約10~175アミノ酸、約10~150アミノ酸、約10~125アミノ酸、約10~100アミノ酸、約10~75アミノ酸、約10~50アミノ酸、約10~40アミノ酸、約10~30アミノ酸、約10~20アミノ酸、または約10~15アミノ酸、及び記載された範囲の任意の端点間の任意の整数を含めて有するものを含む。いくつかの実施形態では、スペーサー領域は、約12個以下のアミノ酸、約119個以下のアミノ酸、または約229個以下のアミノ酸を有する。例示的なスペーサーとしては、CD28ヒンジ、IgG4ヒンジ単独、CH2及びCH3ドメインに連結したIgG4ヒンジ、またはCH3ドメインに連結したIgG4ヒンジが挙げられる。例示的なスペーサーとしては、Hudecek et al.(2013)Clin.Cancer Res.,19:3153,国際特許出願公開第WO2014031687号、米国特許第8,822,647号、または公開出願第US2014/0271635号に記載のものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0126】
いくつかの実施形態では、該ヒンジ配列は、ヒトCD8-アルファ分子またはCD28分子に由来する。好ましい実施形態では、該ヒンジ配列は、CD28に由来する。1つの実施形態では、該CD28ヒンジ配列は、CD28Hをコードする核酸配列(配列番号264)を含む。1つの実施形態では、該ヒンジは、CD28Hのアミノ酸配列(配列番号214)を有する。いくつかの実施形態では、該スペーサーは、配列番号214に対して少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の配列同一性を示すアミノ酸の配列を有する。
【0127】
膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインに関して、該CARは、該CARの抗原結合ドメインに融合された膜貫通ドメインを含むように設計され得る。1つの実施形態では、該CAR内のドメインの1つに天然に会合している膜貫通ドメインが使用される。場合によっては、該膜貫通ドメインは、同じまたは異なる表面膜タンパク質からなる膜貫通ドメインに対するかかるドメインの結合を回避し、当該受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限にするために選択される場合もあれば、アミノ酸置換により修飾される場合もある。
【0128】
該膜貫通ドメインは、天然起源由来でも合成起源由来でもよい。該供給源が天然である場合、該ドメインは任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来し得る。通常、該膜貫通ドメインは、内在性タンパク質としても知られる、膜貫通タンパク質の単一の膜貫通アルファヘリックスを意味する。本発明において特に有用な膜貫通領域は、CD28、CD3イプシロン、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD45、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、TCRアルファ、TCRベータ、もしくはCD3ゼータ、及び/またはその機能的バリアントを含む膜貫通領域、例えば、その構造的、例えば、膜貫通特性のかなりの部分を保持するものに由来し得る(すなわち、少なくともその膜貫通領域(複数可)を含む)。
【0129】
代替的に、該膜貫通ドメインは、合成であってもよく、この場合は、主に疎水性残基、例えば、ロイシン及びバリンを含む。好ましくは、フェニルアラニン、トリプトファン、及びバリンのトリプレットが合成膜貫通ドメインの各端に見られる。本発明のある膜貫通ドメインは、膜内で熱力学的に安定である。それは、単一のアルファヘリックス、膜貫通ベータバレル、グラミシジンAのベータヘリックス、または任意の他の構造であり得る。膜貫通ヘリックスは、通常、約20アミノ酸長である。
【0130】
好ましくは、本発明のCARにおける膜貫通ドメインは、CD28の膜貫通ドメインである。1つの実施形態では、該CD28の膜貫通ドメインは、CD28TMの核酸配列(配列番号265)を含む。1つの実施形態では、該CD28の膜貫通ドメインは、CD28TMのアミノ酸配列(配列番号215)をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、該CD28の膜貫通ドメインは、CD28TMのアミノ酸配列(配列番号215)を含む。
【0131】
任意に、短いオリゴまたはポリペプチドリンカー、好ましくは2~10アミノ酸長は、該CARの膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメイン(複数可)の間の結合を形成し得る。グリシン-セリンダブレットが適切なリンカーを提供し得る。
【0132】
細胞内シグナル伝達ドメイン
本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインまたは細胞質ドメインは、該CARが置かれた免疫細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つの活性化を引き起こし、または引き出す。「エフェクター機能」という用語は、細胞の特殊化した機能を指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性の場合もあればヘルパー活性の場合もあり、サイトカインの分泌を含む。従って、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、該エフェクター機能のシグナルを伝達し、細胞に特殊化された機能を果たすように指示するタンパク質の部分を指す。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を使用することができるが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断された部分が使用される限りでは、かかる切断された部分は、それがエフェクター機能のシグナルを伝達する限り、インタクトな鎖の代わりに使用され得る。細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、従って、エフェクター機能のシグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの任意の切断された部分を含むことを意味する。
【0133】
本発明のCARで用いるために好ましい細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、抗原受容体係合後に協調してシグナル伝達を開始するように機能するT細胞受容体(TCR)と共受容体の細胞質配列、及びこれら配列の任意の誘導体またはバリアント、ならびに同じ機能を有する任意の合成配列が挙げられる。
【0134】
1つの細胞内シグナル伝達ドメイン単独を介して生成されるシグナルは、免疫細胞を完全に活性化するには不十分である場合があり、二次または共刺激シグナルも必要な場合がある。例えば、T細胞活性化は、2つの異なるクラスの細胞質シグナル伝達配列、すなわち、TCRを介して抗原依存性の一次活性化を開始するもの(一次細胞質シグナル伝達配列)及び抗原非依存的に作用して二次または共刺激シグナルを与えるもの(二次細胞質シグナル伝達配列)によって媒介されるといえる。一次細胞質シグナル伝達配列は、促進的または抑制的のいずれかで、TCR複合体の一次活性化を制御する。促進的に作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含み得る。
【0135】
本発明において特に有用な、ITAM含有一次細胞質シグナル伝達配列の例としては、リンパ球受容体鎖の細胞内シグナル伝達ドメイン、TCR/CD3複合体タンパク質、Fc受容体サブユニット、IL-2受容体サブユニット、CD3ζ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD66d、CD278(ICOS)、FcεRI、DAP10、及びDAP12に由来するものが挙げられる。本発明のCARにおける細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ζ由来の細胞質シグナル伝達配列を含むことが特に好ましい。
【0136】
1つの実施形態では、該CD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζCYPの核酸配列(配列番号269)を含む。1つの実施形態では、該CD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζCYPのアミノ酸配列(配列番号219)をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、該CD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζCYPのアミノ酸配列(配列番号219)を含む。
【0137】
好ましい実施形態では、該CARの細胞質ドメインは、CD3-ζシグナル伝達ドメインを単独で、または本発明のCARとの関連で有用な任意の他の所望の細胞質ドメイン(複数可)と組み合わせて含むように設計され得る。例えば、該CARの細胞質ドメインは、CD3ζ鎖部分及び共刺激シグナル伝達領域を含むことができる。共刺激シグナル伝達領域とは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの部分を指す。共刺激分子は、抗原受容体やそれらのリガンド以外の細胞表面分子であり、抗原に対するリンパ球の効率的な反応に必要である。
【0138】
様々な共刺激ドメインが、異なる特性を付与すると報告されている。例えば、4-1BB共刺激ドメインは、インビボ異種移植モデルで持続性の向上を示した(Milone et al.Mol Ther 2009、17:1453-1464、Song et al.Cancer Res 2011、71:4617-4627)一方、DAP10と会合するCARは、インビボでの持続性の低下に関連している(Barber et al.Gene Ther 2011、18:509-516)。さらに、これらの異なる共刺激ドメインは、異なるサイトカインプロファイルを産生し、これらは、次に、標的細胞媒介性の細胞傷害性及び腫瘍微小環境に対して効果を及ぼし得る。実際、NK細胞におけるDAP10のシグナル伝達は、Th1の増加及びCD8T細胞におけるTh2型のサイトカイン産生の阻害と関連している(Barber et al.Blood 2011、117:6571-6581)。
【0139】
共刺激分子の例としては、MHCクラスI分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、Tollリガンド受容体、B7-H3、BAFFR、BTLA、BLAME(SLAMF8)、CD2、CD4、CD5、CD7、CD8アルファ、CD8ベータ、CD11a、LFA-1(CD11a/CD18)、CD11b、CD11c、CD11d、CD18、CD19、CD19a、CD27、CD28、CD29、CD30、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD84、CD96(Tactile)、CD100(SEMA4D)、CD103、CRTAM、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、CD160(BY55)、SELPLG(CD162)、DNAM1(CD226)、Ly9(CD229)、SLAMF4(CD244、2B4)、ICOS(CD278)、CEACAM1、CDS、CRTAM、DAP10、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB1、ITGB2、ITGB7、KIRDS2、LAT、LFA-1、LIGHT、LTBR、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、PAG/Cbp、PD-1、PSGL1、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAMF7、SLP-76、TNFR2、TRANCE/RANKL、VLA1、VLA-6、CD83に特異的に結合するリガンド等が挙げられる。従って、本発明は、共刺激シグナル伝達因子として主にCD28、DAP10、及び/または4-1BBの領域により例示されるが、他の共刺激因子も本発明の範囲内である。
【0140】
本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメイン内の細胞質シグナル伝達配列は、ランダムなまたは特定の順序で互いに結合し得る。任意に、短いオリゴまたはポリペプチドリンカー、好ましくは2~10アミノ酸長が結合を形成し得る。グリシン-セリンダブレットが特に適切なリンカーを提供する。
【0141】
1つの実施形態では、該細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ζのシグナル伝達ドメイン及びCD28由来の共刺激ドメインを含むように設計される。別の実施形態では、該細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ζのシグナル伝達ドメイン及びDAP10由来の共刺激ドメインを含むように設計される。さらに別の実施形態では、該細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ζのシグナル伝達ドメイン及び4-1BB由来の共刺激ドメインを含むように設計される。
【0142】
1つの実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD28由来の共刺激ドメイン及びCD3-ζのシグナル伝達ドメインを含むように設計され、CD28由来の該共刺激ドメインは、配列番号267に記載の核酸配列を含み、CD3-ζの該シグナル伝達ドメインは、配列番号269に記載の核酸配列を含む。
【0143】
1つの実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD28由来の共刺激ドメイン及びCD3-ζのシグナル伝達ドメインを含むように設計され、CD28由来の該共刺激ドメインは、配列番号217のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含み、CD3-ζの該シグナル伝達ドメインは、配列番号219のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。
【0144】
1つの実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD28由来の共刺激ドメイン及びCD3-ζのシグナル伝達ドメインを含むように設計され、CD28由来の該共刺激ドメインは、配列番号217に記載のアミノ酸配列を含み、CD3-ζの該シグナル伝達ドメインは、配列番号219に記載のアミノ酸配列を含む。
【0145】
1つの実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10由来の共刺激ドメイン及びCD3-ζのシグナル伝達ドメインを含むように設計され、DAP10由来の該共刺激ドメインは、配列番号268に記載の核酸配列を含み、CD3-ζの該シグナル伝達ドメインは、配列番号269に記載の核酸配列を含む。
【0146】
1つの実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10由来の共刺激ドメイン及びCD3-ζのシグナル伝達ドメインを含むように設計され、DAP10由来の該共刺激ドメインは、配列番号218のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含み、CD3-ζの該シグナル伝達ドメインは、配列番号219のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。
【0147】
1つの実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、DAP10由来の共刺激ドメイン及びCD3-ζのシグナル伝達ドメインを含むように設計され、DAP10由来の該共刺激ドメインは、配列番号218に記載のアミノ酸配列を含み、CD3-ζの該シグナル伝達ドメインは、配列番号219に記載のアミノ酸配列を含む。
【0148】
1つの実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB由来の共刺激ドメイン及びCD3-ζのシグナル伝達ドメインを含むように設計され、4-1BB由来の該共刺激ドメインは、配列番号266に記載の核酸配列を含み、CD3-ζの該シグナル伝達ドメインは、配列番号269に記載の核酸配列を含む。
【0149】
1つの実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB由来の共刺激ドメイン及びCD3-ζのシグナル伝達ドメインを含むように設計され、4-1BB由来の該共刺激ドメインは、配列番号216のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含み、CD3-ζの該シグナル伝達ドメインは、配列番号219のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。
【0150】
1つの実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB由来の共刺激ドメイン及びCD3-ζのシグナル伝達ドメインを含むように設計され、4-1BB由来の該共刺激ドメインは、配列番号216に記載のアミノ酸配列を含み、CD3-ζの該シグナル伝達ドメインは、配列番号219に記載のアミノ酸配列を含む。
【0151】
例示的な抗TIM-1 CAR構築物
1つの実施形態では、本発明のCARは、129H-CD28の核酸配列(配列番号270)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号220のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号220のアミノ酸配列を含む。
【0152】
1つの実施形態では、本発明のCARは、129L-CD28の核酸配列(配列番号271)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号221のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号221のアミノ酸配列を含む。
【0153】
1つの実施形態では、本発明のCARは、272H-BBの核酸配列(配列番号272)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号222のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号222のアミノ酸配列を含む。
【0154】
1つの実施形態では、本発明のCARは、272H-CD28の核酸配列(配列番号273)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号223のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号223のアミノ酸配列を含む。
【0155】
1つの実施形態では、本発明のCARは、272H-DAP10の核酸配列(配列番号274)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号224のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号224のアミノ酸配列を含む。
【0156】
1つの実施形態では、本発明のCARは、272L-CD28の核酸配列(配列番号275)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号225のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号225のアミノ酸配列を含む。
【0157】
1つの実施形態では、本発明のCARは、2592H-BBの核酸配列(配列番号276)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号226のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号226のアミノ酸配列を含む。
【0158】
1つの実施形態では、本発明のCARは、2592H-CD28の核酸配列(配列番号277)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号227のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号227のアミノ酸配列を含む。
【0159】
1つの実施形態では、本発明のCARは、2592H-DAP10の核酸配列(配列番号278)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号228のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号228のアミノ酸配列を含む。
【0160】
1つの実施形態では、本発明のCARは、2592L-CD28の核酸配列(配列番号279)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号229のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号229のアミノ酸配列を含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、前述の例示的なCARをコードする核酸配列はさらに、T2Aリボソームスキップ配列及びtCD19をコードする配列を含む。
【0162】
1つの実施形態では、本発明のCARは、272H-BB_tCD19の核酸配列(配列番号302)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号301のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号301のアミノ酸配列を含む。
【0163】
1つの実施形態では、本発明のCARは、272H-CD28_tCD19の核酸配列(配列番号304)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号303のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号303のアミノ酸配列を含む。
【0164】
1つの実施形態では、本発明のCARは、272H-DAP10_tCD19の核酸配列(配列番号306)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号305のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号305のアミノ酸配列を含む。
【0165】
1つの実施形態では、本発明のCARは、2592H-BB_tCD19の核酸配列(配列番号308)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号307のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号307のアミノ酸配列を含む。
【0166】
1つの実施形態では、本発明のCARは、2592H-CD28_tCD19の核酸配列(配列番号310)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号309のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号309のアミノ酸配列を含む。
【0167】
1つの実施形態では、本発明のCARは、2592H-DAP10_tCD19の核酸配列(配列番号312)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号311のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号311のアミノ酸配列を含む。
【0168】
1つの実施形態では、本発明のCARは、2592L-CD28_tCD19の核酸配列(配列番号314)を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号313のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、本発明のCARは、配列番号313のアミノ酸配列を含む。
【0169】
さらなる改変
本発明のCAR、それをコードするヌクレオチド配列、それをコードするベクター、及び当該CARをコードするヌクレオチド配列を含む細胞は、様々な特徴を提供または選択するためにさらに改変、操作、最適化、または付加され得る。これらの特徴としては、有効性、持続性、標的特異性、低減された免疫原性、多重標的化、向上された免疫反応、拡大、増殖、低減された腫瘍外効果、低減された対象の毒性、向上された標的細胞傷害性、向上された腫瘍浸潤、検出、選択、標的化等が挙げられ得るがこれらに限定されない。例えば、別のCAR、自殺機構を発現するようにこれらの細胞を操作してもよく、内因性受容体もしくは分子、例えば、TCR及び/またはMHC分子の発現を除去あるいは変更するように改変してもよい。
【0170】
いくつかの実施形態では、該CARをコードするベクターまたは核酸配列はさらに他の遺伝子をコードする。該ベクターまたは核酸配列は、2つ以上のプラスミドの同時導入、複数のもしくは双方向性プロモーターの使用、またはバイシストロン性もしくはマルチシストロン性ベクターの作製を含めた多数の技術を用いた複数の遺伝子の共発現を可能にするように構築され得る。マルチシストロン性ベクターの構築には、IRES要素または2Aペプチド、例えば、T2A、P2A、E2A、またはF2Aのコード化が含まれ得る。特定の実施形態では、該CARをコードする核酸配列またはベクターはさらに、T2Aリボソームスキップ配列を用いてtCD19をコードする。1つの実施形態では、該T2Aリボソームスキップ配列は、配列番号281の核酸配列を含む。1つの実施形態では、該T2Aリボソームスキップ配列は、配列番号231のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、該T2Aリボソームスキップ配列は、配列番号231のアミノ酸配列を含む。
【0171】
1つの実施形態では、tCD19は、配列番号282の核酸配列を含む。1つの実施形態では、tCD19は、配列番号232のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。1つの実施形態では、tCD19は、配列番号232のアミノ酸配列を含む。
【0172】
該CAR発現細胞はさらに、1つ以上の内因性遺伝子の破壊を含み得る。いくつかの実施形態では、該内因性遺伝子は、TCRα、TCRβ、CD52、糖質コルチコイド受容体(GR)、デオキシシチジンキナーゼ(dCK)、または、例えば、プログラム死-1(PD-1)等の免疫チェックポイントタンパク質をコードする。
【0173】
固形腫瘍での有効性
本発明のCAR及びこれらのCARを発現する細胞は、固形腫瘍に対する有効性を高めるためにさらに改変され得る。この有効性の向上は、腫瘍細胞傷害性、腫瘍浸潤、及び腫瘍の免疫抑制性メディエーターの回避またはこれに対する耐性の増加により測定され得る。いくつかの実施形態では、抗腫瘍効果の向上は、TCRシグナル伝達の増加、サイトカイン放出の増加、腫瘍細胞の殺傷の増加、確立した腫瘍のT細胞浸潤の増加、腫瘍輸送の改善、腫瘍による機能低下の減少、ならびに遊走及び走化性の改善によって特徴づけられ得る。
【0174】
1つの態様では、該CAR発現細胞は、プロスタグランジンE2(PGE2)及びアデノシンが挙げられるがこれらに限定されない免疫抑制性メディエーターの活性を回避または中和するためにさらに改変される。いくつかの実施形態では、この回避または中和は直接的である。他の実施形態では、この回避または中和は、1つ以上の結合パートナー、例えば、エズリンを有するプロテインキナーゼA(PKA)を阻害することによって媒介される。特定の実施形態では、該CAR発現細胞はさらに、ペプチド「調節サブユニットI固着かく乱物質」(RIAD)を発現する。RIADは、プロテインキナーゼA(PKA)とエズリンの会合を阻害すると考えられており、それにより、PKAを介したTCR活性化の阻害が防止される(Newick et al.Cancer Res 2016 Aug、76(15 Suppl):Abstract nr B27)。
【0175】
いくつかの実施形態では、本発明のCAR発現細胞は、エピトープ拡散と一致する広範な抗腫瘍免疫反応を誘導し得る。
【0176】
いくつかの実施形態では、本発明のCAR発現細胞はさらにホーミング機構を含む。例えば、該細胞は、1つ以上の刺激性のケモカインもしくはサイトカインまたはそれらの受容体を遺伝子導入で発現し得る。特定の実施形態では、該細胞は、1つ以上の刺激性サイトカインを発現するために遺伝的に改変される。ある特定の実施形態では、1つ以上のホーミング機構を用い、本発明の細胞を抑制性腫瘍微小環境に対して耐性にする。いくつかの実施形態では、該CAR発現細胞をさらに改変し、CAR活性化時に誘導性サイトカインを放出させ、例えば、自然免疫細胞を標的腫瘍に対して引き付けるか、または活性化する(いわゆる第4世代CARまたはTRUCK)。いくつかの実施形態では、CARは、ホーミング分子、例えば、CCR4またはCCR2bを共発現し、腫瘍輸送を増加させ得る。
【0177】
CAR発現の制御
場合によっては、CARまたはCAR発現細胞のCARの活性を調節することが有利であり得る。例えば、アポトーシスを、例えば、二量体化ドメインに融合したカスパーゼを用いて誘導すること(例えば、Di et al.,N Engl.J.Med.2011 Nov.3、365(18):1673-1683参照)は、本発明のCAR療法における安全スイッチとして使用することができる。別の例では、CAR発現細胞はまた、二量体化剤(例えば、rimiducid(AP1903(Bellicum Pharmaceuticals)またはAP20187(Ariad)とも呼ばれる)が投与されるとカスパーゼ-9の活性化及び細胞のアポトーシスにつながる誘導性のカスパーゼ-9(iCaspase-9)分子を発現することができる。該iCaspase-9分子は、二量体化化学誘導物質(CID)結合ドメインを含み、CIDの存在下で二量体化を媒介する。これは、CAR発現細胞の誘導的かつ選択的な枯渇をもたらす。場合によっては、該iCaspase-9分子は、CARをコードするベクター(複数可)とは別の核酸分子によってコードされる。場合によっては、該iCaspase-9分子は、CARをコードするベクターと同じ核酸分子によってコードされる。該iCaspase-9は、CAR発現細胞の任意の毒性を回避する安全スイッチを提供することができる。例えば、Song et al.Cancer Gene Ther.2008、15(10):667-75、Clinical Trial Id.No.NCT02107963、及びDi Stasi et al.N.Engl.J.Med.2011、365:1673-83を参照されたい。
【0178】
本発明のCAR療法を調節するための代替的な戦略としては、例えば、抗体依存性細胞媒介性の細胞傷害性(ADCC)を誘導することにより、例えば、CAR発現細胞を削除することによる、CARの活性を失活もしくは止める小分子または抗体を利用することが挙げられる。例えば、本明細書に記載のCAR発現細胞はまた、細胞死、例えば、ADCCまたは補体誘導細胞死を誘導することが可能な分子によって認識される抗原も発現し得る。例えば、本明細書に記載のCAR発現細胞はまた、抗体または抗体断片が標的とすることが可能な受容体も発現し得る。かかる受容体の例としては、EpCAM、VEGFR、インテグリン(例えば、インテグリンαvβ3、α4、αI3/4β3、α4β7、α5β1、αvβ3、αv)、TNF受容体スーパーファミリーのメンバー(例えば、TRAIL-R1、TRAIL-R2)、PDGF受容体、インターフェロン受容体、葉酸受容体、GPNMB、ICAM-1、HLA-DR、CEA、CA-125、MUC1、TAG-72、IL-6受容体、5T4、GD2、GD3、CD2、CD3、CD4、CD5、CD11、CD11a/LFA-1、CD15、CD18/ITGB2、CD19、CD20、CD22、CD23/IgE受容体、CD25、CD28、CD30、CD33、CD38、CD40、CD41、CD44、CD51、CD52、CD62L、CD74、CD80、CD125、CD147/ベイシジン、CD152/CTLA-4、CD154/CD40L、CD195/CCR5、CD319/SLAMF7、及びEGFR、ならびにそれらの切断された型(例えば、1つ以上の細胞外エピトープを保存しているが、細胞質ドメイン内の1つ以上の領域を欠いている型)が挙げられる。例えば、本明細書に記載のCAR発現細胞はまた、シグナル伝達能力を欠いているが、ADCCを誘導することが可能な分子、例えば、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))によって認識されるエピトープを保持する切断された上皮成長因子受容体(EGFR)も発現し得る。その結果、セツキシマブの投与でADCCが誘導され、その後CAR発現細胞の枯渇が誘導される(例えば、WO2011/056894、及びJonnalagadda et al.,Gene Ther.2013、20(8)853-860参照)。
【0179】
いくつかの実施形態では、該CAR細胞は、例えば、RQR8等の自殺ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。例えば、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、WO2013153391Aを参照されたい。該ポリヌクレオチドを含むCAR細胞では、該自殺ポリペプチドは、CAR細胞の表面で発現され得る。該自殺ポリペプチドはまた、アミノ末端にシグナルペプチドを含み得る。別の戦略としては、本明細書に記載のCAR発現細胞においてCD32及びCD20の両抗原由来の標的エピトープを組み合わせる高度に凝縮したマーカー/自殺遺伝子の発現が挙げられ、これが、例えば、ADCCによるCAR発現細胞の選択的な枯渇をもたらすリツキシマブに結合する(例えば、Philip et al.,Blood.2014、124(8)1277-1287参照)。本明細書に記載のCAR発現細胞を枯渇させる他の方法としては、CAMPATH、すなわち、成熟リンパ球、例えば、CAR発現細胞に選択的に結合し、これを標的として、例えば、ADCCを誘導することにより破壊するモノクローナル抗CD52抗体を投与することが挙げられる。他の実施形態では、該CAR発現細胞は、CARリガンド、例えば、抗イディオタイプ抗体を用いて選択的に標的化され得る。いくつかの実施形態では、該抗イディオタイプ抗体は、エフェクター細胞活性、例えば、ADCCまたはADC活性を引き起こすことができ、それにより、CAR発現細胞の数を減らす。他の実施形態では、該CARリガンド、例えば、該抗イディオタイプ抗体は、細胞の殺傷を誘導する薬剤、例えば、毒素と共役させることができ、それにより、CAR発現細胞の数を減らす。別の方法として、該CAR分子自体を、その活性が調節され得るように、例えば、下記の通りオン・オフされ得るように構成することができる。
【0180】
いくつかの実施形態では、CARの活性を制御することができる調節可能なCAR(RCAR)が、CAR療法の安全性及び有効性を最適化するのに望ましい。いくつかの実施形態では、RCARは、ポリペプチドのセット、最も単純な実施形態では通常2つを含み、本明細書に記載の標準的なCARの成分、例えば、抗原結合ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインは、別々のポリペプチドまたはメンバーに分割される。いくつかの実施形態では、該ポリペプチドのセットは、二量体化分子の存在時に、該ポリペプチド同士を共役させることができる、例えば、抗原結合ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインに共役させることができる二量体化スイッチを含む。かかる調節可能なCARのさらなる説明及び例示的な構成は、本明細書、及び参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第WO2015/090229号に提供されている。
【0181】
ある態様において、RCARは、2つのポリペプチドまたはメンバー、すなわち、1)細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、本明細書に記載の第一の細胞内シグナル伝達ドメイン、及び第一のスイッチドメインを含む細胞内シグナル伝達メンバー、2)本明細書に記載の抗原結合ドメイン、例えば、本明細書に記載の腫瘍抗原に特異的に結合するもの、及び第二のスイッチドメインを含む抗原結合メンバーを含む。任意に、該RCARは、本明細書に記載の膜貫通ドメインを含む。ある実施形態では、膜貫通ドメインは、該細胞内シグナル伝達メンバー上、該抗原結合メンバー上、またはその両方に配置され得る。別段の指示がない限り、RCARのメンバーまたは要素が本明細書に記載される場合、その順序は示される通りであることができるが、他の順序もまた含めることができる。換言すれば、ある実施形態では、該順序は本文に記載されている通りであるが、他の実施形態では、該順序は異なる可能性がある。例えば、膜貫通領域の片側の要素の順序は、例と異なる場合があり、例えば、細胞内シグナル伝達ドメインに対するスイッチドメインの配置は異なる、例えば、反転する場合がある。
【0182】
いくつかの実施形態では、CARを発現する免疫細胞は、一時的にCARを発現するのみの場合がある。例えば、本発明の細胞は、本発明のCARをコードする核酸配列を含むmRNAを形質導入され得る。この点において、本発明はまた、細胞に直接トランスフェクトされ得るRNA構築物を含む。トランスフェクションに使用するためのmRNAの生成方法は、特別に設計されたプライマーを用いた鋳型のインビトロ転写(IVT)、それに続くポリA付加を含み、3’及び5’非翻訳配列(「UTR」)、5’キャップ及び/または配列内リボソーム進入部位(IRES)、発現される核酸、ならびにポリAテール、通常は50~2000塩基長を含む構築物を産生する。そのようにして産生されたRNAは、異なる種類の細胞を効率的にトランスフェクトすることができる。1つの実施形態では、該鋳型は、CARに対する配列を含む。ある実施形態では、RNA CARベクターは、エレクトロポレーションにより細胞に形質導入される。
【0183】
標的特異性
本発明のCAR発現細胞はさらに、1つ以上のさらなるCARを含み得る。これらのさらなるCARは、TIM-1に特異的であってもなくてもよい。いくつかの実施形態では、該1つ以上のさらなるCARは、抑制性CARとして作用しても活性化CARとして作用してもよい。いくつかの態様では、該TIM-1を標的とするCARは、刺激性または活性化CARであり、他の態様では、それは共刺激CARである。いくつかの実施形態では、該細胞はさらに、抑制性CAR(iCAR、Fedorov et al.,Sci.Transl.Medicine,2013 Dec、5(215):215ra172参照)、例えば、TIM-1以外の抗原を認識するCARを含み、それにより、該TIM-1を標的とするCARによってもたらされる活性化シグナルが、該抑制性CARがそのリガンドに結合することによって弱められ、または抑制され、例えば、オフターゲット効果を低減する。
【0184】
いくつかの実施形態では、本発明のCAR発現細胞はさらに、BCMA、BCR-Ab1、BST2、CAIX、CD19、CD20、CD22、CD123、CD171、CD30、CD33、CD38、CD44v6、CD44v7/8、CEA、CLL-1、EGFRvIII、EGP-2、EGP-40、ERBB2(Her2/neu)、EPCAM、胎児アセチルコリン受容体、FBP、FLT3、葉酸受容体アルファ、GD2、GD3、Her3(ErbB3)、Her4(ErbB4)、k-軽鎖、KDR、MAD-CT-1、MAD-CT-2、MAGE-A1、MARTI、ML-IAP、MYCN、腫瘍胎児抗原(h5T4)、NKG2DリガンドPDK1、PDL1、PSCA、PSMA、PRSS21、ROR1、SLAMF7、TAG-72、Tn Ag、TSLPR、B7H3(CD276)、KIT(CD117)、IL-13Ra2、メソテリン、IL-11Ra、VEGFR2、LeY、CD24、PDGFR-ベータ、SSEA-4、CD20、MUC1、EGFR、NCAM、プロスターゼ、PAP、ELF2M、エフリンB2、FAP、IGF-I受容体、CAFX、LMP2、gpl00、チロシナーゼ、EphA2、フコシルGM1、sLe、ガングリオシドGM3、TGS5、HMWMAA、OAcGD2、OR51E2、Folate受容体ベータ、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、TSHR、GloboH、GPR20、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD179a、ADRB3、ALK、ポリシアル酸、PANX3、PLAC1、NY-BR-1、NY-ESO-1、UPK2、TIM-1、HAVCRl、LY6K、TARP、WT1、LAGE-la、ETV6-AML、SPA17、XAGE1、Tie 2、Fos関連抗原1、p53、p53変異体、prostein、surviving、テロメラーゼ、PCTA-1、ラット肉腫Ras変異体、hTERT、肉腫転座切断点、ERG、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、サイクリンBl、RhoC、TRP-2、CYP1B1、BORIS、SART3、PAX5、OY-TES1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、RU1、RU2、レグマイン、HPV E6、HPV E7、腸カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、CD89、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、EMR2、FCRL5、GPC3、IGLL1、及びLY75からなる群から選択される1つ以上の抗原を標的とし得る1つ以上のさらなるCARを含み得る。
【0185】
いくつかの実施形態では、本発明のCARの抗原結合ドメインは、親和性を調整されている。特に、該抗TIM-1 CARの抗原結合ドメインの親和性は、TIM-1を過剰発現する細胞、例えば、腫瘍細胞を生理学的レベルでTIM-1を発現する正常組織と区別するように調節される。これは、例えば、3桁にわたって変化する標的抗原親和性を有するCAR発現T細胞の使用を通して達成され得る(Liu et al.Cancer Res 2015 Sep、75(17):3596-607)。さらに、インビボ異種移植モデルを使用して、正常ヒト組織に対する親和性を調整された抗TIM-1 CARの毒性が評価され得る(Johnson et al.Sci Transl Med 2015 Feb、7(275):275ra22)。
【0186】
いくつかの実施形態では、該CARの抗原結合ドメインは、該抗原結合ドメインが、例えば、細胞毒、造影剤、検出可能部分、多量体化ドメイン、または他の異種分子であるがこれに限定されない1つ以上の異種分子にコンジュゲートされている免疫結合体であるか、またはその一部である。細胞毒としては、放射性同位元素(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位元素)、化学療法剤(例えば、メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他の挿入剤)、成長阻害剤。酵素及びその断片、例えば、核酸分解酵素、抗生物質、毒素、例えば、小分子毒素または酵素活性毒素が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、該抗原結合ドメインは、1つ以上の細胞毒、例えば、化学療法剤または薬物、増殖阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物由来の酵素活性毒素、もしくはその断片)、または放射性同位元素にコンジュゲートされる。
【0187】
その他
いくつかの実施形態では、本発明のCAR発現細胞は、形質転換成長因子(TGF)ベータ受容体(DNR)のドミナントネガティブ型を発現するようにさらに遺伝的に改変され得る。
【0188】
別の実施形態では、該CAR発現細胞は、場合によっては腫瘍抗原を含む別の抗原に特異的であり得る。いくつかの実施形態では、形質転換された宿主細胞は、1つ以上の強力なウイルス抗原に対する特異性について選択される場合もあれば、これらの抗原に対して特異性を示すように形質転換される場合もある。特定の実施形態では、該細胞はpp65CMV特異的T細胞、CMV特異的T細胞、EBV特異的T細胞、水痘ウイルス特異的T細胞、インフルエンザウイルス特異的T細胞、及び/またはアデノウイルス特異的T細胞である。
【0189】
持続性を向上させるため、本発明の細胞はさらに、生存促進シグナルを過剰発現させるように、抗生存シグナルを逆転させるように、Bcl-xLを過剰発現させるように、hTERTを過剰発現させるように、Fasを欠くように、またはTGFβドミナントネガティブ受容体を発現させるように改変され得る。持続性はまた、サイトカイン、例えば、IL-2、IL-7、及びIL-15の投与によっても促進され得る。
【0190】
ベクター
本発明はまた、本発明のDNAが挿入されたベクターを提供する。レトロウイルス由来のベクターは、柔軟なゲノムを有することに加えて、遺伝的安定性及び高発現を可能にするため、長期にわたる遺伝子導入を達成するのに適したツールである。さらに、レトロウイルスベクター使用の臨床経験は、それらの使用における有効性及び安全性を最適化するための手引きを提供する。
【0191】
簡潔に要約すれば、CARをコードする天然または合成核酸の発現は、通常、該CARのポリペプチドまたはその部分をコードする核酸をプロモーターに作動可能に連結し、該構築物を発現ベクターに組み込むことによって達成される。該ベクターは、真核生物での複製及び組み込みに適する可能性がある。典型的なクローニングベクターは、転写及び翻訳停止剤、開始配列、ならびに所望の核酸配列の発現の調節に有用なプロモーターを含む。
【0192】
本発明の発現構築物はまた、標準的な遺伝子導入プロトコルを用いた核酸免疫化及び遺伝子治療にも使用され得る。遺伝子導入のための方法は当技術分野では既知である。例えば、参照することによりそれらの全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,399,346号、第5,580,859号、第5,589,466号を参照されたい。別の実施形態では、本発明は、遺伝子治療ベクターを提供する。
【0193】
該核酸は、複数の種類のベクターにクローニングされ得る。例えば、該核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、及びコスミドが挙げられるがこれらに限定されないベクターにクローニングされ得る。特に重要なベクターとしては、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及び配列決定ベクターが挙げられる。
【0194】
さらに、該発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供され得る。ウイルスベクター技術は当技術分野では周知であり、例えば、Sambrook et al.(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)、ならびに他のウイルス学及び分子生物学のマニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスとしては、レトロウイルス、ガンマレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられるがこれらに限定されない。一般に、適切なベクターは、少なくとも1種の生物で機能する複製起点、プロモーター配列、都合のよい制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1つ以上の選択マーカーを含む(例えば、WO01/96584、WO01/29058、及び米国特許第6,326,193号)。
【0195】
複数のウイルスに基づく系が、哺乳類細胞への遺伝子導入用に開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子導入系にとって都合の良いプラットフォームを提供する。当技術分野で既知の技術を用いて選択された遺伝子をベクターに挿入し、レトロウイルス粒子内にパッケージすることができる。この組み換えウイルスをその後単離し、対象の細胞にインビボまたはエキソビボのいずれかで導入することができる。いくつかのレトロウイルス系が当技術分野で既知である。いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクターが使用される。いくつかのアデノウイルスベクターが当技術分野で既知である。1つの実施形態では、レトロウイルスベクターが使用される。いくつかの実施形態では、該レトロウイルスベクターは、pFSGまたはpFBである。
【0196】
さらなるプロモーター要素、例えば、エンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。通常、これらは、開始部位の上流30~110bpの領域に位置するが、いくつかのプロモーターは、最近、開始部位の下流にも同様に機能要素を含むことが示されている。プロモーター要素間の間隔は多くの場合柔軟であるため、要素が互いに反転または移動した場合にプロモーター機能は維持される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、プロモーター要素間の間隔は、活性が低下し始める前に50bpまで離れて増加する。プロモーターに応じて、個々の要素は、協調的にまたは独立して機能し、転写を活性化することができるように思われる。
【0197】
様々なプロモーター配列が使用される場合があり、これに含まれるのは、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、伸長成長因子-1α(EF-1α)、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の長い末端反復(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン・バーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、ならびにヒト遺伝子プロモーター、例えば、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、及びクレアチンキナーゼプロモーター等であるがこれらに限定されない。さらに、本発明は、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターもまた本発明の一部として企図される。誘導性プロモーターの使用は、ポリヌクレオチド配列の発現が望まれる場合には、それが作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現をオンにし、発現が望まれない場合にはその発現をオフにすることが可能な分子スイッチを提供する。誘導性プロモーターの例としては、メタロチオニン(metallothionine)プロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、及びテトラサイクリンプロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。
【0198】
CARポリペプチドまたはその部分の発現を評価するため、細胞に導入される発現ベクターはまた、選択マーカー遺伝子もしくはレポーター遺伝子のいずれか、またはその両方を含み、ウイルスベクターを介してトランスフェクトまたは感染させようとした細胞の集団からの発現細胞の識別及び選択を容易にすることができる。他の態様では、選択マーカーを別のDNA断片に載せ、共トランスフェクション手順において使用してもよい。選択マーカーとレポーター遺伝子の両方を宿主細胞での発現を可能にするために適切な調節配列に隣接させてもよい。有用な選択マーカーとしては、例えば、抗生物質耐性遺伝子、例えば、neo等が挙げられる。
【0199】
好ましい実施形態では、該選択マーカー遺伝子は、切断CD19(tCD19)をコードする核酸配列を含む。
【0200】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされた可能性がある細胞を識別するため、及び調節配列の機能を評価するために使用される。一般に、レポーター遺伝子は、レシピエントの生物もしくは組織には存在しないか、またはレシピエントの生物もしくは組織に存在せず、それによって発現もされない遺伝子であり、その発現が何らかの容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性によって明らかにされるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエントの細胞に導入された後適切な時点でアッセイされる。適切なレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、または緑色蛍光タンパク質遺伝子を挙げることができる(例えば、Ui-Tei et al.,2000 FEBS Letters 479:79-82)。適切な発現系は周知であり、既知の技術を用いて調製しても、商業的に入手してもよい。一般に、最も高いレベルのレポーター遺伝子発現を示す最小の5’隣接領域を備えた構築物がプロモーターとして同定される。かかるプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結され、プロモーターが駆動する転写を調節する能力について薬剤を評価するために使用され得る。
【0201】
形質導入
細胞に遺伝子を導入し発現させる方法は当技術分野では既知である。発現ベクターという観点から、該ベクターは、宿主細胞、例えば、哺乳類、細菌、酵母、または昆虫細胞に、当技術分野における任意の方法で容易に導入され得る。例えば、該発現ベクターは、物理的、化学的、または生物学的手段により宿主細胞に導入され得る。
【0202】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝突、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション等が挙げられる。ベクター及び/または外因性核酸を含む細胞の産生方法は、当技術分野では周知である。例えば、Sambrook et al.(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)を参照されたい。ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための好ましい方法は、リン酸カルシウム法である。
【0203】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法としては、DNA及びRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、及び特にレトロウイルスベクターは、遺伝子を哺乳類、例えば、ヒト細胞に挿入するために最も広く使用される方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス等に由来し得る。例えば、米国特許第5,350,674号及び第5,585,362号を参照されたい。
【0204】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段としては、コロイド分散系、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、ならびに、水中油エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含めた脂質に基づく系が挙げられる。導入媒体としてインビトロ及びインビボで使用するための例示的なコロイド系はリポソームである(例えば、人工膜小胞)。
【0205】
非ウイルス導入系が使用される場合、例示的な導入媒体はリポソームである。脂質製剤の使用は、宿主細胞への核酸の導入(インビトロ、エキソビボ、またはインビボ)に対して企図される。別の態様では、該核酸は、脂質と会合している場合がある。脂質と会合している核酸は、リポソームの水性内部に封入されている場合、リポソームの脂質二重層内に散在している場合、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方に会合した結合分子を介してリポソームに結合している場合、リポソームに封入されている場合、リポソームと複合体を形成している場合、脂質を含む溶液に分散している場合、脂質と混合している場合、脂質と結合している場合、脂質に懸濁液として含まれている場合、ミセルとともに含まれているもしくは複合体を形成している場合、または他の方法で脂質と会合している場合がある。脂質、脂質/DNA、または脂質/発現ベクター会合組成物は、溶液中いかなる特定の構造にも限定されない。例えば、それらは、二層構造で存在しても、ミセルとして存在しても、「つぶれた」構造で存在してもよい。それらはまた、単に溶液中に散在して、恐らくはサイズや形が均一でない凝集体を形成する場合もある。脂質は、脂肪性の物質であり、天然に存在する脂質でも合成脂質でもよい。例えば、脂質としては、細胞質内に天然に存在する脂肪小滴だけでなく、長鎖脂肪族炭化水素及びその誘導体、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒドを含む化合物群が挙げられる。
【0206】
使用に適した脂質は、商業的供給源から入手することができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma,St.Louis,Mo.から入手可能であり、リン酸ジセチル(「DCP」)は、K&K Laboratories(Plainview,N.Y.)から入手可能であり、コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから入手可能であり、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及び他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham,Ala.)から入手可能である。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質原液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムは、メタノールより容易に蒸発するために唯一の溶剤として使用される。「リポソーム」は、封入された脂質二重層または凝集体の生成により形成される様々な単一または多重膜脂質小胞を包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重膜及び内部水性媒体を備えた小胞構造を有すると特徴づけることができる。多重膜リポソームは、水性媒体で分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が過剰の水溶液に懸濁されると自然に生成する。該脂質成分は、自己再編成を経て閉鎖構造を形成し、水及び溶解溶質を脂質二重層間に取り込む(Ghosh et al.,1991 Glycobiology 5:505-10)。しかしながら、通常の小胞構造とは異なる構造を溶液中で有する組成物もまた包含される。例えば、該脂質は、ミセル構造をとる場合もあれば、単に脂質分子の不均一な凝集体として存在する場合もある。リポフェクタミン-核酸複合体もまた企図される。
【0207】
外因性核酸を宿主細胞に導入するため、または細胞を本発明の阻害剤に曝露するために使用される方法にかかわらず、宿主細胞内に組み換えDNA配列が存在することを確認するため、様々なアッセイが行われ得る。かかるアッセイとしては、例えば、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ、例えば、サザン及びノーザンブロット法、RT-PCR、及びPCRや、例えば、特定のペプチドの有無を、例えば、免疫学的手段(ELISA及びウェスタンブロット)または、本発明の範囲内に含まれる薬剤を特定するための本明細書に記載のアッセイによって検出する「生化学的」アッセイが挙げられる。
【0208】
本発明の細胞
細胞、細胞集団、及び該細胞を含む組成物、例えば、抗TIM-1キメラ抗原受容体をコードする核酸配列を含む細胞もまた提供する。該組成物の中には、養子細胞療法用等の投与用の医薬組成物及び製剤がある。該細胞及び組成物を対象、例えば、患者に投与するための治療方法もまた提供する。
【0209】
細胞型
従って、該抗TIM-1 CARを発現する細胞もまた提供する。該細胞は、概して真核細胞、例えば、哺乳類細胞であり、通常はヒト細胞であり、より典型的には初代ヒト細胞、例えば、同種または自己ドナー細胞である。該CARの導入用の細胞は、試料、例えば、生体試料、例えば、対象から採取した、または対象由来のものから単離され得る。いくつかの実施形態では、該細胞が単離される対象は、疾患もしくは状態を有するか、細胞療法を必要としているか、または細胞療法が施される対象である。いくつかの実施形態における該対象は、特定の治療介入、例えば、そのために細胞が単離され、処理され、及び/または操作される養子細胞療法を必要としているヒトである。いくつかの実施形態では、該細胞は、血液、骨髄、リンパ液、またはリンパ器官由来であり、免疫系の細胞、例えば、自然または適応免疫系細胞、例えば、骨髄性またはリンパ系細胞であり、リンパ球、通常はT細胞及び/またはNK細胞を含む。他の例示的な細胞としては、幹細胞、例えば、多能性(multipotent)及び多能性(pluripotent)幹細胞が挙げられ、人工多能性幹細胞(iPSC)が含まれる。該細胞は通常は初代細胞、例えば、対象から直接単離されたもの、及び/または対象から単離され、凍結されたものである。いくつかの実施形態では、該細胞には、T細胞または他の細胞型の1つ以上のサブセット、例えば、全T細胞集団、CD4細胞、CD8細胞、ならびにそれらの亜集団、例えば、機能、活性化状態、成熟度、分化能の、拡大能の、再循環能の、局在化能の、及び/または持続能の可能性、抗原特異性、抗原受容体の種類、特定の器官または区画内での存在、マーカーもしくはサイトカイン分泌プロファイル、及び/または分化度で判断されるものが含まれる。
【0210】
治療される対象に関して、該細胞は同種及び/または自己であり得る。含まれる方法の中には、既製の方法がある。例えば既製の技術用等のいくつかの態様では、該細胞は、多能性(pluripotent)及び/または多能性(multipotent)、例えば幹細胞、人工多能性幹細胞(iPSC)、またはT細胞受容体機能を欠いているもしくは欠くように操作されたT細胞である。いくつかの実施形態では、該方法には、本明細書に記載の通り、対象から細胞を単離すること、それらを調製、処理、培養、及び/または操作すること、ならびに凍結保存の前もしくは後でそれらを同じ患者に再導入することが含まれる。
【0211】
T細胞及び/またはCD4及び/またはCD8T細胞の亜型ならびに亜集団の中には、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、記憶T細胞、及びそれらの亜型、例えば幹細胞記憶T(TSCM)、中央記憶T(TCM)、エフェクター記憶T(TEM)、または高分化型エフェクター記憶T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、天然及び適応制御性T(Treg)細胞、ヘルパーT細胞、例えば、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞、ならびにデルタ/ガンマT細胞がある。
【0212】
いくつかの実施形態では、該細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞等である。いくつかの実施形態では、該細胞は、単球または顆粒球、例えば、骨髄細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、肥満細胞、好酸球、及び/または好塩基球である。
【0213】
いくつかの実施形態では、該細胞は、細胞株、例えば、T細胞株に由来する。いくつかの実施形態における該細胞は、異種起源から、例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類、及びブタから得られる。
【0214】
細胞の取得
拡大及び遺伝的改変の前に、細胞源が様々な非限定的方法で対象から採取され得る。細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含めた複数の非限定的起源から得ることができる。いくつかの実施形態では、任意の数の利用可能かつ当業者に既知のT細胞株が使用され得る。いくつかの実施形態では、細胞は、健常ドナー由来、がんと診断された患者由来、自己免疫もしくは炎症性疾患と診断された患者由来、または感染症と診断された患者由来の場合がある。いくつかの実施形態では、細胞は、異なる表現型の特性を示す細胞の混合集団の一部の場合がある。
【0215】
従って、いくつかの実施形態における細胞は、初代細胞、例えば、初代ヒト細胞である。その試料としては、対象から直接採取された組織、体液、及び他の試料だけでなく、1つ以上の処理段階、例えば、分離、遠心分離、遺伝子操作(例えば、ウイルスベクターによる形質導入)、洗浄、及び/またはインキュベーションから得られた試料が挙げられる。該生体試料は、生物学的起源から直接採取された試料であっても、処理された試料であってもよい。生体試料としては、体液、例えば、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿、及び汗、組織、ならびに器官試料が、それら由来の処理された試料を含めて挙げられるがこれらに限定されない。
【0216】
いくつかの態様では、細胞が由来するまたは単離される試料は、血液もしくは血液由来の試料であるか、または、アフェレーシスもしくは白血球アフェレーシス産物由来である。例示的な試料としては、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ系組織、粘膜関連リンパ系組織、脾臓、他のリンパ系組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸管、精巣、卵巣、扁桃腺、もしくは他の器官、及び/またはそれらに由来する細胞が挙げられる。試料には、細胞療法、例えば養子細胞療法との関連で、自己及び同種起源の試料が含まれる。
【0217】
いくつかの例では、対象の循環血由来の細胞が、例えば、アフェレーシスまたは白血球アフェレーシスによって採取される。該試料は、いくつかの態様では、リンパ球を含み、T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、及び/または血小板が含まれ、いくつかの態様では、赤血球及び血小板以外の細胞を含む。
【0218】
前述した方法のいずれかによる形質転換細胞から得られる細胞株もまた本明細書に提供する。免疫抑制治療に耐性のある改変細胞もまた本明細書に提供する。いくつかの実施形態では、本発明の単離された細胞は、CARをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0219】
細胞の精製
いくつかの実施形態では、該細胞の単離は、1つ以上の調製段階及び/または非親和性に基づく細胞分離段階を含む。いくつかの例では、細胞を洗浄し、遠心分離し、及び/または1つ以上の試薬の存在下でインキュベートし、例えば、不要な成分を除去し、所望の成分を濃縮し、特定の試薬に反応する細胞を溶解または除去する。いくつかの例では、細胞を1つ以上の特性、例えば、密度、接着性、サイズ、特定の成分に対する感受性及び/または耐性に基づいて分離する。
【0220】
いくつかの実施形態では、対象から採取した血液細胞を洗浄して、例えば、血漿分画を分離し、該細胞を次の処理段階に適切な緩衝液もしくは媒体に入れる。いくつかの実施形態では、該細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄する。いくつかの実施形態では、該洗浄液は、カルシウム及び/またはマグネシウム及び/または多くのもしくはすべての二価カチオンを含まない。いくつかの態様では、洗浄段階は、半自動「フロースルー」遠心分離機(例えば、the Cobe 2991 cell processor,Baxter)によって、製造業者の取扱説明書に従って達成される。いくつかの態様では、洗浄段階は、タンジェンシャルフロー・フィルトレーション(TFF)によって、製造業者の取扱説明書に従って達成される。いくつかの実施形態では、該細胞は、洗浄後に様々な生体適合性緩衝液、例えば、Ca++/Mg++を含まないPBS等に再懸濁される。ある特定の実施形態では、血液細胞試料の成分を除去し、細胞を直接培地に再懸濁する。
【0221】
いくつかの実施形態では、該単離方法は、細胞内での1つ以上の特定の分子、例えば、表面マーカー、例えば、表面タンパク質、細胞内マーカー、もしくは核酸の発現または存在に基づく異なる細胞型の分離を含む。特定の実施形態では、該表面マーカーはtCD19である。いくつかの実施形態では、かかるマーカーに基づく分離のための任意の既知の方法が使用され得る。いくつかの実施形態では、該分離は、親和性または免疫親和性に基づく分離である。例えば、いくつかの態様における単離は、細胞の1つ以上のマーカー、通常は細胞の表面マーカーの発現または発現レベルに基づく細胞及び細胞集団の分離を含み、例えば、かかるマーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとのインキュベーションと、一般的にそれに続く洗浄段階及び該抗体または結合パートナーが結合している細胞を、該抗体または結合パートナーが結合していない細胞から分離することによる。
【0222】
かかる分離段階は、試薬が結合している細胞がさらなる使用のために保持される正の選択、及び/または該抗体もしくは結合パートナーが結合していない細胞が保持される負の選択に基づく場合がある。いくつかの例では、両方の画分がさらなる使用のために保持される。いくつかの態様では、異種集団で細胞型を特異的に識別する抗体が利用できない場合には、負の選択が特に有用であり、従って、分離を所望の集団以外の細胞によって発現されるマーカーに基づいて行うのが最も良い。
【0223】
いくつかの実施形態では、複数回の分離段階が行われ、この場合、1つの段階から正または負に選択された画分が別の分離段階、例えば、その後の正または負の選択に供される。いくつかの例では、例えば、細胞を、それぞれが負の選択用に標的とされるマーカーに特異的な複数の抗体または結合パートナーとともにインキュベートすることによって、単一の分離段階で同時に複数のマーカーを発現する細胞を枯渇させることができる。同様に、細胞を、様々な細胞型で発現される複数の抗体または結合パートナーとともにインキュベートすることによって、複数の細胞型を同時に正に選択することができる。
【0224】
例えば、いくつかの態様では、T細胞の特定の亜集団、例えば、1つ以上の表面マーカーが陽性または高発現の細胞、例えば、CD28、CD62L、CCR7、CD27、CD127、CD4、CD8、CD45RA、及び/またはCD45ROT細胞が、正または負の選択技術によって単離される。例えば、CD3T細胞は、CD3結合磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander)を用いて拡大させることができる。
【0225】
いくつかの実施形態では、単離は、正の選択で特定の細胞集団を濃縮することによって、または負の選択で特定の細胞集団を枯渇させることによって行われる。いくつかの実施形態では、正または負の選択は、正または負に選択された細胞にてそれぞれ発現される、または比較的高いレベル(マーカー)で発現される(マーカー)1つ以上の表面マーカーに特異的に結合する1つ以上の抗体または他の結合剤とともに細胞をインキュベートすることによって達成される。
【0226】
いくつかの実施形態では、T細胞は、PBMC試料から、非T細胞、例えば、B細胞、単球、または他の白血球細胞、例えば、CD14上で発現されるマーカーの負の選択によって分離される。いくつかの態様では、CD4またはCD8の選択段階は、CD4ヘルパー及びCD8細胞傷害性T細胞の分離に使用される。かかるCD4及びCD8集団は、1つ以上のナイーブ、記憶、及び/またはエフェクターT細胞の亜集団において発現される、または比較的高度に発現されるマーカーに関する正または負の選択によってさらに亜集団に分類され得る。
【0227】
いくつかの実施形態では、CD8細胞は、ナイーブ、中央記憶、エフェクター記憶、及び/または中央記憶幹細胞について、例えば、それぞれの亜集団に関連する表面抗原に基づく正または負の選択により、さらに濃縮されるか、または枯渇される。いくつかの実施形態では、中央記憶T(TCM)細胞の濃縮を行って有効性を高め、例えば、いくつかの態様ではかかる亜集団で特に強固である長期生存、拡大、及び/または投与後の生着を改善する。Terakura et al.(2012)Blood.1:72-82、Wang et al.(2012)J Immunother.35(9):689-701を参照されたい。いくつかの実施形態では、TCMが濃縮されたCD8T細胞とCD4T細胞を組み合わせることがさらに有効性を高める。
【0228】
実施形態では、記憶T細胞はCD8末梢血リンパ球のCD62L及びCD62Lの両サブセットに存在する。PBMCは、例えば、抗CD8及び抗CD62L抗体を用いて、CD62LCD8及び/またはCD62LCD8画分について濃縮または枯渇され得る。
【0229】
いくつかの実施形態では、中央記憶T(TCM)細胞についての濃縮は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、及び/またはCD127の陽性または高表面発現に基づく。いくつかの態様では、それは、CD45RA及び/またはグランザイムBを発現する、または高度に発現する細胞に関する負の選択に基づく。いくつかの態様では、TCM細胞について濃縮されたCD8集団の単離は、CD4、CD14、CD45RAを発現する細胞の枯渇、及びCD62Lを発現する細胞についての正の選択または濃縮によって行われる。1つの態様では、中央記憶T(TCM)細胞の濃縮は、CD4発現に基づいて選択された細胞の陰性画分から開始し、これをCD14及びCD45RAの発現に基づく負の選択ならびにCD62Lに基づく正の選択に供して行われる。いくつかの態様におけるかかる選択は、同時に行われ、他の態様では、いずれかの順序で順次行われる。いくつかの態様では、CD8細胞集団または亜集団の調製に使用された同じCD4発現に基づく選択段階が、CD4細胞集団または亜集団を生成するためにも使用され、従って、CD4に基づく選択からの陽性及び陰性画分の両方が保持され、これらの方法の後続段階、任意にそれに続く1つ以上のさらなる正または負の選択段階に使用される。
【0230】
いくつかの態様では、分離される細胞の試料または組成物は、小さい磁化可能または磁気に反応する材料、例えば、磁気に反応する粒子または微粒子、例えば、常磁性粒子(例えば、DynabeadsまたはMACSビーズ)とともにインキュベートされる。該磁気に反応する材料、例えば、粒子は、一般に、結合パートナー、例えば、分子、例えば、分離されるべき、例えば、正または負に選択されるべき細胞(複数可)、または細胞の集団に存在する表面マーカーに特異的に結合する抗体に直接または間接的に結合される。
【0231】
いくつかの実施形態では、該磁気粒子またはビーズは、特定の結合メンバー、例えば、抗体または他の結合パートナーに結合した磁気に反応する材料を含む。磁気分離法に使用される多くの周知の磁気に反応する材料がある。適切な磁気粒子としては、参照することにより本明細書に組み込まれるMolday,米国特許第4,452,773号、及び欧州特許明細書第EP452342B号に記載のものが挙げられる。コロイドサイズの粒子、例えば、Owen米国特許第4,795,698号、及びLiberti et al.,米国特許第5,200,084号に記載のものが他の例である。
【0232】
該インキュベーションは一般に、抗体もしくは結合パートナー、または分子、例えば、かかる抗体もしくは結合パートナーに特異的に結合する2次抗体もしくは他の試薬で、磁気粒子またはビーズに結合しているものが、細胞表面分子が当該試料中の細胞上に存在する場合に、これに特異的に結合する条件下で行われる。
【0233】
いくつかの態様では、該試料は磁場に置かれ、磁気に反応するまたは磁化可能粒子に結合した細胞は、磁石に付着し、非標識の細胞から分離される。正の選択の場合、磁石に付着した細胞が保持され、負の選択の場合、付着しない細胞(非標識細胞)が保持される。いくつかの態様では、同じ選択段階の過程で正及び負の選択の組み合わせが行われ、この場合は、陽性及び陰性画分が保持され、さらに処理され、またはさらなる分離段階に供される。
【0234】
ある特定の実施形態では、該磁気に反応する粒子は、一次抗体もしくは他の結合パートナー、二次抗体、レクチン、酵素、またはストレプトアビジン中で被覆される。ある特定の実施形態では、該磁気粒子は、1つ以上のマーカーに特異的な一次抗体の被膜を介して細胞に結合する。ある特定の実施形態では、該ビーズではなく該細胞は、一次抗体または結合パートナーで標識され、その後、細胞型特異的二次抗体または他の結合パートナー(例えば、ストレプトアビジン)で被覆された磁気粒子が添加される。ある特定の実施形態では、ストレプトアビジンで被覆された磁気粒子は、ビオチン化一次または二次抗体と併せて使用される。
【0235】
いくつかの実施形態では、該磁気に反応する粒子は細胞に結合され、該細胞は、その後インキュベートされ、培養され、及び/または操作される。いくつかの態様では、該粒子は、患者に投与するための細胞に結合される。いくつかの実施形態では、該磁化可能なまたは磁気に反応する粒子は、細胞から除去される。細胞から磁化可能な粒子を除去する方法は既知であり、例えば、競合する非標識抗体、磁化可能な粒子、または切断可能なリンカーにコンジュゲートした抗体等の使用を含む。いくつかの実施形態では、該磁化可能な粒子は生分解性である。
【0236】
ある特定の実施形態では、該単離または分離は、本方法の単離、細胞調製、分離、処理、インキュベーション、培養、及び/または製剤段階のうちの1つ以上を行うシステム、装置、または機器を用いて行われる。いくつかの態様では、該システムは、これらの段階の各々を閉環境または無菌環境で行い、例えば、ミス、使用者の取り扱い、及び/またはコンタミネーションを最小限にするために使用される。1つの例では、該システムは、国際特許出願公開第WO2009/072003号またはUS20110003380A1に記載のシステムである。
【0237】
いくつかの実施形態では、該システムまたは機器は、該単離、処理、操作、及び製剤段階の1つ以上、例えば、すべてを、統合もしくは内蔵型システムで、及び/または自動もしくはプログラム可能な形式で行う。いくつかの態様では、該システムまたは機器は、該システムまたは機器と通信するコンピュータ及び/またはコンピュータプログラムを含み、これにより、使用者が、該処理、単離、操作、及び製剤段階の様々な態様をプログラムすること、制御すること、その結果を評価すること、及び/または調節することが可能になる。
【0238】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞集団は、複数の細胞表面マーカーについて染色された細胞が、流体流中で運ばれるフローサイトメトリーを介して採集及び濃縮(または枯渇)される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の細胞集団は、分取規模の(FACS)分類を介して採集及び濃縮(または枯渇)される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の細胞集団は、FACS系の検出システムと組み合わせた微小電気機械システム(MEMS)チップの使用によって採集及び濃縮(または枯渇)される(例えば、WO2010/033140,Cho et al.(2010)Lab Chip 10,1567-1573、及びGodin et al.(2008)J Biophoton.1(5):355-376参照。どちらの場合も、細胞を複数のマーカーで標識することができ、特定のT細胞のサブセットの高純度での単離が可能になる。
【0239】
いくつかの実施形態では、正及び/または負の選択のための分離を容易にするため、該抗体または結合パートナーを1つ以上の検出可能なマーカーで標識する。例えば、分離は、蛍光標識された抗体への結合に基づき得る。いくつかの例では、1つ以上の細胞表面マーカーに特異的な抗体または他の結合パートナーの結合に基づく細胞の分離は、流体流中で、例えば、蛍光活性化細胞分類(FACS)により、分取スケールの(FACS)及び/または微小電気機械システム(MEMS)チップ等で、例えば、フローサイトメトリー検出システムと組み合わせて行われる。かかる方法は、複数のマーカーに基づく正及び負の選択を同時に可能にする。
【0240】
いくつかの実施形態では、該方法は、密度に基づいた細胞分離法、例えば、赤血球を溶解し、PercollまたはFicoll勾配での遠心分離による末梢血からの白血球の調製を含む。
【0241】
前述の分離段階のいずれにおいても、該分離が特定の細胞集団もしくは特定のマーカーを発現する細胞の100%の濃縮または除去をもたらす必要はない。例えば、特定の型の細胞、例えば、マーカーを発現する細胞の正の選択または濃縮とは、かかる細胞の数または割合が増加することを指すが、該マーカーを発現しない細胞の完全欠損をもたらす必要はない。同様に、特定の型の細胞、例えば、マーカーを発現する細胞の負の選択、除去、または枯渇とは、かかる細胞の数または割合が減少することを指すが、かかる細胞のすべての完全除去をもたらす必要はない。
【0242】
細胞の調製及び拡大
いくつかの実施形態では、提供される方法には、培養(cultivation)、インキュベーション、培養(culture)、及び/または遺伝子操作段階が含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、枯渇細胞集団と培養開始組成物をインキュベート及び/または操作する方法を提供する。
【0243】
従って、いくつかの実施形態では、該細胞集団は、培養開始組成物中でインキュベートされる。該インキュベーション及び/または操作は、培養容器、例えば、装置、チャンバー、ウェル、カラム、チューブ、管類一式、バルブ、バイアル、培養皿、バッグ、または細胞培養(culture)もしくは培養(cultivating)用の他の容器内で行われ得る。
【0244】
いくつかの実施形態では、該細胞は、遺伝子操作の前もしくはそれと関連してインキュベート及び/または培養される。該インキュベーション段階は、培養(culture)、培養(cultivation)、刺激、活性化、及び/または増殖を含み得る。
【0245】
いくつかの実施形態では、該組成物または細胞は、刺激条件または刺激性薬剤の存在下でインキュベートされる。かかる条件には、該集団内の細胞の増殖、拡大、活性化、及び/または生存を誘導するため、抗原曝露を模倣するため、及び/または遺伝子操作用、例えば、組み換え抗原受容体の導入用に細胞をプライムするために設計された条件が含まれる。本発明の細胞は、例えば、限定することなく、米国特許第6,352,694号、第6,534,055号、第6,905,680号、第6,692,964号、第5,858,358号、第6,887,466号、第6,905,681号、第7,144,575号、第7,067,318号、第7,172,869号、第7,232,566号、第7,175,843号、第5,883,223号、第6,905,874号、第6,797,514号、第6,867,041号、及び米国特許出願公開第20060121005号に概して記載される方法を用い、該細胞の遺伝的改変の前または後に、活性化及び拡大され得る。該条件は、1つ以上の特定の培地、温度、酸素含量、二酸化炭素含量、時間、薬剤、例えば、栄養素、アミノ酸、抗生物質、イオン、及び/または刺激因子、例えば、サイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組み換え可溶性受容体、及び細胞を活性化するために設計された任意の他の薬剤を含むことができる。
【0246】
T細胞は、インビトロまたはインビボで拡大され得る。一般に、本発明のT細胞は、例えば、該T細胞の表面でCD3 TCR複合体を刺激する薬剤及び共刺激分子と接触し、該T細胞のための活性化シグナルを生成することによって拡大され得る。例えば、カルシウムイオノフォアA23187、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)、またはフィトヘマグルチニン(PHA)のような細胞分裂誘起レクチン等の化学物質を使用して該T細胞の活性化シグナルを生成することができる。
【0247】
いくつかの実施形態では、T細胞集団は、インビトロで、例えば、表面に固定化された抗CD3抗体、もしくはその抗原結合断片、もしくは抗CD2抗体を接触させることによって、またはプロテインキナーゼC活性化剤(例えば、ブリオスタチン)をカルシウムイオノフォアと組み合わせて接触させることによって刺激され得る。いくつかの実施形態では、該T細胞集団は、インビトロで、ムロモナブ-CD3(OKT3)と接触させることによって刺激され得る。該T細胞の表面での補助分子の共刺激に関しては、該補助分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞のある集団は、抗CD3抗体及び抗CD28抗体と、該T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件下で接触され得る。T細胞の培養に適切な条件には、血清(例えば、ウシ胎児またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-2、IL-15、IL-21、TGFp、及びTNF、または、当業者に既知の細胞の増殖用の任意の他の添加剤を含めた増殖及び生存能力のために必要な因子を含んでいてもよい適切な培地(例えば、基礎培地もしくはRPMI培地1640または、X-vivo 5,(Lonza))が含まれる。好ましい実施形態では、T細胞は、インビトロで、OKT3及びIL-2に曝露することによって刺激される。細胞増殖のための他の添加剤としては、界面活性剤、プラスマネート、及び還元剤、例えば、N-アセチル-システイン及び2-メルカプトエタノールが挙げられるがこれらに限定されない。培地としては、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、及びビタミンが添加され、無血清であるか、または適量の血清(もしくは血漿)もしくは一定のホルモン一式、及び/またはT細胞の増殖及び拡大に十分な量のサイトカイン(複数可)が補充されたRPMI 1640、AIM-V、DMEM、MEM、a-MEM、F-12、X-Vivo 15、及びX-Vivo 20、Optimizerを挙げることができる。抗生物質、例えば、ペニシリン及びストレプトマイシンは、実験用の培養にのみ含まれ、対象に注入される細胞の培養には含まれない。標的細胞は、増殖を支援するのに必要な条件下、例えば、適温(例えば、37℃)及び大気(例えば、空気プラス5%CO)で維持される。異なる刺激時間に曝露されたT細胞は、異なる特性を示し得る。
【0248】
いくつかの実施形態では、本発明の単離された細胞は、組織または細胞とともに培養することによって拡大され得る。該細胞はまた、インビボで、例えば、対象の血中で、該細胞を該対象に投与した後に拡大され得る。
【0249】
いくつかの実施形態では、該T細胞は、該培養開始組成物に支持細胞、例えば、非分裂末梢血単核細胞(PBMC)を加え(例えば、得られる細胞集団が少なくとも約5、10、20、もしくは40またはそれ以上のPBMC支持細胞を、拡大されるべき最初の集団における各Tリンパ球に対して含むように)、その培養物をインキュベートする(例えば、T細胞数を拡大するのに十分な時間)ことによって拡大される。いくつかの態様では、該非分裂支持細胞は、ガンマ線を照射されたPBMC支持細胞を含むことができる。いくつかの実施形態では、該PBMCは、細胞分裂を防止するために約3000~3600radの範囲のガンマ線で照射される。いくつかの態様では、該支持細胞は、T細胞の集団の添加前に培地に添加される。
【0250】
いくつかの実施形態では、該調製方法には、単離、インキュベーション、及び/または操作の前または後のいずれかでの細胞の凍結、例えば、凍結保存の段階が含まれる。いくつかの実施形態では、該凍結及びその後の解凍段階で、細胞集団内の顆粒球及び、ある程度の単球が除去される。いくつかの実施形態では、該細胞は、例えば、血漿及び血小板を除去するための洗浄段階の後に凍結溶液に懸濁される。いくつかの態様における様々な既知の凍結溶液及びパラメータのいずれかが使用され得る。一例は、20%DMSO及び8%ヒト血清アルブミン(HSA)を含むPBSまたは他の適切な細胞凍結培地の使用を含む。これをその後培地で1:1に希釈し、DMSOとHSAの最終濃度がそれぞれ10%及び4%になるようにする。これらの細胞をその後、1分当たり1度の速度で-80℃に凍結し、液体窒素貯蔵タンクの気相で保存する。
【0251】
治療への応用
上記の方法によって得られた単離された細胞、またはかかる単離された細胞由来の細胞株は、対象における疾患、障害、または状態の治療における医薬として使用され得る。いくつかの実施形態では、かかる医薬は、がんの治療に使用され得る。
【0252】
細胞の起源
宿主細胞または細胞集団が投与される本発明の方法上、該細胞は、当該対象にとって異種、同種異系、または自己である細胞であり得る。一般に、該細胞は、当該対象にとって自己である。
【0253】
いくつかの実施形態では、該細胞療法、例えば、養子細胞療法、例えば、養子T細胞療法は、該細胞が、該細胞療法を受ける対象またはかかる対象由来の試料から単離された及び/または別の方法で調製されたものである自家移入によって行われる。従って、いくつかの態様では、該細胞は、治療を必要とする対象、例えば、患者に由来し、該細胞は、単離及び処理の後、同じ対象に投与される。
【0254】
いくつかの実施形態では、該細胞療法、例えば、養子細胞療法、例えば、養子T細胞療法は、該細胞が、該細胞療法を受ける、または最終的に受ける対象、例えば、第一の対象以外の対象から単離された及び/または別の方法で調製されたものである同種異系移入によって行われる。かかる実施形態では、該細胞は、その後、同じ種の異なる対象、例えば、第二の対象に投与される。いくつかの実施形態では、該第一及び第二の対象は、遺伝学的に同一である。いくつかの実施形態では、該第一及び第二の対象は遺伝学的に類似である。いくつかの実施形態では、該第二の対象は、該第一の対象と同じHLAクラスまたは上位型を発現する。
【0255】
対象
本明細書で言及される対象は、任意の生体でよい。好ましい実施形態では、該対象は哺乳類である。本明細書で言及される哺乳類は、任意の哺乳類であり得る。本明細書で使用される、「哺乳類」という用語は、任意の哺乳類を指し、ネズミ目の哺乳類、例えば、マウス及びハムスター、ならびにウサギ目の哺乳類、例えば、ウサギを含むがこれらに限定されない。該哺乳類は、食肉類からでもよく、ネコ科(ネコ)及びイヌ科(イヌ)を含む。該哺乳類は、偶蹄類からでもよく、ウシ属(ウシ)及びイノシシ属(ブタ)を含み、奇蹄類からでもよく、ウマ科(ウマ)を含む。該哺乳類は、サル目、セボイド(Ceboids)目、もしくはシモイド(Simoids)目(サル)、または類人猿目(order Anthropoids)(ヒト及び類人猿)のものでもよい。
【0256】
いくつかの実施形態では、該細胞、細胞集団、または組成物が投与される対象は、霊長類、例えば、ヒトである。いくつかの実施形態では、該霊長類は、サルまたは類人猿である。該対象は、雄でも雌でもよく、幼年、若年、青年、成年、及び老年対象を含めた任意の適切な年齢でよい。いくつかの例では、該患者または対象は、疾患、養子細胞療法用の、及び/またはサイトカイン放出症候群(CRS)等の毒作用を評価するための認証された動物モデルである。
【0257】
いくつかの実施形態では、該対象は、例えば、別の免疫療法及び/または、化学療法、放射線、及び/または造血幹細胞移植(HSCT)、例えば、同種HSCTを含めた他の療法による治療後、持続性または再発性疾患を有する。いくつかの実施形態では、該投与は、該対象が別の療法に対して耐性になっていても、該対象を効果的に治療する。いくつかの実施形態では、該対象は、再発はしていないが、再発の危険性がある、例えば、再発の危険性が高いと判断されており、従って、該化合物または組成物は、予防的に、例えば、再発の可能性を低減するため、または再発を防止するために投与される。
【0258】
いくつかの実施形態では、該方法は、CARを発現する細胞または該細胞を含む組成物を、対象、組織、または細胞、例えば、TIM-1の発現に関連する疾患、状態、または障害を有する危険性がある、または有する疑いがあるものに投与することを含む。いくつかの実施形態では、該細胞、集団、及び組成物は、治療されるべき特定の疾患または状態を有する対象に対して、例えば、養子細胞療法、例えば、養子T細胞療法を介して投与される。いくつかの実施形態では、該細胞または組成物は、対象、例えば、疾患もしくは状態を有する、または疾患もしくは状態の危険性がある対処に投与される。いくつかの態様では、該方法は、従って、該疾患または状態の1つ以上の症状を、例えば、TIM-1を発現するがんにおける腫瘍量を減少させることによって治療、例えば改善する。
【0259】
機能活性
1つの実施形態では、本発明は、単離された細胞が、抗TIM-1 CARを発現するように遺伝的に改変され、そのCAR細胞がそれを必要とする対象に注入される細胞療法のある型を含む。かかる投与は、該疾患または障害の細胞が破壊の標的となるように、TIM-1を標的とする様式で細胞の活性化(例えば、T細胞活性化)を促進することができる。該細胞がT細胞の場合、CAR T細胞は、抗体療法と異なって、インビボで複製することが可能であり、長期にわたる持続性をもたらし、これが、TIM-1関連の疾患、障害、または状態の持続的制御につながり得る。
【0260】
1つの実施形態では、本発明の単離された細胞は、インビボで拡大することができ、長時間存続することができる。該単離された細胞がT細胞である別の実施形態では、本発明の単離されたT細胞は、任意のさらなるTIM-1発現細胞の増殖を阻害するように再活性化され得る特定の記憶T細胞に発展する。CAR T細胞は、インビボで、代理抗原を発現する標的細胞に遭遇及びその後の除去の際に中央記憶様の状態に分化し得る。
【0261】
いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、該単離されたCAR改変免疫細胞によって誘発される抗腫瘍免疫反応は、能動的免疫反応でも受動的免疫反応でもよい。さらに、該CARが媒介する免疫反応は、CAR改変免疫細胞が、該CARにおける抗原結合ドメインに特異的な免疫反応を誘導する養子免疫療法アプローチの一部であり得る。
【0262】
ある特定の実施形態では、CARを発現する細胞は、それらの治療上のまたは予防上の有効性が増加するように、任意の数の方法で改変される。例えば、該CARは、標的部分に直接、またはリンカーを介して間接的にコンジュゲートされ得る。化合物、例えば、CARの標的部分へのコンジュゲートの実施は、当技術分野では既知である。例えば、Wadhwa et al.,J.Drug Targeting 1995、3(2):111-127、及び米国特許第5,087,616号を参照されたい。
【0263】
該細胞が対象(例えば、ヒト)に投与されると、いくつかの態様における操作された細胞集団及び/または抗体の生物活性が、複数の既知の方法のいずれかによって測定される。評価するパラメータとしては、インビボでは、例えば画像検査、またはエキソビボでは、例えばELISAもしくはフローサイトメトリーによる、操作されたまたは天然のT細胞または他の免疫細胞の抗原に対する特異的結合が挙げられる。ある特定の実施形態では、該操作された細胞の標的細胞を破壊する能力は、例えば、Kochenderfer et al.,J.Immunotherapy,32(7):689-702(2009)、及びHerman et al.J.Immunological Methods,285(1):25-40(2004)に記載の細胞傷害性アッセイ等の当技術分野で既知の任意の適切な方法を用いて測定され得る。ある特定の実施形態では、該細胞の生物活性はまた、ある特定のサイトカイン、例えば、GM-CSF、IL-6、RANTES(CCL5)、TNF-α、IL-4、IL-10、IL-13、IFN-γ、CD 107a、またはIL-2の発現及び/または分泌をアッセイすることによって測定され得る。
【0264】
いくつかの態様では、該生物活性は、臨床転帰、例えば、腫瘍量または腫瘍細胞量の減少、腫瘍の安定化、無増悪生存率、または全生存を評価することによって測定される。
【0265】
標的細胞
治療され得るがんとしては、血管新生されていない腫瘍、またはまだ実質的に血管新生されていない、及び血管新生された腫瘍が挙げられる。該がんは、非固形腫瘍(例えば、血液系腫瘍、例えば、白血病及びリンパ腫)を含む場合もあれば、固形腫瘍を含む場合もある。本発明のCARで治療されるがんの型としては、癌腫、芽細胞腫、及び肉腫、ならびにある特定の白血病またはリンパ腫悪性腫瘍、両性及び悪性の腫瘍、ならびに悪性腫瘍、例えば、肉腫、癌腫、及び黒色腫が挙げられるがこれらに限定されない。成人の腫瘍/がん及び小児の腫瘍/がんもまた含まれる。
【0266】
血液がんは、血液または骨髄のがんである。血液(または血行性)がんの例としては、急性白血病(例えば、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性(myelocytic)白血病、急性骨髄性(myelogenous)白血病、ならびに骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性、及び赤白血病)、慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、及び慢性リンパ球性白血病)を含めた白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(無痛性及び高悪性度型)、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、有毛細胞白血病、ならびに骨髄異形成が挙げられる。
【0267】
固形腫瘍は、嚢胞や液体領域を通常は含まない異常な組織の塊である。固形腫瘍は、良性の場合も悪性の場合もある。異なる型の固形腫瘍は、それらを形成する細胞の型にちなんで命名される(例えば、肉腫、癌腫、及びリンパ腫)。固形腫瘍、例えば、肉腫及び癌腫の例としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、及び他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ性悪性疾患、膵臓癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、隋様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、セミノーマ、膀胱癌、黒色腫、ならびにCNS腫瘍(例えば、神経膠腫(例えば、脳幹神経膠腫及び混合性神経膠腫)、膠芽細胞腫(多形性膠芽腫としても知られる)、星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、神経鞘腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、及び脳転移)が挙げられる。
【0268】
好ましくは、本発明のCARを発現する細胞は、腫瘍性細胞が表面TIM-1発現に関して陽性のがんを治療するために使用される。特に、本発明の細胞は、TIM-1陽性卵巣癌、腎細胞癌、及び肺癌を治療するために使用され得る。一般に、TIM-1陽性腫瘍細胞は、既知の方法で特定され得る。例えば、腫瘍細胞上でのTIM-1発現は、免疫蛍光またはフローサイトメトリーにより、抗TIM-1抗体を用いて特定され得る。別の方法として、TIM-1発現は、標的細胞に対するCARの細胞傷害性を通して機能的に測定され得る。
【0269】
標的細胞を認識する能力及び抗原特異性に関してCARを調べる方法は、当技術分野では既知である。例えば、Clay et al.,J.Immunol.,163:507-513(1999)は、サイトカイン(例えば、インターフェロン-γ、顆粒球/単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、腫瘍壊死因子a(TNF-α)、またはインターロイキン2(IL-2))の放出を測定する方法を開示している。さらに、CARの機能は、Zhao et al.,J.Immunol.,174:4415-4423(2005)に記載の通り、細胞傷害性の測定によって評価することができる。
【0270】
生検は、個体から組織及び/または細胞を取り出すことである。かかる取り出しは、取り出した組織及び/または細胞で実験を行うために個体から組織及び/または細胞を収集することであり得る。この実験は、該個体がある特定の状態または病状を有している及び/またはそれに罹患しているかどうかを判断する実験を含み得る。該状態または疾患は、例えば、がんであり得る。宿主におけるTIM-1発現腫瘍細胞の存在の検出に関しては、該宿主の細胞を含む試料は、全細胞、その溶解物、または全細胞溶解物の画分、例えば、核もしくは細胞質画分、全タンパク質画分、または核酸画分を含む試料であり得る。該試料が全細胞を含む場合、該細胞は、宿主の任意の細胞、例えば、血液細胞または内皮細胞を含めた任意の器官または組織の細胞であり得る。
【0271】
他の標的
本発明のCAR、及び特に本発明のCAR発現免疫細胞はまた、健康なまたは異常な細胞におけるTIM-1発現に関与する任意の他の状態、障害、または疾患を治療、予防、または診断するために使用され得る。例えば、本発明は、対象における免疫機能障害、アトピー性皮膚炎、アレルギー、関節リウマチ、喘息、全身性エリテマトーデス、A型肝炎ウイルス感染、エボラウイルス感染、デング熱ウイルス感染、気管の疾患、もしくは隔膜及び結膜の疾患を治療または予防する方法もまた企図し、その方法は、本発明のCARを発現する細胞を投与することを含む。例えば、TIM-1のムチンドメインにおける6個のアミノ酸の挿入は、アトピー性疾患からの防御と関連しており、本発明は、アトピー性疾患の治療または予防方法として、TIM-1のムチンドメインを標的とするCARを発現する細胞の投与を企図する。
【0272】
投与方法
本発明の組成物は、局所治療が望ましいか全身治療が望ましいかに応じて、いくつかの方法で投与され得る。
【0273】
養子細胞療法の場合、養子細胞療法用の細胞の投与方法は既知であり、提供される方法及び組成物と関連して使用され得る。例えば、養子T細胞療法の方法は、例えば、Gruenbergら、米国特許出願公開第2003/0170238号、Rosenberg、米国特許第4,690,915号、Rosenberg(2011)Nat Rev Clin Oncol.8(10):577-85)に記載されている。例えば、Themeli et al.(2013)Nat Biotechnol.31(10):928-933、Tsukahara et al.(2013)Biochem Biophys Res Commun 438(1):84-9、Davila et al.(2013)PLoS ONE 8(4):e61338を参照されたい。
【0274】
一般に、投与は、局所、非経口、または腸内であり得る。
【0275】
本発明の組成物は、通常は非経口投与に適している。本明細書で使用される、医薬組成物の「非経口投与」としては、対象の組織の物理的な破壊及び該組織に該破壊を通して該医薬組成物を投与して、一般に血流中、筋肉中、または内臓器官への直接投与がもたらされることを特徴とする任意の投与経路が挙げられる。非経口投与は従って、該組成物の注入による、外科的切開を介した該組成物の適用による、組織を貫通する非外科的創傷を通した該組成物の適用による医薬組成物の投与等が挙げられるがこれらに限定されない。特に、非経口投与は、これらに限定されないが、皮下、腹腔内、筋肉内、胸骨内、静脈内、動脈内、髄腔内、脳室内、尿道内、頭蓋内、腫瘍内、滑液内注射または注入、及び腎臓透析注入技術を含むことを企図する。好ましい実施形態では、本発明の組成物の非経口投与は、皮下または腹腔内投与を含む。
【0276】
非経口投与に適した医薬組成物の製剤は、通常は、概して、医薬的に許容される担体、例えば、滅菌水または滅菌等張食塩水と組み合わせた活性成分を含む。かかる製剤は、ボーラス投与または持続投与に適した形態で調製、包装、または販売され得る。注射製剤は、単位剤形、例えば、アンプル内で、または保存料を含む複数回投与用容器で調製、包装、または販売され得る。非経口投与のための製剤としては、懸濁液、溶液、油性または水性媒体中でのエマルション、ペースト等が挙げられるがこれらに限定されない。かかる製剤は、さらに、懸濁剤、安定剤、または分散剤が挙げられるがこれらに限定されない1つ以上のさらなる添加剤を含み得る。非経口投与用の製剤の1つの実施形態では、該活性成分は、適切な媒体(例えば、滅菌発熱性物質除去水)との再構成用の乾燥(すなわち粉体状または顆粒状)形態で提供され、その後当該再構成組成物が非経口投与される。非経口製剤はまた、賦形剤、例えば、塩、炭水化物、及び緩衝剤(好ましくはpH3~9に対する)を含み得る水溶液を含むが、いくつかの適用に関しては、それらは、滅菌非水溶液として、または、滅菌発熱物質除去水等の適切な媒体と併せて使用される乾燥形態として、より適切に製剤化され得る。例示的な非経口投与形態としては、滅菌水溶液、例えば、プロピレングリコールもしくはデキストロース水溶液中の溶液または懸濁液が挙げられる。かかる剤形は、必要に応じて緩衝化され得る。他の有用な非経口投与可能な製剤としては、微結晶形の活性成分、またはリポソーム製剤中に活性成分を含むものが挙げられる。非経口投与用の製剤は、即時及び/または調節放出するように製剤化され得る。調節放出製剤としては、遅延、持続、パルス、制御、標的化、及びプログラム放出が挙げられる。
【0277】
「経口」、「腸内」、「腸内に」、「経口で」、「非経口でない」、「非経口でなく」等の用語は、消化管に沿った経路または様式で、個体に化合物または組成物を投与することを指す。組成物の「経口」投与経路の例としては、液体または固体形態の組成物を口から飲み込むこと、経鼻空腸または胃ろうチューブを通した組成物の投与、組成物の十二指腸投与、及び例えば、坐剤を用いて消化管の下部消化管に対する直腸投与が挙げられるがこれらに限定されない。
【0278】
好ましくは、単離されたTIM-1 CAR発現細胞を含む製剤化組成物は、注射による投与に適している。
【0279】
局所投与用の医薬組成物及び製剤としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴剤、坐剤、スプレー、液体、半固体、単相組成物、多相組成物(例えば、水中油、油中水)、フォーム、マイクロスポンジ、リポソーム、ナノエマルション、エアロゾルフォーム、ポリマー、フラーレン、及び粉末を挙げることができる。従来の医薬担体、水性、粉末または油性基剤、増粘剤等が必要または望ましい場合がある。
【0280】
経口投与用の組成物及び製剤としては、粉末もしくは顆粒、水もしくは非水性媒体の懸濁液または溶液、カプセル、サシェ、あるいは錠剤が挙げられる。増粘剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤、または結合剤が望ましい場合がある。
【0281】
非経口、髄腔内、または脳室内投与用の組成物及び製剤としては、緩衝剤、希釈剤、及び他の適切な添加剤、例えば、これらに限定されないが、浸透促進剤、カーダー(carder)化合物、及び他の医薬的に許容される担体または賦形剤を含み得る滅菌水溶液を挙げることができる。
【0282】
本発明の医薬組成物としては、溶液、エマルション、及びリポソーム含有製剤が挙げられるがこれらに限定されない。これらの組成物は、予め形成された液体、自己乳化性固体、及び自己乳化性半固体が挙げられるがこれらに限定されない様々な成分から生成され得る。
【0283】
便宜上単位剤形で提供され得る本発明の医薬組成物は、製薬業界で周知の従来技術に従って調製され得る。かかる技術には、活性成分を医薬担体(複数可)または賦形剤(複数可)と会合させる段階を含む。一般に、該製剤は、活性成分を液体担体もしくは微細に分割された固体担体またはその両方と均一かつ密接に会合させ、その後、必要に応じて当該生成物を成形することにより調製される。
【0284】
本発明の組成物は、多くの可能な剤形、例えば、これらに限定されないが、錠剤、カプセル、液体シロップ、軟質ゲル、坐剤、エアロゾル、及び浣腸のいずれかに製剤化され得る。本発明の組成物はまた、水性、非水性、または混合媒体の懸濁液として製剤化され得る。水性懸濁液はさらに、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、及び/またはデキストランを含む懸濁液の粘度を高める物質を含み得る。該懸濁液はまた、安定剤を含み得る。
【0285】
本発明の1つの実施形態では、該医薬組成物は、フォームとして製剤化され使用され得る。医薬フォームとしては、エマルション、マイクロエマルション、クリーム、ゼリー、及びリポソーム等であるがこれらに限定されない製剤が挙げられる。基本的には類似の性質であるが、これらの製剤は、成分及び最終製品の濃度が異なる。細胞レベルでオリゴヌクレオチドの取り込みを高める薬剤もまた本発明の医薬及び他の組成物に添加され得る。例えば、カチオン性脂質、例えば、リポフェクチン(米国特許第5,705,188号)、カチオン性グリセロール誘導体、及びポリカチオン性分子、例えば、ポリリシン(WO97/30731)もまたオリゴヌクレオチドの細胞取り込みを高める。
【0286】
本発明の組成物は、医薬組成物に通常見出される他の補助成分をさらに含み得る。従って、例えば、該組成物は、さらなる、適合性のある医薬的に活性な物質、例えば、鎮痒剤、収斂剤、局所麻酔剤、または抗炎症剤等を含む場合もあれば、本発明の組成物の様々な剤形を物理的に製剤化するのに有用なさらなる物質、例えば、染料、香味剤、保存料、酸化防止剤、乳白剤、増粘剤、及び安定剤を含む場合もある。しかしながら、かかる物質は、添加の際、本発明の組成物の成分の生物活性を過度に阻害するべきではない。該製剤は、滅菌することができ、必要に応じて、該製剤の核酸(複数可)と有害に相互作用しない助剤、例えば、滑沢剤、保存料、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、緩衝剤、着色剤、香味剤、及び/または芳香剤等と混合することができる。
【0287】
抗TIM-1-CAR発現細胞の集団を含む製剤は、医薬的に許容される賦形剤(複数可)を含み得る。該製剤に含まれる賦形剤は、例えば、該CAR構築物、使用される細胞の亜集団、及び投与方法に応じて異なる目的を有する。一般的に使用される賦形剤の例としては、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、注射用水、グリセロール、エタノール、及びそれらの組み合わせ、安定剤、可溶化剤及び界面活性剤、緩衝剤及び保存料、等張化剤、充填剤、及び滑沢剤が挙げられるがこれらに限定されない。抗TIM-1 CAR発現細胞の集団を含む製剤は、通常、非ヒト成分、例えば、動物血清(例えば、ウシ血清アルブミン)を含まずに調製及び培養されることになる。
【0288】
該製剤または組成物はまた、該結合分子または細胞、好ましくは、該結合分子または細胞に相補的な活性を備えたもので治療されている特定の適応症、疾患、または状態に有用な複数の活性成分を含む場合もあり、それぞれの活性は互いに不利に影響を及ぼすことはない。かかる活性成分は、意図する目的に有効な量で組み合わせて適切に含まれる。従って、いくつかの実施形態では、該医薬組成物はさらに、他の医薬的に活性な薬剤または薬物、例えば、化学療法剤、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン等を含む。いくつかの実施形態では、該医薬的に活性な薬剤または薬物は、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、PD-1、PD-L1、PD-L2、LAG3、CTLA4、KIR、CD244、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、GAL9、TIM3、及び/またはA2aRを標的とする薬物を含み得る。これらの阻害剤の例としては、ピディリズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アテゾリズマブ、MDX-1105、BMS-936559、MEDI4736、MPDL3280A、MSB0010718C、トレメリムマブ、及びイピリムマブが挙げられるがこれらに限定されず、これらは、単独で、または他の薬剤、例えば、GM-CSFと組み合わせて投与され得る。
【0289】
いくつかの態様における医薬組成物は、該組成物の送達が、治療されるべき部位の感作の前に、及びそれを引き起こすのに十分な時間をかけて行われるように、持続放出、遅延放出、及び徐放送達システムを採用することができる。多くの種類の放出送達システムが利用可能であり、既知である。かかるシステムは、該組成物の反復投与を避けることができ、それにより、当該対象及び医師にとっての利便性が増す。
【0290】
投薬
いくつかの実施形態における医薬組成物は、該抗TIM-1 CAR細胞を該疾患もしくは状態を治療または予防するために有効な量、例えば、治療有効量または予防有効量で含む。いくつかの実施形態における治療効果または予防効果は、処置される対象の定期的な評価で観察される。状態に応じた数日またはそれ以上にわたる反復投与の場合、その処置は、疾患症状の所望の抑制が生じるまで反復される。しかしながら、他の投薬計画が有用な場合もあり、それを判断することができる。所望の投薬量は、該組成物の単回ボーラス投与、該組成物の複数回ボーラス投与、または該組成物の持続注入投与により送達され得る。
【0291】
ある特定の実施形態では、該CARを発現する遺伝子操作された細胞との関連で、対象は、約100万~約1000億個の範囲の細胞、例えば、100万~約500億細胞(例えば、約500万細胞、約2500万細胞、約5億細胞、約10億細胞、約50億細胞、約200億細胞、約300億細胞、約400億細胞、または前述の値の任意の2つによって画定される範囲)、例えば、約1000万~約1000億細胞(例えば、約2000万細胞、約3000万細胞、約4000万細胞、約6000万細胞、約7000万細胞、約8000万細胞、約9000万細胞、約100億細胞、約250億細胞、約500億細胞、約750億細胞、約900億細胞、または前述の値の任意の2つによって画定される範囲)、及び場合によっては、約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万細胞、約2億5000万細胞、約3億5000万細胞、約4億5000万細胞、約6億5000万細胞、約8億細胞、約9億細胞、約30億細胞、約300億細胞、約450億細胞)の範囲、もしくはこれらの範囲の間の任意の値、及び/またはかかる細胞数を対象の体重1キログラム当たり投与される。例えば、いくつかの実施形態では、該細胞または細胞集団の投与は、約10~約10細胞の投与を、体重1kg当たり、これら範囲内のすべての細胞数の整数値を含めて含むことができる。
【0292】
該細胞または細胞の集団は、1回以上の投与で施され得る。いくつかの実施形態では、細胞の当該有効量を単回投与として施すことができる。いくつかの実施形態では、細胞の当該有効量をある期間にわたって複数回投与として施すことができる。投与のタイミングは、管理する医師の判断の範囲内であり、患者の臨床状態に依存する。該細胞または細胞の集団は、任意の起源、例えば、血液バンクまたはドナーから入手され得る。個々の要求は異なるが、特定の疾患または状態用の所与の細胞型の有効量の最適範囲の判断は当業者が備えている技能の範囲内である。有効量とは、治療効果または予防効果を与える量を意味する。投与される投薬量は、レシピエントの年齢、健康状態、及び体重、もしあれば併用治療の種類、治療の頻度、及び所望の効果の性質に依存する。いくつかの実施形態では、有効量の細胞またはそれら細胞を含む組成物は、非経口的に投与される。いくつかの実施形態では、投与は静脈内投与であり得る。いくつかの実施形態では、投与は腫瘍内に直接注射することによって行われる。
【0293】
本発明の目的のため、投与される本発明のCAR材料の量または1回分は、合理的な期間にわたって対象または動物において治療反応または予防反応をもたらすのに十分であるべきである。例えば、本発明のCAR材料の1回分は、投与の時点から約2時間以上、例えば、約12~約24時間またはそれ以上の期間、抗原に結合するのに、または疾患を検出、治療、もしくは予防するのに十分であるべきである。ある特定の実施形態では、この期間はさらに長い可能性がある。該1回分は、特定の本発明のCAR材料の有効性及び動物(例えば、ヒト)の状態、ならびに治療される該動物(例えば、ヒト)の体重によって決定される。
【0294】
本発明の目的のため、例えば、本発明のCAR、ポリペプチド、またはタンパク質を発現するT細胞によって、当該哺乳類の組の中にはそれぞれ異なる用量の該T細胞が投与されるものがある所与のかかるT細胞の哺乳類への投与時、標的細胞が溶解される程度、またはIFN-γが分泌される程度を比較することを含むアッセイを用いて、哺乳類に投与されるべき開始用量を決めることができる。ある特定の用量の投与時に標的細胞が溶解されるまたはIFN-γが分泌される程度は、当技術分野で既知の方法でアッセイされ得る。
【0295】
いくつかの実施形態では、該細胞は、別の治療介入、例えば、抗体または操作された細胞または受容体または薬剤、例えば、細胞毒性薬もしくは治療薬との併用治療の一部として、例えば、同時に、または任意の順序で連続的に投与される。いくつかの実施形態における該細胞または抗体は、1つ以上のさらなる治療薬と、または、他の治療介入と関連して、同時または任意の順序で連続的に共投与される。いくつかの状況下では、該細胞は、該細胞集団が1つ以上のさらなる治療薬の効果を向上させるように、またはその逆も同様に、十分に近い時間内に別の療法と共投与される。いくつかの実施形態では、該細胞または抗体は、該1つ以上のさらなる治療薬に先立って投与される。いくつかの実施形態では、該細胞または抗体は、該1つ以上のさらなる治療薬の後に投与される。
【0296】
実施形態では、リンパ球除去化学療法は、CAR細胞の投与(例えば、注入)の前、それと同時に、またはその後に対象に施される、一例では、該リンパ球除去化学療法は、該細胞の投与前に対象に施される。例えば、該リンパ球除去化学療法は、CAR細胞注入に先立って1~4日(例えば、1、2、3、または4日)続く。実施形態では、複数回のCAR細胞投与が、例えば、本明細書に記載の通りに施される。実施形態では、リンパ球除去化学療法は、本明細書に記載のCAR発現細胞の投与(例えば、注入)の前、それと同時に、またはその後に対象に施される。リンパ球除去化学療法の例としては、非骨髄破壊的リンパ球除去化学療法、骨髄破壊的リンパ球除去化学療法、全身照射法等が挙げられるがこれらに限定されない。リンパ球除去剤の例としては、抗胸腺細胞グロブリン、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD8抗体、抗CD52抗体、抗CD2抗体、TCRαβブロッカー、抗CD20抗体、抗CD19抗体、ボルテゾミブ、リツキシマブ、抗CD154抗体、ラパマイシン、CD3免疫毒素、フルダラビン、シクロホスファミド、ブスルファン、メルファラン、マブテラ、タクロリムス、アレファセプト、アレムツズマブ、OKT3、OKT4、OKT8、OKT11、フィンゴリモド、抗CD40抗体、抗BR3抗体、キャンパス-1H、抗CD25抗体、カルシニューリン阻害剤、ミコフェノール酸、及びステロイドが挙げられるがこれらに限定されず、これらは、単独でまたは組み合わせて使用することができる。
【0297】
多様性
本発明の範囲に含まれるのは、本明細書に記載の本発明のCARの機能部分である。CARに関して使用される場合の「機能部分」という用語は、本発明のCARの任意の部分または断片を指し、その部分または断片は、それが一部であるCAR(親CAR)の生物活性を保持している。機能部分は、例えば、親CARと同様の程度、同じ程度、もしくはそれより高い程度に標的細胞を認識する、または疾患を検出、治療、もしくは予防する能力を保持しているCARの部分を包含する。親CARに関して、該機能部分は、例えば、親CARの約10%、25%、30%、50%、68%、80%、90%、95%、またはそれ以上含むことができる。
【0298】
該機能部分は、該部分のアミノ末端もしくはカルボキシ末端またはその両方にさらなるアミノ酸を含むことができ、それらのさらなるアミノ酸は、親CARのアミノ酸配列には見られない。望ましくは、該さらなるアミノ酸は、該機能部分の生物学的機能、例えば、標的細胞の認識、がんの検出、がんの治療または予防等を妨害しない。より望ましくは、該さらなるアミノ酸は、親CARの生物活性と比較して、その生物活性を高める。
【0299】
本発明の範囲に含まれるのは、本明細書に記載の本発明のCARの機能的バリアントである。本明細書で使用される、「機能的バリアント」という用語は、親CARに対して実質的なもしくは大幅な配列同一性または類似性を有するCAR、ポリペプチド、またはタンパク質を指し、この機能的バリアントは、それがバリアントであるCARの生物活性を保持する。機能的バリアントは、例えば、親CARと同様の程度、同じ程度、またはそれより高い程度まで標的細胞を認識する能力を保持する本明細書に記載のCAR(親CAR)のバリアントを包含する。親CARに関連して、該機能的バリアントは、例えば、親CARに対してアミノ酸配列が少なくとも約30%、50%、75%、80%、90%、98%、またはそれ以上同一であり得る。
【0300】
機能的バリアントは、例えば、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を備えた親CARのアミノ酸配列を含み得る。代替的にまたはそれに加えて、該機能的バリアントは、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を備えた親CARのアミノ酸配列を含み得る。この場合、該非保存的アミノ酸置換は、該機能的バリアントの生物活性を妨害または阻害しないことが好ましい。該非保存的アミノ酸置換は、該機能的バリアントの生物活性が親CARと比較して増加するように該機能的バリアントの生物活性を高め得る。
【0301】
本発明のCARのアミノ酸置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。保存的アミノ酸置換は、当技術分野では既知であり、ある特定の物理的及び/または化学的特性を有する1つのアミノ酸が、同じもしくは類似の化学的または物理的特性を有する別のアミノ酸と交換されるアミノ酸置換を含む。例えば、該保存的アミノ酸置換は、酸性/負の電荷を有する極性アミノ酸の別の酸性/負の電荷を有する極性アミノ酸(例えば、AspまたはGlu)での置換、非極性側鎖を有するアミノ酸の非極性側鎖を有する別のアミノ酸(例えば、Ala、Gly、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Trp、Cys、Val等)での置換、塩基性/正の電荷を有する極性アミノ酸の別の塩基性/正の電荷を有する極性アミノ酸(例えば、Lys、His、Arg等)での置換、極性側鎖を有する非荷電アミノ酸の極性側鎖を有する別の非荷電アミノ酸(例えば、Asn、Gln、Ser、Thr、Tyr等)での置換、ベータ分岐側鎖を有するアミノ酸のベータ分岐側鎖を有する別のアミノ酸(例えば、Ile、Thr、及びVal)での置換、芳香族側鎖を有するアミノ酸の芳香族側鎖を有する別のアミノ酸(例えば、His、Phe、Trp、及びTyr)での置換等であり得る。
【0302】
また、アミノ酸を、ベクター設計に基づく配列に追加してもそこから除去してもよい。
【0303】
該CARは、本明細書に記載の特定のアミノ酸配列(複数可)から本質的になることができ、従って、他の成分、例えば、他のアミノ酸は該機能的バリアントの生物活性を実質的に変化させない。
【0304】
本発明の実施形態のCAR(機能部分及び機能的バリアントを含む)は、該CAR(またはその機能部分もしくは機能的バリアント)が、それらの生物活性、例えば、抗原に特異的に結合する、哺乳類における異常細胞を検出する、または哺乳類における疾患を治療もしくは予防する能力等を保持するという条件で、任意の長さであることができ、すなわち、任意の数のアミノ酸を含むことができる。例えば、該CARは、約50~約5000アミノ酸長、例えば、50、70、75、100、125、150、175、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、またはそれ以上のアミノ酸長であり得る。
【0305】
本発明の実施形態のCAR(本発明の機能部分及び機能的バリアントを含む)は、1つ以上の天然アミノ酸の代わりに合成アミノ酸を含むことができる。かかる合成アミノ酸は、当技術分野では既知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、trans-3-及びtrans-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリンβ-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リシン、N’,N’-ジベンジル-リシン、6-ヒドロキシリシン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、及びα-tert-ブチルグリシンを含む。
【0306】
本発明の実施形態のCAR(機能部分及び機能的バリアントを含む)は、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、ホスホリル化、エステル化、N-アシル化、例えば、ジスルフィド架橋を介して環化、もしくは酸付加塩に変換される場合があり、及び/または任意に二量体化もしくは重合される場合や、コンジュゲートされる場合がある。
【0307】
本発明の実施形態のCAR(その機能部分及び機能的バリアントを含む)は、当技術分野で既知の方法により得ることができる。該CARは、ポリペプチドまたはタンパク質を作製するための任意の適切な方法で作製され得る。ポリペプチド及びタンパク質の適切なデノボ合成方法は、参考文献、例えば、Chan et al.,Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2000、Peptide and Protein Drug Analysis,ed.Reid,R.,Marcel Dekker,Inc.,2000、Epitope Mapping,ed.Westwood et al.,Oxford University Press,Oxford,United Kingdom,2001、及び米国特許第5,449,752号に記載されている。また、ポリペプチド及びタンパク質は、標準的な組み換え方法を用いて本明細書に記載の核酸を用いて組み換え的に産生され得る。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.2001、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley&Sons,N Y,1994を参照されたい。さらに、本発明のCAR(その機能部分及び機能的バリアントを含む)のいくつかは、植物、細菌、昆虫、哺乳類、例えば、ラット、ヒト等の起源から単離及び/または精製され得る。単離及び精製方法は、当技術分野で周知である。別の方法として、本明細書に記載のCAR(その機能部分及び機能的バリアントを含む)は、業者によって商業的に合成され得る。この点において、本発明のCARは、合成でも、組み換えでも、単離されても、及び/または精製されてもよい。
定義
「4-1BB」、または「BB」という用語は、GenBankアクセッション番号AAA53133.1として提供されるアミノ酸配列、または非ヒト種、例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿等に由来する同等の残基を有するTNFRスーパーファミリーのメンバーを指す。1つの態様では、該「4-1BB共刺激ドメイン」は、配列番号216として提供される配列、または非ヒト種、例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿等に由来する同等の残基である。
【0308】
本明細書で使用される、「5’キャップ」(RNAキャップ、RNA7-メチルグアノシンキャップ、またはRNA mGキャップとも呼ばれる)は、真核生物のメッセンジャーRNAの「フロント」または5’末端に転写開始直後に付加された修飾グアニンヌクレオチドである。該5’キャップは、最初に転写されたヌクレオチドに連結された末端基からなる。その存在は、リボソームによる認識及びRNaseからの保護に重要である。キャップの付加は、転写と共役し、各々が互いに影響を及ぼすように共転写的に生じる。転写開始直後、合成されているmRNAの5’末端は、RNAポリメラーゼと会合したキャップ合成複合体によって結合される。この酵素複合体は、mRNAのキャッピングに必要な化学反応を触媒する。合成は、多段階の生化学反応として進行する。該キャッピング部分を修飾して、mRNAの機能、例えば、その安定性または翻訳効率を調節することができる。
「同種異系」または「ドナー由来」という用語は、当該材料が導入される個体と同じ種の異なる動物由来の任意の材料を指す。2つ以上の個体は、それらの遺伝子が、1つ以上の遺伝子座で同一でない場合、互いに同種異系であるといわれる。いくつかの態様では、同種の個体由来の同種異系材料は、抗原的に相互作用するのに十分に遺伝的に異なり得る。
「抗腫瘍細胞傷害性」という用語は、一般に、本発明のCARまたはそれを含む細胞の標的腫瘍細胞への曝露から生じる任意の細胞破壊活性を指す。この活性は、IFN-γ産生アッセイを含めた既知の細胞傷害性アッセイにより測定され得る。
本明細書で使用される、「抗体」という用語は、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。1つの態様では、該抗原はTIM-1である。抗体は、天然源由来または組み換え源由来のインタクトな免疫グロブリンであっても、インタクトな免疫グロブリンの免疫反応性部分であってもよい。該用語は、最も広い意味で使用され、ポリクローナル及びモノクローナル抗体を含み、インタクトな抗体及び機能的(抗原結合)抗体断片を含み、断片抗原結合(Fab)断片、F(ab’)断片、Fab’断片、Fv断片、組み換えIgG(rIgG)断片、一本鎖可変断片(scFv)を含めた一本鎖抗体断片、ダイアボディ、及び単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片を含む。該用語は、遺伝子操作された及び/または別の方法で改変された形態の免疫グロブリン、例えば、イントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、及びヘテロコンジュゲート抗体、多重特異性、例えば、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、ならびにテトラボディ、タンデムジ-ScFv、タンデムトリ-ScFvを包含する。特に明記しない限り、「抗体」という用語は、その機能的抗体断片を包含するものと理解されるべきである。該用語はまた、IgGならびにそのサブクラス、すなわち、IgM、IgE、IgA、及びIgDを含む任意のクラスまたはサブクラスの抗体を含む、インタクトなまたは完全長抗体を包含する。
「抗体断片」という用語は、インタクトな抗体の一部を指し、また、インタクトな抗体の抗原決定可変領域を指す。抗体断片の例としては、断片抗原結合(Fab)断片、F(ab’)断片、Fab’断片、Fv断片、組み換えIgG(rIgG)断片、一本鎖可変断片(scFv)を含めた一本鎖抗体断片、単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片、ダイアボディ、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、該抗体断片はscFvである。
本明細書で使用される、「抗体重鎖」とは、すべての抗体分子に天然に生じる構造に存在する2種のポリペプチド鎖の大きい方を指す。
本明細書で使用される、「抗体軽鎖」とは、すべての抗体分子に天然に生じる構造に存在する2種のポリペプチド鎖の小さい方を指す。カッパ及びラムダ軽鎖とは、2つの主な抗体軽鎖のアイソタイプを指す。
「抗原」または「Ag」という用語は、免疫反応を誘発する分子を指す。この免疫反応は、抗体産生、もしくは特定の免疫適格細胞の活性化のいずれか、またはその両方を含み得る。当業者には、ほぼすべてのタンパク質またはペプチドを含めた任意の高分子が抗原としての機能を果たすことができることが理解されよう。さらに、抗原は、組み換えまたはゲノムDNAに由来することができる。当業者には、免疫反応を誘発するタンパク質をコードし、ひいては「抗原」をコードするヌクレオチド配列または部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAがその用語として本明細書で使用されることが理解されよう。さらに、当業者には、抗原が、単に遺伝子の完全長ヌクレオチド配列によってコードされる必要はないことが理解されよう。本発明は、これに限定されないが、複数の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用を含むこと、及びこれらのヌクレオチド配列が、所望の免疫反応を誘発するポリペプチドをコードする様々な組み合わせで配列されることが容易にわかる。さらに、当業者には、抗原が、「遺伝子」によってコードされる必要が全くないことが理解されよう。抗原は、生体試料から生成され、合成され、もしくはこれに由来し得ること、または、ポリペプチド以外の高分子であり得ることは容易にわかる。かかる生体試料としては、組織試料、腫瘍試料、細胞、または他の生体成分を含む液体を挙げることができるがこれに限定されない。1つの態様では、該抗原は、TIM-1である。
「抗原結合ドメイン」という用語は、特定の抗原に対して特異性を有するキメラ抗原受容体の1つ以上の細胞外ドメインを指す。
本明細書で使用される、「アフェレーシス」という用語は、ドナーまたは患者の血液がドナーまたは患者から取り出され、これが、選択された特定の成分(複数可)を分離し、残りを、例えば、自己輸血によってドナーまたは患者の血行に戻す装置に通される、当技術分野で承認されている体外プロセスを指す。従って、「アフェレーシス試料」という観点から、アフェレーシスを用いて得られた試料を指す。
「自己」という用語は、後に再導入される同じ個体由来の任意の材料を指す。
「結合する」という用語は、当該分子が互いにごく接近している安定な会合をもたらす2分子間の引力相互作用を指す。分子結合の結果として、成分を結びつける引力が概して非共有結合的であり、それ故、共有結合よりも通常はエネルギー的に弱い分子複合体の形成がもたらされることがある。
「がん」という用語は、制御されない異常細胞の増殖を特徴とする疾患を指す。がん細胞は局所的に広がる場合もあれば、血流とリンパ系を通って体の他の部分に広がる場合もある。様々ながんの例は本明細書に記載されており、卵巣癌、腎癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、子宮頸癌、皮膚癌、膵臓癌、結腸直腸癌、肝臓癌、脳癌、リンパ腫、白血病等を含むがこれらに限定されない。
「CD28」という用語は、タンパク質表面抗原分類28を指し、T細胞の活性化及び生存に必要な共刺激シグナルを与えるT細胞上で発現するタンパク質の1つである。該タンパク質は、NCBI参照番号NP_006130または刺激活性を有するその断片に対して少なくとも85、90、95、96、97、98、99、または100%の同一性を有し得る。
「CD3ζ」または代替的に「ゼータ」、「ゼータ鎖」、「CD3-ゼータ」、もしくは「TCR-ゼータ」という用語は、GenBanアクセッション番号BAG36664.1として提供されるタンパク質または非ヒト種、例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿等由来の同等の残基として定義され、「CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン」または代替的に「ゼータ細胞内シグナル伝達ドメイン」もしくは「TCR-ゼータ細胞内シグナル伝達ドメイン」は、CD3ζ鎖の細胞質ドメイン、またはT細胞活性化に必要な初期シグナルを機能的に伝達するのに十分なその機能的誘導体由来のアミノ酸残基として定義される。1つの態様では、「CD3ζ細胞内シグナル伝達ドメイン」は、配列番号219として提供される配列である。
「キメラ抗原受容体」または代替的に「CAR」という用語は、ポリペプチドのセット、通常最も簡単な実施形態では2つを指し、これは、免疫エフェクター細胞においては、該細胞に、標的細胞、通常はがん細胞に対する特異性及び細胞内シグナルの生成を与える。いくつかの実施形態では、CARは、少なくとも、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに以下に定義する刺激分子及び/または共刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞質シグナル伝達ドメイン(本明細書では、「細胞内シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)を含む。いくつかの態様では、該ポリペプチドのセットは、互いに隣接している。いくつかの実施形態では、該ポリペプチドのセットは、二量体化分子の存在時に、該ポリペプチド同士を共役させることができる、例えば、抗原結合ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインに共役させることができる二量体化スイッチを含む。1つの態様では、該刺激分子は、該T細胞受容体複合体と会合したゼータ鎖である。1つの態様では、該細胞質シグナル伝達ドメインはさらに、以下に定義する少なくとも1つの共刺激分子由来の1つ以上の機能的シグナル伝達ドメインを含む。1つの態様では、該共刺激分子は、本明細書に記載の共刺激分子、例えば、4-1BB(すなわち、CD137)、DAP10、及び/またはCD28から選択される。1つの態様では、該CARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。1つの態様では、該CARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに共刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメイン及び刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。1つの態様では、該CARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに1つ以上の共刺激分子由来の2つの機能的シグナル伝達ドメイン及び刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。1つの態様では、該CARは、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、ならびに1つ以上の共刺激分子由来の少なくとも2つの機能的シグナル伝達ドメイン及び刺激分子由来の機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ融合タンパク質を含む。1つの態様では、該CARは、該CAR融合タンパク質のアミノ末端(N-ter)で任意的なリーダー配列を含む。1つの態様では、該CARはさらに、該細胞外抗原結合ドメインのN末端にリーダー配列を含み、該リーダー配列は、任意に、細胞のプロセシング及び該CARの細胞膜への局在化の過程で該抗原結合ドメイン(例えば、scFv)から切断される。
抗体に関して本明細書で使用される、「競合する」という用語は、一次抗体、またはその抗原結合断片(もしくは部分)が、二次抗体、またはその抗原結合断片の結合と十分に類似した様式でエピトープに結合し、その結果、該一次抗体のその同族エピトープとの結合の結果が、該二次抗体の存在下で、該二次抗体が存在しない場合の該一次抗体の結合と比較して、検出可能に減少することを意味する。二次抗体のそのエピトープへの結合もまた一次抗体の存在下で検出可能に減少する別の可能性がこの事例であり得るが、その必要はない。すなわち、一次抗体は、二次抗体のそのエピトープへの結合を、二次抗体が、該一次抗体のそのそれぞれのエピトープへの結合を阻害することなく、阻害することができる。しかしながら、各抗体が他の抗体のその同族エピトープまたはリガンドとの結合を検出可能に阻害する場合、同程度に、より大きく、またはより小さい程度であるかどうかにかかわらず、該抗体は、それらのそれぞれのエピトープ(複数可)の結合をめぐって互いに「交差競合する」といわれる。競合する及び交差競合する抗体の両方を本明細書は包含する。かかる競合または交差競合が生じる機序(例えば、立体障害、構造変化、または共通のエピトープもしくはその部分への結合)にかかわらず、当業者には、本明細書に提供される開示に基づいて、かかる競合する及び/または交差競合する抗体が包含され、本明細書に開示の方法にとって有用であり得ることが理解されよう。
「超可変領域」または「HVR」と同義で、「相補性決定領域」及び「CDR」という用語が、抗原特異性及び/または結合親和性を付与する抗体可変領域内のアミノ酸の非連続配列を指すことは当技術分野で既知である。一般に、各重鎖可変領域に3つのCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、及び各軽鎖可変領域に3つのCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)が存在する。「フレームワーク領域」及び「FR」は、重鎖及び軽鎖の可変領域の非CDR部分を指すことは当技術分野で既知である。一般に、各完全長重鎖可変領域に4つのFR(FR-H1、FR-H2、FR-H3、及びFR-H4)ならびに各完全長軽鎖可変領域に4つのFR(FR-L1、FR-L2、FR-L3、及びFR-L4)が存在する。
「共刺激分子」という用語は、共刺激リガンドに特異的に結合し、それにより当該T細胞による共刺激反応、例えば、これに限定されないが、増殖を媒介するT細胞上の同族結合パートナーを指す。共刺激分子は、効率的な免疫反応に寄与する抗原受容体またはそれらのリガンド以外の細胞表面分子である。共刺激分子としては、MHCクラスI分子、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、活性化NK細胞受容体、Tollリガンド受容体、B7-H3、BAFFR、BTLA、BLAME(SLAMF8)、CD2、CD4、CD5、CD7、CD8アルファ、CD8ベータ、CD11a、LFA-1(CD11a/CD18)、CD11b、CD11c、CD11d、CD18、CD19、CD19a、CD27、CD28、CD29、CD30、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD84、CD96(Tactile)、CD100(SEMA4D)、CD103、OX40(CD134)、4-1BB(CD137)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、CD160(BY55)、SELPLG(CD162)、DNAM1(CD226)、Ly9(CD229)、SLAMF4(CD244、2B4)、ICOS(CD278)、CEACAM1、CDS、CRTAM、DAP10、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7Rアルファ、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB1、ITGB2、ITGB7、KIRDS2、LAT、LFA-1、LIGHT、LTBR、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、PAG/Cbp、PD-1、PSGL1、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAMF7、SLP-76、TNFR2、TRANCE/RANKL、VLA1、VLA-6、及びCD83に特異的に結合するリガンドからなる群から選択されるタンパク質が挙げられるがこれに限定されない。実施形態では、コードされた共刺激ドメインは、4-1BB、CD28、またはDAP10を含む。1つの実施形態では、該共刺激ドメインは、BBCYP、CD28CYP、またはDAP10CYPのアミノ酸配列(配列番号216、217、もしくは218)、または、それらをコードするヌクレオチド配列(配列番号266、267、もしくは268)を含む。
「サイトカイン」という用語は、細胞のシグナル伝達に関与する広義のカテゴリーの低分子タンパク質を指す。一般に、それらの放出は、それらの周りの細胞の挙動に何らかの影響を与える。サイトカインは、自己分泌シグナル伝達、傍分泌シグナル伝達、及び/または内分泌シグナル伝達に免疫抑制薬として関与し得る。サイトカインには、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、及び腫瘍壊死因子が含まれる。サイトカインは、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球、及び肥満細胞のような免疫細胞、ならびに内皮細胞、線維芽細胞、及び様々な間質細胞を含めた広範囲の細胞によって産生される。「ケモカイン」は、一般に走化性の媒介に関与するサイトカインのファミリーである。
「DAP10」という用語は、ヒトにおいてHSCT遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。それはまた、HCST、KAP10、PIK3AP、または造血細胞シグナル伝達物質とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、DAP10は、GenBankアクセッション番号Q9UBK5.1に提供される配列を有し得る。
「TIM-1の発現に関連する疾患」という句に含まれるのは、これらに限定されないが、TIM-1の発現に関連する疾患またはTIM-1を発現する細胞に関連する状態であり、これに含まれるのは、例えば、増殖性疾患、例えば、がんもしくは悪性腫瘍もしくは前がん状態、または、TIM-1を発現する細胞に関連する非がん関連の適応症である。TIM-1に関連する非がん関連の適応症としては、A型肝炎ウイルス、エボラウイルス、デング熱ウイルス、アトピー性皮膚炎、アレルギー、関節リウマチ、喘息、全身性エリテマトーデス、及び免疫機能障害が挙げられる。TIM-1を発現する様々ながんの例としては、卵巣癌、腎癌、肺癌等が挙げられるがこれらに限定されない。
「有効量」または「治療するための有効量」とは、個体の疾患、状態、または障害を予防または治療するのに適切な用量を指す。治療的または予防的使用のための有効量は、例えば、治療される疾患または障害のステージ及び重症度、患者の年齢、体重、及び全身健康状態、ならびに処方医師の判断に依存する。用量のサイズはまた、選択された活性物質、投与方法、投与のタイミング及び頻度、特定の活性物質の投与に伴い得る任意の有害な副作用の存在、性質、及び程度、ならびに所望の生理作用によって判断される。当業者には、様々な疾患または障害が、恐らくは各投与または様々な回の投与において本発明のCAR材料を用いた複数回投与を含む長期治療を必要とし得ることが理解されよう。
「ヒンジ」、「スペーサー」、または「リンカー」という用語は、通常は、2つ以上のポリペプチド構築物のドメイン間でコードされ、可動性、空間的構造の改善、近接性等を付与する可変の長さのアミノ酸配列を指す。
本明細書で使用される、「ヒト抗体」とは、ヒトが産生する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体及び/または当業者に既知の、もしくは本明細書に開示のヒト抗体の作製技術のいずれかを用いて作製された抗体を意味する。このヒト抗体の定義には、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチドまたは少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体が含まれる。1つのかかる例は、マウス軽鎖及びヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で既知の様々な技術を用いて産生され得る。1つの実施形態では、ヒト抗体は、ファージライブラリから選択され、この場合、そのファージライブラリはヒト抗体を発現する(Vaughan et al.,Nature Biotechnology,14:309-314,1996、Sheets et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:6157-6162,1998、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381,1991、Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581,1991)。ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座が内因性遺伝子座の代わりに遺伝子導入された動物、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活性化されたマウスの免疫化によっても作製され得る。この方法は、米国特許第5,545,807号、第5,545,806号、第5,569,825号、第5,625,126号、第5,633,425号、及び第5,661,016号に記載されている。別の方法として、ヒト抗体は、標的抗原に対する抗体を産生するヒトBリンパ球を不死化することによって調製され得る(かかるBリンパ球は、個体から、もしくはcDNAの単一細胞クローニングから回収され得るか、またはインビトロで免疫化された可能性がある)。例えば、Cole et al.Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77,1985、Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95,1991、及び米国特許第5,750,373号を参照されたい。
「iCAR」は、抑制性受容体のシグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体である。これらのドメインは、例えば、プロテクチンD1(PD1)またはCTLA-4(CD152)に基づき得る。いくつかの実施形態では、本発明のCAR発現細胞は、iCARを発現するようにさらに形質導入される。1つの態様では、このiCARは、該CAR発現細胞の機能活性を腫瘍細胞に限定するために加えられる。
本明細書で使用される、「免疫細胞」とは、自然免疫反応及び/または適応免疫反応の開始及び/または実行に機能的に関与する造血起源の細胞を指す。
「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、この用語が本明細書で使用される場合、分子の細胞内部分を指す。該細胞内シグナル伝達ドメインは、CARを含む核酸配列で形質導入された細胞、例えば、CAR T細胞の免疫エフェクター機能を増進するシグナルを生成する。免疫エフェクター機能の例として含まれるのは、例えば、CAR T細胞において、細胞溶解活性及びヘルパー活性であり、サイトカインの分泌が含まれる。細胞内シグナル伝達ドメインとしては、リンパ球受容体鎖の細胞内シグナル伝達ドメイン、TCR/CD3複合体タンパク質、Fc受容体サブユニット、IL-2受容体サブユニット、CD3ζ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD66d、CD278(ICOS)、FcεRI、DAP10、及びDAP12が挙げられる。
「単離された」生物学的要素(例えば、単離されたキメラ抗原受容体または細胞またはベクターまたはタンパク質または核酸)とは、当該成分が天然に存在する当該生物の細胞におけるその環境または他の生物学的要素、例えば、他の染色体ならびに染色体外DNA及びRNA、タンパク質、ならびに細胞小器官から実質的に分離または精製された成分を指す。「単離された」核酸及びタンパク質には、標準的な精製方法で精製された核酸及びタンパク質が含まれる。この用語はまた、組み換え技術だけでなく化学合成で調製された核酸及びタンパク質を包含する。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することもできれば、例えば、宿主細胞のような外来種環境に存在することもできる。
scFvに関連して使用される、「リンカー」という用語は、可変重鎖及び可変軽鎖領域を互いに連結させるために単独または組み合わせて使用される、グリシン及び/またはセリン残基等のアミノ酸からなるペプチドリンカーを指す。1つの実施形態では、該可動性ポリペプチドリンカーは、Gly/Serリンカーであり、アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(配列番号200)の1つ以上の反復を含む。1つの実施形態では、該可動性ポリペプチドリンカーとしては、(GlySer)(配列番号201)が挙げられるがこれに限定されない。
「マスクされたCAR」という用語は、マスキングペプチドをさらに含むCAR発現細胞を指す。このマスキングペプチドは、オフターゲットの細胞殺傷を防ぎ得る。該マスキングペプチドは、多くの場合当該CAR構築物に対してN末端であり、細胞が意図しない標的へ結合する能力を遮断し得る。該マスキングペプチドは、それが腫瘍に遭遇した場合にCAR発現細胞から切断され、それにより、オフターゲット細胞を殺傷することなく該CAR発現細胞にその標的を攻撃させるようにする場合がある。
「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、RNAまたはDNAを指し、これは、直鎖もしくは分岐、一本鎖もしくは二本鎖、またはそれらのハイブリッドである。該用語はまた、RNA/DNAハイブリッドも包含する。以下のものは、ポリヌクレオチドの非限定的な例である。遺伝子または遺伝子断片、エクソン、イントロン、mRNA、tRNA、rRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、及びプライマー。ポリヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体、ウラシル、他の糖及び連結基、例えば、フルオロリボース及びチオレート、ならびにヌクレオチド分岐を含み得る。ヌクレオチドの配列は、重合後にさらに標識成分とのコンジュゲーション等によって修飾される場合がある。この定義に含まれる他の種類の修飾は、キャップ、1つ以上の天然ヌクレオチドの類似体での置換、及び該ポリヌクレオチドのタンパク質、金属イオン、標識成分、他のポリヌクレオチド、または固体支持体への結合のための手段の導入である。該ポリヌクレオチドは、化学合成によって得ることもできれば、微生物由来であることもできる。「遺伝子」という用語は広く使用され、生物学的機能に関連するポリヌクレオチドの任意の部分を指す。従って、遺伝子には、ゲノム配列にあるイントロン及びエクソンが含まれるか、または、単にcDNAにあるコード配列及び/またはそれらの発現に必要な調節配列が含まれる。例えば、遺伝子とはまた、mRNAもしくは機能性RNAを発現する、または特定のタンパク質をコードする、及び調節配列を含む核酸断片を指す。
「OKT3」または「ムロモナブ-CD3」または「オルソクローンOKT3」という用語は、モノクローナル抗CD3抗体を指す。
「医薬的に許容される担体」または「賦形剤」とは、製剤の過程で及び/または保存を可能にするために免疫原性組成物に従来使用されている化合物または材料を指す。
本明細書で使用される、「プロモーター」という用語は、細胞の合成機構または導入される合成機構によって認識される、ポリヌクレオチド配列の特異的転写開始に必要なDNA配列として定義される。
「組み換え」という用語は、天然には存在しないか、または、天然には見られない配置で別のポリヌクレオチドに連結されているかのいずれかである半合成または合成起源のポリヌクレオチドを意味する。
「scFv]という用語は、軽鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体断片及び重鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体断片を含む融合タンパク質を指し、この場合、該軽鎖及び重鎖の可変領域は、例えば、合成リンカー、例えば、短い可動性の、一本鎖ポリペプチドとして発現され得るポリペプチドリンカーによって隣接して連結され、該scFvは、それが由来するインタクトな抗体の特異性を保持している。特定されない限り、本明細書で使用されるscFvは、VL及びVH可変領域をいずれかの順序で有する場合があり、例えば、該ポリペプチドのN末端及びC末端に関して、該scFvは、VL-リンカー-VHを含む場合もあれば、VH-リンカー-VLを含む場合もある。該リンカーは、フレームワーク配列の部分を含む場合もある。
「シグナルペプチド」(シグナル配列、標的シグナル、局在化シグナル、局在化配列、輸送ペプチド、リーダー配列、またはリーダーペプチドとも呼ばれる)は、分泌経路に行くことになる新たに合成されたタンパク質の大部分のN末端に存在する短いペプチドである。該シグナルペプチドのコアは、長い疎水性アミノ酸を含み得る。該シグナルペプチドは、成熟ポリペプチドから切断されてもされなくてもよい。
「シグナル伝達ドメイン」という用語は、二次メッセンジャーを生成することによって、またはかかるメッセンジャーに応答することでエフェクターとして機能することによって、規定のシグナル伝達経路を介して細胞活動を調節するために細胞内で情報を伝達することにより作用するタンパク質の機能部分を指す。
「刺激分子」という用語は、免疫細胞の活性化を免疫細胞のシグナル伝達経路の少なくともいくつかの態様に関して促進的に調節する細胞質シグナル伝達配列(複数可)を与える免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、B細胞)によって発現される分子を指す。1つの態様では、該シグナルは、例えば、TCR/CD3複合体と、ペプチドを搭載したMHC分子の結合によって開始され、増殖、活性化、分化等が挙げられるがこれらに限定されないT細胞反応の媒介をもたらす一次シグナルである。促進的に作用する一次細胞質シグナル伝達配列(「一次シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)は、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含み得る。本発明において特に有用な、ITAM含有細胞質シグナル伝達配列の例としては、CD3ζ、共通FcRガンマ(FCER1G)、FcガンマRIIa、FcRベータ(FcイプシロンR1b)、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD79a、CD79b、DAP10、及びDAP12に由来するものが挙げられるがこれらに限定されない。本発明の特定のCARでは、本発明の任意の1つ以上のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞内シグナル伝達配列、例えば、CD3ζの一次シグナル伝達配列を含む。本発明の特定のCARでは、CD3ζの一次シグナル伝達配列は、配列番号219として提供されるアミノ酸配列、またはそれをコードするヌクレオチド配列(配列番号269)、または非ヒト種、例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿等由来の同等の残基である。
「対象」という用語は、免疫反応が誘発され得る生体(例えば、哺乳類、ヒト)を含むことを意図している。
本明細書で使用される、「合成抗体」という用語は、組み換えDNA技術を用いて生成される抗体、例えば、本明細書に記載のバクテリオファージによって発現される抗体等を意味する。該用語はまた、抗体をコードするDNA分子であって、抗体タンパク質を発現するDNA分子、または該抗体を特定するアミノ酸配列の合成によって生成された抗体を意味するとも解釈されるべきであり、この場合、該DNAまたはアミノ酸配列は、当技術分野で利用可能でありかつ周知の合成DNAまたはアミノ酸配列技術を用いて得られたものである。
該「T2Aリボソームスキップ配列」とは、翻訳時、リボソーム上で新生ポリタンパク質の切断を引き起こし、複数の遺伝子の共発現を可能にするアミノ酸配列を指す。1つの態様では、該T2Aリボソームスキップ配列は、配列番号231のアミノ酸配列、またはそれをコードするヌクレオチド配列(配列番号281)を含み得る。
「tCD19」という用語は、切断された型のCD19タンパク質、Bリンパ球抗原CD19、別名CD19(表面抗原分類19)を指し、これは、ヒトにおいてCD19遺伝子によってコードされ、B細胞の表面で見出されるタンパク質である。該tCD19構築物は、この構築物をコードする核酸配列が宿主細胞に形質導入され、検出、選択、及び/または標的化の目的でこの細胞の表面で発現され得るような該タンパク質の任意の切断された型である。1つの態様では、tCD19は、配列番号232のアミノ酸配列、またはそれをコードするヌクレオチド配列(配列番号282)である。
「TIM-1」という用語は、ヒトにおいてHAVCR1遺伝子によってコードされるT細胞免疫グロブリン・ムチンドメイン1タンパク質を指す。TIM-1は、HAVCR1、HAVCR、HAVCR-1、KIM-1、KIM1、TIM、TIM-1、TIM1、TIMD-1、TIMD1、CD365、及びA型肝炎ウイルス細胞受容体1としても知られる。TIM-1は、GenBankアクセッション番号AAC39862.1で与えられるアミノ酸配列、または、非ヒト種、例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿等由来の同等の残基を有する。1つの態様では、TIM-1は、配列番号315で与えられる配列、または、非ヒト種、例えば、マウス、げっ歯類、サル、類人猿等由来の同等の残基である。
「トランスフェクトされた」、または「形質転換された」、または「形質導入された」という用語は、外因性の核酸が宿主細胞に移入または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクトされた」、または「形質転換された」、または「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクトされた、形質転換された、または形質導入されたものである。該細胞には、初代対象細胞及びその後代が含まれる。
「膜貫通ドメイン」という用語が意味するものは、膜内で熱力学的に安定である任意の3次元タンパク質構造である。これは、単一のアルファヘリックス、膜貫通ベータバレル、グラミシジンAのベータヘリックス、または任意の他の構造であり得る。膜貫通ヘリックスは、通常、約20アミノ酸長である。通常、該膜貫通ドメインは、内在性タンパク質としても知られる、膜貫通タンパク質の単一の膜貫通アルファヘリックスを意味する。
本明細書で使用される、「治療する」、「治療」、及び「治療すること」という用語は、1つ以上の療法(例えば、本発明のCAR等の1つ以上の治療薬)の投与に起因する、増殖性疾患の進行、重症度、及び/または持続の低減または改善、または、増殖性疾患の1つ以上の症状(好ましくは、1つ以上の認識できる症状)の改善を指す。特定の実施形態では、「治療する」、「治療」、及び「治療すること」という用語は、増殖性疾患の少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータ、例えば、必ずしも患者によって認識されない腫瘍の増殖等の改善を指す。別の実施形態では、「治療する」、「治療」、及び「治療すること」という用語は、増殖性疾患の進行を、物理的に、例えば、認識できる症状の安定化で、生理学的に、例えば、物理的パラメータの安定化でのいずれか、またはその両方によって阻害することを指す。他の実施形態では、「治療する」、「治療」、及び「治療すること」という用語は、腫瘍のサイズまたはがん性細胞数の低減または安定化を指す。さらに、本明細書で使用される、「治療する」及び「予防する」という用語ならびにそれから生じる単語は、必ずしも100%のもしくは完全な治療または予防を意味するものではない。むしろ、当業者が潜在的な利益または治療効果を有すると認識している様々な程度の治療または予防がある。この点において、本発明の方法は、哺乳類におけるがんの任意の量の任意のレベルの治療または予防を提供し得る。さらに、本発明の方法が提供する治療または予防には、治療または予防されている疾患、例えば、がんの1つ以上の状態もしくは症状の治療または予防を含むことができる。また、本明細書の目的のため、「予防」は、疾患、またはその症状もしくは状態の発症を遅らせることを包含し得る。
「異種」という用語は、異なる種の動物由来の移植片を指す。
【0309】
これらの実験の詳細を、以下の実施例でより詳細に説明する。これらの実施例は、請求項に係る発明を説明するために提供するものであり、限定するものではない。
【実施例
【0310】
実施例1:抗TIM-1 CARバリアントの設計及び合成
抗TIM-1 CARは、図1の一般的概略図に従って生成した。これらのバリアントのうちの6つに関しては、図2Aがより詳細なCAR構築物の概略図を示す。これらCAR構造は、第2世代CARフォーマットに基づいていた(Gacerez et al.J Cell Physiol,2016 Dec、231(12):2590-8)。抗TIM1ハイブリドーマクローン1.29、2.70.2、または2.59.2由来のHv-リンカー-LvまたはLv-リンカー-Hv配向のいずれかに、6つの異なるTIM-1反応性の一本鎖可変断片(scFv)が存在した(図2B)。これらの抗TIM-1 ScFvは、重鎖(VH)及び軽鎖(VL)領域の可変領域を15アミノ酸のグリシン(G)-セリン(S)リンカー:(G4S)3リンカー(配列番号201)、すなわち、GGGGS(配列番号200)の3反復で融合することによって形成した。これらは、個々に、インフレームで、CD28ヒンジドメイン(CD28の残基135~152または配列番号214)、CD28の膜貫通ドメイン(CD28の残基153~179または配列番号215)、CD28の共刺激領域(CD28の残基180~220または配列番号217)、それに続くCD3ζシグナル伝達ドメイン(CD3ζの残基52~164または配列番号219)を含むCAR構築物でクローニングした。これら構築物の各々におけるscFvドメインは、軽鎖及び重鎖可変ドメインの順序、scFvの親和性、ならびにエピトープビン(scFvが結合するTIM-1の細胞外ドメイン上の領域)によって異なる。これらのscFvは、最近の臨床試験で使用されている潜在的な免疫原性(特にマウス系のscFv)の問題を最小限にした完全ヒト抗TIM-1抗体から得た(Maus et al.Cancer Immunol Res 2013、1:26-31、Kershaw et al.Clin Cancer Res 2006、12:6106-6115、Lamers et al.Blood 2011、117:72-82)。これら抗TIM-1抗体の配列(1.29及び2.70.2対2.59.2)は、TIM-1の異なるエピトープに結合することが示された(米国特許第8,067,544号)。これらのscFvが由来する抗体の完全な詳細は、米国特許第8,067,544号に見出すことができる。
【0311】
該CAR構造を次に図2Cに示す通り、細胞内共刺激ドメインの組成に基づいてさらに変化させた。すなわち、CD28(配列番号217)対4-1BB(4-1BBの残基214~255または配列番号216)対DAP10(DAP10の残基70~93または配列番号218)。簡潔には、この合成CAR構築物は、シグナルペプチドから始まり、その後、TIM-1の細胞外部分に結合した、リンカーで分離された可変重鎖及び可変軽鎖配列(VH-リンカー-VL、scFv)が続いた。このscFvは、CD28ヒンジ及び膜貫通ドメインとインフレームであり、その後、細胞内共刺激ドメイン(CD28、4-1BB、またはDAP10のいずれかに由来する)が続き、最後に、CD3ζのシグナル伝達ドメインであった。すべての場合で、高忠実度DNAポリメラーゼを用いてPCRを行った。
【0312】
形質導入されたT細胞の高純度の実現を容易にするため、CARのバリアント構築物を、該CAR構築物からT2Aリボソームスキップ要素(配列番号231)によって分離された切断CD19(tCD19)マーカー配列(CD19の残基1~327、または配列番号232)を含むように設計した(図2C)。翻訳時、tCD19は、そのCAR T細胞の細胞表面で発現されるようになる。これにより、形質導入されたCAR細胞の集団を濃縮する精製段階が可能になった。
【0313】
概して、レトロウイルスベクターに設計しクローニング(インフレーム)したCARのバリアントは以下の通りであった。Ab1.29由来のscFvに基づく2つのバリアント、すなわち、129L-CD28及び129H-CD28。Ab2.70.2由来のscFvに基づく4つのバリアント、すなわち、272L-CD28、272H-CD28、272H-BB、及び272H-DAP10。ならびにAb2.59.2に由来するscFvに基づく4つのバリアント、すなわち、2592L-CD28、2592H-CD28、2592H-BB、及び2592H-DAP10。表1を参照されたい。これらの構築物のいくつかをさらにT2Aリボソームスキップ配列及びtCD19の発現をコードする遺伝子で合成した。
【表1】
【0314】
ベクター:前述の抗TIM-1構築物をレトロウイルスベクターpFB-neo(Stratagene.Palo Alto.CA)またはpSFGのいずれかにクローニングした。pSFGベクターは、臨床試験においてT細胞の同様のレトロウイルス形質導入に使用されている(Hollyman et al.J Immunother 2009、32:169-180、Pule et al.Nat Med 2008、14:1264-1270)。pFB-neoのDNAを、SalI及びNotI制限酵素で消化した。消化産物をアガロースゲルにロードし、消化のバンドを切り出し、ゲル抽出キット(Qiagen)を用いて精製した。
【0315】
実施例2:抗TIM-1 CAR T細胞の生成
細胞培養及びレトロウイルス形質導入:前述のレトロウイルスのストックを用いて、健常ドナー由来のヒトT細胞を、最適化された方法(Cubillos-Ruiz et al.Oncotarget 2010、1:329-33、Huarte et al.Blood 2008、112:1259-1268、Stephen et al.Immunity 2014、41:427-439)、プロトコル、及びCeldara Medicalにて以前に開発された供給源を使用して形質導入した。
【0316】
いくつかのバリアントについては、細胞培養、レトロウイルス形質導入、及び精製のスキームを図3に要約する。得られた形質導入細胞をフローサイトメトリーで分析した(図4)。いくつかのバリアントの精製のためのプロトコルは以下の通りであった。健常ドナー由来のヒトPBMC(HemaCare)がCAR形質導入用のT細胞源であった。ドナーのPBMCを解凍し、完全培地で再構成し、その後遠心分離によりペレット化した。続いて細胞を完全培地に再懸濁し、その後IL-2及び抗CD3とともに48時間インキュベートすることによって活性化した。刺激後、細胞を抗TIM-1 CARバリアントをコードするレトロウイルス上清に曝露し、抗CD3存在下レトロネクチンコートプレートに入れ、その後スピノキュレーションした。空のベクターによるMock形質導入も行い、実験におけるCAR対照とした。3日目に、培地を交換し、スピノキュレーションを繰り返し、その後T細胞を数日間拡大した。5日目に、細胞を精製した。tCD19の遺伝子を特徴とした構築物で形質導入されたこれらの細胞に関しては、この精製は、抗CD19抗体を用いて行い、集団からすべてのCD19細胞を選択的に精製した。CAR T細胞を異なるドナー由来の細胞を用いて産生した(例えば、図4、第二列)。CD3CD19の純度(フローサイトメトリーで決定される)は、この方法を用いた1回の精製後に80%を超えた。必要であれば、2回目の精製を通じて>90%のCD3CD19の純度の達成が可能である。
【0317】
インビボアッセイのため、図14の通り、細胞を培養し、形質導入し、収穫し、精製し、拡大した。図15A及び図15Bは、製造工程中の宿主細胞の増殖及び生存率をそれぞれ示しており、抗TIM-1 CARの発現は、IL-2の存在下でT細胞に対して毒性やT細胞の増殖障害等の悪影響を与えないことを示唆した。図17は、得られた細胞のフローサイトメトリー分析を示す。
【0318】
実施例3:抗TIM-1 CAR T細胞のインビトロ機能活性
抗TIM-1 CAR T細胞産生:抗TIM-1 CAR T細胞は、実施例2及び図3に記載の通りに産生した。
【0319】
IFNγ誘導アッセイ:IFNγの誘導は、インビトロでの抗TIM-1 CARバリアントの刺激性及び細胞傷害性について、すなわち、TIM-1標的細胞への曝露時にCAR T細胞を活性化するそれらの能力について報告する。IFNγは、重要なエフェクターサイトカインであり、その産生の増加は、それがエフェクター細胞:標的細胞係合のバイオマーカーとして機能するため、CAR T細胞が刺激されたかどうかを示す。本質的に、CAR T細胞が標的TIM-1タンパク質を発現する細胞とインキュベートされた場合にのみIFNγが存在するということは、選択的な標的係合を示している。
【0320】
我々は、IGROV-1細胞とCAR T細胞バリアントを3連で共培養し、24時間でその上清を採集し、IFNγ産生をELISAによって測定した。
【0321】
実施例1に記載のscFv配列で産生されたいくつかのCAR T細胞バリアントは、TIM-1卵巣癌細胞株IGROV-1とインキュベートした場合にIFNγの産生を促進することが可能であった(図5A~E)。TIM-1を標的とするCAR T細胞の特異的インビトロ標的化を示すため、これらCAR Tを他のTIM-1及びTIM-1がん細胞株:TIM-1A549(肺腺癌)細胞、TIM-1Caki-1(腎細胞癌)細胞、及びTIM-1-EL4(マウスリンパ腫)細胞に曝露した。IFNγ産生がレトロウイルス形質導入手順の非特異的効果ではないことを確認するため、我々は、T細胞をmock形質導入し、それらをTIM-1IGROV-1細胞とともにインキュベートした(図5A~E)。IFNγ産生の増加が抗TIM-1 CARとIGROV-1細胞における細胞表面のTIM-1の間の相互作用に起因することを試験するため、我々はまた、scFv配列が由来する完全長抗体を用いて、TIM-1に対する遮断抗体との共インキュベーションの結果を調べた(図5C及び5E)。
【0322】
同様に、図18は、図14の通りに産生されたCAR T細胞に対するこのインビトロ機能活性アッセイの結果を示している。
【0323】
インビトロサイトカイン産生アッセイ:治療有効性にとって重要な別のパラメータは、インビボでの免疫環境に影響を与えるエフェクターサイトカインの産生である。我々は、IGROV-1細胞とCAR T細胞バリアントを3連で共培養し、24時間でその上清を採集し、サイトカイン産生をLuminexによって測定した。CAR T細胞を同様に、同じ条件下でA549細胞、Caki-1細胞(さらなるTIM-1がん細胞株)、及びEL-4細胞(TIM-1対照)と共培養した。さらに、TIM-1の結合が1つの条件においてサイトカイン産生の原因であったことを検証するため、CAR T細胞をscFvが由来する完全長抗体の存在下、IGROV-1細胞と共培養した。各場合において、mock形質導入細胞を対照として用いた。図6~12の結果を参照されたい。
【0324】
インビトロ細胞傷害性アッセイ:抗TIM-1 CAR T細胞のTIM-1細胞に対する特異性を判断するため、TIM-1細胞(IGROV-1ヒト卵巣癌細胞)及びTIM-1細胞(EL4マウスリンパ腫細胞)に対するCAR T細胞の細胞傷害能を、乳酸デヒドロゲナーゼの放出に基づく標準的な細胞傷害性アッセイを用いて判断した。このIGROV-1卵巣癌細胞株は、IGROV-1細胞がTIM-1の標的抗原を発現し、卵巣明細胞癌のモデルとして機能する(Domcke et al.Nat Commun 2013;4:2126)ため、これらの実験にとって有用な初期標的集団として役立つ(Bernard et al.Cancer Res 1985、45:4970-4979)。
【0325】
各ウェルに、10個のIGROV-1細胞を播種し、異なる抗TIM-1 CARバリアントを発現するエフェクターT細胞と1:1(エフェクター細胞:標的細胞)、5:1、10:1、及び20:1の比で共培養した。培地のみ、CAR T細胞のみ(エフェクター自然放出)、IGROV-1細胞のみ(標的自然放出)、及び最大IGROV-1毒性(Triton-X100で処理された細胞)を含めたいくつかの対照条件も行った。共培養中に細胞を播種後22時間で、共培養物を遠心分離し、それらの上清を回収した。アッセイ試薬(ジアフォラーゼ及びINT基質中間体を含む)を加え、反応を進めた。インキュベーションの終了時、停止液を加え、試料の吸光度を測定した。3連で行った実験試料からの補正吸光度の値を用いて、上記の通り、全溶解対照に基づいて細胞傷害性パーセントを計算した。
【0326】
図13A~Dは、TIM-1細胞における細胞溶解に関して、抗TIM-1 CARで形質導入されたT細胞及びmock形質導入細胞に関するこのアッセイの結果を示す。TIM-1EL4細胞が影響を受けなかった一方でIGROV-1細胞が殺傷されたため、TIM-1細胞特異的細胞傷害性も同様に示された(図13A~D)。
【0327】
このために、OVCAR-5卵巣癌細胞もまた、これがTIM-1の標的抗原を発現し、抗TIM-1抗体に反応することが示されている(米国特許第8,067,544号)ことから、同様に使用することができる。
【0328】
実施例4:マウスIGROV-1腫瘍モデルでのインビボTIM-1 CAR T抗腫瘍活性
マウス:SCID-beige雌、6週齢(表2参照)。
【表2】
【0329】
IGROV-1細胞の調製:IGROV-1細胞を解凍した。細胞を接種の1日前に継代した。細胞を収穫し、RPMIで一度洗浄し、その後補助剤なしのRPMIで50×10/mlの細胞懸濁液にした。IGROV-1細胞はトリプシンを用いて調製した。
【0330】
CAR T細胞の調製:抗TIM-1 CAR T細胞を、抗TIM-1 CAR構築物のPBMC(健常ヒト志願者)へのレトロウイルス形質導入により産生し、抗TIM-1陽性細胞を精製により濃縮し(CD3/CD19t)、さらに図14に従って調製した。
【0331】
CAR T細胞を解凍し、計数し、生存率を直ちに調べた。バイアルを液体N2保存から取り出し、ドライアイス上に置いた。バイアルをその後37℃の水浴中で加温すると小氷晶が残った。この時点で、旋回しながら1mLの加温RPMIを滴下した。2mLの混合物をバイアルから取り出し、15mLのコニカルに入れた。4mLの加温RPMIをその後15mLのコニカルに加えた。チューブを10℃にて1000rpmで5分間遠心分離にかけた。細胞を1mLのRPMIに再懸濁し、その後2度計数し、生存率を分析した。チューブは、使用していないときは氷上に置いた。
【0332】
CAR T細胞懸濁液は、補助剤なしのRPMI中75×10/mlで作製した。
【0333】
細胞の投与:0日目、マウスの右脇腹に、150μlのRPMI中2.5×10個のIGROV-1細胞+7.5×10個のCAR T細胞を接種した。各群について、CAR-T数に基づいて、1体積のIGROV-1調製物を2体積のCAR-T調製物に加えた。CAR-T/IGROV混合物は、注射中は氷上に置いた。細胞の注射は、細胞調製の直後に開始し、完了まで約1時間を要した。
【0334】
第1群には1体積のIGROV-1細胞懸濁液(50μl注射)。
【0335】
第2群には1体積のIGROV-1細胞懸濁液+2体積のMock CAR-T。
【0336】
第3群には1体積のIGROV-1細胞懸濁液+2体積の2592H_tCD19。
【0337】
第4群には1体積のIGROV-1細胞懸濁液+2体積の2592L_tCD19。
【0338】
第5群には1体積のIGROV-1細胞懸濁液+2体積の272H_tCD19。
【0339】
結果:腫瘍のサイズを週2回測定した。各マウスについて全身状態の検査を毎日行い、死亡日を記録した。試験は、56日目に終了した。完全な結果については図20Aを参照されたい。腫瘍のサイズの比較も20日目に行い、図20Bの結果をもたらした。腫瘍のサイズは、マンホイットニー検定を用いた統計分析に従い、平均体積±SEMとして報告されている(、p=0.02、**、p=0.002)。このように、抗TIM-1 CAR T細胞の皮下投与は、TIM-1IGROV-1細胞の増殖を阻害した。
【0340】
実施例5:担がんマウスにおけるCAR T細胞の持続性
安全性及び潜在的に長期の防御の両方に関連する重要なパラメータは、腫瘍の再発に反応し得るCAR T細胞の持続性である(Song et al.Cancer Res 2011、71:4617-4627)。インビボでの持続性を測定するため、最初に雌NSGマウス(3匹/群)でIGROV-1細胞(3×10細胞)を腹腔内に確立させる。移植後10日目に、0.5×10個の抗TIM-1 CAR T細胞を腹腔内に投与する。CARバリアントに特異的なQ-PCRを用いて養子移入後14日目及び28日目に、CAR T細胞の存在を判断する。分析する組織部分には、血液、腫瘍組織、骨髄、及び脾臓が含まれる。Q-PCRによって測定されたシグナルの量を用いて、分析した組織当たりに存在するCAR T細胞の相対数を推定し、これら2つのCARバリアントの生存及び増殖能を比較する手段を提供する。
【0341】
実施例6:マウスIGROV-1腫瘍モデルの生存に対するインビボTIM-1 CAR T効果
マウス:SCID-beige雌、6週齢(表3参照)。
【表3】
【0342】
IGROV-1腫瘍の確立:IGROV-1細胞を解凍し、接種の1日前に継代した。0日目に、IGROV-1細胞を、トリプシンを用いて収穫し、RPMIで一度洗浄し、表3に示す各マウスに、補助剤なしのRPMI200μL中の2.5×10個のIGROV-1細胞を腹腔内に接種した。
【0343】
CAR T細胞の調製:Mock CAR-T細胞及び抗TIM-1 CAR T細胞は、mock CAR構築物(pSFG._tCD19)または抗TIM-1 CAR構築物(pSFG.CX272H_tCD19)をそれぞれ用いて生成されたレトロウイルスでPBMC(健常ヒトドナー由来)を形質導入することにより産生した。図14に従って、形質導入に成功した細胞を精製し、拡大し、使用まで凍結した。
【0344】
CAR T細胞の投与:2、9、及び16日目の各々で、mock CAR T細胞及び抗TIM-1 CAR T細胞を解凍し、計数し、生存率を直ちに調べた。生存細胞の懸濁液を補助剤なしのRPMIで37.5×10細胞/mlにし、マウスへの投与が完了するまで(約1時間以内)氷上に保った。補助剤なしのRPMI200μL中、第2群の各マウスには7.5×10個のmock CAR T細胞を腹腔内投与し、第3群の各マウスには7.5×10個の抗TIM-1 CAR T細胞を腹腔内投与した。第1群の各マウスには、200μLの食塩水を腹腔内投与した。
【0345】
結果:マウスを観察し、死亡を毎日記録した。有害な臨床症状、例えば、重度の昏睡、猫背の姿勢、または不動が観察された場合は、マウスを安楽死させた。図21のグラフは、マウスの生存率の結果を示す。第1~3群間の生存率の比較は、ログランク(マンテルコックス)検定を用いて分析した。抗TIM-1 CAR T細胞を受けたマウス(第3群)は、食塩水のみ(第1群、p=0.0043**)またはmock CAR T細胞(第2群、p<0.0001****)を受けたマウスより統計的に長く生存した。このように、抗TIM-1 CAR T細胞の投与は、卵巣癌のインビボモデルの生存を延長した。
【0346】












































図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
図21
【配列表】
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