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  • 特許-花粉破裂抑制用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】花粉破裂抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/22 20060101AFI20230628BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230628BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 27/14 20060101ALI20230628BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
A61K33/22
A61K31/198
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/32
A61P27/14
A61P43/00 121
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020506565
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2019010036
(87)【国際公開番号】W WO2019176947
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2018045642
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】松原 唯
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】河畑 昌宏
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-071554(JP,A)
【文献】特開2002-080314(JP,A)
【文献】深川 和己 ほか,エピナスチン塩酸塩点眼液ベンザルコニウム塩化物(BAK)フリー製剤のスギ花粉の抗原溶出に対する影響,アレルギー・免疫,2016年01月19日,Vol.23, No.2,p.124-129, ISSN 1344-6932
【文献】参天製薬株式会社,アレジオン点眼液0.05%,2017年
【文献】野原修,スギ花粉からの主要抗原溶出に対する鼻汁の影響-In vitroにおける抗原溶出に影響を与える諸因子に,耳鼻咽喉科展望,1996年,Vol.39, No.5,p.483-495, ISSN 0386-9687
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 27/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.8~1.2%(w/v)のホウ酸又はその塩を有効成分として含有し、0.01~0.05%(w/v)のエデト酸又はその塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、0.3~1.0%(w/v)のポリビニルピロリドン、pH調節剤及び溶解剤を含有する花粉破裂抑制用組成物であって、pHが6.5~7.0である組成物(但し、オロパタジン及びその塩を含有しない)
【請求項2】
ホウ酸又はその塩がホウ酸又はホウ砂である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
エデト酸又はその塩がエデト酸ナトリウム水和物である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
さらに、等張化剤、安定剤及び粘稠剤からなる群から選択される少なくとも1つを含有する請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
浸透圧比が1.0~1.2である請求項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物が眼科組成物である請求項1~のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
0.8~1.2%(w/v)のホウ酸又はその塩、0.01~0.05%(w/v)のエデト酸又はその塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、0.3~1.0%(w/v)のポリビニルピロリドン、pH調節剤及び溶解剤を含有する花粉破裂抑制用組成物であって、pHが6.5~7.0である花粉破裂抑制用組成物(但し、オロパタジン及びその塩を含有しない)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩及びクロルヘキシジン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有する花粉破裂抑制用組成物及び花粉破裂の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
花粉症は、スギやヒノキなどの花粉が原因で、発症するアレルギー疾患であり、特に目に花粉が入った場合は、目のかゆみなどの不快な症状を長期間にわたり継続的に引き起こす。また、花粉症の罹患率は毎年増加傾向にあり、近年、社会的な問題となっている。
【0003】
花粉症の発症機序は、これまでの研究により解明されている。具体的には、スギやヒノキ等の花粉が、眼や鼻の粘膜に付着すると、花粉の外殻が破裂して、抗原タンパク質(アレルゲン物質)が放出され、粘膜内に侵入する。抗原タンパク質が粘膜内に入ると、特異的IgE抗体が産生され、抗体が粘膜の肥満細胞上の受容体に結合することで感作される。この状態で、抗原タンパク質が再度曝露されると、抗原抗体反応により、肥満細胞からヒスタミン等の化学伝達物質が放出されて、当該物質が受容体に結合することで、掻痒等のアレルギー症状が引き起こされる。したがって、花粉症の予防には、花粉との接触を避けることが一番有効であるが、日常生活において花粉との接触を完全に避けることは困難である。また、花粉は洗眼液や点眼液といった組成物と接触することで花粉破裂が誘発される場合もある。したがって、花粉と接触しても、花粉の外殻の破裂を抑制し、又は、花粉の外殻が破裂する前に花粉を洗い流すことができれば、花粉症の予防につながり、非常に有用である。
【0004】
花粉破裂を抑制する方法は、種々知られているが、例えば、特許文献1には、分子内に炭素数3~18のアルキレン部分を有する水溶性化合物及び上記アルキレン部分の水素原子の一部又は全部が水酸基、カルボキシル基、カルボキシエステル基、ホルミル基、アミド基、アミノ基、アルキルアミノ基及びアルコキシル基の1種又は2種以上で置換された水溶性化合物から選ばれる1種以上の化合物を含有すると共に、pHが3~8であり、且つ25℃における粘度が1.3cP以下である組成物の鼻腔内洗浄効果が開示されている。また、特許文献2には、アニオン性シリカ微粒子の表面をアルミナで被覆したシリカ微粒子及びアルミナ微粒子からなる群から選択される1種以上の微粒子を含有することを特徴とする繊維製品用の花粉破裂防止剤組成物が開示されている。さらに、特許文献3には、グリチルリチン酸及び/又はその塩、コンドロイチン硫酸及び/又はその塩、クロルフェニラミン及び/又はその塩、ε-アミノカプロン酸及び/又はその塩の4つの成分のうち少なくとも2つの成分を組み合わせることで、花粉破裂を抑制する、繊維製品や室内空間等に適用される組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1~3には、特許文献1~3に記載の組成物が、ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩、及びクロルヘキシジン又はその塩を有効成分として含有し、花粉破裂を抑制することについては、記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-109425号公報
【文献】特開2006-008943号公報
【文献】特開2018-002640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、医薬として許容される有効成分として配合可能な花粉破裂抑制用組成物及び花粉破裂の抑制方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、どのような成分を有効成分として含有する組成物が花粉破裂抑制効果を有するかを鋭意研究した。その結果、ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩及びクロルヘキシジン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有する組成物に優れた花粉破裂抑制効果があることを見出して本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は下記の通りである。
[1]ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩及びクロルヘキシジン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有する花粉破裂抑制用組成物。
[2]ホウ酸又はその塩を有効成分とする[1]に記載の組成物。
[3]ホウ酸又はその塩がホウ酸又はホウ砂である[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]さらに、エデト酸又はその塩を含有する[2]に記載の組成物。
[5]エデト酸又はその塩がエデト酸ナトリウム水和物である[1]又は[4]に記載の組成物。
[6]さらに、ポリビニルピロリドンを含有する[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]pHが7.0以下である[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]pHが6.5以上7.0以下である[7]に記載の組成物。
[9]さらに、等張化剤、安定剤、粘稠剤、pH調節剤及び溶解剤からなる群から選択される少なくとも1つを含有する[1]~[8]のいずれかに記載の組成物。
[10]浸透圧比が1.0~1.2である[9]に記載の組成物。
[11]組成物が眼科組成物である[1]~[10]のいずれかに記載の組成物。
[12]ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ポリビニルピロリドン、希塩酸、水酸化ナトリウム及び精製水のみからなる眼科組成物であって、pHが6.5~7.0であり、浸透圧比が1.0~1.2である眼科組成物。
[13]洗眼薬又は点眼薬である[11]又は[12]に記載の眼科組成物。
[14]洗眼薬が点眼型洗眼薬である[13]に記載の眼科組成物。
[15]花粉破裂の抑制方法であって、ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩、及びクロルヘキシジン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1つを含有する組成物を花粉と接触させることからなる、方法。
【0010】
本発明は、以下にも関する。
[16]ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩、及びクロルヘキシジン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有する花粉破裂抑制剤。
[17]ホウ酸又はその塩を有効成分とする[16]に記載の花粉破裂抑制剤。
[18]ホウ酸又はその塩がホウ酸又はホウ砂である[16]又は[17]に記載の花粉破裂抑制剤。
[19]さらに、エデト酸又はその塩を含有する[17]に記載の花粉破裂抑制剤。
[20]エデト酸又はその塩がエデト酸ナトリウム水和物である[16]又は[19]に記載の花粉破裂抑制剤。
[21]さらに、ポリビニルピロリドンを含有する[16]~[20]のいずれかに記載の花粉破裂抑制剤。
[22]pHが7.0以下である[16]~[21]のいずれかに記載の花粉破裂抑制剤。
[23]pHが6.5以上7.0以下である[22]に記載の花粉破裂抑制剤。
[24][16]~[23]のいずれかに記載の花粉破裂抑制剤を含有する眼科組成物。
[25]さらに、等張化剤、安定剤、粘稠剤、pH調節剤及び溶解剤からなる群から選択される少なくとも1つを含有する[24]に記載の眼科組成物。
[26]浸透圧比が1.0~1.2である[24]又は[25]に記載の眼科組成物。
[27]眼科組成物が洗眼薬又は点眼薬である[24]~[26]のいずれかに記載の眼科組成物。
[28]洗眼薬が点眼型洗眼薬である[27]に記載の眼科組成物。
【0011】
さらに、本発明は、以下にも関する。
[29]ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩及びクロルヘキシジン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有する組成物を花粉と接触させることを含む、花粉破裂の抑制方法。
[30]組成物がホウ酸又はその塩を有効成分とする、[29]に記載の方法。
[31]ホウ酸又はその塩がホウ酸又はホウ砂である、[29]又は[30]に記載の方法。
[32]組成物が、さらに、エデト酸又はその塩を含有する、[30]に記載の方法。
[33]エデト酸又はその塩がエデト酸ナトリウム水和物である、[29]又は[32]に記載の方法。
[34]組成物が、さらに、ポリビニルピロリドンを含有する、[29]~[33]のいずれかに記載の方法。
[35]組成物のpHが7.0以下である、[29]~[34]のいずれかに記載の方法。
[36]組成物のpHが6.5以上7.0以下である、[35]に記載の方法。
[37]組成物が、さらに、等張化剤、安定剤、粘稠剤、pH調節剤及び溶解剤からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、[29]~[36]のいずれかに記載の方法。
[38]組成物の浸透圧比が1.0~1.2である、[37]に記載の方法。
[39]組成物が眼科組成物である、[29]~[38]のいずれかに記載の方法。
[40]ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ポリビニルピロリドン、希塩酸、水酸化ナトリウム及び精製水のみからなる眼科組成物であって、pHが6.5~7.0であり、浸透圧比が1.0~1.2である眼科組成物を、花粉と接触させることを含む、花粉破裂の抑制方法。
[41]眼科組成物が洗眼薬又は点眼薬である、[39]又は[40]に記載の方法。
[42]洗眼薬が点眼型洗眼薬である[41]に記載の方法。
【0012】
さらに、本発明は、以下にも関する。
[43]ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩及びクロルヘキシジン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有する組成物の花粉破裂抑制のための使用。
[44]組成物がホウ酸又はその塩を有効成分とする、[43]に記載の使用。
[45]ホウ酸又はその塩がホウ酸又はホウ砂である、[43]又は[44]に記載の使用。
[46]組成物が、さらに、エデト酸又はその塩を含有する、[44]に記載の使用。
[47]エデト酸又はその塩がエデト酸ナトリウム水和物である、[43]又は[46]に記載の使用。
[48]組成物が、さらに、ポリビニルピロリドンを含有する、[43]~[47]のいずれかに記載の使用。
[49]組成物のpHが7.0以下である、[43]~[48]のいずれかに記載の使用。
[50]組成物のpHが6.5以上7.0以下である、[49]に記載の使用。
[51]組成物が、さらに、等張化剤、安定剤、粘稠剤、pH調節剤及び溶解剤からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、[43]~[50]のいずれかに記載の使用。
[52]組成物の浸透圧比が1.0~1.2である、[51]に記載の使用。
[53]組成物が眼科組成物である、[43]~[52]のいずれかに記載の使用。
[54]ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ポリビニルピロリドン、希塩酸、水酸化ナトリウム及び精製水のみからなる眼科組成物であって、pHが6.5~7.0であり、浸透圧比が1.0~1.2である眼科組成物の花粉破裂抑制のための使用。
[55]眼科組成物が洗眼薬又は点眼薬である、[53]又は[54]に記載の使用。
[56]洗眼薬が点眼型洗眼薬である[55]に記載の使用。
【0013】
さらに、本発明は、以下にも関する。
[57]花粉破裂の原因となる組成物に、ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩、及びクロルヘキシジン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1つを含有させることを含む、花粉破裂の抑制方法。
【0014】
尚、前記[1]~[57]を任意に選択して組み合わせること又は準用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、医薬として許容される有効成分として配合可能な花粉破裂抑制用組成物を提供することができる。本組成物は、花粉破裂を抑制できるので花粉症の予防に応用できる。例えば、本組成物を使用/洗眼薬や点眼液といった組成物に配合することで、眼に入った花粉と眼の粘膜との接触による花粉破裂が抑制されるか、又は眼に入った花粉と洗眼液や点眼液といった組成物との接触による花粉破裂が抑制されるので、アレルゲンが眼表面に放出される前に花粉を洗い流すことができ、花粉に起因するアレルギー性眼疾患(アレルギー性結膜炎、春季カタル等)や当該疾患の重症化を予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】各種成分の花粉破裂抑制効果を示す図である。
図2】各種組成物の花粉破裂抑制効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。尚、本発明において「%(w/v)」は、本発明の組成物100mL中に含まれる対象成分の質量(g)を意味する(以下、特に断りがない限り同様である)。
【0018】
本発明の花粉破裂抑制用組成物とは、花粉が破裂することを抑制するものであり、花粉が破裂することによるアレルゲンの放出を予防及び/又は回避するものを意味する。また、花粉破裂の原因については特に制限はないが、花粉と花粉破裂因子との接触が原因の花粉破裂が挙げられる。また、ここで花粉破裂因子についても特に制限はない。さらに、花粉破裂は、点眼液、洗眼液等の組成物との接触が原因で生じる場合があるが、本組成物を使用及び/又は配合することで、点眼液、洗眼液等の組成物との接触が原因で生じる花粉破裂を抑制/軽減することができる。さらに、本組成物の使用及び/又は配合は、花粉破裂抑制を目的とするものであれば特に制限はなく、繊維製品用組成物、医薬組成物、食品組成物(サプリメント等)等としての使用及び/又は配合することが好ましく、眼科組成物(点眼薬、洗眼薬、コンタクトレンズ用洗浄剤)としての使用及び/配合することが特に好ましい。
【0019】
本発明の花粉破裂抑制用組成物は、有効成分として、ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩、(ベンザルコニウム又はその塩)及びクロルヘキシジン又はその塩からなる群(防腐効果を有する化合物群)から選択される少なくとも1つを含有することを特徴とする。本発明の花粉破裂抑制用組成物に関する記載は、本発明の眼科組成物、花粉破裂の抑制方法、花粉破裂抑制剤にも適用される。
【0020】
本発明の花粉破裂抑制用組成物を含有する製品には、「ホウ酸又はその塩が花粉破裂を抑制する」、「エデト酸又はその塩が花粉破裂を抑制する」、(「ベンザルコニウム又はその塩が花粉破裂を抑制する」)、「クロルヘキシジン又はその塩が花粉破裂を抑制する」、「ホウ酸又はその塩が花粉からのアレルゲンの放出を予防する」、「エデト酸又はその塩が花粉からのアレルゲンの放出を予防する」、(「ベンザルコニウム又はその塩が花粉からのアレルゲンの放出を予防する」)、「クロルヘキシジン又はその塩が花粉からのアレルゲンの放出を予防する」、「ホウ酸又はその塩が花粉のバースト(破裂)を止めて(ストップして)、アレルギー反応を防止する(ブロックする)」、「エデト酸又はその塩が花粉のバースト(破裂)を止めて(ストップして)、アレルギー反応を防止する(ブロックする)」、(「ベンザルコニウム又はその塩が花粉のバースト(破裂)を止めて(ストップして)、アレルギー反応を防止する(ブロックする)」)、「クロルヘキシジン又はその塩が花粉のバースト(破裂)を止めて(ストップして)、アレルギー反応を防止する(ブロックする)」などと表示をすることもでき、さらにそれらに類似する表示をすることもできる。また、その表示は、直接的又は間接的にすることができ、直接的な表示の例としては、商品自体、パッケージ、容器、ラベル、タグなどの包装への記載が挙げられ、間接的な表示の例としては、取引書類、取扱説明書、添付文書、カタログ、ウェブサイト、店頭、展示会、看板、掲示板、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、電子メールなどによる、広告・宣伝・医師への説明等の活動が挙げられる。なお、本発明の花粉破裂抑制組成物を含有する製品には、本組成物が、ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩及びクロルヘキシジン又はその塩からなる群から選択される1つの有効成分と同様に有用であることを表示することもでき、例えば「本組成物が花粉破裂を抑制する」と表示することができる。
【0021】
本発明において、ホウ酸又はその塩及びその含有量(濃度)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ホウ酸又はその塩としては、ホウ酸、ホウ砂が挙げられ、ホウ砂がより好ましい。また、その含有量としては、0.01~5%(w/v)が好ましく、0.1~2%(w/v)がより好ましく、0.8~1.2%(w/v)が特に好ましい。
【0022】
本発明において、エデト酸又はその塩及びその含有量(濃度)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、エデト酸又はその塩としては、エデト酸、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物が挙げられ、エデト酸ナトリウム水和物がより好ましい。また、その含有量としては、0.001~5%(w/v)が好ましく、0.005~3%(w/v)がより好ましく、0.01~2%(w/v)が特に好ましい。
【0023】
本発明において、べンザルコニウム又はその塩及びその含有量(濃度)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、べンザルコニウム又はその塩としては、ベンザルコニウム塩化物が挙げられる。また、その含有量としては、0.0001~0.02(w/v)が好ましく、0.005~0.01(w/v)がより好ましく、0.001~0.005(w/v)が特に好ましい。
【0024】
本発明において、クロルヘキシジン又はその塩及びその含有量(濃度)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、クロルヘキシジン又はその塩としては、クロルヘキシジングルコン酸塩、クロルヘキシジン塩酸塩が挙げられ、クロルヘキシジングルコン酸塩がより好ましい。また、その含有量としては、0.0001~0.02(w/v)が好ましく、0.005~0.01(w/v)がより好ましく、0.001~0.005(w/v)が特に好ましい。
【0025】
本発明の花粉破裂抑制用組成物は、例えば、更にポリビニルピロリドンを含有することを特徴とする。
【0026】
本発明において、ポリビニルピロリドン及びその含有量(濃度)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ポリビニルピロリドンとしては、ポリビニルピロリドンK15、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK60、ポリビニルピロリドンK90が挙げられ、ポリビニルピロリドンK30がより好ましい。また、その含有量としては、0.05~2.0(w/v)が好ましく、0.1~1.5(w/v)がより好ましく、0.3~1.0(w/v)が特に好ましい。
【0027】
本発明の花粉破裂抑制用組成物のpHは、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、その上限は7.2以下が好ましく、7.1以下がより好ましく、7.0以下が特に好ましい。また、その下限は5.0以上が好ましく、6.0以上がより好ましく、6.1以上が更に好ましく、6.5以上が特に好ましい。また、前記のpHの上限と下限は、各々適宜組み合わせて、範囲とすることができ、例えば、pHが6.1以上7.2以下、好ましくはpHが6.5以上7.0以下である。本発明の花粉破裂抑制用組成物のpHは、pH調節剤や緩衝剤(医薬として許容されるものであれば、特に制限されない)を使用して調節することができる。
【0028】
本発明の花粉破裂抑制用組成物には、さらに、等張化剤、安定剤、粘稠剤、pH調節剤及び/又は溶解剤を配合することができる。
【0029】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できる等張化剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、塩化カリウム、酢酸カリウム等のカリウム塩、塩化カルシウム等のカルシウム塩、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム等のナトリウム塩、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等のマグネシウム塩等の無機塩、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、トロメタモール等の多価アルコール等が挙げられ、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム又は硫酸マグネシウムが好ましく、塩化カリウム、塩化ナトリウムがより好ましい。
【0030】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できる等張化剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、等張化剤の含有量は、等張化剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0031】
本発明の花粉破裂抑制用組成物において、等張化剤の総含有量(濃度)は、例えば、0.05~5%(w/v)が好ましく、0.1~1.8%(w/v)がより好ましく、0.3~0.7%(w/v)が特に好ましい。
【0032】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できる安定剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、トロメタモール、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、トコフェロール、ピロ亜硫酸ナトリウム、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸、エデト酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム水和物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられ、ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸、エデト酸ナトリウム又はエデト酸ナトリウム水和物が好ましく、エデト酸ナトリウム水和物がより好ましい。
【0033】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できる安定剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、安定剤の含有量は、安定剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0034】
本発明の花粉破裂抑制用組成物において、安定剤の総含有量(濃度)は、例えば、0.0001~1%(w/v)が好ましく、0.001~0.5%(w/v)がより好ましく、0.005~0.1%(w/v)が特に好ましい。
【0035】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できる粘稠剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK90等のポリビニルピロリドン類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース又はそれらの塩等のセルロース誘導体、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール1500、マクロゴール4000、マクロゴール6000等のポリエチレングリコール、デキストラン40、デキストラン70等のデキストラン類、ヒアルロン酸ナトリウム(精製ヒアルロン酸ナトリウム等)、架橋ヒアルロン酸等のヒアルロン酸誘導体、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸誘導体、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、コンドロイチン硫酸ナトリウム、アラビアゴム、ジェランガム、トラガント等が挙げられ、ポリビニルピロリドンK25、ポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドンK90等のポリビニルピロリドン類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ニトロセルロース又はそれらの塩等のセルロース誘導体、架橋ヒアルロン酸等のヒアルロン酸誘導体、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸誘導体が好ましく、ポリビニルピロリドンK30がより好ましい。尚、本発明の花粉破裂抑制用組成物は、ヒアルロン酸ナトリウム(精製ヒアルロン酸ナトリウム等)を、実質的に又は全く含有しなくてもよい。
【0036】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できる粘稠剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、粘稠剤の含有量は、粘稠剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0037】
本発明の花粉破裂抑制用組成物において、粘稠剤の総含有量(濃度)は、例えば、0.005~1.0%(w/v)が好ましく、0.01~0.5%(w/v)がより好ましく、0.3~0.5%(w/v)が特に好ましい。
【0038】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できるpH調節剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、希塩酸、酢酸、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられ、希塩酸、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0039】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できるpH調節剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、pH調節剤の含有量は、pH調節剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該花粉破裂抑制用組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0040】
本発明の花粉破裂抑制用組成物においてpH調節剤を使用する場合、pH調節剤の総含有量(濃度)は、例えば、0.001~5%(w/v)が好ましく、0.005~1%(w/v)がより好ましく、0.01~0.5%(w/v)が特に好ましい。
【0041】
本発明の花粉破裂抑制用組成物のpHは、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、その上限は7.2以下が好ましく、7.1以下がより好ましく、7.0以下が特に好ましい。また、その下限は5.0以上が好ましく.6.0以上がより好ましく、6.1以上が更に好ましく、6.5以上が特に好ましい。また、前記のpHの上限と下限は、各々適宜組み合わせて、範囲とすることができ、例えば、pHが6.1以上7.2以下、好ましくはpHが6.5以上7.0以下である。本発明の花粉破裂抑制用組成物のpHは、pH調節剤や緩衝剤(医薬として許容されるものであれば、特に制限されない)を使用して調節することができる。
【0042】
尚、pHは、例えば、第十七改正日本薬局方に記載されたpH測定法に準じて、測定できる。
【0043】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できる溶解剤(溶媒及び/又は分散媒)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、水(蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等)、含水エタノール等の水性溶解剤が挙げられ、水(蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等)が好ましい。
【0044】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できる溶解剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、溶解剤の含有量は、溶解剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該花粉破裂抑制用組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0045】
本発明の花粉破裂抑制用組成物において、例えば、溶解剤が水の場合、組成物の総量に対して、90%(w/v)以上が好ましく、95%(w/v)以上がより好ましく、97%(w/v)以上が特に好ましい。
【0046】
本発明の花粉破裂抑制用組成物の浸透圧は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、浸透圧比が、0.2~2が好ましく、0.7~1.5がより好ましく、1.0~1.2が特に好ましい。
【0047】
尚、浸透圧比は、第十七改正日本薬局方に基づき、286mOsm(0.9%(w/v)塩化ナトリウム水溶液の浸透圧)に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)を参考にして測定でき、また、浸透圧比測定用標準液(0.9%(w/v)塩化ナトリウム水溶液)については、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9%(w/v)塩化ナトリウム水溶液)を用いることができる。
【0048】
本発明の花粉破裂抑制用組成物は、次の成分を適当量含有することができ、医薬として許容されるものであれば、特に制限されず含有できる。具体的には、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、べルベリン類(塩化ベルべリン、硫酸ベルべリン)、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、亜鉛類(硫酸亜鉛、乳酸亜鉛)、塩化リゾチーム等の消炎・収斂成分、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン剤、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、レチノール類(酢酸レチノール、パルチミン酸レチノール)、塩酸ピリドキシン、パントテン酸類(パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム)、酢酸トコフェロール等のビタミン類、アスパラギン酸塩類(L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム(等量混合物))、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、コンドロイチン硫酸ナトリウム等のアミノ酸類、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等の無機塩類、アルキルポリアミノエチルグリシン等が挙げられる。
【0049】
上記成分は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよく、これらの成分が薬理活性成分として含有される場合、その含有量は薬理活性成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて、医薬品製造販売指針 別冊 要指導・一般用医薬品製造販売承認基準・申請実務の手引き 2017」に記載の(2)眼科用薬製造販売承認基準に基づき、適宜設定することができる。
【0050】
例えば、上記一般用医薬品製造販売承認基準に従えば、本発明の組成物は、上記薬理活性成分を表1に示す最大濃度(%(w/v))で含有できる。
【0051】
【表1】
【0052】
本発明の花粉破裂抑制用組成物は、例えば、表1に示すAグループの薬理活性成分を含有する場合、3種までを含有し、さらにBグループの薬理活性成分を1種まで、CグループとDグループの薬理活性成分をそれぞれ3種まで含有することが好ましい。また、Bグループの薬理活性成分を含有する場合、1種のみ含有し、さらにAグループの薬理活性成分を3種まで、CグループとDグループの薬理活性成分をそれぞれ3種まで含有することが好ましい。また、E又はFグループの薬理活性成分を含有する場合、1種のみ含有することが好ましい。なお、各グループ内にサブグループが存在する場合、同一のサブグループからは1種のみ含有することが好ましい。
【0053】
本発明の花粉破裂抑制用組成物は、本発明の効果を妨げない限り、前述の成分の以外に、次の医薬として許容される薬理活性成分(生理活性成分又は有効成分)を適当量含有することもできる。具体的には、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、dl-塩酸メチルエフェドリン等の充血除去成分(血管収縮成分)、メチル硫酸ネオスチグミン、トロピカミド、ヘレニエン、硫酸アトロピン等の眼筋調節成分(ピント調節成分)、硫酸亜鉛水和物、プラノプロフェン、サリチル酸、トラネキサム酸、甘草等の消炎・収斂成分、クロモグリク酸又はその塩(クロモグリク酸ナトリウム)、アンレキサノクス、イブジラスト、スプラタスト、ペミロラスト又はその塩(ぺミロラストカリウム、ぺミロラストナトリウム)、トラニラスト、オロパタジン又はその塩(塩酸オロパタジン)、レボカバスチン又はその塩(塩酸レボカバスチン)、アシタザノラスト、ケトチフェン又はその塩(フマル酸ケトチフェン)、エピナスチン又はその塩(塩酸エピナスチン)等の抗ヒスタミン剤又は抗アレルギー剤、ビタミンB12(ヒドロキソコバラミン、メチルコバラミン及びアデノシルコバラミン)、ビタミンB(ピリドキシン、ピリドキサール、ピリドキサミン)、ビタミンE(酢酸-d-αトコフェロール)、ビタミンB(チアミン、チアミン塩酸塩)、ナイアシン(ニコチン酸及びニコチン酸アミド)、ビオチン、葉酸等のビタミン類、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、γ-アミノ酪酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン等のアミノ酸類、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾール、スルフイソキサゾールナトリウム等のサルファ剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ブドウ糖等の粘稠化成分、アクリノール、セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等の殺菌剤、ヒアルロン酸ナトリウム等の角膜保護、角膜障害治療成分等が挙げられる。尚、本発明の花粉破裂抑制用組成物は、薬理活性成分として0.075%(w/v)の濃度のヒアルロン酸ナトリウムを含有しなくてもよく、ヒアルロン酸ナトリウムを、実質的に又は全く含有しなくてもよい。また、ポリヘキサメチレンビグアニドを、実質的に又は全く含有しなくてもよい。
【0054】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できる薬理活性成分(生理活性成分又は有効成分)は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、薬理活性成分の含有量は、薬理活性成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0055】
本発明の花粉破裂抑制用組成物は、本発明の効果を妨げない限り、前記添加剤(粘稠剤、等張化剤、安定剤、pH調節剤、溶解剤)以外の添加剤を適当量含有することができる。前記添加剤以外の添加剤としては、医薬として許容されるものであれば、特に制限されず、例えば、界面活性剤(可溶化剤)、緩衝剤、防腐剤、清涼化剤等が使用できる。
【0056】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できる界面活性剤(可溶化剤)は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤等が好ましく、非イオン性界面活性剤がより好ましい。
【0057】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル、POE(40)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40)及びPOE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油、POE(10)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油10)、POE(35)ヒマシ油(ポリオキシエチレンヒマシ油35)等のPOEヒマシ油、POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル、POE(54)POP(39)グリコール、POE(120)POP(40)グリコール、POE(160)POP(30)グリコール、POE(196)POP(67)グリコール(ポロクサマー407、プルロニックF127)、POE(200)POP(70)グリコール等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられ、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステルが好ましく、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)がより好ましい。
【0058】
両性界面活性剤としては、例えば、N-[2-[[2-(アルキルアミノ)エチル]アミノ]エチル]グリシン及びその塩等が挙げられる。
【0059】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸等が挙げられる。
【0060】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン等が挙げられる。
【0061】
これらの界面活性剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、界面活性剤の含有量は、界面活性剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0062】
本発明の花粉破裂抑制用組成物において、例えば、界面活性剤の総含有量(濃度)は、0.01~5%(w/v)が好ましく、0.01~1%(w/v)がより好ましく、0.05~0.5%(w/v)がさらに好ましい。
【0063】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できる緩衝剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等のホウ酸又はその塩、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等のリン酸又はその塩、炭酸、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム等の炭酸又はその塩、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等のクエン酸又はその塩、酢酸、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム等の酢酸又はその塩、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸カリウム等のアスパラギン酸又はその塩、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸、EDTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム水和物(エデト酸ナトリウム水和物)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等のエチレンジアミン酢酸類又はその塩、ε-アミノカプロン酸等のアミノ酸等が挙げられ、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、テトラホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウム、ホウ砂等のホウ酸又はその塩、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム等のリン酸又はその塩及びε-アミノカプロン酸等のアミノ酸が好ましく、ホウ酸、ホウ砂、又はε-アミノカプロン酸がより好ましい。
【0064】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できる緩衝剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、緩衝剤の含有量は、緩衝剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該花粉破裂抑制用組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0065】
本発明の花粉破裂抑制用組成物において、例えば、緩衝剤の総含有量(濃度)は、0.001~5%(w/v)が好ましく、0.005~3%(w/v)がより好ましく、0.01~2%(w/v)が特に好ましい。
【0066】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できる防腐剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ポリヘキサメチレンビグアニド、塩酸ポリヘキサニド等のビグアニド化合物、塩化亜鉛、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、安息香酸ナトリウム、エタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロブタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、グローキル(ローディア社製 商品名)、ホウ酸、ホウ砂、亜塩素酸等が挙げられ、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、ソルビン酸、フェネチルアルコール、ホウ酸、ホウ砂、亜塩素酸が好ましく、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、フェネチルアルコール、ホウ酸、ホウ砂、亜塩素酸がより好ましい。尚、本発明の花粉破裂抑制用組成物は、ポリヘキサメチレンビグアニドを、実質的に又は全く含有しなくてもよい。
【0067】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できる防腐剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、防腐剤の含有量は、防腐剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該花粉破裂抑制用組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0068】
本発明の花粉破裂抑制用組成物において、例えば、防腐剤の総含有量(濃度)は、0.0001~1%(w/v)が好ましく、0.0005~0.5%(w/v)がより好ましく、0.001~0.2%(w/v)がさらに好ましいが、防腐剤、特にベンザルコニウム若しくはその塩、又はパラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル若しくはそれらの塩等のパラベンを、実質的に又は全く含有しない花粉破裂抑制用組成物が特に好ましい。
【0069】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できる清涼化剤は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、ウイキョウ油、ローズ油、ケイヒ油、スペアミント油、樟脳油、クールミント、ハッカ油等のテルペノイドを含有する精油、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、ネロール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル等のテルペノイドが挙げられ、メントール、カンフル、ボルネオール及びゲラニオールが好ましく、メントール、ボルネオールがより好ましい。また、テルペノイドはd体、l体及びdl体のいずれであってもよく、例えば、l-メントール、d-メントール、dl-メントール、dl-カンフル、d-カンフル、dl-ボルネオール、d-ボルネオール等が挙げられ、l-メントール、dl-カンフル、d-カンフル及びd-ボルネオールが好ましい。
【0070】
本発明の花粉破裂抑制用組成物に使用できる清涼化剤は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。さらに、清涼化剤の含有量は、清涼化剤の種類、他の配合成分の種類及び含有量、該花粉破裂抑制用組成物の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定できる。
【0071】
本発明の花粉破裂抑制用組成物において、例えば、清涼化剤の総含有量(濃度)は、0.001~0.5%(w/v)が好ましく、0.001~0.1%(w/v)がより好ましく、0.005~0.05%(w/v)が特に好ましい。
【0072】
本発明の花粉破裂抑制用組成物の粘度は、12mPa・s以下で、点眼液として許容される粘度であれば特に制限されない。具体的には、粘度の上限は10mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以下がより好ましく、3mPa・s以下がより好ましく、1mPa・s以下が特に好ましい。また、粘度の下限は0mPa・s超であれば特に制限はないが、0.01mPa・s以上が好ましく、0.1mPa・s以上がより好ましく、0.3mPa・s以上が特に好ましい。また、前記の粘度の上限と下限は、各々適宜組み合わせて、範囲とすることが出来る。例えば、0mPa・s超10mPa・s以下が好ましく、0.01mPa・s以上5mPa・s以下がより好ましく、0.1mPa・s以上3mPa・s以下がさらに好ましく、0.3mPa・s以上1mPa・s以下が特に好ましい。尚、本発明の花粉破裂抑制用組成物の粘度が、12mPa・s以下である場合、優れた花粉洗浄効果を有する。
【0073】
また、本発明の花粉破裂抑制用組成物の粘度は、例えば、第十七改正日本薬局方に記載された粘度測定法で測定することができる。具体的な測定方法として、毛細管粘度計法、回転粘度計法等が挙げられ、好ましくは、回転粘度計法である。より具体的には、コーンプレート型粘度計を用いて、ずり速度100s-1、測定温度25.0℃での各製剤の粘度を測定できる。さらに、本発明の組成物の粘度の測定時期に制限はないが、好ましくは、本発明の組成物の調製後直ちに、本発明の組成物の使用直前に、又は本発明の組成物の使用期限(有効期間)に、測定すればよく、より好ましくは、本発明の組成物の調製後直ちに、又は本発明の組成物の使用直前に測定すればよい。
【0074】
本発明の花粉破裂抑制用組成物を点眼薬として使用する場合、その所望の効果を奏するのに十分であれば用法用量(使用回数、点眼滴数等)に特に制限はない。例えば、使用回数は、1~6回/日が好ましく、1~3回/日がより好ましい。また点眼滴数は、1回1~3滴/眼が好ましく、1回1~2滴/眼がより好ましく、1回1滴/眼が特に好ましい。点眼回数は、1~6回/日が好ましく、3~6回/日が好ましく、5~6回/日が特に好ましい。点眼1滴量は、20~60μLが好ましく、25~50μLがより好ましく、30~40μLが特に好ましい。
【0075】
本発明の花粉破裂抑制用組成物を洗眼薬として使用する場合、その所望の効果を奏するのに十分であれば用法用量(使用回数、使用量、点眼滴数等)に特に制限はなく、カップ式洗眼薬、点眼型洗眼薬のいずれにおいても使用できる。例えば、カップ式洗眼薬であれば、使用回数は、1~6回/日が好ましく、1~3回/日がより好ましい。また、使用回数は、1回あたり5~10mLが好ましく、5mLが特に好ましい。洗眼回数は、1~6回/日が好ましく、3~6回/日がより好ましい。点眼型洗眼薬であれば、使用回数は、1~6回/日が好ましく、3~6回/日がより好ましいが、点眼型洗眼薬は、携帯性に優れるため、眼に異物が入ったと自覚した際には、直ちに、使用することもでき、点眼滴数の下限は、1回3滴以上/眼が好ましく、1回4滴以上/眼がより好ましい。また、その上限は1回8滴以下/眼が好ましく、1回6滴以下/眼がより好ましく、点眼1滴量は、35~50μLが好ましく、30~50μLがより好ましい。さらに点眼後の瞬目については特に制限はないが、具体的には、1滴点眼毎に瞬目してもよく、複数滴点眼後に瞬目してもよく、瞬目しなくてもよい。尚、洗眼効果の観点から1又は2滴点眼毎に瞬目することが好ましく、1滴点眼毎に瞬目することがさらに好ましい。また、瞬目の回数は特に制限はないが、1滴点眼毎又は複数滴点眼後に1~3回の瞬目が好ましく、1~2回がより好ましい。尚、点眼滴数が、1回4滴以上の場合、優れた花粉洗浄効果が得られる。
【0076】
本発明の花粉破裂抑制用組成物は、任意の容器(本体、中栓、キャップ)に収容して提供できる。また、この花粉破裂抑制用組成物を収容する容器は、医薬として許容されるものであれば、特に制限されない。例えば、ガラス製容器及びポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリメチルペンテン、これらを構成するモノマーの共重合体、これらの材質を含む2種以上を組み合わせたプラスチック製容器等が挙げられ、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、シクロオレフィンポリマー及びシクロオレフィンコポリマー、これらを構成するモノマーの共重合体、これらの材質を含む2種以上を組み合わせたプラスチック製容器が好ましい。尚、ここで組み合わせとは、異なる材質を混合してもよいし、異なる材質のものを層構造としてもよい。さらに、前記容器は、繰り返し使用可能なマルチドーズ形態の容器であっても、1回使いきりのユニットドーズ形態の容器であってもよい。
【0077】
本発明の花粉破裂抑制用組成物は、コンタクトレンズ用の、眼科組成物として使用でき、ハードコンタクトレンズ及び/又はソフトコンタクトレンズを含む、市販されているあらゆるコンタクトレンズに適用でき、コンタクトレンズを装用した状態(コンタクトレンズが眼表面に装着された状態)でも使用できる。なお、ここで、ソフトコンタクトレンズは、例えば、イオン性及び非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ及び非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの双方を包含する。また、グループI~IVとして分類される全てのソフトコンタクトレンズを包含する。
【0078】
本発明の花粉破裂抑制用組成物を点眼薬とする場合は、適切な有効成分を配合することができ、目のかすみ(目やにの多いときなど)、目の疲れ、結膜充血、目のかゆみ、眼病予防(水泳のあと、ほこりや汗が目に入ったときなど)、眼瞼炎(まぶたのただれ)、紫外線その他の光線による眼炎(雪目など)、コンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズ等)を装着及び/又は装用しているときの不快感等、の症状を緩和・改善・抑制に使用できる。また、角膜の保護・保水に使用することもできる。
【0079】
本発明の花粉破裂抑制用組成物を洗眼薬とする場合は、適切な有効成分を配合することができ、目の洗浄、眼病予防(水泳のあと,ほこりや汗が目に入ったときなど)に使用することもできる。
【0080】
本発明の花粉破裂抑制用組成物には、「コンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ・ソフトコンタクトレンズ)装用時にも使用できる」、「コンタクトレンズ(ハードコンタクトレンズ・ソフトコンタクトレンズ)装用時用」などと表示をすることもでき、さらにそれらに類似する表示をすることもできる。また、その表示は、直接的又は間接的にすることができ、直接的な表示の例としては、商品自体、パッケージ、容器、ラベル、タグなどの包装への記載が挙げられ、間接的な表示の例としては、取引書類、取扱説明書、添付文書、カタログ、ウェブサイト、店頭、展示会、看板、掲示板、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、電子メールなどによる、広告・宣伝・医師への説明等の活動が挙げられる。
【0081】
また、上記本発明の花粉破裂抑制用組成物に関する詳細な説明は、本発明の以下に示す態様にも適用される。
【0082】
本発明の一態様は、ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩及びクロルヘキシジン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有する組成物を花粉と接触させることを含む、花粉破裂の抑制方法である。
【0083】
本発明の一態様は、ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩及びクロルヘキシジン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1つを有効成分として含有する組成物の花粉破裂抑制のための使用である。
【0084】
本発明の一態様は、花粉破裂の原因となる組成物に、ホウ酸又はその塩、エデト酸又はその塩、及びクロルヘキシジン又はその塩からなる群から選択される少なくとも1つを含有させることを含む、花粉破裂の抑制方法である。
【実施例
【0085】
<製剤例>
以下に本発明の花粉破裂抑制用組成物の製剤例を表2に示すが、これらの製剤例は本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。尚、下記の製剤例において各成分の配合量は製剤100mL中の含量である。
【0086】
【表2】
【0087】
尚、前記製剤例1~6における薬理活性成分、添加剤の種類や配合量及び粘度を適宜調整して、所望の花粉破裂抑制用組成物を得ることができる。
【0088】
<実施例>
以下に、実施例として、各種成分を使用した花粉破裂抑制効果試験を示すが、この例示は本発明をより良く理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0089】
[花粉破裂抑制効果試験]
1.各種成分の花粉破裂抑制効果
以下の試験を行い、各種成分の花粉破裂抑制効果を調べた。
【0090】
1)試験液の調製
900mLの水にリン酸水素二ナトリウム水和物 12.5gを加えて攪拌・溶解し、水を加えて全量1000mLとした液を1.25倍液1とした。1.25倍液1 40mLをとり、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.0に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液1(比較例1)とした。
1.25倍液1 40mLに、塩化カリウム 0.05gを投入し攪拌・溶解した。この液に希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.0に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液2(参考例1)とした。
1.25倍液1 40mLに、塩化ナトリウム 0.2gを投入し攪拌・溶解した。この液に希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.0に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液3(参考例2)とした。
1.25倍液1 40mLに、ポリビニルピロリドンK30 0.25gを投入し攪拌・溶解した。この液に希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.0に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液4(参考例3)とした。
1.25倍液1 40mLに、ホウ酸 0.5gを投入し攪拌・溶解した。この液に希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.0に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液5(実施例1)とした。
1.25倍液1 40mLに、エデト酸ナトリウム水和物 0.05gを投入し攪拌・溶解した。この液に希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.0に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液6(実施例2)とした。
1.25倍液1 40mLに、10%ベンザルコニウム塩化物液 0.05gを投入し攪拌・溶解した。この液に希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.0に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液7(実施例3)とした。
1.25倍液1 40mLに、20%クロルヘキシジングルコン酸塩 25μLを投入し攪拌・溶解した。この液に希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.0に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液8(実施例4)とした。
試験液1~8の水溶液の組成を表3及び4に示す。尚、ここで、リン酸水素二ナトリウム水和物はpH緩衝剤として含有させた。
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
2)試験方法
スギ花粉粒子約3μLに、各試験液を50μLずつ滴下した。5分後に破裂した液胞及び破裂していない液胞を光学顕微鏡下で計測した。花粉破裂率を下記式1に従い算出した。
[式1]
花粉破裂率(%)={破裂した液胞の数/(破裂した液胞の数+破裂していない液胞の数)}×100
【0094】
3)試験結果及び考察
試験結果を図1に示す。ここで、図1は各試験液の花粉破裂率を示すグラフである。ここで、ホウ酸、エデト酸ナトリウム水和物、ベンザルコニウム塩化物又はクロルヘキシジングルコン酸塩を含有する試験液は、花粉破裂率が15%以下であり、優れた花粉破裂抑制効果を示した。一方、塩化カリウム、塩化ナトリウム又はポリビニルピロリドンK30は花粉破裂促進効果を示した。
【0095】
2.各種組成物の花粉破裂抑制効果
以下の試験を行い、各種組成物の花粉破裂抑制効果を調べた。
【0096】
1)試験液の調製
160mLの水を45℃に加温し、ホウ酸 2.0g、塩化ナトリウム 0.8g、塩化カリウム 0.2gを加えて攪拌した。その液を室温まで冷却した後、水を加えて全量200mLとした液を1.25倍液2とした。
1.25倍液2 40mLをとり、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.2に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液9(実施例5)とした。
1.25倍液2 40mLを45℃に加温し、ホウ酸 0.40gを加えて攪拌した。その液を室温まで冷却した後、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.2に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液10(実施例6)とした。
1.25倍液2 40mLを45℃に加温し、エデト酸ナトリウム水和物 0.025gを加えて攪拌した。その液を室温まで冷却した後、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.2に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液11(実施例7)とした。
1.25倍液2 40mLを45℃に加温し、エデト酸ナトリウム水和物 0.05gを加えて攪拌した。その液を室温まで冷却した後、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.2に調整し、水を加えて全量50mLとして試験液12(実施例8)とした。
800mLの水にホウ酸 12.0g、塩化ナトリウム 4.8g、塩化カリウム 1.2g、エデト酸ナトリウム水和物 0.12g、ポリビニルピロリドンK30 6.0gを加えて攪拌した。その液に水を加えて全量960mLとした液を1.25倍液3とした。
1.25倍液3 320mLをとり、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH7.0に調整して試験液13(実施例9)とした。
1.25倍液3 320mLをとり、希塩酸/水酸化ナトリウムを加えpH6.5に調整して試験液14(実施例10)とした。試験液9~14の水溶液の組成を表5に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
2)試験方法
「1.各種成分の花粉破裂抑制効果の2)試験方法」に記載の方法により試験を実施した。
【0099】
3)試験結果及び考察
試験結果を図2に示す。ここで、図2は各試験液の花粉破裂率を示すグラフである。ここで、試験液9~14は、花粉破裂率が約20%以下であり、それらの組成物は優れた花粉破裂抑制効果を示した。また、試験液13及び14は、花粉破裂率が約5%以下であり、特に優れた花粉破裂抑制効果を示した。さらに、花粉破裂率はホウ酸の濃度依存的に花粉破裂抑制効果が増強されること、ホウ酸存在下、エデト酸ナトリウム水和物の濃度依存的に花粉破裂抑制効果が増強されること、それらの組成物において、pHの低下により花粉破裂抑制効果が増強されることが示された。また、ホウ酸とエデト酸ナトリウム水和物の存在下においては、花粉破裂促進効果を有すると考えられるポリビニルピロリドンK30が、ホウ酸とエデト酸ナトリウム水和物の花粉破裂抑制効果を補完又は増強することが示唆された。
図1
図2