(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】直流電源
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
H02M3/28 V
H02M3/28 P
(21)【出願番号】P 2020070109
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100199864
【氏名又は名称】丹羽 良成
(72)【発明者】
【氏名】土田 正昭
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-023972(JP,A)
【文献】特開平01-318549(JP,A)
【文献】特開平08-266044(JP,A)
【文献】特開2018-007289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の出力を備えた直流電源であって、
トランスと、
前記トランスの1次側に接続されたスイッチング素子と、
前記トランスの2次側に接続された直流化回路と
を備え、
前記トランスの2次側は少なくとも第1の巻線と第2の巻線とを有する複数の巻線で構成され、
前記直流化回路は、前記第1の巻線に誘起された誘起電圧を直流化する第1の直流化手段と、前記第2の巻線に誘起された誘起電圧を直流化する第2の直流化手段とを有し、
前記第1の直流化手段の出力電圧と、前記第1の直流化手段の出力電圧と前記第2の直流化手段の出力電圧との和電圧からなる出力電圧とを複数の出力として選択的に出力可能となっている出力電圧選択部と、
前記出力電圧選択部から出力される出力電圧が保持されるよう電圧を制御する出力電圧制御回路と
をさらに備えることを特徴とする直流電源。
【請求項2】
請求項1に記載の直流電源であって、
前記出力電圧選択部は、コネクタまたはスイッチであることを特徴とする直流電源。
【請求項3】
請求項1または2に記載の直流電源であって、
前記出力電圧制御回路はシャントレギュレータと前記シャントレギュレータの設定電圧を決定する複数の出力電圧検出抵抗とを有し、
前記出力電圧選択部は、出力電圧が選択されるとき、前記出力電圧検出抵抗の接続状態が同時に切替えられるように構成され、
前記出力電圧制御回路は、選択された出力電圧に応じた前記設定電圧によって出力電圧を制御することを特徴とする直流電源。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の直流電源であって、
前記出力電圧選択部によって選択される出力電圧にかかわらず、前記スイッチング素子のDUTYの制御範囲が等しくなるように前記トランス2次側の複数の巻線の巻数比が設定されていることを特徴とする直流電源。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の直流電源であって、
前記トランスの2次側は前記第1の巻線および前記第2の巻線に加えて第3の巻線を有する複数の巻線で構成され、
前記直流化回路は、前記第3の巻線に誘起された誘起電圧を直流化する第3の直流化手段をさらに有し、
前記出力電圧選択部は、前記第1の直流化手段の出力電圧と、前記第1の直流化手段の出力電圧と前記第2の直流化手段の出力電圧との和電圧からなる出力電圧と、前記第1の直流化手段の出力電圧と前記第2の直流化手段の出力電圧と前記第3の直流化手段の出力電圧との和電圧からなる出力電圧とを複数の出力として選択的に出力可能となっていることを特徴とする直流電源。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の直流電源であって、
前記トランスの1次側巻線の巻数と2次側の前記第1の巻線の巻数比は、前記スイッチング素子のコントロールICが制御可能なDUTYの範囲内となるように設定されていることを特徴とする直流電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源に関し、詳しくはワールドワイドの交流電圧に対応した直流電源であり複数の出力を備え該出力が選択できる出力電圧選択機能付き直流電源に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の出力を備えた直流電源は、日本国内に限らず海外でも使用されているが、国内と海外の両方で使用できる単一の電源は、国内用および海外用の交流電圧に対応する必要がある。このワールドワイド入力仕様に対応でき、かつ複数の直流出力を備えそれらを選択できる直流電源は、通常スイッチング素子のオンオフ時間の制限により単一の電源で実現することが難しく、複数の電源を使用せざるを得ない状況となっている。
そのため、複数の出力を備える直流電源で、ワールドワイド入力仕様に対応できかつ単一の電源であれば、国内のみならず国内とは商用電源の電圧が異なる海外においても使用可能となり、使いやすい直流電源となる。
また、この種の直流電源に対しては、瞬時的な停電にも出力を保持できるよう保持時間の延長要求も高まっている。
【0003】
特許文献1には、電源供給回路および画像形成装置の発明が開示されているが、この特許文献には、
図13(特許文献1では
図2)に示すように、出力電圧を外部からの信号により切り替える電源である。この発明の切替電圧は24Vと6Vであり、電圧24Vは通常の負荷で使用されるが、電圧6Vは待機電圧として用いられもので通常の負荷で使用される電圧ではない。
また、出力電圧24Vと出力電圧6Vは、電源に使用されているトランスの2次側1巻線で制御するため、DUTY、すなわちトランス1次側のスイッチング素子の周期Tに対するオン時間TONの比(TON/T)の広い制御範囲で使用する必要があった(DUTYの制御範囲については後述する)。
【0004】
また、入力電圧範囲が広い、例えばPFC(Power Factor Correction)回路が付いていないコンデンサインプット整流方式の入力電圧がAC85V~264V、またはトランスのDC入力電圧が3倍以上変動する電源で、かつ異なる出力電圧(例えば、出力電圧12Vと出力電圧36V)のいずれかを選択して出力するような場合、単一の電源では構成が困難なことから、異なる出力電圧を持った単一のDC/DC直流電源が2系統必要となっていた。この場合、実装面積が大きく、コスト面でも高くなるという問題がある。
【0005】
図14は、その単一のDC/DC直流電源が2系統必要となる構成を示す回路図である。
図14に示すように、この電源は、コントロールIC(CONT11、CONT21)、スイッチング素子(Q11、Q21)、トランス(T11、T21)、過電圧検出回路(PC11、PC21を含む周辺回路)、出力電圧制御回路(SR11、SR21を含む周辺回路)等を持った単一のDC/DC直流電源が2系統で構成されており、スイッチSWで何れか1系統の出力を選択する。ただ、この方式では実装面積が大きくコストが高くなり、さらにどちらか1系統のみのDC/DC直流電源を出力へ供給し、その間はもう一方の系統は休止しているため稼働状況の観点から無駄が生じ効率的ではないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、単一の電源であって、ワールドワイドの交流電圧に対応し、かつ複数の出力電圧を備え該出力電圧が選択できる直流電源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、直流電源に使用されるトランスの2次側は複数の巻線を備え、複数の巻線により重畳された出力電圧が選択可能なワールドワイド入力仕様の直流電源である。
すなわち、複数の出力を備えた直流電源であって、トランスと、トランスの1次側に接続されたスイッチング素子と、トランスの2次側に接続された直流化回路とを備え、トランスの2次側は少なくとも第1の巻線と第2の巻線とを有する複数の巻線で構成され、直流化回路は、第1の巻線に誘起された誘起電圧を直流化する第1の直流化手段と、第2の巻線に誘起された誘起電圧を直流化する第2の直流化手段とを有し、第1の直流化手段の出力電圧と、第1の直流化手段の出力電圧と第2の直流化手段の出力電圧との和電圧からなる出力電圧とを複数の出力として選択的に出力可能となっている出力電圧選択部と、出力電圧選択部から出力される出力電圧が保持されるよう電圧を制御する出力電圧制御回路とをさらに備えることを特徴とする直流電源である。
【0009】
このように構成することで、1の巻線による電圧と複数の巻線による重畳された電圧を発生させ、これらの複数の電圧を選択して出力することにより、ワールドワイドの交流電圧に対応した複数の出力を備えた直流電源をコンパクトかつ低コストで構成することができる。
【0010】
この直流電源の出力電圧選択部は、コネクタまたはスイッチであることを特徴とする。
この構成により、直流電源の出力電圧は、コネクタやスイッチにより、容易な操作で選択することができる。
【0011】
また、出力電圧制御回路はシャントレギュレータとシャントレギュレータの設定電圧を決定する複数の出力電圧検出抵抗とを有し、出力電圧選択部は、出力電圧が選択されるとき、出力電圧検出抵抗の接続状態が同時に切替えられるように構成され、出力電圧制御回路は、選択された出力電圧に応じた設定電圧によって出力電圧を制御することを特徴とする。
このように構成することで、選択された出力電圧に適した電圧制御ができる。
【0012】
さらに、出力電圧選択部によって選択される出力電圧にかかわらず、スイッチング素子のDUTYの制御範囲が等しくなるようにトランス2次側の複数の巻線の巻数比が設定されていることを特徴とする。
このように構成することで、単一の直流電源でも複数の直流電源と同等の性能を実現することができる。
【0013】
また、トランスの2次側は第1の巻線および第2の巻線に加えて第3の巻線を有する複数の巻線で構成され、直流化回路は、第3の巻線に誘起された誘起電圧を直流化する第3の直流化手段をさらに有し、出力電圧選択部は、第1の直流化手段の出力電圧と、第1の直流化手段の出力電圧と第2の直流化手段の出力電圧との和電圧からなる出力電圧と、第1の直流化手段の出力電圧と第2の直流化手段の出力電圧と第3の直流化手段の出力電圧との和電圧からなる出力電圧とを複数の出力として選択的に出力可能となっていることを特徴とする。
このように構成することで、1の巻線の出力電圧と1および2の巻線または3つの巻線の誘起電圧が重畳された出力電圧の互いに異なる3つの出力電圧を、切り替えて出力することができる。
【0014】
また、トランスの1次側巻線の巻数と2次側の第1の巻線の巻数比は、スイッチング素子のコントロールICが制御可能なDUTYの範囲内となるように設定されていることを特徴とする。
このように構成することで、複数の出力電圧のいずれが選択されてもDUTYの所定の制御範囲で使用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成により、ワールドワイドの交流電圧に対応する多出力を備えた直流電源の出力電圧を選択し、いずれの出力電圧であってもDUTYを同じ制御範囲となるように構成することができ、小型化、低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係わる出力電圧選択機能付き直流電源の主要部の回路図である。
【
図2】フライバック方式のトランスの巻数比、入力電圧、出力電圧の関係を説明する図である
【
図3】AC入力電圧とそのDC電圧を示す図である。
【
図4】AC電源がオフしたときの入力電圧と出力電圧の変化を示す図である。
【
図5】出力電圧12Vを選択しトランス1次側電圧DC150VのときのDUTYと電圧値を示す図である。
【
図6】出力電圧12Vを選択しトランス1次側電圧DC50VのときのDUTYと電圧値を示す図である。
【
図7】出力電圧36Vを選択しトランス1次側電圧DC150VのときのDUTYと電圧値を示す図である。
【
図8】出力電圧36Vを選択しトランス1次側電圧DC50VのときのDUTYと電圧値を示す図である。
【
図9】1次側と2次側の巻数比を変更したときの1次側入力電圧に対するDUTYの制御範囲を示す図である。
【
図10】DC入力電圧とDUTYの関係を示す図である。
【
図11】コネクタをスイッチに変更した直流電源の変形例である。
【
図12】トランスにコントロールIC電源用の補助巻線を追加した図である。
【
図14】選択スイッチを設けた2系統の電源により構成された回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係わる出力電圧選択機能付き直流電源について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係わる出力電圧選択機能付き直流電源1の主要部の回路図である。
トランスT1の1次側は、1次巻線Npと直列に接続されたスイッチング素子Q1およびスイッチング素子Q1を制御するコントロールIC(CONT1)で構成される。トランスT1の1次側入力電圧VINは、AC電源のダイオードブリッジとコンデンサで構成される整流平滑回路の出力電圧である。
図1ではその整流平滑回路は省略している。
【0018】
トランスの2次側は、2つの巻線Ns1とNs2、整流平滑回路(本願の「直流化回路」に相当)2、過電圧検出回路3、出力選択用コネクタ接続部(本願の「出力電圧選択部」に相当)4、出力電圧制御回路5により構成される。
これらにより単一の直流電源で多出力の機能を備え、その出力が選択可能な直流電源が構成できる。
【0019】
トランスの2次側は、第1の巻線Ns1と第2の巻線Ns2で構成され、その巻線の出力は、ダイオードD1、D2およびコンデンサC1、C2で構成される整流平滑回路2に接続され、各々の出力される電圧はV1およびV2である。これらの電圧は、各巻線により発生する電圧を整流平滑回路2により整流および平滑された電圧(直流化電圧)であり、出力電圧として選択されるとそのまま出力電圧となる。ダイオードD1およびコンデンサC1で構成される第1の整流平滑回路(本願の「第1の直流化手段」に相当)が第1の巻線Ns1に誘起された誘起電圧を直流化し、ダイオードD2およびコンデンサC2で構成される第2の整流平滑回路(本願の「第2の直流化手段」に相当)が第2の巻線Ns2に誘起された誘起電圧を直流化する。
【0020】
第1の巻線Ns1と第2の巻線Ns2は、第1の巻線Ns1のプラス側と第2の巻線Ns2のマイナス側が接続されて、第1の整流平滑回路の出力電圧V1と、第1の整流平滑回路の出力電圧V1と第2の整流平滑回路の出力電圧V2との和電圧(V1+V2)(以下、重畳された電圧という)の2つの出力電圧が発生するように構成される。
【0021】
過電圧検出回路3は、ツェナーダイオードZN1とZN2、ダイオードD3とD4およびフォトカップラPC1で構成される。
ダイオードD1のカソード側(出力電圧V1のプラス側)とダイオードD2のカソード側(出力電圧(V1+V2)のプラス側)に、それぞれツェナーダイオードZN1とZN2が接続され、それらにダイオードD3とD4が直列に接続され、2つのダイオードのカソード同士が接続されて抵抗R3を介してフォトカップラPC1の発光ダイオード側の一端に接続される。フォトカップラPC1の発光ダイオード側の他端はマイナス側(GND側)に接続される。
【0022】
ツェナーダイオードZN1とダイオードD3は出力電圧V1の過電圧、ツェナーダイオードZN2とダイオードD4は出力電圧(V1+V2)の過電圧を検出するように検出電圧が設定されている。電流制限抵抗R3とフォトカップラPC1により、いずれかの出力電圧が過電圧となったときに、1次側コントロールIC(CONT1)へ過電圧信号OVPが送出される。コントロールIC(CONT1)は、その機能によりスイッチング素子Q1のオンオフ停止等の処理が実行される。
なお、このように出力選択用コネクタ接続部4前段に過電圧検出回路3を配置することにより、コネクタ接続漏れ等による保護も検出することができる。
【0023】
出力選択用コネクタ接続部4は、2つのコネクタ端子台と1つのコネクタCN1で構成される。
図1に示すコネクタ端子台A側(以下、単に「A側」という)にコネクタCN1が接続されることにより出力電圧V1が選択され、コネクタ端子台B側(以下、単に「B側」という)に接続されると出力電圧(V1+V2)が選択される。
図1に示すコネクタCN1のi-ii端子およびiii-iv端子で出力電圧の選択が実施される。
なお、コネクタCN1はi-ii端子間、iii-iv端子間を各々ショートしたものであり、A側またはB側のいずれかに接続されることにより、出力電圧が選択される。
【0024】
このコネクタCN1は、出力電圧V1または出力電圧(V1+V2)を制御するシャントレギュレータSR1の電圧入力端子に、出力電圧が切り替わるときにあわせて並列に接続される抵抗R4およびR6の接続のオンオフが選択できるようにも構成されている。
このように構成された直流電源は、出力電圧V1と出力電圧(V1+V2)がコネクタCN1の接続により選択され、いずれか一方の電圧が出力されると、その出力電圧に適した電圧制御が実行される。
【0025】
出力電圧制御回路5は、抵抗R4~R8、シャントレギュレータSR1およびフォトカップラPC2により構成される。
コネクタCN1のiii-iv端子が、A側に接続されることにより出力電圧制御回路5の出力電圧センス抵抗(出力電圧検出抵抗)R4とR6が並列に接続(R4//R6)される。
【0026】
コネクタCN1のiii-iv端子が、B側に接続されることにより出力電圧センス抵抗はR4のみとなり、出力電圧(V1+V2)に適した電圧制御が実行され、
図14に示す2系統の直流電源と同等の特性を得ることができる。
シャントレギュレータSR1は、直列に接続された抵抗R7とフォトカップラPC2に接続され、フォトカップラPC2の出力がフィードバック信号FBとして1次側のコントロールIC(CONT1)に伝えられる。
すなわち、フィードバック信号FBにより1次側のコントロールIC(CONT1)は、スイッチング素子Q1のオンオフ時間の制御を実行する。
【0027】
ここで、シャントレギュレータSR1の入力端子に設定される電圧について説明する。
図1に示すコネクタCN1がA側に接続されると、コネクタCN1のiii-iv端子は、出力電圧センス抵抗R4と抵抗R6が並列に接続(R4//R6)され出力電圧V1に適した電圧制御を行い、B側に接続されると、出力電圧センス抵抗はR4のみとなり出力電圧(V1+V2)に適した電圧制御を行う。このように、出力選択用コネクタ接続部4は、出力電圧が選択されると、出力電圧センス抵抗R4およびR6の接続状態が同時に切替えられる。
【0028】
シャントレギュレータSR1の電圧入力端子VREF(SR1)は、この電圧と比較されるシャントレギュレータSR1内の基準電圧は一定に保たれているため、出力電圧センス抵抗が変更されても電圧入力端子VREF(SR1)は変化しないで、出力電圧VOUTが変化する。この出力電圧VOUTは、次のように設定される。
【0029】
コネクタCN1がA側に接続されると、
VOUT(V1)=(1+(RA/R5))×VREF(SR1) ・・(1)
であり、B側に接続されると、
VOUT(V1+V2)=(1+(R4/R5))×VREF(SR1)・・(2)
となる。
ここで、RA=R4//R6であり、VREFはシャントレギュレータSR1のレファレンス端子電圧、すなわち
図1に示す抵抗R5のプラス側電圧である。
【0030】
従って、コネクタCN1の接続(A側またはB側へ接続)により、いずれかの出力電圧が選択され、その出力電圧が選択されると同時に、出力電圧センス抵抗値が変わり、いずれの出力電圧でもDUTY(トランス1次側のスイッチング素子Q1の周期Tに対するオン時間TONの比(TON/T))をほぼ同じにすることで2系統の直流電源と同等の特性を得ることができ、小型化、低コスト化が可能となる。
なお、抵抗R4~R6はシャントレギュレータSR1の設定電圧を決定する抵抗として機能し、抵抗R4~R6の定数は、本実施形態の出力電圧12Vと36Vに対応しているが、固定したものではなく出力電圧に合わせた抵抗値に設定される。
【0031】
次に、
図1に示す直流電源1のトランスT1に入力される電圧と出力電圧のDUTY範囲を算出する前に、トランスT1の入力電圧、トランスT1の1次側と2次側の巻数比および出力電圧の関係について説明する。
【0032】
図2は、フライバック方式のトランスの巻数比(Ns/Np=N)、入力電圧VIN、出力電圧VOUTの関係を説明する図である。
一般的に、フライバック方式のフライバック電圧VORは、次のような基本式で表される。
VOR=VO×Np/Ns=TON/TOFF×VIN ・・・(3)
ここで、VO=VOUT+VFであり、出力電圧VOUTにダイオード電圧降下分VFを加算したものである。また、TONおよびTOFFはスイッチング素子Q1のオン時間およびオフ時間である。
【0033】
スイッチング素子のDUTYは、
DUTY=TON/(TON+TOFF) ・・・(4)
であるから、式(3)を変形して、TOFF=TON×N×VIN/VOを代入すると、
DUTY=VO/(N×VIN+VO) ・・・(5)
となる。
【0034】
(実施例)
本実施例ではトランスT1の2次側は2巻線とし、トランスT1の巻数比は、1次側巻線数Np:2次側の第1の巻線数Ns1:2次側の第2の巻線数Ns2=8:1:2とし、1次側入力電圧VINとすると、スイッチング素子Q1のオン時間TONは、式(4)および(5)から、T=TON+TOFFとして、
TON=VO×T/(N×VIN+VO) ・・・(6)
で、概算値を求めることができる。
ここで、Tはスイッチング素子Q1の周期(1/発振周波数kHz)、VO=VOUT+VFであり、N=Ns/Npである。
【0035】
1次側と2次側の巻数比を8:1:2とするのは、通常使用する場合、交流入力電源の下限(100V-15%)のとき、DUTYがほぼ50%になるようにするためである。
なお、本実施例ではT=10μsとした。また、ダイオードの電圧降下分VFを考慮して、出力電圧VOUTにVFを加えた電圧VOで算出する。
【0036】
ここで、入力電圧VINの範囲の内、DC100V、DC150VおよびDC390V、さらにDC50VについてDUTYを算出する。ワールドワイド仕様の入力電圧を、AC85V(100V-15%)からAC276V(240V+15%)とすると、整流平滑回路2の出力はDC120Vから390Vとなる。通常の国内で使用する場合の上限の入力電圧をDC150Vとした。
【0037】
また、下限のDC100Vは
図3に示すように、AC入力電圧が下限値(85V)になったとき、ピーク値はDC120Vとなるが、変動しているためボトム電圧はその80%とすると約DC100Vとなる。よって通常の入力電圧の変動の下限は、DC100Vとした。
一方、AC電源がオフしたときに、一定時間は出力電圧を保持する必要があることから、
図4に示す保持時間tcを確保するために、本実施例ではDC50Vまでは電源が動作するように、保持時間を確保するための電圧としてDC50Vを使用した。
図4は、AC電源がオフしたときの入力電圧VINと出力電圧VOUTの変化を示す図である。
【0038】
よって、DUTYの制御範囲を算出する電圧はDC50V、DC100V、DC150VおよびDC390Vとし、出力は12Vまたは36Vの2つの出力電圧のDUTYをそれぞれ算出する。
【0039】
以下、ダイオード電圧降下分VFは1.0Vとして出力電圧VOUTではなく電圧VOを使用する。
また、本実施例では、N=Ns1/Np=1/8=0.125である。
最初に、VOUT=12V、各入力電圧の場合のDUTYを算出する。
このときのDUTYは、VO=VOUT+1.0Vとして、式(4)および(5)から、
DUTY(50V)=TON/10μs=13V/(0.125×50V+13V)
DUTY(100V)=13V/(0.125×100V+13V)
DUTY(150V)=13V/(0.125×150V+13V)
DUTY(390V)=13V/(0.125×390V+13V)
となり、DUTYは、上から順に68%、51%、41%、21%である。
【0040】
図5は、出力電圧12Vを選択しトランス1次側電圧DC150VのときのDUTYと電圧値を示す図である。
また、
図6は、出力電圧12Vを選択しトランス1次側電圧DC50VのときのDUTYと電圧値を示す図である。
図5および
図6は、いずれも横軸は時間であり、縦軸は電圧である。スイッチング素子Q1の2周期分を示す。電圧V1は12Vであり、出力電圧VOUTとなっている。電圧V2は24Vである。電圧VDS(Q1)はスイッチング素子Q1のドレインーソース間の電圧であり、LOW(ロー)の期間はスイッチング素子Q1がオンしている時間である。スイッチング素子Q1の周期は10μsであるからスイッチング素子Q1のオン時間から容易にDUTY(%)は算出される。
【0041】
よって、出力電圧12Vのとき、入力電圧DC50VからDC390Vに対して、スイッチング素子Q1のDUTYは、21%~68%の範囲となる。
【0042】
次に、VOUT=36Vの場合について、同様に算出する。この場合、またダイオード降下分VF=1.0Vとし、2つの巻線の電圧が重畳されているため、N=(Ns1+Ns2)/Np=3/8=0.375となる。それぞれの入力電圧のDUTYは、
DUTY(50V)=TON/10μs=37V/(0.375×50V+37V)
DUTY(100V)=37V/(0.375×100V+37V)
DUTY(150V)=37V/(0.375×150V+37V)
DUTY(390V)=37V/(0.375×390V+37V)
であり、上から順に、66%、50%、40%、20%である。
【0043】
図7は、出力電圧36Vを選択しトランス1次側電圧DC150VのときのDUTYと電圧値を示す図である。また、
図8は、出力電圧36Vを選択しトランス1次側電圧DC50VのときのDUTYと電圧値を示す図である。
図7および
図8も、上記の
図5および
図6と同じ構成で、出力電圧とスイッチング素子Q1のオン時間を示す図であるが、
図7および
図8に示す出力電圧VOUTは電圧V1とV2の重畳された電圧の36Vである。
【0044】
よって、出力電圧36Vのとき、入力電圧DC50VからDC390Vに対して、スイッチング素子Q1のDUTYは、20%~66%の範囲となる。
【0045】
出力電圧12Vと出力電圧36VのDUTYはほぼ同じである。これは、2次側の巻線数が直流化電圧(整流および平滑された電圧)比となるように構成されており、出力電圧が3倍になっても出力電圧に対する巻線比(N)が3倍になることから、スイッチングQ1のオンする時間、DUTYは、式(5)から分子および分母も3倍となり、DUTYは変わらない。よって、出力電圧が異なっても2次側の巻数比を巻線の直流化電圧比に選定することにより、DUTYは同じ範囲となるように設定することが可能となる。
なお、出力電圧VOUTにダイオード降下分VFを考慮した電圧VOとし算出しているため、本実施例の算出結果は完全には一致していない。
【0046】
(比較例1)
上記の実施例は2次側が2巻線で、その巻数比は8:1:2である。比較例1は、2次側を2巻線ではなく、1巻線として、12Vと36Vの2出力に対応するDUTYを算出する。1巻線の巻数は12Vと36Vの中心値である24Vの出力となるように設定した。比較例1では、N=Ns/Np=2/8=0.25となる。
【0047】
式(5)から、同様にダイオード電圧降下分1.0Vとして、VOUT=12V、入力電圧DC50Vでは、
DUTY(50V)=TON/10μs=13V/(0.25×50V+13V)
から、DUTYは51%である。
また、入力電圧DC100V、DC150V、390Vでは、DUTYは、それぞれ34%、26%、12%である。DUTYの範囲は、12%~51%となる。
【0048】
同様に、出力電圧=36Vとして、入力電圧50Vに対するDUTYは、
DUTY(50V)=TON/10μs=37V/(0.25×50V+37V)
から、75%である。
また、入力電圧DC100V、DC150V、DC390Vでは、それぞれDUTYは60%、50%、28%である。
よって、入力電圧36Vに対するDUTYは28%~75%の範囲となる。出力電圧12Vと36Vを選択して使用するDUTYの範囲は12%~75%となる。
【0049】
(比較例2)
次に、2次側を1巻線とし、出力電圧は12Vと36Vが選択されるが、2次側の巻数は36Vの出力となるよう設定し、比較例2のDUTYを算出する。巻数比はN=Ns/Np=3/8=0.375となる。比較例2でもダイオード降下分VF=1.0Vとする。
VOUT=12V、入力電圧DC50Vのとき、
DUTY(50V)=TON/10μs=13V/(0.375×50V+13V)から、DUTYは41%である。
また、入力電圧DC100V、DC150V、DC390Vでは、それぞれDUTYは26%、19%、8.2%であり、DUTYの範囲は、8.2%~41%となる。
【0050】
続いて、VOUT=36V、入力電圧DC50Vのとき、
DUTY(50V)=TON/10μs=37V/(0.375×50V+37V)
から、DUTYは66%である。
また、入力電圧DC100V、DC150V、DC390Vでは、それぞれDUTYは50%、40%、20%である。
よって、出力電圧12Vと36Vを合わせたDUTYの範囲は8.2%~66%となる。
【0051】
以上の実施例、比較例1および比較例2の入力電圧に対するDUTYの結果を、表1に示す。
【表1】
【0052】
ここで、表1のDUTYの結果が適切か判断するに際し、DUTYの有効な制御範囲について検討する。表2は、
図1に示すコントロールIC(CONT1)のパルス幅変調のDUTYの最大値と最小値を示す。コントロールIC(CONT1)のデータシートである。
【表2】
この表2によれば、DUTYの最大は標準値(Typ.)では83%であるが、最大の最小値(Min.)は73%となっている。よって、DUTYの制御範囲は73%以下に抑える必要がある。
【0053】
また、最小値はゼロ%であるが、DUTYが10%未満になると、コンデンサインプット整流方式ではノイズを抑えるためPFC回路が必要となり、スイッチング素子の立上りや立下りの遅れにより動作が不安定になることがある。よって、DUTYの制御範囲の最小値は10%とする。
【0054】
DUTYは10%~73%の制御範囲で動作させること(所定の制御範囲)とすると、本発明の実施例はその範囲内にあるが、1巻線24V出力回路の比較例1では、36V出力のDC50Vでは75%と所定の制御範囲を超えている。
また、1巻線36V出力回路の比較例2では、12V出力のDC390Vでは8.2%で所定の制御範囲を下回る。
よって、比較例1および比較例2の1巻線で構成する直流電源では、ワールドワイドの仕様には対応できないことになる。例えば、DC50Vの入力電圧で所定の制御範囲を超える場合は、入力電源がオフしたあと、所定の時間は出力電圧を保持する必要があるとき、1次側のコンデンサ容量を大きくする等の対応が必要となる。
【0055】
また、表1に示す2系統の例では、2台の直流電源を使用しているため、DUTYの制御範囲は実施例と同じになるが、2系統の電源は実装面積が大きく、コスト面でも高くなる問題がある。
さらに、どちらかの系統のDC/DC直流電源が休止しているため稼働状況の観点から無駄が生じ効率的でない。
【0056】
表1に示す実施例は、2次側の2つの巻線の直流化電圧12Vと24Vが重畳された出力電圧36Vとしている。
そこで、重畳された電圧ではなく2巻線の構成で、例えば2つの巻線でそれぞれ出力電圧12Vと出力電圧36Vとして、その2つの出力電圧を選択しても表1と同じDUTYの制御範囲とすることができる。
但し、この場合2巻線であっても、巻数比は8:1:3となり、2次側の巻数が多くなる。
【0057】
次に、1次側と2次側の巻数比を変更した場合について検討する。
図9は、1次側と2次側の巻数比を変更したときの1次側入力電圧に対するDUTYの制御範囲を示す図である。
横軸は、0%~100%のDUTYの範囲であり、縦軸は、(A)から(G)までDUTYの制御範囲を示す水平方向の棒グラフが表示されている。なお、図の上部に示すDUTYの制御範囲は、所定の制御範囲(10%~73%)である。
また、
図9に示すいずれの棒グラフも出力電圧VOUTにダイオード電圧低下分VF1.0Vを加算している。
さらに、
図9に示す(A)~(G)までのDUTYの制御範囲の最大値はいずれも入力電圧DC50VのDUTYであり、最小値は入力電圧DC390VのDUTYである。
【0058】
図9(A)は、巻数比8:3の2次側1巻線36V出力から出力電圧12Vと36Vになるよう制御された出力電圧を選択して出力する直流電源のDUTYの棒グラフである。1次側の入力電圧DC50VからDC390VまでのDUTYの制御範囲は、8.2%~66%であることを示す。
図9(A)は、表1に示す比較例2の制御範囲をそのまま棒グラフにしたものである。表1の結果から判断されるように、この巻線比の1巻線の直流電源ではDUTYの所定の制御範囲を下回る直流電源である。
【0059】
続いて、
図9(C)は、
図9(A)から巻数比のみ6:3に変更したときの、DUTYの制御範囲を示した棒グラフである。このときのDUTYの制御範囲は、6.3%~60%であることを示す。
さらに、
図9(E)は、
図9(A)から巻数比のみ4:3に変更したときの、DUTYの制御範囲を示した棒グラフである。このときのDUTYの制御範囲は、4.3%~50%である。
【0060】
この比較例2の直流電源の1次側と2次側の巻数比を3/8から、3/6、3/4と大きくして(1に近づけて)いくと、同じ入力電圧でもDUTYの制御範囲は、
図9の左方向にずれて、DUTYが小さくなっている。これは式(5)からもわかるように、同じ入力電圧でも巻数比が大きくなると分母の値が大きくなり、DUTYが小さくなる。
この比較例2は、巻数比を変化させると、DUTYは小さくなっていくが、
図9(A)の巻数比でもDUTYの所定の制御範囲を下回っており、
図9(C)および(E)でもさらに下限を下回る。
【0061】
図9(B)は、本発明の巻数比8:1:2の2次側2巻線の出力を出力電圧12Vと36Vをコネクタによって選択する直流電源のDUTYの棒グラフである。1次側の入力電圧はDC50VからDC390Vである。このときのDUTYの制御範囲は、20%~68%である。これは表1の実施例(本発明)に示した範囲である。
以下、比較例2の巻線比を変更したのと同様に、本実施例の場合も巻数比を8:1:2から6:1:2、4:1:2、3:1:2と変更してDUTYの制御範囲を算出する。
【0062】
図9(D)は、巻数比6:1:2に変更してDUTYの制御範囲を算出した棒グラフである。その範囲は、16%~61%である。巻数比が大きくなる(1に近づく)につれて、DUTYは小さくなっているが、この巻数比でもDUTYの制御範囲は所定の制御範囲内であり、直流電源として使用できる。
また、
図9(F)は、巻数比4:1:2に変更してDUTYの制御範囲を算出した棒グラフである。この制御範囲は、11%~51%である。この巻数比でもDUTYの制御範囲は、所定の制御範囲内であり、直流電源として使用できる。
【0063】
さらに、
図9(G)は、巻数比3:1:2に変更してDUTYの制御範囲を算出した棒グラフである。この制御範囲は、8.7%~44%である。この巻数比になると、DUTYの所定の制御範囲を下回ることになり、この巻数比の直流電源は不適である。
よって、1次側と2次側の巻数比は、実施例に示す条件の2次側1巻線の直流電源の場合、4:1:2が下限である。
【0064】
一方、
図9(B)の巻数比8:1:2から巻数比を小さくしていくと、DUTYが大きくなり、上限の73%に近づく。
この場合、上限の73%となる巻数比は、10:1:2となる。この時のDUTYは、出力電圧12Vの入力電圧DC50Vで、72%となる。
よって、本発明の実施例の入力電圧DC50VからDC390Vであって、2次側2巻線で構成する直流電源の巻数比は、4:1:2~10:1:2の範囲が適している。
【0065】
ここで、スイッチング素子のDUTYの制御範囲の73%の上限まで余裕があるとき、トランス1次側の入力電圧は、上記ではDC50Vで計算しているが、さらに低い電圧となっても、DUTYの所定の制御範囲の上限までは出力電圧を保持できることになる。
このことは、保持時間tcが長くなるので、規定時間以上に保持時間を長くする必要がなければ、1次側のコンデンサの容量を減らしてコスト低減を図ることも可能である。
【0066】
図10は、DC入力電圧とDUTYの関係を示す図である。
図10には2つの曲線が表示されている。実線の曲線は、本発明の巻数比4:1:2で出力電圧12Vの時の入力電圧とDUTYを示す。すなわち、
図9(F)に示す棒グラフの、入力電圧とDUTY値の関係を示すグラフである。
点線の曲線は、表1に示す比較例1の1巻線24V出力のVOUT36Vの例であるが、この場合、表1に示したようにDC50VではDUTY75%で、DUTYの所定の制御範囲の上限を超えている。このとき、制御範囲上限の73%とすると、入力電圧はDC55Vとなる。
【0067】
ここで、
図9(F)に示す巻数比4:1:2の制御範囲の最大は51%である。この最大の51%の入力電圧は、DC50Vであったが、DUTYの所定の制御範囲の上限の73%とすると、この入力電圧は、DC19Vとなる。
この入力電圧DC19Vまで出力電圧が保持されて保持時間tcが長くなれば、所定の容量のコンデンサを小さくすることができる。所定の容量とは設計上の必要となる容量で470μFである。
【0068】
例えば、
図4に示した入力電源オフしたときの図を基に説明する。
1次側のコンデンサの容量Cpは、式(7)で計算できる。
Cp=2×Pin×tc/(VIN
2-VINmin
2) ・・・(7)
ここで、Pin=Po/ηで、Poは出力電力(W)でηは効率である。tcは保持時間、VINは電源がオフするときの入力電圧、VINminは入力電圧の最低動作電圧である。
【0069】
具体的に、tc=10msを保持するためには、出力電力100W、効率80%とするとPin125Wとなり、VIN=100Vとして、VINminを19Vと55Vとして計算すると、それぞれ259μFと358μFとなる。
これはVINminが19Vまで低下しても保持時間tcが継続できることになる。この電圧まで低下しても出力が保持できるので、コンデンサ容量を小さくすることも可能である。
【0070】
以上、
図1に示す出力電圧を選択する直流電源1で説明したが、
図1に示す電源は2出力をコネクタCN1により切り換えている。コネクタCN1ではなく、
図11に示すスイッチを設けて選択することもできる。
図11は、コネクタをスイッチに変更した出力電圧選択機能付き直流電源の変形例である。
図1に示す回路図のコネクタCN1をスイッチSW1に変更したもので、他の回路は同じである。
スイッチSW1は、例えば2回路2接点のスイッチを使用し、1回路には2つの出力電圧を各接点に接続してスイッチSW1により選択する。もう1回路には、抵抗R4と並列に接続される抵抗R6の一端を接続し、スイッチSW1により抵抗R6の接続をオンオフする。
このように、コネクタCN1の替わりにスイッチSW1を使用してもよい、
【0071】
また、
図12は、
図1に示すトランスT1にコントロールIC電源用の補助巻線を追加した図である。
図12は、
図1に示した出力電圧選択機能付き直流電源の主要部の回路図と同じである。トランスT1に補助巻線21を追加したものであるため、回路の説明は省略する。
例えば、1次側の巻数とこの補助巻線の巻数比を8:2とすれは、補助巻線により24Vの出力電圧を得ることができる。この場合、スイッチング素子Q1のDUTYにはあまり関係せず、負荷が少ないことから出力電圧はほぼ一定となる。
【0072】
さらに、本発明の実施例は、出力電圧12Vと36Vを選択する直流電源として説明した。この場合の1次側と2つの2次側の巻数比は、8:1:2としたが、これに限らず出力電圧の設定は任意であり、2次側の巻数比も出力電圧に応じて設定可能である。
例えば、2次側を3巻線の構成で、その巻数比を8:1:1:1とすると、重畳される出力電圧は、DC12V、DC24V、DC36Vの3出力となり、それらを選択する直流電源とすることもできる。
【0073】
また、本発明の実施例は、フライバック方式の直流電源で説明したが、フライバック方式に限らず、フォワード方式や電流共振方式の直流電源でも使用することができる。
さらに、トランスT1の2次側の巻数(Ns1、Ns2、・・・Nsn)、コネクタCN1が接続される端子(A側、B側、・・・N側)、出力電圧センス抵抗R4と並列に接続される抵抗(R6、・・・Rn)を増やすことにより異なる出力電圧の選択数を増やすこともできる。
【0074】
例えば、トランスT1の2次側に、第1の巻線Ns1および第2の巻線Ns2に加えて第3の巻線Ns3を設けるとともに、第3の巻線Ns3に誘起された誘起電圧を直流化する第3の整流平滑回路(第3の直流化手段)をさらに設けて、出力選択用コネクタ接続部4は、第1の整流平滑回路の出力電圧と、第1の整流平滑回路の出力電圧と第2の整流平滑回路の出力電圧との和電圧からなる出力電圧と、第1の整流平滑回路の出力電圧と第2の整流平滑回路の出力電圧と第3の整流平滑回路の出力電圧との和電圧からなる出力電圧とを複数の出力として選択的に出力可能としてもよい。このとき、出力電圧センス抵抗の接続状態は3つの異なる出力電圧に対応して3つの状態に切替えられる。
【符号の説明】
【0075】
1、10、20、30・・・直流電源、2・・・整流平滑回路(直流化回路)、3・・・過電圧検出回路、4・・・出力選択用コネクタ接続部(出力電圧選択部)、5・・・出力電圧制御回路、14・・・出力選択用スイッチ部、21・・・電源用補助巻線。