(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】トンネル掘削機
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
E21D9/06 302J
(21)【出願番号】P 2020099373
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】516308364
【氏名又は名称】JIMテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大林 博彦
(72)【発明者】
【氏名】中野 聡
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-116591(JP,U)
【文献】実公昭49-000827(JP,Y1)
【文献】特開平08-135374(JP,A)
【文献】米国特許第06431653(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00-9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の掘削機本体と、
前記掘削機本体の内周面に沿って間隔を空けて設けられている複数のシールドジャッキと、
前記掘削機本体の内周面に沿って設けられており、前記シールドジャッキがそれぞれ挿通される複数の第1貫通孔を有し、前記第1貫通孔を傾動中心として前記掘削機本体の軸方向に対して傾動可能に前記シールドジャッキを支持するリングガーダと、
前記シールドジャッキの前端部と当接する当接面を有し、前記掘削機本体の推力を支持する推力支持部材と、
前記シールドジャッキの前端部を前記当接面に沿って前記掘削機本体の周方向に移動させることによって、前記シールドジャッキを傾動させる傾動アクチュエータと、
を備える、
トンネル掘削機。
【請求項2】
前記掘削機本体の径方向への前記シールドジャッキの前端部の移動を制限し、前記シールドジャッキの前端部の前記周方向への移動を案内する案内部を備える、
請求項1に記載のトンネル掘削機。
【請求項3】
前記シールドジャッキの前記軸方向への移動を制限する係止部を備える、
請求項1または2に記載のトンネル掘削機。
【請求項4】
前記シールドジャッキの前端部は、前記シールドジャッキの他の部分に対して前記掘削機本体の径方向の軸を中心として回動可能に設けられる、
請求項1~3のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項5】
2以上の前記シールドジャッキの前端部の前記周方向への移動を連動させる連動機構を備える、
請求項1~4のいずれか一項に記載のトンネル掘削機。
【請求項6】
前記連動機構は、前記リングガーダよりも前記軸方向の前方に前記掘削機本体の内周面に沿って配置され、前記周方向に回動可能に設けられる環状部材を含み、
前記環状部材は、前記シールドジャッキがそれぞれ挿通される複数の第2貫通孔を有する、
請求項5に記載のトンネル掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘削機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、トンネル掘削機は、カッタヘッドを回転させ、カッタヘッドの前面に装着された複数のカッタが前方の地盤に切羽を形成することにより、トンネルを掘削する。カッタヘッドは筒状の掘削機本体の前端部に取り付けられており、掘削機本体が前方に推進されることによって、トンネルが掘削される。掘削機本体内には、複数のシールドジャッキが、掘削機本体の内周面に軸方向に延びるように設けられ、リングガーダに挿通された状態で支持されている。シールドジャッキにより後方のセグメントが押され、掘削機本体に設けられた推力支持部材にシールドジャッキの前端部から推力が伝達されることによって、掘削機本体が推進される。
【0003】
トンネルの掘削中には、回転するカッタヘッドに対して地盤からの反力が作用することによって、トンネル掘削機が掘削機本体の軸方向を中心として回動するローリングと呼ばれる現象が生じる。そこで、ローリングを修正するために、シールドジャッキを掘削機本体の軸方向に対して傾動させる技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、シールドジャッキを傾動させる傾動アクチュエータ(具体的には、シールドジャッキとは異なるジャッキ)をリングガーダの近傍に設置し、傾動アクチュエータによって、シールドジャッキの前端部を傾動中心として当該シールドジャッキを掘削機本体の軸方向に対して傾動可能な構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、シールドジャッキが挿通されるリングガーダの周囲には、掘削機本体の後端部から注入されるテールシール材(例えば、テールブラシのグリス)や裏込材の配管、および、エレクタ装置の支持部材などを設置するスペースを確保する必要がある。上記ローリングを修正するためのシールドジャッキの傾動機構がリングガーダの周囲に設置されると、リングガーダの周囲に十分なスペースを確保することが困難となる場合があった。例えば、上記特許文献1に開示されている技術では、シールドジャッキを傾動させる傾動アクチュエータ(具体的には、シールドジャッキとは異なるジャッキ)がリングガーダの近傍に設置されているため、リングガーダの周囲に十分なスペースを確保できないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、このような課題に鑑み、リングガーダの周囲のスペースを確保しつつ、ローリングを修正することが可能なトンネル掘削機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のトンネル掘削機は、筒状の掘削機本体と、掘削機本体の内周面に沿って間隔を空けて設けられている複数のシールドジャッキと、掘削機本体の内周面に沿って設けられており、シールドジャッキがそれぞれ挿通される複数の第1貫通孔を有し、第1貫通孔を傾動中心として掘削機本体の軸方向に対して傾動可能にシールドジャッキを支持するリングガーダと、シールドジャッキの前端部と当接する当接面を有し、掘削機本体の推力を支持する推力支持部材と、シールドジャッキの前端部を当接面に沿って掘削機本体の周方向に移動させることによって、シールドジャッキを傾動させる傾動アクチュエータと、を備える。
【0009】
掘削機本体の径方向へのシールドジャッキの前端部の移動を制限し、シールドジャッキの前端部の周方向への移動を案内する案内部を備えてもよい。
【0010】
シールドジャッキの軸方向への移動を制限する係止部を備えてもよい。
【0011】
シールドジャッキの前端部は、シールドジャッキの他の部分に対して掘削機本体の径方向の軸を中心として回動可能に設けられてもよい。
【0012】
2以上のシールドジャッキの前端部の周方向への移動を連動させる連動機構を備えてもよい。
【0013】
連動機構は、リングガーダよりも軸方向の前方に掘削機本体の内周面に沿って配置され、周方向に回動可能に設けられる環状部材を含み、環状部材は、シールドジャッキがそれぞれ挿通される複数の第2貫通孔を有してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、リングガーダの周囲のスペースを確保しつつ、ローリングを修正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るトンネル掘削機の全体構成を示す断面模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るリングガーダを示す背面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るシールドジャッキが軸方向と平行な状態を示す上面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るシールドジャッキが軸方向に対して傾斜した状態を示す上面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係るトンネル掘削機におけるシールドジャッキおよびその周囲の構成を示す側面図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係るトンネル掘削機におけるシールドジャッキおよびその周囲の構成を示す上面図である。
【
図7】本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係るトンネル掘削機におけるシールドジャッキおよびその周囲の構成を示す上面図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係るトンネル掘削機におけるシールドジャッキおよびその周囲の構成を示す上面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態の変形例に係るトンネル掘削機におけるシールドジャッキおよびその周囲の構成を示す上面図である。
【
図10】
図9に示す変形例に係る環状部材を示す背面図である。
【
図11】
図9に示す変形例に係るトンネル掘削機におけるシールドジャッキおよびその周囲の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0017】
<第1の実施形態>
図1~
図7を参照して、本発明の第1の実施形態に係るトンネル掘削機1について説明する。
【0018】
まず、
図1を参照して、トンネル掘削機1の全体構成について説明する。
図1は、トンネル掘削機1の全体構成を示す断面模式図である。なお、
図1中の矢印A1は、トンネル掘削機1の進行方向を示す。以下、トンネル掘削機1の進行方向を前方向とも呼び、進行方向に対して逆方向を後方向とも呼ぶ。
【0019】
トンネル掘削機1は、地盤を掘削可能な土圧式(泥土圧式を含む。)のシールド掘削機である。
図1に示すように、トンネル掘削機1は、掘削機本体10を備える。掘削機本体10は、筒状(具体的には、円筒状)である。掘削機本体10の軸方向は、トンネル掘削機1の進行方向と一致する。以下では、掘削機本体10の軸方向を単に軸方向とも呼び、掘削機本体10の径方向を単に径方向とも呼び、掘削機本体10の周方向を単に周方向とも呼ぶ。
【0020】
掘削機本体10の前端には、カッタヘッド11が設けられる。カッタヘッド11は、略円盤状の回転体である。カッタヘッド11の中心部には、カッタ回転軸12の前端が嵌入されており、カッタヘッド11は、カッタ回転軸12を中心に回転可能に軸支されている。
【0021】
カッタヘッド11は、外周リング11aと、内周リング11bと、カッタスポーク11cと、フィッシュテールカッタ11dと、カッタビット11eなどを有する。このうち、外周リング11aは、カッタヘッド11の外周部を形成しており、内周リング11bは、外周リング11aよりも径方向内側に配置されている。また、複数のカッタスポーク11cは、カッタヘッド11の前面において、カッタ回転軸12を中心として放射状に配置されている。カッタヘッド11の前面の中心部には、フィッシュテールカッタ11dが着脱可能に装着されている。さらに、カッタスポーク11cの前面には、多数のカッタビット11eが着脱可能に装着されている。
【0022】
そして、カッタヘッド11には、上記外周リング11a、内周リング11bおよびカッタスポーク11cの相互の間に、複数の開口部が形成されている。当該開口部は、カッタヘッド11によって地盤(切羽)を掘削した際に発生する掘削土砂を、掘削機本体10内(後述するチャンバ17内)に取り込むための掘削土砂取込口として機能する。
【0023】
掘削機本体10におけるカッタヘッド11よりも後方には、隔壁13が配置されている。隔壁13は、トンネル延伸方向に対して垂直に配置される円板状の壁体であり、隔壁13の外周縁は掘削機本体10の内周面10aに取り付けられる。カッタヘッド11と隔壁13は、軸方向(トンネル延伸方向)に所定間隔を空けて配置される。隔壁13の後方側には、トンネル掘削機1の各種設備が配置されており、隔壁13は、切羽で生じる掘削土砂から当該設備を隔離する。隔壁13の下部には、掘削土砂を排出するための開口部である排出口13aが形成されている。
【0024】
隔壁13の中心部には、カッタ回転軸12が回転可能に支持されている。さらに、隔壁13には、リング状の回転リング14が、カッタ回転軸12を中心として回転可能に支持されている。回転リング14の前部には、複数の連結ビーム15が周方向に所定の間隔で設けられている。複数の連結ビーム15は、カッタヘッド11と回転リング14を連結する。連結ビーム15の前端は、カッタヘッド11の内周リング11bとカッタスポーク11cとの接続部に連結されている。一方、回転リング14の後部には、外歯式のリングギヤ14aが設けられている。さらに、隔壁13の後方にはカッタ旋回用モータ16が設けられている。このカッタ旋回用モータ16の駆動ギヤ16aは、回転リング14のリングギヤ14aと噛み合っている。
【0025】
カッタ旋回用モータ16を駆動させることにより、その駆動ギヤ16aの回転がリングギヤ14aから回転リング14および連結ビーム15に伝達される。これにより、カッタヘッド11を、カッタ回転軸12を中心として回転させることができる。この結果、回転するカッタヘッド11の前面を地盤(切羽)に押し付けて、地盤を掘削することができる。
【0026】
カッタヘッド11と隔壁13との間には、チャンバ17が画成されている。チャンバ17は、カッタヘッド11の後面と、隔壁13の前面と、掘削機本体10の内周面10aとにより区画された、略円柱状の空間である。カッタヘッド11による地盤掘削に伴って発生する掘削土砂は、カッタヘッド11に貫通形成された上記開口部(掘削土砂取込口)を通じて、チャンバ17内に取り込まれる。チャンバ17は、掘削土砂を一時的に蓄えるための空間(室)として機能する。チャンバ17内に取り込まれた掘削土砂は、隔壁13の下部にある排出口13aを通じて、チャンバ17からスクリューコンベヤ18内に排出される。
【0027】
スクリューコンベヤ18は、掘削機本体10内における隔壁13の後方側に設けられる。スクリューコンベヤ18は、掘削機本体10内において、後方側に向かうにつれて上方に傾斜して配置される。スクリューコンベヤ18の前端の開口部は、隔壁13の排出口13aに接続されている。これにより、スクリューコンベヤ18の内部空間は、隔壁13の排出口13aを通じてチャンバ17と連通する。スクリューコンベヤ18内には、螺旋状の羽根を備えたスクリュー状の回転体であるスクリュー羽根18aが設けられている。スクリュー羽根18aを回転駆動させることで、チャンバ17内に蓄えられた掘削土砂をスクリューコンベヤ18内に取り込んで、掘削機本体10の後方に向けて運搬し、排出することができる。
【0028】
また、掘削機本体10の隔壁13よりも後方側には、エレクタ装置(図示省略)が設けられる。エレクタ装置は、掘削機本体10の軸方向、径方向および周方向(すなわち、トンネル延伸方向、トンネル径方向およびトンネル周方向)に移動可能に設けられる。エレクタ装置は、覆工部材であるセグメントSを把持可能であり、把持したセグメントSをトンネルTの内壁面(坑壁)に沿って組み立てる。
【0029】
セグメントSは、掘削されたトンネルTの内壁面に沿った湾曲形状を有する環片である。上記エレクタ装置を駆動させることにより、複数のセグメントSを周方向に沿ってリング状に組み立てることができる。これにより、トンネルTの内壁面が複数のセグメントSにより覆工され、内壁面の崩落を防止できる。
【0030】
さらに、掘削機本体10内には、複数のシールドジャッキ19が、周方向に相互に間隔を空けて設けられている。各シールドジャッキ19は、内周面10aに沿って、トンネル延伸方向に延びるように設けられる。シールドジャッキ19は、例えば、油圧ジャッキであるが、トンネル掘削機1の推力を発生可能であれば、他の種類のジャッキ、アクチュエータ等であってもよい。掘削機本体10の内周面10aには、リングガーダ20が取り付けられており、各シールドジャッキ19は、リングガーダ20と後述する推力支持部材21により支持されている。
【0031】
リングガーダ20は、略円環状の金属製の部材であり、内周面10aに沿って設けられている。リングガーダ20の外周縁は、掘削機本体10の内周面10aに取り付けられる。リングガーダ20には、複数の貫通孔20aが、周方向に相互に間隔を空けて形成されている。各シールドジャッキ19は、各貫通孔20aにそれぞれ挿通される。貫通孔20aは、本発明に係る第1貫通孔の一例に相当する。各シールドジャッキ19の後端部側が、シールドジャッキ19の貫通孔20aに当接している。
【0032】
シールドジャッキ19は、基本的に、掘削機本体10の軸方向に対して平行に伸びるように配置されている。ただし、後述するように、ローリング修正時には、シールドジャッキ19は、貫通孔20aを傾動中心として、軸方向に対して傾動可能である。なお、傾動中心は、シールドジャッキ19を傾動させるときのシールドジャッキ19の回動中心となる点を意味する。本実施形態では、貫通孔20aの中心点が傾動中心Xに相当する(後述する
図3、
図4を参照)。
【0033】
また、掘削機本体10内には、シールドジャッキ19の前端部と当接する当接面21aを有し、掘削機本体10の推力を支持する推力支持部材21が設けられている。推力支持部材21は、掘削機本体10の推力を受け止め、掘削機本体10に伝達する。推力支持部材21は、略円環状の金属製の部材であり、リングガーダ20より前方側において、内周面10aに沿って設けられている。推力支持部材21の外周縁は、掘削機本体10の内周面10aに取り付けられる。当接面21aは、例えば、平面であり、特にトンネル掘削機1の進行方向(軸方向)と直交する平面であることが好ましい。
【0034】
シールドジャッキ19の後端には、伸縮可能な駆動ロッド19aが設けられている。駆動ロッド19aの先端は、既設のセグメントSの前端面と対向している。シールドジャッキ19の駆動ロッド19aを、後方に向けて伸長し、セグメントSを押圧することにより、推力支持部材21の当接面21aを介して、掘削機本体10に推進反力(つまり、推力)を付与することができる。すなわち、シールドジャッキ19がセグメントSを押圧したときに発生する推力によって、掘削機本体10は前進可能である。このように、トンネル掘削機1は、シールドジャッキ19の前端部から掘削機本体10に推力が伝達されるタイプのトンネル掘削機である。ただし、本明細書では中折れ機能を有しないトンネル掘削機1を説明するが、本発明に係るトンネル掘削機は、中折れ機能を有し、かつ、前胴が押されて推進するタイプのトンネル掘削機であってもよく、中折れ機能を有し、かつ、後胴が押されて推進するタイプのトンネル掘削機であってもよい。
【0035】
トンネルの掘削中には、トンネル掘削機1に対して地盤からの反力が作用することによって、トンネル掘削機1が軸方向を中心として回動するローリングが生じる。トンネル掘削機1では、ローリングを修正するために、シールドジャッキ19が掘削機本体10の軸方向に対して傾動可能となっている。
図1では、シールドジャッキ19およびその周囲の構成が簡略化して示されており、上記では、これらの構成の概略を説明した。トンネル掘削機1では、シールドジャッキ19およびその周囲の構成を工夫することによって、リングガーダ20の周囲のスペースを確保しつつ、ローリングを修正することが可能となる。
【0036】
以下、
図2~
図5を参照して、本実施形態に係るトンネル掘削機1におけるシールドジャッキ19およびその周囲の構成について説明する。
【0037】
図2は、リングガーダ20を示す背面図である。具体的には、
図2は、リングガーダ20を
図1中の矢印A1の方向(つまり、トンネル掘削機1の進行方向)から見た矢視図である。
【0038】
図3は、シールドジャッキ19が軸方向と平行な状態を示し、
図4は、シールドジャッキ19が軸方向に対して傾斜した状態を示す上面図である。具体的には、
図3および
図4は、シールドジャッキ19およびその周囲の構成を
図1、
図2中の矢印A2の方向(つまり、径方向内向きの方向)から見た矢視図である。
【0039】
図5は、トンネル掘削機1におけるシールドジャッキ19およびその周囲の構成を示す側面図である。具体的には、
図5は、トンネル掘削機1におけるシールドジャッキ19およびその周囲の構成を
図2、
図3、
図4中の矢印A3の方向(つまり、周方向)から見た矢視図である。
【0040】
図2~
図5に示すように、リングガーダ20は、複数の貫通孔20aが形成された略円環状のリングガーダ本体201と、各貫通孔20aに対応する位置にそれぞれ取り付けられる複数の保護部材202とを有する。なお、
図2では、貫通孔20aの数(つまり、シールドジャッキ19の数)が20個である例が示されているが、貫通孔20aの数は20個以外であってもよい。
【0041】
リングガーダ本体201の外周縁は、掘削機本体10の内周面10aに取り付けられる。リングガーダ本体201には、複数の貫通孔201aが、周方向に間隔を空けて設けられている。複数の貫通孔201aは、例えば、周方向に等間隔に設けられている。保護部材202は、シールドジャッキ19の外周部とリングガーダ本体201との接触を抑制し、シールドジャッキ19を保護するための部材である。各保護部材202には貫通孔202aが設けられており、各保護部材202は、リングガーダ本体201の各貫通孔201aに対応する位置にそれぞれ設けられる。貫通孔201aと貫通孔202aとが同軸上で重畳するように、保護部材202がリングガーダ本体201に取り付けられる。保護部材202は、例えば、ボルト締結によってリングガーダ本体201に取り付けられる。このような貫通孔201aおよび貫通孔202aは、リングガーダ20の貫通孔20aを構成する。
【0042】
図3および
図4に示すように、貫通孔20a(貫通孔201aおよび貫通孔202a)にシールドジャッキ19を挿通したときに、シールドジャッキ19の外周部は、保護部材202の内周縁に当接し、リングガーダ本体201に接触しない。保護部材202は、金属製のシールドジャッキ19と金属製のリングガーダ本体201とが直接接触して摩耗、破損等することを抑制できる材質(例えば、ゴム等の樹脂)によって形成される。後述するように、シールドジャッキ19は、リングガーダ20の貫通孔20aに挿通されて、リングガーダ20により支持されつつ、貫通孔20aを傾動中心Xとして傾動可能である。このような傾動時であっても、シールドジャッキ19とリングガーダ本体201の間に保護部材202が存在するので、両者の直接接触による摩耗、破損等を抑制できるとともに、シールドジャッキ19の傾動動作が円滑になる。
【0043】
図3および
図4に示すように、シールドジャッキ19は、駆動ロッド19aと、ジャッキ本体19bと、回動部材19cとを有する。ジャッキ本体19bは、略円筒状のシリンダである。ジャッキ本体19bの後部側に駆動ロッド19aが配置され、ジャッキ本体19bの前部側に回動部材19cが配置される。駆動ロッド19aは、ジャッキ本体19bに対して伸縮可能に収容される。回動部材19cは、シールドジャッキ19の前端部に相当し、推力支持部材21の当接面21aと当接する。ジャッキ本体19bの前端には半球状の連結部19dが形成されており、連結部19dがヒンジピン19eによって回動部材19cと接続されている。具体的には、回動部材19cの後部には、半球状の穴が形成されており、当該穴に連結部19dが嵌め込まれている。ヒンジピン19eは、回動部材19cおよび連結部19dを掘削機本体10の径方向(
図3および
図4における紙面に垂直な方向)に貫通してセットされており、掘削機本体10の径方向に延びる回動軸となる。それにより、回動部材19cがシールドジャッキ19の他の部分に対してヒンジピン19e(径方向の回動軸)を中心として回動可能となる。
【0044】
ここで、
図3および
図4に示すように、掘削機本体10内の推力支持部材21付近には、シールドジャッキ19を傾動させるための傾動ジャッキ22が設けられている。傾動ジャッキ22は、シールドジャッキ19の回動部材19cを推力支持部材21の当接面21aに沿って掘削機本体10の周方向(
図3および
図4における上下方向)に移動させる。傾動ジャッキ22は、例えば、油圧ジャッキである。なお、傾動ジャッキ22は、本発明に係る傾動アクチュエータの一例に相当する。
【0045】
具体的には、傾動ジャッキ22は、推力支持部材21の当接面21aに取り付けられており、掘削機本体10の周方向に沿って延びるように配置される。傾動ジャッキ22の先端には、伸縮可能な駆動ロッド22aが設けられている。駆動ロッド22aの先端は、例えば、ボルト締結などによって、シールドジャッキ19の回動部材19cに取り付けられている。
図4に示すように、傾動ジャッキ22の駆動ロッド22aを、掘削機本体10の周方向に伸長し、回動部材19cを当接面21aに沿って周方向に移動させることにより、シールドジャッキ19を傾動させることができる。本実施形態に係るトンネル掘削機1では、例えば、各シールドジャッキ19に対して1つの傾動ジャッキ22が設けられる。
【0046】
なお、シールドジャッキ19を傾動させるとき、回動部材19cは、掘削機本体10の周方向に沿って移動すればよく、この回動部材19cの周方向に沿った移動の態様は種々の態様を含み得る。例えば、回動部材19cは、掘削機本体10の周方向に沿った接線方向に直線的に移動してもよく、あるいは、掘削機本体10の周方向に沿って円弧状の軌跡で移動してもよい。また、シールドジャッキ19を傾動させるとき、回動部材19cは、上記の周方向に沿った移動に加えて、掘削機本体10の軸方向へ若干移動してもよい。
【0047】
シールドジャッキ19の傾動量(つまり、シールドジャッキ19を傾動させるときの回動部材19cの移動量)を段階的に調整可能とする観点では、傾動ジャッキ22を中間ストロークの状態に維持することができることが好ましい。傾動ジャッキ22を中間ストロークの状態に維持したい場合には、傾動ジャッキ22のストローク量を検出するためセンサ(例えば、駆動ロッド22aの位置を検出する位置センサ)を利用して傾動ジャッキ22のストローク量を制御してもよい。
【0048】
あるいは、傾動ジャッキ22が中間ストロークの状態に維持されるように、駆動ロッド22aまたは回動部材19cを移動しないように固定するストッパが用いられてもよい。ストッパは、例えば、傾動ジャッキ22を中間ストロークの状態に維持する時に掘削機本体10に取り付けられ、それ以外の時に掘削機本体10から取り外されてもよい(つまり、着脱可能であってもよい)。例えば、
図4に示すように、回動部材19cにおける傾動ジャッキ22に対して逆側と当接するように、ストッパとしてのピンP1を設ける(例えば、推力支持部材21の当接面21aに設けられる穴に挿入する)ことによって、傾動ジャッキ22を伸びないようにすることができる。また、例えば、
図4に示すように、回動部材19cにおける傾動ジャッキ22側と当接するように、ストッパとしてのピンP2を設ける(例えば、推力支持部材21の当接面21aに設けられる穴に挿入する)ことによって、傾動ジャッキ22を縮まないようにすることができる。
【0049】
本実施形態に係るトンネル掘削機1では、カッタヘッド11(
図1を参照)は、進行方向(
図1中の矢印A1の方向)を向いて時計回りに(
図2、
図3、
図4中では矢印A3の方向に)回転する。ゆえに、トンネルの掘削中には、トンネル掘削機1に対して地盤からの反力が、進行方向を向いて反時計回りに(
図2、
図3、
図4中では矢印A3に対して逆方向に)作用する。ここで、
図4に示すように、進行方向を向いて時計回りに(つまり、矢印A3の方向に)回動部材19cを移動させてシールドジャッキ19を傾動させる。これによって、シールドジャッキ19により掘削機本体10に付与される推力を、進行方向(軸方向)の成分である推力と、周方向(進行方向を向いて時計回りの方向)の成分であるローリング修正力とに分けることができる。ゆえに、シールドジャッキ19により掘削機本体10に付与されるローリング修正力によって、地盤からトンネル掘削機1に作用する周方向の反力を打ち消すことができる。よって、ローリングを修正することができる。
【0050】
なお、カッタヘッド11が進行方向を向いて反時計回りに回転する場合、トンネル掘削機1に対して地盤からの反力が、進行方向を向いて時計回りに作用する。ゆえに、この場合には、進行方向を向いて反時計回りに回動部材19cを移動させることができるように傾動ジャッキ22が設けられる。また、カッタヘッド11の回転方向が進行方向を向いて時計回りの方向と反時計回りの方向とで切り替えられる場合、トンネル掘削機1に対して地盤からの反力が作用する方向は、進行方向を向いて反時計回りの方向と時計回りの方向とで切り替わる。ゆえに、この場合には、進行方向を向いて時計回りの方向と反時計回りの方向のいずれの方向にも回動部材19cを移動させることができるように傾動ジャッキ22が設けられる。
【0051】
さらに、本実施形態に係るトンネル掘削機1では、傾動ジャッキ22を用いてシールドジャッキ19の前端部(具体的には、回動部材19c)が当接面21aに沿って移動することによって、シールドジャッキ19が傾動する。ゆえに、シールドジャッキ19を傾動させるための機構(具体的には、傾動ジャッキ22およびこれに付設される部材)をリングガーダ20から進行方向側に離れた位置(具体的には、推力支持部材21の近傍)に設置することができる。よって、リングガーダ20の周囲のスペースを確保しつつ、ローリングを修正することが可能となる。また、シールドジャッキ19の傾動中心Xが、貫通孔20aに配置されており、セグメントSの押圧部分から近いので(つまり、
図4中の距離L1が短いので)、セグメントSを押圧する駆動ロッド19aの先端のローリング修正時における移動量を小さくする(つまり、
図4中の距離L2を短くする)ことができる。さらに、シールドジャッキ19の傾動中心Xがリングガーダ20の貫通孔20aに配置されており、リングガーダ20の周囲において、シールドジャッキ19のローリング修正時における移動量を小さくすることができるので、リングガーダ20の周囲のスペースのうち、シールドジャッキ19の近傍のスペースを有効的に利用することができる。
【0052】
また、本実施形態に係るトンネル掘削機1では、セグメントSに作用させる推力の反力は、シールドジャッキ19の前端部に設けられた回動部材19cから推力支持部材21の当接面21aを介して掘削機本体10に伝達される。ここで、回動部材19cの前面が推力支持部材21の当接面21aに対して平面で接しているので、例えば、後述する
図6に示すトンネル掘削機1Aのように円弧形状の部分で接する場合と比べて、ローリング修正のための回動部材19cの移動を実現しながら、掘削機本体10への推力の伝達を円滑化することができる。
【0053】
さらに、
図5に示すように、本実施形態に係るトンネル掘削機1では、回動部材19cを安定的に移動させるために、ガイドレール23が設けられている。なお、
図3および
図4では、理解を容易にするために、ガイドレール23が、二点鎖線によって簡略化して示されている。
【0054】
ガイドレール23は、一対の案内部23a、23aと、一対の係止部23b、23bとを有する。案内部23a、23aは、掘削機本体10の径方向(
図5における上下方向)への回動部材19cの移動を制限し、回動部材19cの周方向への移動を案内する。係止部23b、23bは、シールドジャッキ19の軸方向への移動を制限する。ここで、回動部材19cの前端部における径方向両側には、径方向外側に張り出す張出部19f、19fが形成されている。
【0055】
案内部23aは、推力支持部材21の当接面21aから後方に突出している。案内部23a、23aは、回動部材19cの前端部を挟んで、径方向に間隔を空けて設けられる。各案内部23aは、各張出部19fと対向している。一対の案内部23a、23aの間隔は、回動部材19cの前端部(つまり、張出部19f、19fが形成されている部分)の径方向の幅と略一致している。各案内部23aは、周方向(具体的には、
図5における紙面に垂直な方向)に沿って延びている。案内部23a、23aによって、回動部材19cの径方向への移動が制限され、回動部材19cの周方向への移動が案内される。
【0056】
係止部23bは、案内部23aの後端から他方の案内部23aに向かって張り出している。つまり、一対の係止部23b、23bは、互いに近づく方向に、各案内部23aから張り出している。係止部23bと当接面21aとの距離は、回動部材19cの張出部19fの軸方向の長さと略一致している。係止部23b、23bによって、回動部材19cの張出部19fが係止されるため、シールドジャッキ19の軸方向への移動が制限される。
【0057】
本実施形態では、シールドジャッキ19を傾動させる傾動アクチュエータとして傾動ジャッキ22が用いられるが、後述するように、傾動アクチュエータとして他のアクチュエータが用いられてもよい。ここで、用いられる傾動アクチュエータによっては、回動部材19cの移動方向の安定性を十分には確保しにくい場合がある。そのような場合に、案内部23a、23aの機能(つまり、回動部材19cの周方向への移動を案内する機能)は、特に有効となる。また、シールドジャッキ19の傾動動作は、シールドジャッキ19の駆動ロッド19aを縮ませてセグメントSの押圧を停止させた状態で行われることが想定される。この際、シールドジャッキ19は軸方向(具体的には、後方)に動きやすい状態となる。ゆえに、シールドジャッキ19を傾動させる際に、シールドジャッキ19の軸方向への不要な動きを抑制するために、係止部23b、23bの機能(つまり、シールドジャッキ19の軸方向への移動を制限する機能)は、特に有効となる。
【0058】
上記では、ジャッキ本体19bと当接面21aとの間に回動部材19cが介在する例を説明したが、ジャッキ本体19bの前端部が当接面21aと直接当接してもよい。以下、
図6および
図7を参照して、上記第1の実施形態の変形例として、シールドジャッキ19と推力支持部材21との当接部分の第1の変形例および第2の変形例を説明する。
【0059】
図6は、第1の変形例に係るトンネル掘削機1Aにおけるシールドジャッキ19Aおよびその周囲の構成を示す上面図である。
【0060】
トンネル掘削機1Aのシールドジャッキ19Aは、上記トンネル掘削機1のシールドジャッキ19における回動部材19cに相当する構成を有しない。トンネル掘削機1Aでは、シールドジャッキ19Aのジャッキ本体19bの前端面19gが、推力支持部材21の当接面21aと当接する。傾動ジャッキ22の駆動ロッド22aの先端は、例えば、ボルト締結などによって、シールドジャッキ19Aの前端部(具体的には、前端面19gの近傍の部分)に取り付けられている。
図6において二点鎖線で示すように、傾動ジャッキ22の駆動ロッド22aを、掘削機本体10の周方向に伸長し、シールドジャッキ19Aの前端部を当接面21aに沿って周方向に移動させることにより、シールドジャッキ19Aを傾動させることができる。
【0061】
ジャッキ本体19bの前端面19gは、
図6に示すように、径方向視において、進行方向(
図6における左方向)に突出した湾曲形状、例えば、円弧形状を有する。これにより、シールドジャッキ19Aの前端部が当接面21aに沿って周方向に移動する際に、前端面19gが当接面21aと常時接触している状態を維持することができる。ゆえに、シールドジャッキ19Aの前端部を安定的に移動させることができる。
【0062】
特に、前端面19gは、径方向視において、リングガーダ20の貫通孔20a(具体的には、貫通孔20aの中心点(
図6中の傾動中心X))を中心とする円弧形状を有することが好ましい。これにより、シールドジャッキ19Aが傾動する際に、前端面19gのうち当接面21aと接触する箇所から貫通孔20aまでの距離を一定にすることができる。ゆえに、シールドジャッキ19Aが傾動することに伴ってシールドジャッキ19Aが当該シールドジャッキ19Aの軸方向に移動することを抑制することができる。よって、シールドジャッキ19AとセグメントSとの距離が変化することを抑制することができるので、シールドジャッキ19Aの駆動ロッド19aがセグメントSを押圧することにより得られる掘削機本体10の推力を十分に確保することができる。
【0063】
さらに、
図6に示すように、トンネル掘削機1Aでは、掘削機本体10の径方向へのシールドジャッキ19Aの前端部の移動を制限し、シールドジャッキ19Aの前端部の周方向への移動を案内する案内部23a-1と、シールドジャッキ19Aの軸方向への移動を制限する係止部23b-1とが設けられている。
【0064】
案内部23a-1は、上述した案内部23aと同様に、推力支持部材21から後方に突出して一対設けられ、シールドジャッキ19Aの前端部を挟んで、径方向に間隔を空けて設けられる。各案内部23a-1は、周方向に沿って延びている。案内部23a-1によって、シールドジャッキ19Aの前端部の径方向への移動が制限され、シールドジャッキ19Aの前端部の周方向への移動が案内される。
【0065】
係止部23b-1は、環形状を有し、シールドジャッキ19Aのジャッキ本体19bに嵌合される。係止部23b-1は、ジャッキ本体19bにおけるリングガーダ20に対して前方の部分のうち、リングガーダ20の近傍に設けられる。係止部23b-1の外径は、リングガーダ20の貫通孔20aの内径よりも大きい。ゆえに、仮にシールドジャッキ19Aが当該シールドジャッキ19Aの軸方向(具体的には、後方)に移動した場合であっても、係止部23b-1がリングガーダ20に係止されるため、シールドジャッキ19Aの軸方向への移動が制限される。
【0066】
図7は、第2の変形例に係るトンネル掘削機1Bにおけるシールドジャッキ19Bおよびその周囲の構成を示す上面図である。
【0067】
トンネル掘削機1Bのシールドジャッキ19Bは、トンネル掘削機1のシールドジャッキ19における回動部材19cに相当する構成を有しない。また、トンネル掘削機1Bの推力支持部材21Bには、曲面の当接面21bが形成されている。トンネル掘削機1Bでは、シールドジャッキ19Bのジャッキ本体19bの前端面19hが、推力支持部材21Bの当接面21bと当接する。傾動ジャッキ22の駆動ロッド22aの先端は、例えば、ボルト締結などによって、シールドジャッキ19Bの前端部(具体的には、前端面19hの近傍の部分)に取り付けられている。
図7において二点鎖線で示すように、傾動ジャッキ22の駆動ロッド22aを、掘削機本体10の周方向に伸長し、シールドジャッキ19Bの前端部を当接面21bに沿って周方向に移動させることにより、シールドジャッキ19Bを傾動させることができる。
【0068】
当接面21bは、
図7に示すように、径方向視において、進行方向(
図7における左方向)に窪む円弧形状を有する。ジャッキ本体19bの前端面19hは、
図7に示すように、径方向視において、進行方向に突出した湾曲形状、例えば、円弧形状を有する。当接面21bとジャッキ本体19bの前端面19hの曲率は略一致しており、当接面21bとジャッキ本体19bの前端面19hとは、互いに面接触する。これにより、シールドジャッキ19Bの前端部が当接面21bに沿って周方向に移動する際に、前端面19hが当接面21bと常時面接触している状態を維持することができる。ゆえに、シールドジャッキ19Bの前端部をより安定的に移動させることができる。
【0069】
特に、当接面21bおよび前端面19hは、径方向視において、リングガーダ20の貫通孔20a(具体的には、貫通孔20aの中心点(
図7中の傾動中心X))を中心とする円弧形状を有することが好ましい。これにより、シールドジャッキ19Bが傾動する際に、前端面19hから貫通孔20aまでの距離を一定にすることができる。ゆえに、シールドジャッキ19Bが傾動することに伴ってシールドジャッキ19Bが当該シールドジャッキ19Bの軸方向に移動することを抑制することができる。よって、シールドジャッキ19BとセグメントSとの距離が変化することを抑制することができるので、シールドジャッキ19Bの駆動ロッド19aがセグメントSを押圧することにより得られる掘削機本体10の推力を十分に確保することができる。
【0070】
さらに、
図7に示すように、トンネル掘削機1Bでは、上述したトンネル掘削機1Aと同様に、掘削機本体10の径方向へのシールドジャッキ19Bの前端部の移動を制限し、シールドジャッキ19Bの前端部の周方向への移動を案内する案内部23a-2と、シールドジャッキ19Bの軸方向への移動を制限する係止部23b-2とが設けられている。案内部23a-2および係止部23b-2の構成は、上述したトンネル掘削機1Aの案内部23a-1および係止部23b-1の構成と同様であるので、詳細な説明については省略する。
【0071】
本発明の第1の実施形態に係るトンネル掘削機1の効果について説明する。
【0072】
本実施形態に係るトンネル掘削機1は、掘削機本体10と、複数のシールドジャッキ19と、リングガーダ20と、推力支持部材21と、傾動ジャッキ22とを備える。リングガーダ20は、貫通孔20a(第1貫通孔)を傾動中心Xとして掘削機本体10の軸方向に対して傾動可能にシールドジャッキ19を支持する。推力支持部材21は、シールドジャッキ19の前端部(具体的には、回動部材19c)と当接する当接面21aを有し、掘削機本体10の推力を支持する。傾動ジャッキ22は、シールドジャッキ19の前端部を当接面21aに沿って掘削機本体10の周方向に移動させることによって、シールドジャッキ19を傾動させる。それにより、シールドジャッキ19を傾動させるための機構をリングガーダ20の周囲に設置することなく、ローリングを修正することができる。つまり、リングガーダ20の周囲のスペースを確保しつつ、ローリングを修正することが可能となる。また、シールドジャッキ19の傾動中心Xが、貫通孔20aに配置されており、セグメントSの押圧部分から近いので、セグメントSを押圧する駆動ロッド19aの先端のローリング修正時における移動量を小さくすることができる。
【0073】
また、本実施形態に係るトンネル掘削機1は、掘削機本体10の径方向へのシールドジャッキ19の前端部(例えば、回動部材19c)の移動を制限し、シールドジャッキ19の前端部の周方向への移動を案内する案内部23a、23aを備える。これにより、シールドジャッキ19を傾動させる際に、シールドジャッキ19の前端部の周方向への移動を安定化することができる。また、上述したように、シールドジャッキ19の前端部の移動方向の安定性を十分には確保しにくい傾動アクチュエータが用いられる場合等に、案内部23a、23aの機能(つまり、回動部材19cの周方向への移動を案内する機能)は、特に有効となる。
【0074】
また、本実施形態に係るトンネル掘削機1は、シールドジャッキ19の軸方向への移動を制限する係止部23b、23bを備える。これにより、シールドジャッキ19を傾動させる際に、シールドジャッキ19の前端部の当接面21aに沿った移動をより安定化することができる。また、上述したように、シールドジャッキ19の傾動動作は、シールドジャッキ19の駆動ロッド19aを縮ませてセグメントSの押圧を停止させた状態で行われることが想定される。ゆえに、シールドジャッキ19を傾動させる際に、シールドジャッキ19の軸方向への不要な動きを抑制するために、係止部23b、23bの機能(つまり、シールドジャッキ19の軸方向への移動を制限する機能)は、特に有効となる。
【0075】
また、本実施形態に係るトンネル掘削機1では、シールドジャッキ19の前端部(具体的には、回動部材19c)は、シールドジャッキ19の他の部分に対して掘削機本体10の径方向の軸を中心として回動可能に設けられる。これにより、シールドジャッキ19を傾動させる際に、シールドジャッキ19の前端部以外の他の部分の姿勢が変化する一方で、姿勢の変化を伴わずにシールドジャッキ19の前端部を当接面に沿って平行移動させることができる。上述したように、セグメントSに作用させる推力の反力は、シールドジャッキ19の前端部に設けられた回動部材19cから推力支持部材21の当接面21aを介して掘削機本体10に伝達される。ここで、回動部材19cの前面が推力支持部材21の当接面21aに対して平面で接しているので、ローリング修正のための回動部材19cの移動を実現しながら、掘削機本体10への推力の伝達を円滑化することができる。また、シールドジャッキ19の前端部の移動を簡易な機構(例えば、ガイドレール23など)によって案内することができる。
【0076】
<第2の実施形態>
図8~
図11を参照して、本発明の第2の実施形態に係るトンネル掘削機2について説明する。
【0077】
まず、
図8を参照して、トンネル掘削機2の構成について説明する。
図8は、トンネル掘削機2におけるシールドジャッキ19およびその周囲の構成を示す上面図である。
【0078】
第2の実施形態に係るトンネル掘削機2では、上述した第1の実施形態に係るトンネル掘削機1と比較して、2以上のシールドジャッキ19の前端部(具体的には、回動部材19c)の周方向への移動を連動させる連動機構24を備える点が異なる。具体的には、連動機構24は、隣り合う2つのシールドジャッキ19の回動部材19cの周方向への移動を連動させる。
【0079】
図8に示すように、連動機構24は、隣り合う2つのシールドジャッキ19の回動部材19cを連結する連結部材25を含む。具体的には、連結部材25は、隣り合う2つの回動部材19cの間において、掘削機本体10の周方向に延びている。連結部材25は、例えば、ボルト締結などによって、各回動部材19cに取り付けられている。
【0080】
傾動ジャッキ22の駆動ロッド22aは、例えば、連結部材25によって連結される2つの回動部材19cのうちの一方の回動部材19cのみに取り付けられている。傾動ジャッキ22の駆動ロッド22aを、掘削機本体10の周方向に伸長することによって、連結部材25によって連結される2つの回動部材19cを当接面21aに沿って周方向に移動させることができる。よって、連結部材25により連結される2つのシールドジャッキ19を、1つの傾動ジャッキ22により連動させて傾動させることができる。したがって、上述した第1の実施形態に係るトンネル掘削機1では、各シールドジャッキ19に対して1つの傾動ジャッキ22を設ける必要があった一方で、第2の実施形態に係るトンネル掘削機2では、2つのシールドジャッキ19に対して1つの傾動ジャッキ22を設けることで足りる。ゆえに、傾動ジャッキ22の設置数を半減することができる。
【0081】
なお、
図8では、連結部材25が隣り合う2つのシールドジャッキ19の回動部材19cを連結する例が示されているが、連結部材25は隣り合う2つのシールドジャッキ19における他の部分を連結してもよい。例えば、連結部材25は、隣り合う2つのシールドジャッキ19のジャッキ本体19bを連結してもよい。
【0082】
また、
図8に示すように、トンネル掘削機2では、上述したトンネル掘削機1と同様に、ガイドレール23が設けられている。ゆえに、上述したトンネル掘削機1と同様に、回動部材19cの安定的な移動が実現される。
【0083】
上記では、隣り合う2つのシールドジャッキ19の回動部材19cの周方向への移動が連動している例を説明したが、回動部材19cの周方向への移動が連動するシールドジャッキ19の数は、3つ以上であってもよい。以下、
図9~
図11を参照して、本発明の第2の実施形態に対する変形例として、回動部材19cの周方向への移動が連動するシールドジャッキ19の数が第2の実施形態とは異なる例を説明する。
【0084】
図9は、変形例に係るトンネル掘削機2Aにおけるシールドジャッキ19およびその周囲の構成を示す上面図である。トンネル掘削機2Aの連動機構24Aは、環状部材26を含む。環状部材26は、複数のシールドジャッキ19の回動部材19cの周方向への移動を連動させるための部材である。
図10は、
図9に示す変形例に係る環状部材26を示す背面図である。
図11は、トンネル掘削機2Aにおけるシールドジャッキ19およびその周囲の構成を示す側面図である。
【0085】
図9~
図11に示すように、環状部材26は、略円環状であり、掘削機本体10の内周面10aに沿って設けられている。環状部材26は、周方向に回動可能に設けられる。具体的には、環状部材26の外周縁は、掘削機本体10の内周面10aに回動可能に支持されている。例えば、
図11の側面図に示すように、環状部材26の前後には、一対の位置決め部材27、27が、環状部材26を挟むように軸方向に間隔を空けて設けられている。各位置決め部材27は、例えば、略円環状であり、掘削機本体10の内周面10aに取り付けられている。各位置決め部材27は、掘削機本体10の内周面10aにおいて、周方向に間隔を空けて設けられる複数の部材であってもよい。位置決め部材27、27によって、環状部材26は、軸方向に位置決めされる。
【0086】
なお、トンネル掘削機2Aでは、環状部材26が回動部材19cの周方向への移動を案内する案内部としての機能を有する。また、トンネル掘削機2Aでは、シールドジャッキ19の軸方向への移動を制限する係止部23b-3が設けられている。係止部23b-3の構成は、上述したトンネル掘削機1Aの係止部23b-1、および、トンネル掘削機1Bの係止部23b-2の構成と同様であるので、詳細な説明については省略する。なお、
図9および
図11では、ジャッキ本体19bにおけるリングガーダ20に対して前方の部分のうち、リングガーダ20の近傍に係止部23b-3が設けられているが、係止部23b-3は、ジャッキ本体19bにおける環状部材26に対して前方の部分のうち、環状部材26の近傍に設けられていてもよい。
【0087】
環状部材26には、複数の貫通孔26aが、周方向に間隔を空けて設けられている。複数の貫通孔26aは、具体的には、周方向に等間隔に設けられている。各シールドジャッキ19は、各貫通孔26aにそれぞれ挿通される。貫通孔26aは、本発明に係る第2貫通孔の一例に相当する。環状部材26は、リングガーダ20よりも掘削機本体10の軸方向の前方に配置される。具体的には、ジャッキ本体19bの後端側がリングガーダ20の貫通孔20a内に配置される一方で、ジャッキ本体19bの前端側が環状部材26の貫通孔26a内に配置される。
【0088】
トンネル掘削機2Aでは、一部のシールドジャッキ19(例えば、
図9中の下側のシールドジャッキ19)のみに対して傾動ジャッキ22が設けられている。このように一部のシールドジャッキ19のみに対して設けられている傾動ジャッキ22の駆動ロッド22aを、掘削機本体10の周方向に伸長することによって、一部のシールドジャッキ19が傾動することに伴って環状部材26が回動する。これにより、環状部材26を介して他のシールドジャッキ19(例えば、
図9中の上側のシールドジャッキ19)に掘削機本体10の周方向の力が伝達される。よって、例えば、
図10に例示される環状部材26によれば、全てのシールドジャッキ19を連動させて傾動させることができる。したがって、トンネル掘削機2Aでは、全てのシールドジャッキ19に対して少なくとも1つの傾動ジャッキ22を設けることによって、全てのシールドジャッキ19を傾動させることができる。ゆえに、傾動ジャッキ22の数をより効果的に低減することができる。
【0089】
なお、上記では、全てのシールドジャッキ19の回動部材19cの周方向への移動が連動する例を説明したが、全てのシールドジャッキ19のうちの一部の複数のシールドジャッキ19の回動部材19cの周方向への移動が環状部材26によって連動してもよい。例えば、環状部材26の貫通孔26aのうちの一部の貫通孔26aが周方向に延びる長孔である場合、長孔に形成される貫通孔26aに挿通されるシールドジャッキ19は、環状部材26が回転しても傾動しない。なお、貫通孔26aのうち長孔に形成される貫通孔26aの数および配置は、特に限定されない。
【0090】
また、上記では、一部のシールドジャッキ19に傾動ジャッキ22が取り付けられており、傾動ジャッキ22によって当該一部のシールドジャッキ19が直接的に押圧される例を説明したが、傾動ジャッキ22は、環状部材26に取り付けられ、環状部材26を直接的に押圧するように設けられていてもよい。この場合、傾動する各シールドジャッキ19には、傾動ジャッキ22の押圧力が環状部材26を介して間接的に伝達される。
【0091】
本発明の第2の実施形態に係るトンネル掘削機2の効果について説明する。
【0092】
本実施形態に係るトンネル掘削機2は、2以上のシールドジャッキ19の前端部(具体的には、回動部材19c)の周方向の移動を連動させる連動機構24を備える。これにより、シールドジャッキ19ごとに傾動ジャッキ22を設けることなく、複数のシールドジャッキ19を連動させて傾動させることができる。ゆえに、傾動ジャッキ22の設置数を低減することができる。
【0093】
特に、
図9の変形例に係るトンネル掘削機2Aの連動機構24Aは、環状部材26を含む。環状部材26は、リングガーダ20よりも軸方向の前方に掘削機本体10の内周面10aに沿って配置され、周方向に回動可能に設けられる。環状部材26は、シールドジャッキ19がそれぞれ挿通される複数の貫通孔26a(第2貫通孔)を有する。これにより、1つの環状部材26により多数のシールドジャッキ19をまとめて周方向に移動させることができるので、傾動ジャッキ22の数をより効果的に低減することができる。
【0094】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0095】
例えば、上記では、土圧式(泥土圧式を含む。)のトンネル掘削機1を説明したが、本発明に係るトンネル掘削機は、泥水式であってもよい。
【0096】
また、例えば、上記では、シールドジャッキ19を傾動させる傾動アクチュエータとして傾動ジャッキ22が用いられる例を説明したが、傾動アクチュエータとして油圧ジャッキ以外の他のアクチュエータが用いられてもよい。例えば、傾動アクチュエータとして、電動式のアクチュエータが用いられてもよい。
【0097】
また、例えば、上記では、図面を参照して、トンネル掘削機1、1A、1B、2、2Aの各構成要素を説明したが、図面における各構成要素の寸法および位置関係はあくまでも例示に過ぎないので、トンネル掘削機1、1A、1B、2、2Aの各構成要素の寸法および位置関係は図面に示す例に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、トンネル掘削機に利用できる。
【符号の説明】
【0099】
1、1A、1B、2、2A トンネル掘削機
10 掘削機本体
10a 内周面
11 カッタヘッド
12 カッタ回転軸
13 隔壁
14 回転リング
15 連結ビーム
16 カッタ旋回用モータ
17 チャンバ
18 スクリューコンベヤ
19、19A、19B シールドジャッキ
19a 駆動ロッド
19b ジャッキ本体
19c 回動部材
19d 連結部
19e ヒンジピン
19f 張出部
19g 前端面
19h 前端面
20 リングガーダ
20a 貫通孔(第1貫通孔)
21、21B 推力支持部材
21a、21b 当接面
22 傾動ジャッキ
23 ガイドレール
23a、23a-1、23a-2 案内部
23b、23b-1、23b-2、23b-3 係止部
24、24A 連動機構
25 連結部材
26 環状部材
26a 貫通孔(第2貫通孔)
27 位置決め部材
L1、L2 距離
P1、P2 ピン
S セグメント
T トンネル
X 傾動中心