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特許7303795グラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット及びこれらの混合物並びに合成の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】グラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット及びこれらの混合物並びに合成の方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/184 20170101AFI20230628BHJP
【FI】
C01B32/184
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020511186
(86)(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018047483
(87)【国際公開番号】W WO2019040597
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-08-02
(31)【優先権主張番号】62/548,942
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/548,945
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/548,952
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/548,955
(32)【優先日】2017-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517127045
【氏名又は名称】インサーマ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NTHERMA CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】ヌウェン, カティエン, ブイ.
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0253969(US,A1)
【文献】特表2016-536261(JP,A)
【文献】特開2012-172065(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0046027(US,A1)
【文献】特開2016-069482(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0251432(US,A1)
【文献】特開2010-013319(JP,A)
【文献】特表2012-500179(JP,A)
【文献】Strem Chemicals, Inc. ,2015年07月19日,URL:https://www.strem.com/catalog/v/06-0220/12/carbon_1034343-98-0
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/184
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンナノリボンを合成する方法であって、
常に動いている基板上に触媒を連続的に堆積させる堆積ステップと、
前記基板上に多重壁のカーボンナノチューブを形成させる形成ステップと、
前記基板から前記多重壁のカーボンナノチューブを分離する分離ステップと、
前記多重壁のカーボンナノチューブを収集する収集ステップと、
前記多重壁のカーボンナノチューブをグラフェンナノリボンへと変換する変換ステップと
からなり、
ここで、前記基板は、前記堆積ステップ、前記形成ステップ、前記分離ステップ及び前記収集ステップを通して逐次的に動き、前記グラフェンナノリボンの純度は95%超である、方法。
【請求項2】
前記グラフェンナノリボンが、均一な長さのものであり、前記均一な長さが、50μm、100μm、150μm又は200μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グラフェンナノリボンが、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記グラフェンナノリボンが、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度のものであり、50μm、100μm、150μm又は200μmの均一な長さのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブが、化学的酸化、プラズマエッチング、電気化学的酸化又は音響化学によってグラフェンナノリボンへと変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
グラフェンナノリボン及びグラフェンナノプレートレットの混合物を合成する方法であ
って、
常に動いている基板上に触媒を連続的に堆積させる堆積ステップと、
前記基板上に多重壁のカーボンナノチューブを形成させる形成ステップと、
前記基板から前記多重壁のカーボンナノチューブを分離する分離ステップと、
前記多重壁のカーボンナノチューブを収集する収集ステップと、
前記多重壁のカーボンナノチューブをグラフェンナノリボン及びグラフェンナノプレートレットの混合物へと変換する変換ステップと
からなり、
ここで、前記基板は、前記堆積ステップ、前記形成ステップ、前記分離ステップ及び前記収集ステップを通して逐次的に動き、前記グラフェンナノリボン及び前記グラフェンナノプレートレットの混合物の純度は95%超である、方法。
【請求項7】
グラフェンナノプレートレットを合成する方法であって、
常に動いている基板上に触媒を連続的に堆積させる堆積ステップと、
前記基板上に多重壁のカーボンナノチューブを形成させる形成ステップと、
前記基板から前記多重壁のカーボンナノチューブを分離する分離ステップと、
前記多重壁のカーボンナノチューブを収集する収集ステップと、
前記多重壁のカーボンナノチューブをグラフェンナノプレートレットへと変換する変換ステップと
からなり、
ここで、前記基板は、前記堆積ステップ、前記形成ステップ、前記分離ステップ及び前記収集ステップを通して逐次的に動き、前記グラフェンナノプレートレットの純度は95%超である、方法。
【請求項8】
前記グラフェンナノプレートレットが、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度のものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記グラフェンナノリボン及びグラフェンナノプレートレットの混合物の純度が、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度のものである、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、全て参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2017年8月22日に出願された米国仮特許出願第62/548,942号、2017年8月22日に出願された米国仮特許出願第62/548,945号、2017年8月22日に出願された米国仮特許出願第62/548,952号及び2017年8月22日に出願された米国仮特許出願第62/548,955号に対する優先権を主張する。
【0002】
本明細書において提供するのは、高い構造的均一性及び低レベルの不純物を有するグラフェンナノリボン、並びにそれらの合成の方法である。また本明細書において提供するのは、優れた構造的均一性及び低レベルの不純物のグラフェンナノプレートレット、並びにそれらの合成の方法である。本明細書においてさらに提供するのは、良好な構造的均一性及び低レベルの不純物のグラフェンナノリボン及びグラフェンナノプレートレットの混合物、並びにそれらの合成の方法である。この方法は、例えば、常に動いている基板上に触媒を堆積させるステップと、基板上にカーボンナノチューブを形成させるステップと、基板からカーボンナノチューブを分離するステップと、表面からカーボンナノチューブを収集するステップとを含み、ここで、基板は、堆積ステップ、形成ステップ、分離ステップ及び収集ステップを通して連続的及び逐次的に動く。さらなる処理ステップは、合成されたカーボンナノチューブを、グラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット及びこれらの混合物へと変換する。
【背景技術】
【0003】
グラフェンナノリボン(GNR)は、電子デバイス、トランジスタ製作及び油添加物における用途をもたらし得る、例外的な電気的及び物理的特性を有する、単層又は数層の周知の炭素同素体黒鉛状炭素である。GNRは、構造的に高いアスペクト比を有し、長さは、幅又は厚さより非常に長い。
【0004】
グラフェンナノプレートレット(GNP)は、長さが、ミクロン又はサブミクロン範囲であり、したがって、GNPは、GNRの高いアスペクト比を欠いていることを除いてはGNRと同様である。GNPはまた、カーボンナノチューブ(CNT)及びGNRの有用な特性の多くを有する。
【0005】
GNRは、化学的プロセスを使用して、CVDによって、黒鉛から調製されてきた。最も典型的には、GNRは、化学的アンジッピングによってCNTから調製されたが、GNRの質は、CNT出発材料の純度によって決まる。
【0006】
GNPは典型的には、化学的剥離、熱衝撃及び剪断によって、又はプラズマ反応器において黒鉛から調製されてきた。しかし、上記の方法は、幅及び長さの良好な制御を伴って高収率、良好な純度でGNR及びGNPを提供することができない。
【0007】
最近、良好な収率及び高純度でカーボンナノチューブをGNRに変換するいくつかの方法が出現してきた(Hirsch,Angew Chem.Int.Ed.2009,48,2694)。GNRを調製するために使用される上記の方法のいくつかのより極端な条件は、GNRからのGNPの合成をもたらし得る。しかし、カーボンナノチューブ、並びにこれらのCNTから生成されるGNR及びGNPの純度及び均一性は、CNTの製造の方法によって決定される。
【0008】
現在のCNT製造方法によって典型的には、相当な不純物、例えば、金属触媒及びアモルファス炭素を含むCNTが生成される。CNTの合成後に精製ステップが典型的には必要とされ、これらは、相当な量の金属触媒及びアモルファス炭素で汚染されていないカーボンナノチューブを提供するフロー反応器方法である。CNT精製ステップは、大きく高価な化学プラントを必要とし、これによって、大量の90%超の純度のCNTを生成することが極度に高価なものとなる。さらに、現在のCNT製造方法によって、低い構造的均一性を有するCNT(すなわち、変化する長さのCNT)が生成される。
【0009】
したがって、必要とされるものは、高い構造的均一性及び高純度を伴う高い質で高価でないGNR及びGNPを生成するための新規な方法である。これらの方法は、次いで、高い構造的均一性及び純度のGNR及びGNPへと変換し得る、高い構造的均一性及び高純度のCNTを調製することが関与する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、一態様において、グラフェンナノリボンを合成する方法を提供することによってこれら及び他の必要性を満足させる。一部の実施形態では、方法は、常に動いている基板上に触媒を堆積させるステップと、基板上にカーボンナノチューブを形成させるステップと、基板からカーボンナノチューブを分離するステップと、カーボンナノチューブを収集するステップと、カーボンナノチューブをグラフェンナノリボンへと変換するステップとを含み、ここで、基板は、堆積ステップ、形成ステップ、分離ステップ及び収集ステップを通して逐次的に動く。
【0011】
別の態様において、均一な長さ及び95%超の純度のグラフェンナノリボンを提供する。
【0012】
また別の態様において、グラフェンナノプレートレットを合成する方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、常に動いている基板上に触媒を堆積させるステップと、基板上にカーボンナノチューブを形成させるステップと、基板からカーボンナノチューブを分離するステップと、カーボンナノチューブを収集するステップと、カーボンナノチューブをグラフェンナノプレートレットへと変換するステップとを含み、ここで、基板は、堆積ステップ、形成ステップ、分離ステップ及び収集ステップを通して逐次的に動く。
【0013】
また別の態様において、均一な長さ及び95%超の純度のグラフェンナノプレートレットを提供する。
【0014】
また別の態様において、グラフェンナノリボン及びグラフェンナノプレートレットの混合物を合成する方法を提供する。一部の実施形態では、方法は、常に動いている基板上に触媒を堆積させるステップと、基板上にカーボンナノチューブを形成させるステップと、基板からカーボンナノチューブを分離するステップと、カーボンナノチューブを収集するステップと、カーボンナノチューブをグラフェンナノリボン及びグラフェンナノプレートレットの混合物へと変換するステップとを含み、ここで、基板は、堆積ステップ、形成ステップ、分離ステップ及び収集ステップを通して逐次的に動く。
【0015】
また別の態様において、均一な長さ及び95%超の純度のグラフェンナノリボン及びグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】基板上に触媒を堆積させるステップと、基板上にカーボンナノチューブを形成させるステップと、基板からカーボンナノチューブを分離するステップと、高純度及び高構造的均一性のカーボンナノチューブを収集するステップとを含む、カーボンナノチューブの合成のための例示的なフローチャートを例示する。
図2】基板上にカーボンナノチューブを形成させるステップと、基板からカーボンナノチューブを分離するステップと、高純度及び高構造的均一性のカーボンナノチューブを収集するステップとを含む、カーボンナノチューブの合成のための例示的なフローチャートを例示する。
図3】常に動いている基板上に触媒を連続的に堆積させるステップと、動いている基板上にCNTを形成させるステップと、動いている基板からCNTを分離するステップと、高純度及び高構造的均一性のカーボンナノチューブを収集するステップとを含む、カーボンナノチューブの連続的合成のための例示的なフローチャートを例示する。
図4】金属基板を含有する、動いている基板上にCNTを形成させるステップと、動いている基板からCNTを分離するステップと、高純度及び高構造的均一性のカーボンナノチューブを収集するステップとを含む、カーボンナノチューブの連続的合成のための例示的なフローチャートを例示する。
図5】カーボンナノチューブの連続的合成のための装置を模式的に例示し、これは、逐次的に配列されている様々なモジュール、例えば、モジュールを通して基板を前進させるための輸送モジュール;触媒モジュール;ナノチューブ合成モジュール;分離モジュール;及び収集モジュールを含む。
図6】カーボンナノチューブの連続的合成のための基板の閉ループ供給を有する装置を模式的に例示し、これは、逐次的に配列されている様々なモジュール、例えば、モジュールを通して基板を前進させるための輸送モジュール;触媒モジュール;ナノチューブ合成モジュール;分離モジュール;及び収集モジュールを含む。
図7】例示的な分離モジュールを模式的に例示する。
図8】複数の基板を含む、ナノチューブ合成モジュールにおいて使用し得る長方形の石英チャンバーの水平図を模式的に例示する。
図9】複数の基板を含む、ナノチューブ合成モジュールにおいて使用し得る長方形の石英チャンバーの斜視図を例示する。
図10】本明細書に記載されている方法及び器具によって生成されるMWCNTについての99.4%超の純度を示すTGA結果を例示する。
図11】本明細書に記載されている方法及び器具によって生成されるMWCNTが、工業用等級試料と比較したとき高結晶質であることを示すラマンスペクトルを例示する。
図12本明細書に記載の方法によって生成されるグラフェンナノリボンが、工業用等級試料と比較したとき高結晶質であることを示すラマンスペクトルを例示する。
図13本明細書に記載の方法によって生成されるグラフェンナノリボンについての99%超の純度を示すTGA結果を例示する。
図14】高純度グラフェンナノリボンの電子顕微鏡写真を例示する。
図15】高純度グラフェンナノリボンとグラフェンナノプレートレットの混合物の電子顕微鏡写真を例示する。
図16】高純度グラフェンナノプレートレットの電子顕微鏡写真を例示する。
図17】基油中のグラフェン(Nadditive-G100)の増加する濃度が、4球試験パラメーターにおいて摩擦係数及び傷跡直径をどのように低減させるかを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
他に定義しない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本明細書においてある用語について複数の定義が存在する場合、他に断りのない限り、このセクションにおけるものが優先する。
【0018】
本明細書において使用する場合、「カーボンナノチューブ」は、円筒形の構造を有する炭素の同素体を指す。カーボンナノチューブは、欠陥、例えば、C5及び/又はC7環構造を含み得、カーボンナノチューブは直線状ではなく、コイル状構造を含有し得、C-C結合配置においてランダムに分布している欠陥のある部位を含有し得る。カーボンナノチューブは、1つ若しくは複数の同心円状の円筒形層を含有し得る。用語「カーボンナノチューブ」は、本明細書において使用する場合、単独で精製された形態又はこれらの混合物として、単一壁のカーボンナノチューブ、二重壁のカーボンナノチューブ、多重壁のカーボンナノチューブを含む。一部の実施形態では、カーボンナノチューブは、多重壁である。他の実施形態では、カーボンナノチューブは、単一壁である。また他の実施形態では、カーボンナノチューブは、二重壁である。また他の実施形態では、カーボンナノチューブは、単一壁及び多重壁のナノチューブの混合物である。また他の実施形態では、カーボンナノチューブは、単一壁及び二重壁のナノチューブの混合物である。また他の実施形態では、カーボンナノチューブは、二重壁及び多重壁のナノチューブの混合物である。また他の実施形態では、カーボンナノチューブは、単一壁、二重壁及び多重壁のナノチューブの混合物である。
【0019】
本明細書において使用する場合、「多重壁のカーボンナノチューブ」は、黒鉛の様な層間距離を伴う複数の同心円状に重ね合わせられたグラフェンシートからなるカーボンナノチューブを指す。
【0020】
本明細書において使用する場合、「二重壁のカーボンナノチューブ」は、2つの同心円状に重ね合わせられたグラフェンシートを有するカーボンナノチューブを指す。
【0021】
本明細書において使用する場合、「単一壁のカーボンナノチューブ」は、単一の円筒形のグラフェン層を有するカーボンナノチューブを指す。
【0022】
本明細書において使用する場合、「垂直状に整列しているカーボンナノチューブ」は、基板上に堆積されたカーボンナノチューブの配列を指し、ここで、カーボンナノチューブの構造は、基板と直角に物理的に整列している。
【0023】
本明細書において使用する場合、「触媒」又は「金属触媒」は、炭化水素ガスの分解、及び化学蒸着プロセスによるカーボンナノチューブの形成の補助において使用される、例えば、Fe、Ni、Co、Cu、Ag、Pt、Pd、Auなどの金属又は金属の組合せ、を指す。
【0024】
本明細書において使用する場合、「化学蒸着」は、プラズマ助長化学蒸着、熱化学蒸着、アルコール触媒CVD、気相成長、エアロゲル支持CVD及びレーザーを利用したCVDを指す。
【0025】
本明細書において使用する場合、「プラズマ助長化学蒸着」は、炭化水素ガス混合物を、表面上にカーボンナノチューブを堆積させる励起種へと転換させる、プラズマ(例えば、グロー放電)の使用を指す。
【0026】
本明細書において使用する場合、「熱化学蒸着」は、表面上にカーボンナノチューブを堆積させるために使用し得る、触媒の存在下での炭化水素蒸気の熱分解を指す。
【0027】
本明細書において使用する場合、「物理蒸着」は、フィルム材料上への所望のフィルム材料の気化物の凝縮によって薄いフィルムを堆積させるために使用される真空堆積方法を指し、技術、例えば、陰極アーク堆積、電子ビーム堆積、気化堆積、パルスレーザー堆積及びスパッタ堆積を含む。
【0028】
本明細書において使用する場合、「カーボンナノチューブを形成させること」は、反応チャンバーにおいて基板上にカーボンナノチューブを形成させるための、本明細書に記載されている化学及び物理蒸着方法を含めた任意の蒸着プロセスを指す。
【0029】
カーボンナノチューブは、例外的な物理的特性、例えば、優れた通電容量、高い熱伝導性、良好な機械的強度、及び大きな表面積を伴う比較的に新規な材料であり、これらはいくつかの用途において有利である。カーボンナノチューブは、3000W/mKもの高い値を伴う例外的な熱伝導性を有し、これは、ダイヤモンドの熱伝導性より低いのみである。カーボンナノチューブは、機械的に強く、400℃超の大気条件下にて熱的に安定であり、特に、垂直に整列しているとき、可逆的な機械的可撓性を有する。したがって、カーボンナノチューブは、この固有の可撓性によって異なる表面形態に機械的に適合させることができる。さらに、カーボンナノチューブは、高温下で閉鎖的な条件において、低い熱膨張率を有し、可撓性を保持する。
【0030】
カーボンナノチューブを制御された様式で実用的及び単純な集積化及び/又はパッケージングを伴って経済的に提供することは、多くのカーボンナノチューブ技術を実行するために必須である。例外的な純度及び均一な長さの大量のカーボンナノチューブを提供する装置及び方法を、本明細書において提供する。本明細書において合成されるCNTは、合成後の高価な精製を必要としない。
【0031】
手短に言えば、方法の一般の特徴は下記の通りである。第1に、金属触媒は表面上にコーティングされ、基板は高温にて加熱される。次いで、触媒は高温にて基板の表面上にコーティングされ、基板上に触媒のナノ粒子を提供し、これはCNT合成のための開始部位としての機能を果たす。CNTは、炭素源を触媒へと供給することによって合成される。したがって、炭素源及びキャリアガスの混合物は、触媒でコーティングされた加熱された基板を含んだチャンバー中に流れ、付着したCNTを有する基板を提供する。最終的に、合成されたCNTを基板から抽出し、収集する。任意選択で、触媒でコーティングされた基板が再生される。
【0032】
一部の実施形態では、触媒は、スパッタリング、蒸発、ディップコーティング、印刷スクリーニング、エレクトロスプレー、スプレー熱分解又はインクジェット印刷によって基板上に堆積される。次いで、触媒は、化学エッチング又は熱的にアニーリングされ、触媒粒子核生成を誘発し得る。触媒の選択は、多重壁のCNTを超えて単一壁のCNTの優先的な成長をもたらし得る。
【0033】
一部の実施形態では、触媒は、基板を触媒の溶液に浸漬することによって基板上に堆積される。他の実施形態では、水性又は有機溶媒/水中の触媒溶液の濃度は、約0.01%~約20%である。また他の実施形態では、水性又は有機溶媒/水中の触媒溶液の濃度は、約0.1%~約10%である。また他の実施形態では、水性又は有機溶媒/水中の触媒溶液の濃度は、約1%~約5%である。
【0034】
CNTが作製されるチャンバーの温度は、基板の融解温度より低い温度、炭素源の分解温度より低い温度、及び触媒原料の分解温度より高い温度であるべきである。多重壁のカーボンナノチューブを成長させるための温度範囲は、約600℃~約900℃であり、一方、単一壁のCNTを成長させるための温度範囲は、約700℃~約1100℃である。
【0035】
一部の実施形態では、CNTは、CNTの成長のための金属触媒を含有する基板上の化学蒸着によって形成される。常に動いている基板上の連続的なCNT形成は、CNTが均一な長さを有することを可能とすることに留意することは重要である。典型的な供給原料には、これらに限定されないが、一酸化炭素、アセチレン、アルコール、エチレン、メタン、ベンゼンなどが含まれる。キャリアガスは、不活性ガス、例えば、アルゴン、ヘリウム、又は窒素であり、一方、水素は、典型的な還元ガスである。ガス混合物の組成及び基板曝露の期間は、合成されたCNTの長さをレギュレートする。当業者には公知の他の方法、例えば、上記の物理蒸着方法、Nikolaev et al.,Chemical Physics Letter,1999,105,10249-10256の方法及び噴霧スプレー熱分解(Rao et al.,Chem.Eng.Sci.59,466,2004)は、本明細書に記載されている方法及び装置において使用し得る。当業者には周知である条件を使用して、上記の方法のいずれかを使用してカーボンナノチューブを調製し得る。
【0036】
ここで図1を参照すると、カーボンナノチューブを合成する方法を提供する。この方法は、図1において例示するように別々のステップにおいて行い得る。ステップの任意の組合せは、必要に応じて連続的に行うことができることを当業者は認識する。触媒は、102において基板上に堆積され、カーボンナノチューブは、104において基板上に形成され、カーボンナノチューブは、106において基板から分離され、カーボンナノチューブは、108において収集される。
【0037】
ここで図2を参照すると、カーボンナノチューブを合成する別の方法を提供する。この方法は、図2において例示するように別々のステップにおいて行い得る。ステップの任意の組合せは、必要に応じて連続的に行うことができることを当業者は認識する。カーボンナノチューブは、202において触媒を含有する基板上に形成され、カーボンナノチューブは、204において基板から分離され、カーボンナノチューブは、206において収集される。
【0038】
ここで図3を参照すると、カーボンナノチューブを合成する別の方法を提供する。この方法は、連続的に行われる。触媒は、302において動いている基板上へと連続的に堆積され、カーボンナノチューブは、304において動いている基板上に連続的に形成され、カーボンナノチューブは、306において基板から連続的に分離され、カーボンナノチューブは、308において連続的に収集される。基板は、本明細書に記載されているステップを通して1回又は任意選択で、何回も、例えば、50回超、1,000回超若しくは100,000回超循環し得る。
【0039】
ここで図4を参照すると、カーボンナノチューブを合成する別の方法を提供する。この方法は、例示されるように連続的に行われる。カーボンナノチューブは、402において触媒を既に含有する、動いている基板上に連続的に形成され、カーボンナノチューブは、404において基板から連続的に分離され、カーボンナノチューブは、406において連続的に収集される。一部の実施形態では、基板を、堆積ステップ、形成ステップ及び分離ステップを通して50回超、1,000回超又は100,0000回超循環させる。
【0040】
動いている基板上のCNTの堆積は、高純度及び高い長さ均一性の両方であるCNTを提供する。さらに、制御プロセス条件は、CNT長さのカスタマイズを可能とする。例えば、生成プロセスを通した、動いている基板の速度のバリエーションは、CNT長さを修正し、CNT堆積モジュールを通したより速い速度は、より短い長さのCNTを生じさせ、一方、より遅い速度は、より長い長さのCNTを生じさせる。
【0041】
一部の実施形態では、基板は、金属箔によって完全にカバーされている。これらの実施形態では、基板は、触媒堆積及びCNT合成の条件に対して安定な任意の材料であり得る。多くのこのような材料は当業者には公知であり、例えば、炭素繊維、炭素フォイル、ケイ素、石英などを含む。他の実施形態では、基板は、金属箔であり、これは本明細書に記載の方法の様々なステップを通して連続的に前進することができる。
【0042】
一部の実施形態では、金属箔の厚さは、10μm超である。他の実施形態では、金属箔の厚さは、約10μm~約500μmである。また他の実施形態では、金属箔の厚さは、約500μm~約2000μmである。また他の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.05μm~約100cmである。他の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.05μm~約100cmである。他の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.05mm~約5mmである。また他の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.1mm~約2.5mmである。また他の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.5mm~約1.5mmである。また他の実施形態では、金属箔の厚さは、約1mm~約5mmである。また他の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.05mm~約1mmである。また他の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.05mm~約0.5mmである。また他の実施形態では、金属箔の厚さは、約0.5mm~約1mmである。また他の実施形態では、金属箔の厚さは、約1mm~約2.5mmである。また他の実施形態では、金属箔の厚さは、約2.5mm~約5mmである。また他の実施形態では、金属箔の厚さは、約100μm~約5mmである。また他の実施形態では、金属箔の厚さは、約10μm~約5mmである。また他の実施形態では、金属箔の厚さは、100μm超である。また他の実施形態では、金属箔の厚さは、100μm未満である。
【0043】
一部の実施形態では、金属箔は、鉄、ニッケル、アルミニウム、コバルト、銅、クロム、金、銀、白金、パラジウム又はこれらの組合せを含む。他の実施形態では、金属箔は、鉄、ニッケル、コバルト、銅、金又はこれらの組合せを含む。一部の実施形態では、金属箔は、有機メタロセン、例えば、フェロセン、コバルトセン又はニッケロセンでコーティングし得る。
【0044】
一部の実施形態では、金属箔は、鉄、ニッケル、コバルト、銅、クロム、アルミニウム、金又はこれらの組合せの2つ若しくはそれより多いものの合金である。他の実施形態では、金属箔は、鉄、ニッケル、コバルト、銅、金又はこれらの組合せの2つ若しくはそれより多いものの合金である。
【0045】
一部の実施形態では、金属箔は、高温の金属合金である。他の実施形態では、金属箔は、ステンレス鋼である。また他の実施形態では、金属箔は、その上にカーボンナノチューブを成長させるための触媒が堆積されている高温の金属合金である。また他の実施形態では、金属箔は、そのうえに触媒がカーボンナノチューブを成長させるために堆積されているステンレス鋼である。
【0046】
一部の実施形態では、金属箔は、400℃超にて熱的に安定である金属又は金属の組合せである。他の実施形態では、金属箔は、500℃超、600℃超、700℃超又は1000℃超にて熱的に安定である金属又は金属の組合せである。上記の実施形態のいくつかでは、金属の組合せは、ステンレス鋼である。
【0047】
一部の実施形態では、金属箔は、約100μm未満の厚さ、及び約250nm未満の表面の二乗平均平方根粗さを有する。一部の実施形態では、金属箔は、約100μm超の厚さ、及び約250nm未満の表面の二乗平均平方根粗さを有する。また他の実施形態では、金属箔は、約100μm未満の厚さ、及び約250nm未満の表面の二乗平均平方根粗さを有し、鉄、ニッケル、コバルト、銅、金又はこれらの組合せを含む。また他の実施形態では、金属箔は、約100μm超の厚さ、及び約250nm未満の表面の二乗平均平方根粗さを有し、鉄、ニッケル、コバルト、銅、金又はこれらの組合せを含む。また他の実施形態では、金属箔は、約100μm未満の厚さ、及び約250nm未満の表面の二乗平均平方根粗さを有し、触媒フィルムを含む。また他の実施形態では、金属箔は、約100μm超の厚さ、及び約250nm未満の表面の二乗平均平方根粗さを有し、触媒フィルムを含む。上記の実施形態のいくつかでは、二乗平均平方根粗さは、約100nm未満である。
【0048】
一部の実施形態では、基板は、上記の方法のステップを通して0.1cm/分超の速度で連続的に前進する。他の実施形態では、基板は、上記の方法のステップを通して0.05cm/分超の速度で連続的に前進する。また他の実施形態では、基板は、上記の方法のステップを通して0.01cm/分超の速度で連続的に前進する。また他の実施形態では、基板を、堆積ステップ、形成ステップ、分離ステップ及び収集ステップを通して10回超、50回、1,000回超又は100,0000回超循環させる。
【0049】
一部の実施形態では、基板は、約1cmより幅が広い。他の実施形態では、基板は、1m超、10m超、100m超、1,000m超又は10,000m超の長さを有する。これらの実施形態のいくつかにおいて、基板は、金属箔である。
【0050】
一部の実施形態では、カーボンナノチューブは、基板の全ての側面上で形成される。他の実施形態では、カーボンナノチューブは、金属箔の両方の側面上で形成される。
【0051】
一部の実施形態では、基板上に堆積された触媒の濃度は、約0.001%~約25%である。他の実施形態では、基板上に堆積された触媒の濃度は、約0.1%~約1%である。また他の実施形態では、基板上に堆積された触媒の濃度は、約0.5%~約20%である。
【0052】
一部の実施形態では、基板上のカーボンナノチューブの濃度は、1μm当たり約1のナノチューブから1μm当たり約50のナノチューブある。他の実施形態では、基板上のカーボンナノチューブの濃度は、1μm当たり約10のナノチューブから1μm当たり約500のナノチューブである。
【0053】
一部の実施形態では、CNTは、基板の表面からのCNTの機械的な取り出しによって基板から分離される。他の実施形態では、基板からのCNTの分離は、機械的ツール(例えば、ブレード、摩耗表面など)で基板の表面からCNTを取り出すことが関与し、このように、金属不純物が殆どないか又は金属不純物がない高純度CNTを生じさせ、これは任意のさらなる精製を必要としない。また他の実施形態では、基板からのCNTの分離は、基板へのCNTの接着を乱す化学的方法が関与する。また他の実施形態では、超音波処理は、基板へのCNTの接着を乱す。また他の実施形態では、加圧ガス流は、基板へのCNTの接着を乱す。基板上にCNTを堆積させること及び基板からCNTを分離することの組合せは、均一な長さのCNT生成物を、触媒及びアモルファス炭素不純物が非含有なものとする。
【0054】
CNTは、任意の好都合な物体、例えば、開放容器、ワイヤーメッシュスクリーン、固体表面、濾過装置などの中、又はこれらの上で収集することができる。収集装置の選択は、基板へのCNTの接着を乱すために使用される方法と相関する。
【0055】
一部の実施形態では、カーボンナノチューブは、ランダムに整列している。他の実施形態では、カーボンナノチューブは、垂直に整列している。また他の実施形態では、均一な長さは、平均して約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmである。また他の実施形態では、均一な長さは、50μmから2cmの範囲であり得る。一般に、均一な長さは、記述された長さの約+/-10%である。したがって、約100μmの均一な長さを有する試料は、90μm~110μmの長さのナノチューブを含む。また他の実施形態では、カーボンナノチューブは、垂直に整列しており、均一な長さのものである。
【0056】
一部の実施形態では、カーボンナノチューブの密度は、約2mg/cm~約1mg/cmである。他の実施形態では、カーボンナノチューブの密度は、約2mg/cm~約0.2mg/cmである。
【0057】
一部の実施形態では、垂直に整列しているカーボンナノチューブは、約50W/mK超の熱伝導性を有する。他の実施形態では、垂直に整列しているカーボンナノチューブは、約70W/mK超の熱伝導性を有する。
【0058】
一部の実施形態では、垂直に整列しているカーボンナノチューブの厚さは、約100μm~約500μmである。他の実施形態では、垂直に整列しているカーボンナノチューブの厚さは、約100μm未満である。
【0059】
一部の実施形態では、カーボンナノチューブは、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度のものである。他の実施形態では、カーボンナノチューブは、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度のものであり、約10μm、約20μm、約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmの均一な長さのものである。また他の実施形態では、カーボンナノチューブは、垂直に整列している、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度のものであり、約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmの均一な長さのものである。
【0060】
一部の実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約11GPa~約63GPaである。他の実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約20GPa~約63GPaである。また他の実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約30GPa~約63GPaである。また他の実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約40GPa~約63GPaである。また他の実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約50GPa~約63GPaである。また他の実施形態では、カーボンナノチューブの引張強度は、約20GPa~約45GPaである。
【0061】
一部の実施形態では、カーボンナノチューブの弾性率は、約1.3TPa~約5TPaである。他の実施形態では、カーボンナノチューブの弾性率は、約1.7TPa~約2.5TPaである。また他の実施形態では、カーボンナノチューブの弾性率は、約2.7TPa~約3.8TPaである。
【0062】
ここで図5を参照すると、CNTを連続的に合成するための装置を提供する。輸送モジュールは、基板506によって接続されているドラム501A及び501Bを含む。基板506は、触媒モジュール502、ナノチューブ合成モジュール503及び分離モジュール504を通して、ドラム501Aからドラム501Bへと連続的に動く。未処理の基板506Aは、触媒モジュール502によって修正され、触媒を含有する基板506Bを提供することに留意されたい。一部の実施形態では、触媒モジュール502は、その中で基板506Aが浸漬される触媒の溶液である。カーボンナノチューブは、移行の間にナノチューブ合成モジュール503を通して基板506B上に連続的に形成され、カーボンナノチューブを含む基板506Cを生じさせる。一部の実施形態では、ナノチューブ合成モジュール503は、CVDチャンバーである。基板506Cは、分離モジュール504によって連続的に処理され、付着したカーボンナノチューブを取り除き、基板506Aが得られ、これは次いで、ドラム501Bに収集される。一部の実施形態では、分離モジュール504は、基板506Cからの新たに形成されたCNTを機械的に剪断するブレードを含む。基板506Cから取り出されたカーボンナノチューブは、収集モジュール505においてプロセス506Dによって連続的に収集されることに留意されたい。一部の実施形態では、収集モジュール505は、分離モジュール504によって基板表面から分離されたCNTを収集するために適切に位置している、単純に空の容器である。上記の実施形態では、基板506は、生成工程の間に再循環されない。
【0063】
ここで図6を参照すると、CNTを連続的に合成するための別の装置を、模式的に例示する。輸送モジュールは、基板606によって接続されているドラム601A及び601Bを含む。基板606は、触媒モジュール602、ナノチューブ合成モジュール603及び分離モジュール604を通して、ドラム601Aからドラム601Bへと連続的に動く。未処理の基板606Aは、触媒モジュール602によって修正され、触媒を含有する基板606Bを提供することに留意されたい。一部の実施形態では、触媒モジュール502は、その中で基板606Aが浸漬される触媒の溶液である。カーボンナノチューブは、移行の間にナノチューブ合成モジュール603を通して基板606B上に連続的に形成され、基板506Cを生じさせる。一部の実施形態では、ナノチューブ合成モジュール603は、CVDチャンバーである。基板606Cは、分離モジュール604によって連続的に処理され、付着したカーボンナノチューブを取り除かれ、基板606Aが得られ、これは次いで、ドラム601Bに収集される。一部の実施形態では、分離モジュール604は、基板606Cからの新たに形成されたCNTを機械的に剪断するブレードを含む。基板606Cから取り出されたカーボンナノチューブは、収集モジュール605においてプロセス606Dによって連続的に収集されることを留意されたい。一部の実施形態では、収集モジュール605は、分離モジュール604によって基板表面から分離されたCNTを収集するために適切に位置している、単純に空の容器である。上記の実施形態では、基板は、生成工程を通して少なくとも一度再循環される。
【0064】
上記の実施形態の多くはナノチューブを連続的に合成することを記載してきたが、本明細書に記載されている方法及び装置は、非連続的に実行し得ることを当業者は認識する。
【0065】
図7は、例示的な分離モジュールを模式的に例示する。ドラム704は、触媒モジュール(図示せず)及びカーボンナノチューブ堆積モジュール(図示せず)によって処理されてきており、且つカーボンナノチューブでカバーされている基板701を、ツール700へと前進させ、これは、カーボンナノチューブ702を取り出し、カーボンナノチューブを欠いている基板703を提供する。一部の実施形態では、ツール700は、切断ブレードである。基板703は、ドラム705によって収集される。カーボンナノチューブ702は、容器706中に収集される。基板701は、例示するように、1つの側面上のみがカーボンナノチューブでコーティングされている。ナノチューブは、基板の両方の側面上で成長させることができ、且つ両方の側面がコーティングされている基板は上記のものと類似の様式で処理することができることを当業者は認識する。
【0066】
図8は、例示的な長方形の石英チャンバー800の水平図を例示し、これは、触媒を含有する複数の基板801を含むナノチューブ合成モジュールにおいて使用し得る。図9は、例示的な長方形の石英チャンバー900の斜視図を例示し、これは、触媒を含有する複数の基板901を含むナノチューブ合成モジュールにおいて使用し得る。石英チャンバーは、キャリアガス及び炭素供給原料のためのシャワーヘッド(図示せず)を含み、CNTを形成させるのに十分な温度にて加熱し得る。一部の実施形態では、チャンバーは、0.2インチ超の内側チャンバー厚さを有する。他の実施形態では、基板は、チャンバーによって同時に処理される。
【0067】
CNTは、例えば、ラマン分光法、UV分光法、可視分光法、近赤外分光法、蛍光X線光電子分光法、熱重量分析、原子間力顕微鏡法、走査トンネル顕微鏡法、走査型電子顕微鏡法及びトンネル電子顕微鏡法を含めた多数の技術によって特性決定することができる。上記の全部ではないが、多くの組合せは、カーボンナノチューブを十分に特性決定するのに十分である。
【0068】
一般に、グラフェンナノリボンは、これらに限定されないが、酸酸化(例えば、Kosynkin et al.,Nature,2009,458,872;Higginbotham et al.,ACS Nano,210,4,2596;Cataldo et al.,Carbon,2010,48,2596;Kang et al.,J.Mater.Chem.,2012,22,16283;及びDhakate et al.,Carbon 2011,49,4170)、プラズマエッチング(例えば、Jiao et al.,Nature,2009,458,877;Mohammadi et al.,Carbon,2013,52,451;及びJiao et al.,Nano Res 2010,3,387)、イオンのインターカレーション(例えば、Cano-Marques et al.,Nano Lett.2010,10,366)、金属粒子触媒作用(例えば、Elias et al.,Nano Lett.Nano Lett.,2010,10,366;及びParashar et.al.,Nanaoscale,2011,3,3876)、水素化(Talyzin et al.,ACS Nano,2011,5,5132)並びに音響化学(Xie et al.,J.Am.Chem.Soc.2011,DOI: 10.1021/ja203860)が含まれる技術分野において公知の通常の方法によってCNTから調製することができる。上記の方法のいずれかを使用して、本明細書に記載されているCNTからグラフェンナノリボンを調製し得る。ここで図14を参照すると、電子顕微鏡写真は、本明細書において、本明細書に記載の方法によって生成された高純度のグラフェンナノリボンを例示する。
【0069】
グラフェンナノプレートレットは、CNTから生成されたGNRのさらなる酸化によってCNTから生成し得る。したがって、本明細書に記載のGNPの生成は、GNRの仲介を介して進行することを当業者は理解する。例えば、GNPは、より高い温度及び/若しくはより長い反応時間の酸酸化によって、又はより高い温度にて若しくはより強制的な条件下でプラズマエッチングによって、GNRから作製することができる。ここで図16を参照すると、電子顕微鏡写真は、本明細書において、本明細書に記載の方法によって生成された高純度のグラフェンナノプレートレットを例示する。
【0070】
グラフェンナノプレートレット及びグラフェンナノリボンの混合物をまた本明細書において提供する。このような混合物は、グラフェンナノプレートレットへのグラフェンナノリボンの不完全な酸化によって、又は純粋なグラフェンナノリボンとグラフェンナノプレートレットとを混合することによって提供し得る。ここで図15を参照すると、電子顕微鏡写真は、本明細書において、本明細書に記載の方法によって生成された高純度のグラフェンナノリボン及びグラフェンナノプレートレットの混合物を例示する。グラフェンナノリボン及びグラフェンナノプレートレットの全ての混合物を、本明細書において認識する。したがって、混合物は、約0.001%のグラフェンナノリボン及び約99.999%のグラフェンナノプレートレットから、約99.999%のグラフェンナノリボン及び約0.0001%のグラフェンナノプレートレットの範囲であり得る。
【0071】
一部の実施形態では、1%のグラフェンナノリボン及び約99%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。他の実施形態では、5%のグラフェンナノリボン及び約95%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、10%のグラフェンナノリボン及び約90%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、20%のグラフェンナノリボン及び約80%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、30%のグラフェンナノリボン及び約70%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、40%のグラフェンナノリボン及び約60%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、50%のグラフェンナノリボン及び約50%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、60%のグラフェンナノリボン及び約40%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、70%のグラフェンナノリボン及び約30%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、80%のグラフェンナノリボン及び約20%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、90%のグラフェンナノリボン及び約10%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、95%のグラフェンナノリボン及び約5%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、99%のグラフェンナノリボン及び約1%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。
【0072】
一部の実施形態では、グラフェンナノリボンの均一な長さは、平均して、約10μm、約20μm、約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmである。他の実施形態では、均一な長さは、50μm~2cmの範囲でよい。一般に、均一な長さは、記述された長さの約+/-10%である。したがって、約100μmの均一な長さを有する試料は、90μm~110μmの長さのGNRを含む。
【0073】
一部の実施形態では、グラフェンナノリボンは、平均して約10μm、約20μm、約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmである均一な長さのカーボンナノチューブから作製される。
【0074】
一部の実施形態では、グラフェンナノリボンは、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度のものである。他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度のものであり、約10μm、約20μm、約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmの均一な長さのものである。
【0075】
一部の実施形態では、グラフェンナノプレートレットの均一な長さは、平均して、約10μm、約20μm、50μm、約100μm、約150μm又は約200μmである。他の実施形態では、均一な長さは、50μm~2cmの範囲でよい。一般に、均一な長さは、記述された長さの約+/-10%である。したがって、約100μmの均一な長さを有する試料は、90μm~110μmの長さのナノチューブを含む。
【0076】
一部の実施形態では、グラフェンナノプレートレットは、平均して約10μm、約20μm、約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmである均一な長さのカーボンナノチューブから作製される。
【0077】
一部の実施形態では、グラフェンナノプレートレットは、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度のものである。他の実施形態では、グラフェンナノリボンは、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度のものであり、約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmの均一な長さのものである。
【0078】
一部の実施形態では、1%のグラフェンナノリボン及び約99%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。他の実施形態では、5%のグラフェンナノリボン及び約95%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、10%のグラフェンナノリボン及び約90%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、20%のグラフェンナノリボン及び約80%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、30%のグラフェンナノリボン及び約70%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、40%のグラフェンナノリボン及び約60%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、50%のグラフェンナノリボン及び約50%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、60%のグラフェンナノリボン及び約40%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、70%のグラフェンナノリボン及び約30%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、80%のグラフェンナノリボン及び約20%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、90%のグラフェンナノリボン及び約10%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、95%のグラフェンナノリボン及び約5%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。また他の実施形態では、99%のグラフェンナノリボン及び約1%のグラフェンナノプレートレットの混合物を提供する。
【0079】
混合物中のグラフェンナノリボン及びグラフェンナノプレートレットは、純粋なグラフェンナノリボン及びグラフェンナノプレートレットについて上記で記載された同じ純度及び/又は均一な長さを有することができることを当業者は認識する。一部の実施形態では、グラフェンナノリボン及びグラフェンの混合物は、同じ純度及び同じ均一な長さを有する。他の実施形態では、グラフェンナノリボン及びグラフェンの混合物は、異なる純度及び同じ均一な長さを有する。また他の実施形態では、グラフェンナノリボン及びグラフェンの混合物は、同じ純度及び異なる長さを有する。
【0080】
グラフェンナノリボン及びグラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物の純度及び構造的均一性、例えば、長さ及び幅は、高い性能及び優れた質のグラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物を含有する生成物を一貫して提供する製造秩序に極めて重要である。グラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物の使用のいくつかの例は、ポリマー複合材料中の充填剤、金属表面上の保護コーティング、(金属表面の摩耗を低減させ、摩擦係数の低減をもたらす)潤滑剤添加物、コントラスト造影剤、ナノエレクトロニクス、トランジスタ材料、透明な伝導性フィルム、センサー、EVのためのLi-イオンバッテリーを含めたバッテリーのための電極材料、及び超コンデンサーとしてである。
【0081】
グラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、有用な油及び潤滑剤添加物である。一部の実施形態では、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度であるグラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油に加えたときに、安定な懸濁液を形成する。他の実施形態では、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度であり、且つ約50μm、約100μm、約150μm又は約200μmの均一な長さのものであるグラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油に加えたとき、安定な懸濁液を形成する。
【0082】
グラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油添加物として使用されるとき、摩擦係数を0.07未満へと低減させる。一部の実施形態では、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度のグラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油における摩擦係数を0.07未満へと低減させる。他の実施形態では、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度であり、且つ約50μm、約100μm、約150μm又は約200μm純度の均一な長さのものであるグラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油における摩擦係数を0.07未満へと低減させる。
【0083】
グラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油添加物として使用されるとき、摩擦係数を0.05未満へと低減させる。一部の実施形態では、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度のグラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤及び油における摩擦係数を0.07未満へと低減させる。他の実施形態では、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度であり、且つ約50μm、約100μm、約150μm又は約200μm純度の均一な長さのものであるグラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤及び油における摩擦係数を0.05未満へと低減させる。
【0084】
グラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油添加物として使用されるとき、燃料消費を改善させる。一部の実施形態では、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度のグラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油添加物として使用されるとき、3%超、5%超、10%超又は20%超、燃料消費を改善させる。他の実施形態では、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度であり、且つ約50μm、約100μm、約150μm又は約200μm純度の均一な長さのものであるグラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油添加物として使用されるとき、燃料消費を3%超、5%超、10%超又は20%超改善させる。
【0085】
グラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油添加物として使用されるとき、煙及び/又はNOx放出を低減させる。一部の実施形態では、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度のグラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油添加物として使用されるとき、煙及び/又はNOx放出を低減させる。他の実施形態では、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度であり、且つ約50μm、約100μm、約150μm又は約200μm純度の均一な長さのものであるグラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油添加物として使用されるとき、煙及び/又はNOx放出を低減させる。
【0086】
グラフェン添加物を含む潤滑剤又は油は、摩擦を低減させ、走行距離を増加させ、エンジン寿命を延長し、馬力及び加速を増加させ、エンジン騒音を低減させ、燃料効率を増加させる。理論に束縛されるものではないが、グラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物を含む潤滑剤は、全ての動いている構成要素を流体の保護フィルムでコーティングする。グラフェン添加物の極度な機械的強度は、動いているパーツを過剰な摩耗から保護することにおいて非常に重要である。
【0087】
一部の実施形態では、グラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油添加物として使用されるとき、エンジン摩耗を低減させる。他の実施形態では、グラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油添加物として使用されるとき、エンジン寿命を改善させる。理論に束縛されるものではないが、グラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油添加物として使用されるとき、エンジン構成要素上の保護コーティングを形成し得、これは、エンジン摩耗を低減させ、且つ/又はエンジン寿命を増加させる。一部の実施形態では、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度のグラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油添加物として使用されるとき、エンジン摩耗を低減させ、且つ/又はエンジン寿命を増加させる。他の実施形態では、90%超、95%超、99%超、99.5%超又は99.9%超の純度であり、且つ約50μm、約100μm、約150μm又は約200μm純度の均一な長さのものであるグラフェンナノリボン、グラフェンナノプレートレット又はこれらの混合物は、潤滑剤又は油中の添加物として使用されるとき、エンジン摩耗を低減させ、且つ/又はエンジン寿命を増加させる。
【0088】
最終的に、本発明を実行する代替方法が存在することに留意すべきである。したがって、本実施形態は、例示的なものであり、限定されるものではないと考えられ、本発明は本明細書において示した詳細には限定されないが、添付の特許請求の範囲及び同等物内で修正し得る。
【0089】
本明細書において引用した全ての公開資料及び特許は、その全体が参照により組み込まれている。
【0090】
下記の実施例は、例示の目的のみのために提供し、本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0091】
実施例1:多重壁のCNTの熱重量分析
CNTの炭素純度及び熱安定性を、熱重量分析器(TGA)であるTA instruments、Q500を使用して試験した。試料を、空気雰囲気(Praxair AI NDK)下にて温度から900℃まで10℃/分の速度で加熱し、900℃にて10分間保持し、その後、冷却した。炭素純度は、(全ての炭素質材料の重量)/(全ての炭素質材料の重量+触媒の重量)として定義される。屈曲点は、熱分解がその最大値に達する温度である。開始点は、材料の約10%が高温によって分解する温度である。図10は、本明細書に記載されている方法及び装置によって作製された多重壁のカーボンナノチューブについての熱安定性データを例示する。本明細書において作製された多重壁のカーボンナノチューブは、5~8つの壁及び10μm~200μmのカスタマイズ可能な長さを伴って約5nmの内径を有する。400℃未満の領域は、乏しい耐熱性を有するアモルファス炭素及び炭素質材料が分解した場所である。グラフから見ることができるように、本明細書に記載されている方法及び装置によって作製された多重壁のカーボンナノチューブ中にアモルファス炭素及び炭素質材料は殆ど存在しない。屈曲点は、721℃であり、開始点は、644℃であり、炭素純度は、99.4%超である。対照的に、市販のCNT(図示せず)において、屈曲点は、643℃であり、開始点は、583℃であり、炭素純度は、90%である。
【0092】
実施例2:多重壁のCNTのラマン分析
10mgのCNTを、約100mLのメタノールに懸濁し、黒っぽい溶液を形成させた。次いで、このように得られた懸濁液を約10分間超音波処理し、CNTの薄層がラマンスペクトルのために必要とされるため、懸濁液にCNTを均一に分散させた。次いで、懸濁液をSi基板上に広げ、薄層を形成させた。次いで、コーティングされたSi基板を、オーブン中に130℃にて10分間入れ、試料から分散化剤を蒸発させた。次いで、ラマンスペクトルを、532nmのレーザー放射、50sの積分、10×対物レンズ及び24mWのレーザーを伴うThermos Nicolet Dispersive XRラマン顕微鏡で記録した。D及びGバンド強度の比は、CNTの構造的完全性を検証する診断手段として使用されることが多い。
【0093】
図11は、本明細書に記載されている方法及び装置によって作製された多重壁のカーボンナノチューブ(実線)及び市販のCNT(破線)のラマンスペクトルを例示する。本明細書に記載されている方法及び装置によって作製された多重壁のカーボンナノチューブのID/IG及びIG’/IG比は、それぞれ、0.76及び0.44であり、一方、市販のCNTについての同じ比は、それぞれ、1.27及び0.4である。上記は、本明細書に記載されている方法及び装置によって作製された多重壁のカーボンナノチューブについての、他の方法によって生成されたものを超えたより大きな結晶化度を示し、これは熱安定性データと合致する。
【0094】
実施例3:多重壁のGNRの熱重量分析
GNRの炭素純度及び熱安定性を、熱重量分析器(TGA)であるTA instruments、Q500を使用して試験した。試料を、空気雰囲気(Praxair AI NDK)下で温度から900℃へと10℃/分の速度で加熱し、900℃にて10分間にて保持し、その後、冷却した。炭素純度は、(全ての炭素質材料の重量)/(全ての炭素質材料の重量+触媒の重量)として定義される。屈曲点は、熱分解がその最大値に達する温度である。開始点は、材料の約10%が高温によって分解する温度である。図13は、本明細書に記載の方法によって作製されたGNRについての熱安定性データを例示する。作製されたGNRは、10μm~200μmのカスタマイズ可能な長さを有する。400℃未満の領域は、乏しい耐熱性を有するアモルファス炭素及び炭素質材料が分解した場所である。グラフから見ることができるように、本明細書に記載されている方法及び装置によって作製されたGNR中にアモルファス炭素及び炭素質材料は殆ど存在しない。屈曲点は、690℃であり、炭素純度は、99.4%超である。
【0095】
実施例4:GNRのラマン分析
10mgのCNTを、約100mLのメタノールに懸濁し、黒っぽい溶液を形成させた。次いで、このように得られた懸濁液を約10分間超音波処理し、CNTの薄層がラマンスペクトルのために必要とされるため、懸濁液にCNTを均一に分散させた。次いで、懸濁液をSi基板上に広げ、薄層を形成させた。次いで、コーティングされたSi基板を、オーブン中に130℃にて10分間入れ、試料から分散化剤を蒸発させた。次いで、ラマンスペクトルを、532nmのレーザー放射、50sの積分、10×対物レンズ及び24mWのレーザーを伴うThermos Nicolet Dispersive XRラマン顕微鏡で記録した。D及びGバンド強度の比は、CNTの構造的完全性を検証する診断手段として使用されることが多い。
【0096】
図12は、本明細書に記載の方法によって作製されたGNRのラマンスペクトル(実線)を例示する。本明細書に記載の方法によって作製されたGNRのI2D/IG及びID/IGは、それぞれ、0.6及び0.75であり、これは、標準的なグラフェンのシグネチャを示し、化学的アンジッピングプロセスからの最小の欠陥を例示する。
【0097】
実施例5:グラフェンをベースとするエンジン油ナノ流体についての摩擦係数及び傷跡試験結果
標準的な4球試験機を使用して、モーター油SN5W-40中の99%超の純度を有する増加する濃度のNadditive-G100(約70%のナノプレートレット及び約30%のグラフェンナノリボン)の効果を測定した。試験器はクレードル中に固定されて保持された3つの鋼球に対して回転する、荷重下の1つの鋼球によって作動した。回転スピードは、60分の期間、40g/Fの定荷重下で75℃にて1200RPMであった。結果を図17において示し、これは、モーター油中の増加する量のN-additive-G100が摩擦係数及び傷跡直径を有意に低減させることを示す。
【0098】
実施例6:グラフェンをベースとするエンジン油ナノ流体の車両試験
【0099】
【表1】
【0100】
上記の結果は、グラフェン油添加物が、試験した車両において燃料消費を約10%~約20%増加させることを示す。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17