(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】タイヤ騒音試験方法、車両及び制御装置
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20230628BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
(21)【出願番号】P 2020529011
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2019026343
(87)【国際公開番号】W WO2020009120
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2018127058
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100203264
【氏名又は名称】塩川 未久
(72)【発明者】
【氏名】森 亮介
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-032087(JP,A)
【文献】特開2017-020961(JP,A)
【文献】国際公開第2016/051585(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 19/00
G01M 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を自動運転させて実行する、タイヤ騒音試験方法であって、
前記車両が所定位置に到達するか又は所定速度に達すると、制御部が、前記車両の原動機を非駆動状態で前記車両に惰行走行をさせるステップと、
測定器が、前記惰行走行中の前記車両のタイヤの騒音を測定するステップと、
前記制御部が、1回の前記タイヤ騒音試験方法を実行した際の、惰行走行を開始する時点における前記車両の速度から、前記タイヤの騒音を測定する区間の始点における前記車両の速度を減算することにより、減速分を算出するステップと、
前記制御部が、次回の前記タイヤ騒音試験方法を実行する際のタイヤの騒音を測定する区間の始点における予め設定された速度と、前記減速分とを足し合わせることにより、次回の前記タイヤ騒音試験方法の前記所定速度を算出するステップと、
を含む、タイヤ騒音試験方法。
【請求項2】
2つの前記測定器が、前記車両が走行する路面の幅方向の両側にそれぞれ位置し、
前記制御部は、前記惰行走行中、前記車両と前記2つの測定器との間の距離が等距離になるように、前記車両に位置を制御するステップをさらに含む、請求項1に記載のタイヤ騒音試験方法。
【請求項3】
前記制御するステップは、
前記制御部が、前記惰行走行中、前記路面の幅方向において、前記路面の幅方向の中心線から前記車両までの距離が所定範囲内にあるか否か判定するステップと、
前記制御部は、前記中心線から前記車両までの距離が前記所定範囲内にあると判定しないとき、当該距離に応じて、前記車両のタイヤの舵角を調整するステップと、を含む、請求項2に記載のタイヤ騒音試験方法。
【請求項4】
前記制御部が、前記惰行走行中、前記車両の進行方向の所定領域内に存在する障害物を検出すると、前記車両を減速又は停止させるステップをさらに含む、請求項1から3までの何れか一項に記載のタイヤ騒音試験方法。
【請求項5】
前記制御部が、前記惰行走行中、前記車両における異常事態の発生を検出すると、前記車両のブレーキを制御して前記車両を停止させるステップをさらに含む、請求項1から4までの何れか一項に記載のタイヤ騒音試験方法。
【請求項6】
自動運転してタイヤの騒音試験を実行する車両であって、
原動機と、
前記車両が所定位置に到達するか又は所定速度に達すると、前記原動機を非駆動状態で前記車両に惰行走行をさせる制御部と、を備え
、
前記制御部は、
1回の前記タイヤの騒音試験を実行した際の、惰行走行を開始する時点における前記車両の速度から、前記タイヤの騒音を測定する区間の始点における前記車両の速度を減算することにより、減速分を算出し、
次回の前記タイヤの騒音試験を実行する際のタイヤの騒音を測定する区間の始点における予め設定された速度と、前記減速分とを足し合わせることにより、次回の前記タイヤの騒音試験の前記所定速度を算出する、車両。
【請求項7】
車両に自動運転させてタイヤの騒音試験を実行する制御装置であって、
前記車両が所定位置に到達するか又は所定速度に達すると、前記車両の原動機を非駆動状態で前記車両に惰行走行をさせ
、
前記制御装置は、
1回の前記タイヤの騒音試験を実行した際の、惰行走行を開始する時点における前記車両の速度から、前記タイヤの騒音を測定する区間の始点における前記車両の速度を減算することにより、減速分を算出し、
次回の前記タイヤの騒音試験を実行する際のタイヤの騒音を測定する区間の始点における予め設定された速度と、前記減速分とを足し合わせることにより、次回の前記タイヤの騒音試験の前記所定速度を算出する、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ騒音試験方法、車両及び制御装置に関する。本出願は、2018年7月3日に日本国に特許出願された特願2018-127058の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ騒音試験方法として、台上騒音試験と、実車騒音試験とが知られている。台上騒音試験では、例えば特許文献1に記載されるように、ドラムの擬似路面をタイヤに接触させ、ドラムを回転させているときに、タイヤが発する騒音を測定する。実車騒音試験では、車両を実際に走行させているときに、タイヤが発する騒音を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、実車騒音試験では、実際に車両を走行させているため、台上騒音試験よりも、実態に即したタイヤの騒音データを取得することができる。しかしながら、従来の実車騒音試験には、例えば運転者が車両を走行させているため、効率が悪いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、実車騒音試験において効率が良い、タイヤ騒音試験方法、車両及び制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0007】
本発明のタイヤ騒音試験方法は、
車両を自動運転させて実行する、タイヤ騒音試験方法であって、
前記車両が所定位置に到達するか又は所定速度に達すると、制御部が、前記車両の原動機を非駆動状態で前記車両に惰行走行をさせるステップと、
測定器が、前記惰行走行中の前記車両のタイヤの騒音を測定するステップと、
を含む。
【0008】
本発明の車両は、
自動運転してタイヤの騒音試験を実行する車両であって、
原動機と、
前記車両が所定位置に到達するか又は所定速度に達すると、前記原動機を非駆動状態で前記車両に惰行走行をさせる制御部と、を備える。
【0009】
本発明の制御装置は、
車両に自動運転させてタイヤの騒音試験を実行する制御装置であって、
前記車両が所定位置に到達するか又は所定速度に達すると、前記車両の原動機を非駆動状態で前記車両に惰行走行をさせる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、実車騒音試験において効率が良い、タイヤ騒音試験方法、車両及び制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ騒音試験方法における試験コースの一例を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るタイヤ騒音試験方法におけるタイヤ騒音の測定結果の一例を示すグラフである。
【
図4】本発明の一実施形態に係るタイヤ騒音試験方法における車両の一例を示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るタイヤ騒音試験方法の流れを示すフローチャートである(その1)。
【
図6】本発明の一実施形態に係るタイヤ騒音試験方法の流れを示すフローチャートである(その2)。
【
図7】本発明の一実施形態に係るタイヤ騒音試験方法における車両の惰行走行中の動作例1を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態に係るタイヤ騒音試験方法における車両の惰行走行中の動作例2を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係るタイヤ騒音試験方法における制御装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
[試験コースの概要]
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ騒音試験方法における試験コース1の一例を示す平面図である。
図2は、
図1に示す測定区間5を示す平面図である。なお、本開示において、右側とは、
図1に示す車両10から見た右側を意味する。また、左側とは、
図1に示す車両10から見た左側を意味する。
【0014】
図1に示す試験コース1は、実車騒音試験に用いられる。実車騒音試験では、車両10が、例えば左廻りに、試験コース1を周回する。
図2に示すように、車両10は、騒音試験の対象となるタイヤ10aと、タイヤ10aが取り付けられる車体10bとを備える。車両10は、自動運転することができる。本開示において、「自動運転」とは、運転者が全く関与しない状態で、制御装置等(例えば、後述の
図4に示す制御部19又は外部機器等)が車両10の加速、操舵及び制御の全てを実行することにより、車両10が走行することである。例えば、車両10は、日本の国土交通省が定める自動化のレベル4で、自動運転する。
【0015】
図1に示すように、試験コース1は、ストレート及びコーナを含むオーバルトラックであってよい。試験コース1は、
図1に示すように、速度維持区間2と、加速区間3と、惰行走行区間4と、巡航区間6とを含む。
【0016】
速度維持区間2は、
図1に示すように、位置P1を始点とし、位置P2を終点とする。速度維持区間2は、コーナを含む。また、速度維持区間2には、傾斜角(バンク)が設けられる。速度維持区間2では、車両10は、速度維持区間2のコーナの外側を走行して遠心力を利用することにより、一定速度(例えば、60[km/h])を維持して走行する。
【0017】
加速区間3は、
図1に示すように、位置P2を始点とし、位置P3を終点とする。加速区間3は、ストレートを含む。加速区間3では、車両10は、例えば所定の加速率で、加速して走行する。
【0018】
惰行走行区間4は、
図1に示すように、位置P3を始点とし、位置P4を終点とする。惰行走行区間4は、ストレートを含む。また、惰行走行区間4は、
図1に示すように、測定区間5を含む。
【0019】
測定区間5は、
図1に示すように、位置P5を始点とし、位置P6を終点とする。測定区間5では、
図2に示す車両10のタイヤ10aが発する騒音が測定される。測定区間5には、
図2に示すように、測定器5R及び測定器5Lが設けられる。測定器5R及び測定器5Lは、路面5aの幅方向の両側にそれぞれ位置する。測定器5R及び測定器5Lは、例えば、タイヤ10aの騒音を集音可能なマイクロホンである。測定区間5の長さすなわち位置P5から位置P6までの距離、及び、測定器5R,5Lの配置位置は、例えばタイヤ騒音試験の規格に基づいて、適宜設定される。
【0020】
例えば、ECE R117によるタイヤ騒音試験では、
図2に示すように、測定区間5の長さは、20mとなる。また、測定器5R及び測定器5Lは、測定区間5の中央に配置される。さらに、測定器5R及び測定器5Lは、路面5aから高さ1.2mの位置に配置される。加えて、測定器5Rは、測定区間5の路面5aの幅方向の中心線Oから右側に7.5m離れた位置に設置される。測定器5Lは、測定区間5の路面5aの幅方向の中心線Oから左側に7.5m離れた位置に設置される。測定器5R及び測定器5Lは、それぞれ、車両10の右側及び左側において、車両10のタイヤ10aが発する騒音を集音する。
【0021】
ここで、車両10は、惰行走行区間4の始点である位置P3に到達するまでに、車両10の原動機を非駆動状態にする。車両10が位置P3に到達するまでに車両10の原動機を非駆動状態にすることで、測定区間5では、タイヤ10a以外から発生する車両10の騒音が低減する。このような制御によって、
図2に示す測定器5R及び測定器5Lは、タイヤ10aが発する騒音を精度良く集音することができる。
【0022】
図1に示す巡航区間6は、位置P4を始点とし、位置P1を終点とする。巡航区間6は、ストレート及びコーナを含む。巡航区間6では、車両10は、車両10の原動機を再び駆動状態にする。車両10は、巡航区間6を任意の速度で走行してよい。
【0023】
巡航区間6は、位置P7を含む。位置P7は、試験コース1に二台以上の車両10が存在する場合に、他の車両10が待機する位置である。
【0024】
なお、巡航区間6を車両10が走行している間に、
図2に示す測定器5R及び測定器5Lは、暗騒音を集音してよい。暗騒音は、測定対象となるタイヤ10aが発する騒音以外の騒音である。暗騒音は、主に、試験コース1の周囲環境で発生する騒音を含む。暗騒音が所定値よりも大きい場合、試験が中止されてよい。
【0025】
[試験の概要]
図3は、本発明の一実施形態に係るタイヤ騒音試験方法におけるタイヤ騒音の測定結果の一例を示すグラフである。
図3において、横軸は、車両10の速度を示す。縦軸は、タイヤ10aの騒音を示す。
【0026】
図3には、基準速度が速度80[km/h]である場合において、タイヤ10aの騒音を測定する例を示す。
図3に示すLeftプロットは、
図2に示す測定器5Lで集音されたデータである。
図3に示すRightプロットは、
図2に示す測定器5Rで集音されたデータである。
【0027】
例えば、ECE R117によるタイヤ騒音試験では、基準速度±10[km/h]の範囲内の9つの速度で、車両10が測定区間5を走行するときのタイヤ10aの騒音が測定される。基準速度が速度80[km/h]である場合では、
図3に示すように、車両10が72、74、76、78、80、82、84、86及び88[km/h]の速度で測定区間5を走行するときのタイヤ10aの騒音が測定される。このような測定によって、
図3に示すように、18個のプロットが得られる。さらに、得られた18個のプロットから、車両10の速度とタイヤ10aの騒音との間の相関を示す相関式を算出する。加えて、算出した相関式から、基準速度80[km/h]におけるタイヤ10aの騒音を算出する。
図3では、基準速度80[km/h]におけるタイヤ10aの騒音は、70.3[dB]と算出される。
【0028】
ここで、車両10が
図1に示す測定区間5を一回走行すると、
図2に示す測定器5R及び測定器5Lによって、Left及びRightの2個のプロットが得られる。例えば、車両10が
図1に示す測定区間5を80[km/h]で一回走行すると、
図3に示す80[km/h]におけるLeft及びRightの2個のプロットが得られる。つまり、
図3に示すような、18個のプロットを得る場合、車両10は、
図1に示す試験コース1を、
図3に示す72[km/h]~88[km/h]間の各速度で、9回走行することになる。
【0029】
なお、同一速度におけるLeftプロットとRightプロットとの差が大きくなる場合がある。この原因の一例として、
図2に示す路面5aの幅方向において、車両10から測定器5Rまでの距離と、車両10から測定器5Lまでの距離とが、等しくないことが挙げられる。このときに
図2に示す測定器5R,5Lが測定したタイヤ10aの騒音は、データとしての信頼性が低いため、使用することができない。従って、タイヤ騒音試験では、
図2に示す路面5aの幅方向において、車両10から測定器5Rまでの距離と、車両10から測定器5Lまでの距離とが、等しくなることが求められる。換言すると、タイヤ騒音試験では、車両10が、
図2に示す路面5aの中心線Oの付近を走行することが求められる。
【0030】
[車両の機能構成]
図4は、本発明の一実施形態に係るタイヤ騒音試験方法における車両10の一例を示すブロック図である。車両10は、車体10bに、原動機11と、変速機12と、ブレーキ13と、ステアリング14と、バッテリ15と、センサ部16と、通信部17と、記憶部18と、制御部19とを備える。
【0031】
原動機11は、タイヤ10aを回転させるための回転動力を提供する。原動機11の一例としては、エンジン、モータ、及び、エンジンとモータとの組合せ等が挙げられる。エンジンは、ガソリン又は軽油等の燃料によって、回転動力を提供する。エンジンは、限定ではないが、ガソリンを燃料とするガソリンエンジン、又は、軽油等を燃料とするディーゼルエンジン等であってよい。モータは、蓄電池又は燃料電池等を含む電力源から供給される電気エネルギーによって、回転動力を提供する。ただし、原動機11は、タイヤ10aを回転させるための回転動力を提供可能な任意の機器であってよい。
【0032】
原動機11は、ガソリンエンジンである場合、例えば、燃料噴射弁、シリンダ、ピストン、点火プラグ、クランクシャフト、吸気マニホールド及び吸気バルブ等を含んで構成される。吸気バルブは、吸気マニホールドを経由してシリンダに空気を供給する。燃料噴射弁は、吸気マニホールドを経由してシリンダに燃料を噴射する。シリンダに燃料及び空気が供給されると、ピストンは、シリンダ内の燃料及び空気の混合気を圧縮する。シリンダ内で混合気が圧縮されると、点火プラグは、電気火花を発生させ、シリンダ内で圧縮された混合気を爆発燃焼させる。シリンダ内で燃料又は混合気が爆発燃焼すると、クランクシャフトによって回転動力が生成される。この回転動力は、変速機12を介してタイヤ10aに伝達される。
【0033】
原動機11は、ディーゼルエンジンである場合、例えば、燃料噴射弁、シリンダ、ピストン、クランクシャフト及び吸気バルブ等を含んで構成される。吸気バルブは、シリンダに空気を供給する。シリンダ内に吸気が供給されると、ピストンは、シリンダ内の空気を圧縮する。シリンダ内の空気が圧縮されて発火点以上の温度になると、燃料噴射弁は、燃料をシリンダに噴射して、燃料を自己発火させる。シリンダ内で燃料が自己発火して爆発燃焼すると、クランクシャフトによって回転動力が生成される。この回転動力は、変速機12を介してタイヤ10aに伝達される。
【0034】
変速機12は、原動機11とタイヤ10aとの間の回転動力を伝達する経路に設けられる。変速機12は、制御部19の制御に基づいて、原動機11の回転速度を変速して、タイヤ10aに伝達する。また、変速機12は、制御部19の制御に基づいて、タイヤ10aを所定状態にする。この所定状態には、前方へ進行可能なドライブ状態、後方へ進行可能なリバース状態、タイヤ10aを原動機11から切り離すニュートラル状態、及び、タイヤ10aが停止状態を維持するパーキングロック状態が含まれる。
【0035】
ブレーキ13は、ブレーキ13A及びブレーキ13Bを有する。ブレーキ13Aは、車両10の減速用のブレーキである。例えば、ブレーキ13Aは、油圧式のブレーキである。ブレーキ13Aは、制御部19の制御に基づいて、タイヤ10aの回転速度を減速させる。ブレーキ13Bは、車両10の停止用のブレーキである。例えば、ブレーキ13Bは、機械式のブレーキである。ブレーキ13Bは、制御部19の制御に基づいて、タイヤ10aの回転を停止させる。
【0036】
ステアリング14は、タイヤ10aの舵角を調整する。ステアリング14によってタイヤ10aの舵角が調整されることで、車両10の進行方向が調整される。
【0037】
バッテリ15は、例えば、リチウムイオン電池である。バッテリ15は、車両10内の構成要素に電力を供給する。バッテリ15は、原動機11等に電力を供給する主バッテリと、センサ部16等に電力を供給する補助バッテリとを含んで構成されてよい。この場合、後述のように制御部19が原動機11を非駆動状態した後、補助バッテリが、車両10の構成要素に電力を供給してもよい。
【0038】
センサ部16は、車両10の周囲環境の情報を検出する。センサ部16は、検出した情報を制御部19に出力する。センサ部16は、例えば、GPS(Global Positioning System)、速度センサ、IMU(Inertial Measurement Unit)、障害物センサ及びカメラ等の少なくとも何れかを含んで構成される。
【0039】
センサ部16は、例えばGPSを含んで構成される場合、車両10の位置を検出する。センサ部16は、検出した車両10の位置を、制御部19に出力する。
【0040】
センサ部16は、例えば速度センサを含んで構成される場合、車両10の速度を検出する。センサ部16は、検出した速度を、制御部19に出力する。
【0041】
センサ部16は、例えばIMUを含んで構成される場合、車両10の姿勢及び加速度を検出する。センサ部16は、検出した姿勢及び加速度を、制御部19に出力する。IMUは、加速度センサ及びジャイロセンサを含んで構成されてよい。
【0042】
センサ部16は、例えば障害物センサを含んで構成される場合、車両10の進行方向の所定領域内に存在する障害物の存在を検出する。障害物センサは、レーザを含んで構成されてよい。この場合、障害物センサは、車両10の進行方向にレーザ光を投光し、障害物によって反射されたレーザ光を検出することにより、障害物の存在を検出する。
【0043】
センサ部16は、例えばカメラを含んで構成される場合、車両10が走行する路面の画像を撮像する。センサ部16は、撮像した画像を、制御部19に出力する。
【0044】
通信部17は、外部機器と無線通信する。通信部17は、例えば、任意の無線通信規格に対応する無線通信モジュールを含んで構成される。無線通信規格の例として、無線LAN、2G(2nd Generation)、3G(3rd Generation)、4G(4th Generation)、LTE(Long Term Evolution)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)及びPHS(Personal Handy-phone System)等が挙げられる。また、通信部17は、路車間通信の任意の規格に対応する通信モジュールを含んで構成されてよい。
【0045】
記憶部18は、半導体メモリ又は磁気メモリ等で構成されてよい。記憶部18は、各種情報及び制御部19を動作させるためのプログラム等を記憶する。記憶部18は、ワークメモリとして機能してもよい。
【0046】
記憶部18は、
図1に示す試験コース1のマップデータを格納する。当該マップデータは、3次元データであってよい。当該マップデータは、例えば、車両10が走行可能な路面の地形情報、位置P1~P7の位置情報、及び、
図2に示す路面5aの中心線Oの位置情報等を含む。また、記憶部18は、タイヤ騒音測定を実施する車両10の速度、すなわち、
図1に示す測定区間5の始点である位置P5における車両10の速度を記憶する。当該速度として、例えば、記憶部18は、
図3に示すような、72~88[km/h]間の9個の速度を記憶する。
【0047】
制御部19は、車両10の各機能ブロックをはじめとして、車両10の全体を制御及び管理するプロセッサである。制御部19は、制御手順を規定したプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ又は各機能の処理に特化した専用のプロセッサで構成されてよい。
【0048】
制御部19は、通信部17を介して外部機器から、タイヤ騒音試験の開始指示を受信し得る。外部機器は、例えば、
図1に示す試験コース1の周囲に設けられた操作基地局に設置される無線通信機器である。制御部19が当該開始指示を受信するとき、車両10は、例えば、
図1に示す試験コース1の位置P7に位置している。
【0049】
制御部19は、上記開始指示を受信すると、原動機11を駆動状態にする。制御部19は、ガソリンを燃料とするエンジンとしての原動機11を駆動状態に処理の一例として、イグニッションをオンにする。例えば、イグニッションをオンにすることは、制御部19が、エンジンとしての原動機11の燃料噴射弁に駆動信号を出力して、燃料噴射弁にシリンダ又は吸気マニホールドへ燃料を噴射させることを含む。また、イグニッションをオンにすることは、原動機11がガソエリンエンジンである場合、制御部19がエンジンの点火プラグに電流を供給して、点火プラグによる電気火花を発生させ、シリンダ内の燃料又は混合気を爆発燃焼させることを含む。
【0050】
制御部19は、原動機11を駆動状態にすると、変速機12を制御してタイヤ10aをドライブ状態にし、車両10を自動運転させる。制御部19は、車両10の自動運転中、センサ部16の検出結果に基づいて、ステアリング14等を適宜制御する。
【0051】
制御部19は、自動運転の開始後、センサ部16の検出結果に基づいて、車両10が
図1に示す速度維持区間2に進入することを検出し得る。例えば、制御部19は、センサ部16に含まれるGPSの検出結果に基づいて、車両10の位置を検出する。さらに、制御部19は、車両10の進行方向において、検出した車両10の位置と、記憶部18に格納された位置P1の位置とが略一致するとき、車両10が
図1に示す速度維持区間2に進入することを検出する。
【0052】
制御部19は、車両10が
図1に示す速度維持区間2に進入することを検出すると、車両10の速度が一定速度に維持されるように制御する。例えば、制御部19は、車両10が
図1に示す速度維持区間2のコーナの外側を走行するように制御することにより、車両10の速度が一定速度に維持されるように制御する。
【0053】
制御部19は、車両10が
図1に示す速度維持区間2へ進入した後、センサ部16の検出結果に基づいて、車両10が
図1に示す加速区間3に進入することを検出し得る。例えば、制御部19は、センサ部16に含まれるGPSの検出結果に基づいて、車両10の位置を検出する。さらに、制御部19は、車両10の進行方向において、検出した車両10の位置と、記憶部18に格納された位置P2の位置とが略一致するとき、車両10が
図1に示す加速区間3に進入することを検出する。制御部19は、車両10が
図1に示す加速区間3に進入することを検出すると、原動機11等を適宜制御して、例えば所定の加速率で、車両10を加速させる。
【0054】
制御部19は、車両10の加速中、車両10が所定位置に到達するか又は所定速度に達すると、原動機11を非駆動状態にする。制御部19は、原動機11がエンジンである場合、原動機11を非駆動状態にする処理の一例として、イグニッションをオフにする。例えば、イグニッションをオフにすることは、制御部19が、原動機11の燃料噴射弁へ停止信号を出力することを含む。また、イグニッションオフにすることは、原動機11がガソリンエンジンである場合、制御部19が、点火プラグへの通電を停止させることを含む。なお、本開示では、原動機11を非駆動状態にした後も、バッテリ15は、原動機11を除く車両10の構成要素へ電力を供給する。
【0055】
ここで、上記所定位置は、例えば、
図1に示す位置P3である。車両10の所定位置への到達に基づいて原動機11を非駆動状態にする場合、まず、制御部19は、センサ部16に含まれるGPSの検出結果に基づいて、車両10の位置を検出する。さらに、制御部19は、車両10の進行方向において、検出した車両10の位置と、記憶部18に格納された位置P3の位置とが略一致するとき、原動機11を非駆動状態にする。なお、制御部19は、位置P3に到達した時点で原動機11を非駆動状態にしてもよいし、位置P3に到達する前に原動機11を非駆動状態にしてもよい。制御部19は、検出した車両10の位置と、記憶部18に格納された位置P3の位置とが略一致すると判定しないとき、すなわち、車両10が位置P3に未到達であるとき、車両10を加速し続ける。
【0056】
また、上記所定速度は、タイヤ10aの騒音測定を実施する車両10の速度に基づいて、算出される速度である。例えば、所定速度は、
図1に示す測定区間5の始点である位置P5における車両10の速度と、車両10が
図1に示す位置P3から位置P5までを走行する間に減少する車両10の速度分(以下、「減速分」ともいう)とを足し合わせることにより、算出される。所定速度の算出方法の詳細は、後述する。車両10の所定速度への到達に基づいて原動機11を非駆動状態にする場合、まず、制御部19は、センサ部16に含まれる速度センサの検出結果に基づいて、車両10の速度を検出する。さらに、制御部19は、検出した車両10の速度が所定速度に達すると、原動機11を非駆動状態にする。
【0057】
制御部19は、原動機11を非駆動状態にすると、変速機12を制御して、タイヤ10aを原動機11から切り離すニュートラル状態にし、車両10に惰行走行をさせる。このような制御によって、車両10は、
図1に示す惰行走行区間4を惰行走行する。さらに、惰行走行区間4内の測定区間5では、車両10が原動機11を非駆動状態にすることで、タイヤ10a以外から発生する車両10の騒音が低減する。このような制御によって、
図2に示す測定器5R及び測定器5Lは、タイヤ10aの騒音を精度良く集音することができる。
【0058】
なお、制御部19は、
図1に示す惰行走行区間4の惰行走行中、次回のタイヤ騒音測定に用いる上記所定速度を算出するために、上記減速分を算出しておいてよい。上記減速分の算出の一例として、まず、制御部19は、センサ部16に含まれるGPS及び速度センサの検出結果に基づいて、惰行走行を開始する時点である
図1に示す位置P3における車両10の速度を検出する。次に、制御部19は、センサ部16に含まれるGPS及び速度センサの検出結果に基づいて、測定区間5の始点である
図1に示す位置P5における車両10の速度を検出する。さらに、制御部19は、
図1に示す位置P3における速度から
図1に示す位置P5における速度を減算することにより、減速分を算出する。例えば、制御部19は、式(1)によって、減速分を算出する。
VR=VP3-VP5 式(1)
式(1)において、VRは、減速分である。VP3は、
図1に示す位置P3における車両10の速度である。VP5は、
図1に示す位置P5における車両10の速度である。なお、制御部19は、算出した減速分を、記憶部18に記憶させる。
【0059】
また、制御部19は、惰行走行中、
図2に示す路面5aの幅方向において、車両10と
図2に示す測定器5Rとの間の距離と、車両10と
図2に示す測定器5Lとの間の距離が等距離になるように制御する。この処理の詳細は、下記の[惰行走行中の処理例1]にて説明する。また、制御部19は、惰行走行中、車両10の進行方向の所定領域内に存在する障害物を検出すると、車両10を減速させる。この処理の詳細は、下記の[惰行走行中の処理例2]にて説明する。
【0060】
制御部19は、惰行走行中、センサ部16の検出結果に基づいて、車両10が
図1に示す位置P4に到達することを検出し得る。例えば、制御部19は、センサ部16に含まれるGPSの検出結果に基づいて、車両10の位置を検出する。さらに、制御部19は、車両10の進行方向において、検出した車両10の位置と、記憶部18に格納された位置P4の位置とが略一致するとき、車両10が
図1に示す位置P4に到達することを検出する。制御部19は、車両10が
図1に示す惰行走行区間4の終点である位置P4に到達すると、原動機11を再び駆動状態にする。制御部19は、原動機11を再び駆動状態にすると、変速機12を制御してタイヤ10aをドライブ状態にし、車両10を自動運転させる。このような制御によって、車両10は、
図1に示す巡航区間6を自動運転する。
【0061】
制御部19は、
図1に示す巡航区間6の自動運転中、測定結果のフィードバックをしてよい。フィードバックの一例として、制御部19は、次回のタイヤ騒音測定において用いる上記所定速度を算出してよい。
【0062】
所定速度の算出の一例として、まず、制御部19は、記憶部18から、タイヤ10aの騒音測定が未実施である速度を1つ抽出する。この抽出した速度が、次回のタイヤ騒音測定において
図1に示す測定区間5の始点である位置P5における車両10の(予め設定された)速度となり得る。次に、制御部19は、抽出した車両10の速度と、記憶部18に格納された今回の減速分とを足し合わせて、次回のタイヤ騒音測定に用いる所定速度を算出する。例えば、制御部19は、式(2)によって、次回のタイヤ騒音測定に用いる所定速度を算出する。
VNP3=VNP5+VR 式(2)
式(2)において、VNP3は、次回のタイヤ騒音測定に用いる所定速度である。VNP5は、制御部19によって抽出されたタイヤ10aの騒音測定が未実施である速度である。つまり、VNP5は、次回のタイヤ騒音測定において
図1に示す測定区間5の始点である位置P5における車両10の速度となり得る。VRは、上記式(1)によって算出される減速分である。
【0063】
なお、上記所定速度の算出例では、制御部19は、次回のタイヤ騒音測定の際に、
図1に示す位置P3で車両10の速度が算出した所定速度となるように、
図1に示す加速区間3における車両10の加速率を算出する。このような制御によって、次のタイヤ騒音測定では、車両10が
図1に示す位置P3に達したときに、車両10の速度が所定速度に達し得る。
【0064】
ここで、上記減速分は、タイヤ10aと路面との間で摩擦が発生することにより、生じ得る。タイヤ10aの表面形状は、タイヤ10aの種類に応じて異なる。そのため、タイヤ10aの種類に応じて、上記減速分は、変化し得る。このような場合でも、本実施形態によれば、上述の制御部19の制御によって、タイヤ10aの種類に応じた、所定速度を自動的に算出することができる。このような制御により、本実施形態によれば、効率良くタイヤ騒音試験を実行することができる。また、このような制御により、所望速度におけるタイヤ10aの騒音を測定することができる。
【0065】
[惰行走行中の処理例1]
次に、惰行走行中の制御部19の処理例1について説明する。
【0066】
制御部19は、惰行走行中、
図2に示す路面5aの幅方向において、車両10と
図2に示す測定器5Rとの間の距離と、車両10と
図2に示す測定器5Lとの間の距離が等距離になるように制御する。この制御の一例として、制御部19は、車両10が
図2に示す測定区間5の路面5aの中心付近を走行するよう制御してよい。以下、この制御例を説明する。
【0067】
制御部19は、惰行走行中、
図2に示す路面5aの幅方向において、路面5aの中心線Oから車両10までの距離が所定範囲内であるか否か判定する。例えば、まず、制御部19は、センサ部16に含まれるGPSの検出結果に基づいて、車両10の位置を検出する。次に、制御部19は、記憶部18から、
図2に示す路面5aの中心線Oの位置を取得する。さらに、制御部19は、検出した車両10の位置及び取得した中心線Oの位置に基づいて、
図2に示す路面5aの幅方向において、路面5aの中心線Oから車両10までの距離が所定範囲内にあるか否か判定する。なお、所定範囲は、
図2に示す測定器5Rと測定器5Lとの間の距離に基づいて設定されてよい。
【0068】
制御部19は、路面5aの中心線Oから車両10までの距離が所定範囲内にあると判定しないとき、当該距離に応じて、ステアリング14を制御してタイヤ10aの舵角を調整する。このような制御によって、本実施形態に係る車両10は、例えば運転者が車両10を走行させる場合よりも、路面5aの中心付近を精度良く走行することができる。車両10が路面5aの中心付近を精度良く走行することで、
図2に示す測定器5R及び測定器5Lは、タイヤ10aの騒音をより精度良く測定することができる。
【0069】
[惰行走行中の処理例2]
次に、惰行走行中の制御部19の処理例2について説明する。
【0070】
制御部19は、センサ部16に含まれる障害物センサの検出結果に基づいて、車両10の進行方向の所定領域内に障害物が存在するか否か判定する。制御部19は、車両10の進行方向の所定領域内に障害物が存在すると判定するとき、ブレーキ13Aを制御して、車両10を減速させる。車両10が減速している間、例えば障害物が動物である場合、動物は、車両10から離れることができる。このような制御によって、惰行走行中の車両10の安全性を担保することができる。なお、制御部19は、車両10の進行方向の所定領域内に障害物が存在すると判定するとき、ブレーキ13A,13Bを制御して、車両10を停止させてもよい。
【0071】
また、制御部19は、車両10における異常事態が発生したか否か判定する。車両10における異常事態の例として、車両10の走行に関する構成要素(例えば、ステアリング14)の故障等が挙げられる。車両10における異常事態が発生すると、車両10は、自動運転を維持できない場合がある。そこで、制御部19は、車両10における異常事態の発生を検出すると、ブレーキ13Aを制御して車両10を減速させる。さらに、制御部19は、ブレーキ13Bを制御して、車両10を停止させる。このような制御によって、惰行走行中の車両10の安全性をより確実に担保することができる。
【0072】
[車両の動作]
図5は、本発明の一実施形態に係るタイヤ騒音試験方法の流れを示すフローチャートである(その1)。
図6は、本発明の一実施形態に係るタイヤ騒音試験方法の流れを示すフローチャートである(その2)。例えば、制御部19は、通信部17を介して外部機器から、試験の開始指示を受信すると、
図5に示す処理を開始する。車両10は、
図5に示す処理の開始時、
図1に示す試験コース1の位置P7に位置している。
【0073】
制御部19は、原動機11を駆動状態にする(ステップS10)。制御部19は、原動機11を駆動状態にすると、変速機12を制御してタイヤ10aをドライブ状態にし(ステップS11)、車両10を自動運転させる。
【0074】
制御部19は、車両10が
図1に示す速度維持区間2に進入することを検出する(ステップS12)。制御部19は、車両10が速度維持区間2に進入することを検出すると、車両10の速度が一定速度に維持されるように制御する(ステップS13)。
【0075】
制御部19は、車両10が
図1に示す加速区間3に進入することを検出する(ステップS14)。制御部19は、車両10が加速区間3に進入することを検出すると、原動機11等を適宜制御して、車両10を加速させる(ステップS15)。
【0076】
制御部19は、センサ部16の検出結果に基づいて、車両10が所定位置としての
図1に示す位置P3に到達するか否か判定する(ステップS16)。制御部19は、車両10が所定位置としての
図1に示す位置P3に到達すると判定するとき(ステップS16:Yes)、
図6に示すステップS17の処理に進む。一方、制御部19は、車両10が所定位置としての
図1に示す位置P3に到達すると判定しないとき(ステップS16:No)、ステップS15の処理に戻る。
【0077】
図6に示すステップS17の処理では、制御部19は、原動機11を非駆動状態にする。制御部19は、原動機11を非駆動状態にすると、変速機12を制御してタイヤ10aをニュートラル状態にし(ステップS18)、車両10を惰行走行させる。このような制御によって、車両10は、
図1に示す惰行走行区間4を惰行走行する。
【0078】
制御部19は、惰行走行中、例えば上述の式(1)によって、減速分を算出して(ステップS19)、記憶部18に記憶させる。また、車両10が
図1に示す測定区間5を走行している間、
図2に示す測定器5R及び測定器5Lによって、タイヤ10aが発する騒音が集音される。
【0079】
制御部19は、センサ部16の検出結果に基づいて、車両10が
図1に示す惰行走行区間4の終点である位置P4に到達するか否か判定する(ステップS20)。制御部19は、車両10が
図1に示す惰行走行区間4の終点である位置P4に到達すると判定するとき(ステップS20:Yes)、ステップS21の処理に進む。一方、制御部19は、車両10が
図1に示す惰行走行区間4の終点である位置P4に到達すると判定しないとき(ステップS20:No)、ステップS20の処理を再び行う。
【0080】
ステップS21の処理では、制御部19は、原動機11を駆動状態にする。制御部19は、原動機11を駆動状態にすると、変速機12を制御してタイヤ10aをドライブ状態にして(ステップS22)、車両10に自動運転をさせる。このような制御によって、車両10は、
図1に示す巡航区間6を自動運転する。
【0081】
制御部19は、試験を終了するか否か判定する(ステップS23)。例えば、制御部19は、記憶部18に格納された各速度でタイヤ10aの騒音測定が実施されたと判定するとき、試験を終了すると判定する。制御部19は、試験を終了すると判定するとき(ステップS23:Yes)、
図5及び
図6に示す処理を終了する。一方、制御部19は、試験を終了すると判定しないとき(ステップS23:No)、ステップS24の処理に進む。
【0082】
ステップS24の処理では、制御部19は、測定結果のフィードバックをする。例えば、制御部19は、上述の式(2)と、ステップS19の処理で算出した減速分とに基づいて、
図5に示す次のステップS16の処理で用いる所定速度を算出してよい。換言すると、制御部19は、上述の式(2)と、1回のタイヤ騒音試験方法を実行した際に算出した減速分とに基づいて、次回のタイヤ騒音試験方法の所定速度を算出してよい。この場合、
図5に示す次のステップS16の処理では、制御部19は、センサ部16の検出結果に基づいて、車両10の速度が所定速度に達するか否か判定してよい。
図5に示す次のステップS16の処理では、制御部19は、車両10の速度が所定速度に達すると判定するとき(ステップS16:Yes)、
図6に示すステップS17の処理に進む。一方、制御部19は、
図5に示す次のステップS16の処理において車両10の速度が所定速度に達すると判定しないとき(ステップS16:No)、
図5に示すステップS15の処理に戻る。
【0083】
なお、制御部19は、
図5に示す1回目のステップS16の処理において、車両10が所定速度に到達するか否か判定してもよい。この場合、制御部19は、車両10が所定速度に達すると判定するとき(ステップS16:Yes)、
図6に示すステップS17の処理に進む。一方、制御部19は、車両10が所定速度に達すると判定しないとき(ステップS16:No)、
図5に示すステップS15の処理に戻る。
【0084】
[惰行走行中の動作例1]
図7は、本発明の一実施形態に係るタイヤ騒音試験方法における車両10の惰行走行中の動作例1を示すフローチャートである。例えば、制御部19は、
図6に示すステップS18の処理の実行後、
図7に示す処理を開始する。また、制御部19は、
図6に示すステップS21の処理の実行前に、
図7に示す処理を終了する。
【0085】
制御部19は、センサ部16に含まれるGPSの検出結果に基づいて、車両10の位置を検出する(ステップS30)。さらに、制御部19は、記憶部18から、
図2に示す路面5aの中心線Oの位置を取得する(ステップS31)。
【0086】
制御部19は、
図2に示す路面5aの幅方向において、路面5aの中心線Oから車両10までの距離が所定範囲内にあるか否か判定する(ステップS32)。制御部19は、路面5aの中心線Oから車両10までの距離が所定範囲内にあると判定するとき(ステップS32:Yes)、ステップS30の処理に戻る。一方、制御部19は、路面5aの中心線Oから車両10までの距離が所定範囲内にあると判定しないとき(ステップS32:No)、ステップS33の処理に進む。
【0087】
ステップS33の処理では、制御部19は、路面5aの中心線Oから車両10までの距離に応じて、ステアリング14を制御してタイヤ10aの舵角を調整する。制御部19は、ステップS33の処理後、ステップS30の処理に戻る。
【0088】
[惰行走行中の動作例2]
図8は、本発明の一実施形態に係るタイヤ騒音試験方法における車両10の惰行走行中の動作例2を示すフローチャートである。例えば、制御部19は、
図6に示すステップS18の処理の実行後、
図8に示す処理を開始する。また、制御部19は、
図6に示すステップS21の処理の実行前に、
図8に示す処理を終了する。なお、制御部19は、
図7に示す処理と並行して、
図8に示す処理を実行してよい。
【0089】
制御部19は、センサ部16に含まれる障害物センサの検出結果に基づいて、車両10の進行方向の所定領域内に障害物が存在するか否か判定する(ステップS40)。制御部19は、車両10の進行方向の所定領域内に障害物が存在すると判定するとき(ステップS40:Yes)、ステップS41の処理に進む。一方、制御部19は、車両10の進行方向の所定領域内に障害物が存在すると判定しないとき(ステップS40:No)、ステップS42の処理に進む。
【0090】
ステップS41の処理では、制御部19は、ブレーキ13Aを制御して、車両10を減速させる。車両10が減速している間、例えば障害物が動物である場合、動物は、車両10から離れることができる。
【0091】
ステップS42の処理では、制御部19は、車両10における異常事態が発生したか否か判定する。制御部19は、車両10における異常事態が発生したと判定するとき(ステップS42:Yes)、ステップS43の処理に進む。一方、制御部19は、車両10における異常事態が発生したと判定しないとき(ステップS42:No)、ステップS40の処理に戻る。
【0092】
ステップS43の処理では、制御部19は、ブレーキ13Aを制御して、車両10を減速させる。さらに、制御部19は、ブレーキ13Bを制御して、車両10を停止させる(ステップS44)。
【0093】
なお、制御部19は、ステップS41の処理において、ブレーキ13A,13Bを制御して、車両10を停止させてもよい。
【0094】
以上のように、本実施形態に係るタイヤ10aの試験方法では、車両10は、所定位置としての
図1に示す位置P3に到達するか又は所定速度に達すると、原動機11を非駆動状態にする。このような制御によって、以下に説明するように、実車騒音試験において、効率が良いタイヤ騒音試験方法を提供することができる。
【0095】
比較例として、運転者が車両10を運転して、タイヤ騒音試験を実施する例を想定する。また、比較例では、原動機11は、ガソリンを燃料とするエンジンであるものとする。比較例では、運転者が
図1に示す位置P3を視認しながら車両10が位置P3に到達すると判断するか、又は、運転者が車両10のスピードメータを視認しながら車両10が所定速度に到達すると判断することが求められる。つまり、比較例では、運転者がイグニッションをオフにするタイミングを判断する。そのため、比較例では、正確なタイミングで、イグニッションをオフにすることができない場合がある。正確なタイミングでイグニッションをオフにできないと、タイヤ騒音試験を効率良く実行することができない。
【0096】
これに対し、本実施形態では、車両10の制御部19が、車両10が位置P3に到達するか又は所定速度に達するかを判定する。このような制御によって、本実施形態によれば、正確なタイミングで、イグニッションをオフすることができ、タイヤ騒音試験を効率良く実行することができる。
【0097】
また、比較例では、運転者を訓練することが求められる。比較例では、運転者を訓練することが求められるため、タイヤ騒音試験を実行するためのコストが増加する場合がある。
【0098】
これに対し、本実施形態では、運転者を訓練する必要がない。そのため、本実施形態によれば、比較例のように、タイヤ騒音試験を実行するためのコストの増加を抑制することができる。
【0099】
本発明に係るタイヤ騒音試験方法は、上述した実施形態及び変形例に示す具体的な構成に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない限りで、種々の変形、変更が可能である。
【0100】
例えば、上記実施形態では、タイヤ騒音試験方法は、車両10が実行するものとして説明した。ただし、車両10とは異なる装置が、車両10に、タイヤ騒音試験方法を実行させてよい。
図9に、本発明の一実施形態に係るタイヤ騒音試験方法における制御装置20の一例を示す。
図9に示す車両10Aは、制御装置20を備える。制御装置20は、車両10Aに自動運転させてタイヤの騒音試験を実行することができる。
図9に示す制御装置20は、センサ部16と、通信部17と、記憶部18と、制御部19と、バッテリ21とを有する。バッテリ21は、例えば、リチウムイオン電池である。バッテリ21は、制御装置20内の構成要素に電力を供給する。
図9に示す制御装置20の制御部19は、車両10Aが所定位置に到達するか又は所定速度に達すると、車両10Aの原動機11を非駆動状態で車両10Aに惰行走行をさせる。
【0101】
例えば、上記実施形態では、タイヤ騒音試験方法は、車両10が備える制御部19が実行するものとして説明した。ただし、車両10の外部に配置される他の制御装置の指示に基づいて、車両10によるタイヤ騒音試験方法が実行されてよい。この場合、車両10の制御部19は、通信部17を介して車両10の外部に配置される他の制御装置の指示に基づいて、タイヤ騒音試験方法する。
【0102】
例えば、上記実施形態では、車両10は、制御部19を備えるものとして説明した。ただし、車両10は、制御部19に加えて、制御部19を監視するための補助制御部を備えてよい。この場合、補助制御部は、車両10の惰行走行中、車両10における異常事態が発生したか否か判定してよい。さらに、補助制御部は、車両10における異常事態の発生を検出すると、ブレーキ13A,13Bを制御して、車両10を停止させてよい。このような制御によって、制御部19に異常が生じた場合でも、車両10の安全を担保することができる。
【0103】
例えば、上記実施形態では、制御部19は、センサ部16に含まれるGPSの検出結果に基づいて、車両10の位置を検出する例を説明した。ただし、車両10の位置を検出するセンサ部16の検出結果は、GPSセンサの検出結果に限定されない。例えば、制御部19は、センサ部16に含まれる任意の構成要素の検出結果又は任意の構成要素の検出結果の組合せに基づいて、車両10の位置を検出してよい。
【0104】
例えば、上記実施形態では、センサ部16の検出結果に基づいて、車両10の位置を検出する例を説明した。ただし、車両10の位置を検出する方法は、これに限定されない。例えば、制御部19は、路車間通信によって、車両10の位置を検出してもよい。路車間通信は、車両10と、
図1に示す試験コース1に設置された通信機器との間で実行される双方向通信である。この例では、制御部19は、
図1に示す位置P3に配置された通信機器と通信部17を介して通信することにより、車両10の位置が位置P3であると検出してよい。
【0105】
例えば、上記実施形態では、タイヤ騒音試験の規格として、ECE R117によるタイヤ騒音試験を例に挙げて説明した。ただし、本開示のタイヤ騒音試験方法は、任意の規格のタイヤ騒音試験に用いられてよい。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明によれば、実車騒音試験において効率が良い、タイヤ騒音試験方法、車両及び制御装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0107】
1:試験コース、 2:速度維持区間、 3:加速区間、 4:惰行走行区間、 5:測定区間、 5a:路面、 5R,5L:測定器、 6:巡航区間、 10,10A:車両、 10a:タイヤ、 10b:車体、 11:原動機、 12:変速機、 13,13A,13B:ブレーキ、 14:ステアリング、 15:バッテリ、 16:センサ部、 17:通信部、 18:記憶部、 19:制御部