(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】認知的及び精神的健康のためのプロバイオティクス
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20230628BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20230628BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20230628BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20230628BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230628BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230628BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20230628BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230628BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230628BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230628BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230628BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230628BHJP
A61P 1/00 20060101ALN20230628BHJP
【FI】
C12N1/20 E
A61K35/747
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/28
A61P25/18
A23L33/135
A61K9/14
A61K9/19
A61K47/26
A61K47/22
A61P43/00 121
A61P1/00
(21)【出願番号】P 2020533764
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2018085469
(87)【国際公開番号】W WO2019121666
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-06
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【微生物の受託番号】DSMZ DSM32661
【微生物の受託番号】DSMZ DSM32654
【微生物の受託番号】DSMZ DSM32655
(73)【特許権者】
【識別番号】397060588
【氏名又は名称】デュポン ニュートリション バイオサイエンシーズ エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ロッタ・ステンマン
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・レフティネン
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-519759(JP,A)
【文献】特開2009-102292(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047777(WO,A1)
【文献】特開2015-213501(JP,A)
【文献】国際公開第2018/073963(WO,A1)
【文献】特表2021-506302(JP,A)
【文献】特表2021-506299(JP,A)
【文献】Microorganisms,2021年,9,1026, page 1-12
【文献】Alzheimer's & Dementia,2017年07月,13(7S Part 26),p.1265, P4-028
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
C12N 1/20
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における
不安障害、抑うつ、及び記憶喪失から選択される精神疾
患を予防及び/又は治療する際に使用するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)種の細菌
であって、DSMZに寄託番号DSM32661を付して登録された菌株Lpc-37である、前記細菌。
【請求項2】
不安障害、抑うつ、及び記憶喪失から選択される精神疾
患を予防及び/又は治療する際に使用するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)を含む組成物
であって、前記ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)はDSMZに寄託番号DSM32661を付して登録された菌株Lpc-37である、前記組成物。
【請求項3】
前記組成物は、本質的にラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)の単一菌株から成る、請求項
2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)を更に含む、請求項
2に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、食品、栄養補助食品又は薬学的に許容される組成物の形態にある、請求項
2~
4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、スプレー乾燥又は凍結乾燥組成物である、請求項
2~
4の何れか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、凍結防止剤を含む、請求項
6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)は、前記組成物中に、1回分当たり10
6~10
12、例えば1回分当たり10
8~10
12CFU、任意選択的に1回分当たり10
10CFUの量で存在する、請求項
2~
7の何れか
一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)は、DSMZにDSM32655として寄託されたラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株LP12418又はDSMZにDSM32654として寄託されたラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株LP12407である、請求項
4に記載の組成物。
【請求項10】
DSMZにDSM32655として寄託されたラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株LP12418及びDSMZにDSM32654として寄託されたラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株LP12407から成る群から選択される少なくとも1つの他の細菌菌株と組み合わせて、個別に、連続的に又は同時に使用される、不安障害、抑うつ、及び記憶喪失から選択される精神疾
患を予防及び/又は治療する際
に使用するための、DSMZに寄託番号DSM32661を付して登録されたラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)菌株Lpc-37
を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物における精神疾患、精神的健康に影響を及ぼす症状及び/又は慢性ストレスに関連する状態を予防及び/又は治療する際に使用するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)種の細菌及び/又はラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)を含む組成物に関する。詳細には、本発明は、うつ病、不安、予期されるストレス、認知機能における障害及び認知症等の心理学的症状を特徴とする慢性若しくは急性ストレス関連性精神疾患を予防及び/又は治療するためのラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)種の細菌及び/又はラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)を含む組成物に関する。本発明は、食品、栄養補助食品及び薬学的に許容される調製物/組成物を含む、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)種の細菌及び/又はラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)を含む組成物の方法及び使用に更に関する。
【背景技術】
【0002】
精神的健康は、感情的、生理学的、身体的及び社会的福祉と関連している。我々の精神的健康状態は、我々のストレスの対処方法を決定する。精神疾患は、個人の思考、感情又は行動(又は3つ全部)を変化させ、社会的活動、作業活動又は家族活動において機能する個人の苦悩や問題を誘発する健康状態であると定義され得る。精神疾患は、不安、気分、精神病、摂食行動、インパルス制御及び嗜癖、人格、社交性、解離、強迫性及び外傷後ストレスと関連する広範囲の障害を含む。それぞれの疾患は、個人の思考、感情及び/又は行動を明確に異なる方法で変化させる。パーキンソン病、てんかん及び多発性硬化症等の障害は、脳の障害であるが、それらは精神疾患ではなくむしろ神経学的疾患であると考えられている。興味深いことに、精神疾患と例えば軽度の認知損傷、認知症及びアルツハイマー病等の記憶障害を含む神経学的疾患との境界線は明確には定義されておらず、増加しつつあるエビデンスは、現在、精神疾患には神経学的障害の発症の基礎となり得る脳の構造、化学及び機能における変化が関連していることを示唆している。例えば、神経認知的障害と気分障害との関連は、大うつ病においては認知機能障害が認知症において観察される認知機能障害を模倣し得るように明確に確立されている(非特許文献1)。
【0003】
更に、未治療の慢性ストレスは、不安、筋肉痛、高血圧及び弱まった免疫機構等の重篤な健康状態を生じさせ得る。研究は、ストレスが、心疾患、うつ病及び肥満等の主要な疾患が発症する原因となり得ることを証明している。急性及び慢性ストレスの症状は、消化管において発現する可能性があり、消化管の機能それぞれに短期的及び長期的作用を誘発する。ストレスへの曝露は、脳腸軸内の変化を生じさせ、最終的には、炎症性腸疾患(IBD)、過敏性腸症候群(IBS)及び他の機能性胃腸疾患、食品抗原関連性有害反応、消化性潰瘍及び胃食道逆流症(GERD)を含む一連の広範な消化器疾患の発症をもたらす。ストレスが腸生理学に及ぼす主要な作用としては:1)胃腸の運動性の変化;2)臓器感覚の増加;3)消化管分泌物の変化;4)腸透過性の増加;5)胃腸粘膜及び粘膜血流の再生能に及ぼす悪影響;及び6)腸内微生物組成における変化(非特許文献2)が挙げられる。
【0004】
精神疾患及び関連する神経認知の低下及び神経学的障害に関して、現在では、充実した健康的な生活のための積極的な精神的及び認知的健康を達成するための戦略が、明確に強調されている。有害作用を伴わずに積極的な精神的健康を達成するために、栄養療法に対する需要が増加している。精神的健康に影響を及ぼす精神疾患の症状を治療するための現行の医薬は、悪心、食欲増加及び体重増加、疲労及び胃腸症状等の多数の不都合な副作用を有する。栄養補助食品は、積極的な精神的健康を達成し、精神疾患及び関連する状態の症状が発生することを予防する魅力的な手段を表し得る。
【0005】
腸脳軸は、脳と腸との間に存在する双方向連絡を説明し、微生物叢-腸-脳軸は、この連絡機構において腸内マイクロバイオームが果たす役割を支持する。上記で略述したように、精神的健康に影響を及ぼす精神疾患及び症状は消化器疾患と合併しており、それにより情動的及びルーチンの日常生活のストレスは消化機能を混乱させ得、及びその逆もあり得る。増加しつつあるエビデンスは、腸微生物叢が脳生理学、心理学的応答及び最終的には行動に深遠な影響を発揮することを指摘している(非特許文献3)。新たに発生しているエビデンスは、プロバイオティクスが中枢神経系機能に影響を及ぼすことができ、気分、例えば不安及び抑うつ等の心理学的症状並びに生理学、行動及び脳機能におけるストレス関連性変化を調節できることを示唆している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Rabins et al.Br J Psychiatry 1984;144:488-92
【文献】Konturek et al.J.Physiol Pharmacol.2011;62(6):591-9
【文献】Dinan et al.J.Psychiatr Res.2015;63:1-9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、精神疾患、精神的健康に影響を及ぼす症状を予防及び/又は治療するため、及び/又は慢性ストレスに関連する状態を治療するための手段を提供することである。従って本発明の課題は、それによって個人の精神的健康が促進され得る、維持され得る、及び/又は回復され得る手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、驚くべきことに、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)が行動的(不安、抑うつ及び認知機能)、生化学的及び機能的転帰に及ぼすストレスの作用に有意に拮抗し得ることを証明している、本明細書に記載した研究に基づいている。
【0009】
従って、1つの態様では、本発明は、哺乳動物における精神疾患、精神的健康に影響を及ぼす症状及び/又は慢性ストレスに関連する状態を予防及び/又は治療する際に使用するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)種の細菌を提供する。
【0010】
又別の態様では、本発明は、哺乳動物における精神疾患、精神的健康に影響を及ぼす症状及び/又は慢性ストレスに関連する状態を予防及び/又は治療する際に使用するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)を含む組成物を提供する。
【0011】
又別の態様では、本発明は、哺乳動物における精神疾患、精神的健康に影響を及ぼす症状及び/又は慢性ストレスに関連する状態を予防及び/又は治療するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)種の細菌を哺乳動物に投与するステップを含む方法を提供する。
【0012】
又別の態様では、本発明は、哺乳動物における精神疾患、精神的健康に影響を及ぼす症状及び/又は慢性ストレスに関連する状態を予防及び/又は治療するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)を含む組成物を哺乳動物に投与するステップを含む方法を提供する。
【0013】
又別の態様では、本発明は、哺乳動物における精神疾患、精神的健康に影響を及ぼす症状及び/又は慢性ストレスに関連する状態を予防及び/又は治療するための医薬品を製造するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)種の細菌の使用を提供する。
【0014】
更に又別の態様では、本発明は、哺乳動物における精神疾患、精神的健康に影響を及ぼす症状及び/又は慢性ストレスに関連する状態を予防及び/又は治療するための医薬品を製造するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)を含む組成物の使用を提供する。
【0015】
又別の態様では、本発明は、哺乳動物における精神疾患、精神的健康に影響を及ぼす症状及び/又は慢性ストレスに関連する状態を予防及び/又は治療する際に使用するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)菌株を提供する。
【0016】
更に別の態様では、本発明は、哺乳動物における精神疾患、精神的健康に影響を及ぼす症状及び/又は慢性ストレスに関連する状態を予防及び/又は治療する際に使用するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)及びラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)を含む組成物を提供する。
【0017】
更に又別の態様では、本発明は、哺乳動物における精神疾患、精神的健康に影響を及ぼす症状及び/又は慢性ストレスに関連する状態を予防及び/又は治療する際の個別に、連続的に又は同時に使用するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)及びラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)の組合せを提供する。
【0018】
又別の態様では、本発明は、哺乳動物における精神疾患、精神的健康に影響を及ぼす症状及び/又は慢性ストレスに関連する状態を治療及び/又は予防するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)の少なくとも1つの菌株及びラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)の少なくとも1つの菌株を哺乳動物へ、個別に、連続的に又は同時に投与するステップを含む方法を提供する。
【0019】
本発明の態様において使用するラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)は、任意選択的に、DSMZに寄託番号DSM32661を付して登録された菌株Lpc-37である。
【0020】
更に、任意選択的に、本発明の態様において使用された場合、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)は、DSMZにDSM32655として寄託されたラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株LP12418及び/又はDSMZにDSM32655として寄託されたラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株LP12407である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ビヒクル単独群又は選択した細菌菌株を用いた処置群におけるマウスの体重に3週間の慢性ストレスが及ぼす作用を示す図である。N=11であったLpc-37処置群を除いて、全群についてN=12。統計的分析:二元配置ANOVA;体重(時間):F
(10,594)=60.99、p<0.0001;体重(処置群):F
(4,594)=29.30、p<0.0001。
【
図2】ビヒクル単独群又は選択した細菌菌株を用いた処置群における、マウスの副腎重量/体重比に3週間の慢性ストレスが及ぼす作用を示す図である。N=11であったLpc-37処置群を除いて、全群についてN=12。統計的分析:一元配置ANOVA;副腎重量:F
(4,58)=5.820、p=0.0006;ペアワイズ比較:
*p<0.05、ストレス無し/ビヒクル群に対して、
##p<0.01、慢性ストレス/ビヒクル群に対して(ダネット検定)。
【
図3】マウスの慢性ストレス誘導性不安に選択した細菌菌株を用いた処置が及ぼす作用を示す図である。N=11であったLpc-37処置群を除いて、全群についてN=12。統計的分析:一元配置ANOVA;オープンアーム内の滞在時間:F
(4,58)=23.72、p<0.0001;自発運動活性:F
(4,58)=0.1612、p>0.05;オープンアームへの進入回数:F
(4,58)=0.8161、p<0.05;ペアワイズ比較:
**p<0.01、
***p<0.001、ストレス無し/ビヒクル群に対して、
##p<0.01、慢性ストレス/ビヒクル群に対して(ダネット検定)。
【
図4】オープンフィールド試験手順におけるマウスの慢性ストレス誘導性不安に選択した細菌菌株を用いた処置が及ぼす作用を示す図である。3つのパラメーター;自発運動活性(A)、領域の中心での自発運動(B)、及び立ち上がり/グルーミング行動(常同行動C)を測定した。常同行動については、データは、10分間のオープンフィールド試験手順の間の立ち上がり回数+グルーミング回数に対応する任意単位(A.U.)として表示した。N=11であったLpc-37処置群を除いて、全群についてN=12。統計的分析:一元配置ANOVA;自発運動活性:F
(4,58)=3.433、p=0.0143;中心での自発運動:F
(4,58)=37.28、p<0.0001;常同行動:F
(4,58)=2.227、p<0.05;ペアワイズ比較:
***p<0.001、ストレス無し/ビヒクル群に対して、
###p<0.001、慢性ストレス/ビヒクル群に対して(ダネット検定)。
【
図5-1】マウスの慢性ストレス誘導性認知記憶障害に選択した細菌菌株を用いた処置が及ぼす作用を示す図である。測定したパラメーターは、同一の物体認識(A、B)及び新規な物体認識(C、D)についての物体相互作用頻度(A、C)及び物体相互作用時間(B、D)を含んでいた。N=11であったLpc-37処置群を除いて、全群についてN=12。統計的分析:一元配置ANOVA;第2日の同一物体頻度:F
(4,58)=1.460、p>0.05;第2日の同一物体時間:F
(4,58)=1.327、p>0.05;第3日の新規な物体頻度:F
(4,58)=10.48、p<0.001;第3日の新規な物体時間:F
(4,58)=8.881、p<0.001;ペアワイズ比較:
***p<0.001、ストレス無し/ビヒクル群に対して、
#p<0.05、
##p<0.01、慢性ストレス/ビヒクル群に対して(ダネット検定)。
【
図6】強制水泳試験において測定した、マウスの慢性ストレス誘導性行動的絶望に選択した細菌菌株を用いた処置が及ぼす作用を示す図である。3つのパラメーター;無動行動時間(A)、もがき行動時間(B)及び水泳時間(C)を測定した。N=11であったLpc-37処置群を除いて、全群についてN=12。統計的分析:一元配置ANOVA;無動行動時間:F
(4,58)=18.14、p<0.0001;もがき行動時間:F
(4,58)=0.4328、p>0.05;水泳時間:F
(4,58)=8.931、p<0.0001;ペアワイズ比較:
*p<0.05、
***p<0.001、ストレス無し/ビヒクル群に対して、
##p<0.01、
###p<0.001、慢性ストレス/ビヒクル群に対して(ダネット検定)。
【
図7】血漿中コルチコステロン濃度に慢性ストレス及び選択した細菌菌株を用いた処置が及ぼす作用。N=11であったLpc-37処置群を除いて、全群についてN=12。統計的分析:一元配置ANOVA;コルチコステロン濃度:F
(4,58)=0.8513、p>0.05。
【
図8】ビヒクル単独群又は選択した細菌菌株を用いた処置群における、マウスの体重に3週間の慢性ストレスが及ぼす作用を示す図である。全群についてN=12~18。統計的分析:二元配置ANOVA;体重(時間):F
(9,643)=17.46、p<0.0001;体重(処置群):F
(4,643)=74.39、p<0.0001。
【
図9-1】マウスの慢性ストレス誘導性不安に選択した細菌菌株を用いた処置が及ぼす作用を示す図である。全群についてN=10~18。統計的分析:一元配置ANOVA;オープンアーム内の滞在時間:F
(4,67)=78.92、p<0.0001;自発運動活性:F
(4,67)=0.3718、p>0.05;オープンアームへの進入回数:F
(4,67)=1.19、p>0.05;クローズドアーム内の滞在時間:F
(4,67)=10.85、p<0.0001;クローズドアームへの進入回数:F
(4,67)=1.19、p>0.05;ペアワイズ比較:
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.0001、ストレス無し/ビヒクル群に対して、
#p<0.05、
###p<0.0001、慢性ストレス/ビヒクル群に対して(ダネット検定)。
【
図10-1】オープンフィールド試験手順におけるマウスの慢性ストレス誘導性不安に選択した細菌菌株を用いた処置が及ぼす作用を示す図である。5つのパラメーター;自発運動活性(A)、領域の中心での自発運動(B)、立ち上がり/グルーミング行動(常同行動C)、内部域で消費した時間(D)及び外部域で消費した時間(E)を測定した。常同行動については、データは、10分間のオープンフィールド試験手順の間の立ち上がり回数+グルーミング回数に対応する任意単位(A.U.)として表示した。全群についてN=10~18。統計的分析:一元配置ANOVA;自発運動活性:F
(4,67)=0.4977、p>0.05;中心での自発運動:F
(4,67)=21.5、p<0.0001;常同行動:F
(4,67)=0.2328、p>0.05;内部域で消費した時間:F
(4,67)=16.42、p>0.0001;外部域で消費した時間:F
(4,67)=16.42、p<0.0001;ペアワイズ比較:
***p<0.001、ストレス無し/ビヒクル群に対して、
###p<0.001、慢性ストレス/ビヒクル群に対して(ダネット検定)。
【
図11-1】マウスの慢性ストレス誘導性認知記憶障害に選択した細菌菌株を用いた処置が及ぼす作用を示す図である。測定したパラメーターは、同一の物体認識(A、D)及び新規な物体認識(B、E)についての物体相互作用頻度(A、B)及び物体相互作用時間(D、E)を含んでいた。両方の物体を探索する総頻度及び時間で割った、新規な物体と見慣れた物体との間を探索するためマウスが消費した相互作用頻度(C)と相互作用時間(F)の差としての新規な物体についての識別指数(DI)を示す図である。[識別指数、DI=(新規な物体探索頻度/時間-見慣れた物体探索頻度/時間)/(新規な物体探索頻度/時間+見慣れた物体探索頻度/時間)]。全群についてN=10~18。統計的分析:一元配置ANOVA;第2日の同一物体頻度:F
(4,59)=1.54、p>0.05;第2日の同一物体時間:F
(4,59)=0.5006、p>0.05;第3日の新規な物体頻度:F
(4,59)=14.18、p<0.001;第3日の新規な物体時間:F
(4,59)=15.02、p<0.001;識別指数頻度:F
(4,59)=14.18、p<0.0001;識別指数時間:F
(4,59)=15.02、p<0.0001;ペアワイズ比較:
***p<0.001、ストレス無し/ビヒクル群に対して、
###p<0.001、慢性的ストレス/ビヒクル群に対して(ダネット検定)。
【
図12-1】強制水泳試験において測定した、マウスの慢性ストレス誘導性行動的絶望に選択した細菌菌株を用いた処置が及ぼす作用を示す図である。3つのパラメーター;無動行動時間(A)、水泳時間(B)及びもがき行動時間(C)を測定した。全群についてN=10~18。統計的分析:一元配置ANOVA;無動行動時間:F
(4,59)=26.82、p<0.0001;水泳時間:F
(4,59)=15.97、p<0.0001;もがき行動時間:F
(4,59)=0.7128、p>0.05;ペアワイズ比較:
***p<0.0001、ストレス無し/ビヒクル群に対して、
###p<0.0001、慢性ストレス/ビヒクル群に対して(ダネット検定)。
【
図13】慢性ストレス及び選択した細菌菌株を用いた処置が血漿中コルチコステロン及び副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)濃度及び海馬脳由来神経栄養因子(BDNF)濃度に及ぼす作用を示す図である。全群についてN=10~18。統計的分析:一元配置ANOVA;コルチコステロン濃度:F
(4,67)=7.592、p<0.001;ACTH濃度:F
(4,67)=5.75、p<0.001;BDNF濃度:F
(4,67)=1.23、p>0.05;ペアワイズ比較:
*p<0.05、
**p<0.01、
***P<0.001、ストレス無し/ビヒクル群に対して、
##p<0.01、慢性ストレス/ビヒクル群に対して(ダネット検定)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
細菌
本発明の態様で使用する細菌は、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)種の細菌である。任意選択的に、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)は、DGCC4981若しくはLbc81としても公知である菌株Lpc-37である。菌株Lpc-37は、2017年10月5日に、ATCCに寄託番号PTA4798を付して、及びDSMZ(ライプニッツ研究所DSMZ-ドイツ微生物細胞培養コレクション有限会社、Inhoffenstr.7BD-38124)に寄託番号DSM32661を付して登録されている。この菌株の特徴に関する重要な情報を提供するLpc-37に関するDSMZ寄託様式の写しは、本明細書に組み込まれている。
【0023】
ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)の1つ以上の菌株と組み合わせて使用することができる。任意選択的に、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株は、下記から選択される:
・ DSMZに寄託番号DSM32655を付して2017年9月27日に寄託された、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株(stain)LP12418;
・ DSMZに寄託番号DSM32654を付して2017年9月27日に寄託された、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株LP12407。
【0024】
これらの菌株の特徴に関する重要な情報を提供するLP12418及びLP12407についてのDSMZ寄託様式の写しは、本明細書に組み込まれている(LP12418はDGCC12418と称され、及びLP12407はDGCC12407と称される)。
【0025】
ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)は、それらが投与される宿主に対して好都合の健康上の利点を発揮する能力を有する、1種以上の他の細菌種と組み合わせて使用することもできる。
【0026】
ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)は、この細菌が本明細書に記載した作用を発揮し得るままであることを前提に、任意の形態(例えば、生菌、休眠細菌、不活化細菌若しくは死細菌)で使用され得る。好ましくは、本発明の態様で使用するラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)は、生菌である。
【0027】
好ましくは、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、及び本発明の態様で使用する場合のラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)は、ヒト及び/又は動物が摂取するために好適である。当業者であれば、食品産業及び/又は農産業において使用され、且つ、ヒト及び/又は動物が摂取するために好適であると一般に考えられている、本明細書で使用するラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)及びラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)の特定の菌株を容易に思い付くであろう。
【0028】
任意選択的に、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、及び本発明の態様で使用する場合のラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)は、プロバイオティクス細菌である。「プロバイオティクス細菌」という用語は、宿主に生きたまま適切量で投与された場合、その宿主に健康上の利益を与える任意の非病原性細菌を包含するものと定義されている。「プロバイオティクス」として分類されるためには、細菌は、宿主の消化管の上部の通過を生残しなければならない。それらは、非病原性、非毒性であり、一方では消化管中の常在菌叢との生態学的相互作用を介して、及び他方では宿主の生理学且つ免疫系に積極的な方法で影響を与えるそれらの能力を介して、健康へのそれらの有益な作用を及ぼす。プロバイオティクス細菌は、宿主に十分な数で投与された場合は、生存性を維持し、宿主の消化管の内腔及び/又は壁内でそれらの主要な作用を発揮しながら、小腸を経て進行する能力を有する。次いでそれらは、常在細菌叢の一部を一過性で形成し、このコロニー形成(又は一過性コロニー形成)は、プロバイオティクス細菌が、例えば微生物叢中に存在する潜在的病原性微生物の抑制及び免疫系を含む腸内の宿主との相互作用等の有益な影響を及ぼすことを可能にする。
【0029】
任意選択的に、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)は、他のプロバイオティクス細菌と組み合わせて使用される。
【0030】
組成物
「組成物」という用語は、広い意味で、その中で何かが構成される方法、即ち、その一般的構成を意味するために使用される。本発明の態様では、本組成物は、本質的にラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)細菌の単一菌株(例えば、ATCC PTA4798/DSM32661)から成る可能性がある。
【0031】
又は、本組成物は、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)菌株を他の成分、例えば他の細菌菌株、生物学的及び化学的成分、有効成分、代謝産物、栄養素、繊維、プレバイオティクス等と一緒に含み得る。
【0032】
1つの例では、本発明の態様で使用する組成物は、本質的にラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)菌株(例えば、ATCC PTA4798/DSM32661)又はラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)菌株(例えば、ATCC PTA4798/DSM32661)と他の細菌菌株との混合物から成る。
【0033】
本組成物が任意の支持体、希釈剤又は賦形剤を含むことは必要条件ではないが、そのような支持体、希釈剤又は賦形剤は、当業者であれば習熟している方法で添加及び使用することができる。好適な賦形剤の例としては、微結晶セルロース、イネマルトデキストリン、二酸化ケイ素及びステアリン酸マグネシウムが挙げられるがそれらに限定されない。本発明の組成物は、凍結防止成分(例えば、グルコース、スクロース、ラクトース、トレハロース、アスコルビン酸ナトリウム及び/又は他の好適な凍結防止剤)も又含み得る。
【0034】
「組成物」及び「調製物」は、同義的に使用され得る。
【0035】
本発明の態様で使用する組成物は、固体、溶液又は懸濁液調製物の形態を取ることができる。固体調製物の例としては、錠剤、ピル剤、カプセル剤、顆粒剤及び可溶性、スプレー乾燥又はフリーズドライ/凍結乾燥され得る散剤が挙げられるがそれらに限定されない。本組成物は、香味剤若しくは着色剤を含有し得る。本組成物は、即効型、遅延放出型、放出調節型、持続放出型、パルス放出型又は制御放出型適用のために調製され得る。
【0036】
一例として、本発明の組成物が錠剤の形態で使用される場合、その錠剤は又、微結晶セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム及びグリシン等の賦形剤、デンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモ又はタピオカのデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム及びある種の複雑なケイ酸塩等の崩壊剤;ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、スクロース、ゼラチン及びアラビアゴム等の造粒用結合剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル及びタルク等の滑沢剤の1種以上を含有することができる。
【0037】
組成物の調製に際して使用するための他の許容される担体の例としては、例えば、水、塩溶液、アルコール、シリコーン、ワックス、ワセリン、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、糖、ゼラチン、ラクトース、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリド、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0038】
水性懸濁剤及び/又はエリキシル剤のためには、本発明の組成物は、様々な甘味剤又は香味剤、色素又は染料と、乳化剤及び/又は懸濁化剤と、そして水、プロピレングリコール及びグリセリン等の希釈剤と、並びにこれらの組合せと組み合わせることができる。
【0039】
本発明の態様において使用できる組成物の特定の非限定的な例については、例示する目的で下記に記載する。これらとしては、食品、機能性食品、栄養補助食品、医薬組成物及び医薬品が挙げられるがそれらに限定されない。
【0040】
栄養補助食品
本発明の組成物は、栄養補助食品の形態を取ることができる、又はそれら自体が本明細書では食品補助剤とも呼ばれる栄養補助食品と組み合わせて使用され得る。
【0041】
本明細書で使用する用語「栄養補助食品」は、食事に更なる栄養価若しくは健康上の利点を加える(栄養補給する)ことを意図した「食物成分」を含有する、摂取を意図した製品を指す。「食物成分」は、以下の物質:細菌、プロバイオティクス(例えば、プロバイオティクス細菌)、ビタミン、ミネラル、ハーブ若しくは他の植物、アミノ酸、食事総摂取量を増加させることにより食事を補うために人々が使用するための食物物質、濃縮物、代謝物、構成要素又は抽出物の1つ又は任意の組合わせを含み得る(がそれらに限定されない)。栄養補助食品は、錠剤、カプセル剤、軟質ゲル剤、ゲルキャップ剤、液剤又は散剤等の多くの形態で見出し得る。栄養補助食品の中には、必須栄養素の食事からの十分な摂取を確実にするのに役立つものもあれば、病気のリスクを低減させるのに役立つものもある。
【0042】
食品
本発明の組成物は、食品の形態を取ることができる。本明細書では、「食品」という用語は、広い意味で使用され、ヒト用の食品及び飲料並びに動物用の食品及び飲料(即ち、飼料)を包含する。好ましくは、食品は、ヒトが摂取するために好適であり、ヒトが摂取するために設計されている。
【0043】
食品は、使用及び/又は適用方法及び/又は投与方法に依存して液体、固体又は懸濁液の形態にあってよい。
【0044】
食品の形態にある場合、本組成物は、栄養学的に許容される担体、栄養学的に許容される希釈剤、栄養学的に許容される賦形剤、栄養学的に許容されるアジュバント、栄養学的に許容される有効成分の1つ以上を含み得る、又は結び付けて使用することができる。
【0045】
例として、本発明の組成物は、以下の1つの形態を取り得る;
果汁;乳漿タンパク質を含む飲料:健康茶若しくはハーブティー、ココア飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨーグルト及び/又はドリンクヨーグルト、チーズ、アイスクリーム、水氷、デザート、菓子類、ビスケット、ケーキ、ケーキミックス若しくはケーキフィリング、スナック食品、フルーツフィリング、ケーキ若しくはドーナツアイシング、インスタントのパン用フィリングクリーム、クッキー用フィリング、既製のパン用フィリング、低カロリーフィリング、成人用栄養飲料、酸性化大豆/果汁飲料、栄養バー若しくはヘルスバー、飲料粉末、カルシウム強化豆乳又はカルシウム強化珈琲飲料。
【0046】
任意選択的に、製品が食品である場合、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)は、食品が小売業者によって販売のために提供される、通常の「販売期限」又は「期限切れ」日まで有効なままでなければならない。好ましくは、有効期間は、このような期日を越えて食物の損傷が明らかになる、通常の鮮度保持期間の終わりまで延びるべきである。所望の期間の長さ及び通常の保存可能期間は、食材によって変わるであろうし、当業者は、保存可能時間が食材の種類、食材のサイズ、貯蔵温度、加工条件、包装材料及び包装設備によって変わることを認識しているであろう。
【0047】
食品成分
本発明の組成物は、食品成分及び/又は飼料成分の形態を取ることができる。本明細書中で使用される用語「食品成分」又は「飼料成分」は、ヒト及び動物用の栄養補給剤及び/又は健康補給剤として、機能性食品又は食材に添加されるか又は添加することができる組成物を含む。
【0048】
この食品成分は、使用及び/又は適用方法及び/又は投与方法に依存して溶液、懸濁液又は固体の形態にあってよい。
【0049】
機能性食品
本発明の組成物は、機能性食品の形態を取ることができる。
【0050】
本明細書中で使用する「機能性食品」という用語は、栄養学的作用をもたらすことができるだけではなく、消費者に更なる有益な効果を送達することもできる食品を意味する。
【0051】
従って、機能性食品は、その食品に純粋な栄養学的作用以外の特定の機能的作用、例えば医学的又は生理学的利益を与える構成成分又は成分(本明細書中で述べたもの等)がその中に取り込まれている一般的な食品である。
【0052】
機能性食品の法的な定義は存在しないが、この分野に利害関係のある団体の大部分は、それらが基本的な栄養学的作用以上の特定の健康効果を有するものとして市販されている食品であることに同意している。
【0053】
一部の機能性食品は、栄養補給食品である。本明細書では、「栄養補給食品」という用語は、栄養学的作用及び/又は味覚の満足感をもたらすことができるだけではなく、消費者に治療上の(又は他の有益な)作用を与えることができる食品を意味する。栄養補給食品は、食品と薬剤との間の伝統的な境界線を越える。
【0054】
医療食品
本発明の組成物は、医療食品の形態を取ることができる。
【0055】
「医療食品」とは、医師の監督下若しくは無監督下で摂取若しくは投与されるように処方され、認識された科学的原理に基づく独特の栄養要求が医学的評価によって確立された、特定の食事の管理又は状態を意図した食品を意味する。
【0056】
医薬組成物
本発明の組成物は、医薬品として又はその調製において使用することができる。本明細書では、「医薬品」という用語は、広い意味で使用され、ヒト用医薬品並びに動物用(即ち、獣医用途)医薬品を包含する。好ましい態様では、医薬品は、ヒトにおいて使用するためである。
【0057】
医薬品は、治療目的のものであり得、それらは、現実には治療又は苦痛緩和又は予防的であり得る。
【0058】
医薬品は、圧縮錠剤、錠剤、カプセル剤、軟膏剤、坐剤又は飲用溶液の形態であってよい。
【0059】
医薬品として、又はその調製において使用される場合、本発明の組成物は、薬学的に許容される担体、薬学的に許容される希釈剤、薬学的に許容される賦形剤、薬学的に許容されるアジュバント、薬学的に許容される有効成分の1つ以上と結び付けて使用することができる。
【0060】
医薬品は、使用及び/又は適用方法及び/又は投与方法に依存して、液体の形態にあっても、又は固体としてであってもよい。
【0061】
本発明において使用するラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)は、それ自体が薬学的な有効成分を構成し得る。1つの実施形態では、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)は、単独の活性成分を構成する。又は、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)は、多数(即ち、2つ以上)の薬学的な活性成分の少なくとも1つであり得る。
【0062】
薬剤
本発明の組成物は、薬剤の形態を取ることができる。
【0063】
本明細書で使用する「薬剤」という用語は、ヒト及び獣医学的薬物療法においてヒト及び動物の両方に利用される薬剤を包含する。更に、本明細書中で使用する「薬剤」という用語は、治療的、予防的及び/又は有益な作用をもたらす任意の物質を意味する。本明細書中で使用する「薬剤」という用語は、必ずしも販売承認を必要とする物質に限定されず、化粧品、栄養補給食品、食品(例えば、飼料及び飲料を含む)、プロバイオティクス培養物及び生薬に使用できる物質を含むことができる。更に、本明細書で使用する「薬剤」という用語は、動物飼料、例えば家畜飼料及び/又はペットフードに組み込まれるように設計された製品を包含する。
【0064】
用量
本発明の組成物は、1回分又は組成物1g当たり106~1012コロニー形成単位(CFU)のラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)細菌、及びより特別には1回分又は組成物1g当たり108~1012CFUのラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)細菌を含むことができる。任意選択的に、本組成物は、1回分又は組成物1g当たり約1010CFUのラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)を含む。
【0065】
ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)は、1回分当たり約106~約1012CFUの細菌、好ましくは1回分当たり約108~約1012CFUの細菌の用量で投与され得る。用語「1回分当たり」とは、この量の細菌が、1日当たり又は1回の摂取量当たり、好ましくは1日当たりの何れかで対象に与えられることを意味する。例えば、細菌が食品中、例えば、ヨーグルト中に入れて投与されなければならない場合、そのヨーグルトは、約106~約1012CFUのラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)を含有することができる。しかしながら、又は、細菌のこの量は、任意の特定の時間、例えば各24時間の期間中に対象が摂取するラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)の全体量が約106~約1012CFUの細菌、好ましくは108~約1012CFUの細菌である限り、それぞれがより少量の微生物負荷から成る複数回投与に分割することもできる。
【0066】
本発明によれば、少なくとも1菌株のラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)の有効量は、1回分当たり少なくとも106CFUの細菌、任意選択的に、1回分当たり約108~約1012CFUの細菌、例えば1回分当たり約1010CFUの細菌であり得る。
【0067】
1つの実施形態では、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)(例えば、ATCC PTA-4798/DSM32661)は、1日当たり約106~約1012CFUの細菌、任意選択的に、1日当たり約108~約1012CFUの細菌の用量で投与することができる。従って、この実施形態における有効量は、1日当たり約106~約1012CFUの細菌、任意選択的に1日当たり約108~約1012CFUの細菌であり得る。
【0068】
作用/対象/医療適応
本発明の組成物は、例えば、家畜(ウシ、ウマ、ブタ及びヒツジを含む)並びにヒトを含む哺乳動物に投与するために使用することができる。本発明の一部の実施形態では、哺乳動物は、例えば、イヌ又はネコ等の伴侶動物(ペットを含む)である。好ましい実施形態では、本組成物は、ヒトにおいて使用するためである。
【0069】
本発明の組成物は、精神疾患、精神的健康に影響を及ぼす症状及び/又は慢性ストレス、例えば神経学的障害及び消化管障害等に関連する状態を予防及び/又は治療するために使用することができる。
【0070】
用語「精神疾患」は、個人の思考、感情又は行動(又は3つ全部)を変化させ、社会的活動、作業活動又は家族活動において機能する個人の苦悩や問題を誘発する健康状態であると定義され得る。精神疾患は、不安、気分、精神病、摂食行動、インパルス制御及び嗜癖、人格、社交性、解離、強迫性及び外傷後ストレスと関連する広範囲の障害を含む。それぞれの疾患は、個人の思考、感情及び/又は行動を独特の方法で変化させる。本明細書で使用する精神疾患には、神経学的障害並びに精神疾患の原因又は症状であり得る、又はヒトが発生する機会を増加し得る状態であり得る精神疾患に関連する状態も含まれる。
【0071】
不安に関連する障害は、「精神疾患」の下に分類される。用語「不安障害」は、極度の恐怖若しくは心配を包含する、及び全般性不安障害(GAD)、パニック障害及びパニック発作、広場恐怖症、社会不安障害、場面緘黙、分離不安及び特定恐怖症を含む特定の精神疾患を指す。強迫性障害(OCD)及び外傷後ストレス障害(PTSD)は、一部のヒトは同時に抑うつとして経験する可能性がある不安障害と密接に関連している。GADは、日毎に個人が経験する通常レベル以上の不安を指し、慢性的不安及び緊張を特徴とする。本発明の組成物は、認識された不安障害並びにより一般的に不安の症状を治療及び/又は予防するために使用され得る。
【0072】
本明細書で使用する精神疾患は、更に記憶障害、軽度認知損傷、認知症及びアルツハイマー病を含む、関連する神経学的障害も又含む。認知は、思考、記憶、知覚、動機、巧みな運動及び言語を含む特定の情報の相当に高レベルの処理を意味する。認知障害は、「以前の機能レベルからの顕著な低下を表す認知又は記憶の有意な損傷」を伴う認知障害であると定義されている(Guerrero,Anthony(2008).Problem-Based Behavioural Science of Medicine.New York:Springer.pp.367-79)。それらは、3つの主要領域:(1)状況認識及び新しい情報の処理に影響を及ぼす障害であるせん妄;(2)個人の記憶の全部又は一部を抹消し得る障害である認知症;及び(3)罹患した個人が長期記憶を維持する不具合を有する障害である記憶喪失に分類することができる。
【0073】
本発明の組成物は、例えば、精神疾患又は任意の関連する障害及び/又は個人の精神的健康に影響を及ぼす症状を予防するため等の、個人の精神的健康を促進する、回復させる、及び/又は維持するために使用することができる。
【0074】
精神的健康に影響を及ぼす症状としては;悲しくなる、若しくは落ち込む、混乱した思考若しくは集中する能力の低下、過度の恐怖若しくは心配、又は極度の罪悪感、高かったり低かったりの極端な情緒の変化、友人や活動からの離脱、現実逃避、パラノイア若しくは幻覚、日々の問題若しくはストレスに立ち向かう力がないこと、トラブルについての理解並びに状況及び人々との関連、アルコール若しくは薬物の乱用、食習慣における大きな変化、性駆動変化、過度の怒り、敵意若しくは暴力並びに自殺の考えが挙げられる。
【0075】
本発明の目的のために、精神疾患及び精神的健康に影響を及ぼす症状は、更に、個人の認識機能に影響を及ぼす状態も含んでいる。そのような状態は、様々な認知障害を含み得る、又は様々な認知障害と重複し得る。例としては、失認、記憶喪失、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病及び脳の機能に負の影響を及ぼすことが証明されている慢性ストレスが挙げられるが、それらに限定されない。
【0076】
極度の急性及び慢性ストレスは、身体的及び精神的健康の双方に負の影響を及ぼす可能性があり、精神疾患を発症するリスクを増加させる。例えば、慢性ストレスは、気分障害、不安障害及び抑うつの発症と関連付けられてきた。本発明の組成物は、精神疾患又は慢性若しくは急性ストレスの結果として生じる、精神的健康に影響を及ぼす症状を予防及び/又は治療するために使用することができる。
【0077】
本発明の組成物は、慢性若しくは急性ストレスに関連する他の(身体的を含む)状態を治療及び/又は予防するためにも使用することができる。例えば、1つの実施形態では、本発明の組成物は、例えば、消化管障害、例えば慢性若しくは急性ストレスと関連するIBSを治療及び/又は予防するために使用される。消化管障害と関連する精神疾患の症状に対処することによって、そのような治療は消化管障害自体に有益な作用を有する可能性があることもあり得る。
【0078】
より一般的には、本発明の組成物は、精神疾患、上記に記載した慢性若しくは強度の急性ストレスと関連する精神的健康及び/又は状態に影響を及ぼす症状の1つ以上を予防及び/又は治療するために使用することができる。
【0079】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、不安、抑うつ及び/又は認知機能の低下を予防及び/又は治療するために使用することができる。
【0080】
本発明の組成物が精神疾患又は精神的健康に影響を及ぼす症状を予防するために使用される場合、それらは既に健常な個人における正常レベルの精神的健康を維持するために使用され得る。又は、本発明の組成物が精神疾患又は精神的健康に影響を及ぼす症状を治療するために使用される場合、それらは精神疾患又は問題の症状に罹患している個人における正常レベルの精神的健康を回復させる、又は部分的に回復させるために使用することができる。
【0081】
本発明の方法、使用及び他の実施形態
上記に記載したように、本発明の1つの態様は、哺乳動物における精神疾患、精神的健康に影響を及ぼす症状又は慢性ストレスに関連する状態を予防及び/又は治療するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)を含む組成物を哺乳動物に投与するステップを含む方法を提供する。
【0082】
更に別の態様では、本発明は、哺乳動物における精神疾患、精神的健康に影響を及ぼす症状又は慢性ストレスに関連する状態を予防及び/又は治療するための薬剤を製造するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)を含む組成物の使用を提供する。
【0083】
誤解を避けるために、本明細書に記載し、上記に記載した組成物の何れも本発明の方法及び使用態様において利用することができる。例えば、又別の実施形態としては、下記に記載した実施形態が挙げられるが、それらに限定されない:
実施形態1:哺乳動物における精神疾患、精神的健康に影響を及ぼす症状又は慢性ストレスに関連する状態を予防及び/又は治療するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)を含む組成物を哺乳動物に投与するステップを含む方法。
実施形態2:組成物は、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)から本質的に成る、実施形態1に記載の方法。
実施形態3:本組成物は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)を更に含む、実施形態1又は2に記載の方法。
実施形態4:ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)は、DSMZに寄託番号DSM32661を付して登録された菌株Lpc-37である、実施形態1~3の何れか1つに記載の方法。
実施形態5:血漿中コルチコステロン又はコルチゾール濃度における慢性ストレス誘導性増加を予防又は拮抗するための、実施形態1~4の何れか1つに記載の方法。
実施形態6:精神疾患は、気分障害、不安障害及び/又は抑うつである、実施形態1~5の何れか1つに記載の方法。
実施形態7:精神的健康に影響を及ぼす症状は、不安/気分変動及び/又は抑うつである、実施形態1~6の何れか1つに記載の方法。
実施形態8:精神疾患は、認知機能の低下を生じさせる障害である、実施形態1~7の何れか1つに記載の方法。
実施形態9:慢性ストレスに関連する状態は、消化管障害、例えばIBSである、実施形態1~8の何れか1つに記載の方法。
実施形態10:本組成物は、経口投与される、実施形態1~9の何れか1つに記載の方法。
実施形態11:本組成物は、食品、栄養補助食品又は薬学的に許容される組成物の形態にある、実施形態1~10の何れか1つに記載の方法。
実施形態12:本組成物は、スプレー乾燥又は凍結乾燥組成物である、実施形態1~11の何れか1つに記載の方法。
実施形態13:本組成物は、凍結防止剤を含む、実施形態12に記載の方法。
実施形態14:ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)は、本組成物中に、組成物1g当たり、又は1回分当たり106~1012CFU、任意選択的に、1回分当たり108~1012CFU、例えば1回分当たり1010CFUの量で存在する、実施形態1~13の何れか1つに記載の方法。
実施形態15:ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)は、DSM32655として寄託されたラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株LP12418及びDSM32654として寄託されたラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株LP12407から成る群から選択される少なくとも1つの細菌菌株である、実施形態3に記載の方法。
実施形態16:不安を予防又は治療するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)(例えば、DSMZに寄託番号DSM32661を付して寄託された菌株Lpc-37)を含む組成物。
実施形態17:抑うつを予防又は治療するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)(例えば、DSMZに寄託番号DSM32661を付して寄託された菌株Lpc-37)を含む組成物。
実施形態18:気分変動を予防又は治療するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)(例えば、DSMZに寄託番号DSM32661を付して寄託された菌株Lpc-37)を含む組成物。
実施形態19:記憶喪失又は認知機能の低下を予防又は治療するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)(例えば、DSMZに寄託番号DSM32661を付して寄託された菌株Lpc-37)を含む組成物。
実施形態20:慢性ストレス、例えばIBSに関連する状態を予防又は治療するための、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)(例えば、DSMZに寄託番号DSM32661を付して寄託された菌株Lpc-37)を含む組成物。
【実施例】
【0084】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態及び態様を例示し、更に詳しく説明するために提供するものであり、その範囲を限定すると解釈すべきではない。
【0085】
実施例1;候補菌株の初期スクリーニング。
多数のプロバイオティクス候補を最初にプロバイオティクスの特徴、安全性及び製造性能に関してスクリーニングした。これらの候補の大部分は、性能が不良であるために廃棄した。残っている候補について有効性試験を実施し、下記の実施例に報告したように、これらから5菌株を詳細な実験的試験のために選択した。
【0086】
実施例2;材料及び方法-一般
動物
JANVIER(Saint Berthevin、France)からの5週齢及び体重30~35gの雄性Swissマウスを使用し、実験は、Amylgen(Direction Regionale de l’Alimentation,de l’Agriculture et de la Foret du Languedoc-Roussillon)で実施した。動物は、1群マウス6匹ずつ収容し、行動実験中を除いて、飼料及び水を自由に摂取させた。各ケージは、単一処置群からのマウスを含有していた。それらは、温度及び湿度を調節した動物飼育施設内で12時間明暗周期(午後7時に消灯)で飼育した。全動物の取扱手順は、2010年9月22日の欧州連合指令(2010/63/UE)を厳密に遵守して実施した。
【0087】
細菌菌株調製物及び投与
細菌菌株を0.9%のNaCl中に溶解させ、毎朝午前9時に、マウス1匹当たり109CFU/日の用量に対応する胃管栄養法(マウス1匹当たり100μL)により経口投与した。ビヒクル群のマウスは、細菌菌株を含まない0.9%のNaClを摂取した。この処置の実施期間は、計33日間であった。
【0088】
慢性ストレス実験手順
慢性ストレス実験手順は、以前に記載されたように実施した(Espallergues et al.,Psychoneuroendocrinology,2009)。マウスは、3週間に渡って、1週間当たり連続5日間、1日当たり180分間(午前11時~午後2時)に渡り真昼の明るい光の下でプレキシガラス製透明拘束チューブ(長さ12cm、直径3cm)内に繰り返し配置した。コントロール群の動物(ストレス無しのマウス/ビヒクル群)は一度も拘束チューブ内に配置せず、ストレスが発生した部屋とは別の部屋で、ストレス実験手順中に影響を受けないままに置いた。
【0089】
動物の無作為割り付け
各ケージ(N=6)内で、動物は同一処置を受けた。処置及びストレス手順は、無作為方法で、行動実験及び生化学実験に関わっていなかった実験者によって実施された。行動実験手順は、第2の異なる実験者によって実施された。
【0090】
実験手順のスケジュール
・ 第1日に、動物を実験群に無作為割り付けし、計量し、適切な菌株又はビヒクルで処置した。
・ 第1~第33日に、動物を適切な菌株又はビヒクルにより処置した
・ 第8~第28日に、上記に記載した慢性ストレス実験手順を遵守して、動物に1日当たり3時間、1週間当たり月曜日~金曜日までの5日間に渡り慢性ストレス受けさせた。
・ 第29日に、動物に高架式十字迷路試験手順を実施させた。
・ 第30日に、動物に第31~32日の作業への馴化でもあったオープンフィールド試験手順を実施させた。
・ 第30日~第32日に、動物に物体認識記憶課題を実施させた
・ 第33日に、動物に強制水泳試験を実施させた。
・ 第36日に、動物を安楽死させた。各動物から血漿サンプルを採取した。副腎を採取し、計量した。
【0091】
処置期間中、急性死亡又は遅延性死亡を毎日チェックした。
【0092】
エンドポイント測定
高架式十字迷路:第29日に、マウスの不安状態は、マウスが高架式十字迷路のオープンアーム及びクローズドアームを探索する能力を評価することによって測定した。透明なプレキシガラス製装置は、中心のプラットフォームから延びて床の上方50cmに配置された2本のオープンアーム(23.5×8cm)及び2本のクローズドアーム(23.5×8×20cm(高さ))から構成された。各マウスをクローズドアームに面している高架式十字迷路の中心に配置し、その探査行動をEthovision(登録商標)XT 9.0(Noldus Information Technology)によって10分間にわたり記録した。結果は、自発運動活性、オープンアーム内で消費した時間及びオープンアーム内への進入回数として表示した。高架式十字迷路内の動物の位置を計算するためにEthovision(登録商標)XT 9.0ソフトウェアによって動物の重心を考察した。
【0093】
オープンフィールド:第30日に、マウスを赤外線発光ダイオードを装備した床を備える白色プレキシガラス製の四角形のオープンフィールド(50cm×50cm×50cm(高さ))内で個別に配置した。マウスを10分間に渡りオープンフィールドに馴化させ、彼らの自発運動活性はIR感受性カメラを通して捕捉し、Ethovision(登録商標)XT 9.0ソフトウェア(Noldus Information Technology)を使用して分析した。行動は、自発運動活性(移動距離、cm)、ソフトウェアによって定義された25×25cmの中心領域内での自発運動活性、マウスが提示した常同行動の回数(立ち上がりエピソード及びグルーミングエピソードの回数の合計)として分析した。
【0094】
新規な物体認識:第31日に、2つの同一の物体(キャップ付の50mL入りプラスチック製バイアル)をオープンフィールドのプレキシガラス製アリーナの規定位置(第1位置及び第2位置、中心領域の2つの側端)に配置した。各マウスをオープンフィールド内に配置し、10分間のセッション中の探索活性を記録した。この活性は、物体との接触回数及び接触時間に関して、ノーズ追跡プロトコールを使用して分析した。結果は、物体相互作用のパーセンテージ及び第2位置における物体との総相互作用時間のパーセンテージとして表示した。
【0095】
第32日に、第2位置における物体を見慣れた物体から新規な色の形状及び質感が異なる1つの物体と取り換えた。各マウスをオープンフィールド内に再度配置し、10分間のセッション中の探索活性を記録した。活性も同様に分析した。優先探索指数は、2つの物体との接触の総回数及び持続時間と比較した第2位置における物体との接触回数(若しくは持続時間)の比率として計算した。セッション中に物体との接触が10回未満であった動物は、試験から排除した。
【0096】
強制水泳試験:強制水泳試験を使用して、抑うつへの感受性の尺度である行動的絶望を評価した。各マウスを高さ12cmまで水を充填したガラス製シリンダー(直径12cm、高さ24cm)内に個別に配置した。水温は、22~23℃で維持した。動物に強制的に6分間水泳させた。このセッションは、コンピューターに接続したCCDカメラによって記録し、Ethovision(登録商標)XT 9.0ソフトウェア(Noldus Information Technology)を使用して運動を分析した。2つのレベルのピクセル変化を分析して、無動行動、もだえ行動及び水泳運動間を識別した。分析は、手順の最終5分間に1分間毎に実施した。
【0097】
脳サンプルの採取:下記の実施例3では、安楽死後に脳サンプルを採取した(下記参照)。脳を採取し、冷却板上で解剖した。海馬及び前頭皮質を二等分に分割し、解剖し、ドライアイス上で凍結させ、次いで-80℃で保管した。海馬の半分でBDNFレベルを測定した。
【0098】
ストレスホルモン放出の測定:齧歯類を含む多数の種において、コルチコステロンは、ストレス反応の調節に含まれる主要な糖質コルチコイドである。ヒトにおいては、コルチゾールが主要な糖質コルチコイドである。マウスの血漿中コルチコステロン濃度は、血漿サンプルから酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を用いて測定した。犠死時に、全血を2mLのEDTAマイクロチューブ(参照番号061666100、Sarstedt)中に採取し、直ちに冷却遠心機内で15分間に渡り+4℃、3,000gで遠心した。血漿を注意深く採取し、パスツールピペットを使用して新しいエッペンドルフチューブに移し、2本の同等量のアリコートを構成した。サンプルを取り扱い中は氷中の4℃で維持し、次に分析するまで-20℃で保管した。血漿中コルチコステロンは、25μLのサンプルから、比色分析キット(コルチコステロン(CSCI)ELISAキット、ab108821、Abcam、France)を用いてアッセイした。マウス血漿サンプルは、製造業者の取扱説明書に従って、1×の希釈剤M中で1:200に希釈し、そのままアッセイした。アッセイ内及びアッセイ間変動係数は、ルーチン的にそれぞれ5%及び7%であった。アッセイの感受性は、コルチコステロンについてはルーチン的に0.3ng/mLであった。サンプルは、2回ずつアッセイした。血漿中ACTHは、25μLのサンプルから、比色分析キット(ACTH ELISAキット、ENZ-KIT138,Enzo Life Science,France)を用いてアッセイした。マウス血漿サンプルは、製造業者の取扱説明書に従って、1×の希釈剤M中で1:1に希釈し、そのままアッセイした。BDNF含量測定は、海馬サンプル上で実施した。解凍後、海馬組織を50mMのTris-150mMのNaClバッファー(pH7.5)中でホモジナイズし、20秒間に渡り超音波処理した。遠心分離(4℃で15分間に渡り16,100g)後、製造業者の取扱説明書(Promega,#7610)に従ってBDNF ELISA中で上清を使用した。吸光度を450nmで読み取り、サンプル濃度は標準曲線を使用して計算した。ACTH及びBDNFはどちらも、サンプル体積が小さかったのでシングレットで分析したが、このため、ROUT法を用いてデータを外れ値について分析した。各転帰について3つの外れ値を同定し、分析から除去した。
【0099】
体重及び副腎重量:長期ストレスホルモン放出を評価するために、犠死時に副腎を解剖して計量した。結果は、副腎/体重比として表示した。
【0100】
統計的分析:数値は、平均値±標準誤差(SEM)として表示した。統計的分析は、シャピロ・ウイルク正規性検定からの結果に依存する様々な条件上でPrism 5.0a(GraphPad Software,Inc.)を使用して実施した。
・ データがガウス分布に従っている場合は一元配置ANOVA(F値)を実施し、個別群を相互に比較するために、ダネットの事後多重比較を実施した。
・ クラスカル・ワリス・ノンパラメトリックANOVA(H値)、その後にデータがガウス分布に従っていなかった場合は、ダンの多重比較検定を実施した。
p<0.05は統計的有意であると見なされた。
【0101】
実施例3;AM306.2試験 3種の選択した菌株(Lpc-37、菌株L及び菌株B)がマウスにおける繰り返しストレスに及ぼす作用の特徴付け
試験プロトコール
本試験では、60匹のSwissマウス(30~35g)を使用した。下記の表1に従って下記の方法で5つの動物群を構成した。
【0102】
【0103】
動物は、上記の実施例2に記載した方法に従って、実験群に無作為に割り付け、計量し、適切な菌株/ビヒクルを用いて処置した。第1日~第33日に、動物を上記の実施例2に記載した処置スケジュールに従って処置した。
【0104】
結果及び論評
動物の体重;
図1は、慢性ストレスがマウスの体重に及ぼす作用を示している。慢性ストレスは、ストレス無し/ビヒクル処置群と比較して、本試験の第18日~第32日の体重の有意ではない差を誘導した。選択した細菌菌株(Lpc-37、菌株L又は菌株B)を用いた個別処置は、このパラメーターへの作用を全く示さなかった。
【0105】
副腎重量;
図2は、慢性ストレスがマウスの副腎重量/体重比に及ぼす作用を示している。慢性ストレスは、副腎重量/体重比に有意な作用を全く示さなかった。菌株Bを用いたマウスの処置は、ストレス無し/ビヒクル群と比較して、副腎重量/体重比を有意に増加させた。これとは逆に、菌株Lを用いた処置は、ストレス無し/ビヒクル群と比較して、副腎重量/体重比を有意に減少させた。
【0106】
高架式十字迷路試験手順における不安の測定:処置が不安に及ぼす作用を高架式十字迷路試験手順において観察された結果で例示した。
図3から明らかなように、ストレスを受けたマウスは、オープンアーム内で消費された時間の減少によって反映される、極めて有意な不安様行動を示した(A)。Lpc-37処置は、この障害を極めて有意に、しかし部分的に緩和した。菌株L又は菌株Bの何れかを用いたマウスの処置は、この障害を緩和することに無効であった。動物群は、自発運動活性(B)又はオープンアームへの進入回数(C)に関して差を示さなかった。
【0107】
オープンフィールド試験手順における不安;
図4は、様々な処置がマウスの慢性ストレス誘導性不安に及ぼす作用を示している。
図4Aに示したように、ストレス単独も何れの処置も自発運動活性に観察可能な影響を有していなかった。しかし、慢性ストレスは、アリーナの中心における自発運動の極めて有意な減少を誘導した;これは、慢性ストレスが不安様行動を誘導したという兆候であった(
図4B)。更に、Lpc-37処置は、この障害を極めて有意に、且つ十分に緩和した。他の処置は、この不安様行動を緩和することに無効であると思われた。慢性ストレス単独も何れの処置も常同行動活性に関連する立ち上がり/グルーミング行動に何の影響も示さなかった(
図4C)。
【0108】
新規な物体認識手順における認知記憶;
図5は、マウスの慢性ストレス誘導性認知記憶に様々な処置が及ぼす作用を示している。慢性ストレス単独も何れの処置も、接触頻度(A)に関して、又は2つの物体を探索するために消費した時間(B)に関しての何れかで、2つの同一物体を用いた第2日のセッション中の物体探索への影響を示さなかった。しかし、慢性ストレスは、新規な物体との相互作用の回数(C)及び新規な物体との相互作用時間(D)を低下させることによって、新規な物体セッション中に認知記憶障害を誘導した。Lpc-37処置は、この障害を極めて有意に、且つ十分に緩和した。他の処置は、無効であると思われた。
【0109】
強制水泳試験;
図6は、慢性ストレス及び様々な処置がマウスの慢性ストレス誘導性行動的絶望に及ぼす作用を示している。強制水泳試験を使用して、3つの異なるパラメーター;無動行動時間(パラメーターA)、もがき行動時間(パラメーターB)及び水泳時間(パラメーターC)を測定した。慢性ストレスは、強制水泳試験における無動行動の増加を誘導した(
図6A)。慢性ストレスは、ストレス無し/ビヒクル群と比較して、水泳時間も又減少させた(
図6C)。Lpc-37処置は、これらの作用を極めて有意に緩和し、結果としてストレス無し/ビヒクル群の数値に匹敵する無動行動時間及び水泳時間値を生じさせた。その他の処置は、これらの作用を緩和する際に効果的であるとは思われなかった。もがき行動時間に関して、慢性ストレスも何れかの様々な処置もストレス無し/ビヒクル群と比較して、このパラメーターに影響を及ぼすとは思われなかった(
図6B)。
【0110】
ELISAによるコルチコステロン含量の測定;
図7は、第36日の処置群それぞれについての血漿中コルチコステロン濃度を示している。慢性ストレスは、強制水泳試験後のマウスの血漿中コルチコステロン濃度の非有意な上昇を生じさせたが、これは統計的有意性に到達しなかった。処置は、本試験におけるこのパラメーターへの有意な作用を示さなかった。
【0111】
AM306.2試験からの一般的結論;上述した結果から下記の結論を引き出すことができる。
【0112】
慢性ストレスは、行動的障害を誘導した:
・ ストレス無し群のマウスと比較して、マウスの体重のはるかに少ない増加を誘導したが、しかしながら、この差は統計的有意性に達しなかった
・ 試験した条件下で副腎重量/体重比に有意な作用を示さなかった
・ オープンフィールド試験及び高架式十字迷路試験においてマウスの不安様状態を誘導した
・ ストレス無し群マウスと比較して、マウスにおける極めて有意な認知長期記憶障害を示した。
・ 試験した条件下での血漿中コルチコステロン濃度に有意な作用を示さなかった。
【0113】
L.パラカゼイ(L.paracasei)Lpc-37を用いた処置:
・ 高架式十字迷路試験における慢性ストレスによって誘導された不安の増加を極めて有意に、しかし部分的に緩和した。
・ オープンフィールド試験手順における慢性ストレスによって誘導された不安の増加を極めて有意に、且つ十分に緩和した。
・ 強制水泳試験における慢性ストレスによって誘導された行動的絶望を極めて有意に、且つ十分に緩和した
・ 試験した条件下での血漿中コルチコステロン濃度への作用を全く示さなかった。
【0114】
菌株L又は菌株Bの何れかを用いた処置は、何れかの慢性ストレス誘導性行動試験又は生化学的試験パラメーターへの有意な作用を及ぼさなかった。
【0115】
実施例4;試験306.5 3種の選択した菌株(Lpc-37、LP12418及びLP12407)がマウスにおける繰り返しストレスに及ぼす作用の特徴付け
試験プロトコール
本試験では、72匹のSwissマウス(30~35g)を使用した。下記の表2に従って下記の方法で5つの動物群を構成した。
【0116】
【0117】
動物を実験群に無作為割り付けし、計量し、適切な菌株/ビヒクルで処置した。第1日~第33日に、動物は、上記の実施例2に記載した処置スケジュールに従って処置した。更に、第28日に、血液をサンプリングし、サンプルから血漿を調製した。更に、安楽死後、脳を切除し、海馬及び前頭皮質を切開して取り出し、計量した後に(更に実施例2に記載した方法に従って)-80℃で保管した。第28日に血漿中のコルチコステロン及びACTH濃度を測定した。BDNF含量も又、マウスの安楽死後の海馬サンプル中で測定した。
【0118】
結果及び論評
動物の体重;
図8は、慢性ストレスがマウスの体重に及ぼす作用を示している。慢性ストレスは、ストレス無し/ビヒクル処置群と比較して、本試験の第18日~第32日の体重の有意に低い増加を誘導した。選択した細菌菌株(Lpc-37、LP12418、LP12407)を用いた個別処置は、このパラメーターへの作用を全く示さなかった。
【0119】
高架式十字迷路試験手順における不安の測定;処置が不安に及ぼす作用は、高架式十字迷路試験手順において観察された結果に例示した。
図9から明らかなように、ストレスを受けたマウスは、オープンアーム内で消費された時間の減少によって反映される、極めて有意な不安様行動を示した(A)。Lpc-37、LP12418又はLP12407菌株を用いた処置は、オープンアーム内で消費された時間を極めて有意に、しかし部分的に増加させた(ビヒクル単独で処置された慢性ストレス群マウスにおいて観察された減少を部分的に緩和する)。動物群は、自発運動活性(B)又はオープンアームへの進入回数(C)に関して差を示さなかった。
【0120】
オープンフィールド試験手順における不安;
図10は、マウスの慢性ストレス誘導性不安に様々な処置が及ぼす作用を示している。
図10Aに示したように、ストレス単独も何れの処置も自発運動活性に観察可能な影響を有していなかった。しかし、慢性ストレスは、アリーナの中心における自発運動の極めて有意な減少を誘導した;これは、慢性ストレスが不安様行動を誘導したという兆候であった(
図10B)。更に、Lpc-37、LP12418又はLP12407菌株を用いた処置は、この障害を極めて有意に、且つ十分に緩和した。慢性ストレスは、内部域(D)において消費された時間の有意な減少及び外部域(E)において消費された時間の有意な減少も更に誘導した。Lpc-37、LP12418又はLP12407を用いた処置は、これらのストレス誘導性反応を緩和し、ストレス無し/ビヒクル群に匹敵するレベルへ内部域及び外部域において消費された時間を回復させた。慢性ストレス単独も何れの処置も常同行動活性に関連する立ち上がり/グルーミング行動には何の影響も示さなかった(
図10C)。
【0121】
新規な物体認識手順における認知記憶;
図11は、様々な処置がマウスの慢性ストレス誘導性認知記憶に及ぼす作用を示している。慢性ストレス単独も何れの処置も、接触頻度(
図11A)に関して、又は2つの物体を探索するために消費した時間(
図11D)に関しての何れかで、2つの同一物体を用いた第2日のセッション中の物体探索への影響を示さなかった。しかし、慢性ストレスは、新規な物体との相互作用の回数(
図11B)及び新規な物体との相互作用時間(
図11E)を低下させることによって、新規な物体セッション中に認知記憶障害を誘導した。Lpc-37、LP12418又はLP12407菌株の何れかを用いた処置は、相互作用頻度及び相互作用時間を極めて有意に、且つ十分に回復させ、これらの菌株を用いた処置が新規な物体認識に及ぼす作用を確実にした。識別指数について同一のプロファイルが観察された(
図11C及び11F)。
【0122】
強制水泳試験;
図12は、慢性ストレス及び様々な処置がマウスの慢性ストレス誘導性行動的絶望に及ぼす作用を示している。強制水泳試験を使用して、3つの異なるパラメーター;無動行動時間(パラメーターA)、水泳時間(パラメーターB)及びもがき行動時間(パラメーターC)を測定した。慢性ストレスは、強制水泳試験における無動行動の増加を誘導した(
図12A)。慢性ストレスは、ストレス無し/ビヒクル群と比較して、水泳時間も又減少させた(
図12B)。Lpc-37、LP12418又はLP12407菌株何れかを用いた処置は、無動行動時間及び水泳時間にストレスが及ぼす作用を極めて有意に、且つ十分に逆転させ、結果としてストレス無し/ビヒクル群の値に匹敵する無動行動時間及び水泳時間値を生じさせた。もがき行動時間に関して、慢性ストレスも何れかの様々な処置もストレス無し/ビヒクル群と比較して、このパラメーターに影響を及ぼすとは思われなかった(
図12C)。
【0123】
ELISAによる生化学的マーカーの測定;
図13A及び13Bはそれぞれ、処置群のそれぞれについての血漿中コルチコステロン濃度及びACTH濃度を示している。
図13Cは、海馬内のBDNF濃度を示している。慢性ストレスは、マウス血漿中のコルチコステロン濃度を極めて有意に増加させ、ACTH濃度を有意に減少させた。BDNF濃度における非有意な増加は、慢性ストレス群マウスにおいても観察された。Lpc-37を用いて処置されたマウスは、慢性ストレス群に比して血中コルチコステロン濃度における類似の増加を示さなかったが、それらはストレス無しビヒクル群又は慢性ストレスビヒクル群のマウスの何れとも有意に相違しなかった。しかし、Lpc-37処置は、ACTH濃度に影響を及ぼすとは思われなかった。LP12418を用いた処置はコルチコステロン濃度に作用を及ぼさなかったが、慢性ストレス/ビヒクル群と比較してACTH濃度を極めて有意に増加させ、ストレス無し/ビヒクル群に匹敵するレベルまでACTH濃度を回復させた。LP12407処置は、慢性ストレス群マウスと比較してコルチコステロン濃度又はACTH濃度における差を示さなかった。BDNF濃度は、ストレス無しビヒクル群及び全プロバイオティクス処置された慢性ストレス群マウスを通して類似であった。慢性ストレスビヒクル群マウスにおいてはより高い平均BDNF濃度が見られるにもかかわらず、これらの群間では統計的有意差は見られなかった。
【0124】
AM306.5試験からの一般的結論
・ 上述した結果から下記の結論を引き出すことができる。
・ 慢性ストレスは、行動的障害を誘導した:
・ ストレス無し群マウスと比較して、部分的体重減少を誘導した
・ オープンフィールド試験及び高架式十字迷路試験においてマウスの不安様状態を誘導した。
・ ストレス無し群マウスと比較して、マウスにおける極めて有意な認知長期記憶障害を示した。
・ 強制水泳試験パラダイムにおける行動的絶望によって観察される有意な抑うつ様状態を示した
・ 血漿中コルチコステロン濃度を有意に増加させた。
・ L.パラカゼイ(L.paracasei)Lpc-37、L.プランタルム(L.plantarum)LP12418、L.プランタルム(L.plantarum)若しくはLP12407の何れかを用いた処置:
・ 慢性ストレス群マウスと比較して体重低下には何の作用も及ぼさなかった
・ 高架式十字迷路試験におけるマウスの不安様状態を極めて有意に、且つ十分に緩和した。
・ オープンフィールド試験手順におけるマウスの不安様状態を極めて有意に、且つ十分に緩和した。
・ 慢性ストレス群マウスに比較して、マウスの認識長期記憶障害を極めて有意に、且つ十分に緩和した。
・ ビヒクル単独を用いて処置された慢性ストレス群と比較して、強制水泳試験パラダイムにおける行動的絶望によって観察される抑うつ様行動を極めて有意に、且つ十分に緩和した。
・ コルチコステロン濃度、ACTH濃度及びBDNF濃度への異なる作用を示した。
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】