(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】AAVベクター
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20230628BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20230628BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230628BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20230628BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20230628BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230628BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230628BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N7/01 ZNA
C12Q1/02
C12Q1/70
A61K35/76
A61K48/00
A61P27/02
A61P43/00 105
(21)【出願番号】P 2020542193
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(86)【国際出願番号】 EP2018078175
(87)【国際公開番号】W WO2019076856
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-09-13
(32)【優先日】2017-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520128255
【氏名又は名称】ビゲネロン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】スティリアノス ミヒャラキス
(72)【発明者】
【氏名】マルチン ビール
(72)【発明者】
【氏名】ヒルデガルト ブュニング
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シェーン
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-518614(JP,A)
【文献】国際公開第2016/134375(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/141078(WO,A1)
【文献】Dalkara D et al.,In vivo-directed evolution of a new adeno-associated virus for therapeutic outer retinal gene delivery from the vitreous,Sci. Transl. Med.,2013年,Vol.5, No.189, 189ra76,p.1-11
【文献】Perabo L et al.,In vitro selection of viral vectors with modified tropism:the adeno-associated virus display,Molecular Therapy,2003年,Vol.8, No.1,p.151-157
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
C12N 15/00-15/90
Genbank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部を含み、その挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式I:
X
1A-X
1B-X
2-X
3-X
4-X
5-X
6-X
7(式I)
(式中、
X
5は、P(Pro)、L(Leu)およびV(Val)から選択され;
X
7はR(Arg)であり;
X
1Aおよび/またはX
1Bは、G、S、N、VおよびPから選択され;および
X
2は、L、SおよびNから選択され;および
X
3は、S、P、TおよびQから選択され;および
X
4は、P、G、S、AおよびTから選択され;および
X
6は、T、P、N、QおよびSから選択され;および
X
1Aおよび/またはX
1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している、
または
X
5は、S(Ser)およびT(Thr)から選択され;
X
7はS(Ser)であり;
X
1Aおよび/またはX
1Bは、G、R、HおよびSから選択され;および
X
2は、A、SおよびQから選択され;および
X
3は、H、NおよびAから選択され;および
X
4は、R、QおよびDから選択され;および
X
6は、R、SおよびDから選択され;および
X
1Aおよび/またはX
1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している、
または
X
5は、A(Ala)およびQ(Gln)から選択され;
X
7はA(Ala)であり;
X
1Aおよび/またはX
1Bは、NおよびRから選択され;および
X
2は、SおよびGから選択され;および
X
3は、RおよびSから選択され;および
X
4は、PおよびLから選択され;および
X
6は、AおよびNから選択され;および
X
1Aおよび/またはX
1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している)、
を有する、アデノ随伴ウイルス(AAV)であって
ここで、このAAVをC57-Bl6Jマウスの尾の静脈に静脈内投与する場合、24時間後にウイルスAAV DNAがマウス網膜核抽出物の中に存在しており、
ここで、このAAVをC57-Bl6Jマウスの尾の静脈に静脈内投与して桿体をソーティングする場合、およびこのAAVをRG-eGFPマウス系R685933の尾の静脈に静脈内投与して錐体をソーティングする場合、投与してから24時間後にウイルスAAV DNAが、抗CD73で被覆した磁性ビーズを用いてMACでソーティングした桿体の中、および/またはFACSでソーティングした錐体の中に存在しており、その錐体はeGFPを発現していて、そのeGFPの発現に基づいてFACSでソーティングされる、AAV。
【請求項2】
X
1Aが不在であり、かつX
1Bが存在するか、または、X
1Bが不在であり、かつX
1Aが存在する、請求項1に記載のAAV。
【請求項3】
前記挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式II:
L
3-L
2-L
1-X
1A-X
1B-X
2-X
3-X
4-X
5-X
6-X
7-L
4-L
5-L
6(式II)
(式中、
Lは可撓性アミノ酸であり;および
L
1、L
2、L
3、L
4、L
5およびL
6は、独立に、Ala、Leu、Gly、SerおよびThrから選択され、および
L
1、L
2、L
3、L
4、L
5およびL
6は、独立に、場合によっては不在であるか存在している)、
を有する、請求項1または2に記載のAAV。
【請求項4】
X
5は、P(Pro)、L(Leu)およびV(Val)から選択され;および
X
7はR(Arg)であり;および
X
1Aおよび/またはX
1Bは、G、S、N、VおよびPから選択され;および
X
2は、L、SおよびNから選択され;および
X
3は、S、P、TおよびQから選択され;および
X
4は、P、G、S、AおよびTから選択され;および
X
6は、T、P、N、QおよびSから選択され、かつ、L
1、L
2、L
3、L
4、L
5およびL
6は、存在し;および
X
1Aおよび/またはX
1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在し;および
好ましくはAAV2である、
請求項3に記載のAAV。
【請求項5】
X
1AまたはX
1Bの一方が存在し、かつX
1AまたはX
1Bの他方が不在であり、かつ
L
1、L
2、L
3、L
4およびL
5のすべてが存在し、かつL
6が不在である、請求項1~3のいずれか1項に記載のAAV。
【請求項6】
X
1Aおよび/またはX
1Bおよび/またはX
2および/またはX
3が酸性アミノ酸ではない、請求項1~5のいずれか1項に記載のAAV。
【請求項7】
X
1AまたはX
1Bの一方が存在し、かつX
1AまたはX
1Bの他方が不在であり、かつX
2が、塩基性アミノ酸または酸性アミノ酸ではない、請求項1~6のいずれか1項に記載のAAV。
【請求項8】
X
1Aおよび/またはX
1Bおよび/またはX
2および/またはX
3および/またはX
4および/またはX
6が疎水性芳香族アミノ酸ではない、請求項1~7のいずれか1項に記載のAAV。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のAAVを含む医薬組成物。
【請求項10】
光受容器細胞疾患を治療するための請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
網膜細胞の核に形質導入するための、請求項1~8のいずれか1項に記載のAAVのインビトロでの使用。
【請求項12】
挿入配列をスクリーニングする方法であって、
i)各AAVが
配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入配列を含むAAVライブラリをヒトを除く対象に静脈内投与し;
ii)網膜核抽出物からウイルスAAV DNAを単離し;
iii)単離したそのウイルスAAV DNAを第2のAAVライブラリにサブクローニングし;
iv)工程iii)で得られたその第2のAAVライブラリをヒトを除く対象に静脈内投与し;
v)桿体光受容器または錐体光受容器からウイルスDNAを単離し;
vi)前記挿入配列の配列を決定すること
により、その挿入配列を取得することを含む、方法。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか1項に記載のAAVを含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入配列を含むアデノ随伴ウイルス(AAV)に関する。薬として利用するための本発明のAAVと、本発明のAAVを含む医薬組成物も想定されている。本発明はさらに、網膜細胞の核に形質導入するための、インビトロでの本発明のAAVの利用に関する。挿入配列をスクリーニングする方法のほか、このスクリーニング法によって得られるペプチドも本発明に関係する。本発明のAAVを含むキットも考えられる。
【背景技術】
【0002】
組み換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、網膜細胞に遺伝子を効率的かつ長期にわたって導入するのに非常に適した送達系であることが証明されている(Boye他(2013年)「網膜遺伝子療法の包括的概説」Molecular therapy、第21巻(2013年)509~519ページと、Trapani他(2014年)「遺伝性網膜症の遺伝子療法のためのベクタープラットフォーム」Prog Retin Eye Res)。AAVはパルボウイルス科デペンドウイルス属に属する非病原性ウイルスであり、アデノウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルスいずれかの存在下でだけ複製され(Nathwani他(2014年)「血友病Bにおける第IX因子遺伝子療法の長期安全性と効率」N Engl J Med、第371巻(2014年)1994~2004ページ)、約5 kbの一本鎖DNAゲノムを有する(Trapani他(2014年)「遺伝性網膜症の遺伝子療法のためのベクタープラットフォーム」Prog Retin Eye Res)。
【0003】
AAVは、導入遺伝子の安全性と長期発現が、大動物モデルにおいて、非ヒト霊長類において、そしてヒトでの多数の試験において、広範に調べられてきた(MacLaren他(2014年)「コロイデレミア患者における網膜遺伝子療法:1相/2相臨床試験からの初期の知見」Lancet 第383巻、1129~1137ページ;Maguire他(2008年)「レーバー先天性黒内障のための遺伝子導入の安全性と効率」N Engl J Med、第358巻、2240~2248ページ;Simonelli他(2010年)「レーバー先天性黒内障のための遺伝子療法はベクター投与後の1.5年間にわたって安全かつ効果的である」Molecular therapy: the journal of the American Society of Gene Therapy第18巻、643~650ページ;Nathwani他(2014年)「血友病Bにおける第IX因子遺伝子療法の長期安全性と効率」N Engl J Med第371巻、1994~2004ページ)。
【0004】
AAVは、遺伝子補充療法(遺伝子増強療法とも呼ばれる)のための最も好ましい遺伝子導入ベクターである。遺伝子補充療法は遺伝性疾患を治療するための1つの魅力的なアプローチであり、病原性変異によって起こる遺伝子機能の不十分さまたは欠損を回復させることを目的としている。ゴールは、病的な細胞種の正常な生理学的機能を回復すること、および/または遺伝子機能の補充によって変性プロセスを抑制または遅延を生じさせることである。
【0005】
遺伝子療法は、病原性変異の結果として起こる遺伝子機能の不十分さまたは欠損を回復させることを目的としている。このアプローチは劣性遺伝疾患の治療にとって特に魅力的である。なぜなら劣性遺伝疾患では、異常な転写産物またはタンパク質がこの治療を邪魔することはないと予想されるからである。ゴールは、正常な遺伝子機能を適切な位置において十分な量で補充することによって変性プロセスの停止または阻止を生じさせ、病的な細胞種または組織の正常な生理学的機能を回復させることである。
【0006】
AAVは組織内と生物の体内にある程度広がる(Le Guiner他(2011年)「AAVベクターの生体内分布と排出」Methods in molecular biology第807巻、339~359ページ)が、たいていの治療法、特に目の遺伝子療法では、一般に局所的に投与する必要がある。光受容器または網膜色素上皮(RPE)細胞に形質導入するため、AAV粒子を網膜下腔(すなわちRPEと光受容器の間に液体を注射した後に形成される空洞)に投与する(Muhlfriedel他(2013年)「マウスへの網膜下注射のための最適化された技術」Methods in molecular biology第935巻、343~349ページ、Ochakovski他(2017年)「網膜遺伝子療法:橋渡し研究から臨床試験における外科用ベクター送達」Front Neurosci第11巻:174ページ)。
【0007】
構造的には、AAVは、小さくて(25 nm)エンベロープがないウイルスであり、二十面体のカプシドを有する。カプシド(cap)タンパク質の組成と構造が異なる天然のAAVバリアント(AAV血清型とも呼ばれる)または操作されたAAVバリアントは、異なる指向性(すなわち異なる(網膜)細胞種に形質導入する能力)を有する(Boye他(2013年)「網膜遺伝子療法の包括的概説」Molecular therapy第21巻509~519ページと、Trapani他(2014年)「遺伝性網膜症の遺伝子療法のためのベクタープラットフォーム」Prog Retin Eye Res)。この指向性は、あらゆる場所で活性なプロモータと組み合わさったとき、遺伝子が発現する部位を規定する。だが細胞種特異的プロモータとの組み合わせでは、部位特異性(すなわち桿体光受容器または錐体光受容器の中だけでの導入遺伝子の発現)の程度は、AAV血清型の指向性とプロモータの特異性の両方の組み合わせによって決まる(Schon他(2015年)「アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターによる網膜遺伝子送達:戦略と応用」European journal of pharmaceutics and biopharmaceutics)。AAVを目の硝子体に投与すると、内網膜内の細胞、主に神経節細胞とミュラーグリア細胞に形質導入される(Trapani他(2014年)「遺伝性網膜症の遺伝子療法のためのベクタープラットフォーム」Prog Retin Eye Res)。
【0008】
天然のAAV血清型のどれも、硝子体内に投与されるときには光受容器に形質導入することができない。なぜなら内境界膜(ILM)の位置に物理的障壁があるから、またはILMの位置に適切な受容体が欠如しているからである。
【0009】
遺伝子療法のアプローチが成功する前提条件は、標的細胞の中で導入遺伝子が効率的かつ長期にわたって発現する一方で、オフターゲットの発現がほんのわずかであり、しかも可能な副作用が最少であることである。利用可能なAAVベクターは貴重な遺伝子送達ツールだが、それでも改善されたAAVを開発することが強く要求されている。
【0010】
光受容器を標的とするにはAAVを網膜下腔の中に投与する必要がある。この非常に侵襲的な外科手続きによって網膜がRPEから剥離する。網膜剥離は通常は一時的であって網膜は再付着し、網膜の機能と形態に深刻な劣化効果または長期の劣化効果を及ぼすことはまったくない。しかし変性した網膜では、および/または剥離が卵黄様黄斑領域に関係している場合には、網膜下注射に付随する損傷のリスクが増加する可能性がある。したがって、特に生物学的利用能と送達経路と標的細胞特異性に関して改良されたAAVベクターが必要とされている。
【0011】
そのためさらに改善されたAAVベクターを開発する必要性が相変わらず存在している。本明細書では、網膜細胞、特に光受容器細胞に遺伝子導入するための新規なAAVとして、生体内選択から発展して改善された特徴を有する新規なAAVを記述する。
【0012】
本発明は、本明細書と、実施例、図面、請求項に記載されているこの必要性に合致している。
【発明の概要】
【0013】
本発明はアデノ随伴ウイルス(AAV)に関するものであり、このAAVは、配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部を含み、その挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式I:
X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7(式I)
(式中、
X5は、P(Pro)、L(Leu)およびV(Val)から選択され;
X7はR(Arg)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している、
または
X5は、S(Ser)およびT(Thr)から選択され;
X7はS(Ser)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している、
または
X5は、A(Ala)およびQ(Gln)から選択され;
X7はA(Ala)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している)
を有し、
ここで、このAAVをC57-Bl6Jマウスの尾の静脈に静脈内投与する場合、24時間後にウイルスAAV DNAがマウス網膜核抽出物の中に存在しており、
ここで、このAAVをC57-Bl6Jマウスの尾の静脈に静脈内投与して桿体をソーティングする場合、およびこのAAVをRG-eGFPマウス系R685933の尾の静脈に静脈内投与して錐体をソーティングする場合、投与してから24時間後にウイルスAAV DNAが、抗CD73で被覆した磁性ビーズを用いてMACでソーティングした桿体の中、および/またはFACSでソーティングした錐体の中に存在しており、その錐体はeGFPを発現していて、そのeGFPの発現に基づいてFACSでソーティングされる。
【0014】
さらに、本発明は、薬として利用するための、本発明のAAVに関する。
【0015】
それに加え、本発明は、光受容器細胞疾患の治療に用いるための、本発明のAAVに関する。
【0016】
本発明はさらに、本発明のAAVを含む医薬組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、網膜細胞の核に形質導入するための、本発明のAAVのインビトロでの使用に関する。
【0018】
さらに、本発明は、挿入配列をスクリーニングする方法に関係しており、この方法は、
i)各AAVが挿入配列を含むAAVライブラリを対象に静脈内投与し;
ii)網膜核抽出物からウイルスAAV DNAを単離し;
iii)単離したそのウイルスAAV DNAを第2のAAVライブラリにサブクローニングし;
iv)工程iii)で得られたその第2のAAVライブラリを対象に静脈内投与し;
v)桿体光受容器または錐体光受容器からウイルスAAV DNAを単離し;
vi)挿入配列の配列を決定すること
により、その挿入配列を取得することを含んでいる。
【0019】
本発明はさらに、本発明のスクリーニング方法によって得られるペプチド(挿入配列)に関する。
【0020】
本発明は、本発明のAAVを含むキットにも関する。
図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1:網膜全体からのペプチド挿入部 列挙されているペプチド挿入部をAAV2 VP1の位置587に有する以下の新規なAAVは、静脈内への送達を確認できてから24時間以内に、網膜の細胞を標的とし、そのAAVのゲノムを網膜細胞の核に移す能力を与えた(NGSリードが2つ以上のバリアントだけを列挙してあり、NGSリードが20超のバリアントは太字にしてある)。
【
図2】
図2:桿体光受容器からのペプチド挿入部 それに加え、列挙されたペプチド挿入部をAAV2 VP1の位置587に有する以下の新規なAAVは、静脈内への送達を確認できてから24時間以内に桿体光受容器を標的とする能力を与えた(NGSリードが2つ以上のバリアントだけを列挙してあり、NGSリードが20超のバリアントは太字にしてある)。
【
図3】
図3:錐体光受容器からのペプチド挿入部 最後に、列挙されたペプチド挿入部をAAV2 VP1の位置587に有する以下の新規なAAVは、静脈内送達を確認できてから24時間以内に錐体光受容器を標的とする能力を与えた(NGSリードが2つ以上のバリアントだけを列挙してあり、NGSリードが20超のバリアントは太字にしてある)。
【
図4】
図4:RGDモチーフ、RGSモチーフまたはNGRモチーフのいずれかを含む同定されたペプチド挿入部 同定されたAAVのいくつかは、インテグリンに結合すると推定されるモチーフ(RGD、RGS、NGRなど)を含有していた。これらの挿入配列は
図4にまとめられている。
【
図5】
図5:2つ以上の組織/細胞集団で同定されたペプチド挿入部。各実験におけるNGSリード数が示されている。いくつかのAAVは2つ以上の実験で検出された。示されている挿入配列を含むこれらの重複するAAVは、そのそれぞれについてのNGSリードの数とともに
図5にまとめられている。
【
図6】
図6:代表的な生体内共焦点走査レーザー眼科顕微鏡(cSLO)画像であり、新規なAAV2バリアント(ペプチド挿入配列は各画像の上部に与えられている)の1つでパッケージングされたAAV-sc-CMV-eGFPのウイルス懸濁液1μl(約2×10
9個のベクターゲノムを含有する)を硝子体内に1回だけ注射してから2週間後の10週齢のC57-BL6Jマウスの眼底におけるeGFP自己蛍光を示している。強いeGFP自己蛍光(灰色)が、多くの網膜細胞種において網膜の広い領域で観察された。
【
図7】
図7:代表的な共焦点走査顕微鏡画像であり、新規なAAV2バリアント(ペプチド挿入配列は各画像の上部に与えられている)の1つでパッケージングされたAAV-sc-CMV-eGFPのウイルス懸濁液1μl(約2×10
9個のベクターゲノムを含有する)を硝子体内に1回だけ注射してから3週間後の11週齢のC57-BL6Jマウスからの網膜切片におけるeGFP蛍光を示している。バリアント「NNPTPSR」(上部の全体画像と、左下の拡大画像を参照されたい)と「GLSPPTR」(右下に拡大画像だけを示してある)では、強いeGFP蛍光(灰色)が、多くの網膜細胞種および網膜細胞層と、網膜細胞切片の全領域で観察された。特に、多くの光受容器内節(inner segments)(is)と、外顆粒層(outer nuclear layer)(onl)の中の多くの光受容器細胞体がeGFP陽性であった。inl、内顆粒層;gcl、神経節細胞層。スケール棒は、上側の図では100μmを、下側の図では25μmを表わす。
【
図8】
図8:代表的な共焦点走査顕微鏡画像であり、新規なAAV2バリアント(ペプチド挿入配列は各画像の上部に与えられている)の1つでパッケージングされたAAV-sc-CMV-eGFPのウイルス懸濁液1μl(約2×10
9個のベクターゲノムを含有する)を網膜下(上図)または硝子体内(下図)に1回だけ注射してから3週間後の11週齢のC57-BL6Jマウスからの網膜切片におけるeGFP蛍光を示している。強いeGFP蛍光(灰色)が、多くの網膜細胞種と網膜細胞層で観察された。特に、多くの光受容器内節(inner segments)(is)と、外顆粒層(outer nuclear layer)(onl)の中の多くの光受容器細胞体がeGFP陽性であった。網膜下注射の後、強いeGFP蛍光が網膜色素上皮細胞(retinal pigment epithelial cells)(rpe)でも観察された。inl、内顆粒層(inner nuclear layer);gcl、神経節細胞層(ganglion cell layer)。スケール棒は25 pmを表わす。
【
図9】
図9:(A)代表的な生体内共焦点走査レーザー眼科顕微鏡(cSLO)画像であり、新規なAAVバリアント(GLSPPTRまたはNNPTPSR;ペプチド挿入配列は各画像の上部に与えられている)の1つでパッケージングされたAAV-sc-CMV-eGFPのウイルス懸濁液1μl(約2×10
9個のベクターゲノムを含有する)を硝子体内に1回だけ注射(WPI)してから1週間後、2週間後、3週間後の2ヶ月齢のC57-BL6Jマウスの眼底におけるeGFP自己蛍光を示している。強いeGFP自己蛍光(灰色)が、多くの網膜細胞種において網膜の広い領域で観察された。すべての画像を、レーザーと検出器の設定を同じにして取得した。(B)代表的な共焦点走査顕微鏡画像であり、AAV2、または新規なAAVバリアント(GLSPPTRまたはNNPTPSR;ペプチド挿入配列は各画像の上部に与えられている)の1つでパッケージングされたAAV-sc-CMV-eGFPのウイルス懸濁液1μl(約2×10
9個のベクターゲノムを含有する)を硝子体内に1回だけ注射してから3週間後の2ヶ月齢のC57-BL6Jマウスからの網膜切片で抗eGFP抗体(灰色)を用いて得られた免疫シグナルを示している。新規なバリアントGLSPPTRとNNPTPSRのそれぞれについて、強いeGFP免疫シグナル(灰色)が、多くの網膜細胞種と網膜細胞層で観察された。それとは対照的に、AAV2は、まばらな細胞で標識がより弱かった。すべての画像を、レーザーと検出器の設定を同じにして取得した。特に、外顆粒層(ONL)の中の多くの光受容器細胞体がeGFP陽性であった。INL、内顆粒層;GCL、神経節細胞層。
【
図10】
図10:代表的な共焦点走査顕微鏡全体画像であり、AAV2、または新規なAAVバリアント(GLSPPTRまたはNNPTPSR;ペプチド挿入配列は各画像の上部に与えられている)の1つでパッケージングされたAAV-sc-CMV-eGFPのウイルス懸濁液1μl(約2×10
9個のベクターゲノムを含有する)を硝子体内に1回だけ注射(WPI)してから3週間後の2ヶ月齢のC57-BL6Jマウスからの網膜切片で抗eGFP抗体を用いて得られた免疫シグナル(上側の図、灰色)を示している。新規なバリアントGLSPPTRとNNPTPSRのそれぞれについて、強いeGFP免疫シグナル(灰色)が、多くの網膜細胞種および網膜細胞層と、網膜切片全体で観察された。それとは対照的に、AAV2は、網膜のより狭い領域で標識がより弱かった。すべての画像を、レーザーと検出器の設定を同じにして回収した。各eGFP画像の下に、対応するHoechst 33342核細胞染色(灰色)画像が示されている。
【
図11】
図11:661w細胞におけるAAVベクターの形質導入効率。(A)AAV、7m8、1つの新規なAAV2バリアント(GLSPPTRまたはNNPTPSR;ペプチド挿入配列は各画像の上部に与えられている)のいずれかでパッケージングされていてMOIが100,000のAAV-sc-CMV-eGFPを用いて形質導入してから48時間後の時点の661w細胞培養物からの代表的な落射蛍光画像。(B)形質導入なしの661w細胞培養物と、AAV、7m8、1つの新規なAAV2バリアント(GLSPPTRまたはNNPTPSR;ペプチド挿入配列は各画像の上部に与えられている)のいずれかでパッケージングされていてMOIが100,000のAAV-sc-CMV-eGFPを用いて形質導入してから48時間後の時点の661w細胞培養物について、FACSで測定したeGFPの相対強度(%)を示すグラフである。
【
図12】
図12:代表的な共焦点走査顕微鏡画像であり、新規なAAV2「GLSPPTR」カプシドでパッケージングされたss-mSWS-eGFPのウイルス懸濁液1μl(約2×10
9個のベクターゲノムを含有する)を1回だけ硝子体内に注射してから6週間後の10週齢のC57-BL6Jマウスからの網膜切片の錐体光受容器におけるeGFP発現を示している。AAV-ss-mSWS-eGFPがマウスSオプシンプロモータの制御下でeGFPを発現させる。錐体光受容器において強いeGFP蛍光(灰色)が観察された。錐体マーカーである錐体アレスチンを用いた二重標識の定量から、錐体アレスチン陽性錐体の78.7±3.1%(n=4)がeGFPに関して陽性であることが明らかになった。os/is、外節/内節。onl、外顆粒層。inl、内顆粒層。opl、外網状層。
【
図13】
図13:代表的な共焦点走査顕微鏡画像であり、新規なAAV2(ペプチド挿入配列は各画像の上部に与えられている)の1つでパッケージングされたsc-CMV-eGFPの合計1×10
11個のvg(ウイルスゲノム)を用いて形質導入した後にインビトロで培養して9日目(DIV)のヒト網膜外植片における、AAVを媒介としたeGFP発現を示している。強いeGFP蛍光(灰色)が、多くの網膜細胞種と網膜細胞層で観察された。特に、多くの光受容器内節(is)と、外顆粒層(onl)の中の多くの光受容器細胞体がeGFP陽性であった。is、内節。onl、外顆粒層。inl、内顆粒層。gcl、神経節細胞層。
【
図14】
図14:ss-mSWS-mCnga3-WPRE(Michalakis他(2010年)「先天的に錐体光受容器機能が完全に欠けたCNGA3
-/-マウスモデルにおける錐体視力の回復」Mol Ther.:2057~2063ページ)の合計約1×10
10個のvgを含有する1μlを硝子体内に1回だけ注射してから2ヶ月後の3ヶ月齢のCnga3欠損マウスからの代表的な明所視フリッカERG測定。示されている周波数で3.1 log cd秒/m
2の刺激を与えたときの処置した目(黒色)と対照である処置なしの目(灰色の点線)からのトレースが示されている。
【
図15】
図15:代表的な共焦点走査顕微鏡画像であり、新規なAAV2「GLSPPTR」カプシドでパッケージングされた(ss-mSWS-mCnga3-WPRE(Michalakis他(2010年)「先天的に錐体光受容器機能が完全に欠けたCNGA3
-/-マウスモデルにおける錐体視力の回復」Mol Ther. 第18巻:2057~2063ページ)の合計約1×10
10個のvgを含有する)1μlを硝子体内に1回だけ注射してから2ヶ月後の3ヶ月齢のCnga3欠損マウスからの網膜切片の錐体光受容器におけるCNGA3タンパク質の発現を示している。強い抗CNGA3免疫シグナルが、ピーナツのアグルチニン(PNA)陽性錐体光受容器に見られる。os、外節。onl、外顆粒層。inl、内顆粒層。gcl、神経節細胞層。
【
図16】
図16:新規なAAV2「NNPTPSR」カプシドでパッケージングされた(ss-mRho-mCngb1-sv40(Koch他、2012年)「遺伝子療法は、網膜色素変性症のCNGB1-/-マウスモデルにおいて視力を回復させ、変性を遅延させる」Hum Mol Genet.:4486~4496ページ)の合計約1×1010個のvgを含有する)1μlを硝子体内に1回だけ注射してから2ヶ月後の月齢3ヶ月のCnga3欠損マウスからの代表的な暗所単一フラッシュERG測定。示されている輝度の光刺激における、処置した目(黒色)と対照である処置なしの目(灰色の点線)からのトレースが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の発明者は、さまざまな網膜細胞種、特に光受容器への効率的な形質導入を目指すあらゆる研究にとって非常に価値のある、新規なペプチド挿入部を有する新規なAAVカプシドを見いだした。さらに、これらの新規なAAVカプシドバリアントにより、天然の障壁を超えて硝子体内または全身コンパートメントからのさまざまな網膜細胞種(特に光受容器)に形質導入することが可能になる。
【0023】
本発明のAAVが特に有益であるというのは、特別な選択プロセスの結果でもある。選択プロセスは、本発明のAAV が合格する必要のある2つの選択ラウンド、それどころか3つの選択ラウンドを含んでいる。最初に、Perabo他(2003年)「改変された指向性を有するウイルスベクターのインビトロ選択:アデノ随伴ウイルス提示」Molecular Therapy、第8巻、第1号に記載されているのと同様のAAVペプチド提示ライブラリを用意した。特に、プラスミドpWt.oenを構成するため、プラスミドpEGFPC-1(Clontech社、パロ・アルト、カリフォルニア州)の中のHCMVプロモータ/エンハンサカセットとGFPオープンリーディングフレームを、プラスミドpUC-AV2(Girod他(1999年)「カプシドの遺伝子改変によってアデノ随伴ウイルス2型の効率的な再ターゲティングが可能になる」Nat. Med. 第5巻:1052~1056ページ)の野生型AAV-2ゲノムをコードする断片で置換した。PCR突然変異誘発により、アミノ酸AAA停止Aと制限部位NotIおよびAscIをコードするDNA断片をアミノ酸位置587と588の間に挿入した。AAVプラスミドのライブラリ(ライブラリ#1)を生成させるため、一本鎖DNA分子のプールを5'-TTGGCGCGCCGCVNNVNNVNN
VNNVNNVNNVNNGGCGGCCGCTTTTTTCCTTGA-3'(下鎖;配列番号2)として合成し、HPLCで精製した(Metabion GmbH社、マーチンスリート、ドイツ国)。二本鎖分子を合成するため、5'-CTCAAGGAAAAAAGC-3'プライマー(配列番号3)を使用した。dsDNA分子をプラスミドpWt.oenのNotI-AscI大断片にクローニングした。
【0024】
遺伝子パルサー(Bio-Rad社、ハーキュリーズ、カリフォルニア州)を用いてライブラリ#1を大腸菌株DH5αに電気穿孔し、増幅されたDNAを精製した。形質転換の効率は、サンプルアリコートを播種することによって制御した。プライマー5'-ATGTCCGTCCGTG
TGTGG-3'(配列番号4)を用いてシークエンシングすることにより、クローン数が20超のDNAを制御した。スクリーニングされた配列は相同性を示さなかった。これは、挿入された配列が完全にランダムであったことを示している。
【0025】
ウイルスを作製するため、HEK293細胞が80%の集密度になった15枚の150 mmのペトリ皿に37.5μgのDNAを共トランスフェクト(cotransfected)した。AAVライブラリを作製するため、ライブラリ#1とプラスミドpXX6(J. Samulski、チャペル・ヒル、ノースカロライナ州から取得;Xiao、Li、Samulski (1998年)「ヘルパーアデノウイルスなしでの高力価組み換えアデノ随伴ウイルスベクターの作製」J. Virol. 第72巻:2224~2232ページ)を1:1のモル比でHEK293細胞に共トランスフェクトした。48時間後、細胞を回収し、遠心分離によってペレット化した。細胞を150 mMのNaClと50 mMのトリス-HCl(pH 8.5)の中に再懸濁させ、凍結-解凍を数回実施し、37℃にてベンゾナーゼ(50 U/ml)で30分間処理した。細胞デブリを遠心分離によって除去し、以前に記載されているようにして、(Zolotukhin他(1999年)「新規な方法を利用した組み換えアデノ随伴ウイルスの精製によって感染力価と収率が向上する」Gene Ther. 第6巻:973~985ページ)に記載されているようにして、細胞デブリを遠心分離によって除去し、上清をイオジキサノール勾配にロードし、18℃で1時間にわたって69,000 rpmの状態にした。次にビリオンを40%イオジキサノール相から回収し、repプローブを用いたDNAドット-ブロットハイブリダイゼーションによって滴定した(Girod他(1999年)「カプシドの遺伝子改変によってアデノ随伴ウイルス2型の効率的な再ターゲティングが可能になる」Nat. Med. 第5巻:1052~1056ページ)。この手続きによってライブラリ#1が得られた。
【0026】
上記のようにしてAAVペプチド提示ライブラリをHEK293細胞でパッケージングした後、(PCT/EP2008/004366に記載されているようにして)遺伝子型と表現型をカップルさせた。後者は、カプシドの表面に提示されるペプチドをゲノムが確実にコードしているようにするために必要である。それに加え、AAVライブラリは、HSPGにとっての二次的高親和性結合部位を有するAAVの存在をできるだけ少なくするために挿入したペプチド配列を通じ、HSPGに結合する変異体を激減させてあった(Sallach他(2014年)「指向性が改変されたAAVベクターが障害を克服して皮膚療法の成功に至る」Mol. Ther. 第22巻:929~939ページ)。
【0027】
選択ラウンド1では、生きている成体C57BL/6Jマウスに、AAVペプチド提示ライブラリ#1の合計約8×1010個のベクターゲノム(vg)を含有する100μlを尾の静脈に1回だけ注射した。24時間後、マウスを頸椎脱臼によって安楽死させ、Dumont #7弯曲鉗子(Fine Science Tools社、ハイデルベルク)を視神経に近い後部の周囲に配置して軽く圧力を加えることによって目を突出させた。角膜を鋭い刃で赤道に沿って切断した。その後、鉗子を上方に軽く引っ張ることにより、網膜を網膜色素上皮(RPE)から剥離させ、残っている目組織から、レンズおよび硝子体とともに取り出した。組織を氷で冷やした0.1 Mのリン酸塩バッファー(PB)の中でリンスした後、レンズと残っているあらゆるRPE細胞を鉗子で除去し、マウスごとに2つの網膜をプールし、エッペンドルフ管の中に移し、液体窒素の中で瞬間凍結させ、あとで使用するために-80℃で保管した。Subcellular Protein Fractionation Kit for Tissues(Thermo Fischer Scientific社、#87790)を用いて網膜全体から核を単離し(て核DNAだけを分析できるようにし)た。DNeasy Blood & Tissue Kit(Qiagen社、#69504)を用いて核DNAを単離し、Roche 454シークエンシングシステムを用いたシークエンシングによってさらに分析し、AAVライブラリのDNAを標的とする特別なアッセイを利用して存在するAAVゲノムを探した。その後、プライマー5'-GTATCTACCAACCT
CCAGAGAG-3'(配列番号5)と 5'-GTGTTGACATCTGCGGTAGC-3'(配列番号6)を用いて挿入部位の周囲のウイルスDNAを増幅し、NotI-AscI部位を通じてプラスミドpWt.oenにクローニングすることにより、プラスミドプールを生成させた。
【0028】
AAVライブラリ#2を作製するため、293細胞が80%の集密度になった15枚の150 mmのペトリ皿に、選択ラウンド1から得られた37.5μgのプラスミドDNAプールとプラスミドpXX6をモル比1:1で共トランスフェクトした。48時間後、細胞を回収し、遠心分離によってペレットにした。細胞を150 mMのNaClと50 mMのトリス-HCl(pH 8.5)の中に再懸濁させ、凍結-解凍を数回実施し、37℃でベンゾナーゼ(50 U/ml)を用いて30分間処理した。(Zolotukhin他(1999年)「新規な方法を利用した組み換えアデノ随伴ウイルスの精製によって感染力価と収率が向上する」Gene Ther. 第6巻:973~985ページ)に記載されているようにして、細胞デブリを遠心分離によって除去し、上清をイオジキサノール勾配にロードし、18℃で1時間にわたって69,000 rpmの状態にした。次にビリオンを40%イオジキサノール相から回収し、repプローブまたはgfpプローブを用いたDNAドット-ブロットハイブリダイゼーションによって滴定した(Girod他(1999年)「カプシドの遺伝子改変によってアデノ随伴ウイルス2型の効率的な再ターゲティングが可能になる」Nat. Med. 第5巻:1052~1056ページ)。この手続きによってライブラリ#2が得られた。
【0029】
ライブラリ#2で(PCT/EP2008/004366に記載されているようにして)遺伝子型と表現型をカップルさせ、滴定し、生体内選択の新たなラウンドを実施した。特に、生きている成体C57BL/6Jマウスの尾に、合計約5×1011個のvgを含有する50μlを尾の静脈に1回だけ注射した。選択ラウンド2のその後の工程を選択ラウンド1に関して記載したようにして実施すると、ライブラリ#3の生成に用いるための新規なプラスミドプールが得られた。
【0030】
AAVライブラリ#3を作製するため、293細胞が80%の集密度になった15枚の150 mmのペトリ皿に、選択ラウンド1から得られた37.5μgのプラスミドDNAプールとプラスミドpXX6をモル比1:1で共トランスフェクトした。48時間後、細胞を回収し、遠心分離によってペレットにした。細胞を150 mMのNaClと50 mMのトリス-HCl(pH 8.5)の中に再懸濁させ、凍結-解凍を数回実施し、37℃でベンゾナーゼ(50 U/ml)を用いて30分間処理した。(Zolotukhin他(1999年)「新規な方法を利用した組み換えアデノ随伴ウイルスの精製によって感染力価と収率が向上する」Gene Ther. 第6巻:973~985ページ)に記載されているようにして、細胞デブリを遠心分離によって除去し、上清をイオジキサノール勾配にロードし、18℃で1時間にわたって69,000 rpmの状態にした。次にビリオンを40%イオジキサノール相から回収し、repプローブまたはgfpプローブを用いたDNAドット-ブロットハイブリダイゼーションによって滴定した(Girod他(1999年)「カプシドの遺伝子改変によってアデノ随伴ウイルス2型の効率的な再ターゲティングが可能になる」Nat. Med. 第5巻:1052~1056ページ)。この手続きによってライブラリ#3が得られた。
【0031】
選択ラウンド3aでは、生きている成体C57BL/6Jマウスに、AAVペプチド提示ライブラリ#3の合計約5×1011個のvgを含有する100μlを尾の静脈に1回だけ注射した。24時間後、選択ラウンド1と2に関して記載した手続きに従って網膜を単離したが、プールした網膜を凍結させず、ただちに処理して桿体光受容器を単離した点が異なっていた。特に、(Feodorova他(2015年)「成体マウスから桿体光受容器核周部の網膜を解離・分離する迅速かつ信頼性のある方法」MethodsX第2巻:39~46ページ)に記載されているようにしてパパイン解離を実施した後、(Eberle他(2014年)「MACSで精製した光受容器前駆細胞を成体マウスの網膜の網膜下に移植する」J Vis Exp第84巻:e50932ページ)に従って抗CD73に基づくMACSソーティングを実施することによって桿体を単離した。MACSソーティングで得られた桿体からSubcellular Protein Fractionation Kit for Tissues(Thermo Fischer Scientific社、#87790)を用いて桿体の核を単離し(て核DNAだけを分析できるようにし)た。DNeasy Blood & Tissue Kit(Qiagen社、#69504)を用いて核DNAを単離した。Roche 454シークエンシングシステムを用いたシークエンシングを実施し、桿体に最も多く見られる挿入されたペプチド配列を明らかにした。
【0032】
選択ラウンド3bでは、錐体光受容器で増強緑色蛍光タンパク質(eGFP)を発現している生きた成体RG-eGFPマウス(Fei他(2003年)「トランスジェニックマウスの蛍光性錐体により、マウス網膜における錐体光受容器モザイクの発達が明らかになった」Mol Vision 第9巻:31~42ページ)の尾の静脈に、AAVペプチド提示ライブラリ#3の合計約5×1011個のvgを含有する100μlを1回だけ静脈内注射した。24時間後、選択ラウンド1と2に関して記載した手続きに従って網膜を単離したが、プールした網膜を凍結させず、ただちに処理して錐体光受容器を単離した点が異なっていた。特に、(Feodorova他(2015年)「成体マウスから桿体光受容器核周部の網膜を解離・分離する迅速かつ信頼性のある方法」MethodsX 第2巻: 39~46ページ)に記載されているようにしてパパイン解離を実施した後、(Becirovic他(2016年)「疾患に関連する点変異の生体内分析によって桿体光受容器と錐体光受容器におけるペリフェリン-2のmRNAスプライシングの大きな違いが明らかになる」PLOS Genetics第12巻(1):e1005811ページ)に従って錐体をFACSでソーティングした(マーカーeGFP)。FACSソーティングで得られた錐体からSubcellular Protein Fractionation Kit for Tissues(Thermo Fischer Scientific社、#87790)を用いて錐体の核を単離し(て核DNAだけが分析されるようにし)た。DNeasy Blood & Tissue Kit(Qiagen社、#69504)を用いて核DNAを単離した。Roche 454シークエンシングシステムを用いたシークエンシングを実施し、錐体に最も多く見られる挿入されたペプチド配列を明らかにした。
【0033】
新規なカプシドバリアントを有するAAVベクターを作製するための新規なヘルパープラスミドを生成させるため、以前の選択ラウンドで得られていずれかの端部の近傍に2~3個のアラニンが存在する選択された挿入配列をコードする上鎖(5'-CGCGGCCGCANNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNGCCG-3')(配列番号7)と下鎖(5'-CGCGCGGCNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNNTGCGGC-3')(配列番号8)をコードする合成一本鎖DNAオリゴを合成し(Eurofins Genomics GmbH社、エバースベルク、ドイツ国)、ハイブリダイズさせることにより近傍にオーバーハングMlul-Ascl制限部位を有する二本鎖DNAオリゴを形成し、アニールし、AAVのRep遺伝子とCap遺伝子を発現するAAVトランスプラスミドpRC99(Nickiin他(2001年)「ヒト血管内皮細胞へのAAV2を媒介とした効率的かつ選択的な遺伝子導入」Molecular therapy: the journal of the American Society of Gene Therapy 第4巻、174~181ページと、Girod他(1999年)「カプシドの遺伝子改変によってアデノ随伴ウイルス2型の効率的な再ターゲティングが可能になる」Nature medicine 第5巻、1052~1056ページ)のMlul-Ascl制限部位に連結させると、VP1のアミノ酸587に対応する位置に意図するペプチド挿入部を有するAAV2 VP1~3オープンリーディングフレームが生成した。配列を挿入することでMlul/Ascl部位が破壊され、正確なクローンのスクリーニングに使用できる新規なEagI部位が生成する。得られたプラスミドの正確な配列は、プライマー5'-CTTTGGGAAGCAAGGCTCAG-3'(配列番号9)を用いた標準的なシークエンシングによって確認した。
【0034】
改変されたこれらpRC99プラスミドを用い、望む新規な改変AAVカプシドを有するAAV粒子を生物学的試験のために作製した。AAVの作製は、(Michalakis他(2010年)「先天的に錐体光受容器機能が完全に欠けたCNGA3-/-マウスモデルにおける錐体視力の回復」Molecular therapy: the journal of the American Society of Gene Therapy 第18巻、2057~2063ページと、Becirovic他(2016年)「光受容器外節におけるタンパク質-タンパク質相互作用をFRETに基づいて分析するためのAAVベクター」Front Neurosci 第10巻:356ページ)に記載されている標準的な技術によって実施した。CMV-eGFP発現カセット(AAV-sc-CMV-eGFP)を有する自己相補性(sc)AAVシスプラスミド(Hacker他(2005年)「アデノ随伴ウイルス血清型1~5は、腫瘍細胞に向かう遺伝子の導入と、形質導入効率の向上を媒介した」J Gene Med 第7巻(11):1429~1438ページ)をシスプラスミドとして使用した。
【0035】
カプシドが改変されたAAVバリアントを作製するため、293細胞が80%の集密度になった15枚の150 mmのペトリ皿に、改変されたpRC99プラスミドと、プラスミドpXX6と、プラスミドAAV-sc-CMV-eGFPのそれぞれ37.5μgをモル比1:1で共トランスフェクトした。48時間後、細胞を回収し、遠心分離によってペレットにした。細胞を150 mMのNaClと50 mMのトリス-HCl(pH 8.5)の中に再懸濁させ、凍結-解凍を数回実施し、37℃でベンゾナーゼ(50 U/ml)を用いて30分間処理した。(Zolotukhin他(1999年)「新規な方法を利用した組み換えアデノ随伴ウイルスの精製によって感染力価と収率が向上する」Gene Ther. 第6巻:973~985ページ)に記載されているようにして、細胞デブリを遠心分離によって除去し、上清をイオジキサノール勾配にロードし、18℃で1時間にわたって69,000 rpmの状態にした。次にビリオンを40%イオジキサノール相から回収し、Amicon Ultra-4遠心分離フィルタユニット、100 kDa(Millipore社)を用いてリン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)で再緩衝させ、ゲノム粒子の力価を、ITR特異的プライマー(D’Costa他(2016年)「組み換えAAVベクター参照基準の実際的な利用:遊離ITR qPCRによるベクターゲノム滴定に焦点を当てる」Mol Ther Methods Clin Dev. 第5巻:16019ページ)を用いてqPCR(LightCyclerシステム、Roche Diagnostics社、マンハイム、ドイツ国)によって求めた。
【0036】
このようにして、網膜光受容器への形質導入効率が大きいAAVカプシドバリアントベクターを作製するためのAAVヘルパープラスミドが得られた。標的細胞(例えば錐体光受容器)の中に改変されたAAVカプシドをコードする特別なゲノムが静脈内注射の24時間後に存在しているというのは、こうした特別なカプシド改変によって以下の生物学的障害を克服できることを示唆している:
1.宿主の免疫系から逃れること
2.全身クリアランスから逃れること
3.血管内皮細胞障壁と網膜-血液-障壁(RBB)
4.網膜内:網膜の血管から出て網膜組織の中に拡散すること
5.脈絡膜血管からの侵入が想定される場合:ブルッフ膜と、網膜色素上皮細胞障壁と、光受容器の細胞外マトリックスと、そしておそらくは外境界膜を通って移動して最終的に光受容器細胞の中に入る。侵入経路が光受容器外節である場合には、結合繊毛も同様に克服すべきである。
6.硝子体血管からの侵入が想定される場合:内境界膜と、神経節細胞層と、内網状層と、内顆粒層外網状層を通って移動して最終的にシナプス末端の位置で光受容器に入る。
7.AAV粒子は、細胞に侵入するとき、エンドリソソーム小胞系を通過してエンドリソソーム小胞系を逃れ、そのゲノムを脱穀してシャッフルし、核膜を通過して細胞の核の中に入る必要がある。
8.したがって標的細胞の核をスクリーニングして特定のAAVゲノムが検出されることは、これらの障害がすべてうまく克服されたことを示唆している。
【0037】
それに加え、ライブラリはヘアピン結合が激減していた。これは特に重要である。というのも、特に網膜細胞と光受容器への形質導入には一般にヘアピン結合が必要であると考えられていたからである。ヘアピン結合が激減したライブラリを用いることにより、標準的なAAVと比べても、以前に生成したAAVと比べても、明らかに異なる細胞侵入・追跡機構を利用する可能性が非常に高い新規なAAVが特別に選択される。
【0038】
上述のように、新規なカプシドは、網膜細胞への効果的な形質導入を目的としたあらゆる用途で大きな価値がある。新規なカプシドは、生きている動物の中、または移植する組織培養物の中、または細胞培養物の中に存在することができる。さらに、新規なカプシドは、基礎研究、または臨床応用(目の遺伝子療法など)で用いることができる。さらに、応用が遺伝子発現に限定されることはなく、siRNA(shRNA)技術、または例えばジンクフィンガー系、TALEN系、CAS9/CRISPR系などのヌクレアーゼを用いた遺伝子編集を利用した遺伝子ノックダウンも応用に含めることができる。最後に、新規なAAVは、他の分子(その非限定的な例に含まれるのは、DNA、RNA、ペプチド、タンパク質、化合物である)のためのカーゴシステムとしても有用である。
【0039】
本発明はアデノ随伴ウイルス(AAV)に関するものであり、このAAVは、配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部を含み、その挿入配列は、N末端からC末端に向かって、式I:
X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7(式I)
を有し(式中、
X5は、P(Pro)、L(Leu)およびV(Val)から選択され;
X7はR(Arg)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している、
または
X5は、S(Ser)およびT(Thr)から選択され;
X7はS(Ser)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している、
または
X5は、A(Ala)およびQ(Gln)から選択され;
X7はA(Ala)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している)、
ここで、このAAVをC57-Bl6Jマウスの尾の静脈に静脈内投与する場合、24時間後にウイルスAAV DNAがマウス網膜核抽出物の中に存在しており、
ここで、このAAVをC57-Bl6Jマウスの尾の静脈に静脈内投与して桿体をソーティングする場合、およびこのAAVをRG-eGFPマウス系R685933の尾の静脈に静脈内投与して錐体をソーティングする場合、投与してから24時間後にウイルスAAV DNAが、抗CD73で被覆した磁性ビーズを用いてMACでソーティングした桿体の中、および/またはFACSでソーティングした錐体の中に存在しており、その錐体はeGFPを発現していて、そのeGFPの発現に基づいてFACSでソーティングされる。
【0040】
本明細書では、アデノ随伴ウイルス(AAV)は、任意のAAVウイルスそのもの、またはその部分(例えばウイルスのカプシド、ウイルスのゲノムなど)を意味するのに用いることができる。「AAV」という用語には、あらゆる亜型(天然の形態と組み換え形態の両方)と、そのバリアントも包含される。
【0041】
AAVの非限定的な例に含まれるのは、AAV 1型(AAV-1)、AAV 2型(AAV-2)、AAV 3型(AAV-3)、AAV 3B型(AAV-3B)、AAV 4型(AAV-4)、AAV 5型(AAV-5)、AAV 6型(AAV-6)、AAV 7型(AAV-7)、AAV 8型(AAV-8)、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、rh10、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ヒツジAAVである。「霊長類AAV」は、霊長類に感染するAAVを意味する。「非霊長類AAV」は、非霊長類に感染するAAVを意味し、「ウシAAV」は、哺乳動物のウシに感染するAAVを意味し、などである。
【0042】
特に、本明細書に記載されている実験を、改変されたAAV2カプシドを用いて実施した。しかし(本明細書に記載されている他のAAVからの)他のAAVカプシドも、対応するカプシド位置にペプチド挿入部を許容する(Michelfelder他(2011年)「生体内でAAV8とAAV9 の遺伝子形質導入をリダイレクトするために三重スパイクカプシドドメインに組み込まれたペプチドリガンド」PloS one 第6巻、e23101ページ)。
【0043】
したがってわれわれの新規なペプチド挿入部は、公知の他のAAV2カプシド(AAV2と比べて網膜においてより大きな効率とより広い形質導入プロファイルを有することが知られている例えばAAV8、AAV9、AAV7、AAV5)に移すことができる。これらのAAVは、AAV2と比べて網膜の中でより大きな効率とより広い形質導入プロファイルを有する可能性がある。
【0044】
さらに、AAVカプシドペプチド挿入部を、カプシドのチロシン変異、トレオニン変異、セリン変異(Petrs-Silva他(2009年)「チロシン変異AAV血清型ベクターによるマウス網膜への高効率な形質導入」Molecular therapy: the journal of the American Society of Gene Therapy第17巻463~471ページと、Zhong他(2008年)「次世代のアデノ随伴ウイルス2ベクター:チロシンの点変異が、より低用量での高効率な形質導入につながる」Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 第105巻、7827~7832ページ)と組み合わせることで、プロテアソームが媒介する分解を減らし、形質導入の効率を増大させることができる。
【0045】
AAVとしてAAV2が可能である。
【0046】
さらに、AAVとして、天然のAAV(野生型AAV)、バリアントAAV、組み換えAAVが可能である。「天然の」AAVまたは「野生型」AAVは、天然に生じるウイルスタンパク質(ウイルス(カプシド)タンパク質からなるウイルスカプシドなど)を含む任意のアデノ随伴ウイルス、またはその誘導体を意味する。したがって本発明のAAVとして、配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に本明細書に記載の挿入配列を含む天然のAAVが可能である。
【0047】
「AAVバリアント」または「バリアントAAV」には、AAV タンパク質のバリアントまたは変異体(例えば変異AAVタンパク質)を含むAAVウイルス粒子が含まれる。バリアントAAVタンパク質の例に含まれるのは、対応する親AAVタンパク質(すなわちそのバリアントAAVタンパク質の出所となったAAVタンパク質)、野生型AAVタンパク質などと比べて少なくとも1個のアミノ酸の違いを含むAAVタンパク質であるため、そのバリアントAAVタンパク質は、天然のAAVタンパク質に存在するアミノ酸配列で構成されていない。例えばそのようなバリアントAAVは、本発明の挿入配列を含むことに加えて、カプシドタンパク質VP3に変異を含むことができる。
【0048】
AAVバリアントは、対応する親AAVとは構造が異なる(すなわち配列レベルで異なる)ことに加えて、機能が異なる可能性がある。言い換えると、対応する親AAVカプシドタンパク質とは異なる少なくとも1個のアミノ酸を含むバリアントカプシドタンパク質は、対応する親AAVが持っていない機能的特徴をそのAAVバリアントに与える可能性がある。例えばAAVバリアントは、異なる細胞指向性を有する可能性、すなわち特定のタイプの細胞に対して異なった親和性を有する可能性、および/または特定のタイプの細胞に感染する能力を有する可能性がある。例えばAAVバリアントは、細胞(例えば網膜細胞)に親AAVよりも大きな(または小さな)親和性で結合する可能性、および/または細胞(例えば網膜細胞)に親AAVよりも大きな(または小さな)効率で感染/形質導入する可能性があるため、同じ力価のウイルス粒子で細胞集団のより多くの(または少ない)細胞に形質導入/感染する。第2の例として、AAVバリアントは、宿主動物が産生した抗体に対してより大きな(または小さな)親和性を有する可能性がある。例えばAAVバリアントは、中和抗体により大きな(または小さな)親和性で結合し、宿主組織からより多く(または少なく)排出される可能性がある。例えば本発明のAAVとして、配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に本明細書に記載の挿入配列を含む変異(バリアント)AAVが可能である。
【0049】
「組み換えAAV」または「rAAV」には、自身のウイルスゲノムの中に異種ポリヌクレオチド配列を含む任意のAAVが含まれる。一般に、異種ポリヌクレオチドの近傍には、少なくとも1つ、一般には2つの天然AAV逆方向末端反復配列(ITR)またはバリアントAAV ITRが存在する。rAAVベクターという用語は、rAAVベクター粒子とrAAVベクタープラスミドの両方を包含する。本明細書に記載のウイルスベクターもrAAVである。したがって例えば異種ポリヌクレオチド配列を含むrAAVは、天然の野生型AAVに通常は含まれていない核酸配列(例えば導入遺伝子(例えば非AAV RNAをコードするポリヌクレオチド配列、非AAVタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列)、非AAVプロモータ配列、非AAVポリアデニル化配列など)を含むrAAVであると考えられる。
【0050】
このような組み換えAAVベクターは本分野に共通の一般的な知識であるため、当業者はこのような組み換えAAVを構成する方法も知っている。
【0051】
「rAAVベクターゲノム」または「rAAVゲノム」は、1つ以上の異種核酸配列を含むAAVゲノム(すなわちvDNA)である。rAAVベクターは、一般に、ウイルスを生成させるのに末端反復(TR)だけを必要とする可能性がある。他のすべてのウイルス配列はなくてもよいと考えられるため、トランスで供給することができる(Muzyczka(1992年)Curr Topics Microbiol. Immunol. 第158巻:97ページ)。典型的には、rAAVベクターのゲノムは、ベクター/カプシドで効率的にパッケージングすることのできる導入遺伝子のサイズをできるだけ大きくするため、1つ以上のTR配列だけを保持することになろう。構造タンパク質と非構造タンパク質をコードする配列は(例えばベクター(プラスミドなど)から、またはその配列をパッケージング細胞に安定に組み込むことによって)トランスで提供することができる。本発明の実施態様では、rAAVベクターのゲノムは、少なくとも1つのTR配列(例えばAAV TR配列)、場合によっては2つのTR(例えば2つのAAV TR)を含んでいる。そのTRは、典型的にはベクターのゲノムの5'末端と3'末端にあって異種核酸が近傍に存在するが、その異種核酸と連続している必要はない。TRは互いに同じでも異なっていてもよい。
【0052】
「末端反復」または「TR」という用語には、ヘアピン構造を形成して逆方向末端反復として機能する(すなわち複製、および/またはウイルスのパッケージング、および/または組み込み、および/またはプロウイルスのレスキューなどを媒介する)任意のウイルス末端反復配列または合成配列が含まれる。TRとして、AAV TRまたは非AAV TRが可能である。例えば非AAV TR配列(他のパルボウイルス(イヌパルボウイルス(CPV)、マウスパルボウイルス(MVM)、ヒトパルボウイルスB-19)のTR配列や、他の適切な任意のウイルス配列(例えばSV40複製の起点として機能するSV40ヘアピン)など)をTRとして用いることができ、それを頭部切断、および/または置換、および/または欠失、および/または挿入、および/または付加によってさらに改変することができる。さらに、TRは、一部または全体を合成することができる(例えばSamulskiらに付与されたアメリカ合衆国特許第5,478,745号に記載されている「二重D配列」)。
【0053】
「AAV末端反復」または「AAV TR」は、任意のAAVに由来するものが可能であり、その非限定的な例に含まれるのは、血清型が1、2、3、3B、4、5、6、7、8、9、10、11、12または13のいずれかであるAAV、または現在知られているか将来発見される他のあらゆるAAVである。AAV末端反復は、望む機能(例えば複製、および/またはウイルスのパッケージング、および/または組み込み、および/またはプロウイルスのレスキューなど)を媒介する限り、天然の末端反復配列を有する必要はない(例えば天然のAAV TR配列は、挿入、および/または欠失、および/または頭部切断、および/またはミスセンス変異によって変化していてもよい)。本発明のウイルスベクターとしてさらに、国際特許出願公開WO 00/28004とChao他(2000年)Molecular Therapy 第2巻:619ページに記載されているような、「標的とされる」ウイルスベクター(例えば特定の指向性を有する)および/または「ハイブリッド」パルボウイルス(すなわちウイルスTRとウイルスカプシドが、異なるパルボウイルスに由来する)が可能である。
【0054】
組み換えAAVという用語には、例えばAAVのカプシドだけを含んでいて、そのカプシドの中に自身のゲノムに加えて、またはその代わりに非核酸カーゴ(タンパク質、ポリペプチド、別の分子など)を有するAAVも包含される。例えばカプシドは、AAVに関係するゲノムにとって異種である核酸を含むことができる。カプシドが(AAVの核酸ではない)異種核酸を有することも考えられる。そのような組み換えAAVの作製法は例えばアメリカ合衆国特許第9,610,354 B2号またはWO 1996/000587 A1に記載されている。
【0055】
本明細書では、カプシドタンパク質は、AAVカプシドタンパク質を意味する。典型的には、AAVカプシドは、60個のカプシドタンパク質サブユニットVP1、VP2、VP3で構成されていて、それらが通常は1:1:10または1:1:20の比で二十面体対称性に配置されている。正しいビリオンを組み立てるのにVP2とVP3が不可欠であることが報告された。しかしより最近になり、完全なウイルス粒子の形成と効率的な感染にVP2は不要であることが示されるとともに、VP2はN末端に大きな挿入部を許容できる一方で、VP1は、おそらくPLA2ドメインの存在が理由でそれができないことも提示された。注目すべきことに、VP1のN末端は成熟カプシドの中に封鎖されている。VP1のN末端は、ホスホリパーゼA2様領域と推定核局在シグナルを含有することができる。したがってカプシドタンパク質は、本発明のVP1カプシドタンパク質を含むことができ、さらにカプシドタンパク質VP2とVP3の一方または両方を含むことができる。
【0056】
カプシドタンパク質VP1、VP2、VP3の配列は当業者に知られている。VP1、VP2、VP3のどのバリアントであれ、それがカプシドを相変わらず組み立てることができるのであれば、考慮される(本明細書に示されている表1にいくつかの配列がまとめられているのも参照されたい)。カプシドが組み立てられたかどうかを分析する方法は当業者に知られており、例えばSonntag他(2011年)「アセンブリ活性化タンパク質がさまざまなアデノ随伴ウイルス血清型のカプシドアセンブリを促進する」J Virol. 第85巻(23):12686~12697ページに記載されている。
【0057】
本発明のカプシドタンパク質の「バリアント」には、変異を含むカプシドタンパク質が包含される。変異は任意のカプシド配列に存在することができる。例えば変異は、その結果として変異したカプシドタンパク質になるのであれば、表1に示されているどの配列にも存在することができる。そのような変異に含めることができるのは、1個以上の点変異である(例えば1個、2個、5個、10個、15個、20個、50個、またはそれよりも多数の点変異)。バリアントは、挿入(DNA/RNAへの1個以上のヌクレオチドの付加、または特定のカプシドタンパク質(VP1および/またはVP2および/またはVP3)への1個以上のアミノ酸の付加)も含むことができる(例えば1個、2個、3個、5個、6個、またはそれよりも多数の挿入)。点変異と挿入の両方とも、本分野で知られている一般的な規則に従って選択することができる。点変異と挿入は、例えば配列番号1のアミノ酸配列と比べてアミノ酸配列の活性に影響を及ぼさない可能性がある。
【0058】
バリアントは、核酸塩基またはアミノ酸の欠失も含むことができ、その結果としてアミノ酸の数が減ったカプシドタンパク質になる。したがってポリペプチドは、例えば表1に示されている任意の配列の野生型配列と比べて1個、2個、3個、4個、5個、10個、20個、30個、またはそれよりも多数のアミノ酸残基の欠失を含むことができる。表1に示されている核酸分子と比べて1個、2個、3個、4個、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、200個、300個、またはそれよりも多数の核酸塩基の欠失も含まれる。それでもバリアントは、表1に記載されているポリペプチドまたは核酸分子のどれとも同じ機能的特性を相変わらず有する。
【0059】
本明細書に記載されているカプシドタンパク質(ポリペプチド、核酸分子)のバリアントも本発明に包含されるため、本発明は、表1に示されている任意のポリペプチド/核酸分子と80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または99%、または100%一致するカプシドの核酸配列またはポリペプチド配列も包含する。
【0060】
したがってポリペプチド、タンパク質または分子のいずれかを有する組み換えAAVは、ベクターの中に存在する唯一のAAVタンパク質として、カプシドタンパク質VP1および/またはVP2および/またはVP3を含むことができる。
【0061】
したがって本発明のAAVとして、配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に本明細書に記載の挿入配列を含む組み換えAAVが可能である。
【0062】
AAVが、天然のAAV 1型(AAV-1)、AAV 2型(AAV-2)、AAV 3型(AAV-3)、AAV 3B型(AAV-3B)、AAV 4型(AAV-4)、AAV 5型(AAV-5)、AAV 6型(AAV-6)、AAV 7型(AAV-7)、AAV 8型(AAV-8)、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、rh10、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、ヒツジAAVと少なくとも70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または99%、または100%一致する配列を含むか有することも考えられる。AAVが、表1に記載されている配列と少なくとも70%、または75%、または80%、または85%、または90%、または95%、または97%、または99%、または100%一致する配列を有することも考えられる。
【0063】
本明細書では、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド、タンパク質またはポリペプチドのいずれかを意味していて、これらの用語は交換可能に用いられ、アミノ酸残基が共有ペプチド結合によって連結された所与の長さのアミノ酸鎖を包含する。ポリペプチドは、遺伝子をコードする20種類のアミノ酸を含むことができる。これらは当業者に知られている。遺伝子をコードする20種類のアミノ酸以外のアミノ酸、すなわち非天然アミノ酸も包含される。そのような非天然アミノ酸の例に含まれるのは、D-アミノ酸、ホモアミノ酸、N-メチルアミノ酸、α-メチルアミノ酸、β(ホモ)アミノ酸、γアミノ酸、螺旋/ターン安定化モチーフ、骨格修飾(例えばペプトイド)である。自然界に存在していて当業者に知られている一般的でないアミノ酸も考えられる。その例に含まれるのは、セレノシステイン、ヒドロキシプロリン(Hyp)、β-アラニン、シトルリン(Cit)、オルニチン(Orn)、ノルロイシン(Nle)、3-ニトロチロシン、ニトロアルギニン、ピログルタミン酸(Pyr)である。したがってポリペプチドという用語は、遺伝子をコードする20種類のアミノ酸の中に示されているのとは異なるアミノ酸を含むアミノ酸配列も含むことができる。ポリペプチドは、例えば自然界に見られる1個以上の一般的でないアミノ酸および/または1個以上の非天然アミノ酸を含むことができる。
【0064】
ポリペプチドという用語はポリペプチドの修飾も意味するため、ポリペプチドの修飾が排除されることはない。そのような修飾は当業者に知られており、例えばWO 2010/093784に列挙されている。
【0065】
本明細書では、「核酸分子」という用語には、塩基部分にプリン塩基とピリミジン塩基が含まれるヌクレオチド配列を有する任意の核酸分子が包含される。核酸分子にプリン塩基とピリミジン塩基が含まれることで、これら塩基が核酸分子の一次構造を示す。核酸配列には、DNA、cDNA、ゲノムDNA、RNA、センス鎖とアンチセンス鎖の両方を含めることができる。本発明のポリヌクレオチドは、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドで構成することができる。本発明のポリヌクレオチドは、修飾されていないRNAまたはDNAであっても、修飾されたRNAまたはDNAであってもよい。
【0066】
DNAとRNAには多彩な修飾をなすことができる。したがって「核酸分子」という用語は、化学的、酵素的、代謝的に修飾された形態を包含することができる。「修飾された」塩基に含まれるのは、例えばトリチル化された塩基、一般的でない塩基(イノシンなど)である。
【0067】
本発明によれば、2つ以上の核酸分子またはアミノ酸配列の文脈における「同じ」または「パーセント一致」という用語は、本分野で知られている配列比較アルゴリズムを用いて測定した比較ウインドウまたは指定された領域全体で対応が最大になるようにアラインメントして比較するとき、または目視と手作業のアラインメントによって比較するとき、同じであるか、指定された割合(例えば少なくとも95%、または96%、または97%、または98%、または99%一致)のアミノ酸残基またはヌクレオチドが同じである2つ以上の配列または部分配列を意味する。例えば配列一致が80%~95%またはそれ以上である配列は、実質的に同じであると見なされる。このような定義は、試験する配列の相補体にも適用される。当業者は、例えば本分野で知られているCLUSTALWコンピュータプログラム(Thompson Nucl. Acids Res. 第2巻(1994年)、4673~4680ページ)またはFASTDB(Brutlag Comp. App. Biosci. 第6巻(1990年)、237~245ページ)に基づくアルゴリズムを利用して配列同士のパーセント一致を求めるやり方を知っているであろう。
【0068】
当業者は、BLASTアルゴリズムとBLAST 2.0アルゴリズムも入手することができる(Altschul Nucl. Acids Res. 第25巻(1977年)、3389~3402ページ)。核酸配列のためのBLASTNプログラムは、デフォルトとして、ワードサイズ(w)を28、期待値閾値(E)を10、マッチ/ミスマッチスコアを1、-2、ギャップコストを比例、比較するのを両方の鎖にしている。アミノ酸配列に関しては、BLASTPプログラムは、デフォルトとして、ワードサイズ(w)を6、期待値閾値(E)を10、ギャップコストを存在は11、延長は1にしている。さらに、BLOSUM62スコア行列(Henikoff Proc. Natl. Acad. Sci., USA、第89巻(1989年)、10915ページ)を利用することができる。
【0069】
例えばBLAST2.0(基本的局所アラインメント検索ツール(Basic Local Alignment Search Tool)を表わす (Altschul、Nucl. Acids Res. 第25巻(1997年)、3389~3402ページ;Altschul、J. Mol. Evol. 第36巻(1993年)、290~300ページ;Altschul、J. Mol. Biol. 第215巻(1990年)、403~410ページ))を用いて局所的な配列アラインメントを検索することができる。
【0070】
本明細書に記載のAAVは、配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部を有する。この挿入配列は、6個のアミノ酸を有することができる。この挿入配列は、7個のアミノ酸を有することができる。この挿入配列は、8個のアミノ酸を有することができる。したがって本明細書に記載の挿入配列を含んでいて、X1Aが不在でX1Bが存在するか、X1Bが不在でX1Aが存在するAAVも考えられる。
【0071】
挿入配列は、N末端からC末端に向かって、式I:X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7 (式I)を有する。この式において、X5は、P(Pro)、L(Leu)、V(Val)から選択することができ;X7はR(Arg)が可能であり;X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸が可能であり;X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在していることが可能であり、このAAVをC57-Bl6Jマウスの尾の静脈に静脈内投与する場合には、24時間後に、場合によってはウイルスAAV DNAがマウス網膜核抽出物の中に存在している。
【0072】
したがって本発明は、配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部(挿入配列)を含み、その挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式I:
X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7(式I)
を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)であって(式中、
X5は、P(Pro)、L(Leu)およびV(Val)から選択され;
X7はR(Arg)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している)、このAAVをC57-Bl6Jマウスの尾の静脈に静脈内投与する場合には、24時間後に、場合によってはウイルスAAV DNAがマウス網膜核抽出物の中に存在しているAAVにも関する。
【0073】
同様に、本発明は、配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部(挿入配列)を含み、その挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式I:
X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7(式I)
(式中、
X5は、P(Pro)、L(Leu)およびV(Val)から選択され;
X7はR(Arg)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している)
を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)VP1カプシドタンパク質にも関する。
【0074】
特に、AAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質において、X5はP(Pro)が可能である。あるいはX5はL(Leu)が可能である。あるいはX5はV(Val)が可能である。それに加えて、またはその代わりに、X1Aおよび/またはX1Bは、G、S、N、V、Pから選択することができ、好ましくは、X1Aおよび/またはX1BはNである。それに加えて、またはその代わりに、X2は、L、S、Nから選択することができ、好ましくは、X2はSが可能である。それに加えて、またはその代わりに、X3は、S、P、T、Qから選択することができる。X3は、SとPから選択することもできる。それに加えて、またはその代わりに、X4は、P、G、S、A、Tから選択することができ、好ましくは、X4はSが可能である。それに加えて、またはその代わりに、X6は、T、P、N、Q、Sから選択することができ、好ましくは、X6はPが可能である。したがって本発明のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質は、本明細書に記載の挿入配列GLSPPTR(配列番号10)、SSPGLPR(配列番号11)、NSTSVNR(配列番号12)、VSSSLQR(配列番号13)、PNQAPPR(配列番号14)またはNNPTPSR(配列番号15)のいずれかを含むことができる。
【0075】
あるいは式Iにおいて、X5は、S(Ser)とT(Thr)から選択することができ;X7はS(Ser)が可能であり;X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸が可能であり;X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在していることが可能である。
【0076】
したがって本発明は、配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部を含み、その挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式I:
X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7(式I)
を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)であって(式中、
X5は、S(Ser)およびT(Thr)から選択され;
X7はS(Ser)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している)、このAAVをC57-Bl6Jマウスの尾の静脈に静脈内投与する場合には、24時間後に、場合によってはウイルスAAVのDNAがマウス網膜核抽出物の中に存在しているAAVにも関する。
【0077】
同様に、本発明は、配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部を含み、その挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式I:
X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7(式I)
(式中、
X5は、S(Ser)およびT(Thr)から選択され;
X7はS(Ser)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している)
を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)VP1カプシドタンパク質にも関する。
【0078】
特に、AAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質において、X5はS(Ser)が可能である。あるいはX5はT(Thr)が可能である。それに加えて、またはその代わりに、X1Aおよび/またはX1Bは、G、R、H、Sから選択することができる。それに加えて、またはその代わりに、X2は、A、S、Qから選択することができ、好ましくは、X2はAが可能である。それに加えて、またはその代わりに、X3は、H、N、Aから選択することができ、好ましくは、X3はNが可能である。それに加えて、またはその代わりに、X4は、R、Q、Dから選択することができ、好ましくは、X4はRが可能である。それに加えて、またはその代わりに、X6は、R、S、Dから選択することができ、好ましくは、X6はDが可能である。
【0079】
したがって本発明のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質は、挿入配列GAHRSDS(配列番号16)、RANQTSS(配列番号17)、HSARTDS(配列番号18)またはSQNDSRS(配列番号19)のいずれかも含むことができる。
【0080】
あるいは式Iにおいて、X5は、A(Ala)とQ(Gln)から選択することができ;X7はA(Ala)が可能であり;X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸が可能であり;X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在していることが可能である。
【0081】
したがって本発明は、配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部を含み、その挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式I:
X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7(式I)
を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)であって(式中、
X5は、A(Ala)およびQ(Gln)から選択され;
X7はA(Ala)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している)、このAAVをC57-Bl6Jマウスの尾の静脈に静脈内投与する場合には、24時間後に、場合によってはウイルスAAVのDNAがマウス網膜核抽出物の中に存在しているAAVにも関する。
【0082】
同様に、本発明は、配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部を含み、その挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式I:
X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7(式I)
(式中、
X5は、A(Ala)およびQ(Gln)から選択され;
X7はA(Ala)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している)
を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)VP1カプシドタンパク質にも関する。
【0083】
特に、AAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質において、X5はA(Ala)が可能である。あるいはX5はQ(Gln)が可能である。それに加えて、またはその代わりに、X1Aおよび/またはX1Bは、NとRから選択することができる。それに加えて、またはその代わりに、X2は、SとGから選択することができる。それに加えて、またはその代わりに、X3は、RとSから選択することができる。それに加えて、またはその代わりに、X4は、PとLから選択することができる。それに加えて、またはその代わりに、X6は、AとNから選択することができる。
【0084】
したがって本発明のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質は、挿入配列NSRPAAA(配列番号20)またはRGSLQNA(配列番号21)も含むことができる。
【0085】
少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部は、配列番号1の位置587と588に対応する位置の間にある。「位置」という用語は、本発明で用いるときには、配列番号1のアミノ酸配列の中にあるいずれかのアミノ酸の位置を意味する。注目すべきことに、配列番号1は、AAV2のカプシドのVP1タンパク質に対応する。
【0086】
「対応する」という用語は、本明細書では、前の位置にあるヌクレオチド/アミノ酸の数だけによっては決まらないことも含んでいる。本発明では、置換可能な所与のヌクレオチドの位置は、(変異した、または組み換え、または野生型)AAVカプシドタンパク質VP1(プロモータ、および/または他の任意の調節配列または遺伝子(エキソンとイントロンが含まれる)が含まれる)の中のどこかにヌクレオチドの欠失または付加があることが原因で変化する可能性がある。同様に、本発明では、置換可能な所与のヌクレオチドの位置は、(変異、または野生型)AAVカプシドタンパク質VP1の中のどこかにアミノ酸の欠失または付加があることが原因で変化する可能性がある。
【0087】
したがって本発明による「対応する位置」では、アミノ酸が示されている番号とは異なっている可能性があるが、それでも近くに似たヌクレオチド/アミノ酸を有することができると理解することが好ましい。交換、欠失、付加の可能性があるアミノ酸も、「対応する位置」に含まれる。具体的には、当業者は、例えば参照配列(対象配列)である配列番号1を興味あるアミノ酸配列(質問配列)とアラインメントさせるとき、本明細書で指定されているアミノ酸位置(すなわち配列番号1に示されているアミノ酸配列の587と588に対応する位置)を探すため、興味ある配列で配列モチーフGNRQ(配列番号1の位置586~589;配列番号22)を調べることができる。
【0088】
当業者は、所与の(変異した、または野生型)アミノ酸配列の中のアミノ酸残基が、配列番号1のアミノ酸配列の中のある位置に対応するかどうかを判断するため、本分野で周知の手段と方法を利用することができる。それは例えば、手作業によるアラインメント、またはコンピュータプログラム(BLAST2.0(BLASTは、基本的局所アラインメント検索ツールを表わす)、またはClustalW、または配列アラインメントの生成に適した他の適切な任意のプログラムなど)を利用したアラインメントである。
【0089】
挿入配列は、その一端または両端の近傍に1個以上の可撓性アミノ酸が存在することも考えられる。可撓性アミノ酸によって隣り合ったタンパク質ドメインが互いに自由に動くことが可能になる。あらゆる可撓性アミノ酸が、可撓性アミノ酸という用語に包含される。当業者は、どのアミノ酸が可撓性であり、どのアミノ酸の可撓性がより少ないかを知っている。
【0090】
「可撓性アミノ酸」は、本明細書では、A(Ala)、L(Leu)、G(Gly)、S(Ser)、T(Thr)から選択することができる。可撓性アミノ酸は、G(Gly)、S(Ser)、A(Ala)から選択することもできる。可撓性アミノ酸として、Alaも可能である。
【0091】
挿入配列は、その一端または両端の近傍に任意の数の可撓性アミノ酸が存在することが可能である。例えば挿入配列は、その一端または両端の近傍に、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、またはそれよりも多い数の可撓性アミノ酸が存在することが可能である。
【0092】
挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式II:
L3-L2-L1-X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7-L4-L5-L6(式II)
(式中、
Lは可撓性アミノ酸であり;
L1、L2、L3、L4、L5およびL6は、独立に、可撓性アミノ酸であり;
L1、L2、L3、L4、L5およびL6は、独立に、場合によっては不在であるか存在している)
を有する本発明のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質も包含される。
【0093】
それに加え、L1、L2、L3、L4、L5およびL6は、A(Ala)、L(Leu)、G(Gly)、S(Ser)およびT(Thr)から独立に選択されることも考えられる。さらに、本明細書に記載の挿入配列において、X1AまたはX1Bの一方が存在し、かつX1AまたはX1Bの他方が不在であり、かつ式(II)の中のL1、L2、L3、L4およびL5のすべてが存在し、かつL6が不在であることが考えられる。
【0094】
したがって可撓性アミノ酸を含む挿入配列は、長さを7~14個のアミノ酸にすることができる。したがって可撓性アミノ酸を含む挿入配列は、長さを7個、または8個、または9個、または10個、または11個、または12個、または13個、または14個のアミノ酸にすることができる。しかしより多くの可撓性アミノ酸が存在しているときには、可撓性アミノ酸を含む挿入配列は、長さを15個、16個、17個、18個、19個、20個、またはそれよりも多数個のアミノ酸にすることもできる。
【0095】
本発明のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質は、X1Aおよび/またはX1Bおよび/またはX2および/またはX3が酸性アミノ酸ではない本明細書に記載の挿入配列を含むことも考えられる。それに加えて、またはその代わりに、本明細書に記載の挿入配列は、アミノ酸E(グルタミン酸)を含んでいない。
【0096】
本明細書では、「酸性アミノ酸」は、アミノ酸D(Asp)とE(グルタミン酸)を意味する。
【0097】
それに加えて、またはその代わりに、本明細書で用いる挿入配列は、1個、または2個、または3個、または4個の酸性アミノ酸を含むことができる。例えば挿入配列は、1個の酸性アミノ酸を含むことができる。アミノ酸としてD(Asp)が可能である。
【0098】
本発明のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質は、X1AまたはX1Bの一方が存在し、かつX1AまたはX1Bの他方が不在であり、かつX2が、塩基性アミノ酸または酸性アミノ酸ではない本明細書に記載の挿入配列を含むことも考えられる。
【0099】
本明細書では、「塩基性アミノ酸」は、K(Lys)、R(Arg)およびH(His)のいずれかである。
【0100】
さらに、本発明のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質は、どの位置にもK(Lys)またはH(His)を含まない本明細書に記載の挿入配列を含むことが考えられる。挿入配列が、唯一の塩基性アミノ酸としてR(Arg)を含むことも考えられる。それに加えて、挿入配列は、唯一の酸性アミノ酸としてD(Asp)を含むことができる。
【0101】
さらに、本発明のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質は、X1Aおよび/またはX1Bおよび/またはX2および/またはX3および/またはX4および/またはX6が疎水性芳香族アミノ酸ではない本明細書に記載の挿入配列を含むことが考えられる。
【0102】
本明細書では、「疎水性アミノ酸」は、F(Phe)、W(Trp)またはY(Tyr)から選択されたアミノ酸である。
【0103】
本発明のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質は、疎水性アミノ酸を含まない本明細書に記載の挿入配列を含むことも考えられる。
【0104】
さらに、本発明のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質は、F(Phe)、W(Trp)、Y(Tyr)、K(Lys)、E(Glu)、C(Cys)、M(Met)、I(Ile)、H(His)のどれも含まない本明細書に記載の挿入配列を含むことが考えられる。
【0105】
さらに、本発明のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質は、X1AまたはX1Bが、特殊なアミノ酸、疎水性脂肪族アミノ酸または非帯電側鎖を有する極性アミノ酸のいずれかである本明細書に記載の挿入配列を含むことも考えられる。
【0106】
本明細書では、「特殊なアミノ酸」に、C(Cys)、G(Gly)、P(Pro)が含まれる。
【0107】
本明細書では、「疎水性脂肪族アミノ酸」に、A(Ala)、L(Leu)、V(Val)、I(Ile)が含まれる。
【0108】
本明細書では、「非帯電側鎖を有する極性アミノ酸」に、S(Ser)、T(Thr)、N(Asn)、G(Gln)が含まれる。
【0109】
したがって本明細書に記載の挿入配列では、X1Aおよび/またはX1Bは、A、L、V、I、S、T、N、Q、C、P、Gから選択することができる。本明細書に記載の挿入配列では、X1Aおよび/またはX1Bは、G、P、Nから選択することもできる。本明細書に記載の挿入配列では、X1Aおよび/またはX1Bは、G、N、S、Aから選択することもできる。
【0110】
本明細書に記載の挿入配列では、X1Aおよび/またはX1Bとして、L、K、D、E、I、C、M、F、WおよびY以外の任意のアミノ酸も可能である。本明細書に記載の挿入配列では、X1Aおよび/またはX1Bとして、任意のアミノ酸も可能である。
【0111】
それに加えて、またはその代わりに、本発明のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質は、X2として疎水性脂肪族アミノ酸または非帯電側鎖を有する極性アミノ酸が可能な本明細書に記載の挿入配列を含んでいる。したがって本明細書に記載の挿入配列では、X2は、S、T、N、Q、A、L、V、Iから選択することができる。X2は、NとLから選択することもできる。本明細書に記載の挿入配列では、X2は、L、N、S、Aから選択することもできる。X2として任意のアミノ酸も可能である。本明細書に記載の挿入配列では、X2として、D、E、I、C、M、F、WおよびY以外の任意のアミノ酸も可能である。
【0112】
それに加えて、またはその代わりに、本発明のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質は、X3の選択を、疎水性脂肪族アミノ酸、特殊なアミノ酸、非帯電側鎖を有する極性アミノ酸からなすことができる本明細書に記載の挿入配列を含んでいる。したがって本明細書に記載の挿入配列では、X3は、A、L、V、I、S、T、N、Q、C、G、Pから選択することができる。本明細書に記載の挿入配列では、X3は、S、Q、Pから選択することもできる。本明細書に記載の挿入配列では、X3は、P、S、G、Aから選択することもできる。X3としてPも可能である。本明細書に記載の挿入配列では、X3として任意のアミノ酸も可能である。本明細書に記載の挿入配列では、X3として、L、E、I、C、M、F、WおよびY以外の任意のアミノ酸も可能である。
【0113】
それに加えて、またはその代わりに、本発明のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質は、X4として、疎水性脂肪族アミノ酸、塩基性アミノ酸、酸性アミノ酸、特殊なアミノ酸または非帯電側鎖を有する極性アミノ酸のいずれかが可能な本明細書に記載の挿入配列を含んでいる。したがって本明細書に記載の挿入配列では、X4は、K、R、H、D、E、S、T、N、Q、A、V、I、L、C、G、Pから選択することができる。本明細書に記載の挿入配列では、X4は、P、A、Tから選択することもできる。本明細書に記載の挿入配列では、X4は、P、T、S、Gから選択することもできる。本明細書に記載の挿入配列では、X4は、P、Tから選択することもできる。本明細書に記載の挿入配列では、X4としてPが可能である。本明細書に記載の挿入配列では、X4として、L、E、I、C、M、F、WおよびY以外の任意のアミノ酸も可能である。
【0114】
それに加えて、またはその代わりに、本発明のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質は、X6として、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、非帯電側鎖を有する極性アミノ酸または特殊なアミノ酸のいずれかが可能な本明細書に記載の挿入配列を含んでいる。したがって本明細書に記載の挿入配列では、X6は、K、R、H、D、E、 S、T、N、Q、A、C、G、Pから選択することができる。本明細書に記載の挿入配列では、X6は、T、P、Sから選択することもできる。本明細書に記載の挿入配列では、X6は、S、T、P、Aから選択することもできる。X6は、S、Tから選択することもできる。本明細書に記載の挿入配列では、X6としてSが可能である。本明細書に記載の挿入配列では、X6としてTが可能である。
【0115】
本発明のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質は、本明細書に記載の挿入配列として、
X1AまたはX1Bの一方が存在し、かつX1AまたはX1Bの他方が不在であり;かつ
X1AまたはX1Bは、A、L、V、I、S、T、N、Q、C、PおよびGから選択され、好ましくは、X1AまたはX1Bは、G、PおよびNから選択される、および/または
X2は、S、T、N、Q、A、L、VおよびIから選択され、好ましくは、X2は、NおよびLから選択される、および/または
X3は、A、L、V、I、S、T、N、Q、C、GおよびPから選択され、好ましくは、X3は、S、QおよびPから選択される、および/または
X4は、K、R、H、D、E、S、T、N、Q、A、V、I、L、C、GおよびPから選択され、好ましくは、X4は、P、AおよびTから選択される、および/または
X6は、K、R、H、D、E、S、T、N、Q、A、C、GおよびPから選択され、好ましくは、X6は、T、PおよびSから選択される挿入配列を含むこともできる。
【0116】
本発明のAAVは、網膜細胞細胞に形質導入することができる。したがって本発明のAAVを使用すると、そのAAVをC57-Bl6Jマウス(本明細書ではC57BL/6Jとも書く)の尾の静脈に静脈内投与する場合には、24時間後に、ウイルスAAV DNAがマウス網膜核抽出物の中に存在している可能性がある。マウスは、Charles River社から購入することができる(http://www.criver.com/products-services/basic-research/find-a-model/jax-mice-strain-c57bl-6j?loc=DE)。
【0117】
C57BL/6J近交系は、CC Little博士がAbbie Lathrop女史のストックから雌57を雄52と交配させることによって作製した。同じ交配によってC57L系とC57BR系が生まれた。
【0118】
当業者はこのマウス系の遺伝子型を知っており、このようなマウス系をどこで入手できるかも知っている。当業者は、例えばMekasa他(2009年)「C57BL/6亜系間の遺伝子の違い」Exp. Anim. 第58巻(2)、141~149ページに記載されているように、亜系間の違いも知っている。
【0119】
このマウス系は市販されており、例えばCharles River Laboratories社または Janvier labs社から入手することができる。
【0120】
特に、本明細書の別の箇所に記載されているAAVライブラリ#1の8×1010個のゲノム粒子を4週齢のC57-BL6Jマウスの尾の静脈に注射する。尾の静脈への静脈内注射の24時間後、本明細書に別の箇所に詳細に記述されているようにして網膜組織を回収する。その後、静脈内投与の24時間以内に網膜細胞の核に入る能力のあるAAVのゲノムを、本明細書に別の箇所に詳細に記述されているようにしてPCRで増幅する。
【0121】
本発明のAAVでは、このAAVをC57-Bl6J(C57/BL6J)マウスの尾の静脈に静脈内投与する場合、24時間後にウイルスAAV DNAがマウス網膜核抽出物の中に存在しており、および、挿入配列を決定し(選択ラウンド1)、そして別のAVVにおいてその検出された挿入配列をサブクローニングした後、その別のAAVをC57-Bl6J(C57/BL6J)マウスの尾の静脈に静脈内投与する場合、24時間後にその別のAAVのウイルスAAV DNAがマウス網膜核抽出物の中に存在している(選択ラウンド2)ことも考えられる。第2の選択ラウンドでは、第1の選択ラウンドに関して本明細書に記載するとともに実施例にも記載したのと同じ手続きに従う。
【0122】
錐体内のウイルスDNAを検出するため、最初に、本明細書に記載されているようにして選択ラウンド1と2で得られたウイルスを、本明細書に記載されているようにして4週齢のC57BL6JマウスまたはRG-eGFPマウス系R685933の尾の静脈に注射する。
【0123】
本明細書に記載されているようにして第2の選択ラウンドで得られた最大で5×1011個のゲノム粒子を、本明細書に記載されているようにして4週齢のC57BL6JマウスまたはRG-eGFPマウス系R685933の尾の静脈に注射する。
【0124】
RG-eGFP マウス(系統R685933)は、FeiとHughes(2001年)「マウスの錐体光受容器の中でのクラゲ緑色蛍光タンパク質のトランスジェニック発現」Vis Neurosci. 第18巻(4):615~623ページに記載されている。RG-eGFP マウス(系統R685933)は、MMRRC(https://www.mmrrc.org/catalog/sds.php?mmrrc_id=43)から購入することができる。
【0125】
桿体内のウイルスDNAを検出するため、注射の24時間後にマウスを頸椎脱臼によって安楽死させ、Dumont #7弯曲鉗子(Fine Science Tools社、ハイデルベルク)を視神経に近い後部の周囲に配置して軽く圧力を加えることによって目を突出させた。角膜を鋭い刃で赤道に沿って切断した。その後、鉗子を上方に軽く引っ張ることにより、網膜を網膜色素上皮(RPE)から剥離させ、残っている目組織から、レンズおよび硝子体とともに取り出した。組織を氷で冷やした0.1 Mのリン酸塩バッファー(PB)の中でリンスした後、レンズと残っているあらゆるRPE細胞を鉗子で除去し、マウスごとに2つの網膜をプールし、エッペンドルフ管の中に移し、ただちに処理して桿体光受容器を単離した。特に、(Feodorova他(2015年)「成体マウスから桿体光受容器核周部の網膜を解離・分離する迅速かつ信頼性のある方法」MethodsX 第2巻: 39~46ページ)に記載されているようにしてパパイン解離を実施した後、(Eberle他(2014年)「MACSで精製した光受容器前駆細胞を成体マウス網膜の網膜下に移植する」J Vis Exp第84巻: e50932ページ)に従って抗CD73に基づくMACSソーティングを実施することによって桿体を単離した。MACSソーティングによって得られた桿体からSubcellular Protein Fractionation Kit for Tissues(Thermo Fischer Scientific社、#87790)を用いて桿体の核を単離し(て核DNAだけを分析できるようにし)た。DNeasy Blood & Tissue Kit(Qiagen社、#69504)を用いて核DNAを単離した。Roche 454シークエンシングシステムを用いたシークエンシングを実施し、桿体に最も多く見られる挿入されたペプチド配列を明らかにした。それに加えて、またはその代わりに、本発明のAAVでは、このAAVをC57BL/6Jマウスの尾に静脈に静脈内投与する場合には、投与の24時間後に、ウイルスAAV DNAが、抗CD73で被覆した磁性ビーズを用いてMACでソーティングした桿体および/またはFACSでソーティングした錐体の中に存在している。なおその錐体はeGFPを発現していて、そのeGFP発現に基づいてFACSでソーティングされる。
【0126】
錐体内のウイルスDNAを検出するため、注射の24時間後にマウスを頸椎脱臼によって安楽死させ、Dumont #7弯曲鉗子(Fine Science Tools社、ハイデルベルク)を視神経に近い後部の周囲に配置して軽く圧力を加えることによって目を突出させた。角膜を鋭い刃で赤道に沿って切断した。その後、鉗子を上方に軽く引っ張ることにより、網膜を網膜色素上皮(RPE)から剥離させ、残っている目組織から、レンズおよび硝子体とともに取り出した。組織を氷で冷やした0.1 Mのリン酸塩バッファー(PB)の中でリンスした後、レンズと残っているあらゆるRPE細胞を鉗子で除去し、マウスごとに2つの網膜をプールし、エッペンドルフ管の中に移し、ただちに処理して錐体光受容器を単離した。特にパパイン解離を(Feodorova他(2015年)「成体マウスから桿体光受容器核周部の網膜を解離・分離する迅速かつ信頼性のある方法」MethodsX 第2巻: 39~46ページ)に記載されているようにして実施し、錐体を(Becirovic他(2016年)「疾患に関連する点変異の生体内分析によって桿体光受容器と錐体光受容器におけるペリフェリン-2のmRNAスプライシングの大きな違いが明らかになる」PLOS Genetics第12巻(1):e1005811ページ)に従ってFACSでソーティングした(マーカーeGFP)。FACSでソーティングした錐体からSubcellular Protein Fractionation Kit for Tissues(Thermo Fischer Scientific社、#87790)を用いて錐体の核を単離し(て核DNAだけが分析されるようにし)た。DNeasy Blood & Tissue Kit(Qiagen社、#69504)を用いて核DNAを単離した。Roche 454シークエンシングシステムを用いたシークエンシングを実施し、錐体で最も多く見られる挿入されたペプチド配列を明らかにした。
【0127】
錐体光受容器は、本明細書に記載されているようにしてRG-eGFPマウス系R685933からeGFP蛍光に基づいてFACでソーティングする。その後、ソーティングされた桿体光受容器と錐体光受容器からウイルスDNAを単離し、次世代シークエンシング(NGS)を利用してシークエンシングする。
【0128】
本発明は、本発明のAAV VP1カプシドタンパク質を含むAAVカプシドにも関する。
【0129】
本発明は、本発明のAAVカプシドを含むとともに、導入遺伝子、分子またはポリペプチドのいずれかを含んでいて、その核酸、分子、ポリペプチドが、AAVカプシドによって包まれているウイルスベクターにも関する。核酸、分子、ポリペプチドは、場合によっては医学的効果を提供する。
【0130】
本発明は、薬として利用するための本発明のAAVまたはウイルスベクターにも関する。本発明は、治療で用いるための本発明のAAVまたはウイルスベクターにも関する。
【0131】
これらの目的のため、本発明のAAVは、他の分子のためのカーゴシステムとして機能することができる。そのような分子の非限定的な例は、DNA、RNA、ペプチド、タンパク質、化合物である。したがって本明細書に記載されている療法または医薬組成物で用いられるAAVとして、本明細書に記載の組み換えAAVが可能である。そのようなAAVは導入遺伝子を含むことができる。
【0132】
導入遺伝子は、生物学と医学において有用な産物(タンパク質、ペプチド、RNA、酵素、酵素活性のあるRNAなど)をコードすることができる。望ましいRNA分子に含まれるのは、shRNA、 tRNA、dsRNAn、リボソームRNA、触媒活性のあるRNA、アンチセンスRNAである。有用なRNA配列の一例は、治療する対象内の標的となる核酸配列の発現を消す配列である。
【0133】
本明細書に記載のrAAVまたはウイルスベクターは、導入遺伝子(例えばミニ遺伝子)を含むことができる。ミニ遺伝子は、少なくとも、本明細書に記載の異種核酸配列(導入遺伝子)と、その調節配列と、5'と3' に位置するAAV逆方向末端反復(ITR)で構成することができる。カプシドタンパク質の中にパッケージングして選択された標的細胞に送達できるのは、このミニ遺伝子である。
【0134】
導入遺伝子として、例えばその導入遺伝子の近傍にあるベクター配列にとっては異種で、興味あるポリペプチド、タンパク質や、それ以外の産物をコードする核酸配列が可能である。核酸をコードする配列は、標的細胞の中で導入遺伝子の転写、および/または翻訳、および/または発現を可能にする調節エレメントに機能可能に連結することができる。異種核酸配列(導入遺伝子)は、任意の生物に由来するものが可能である。AAVまたはウイルスベクターは、1つ以上の導入遺伝子を含むことができる。
【0135】
導入遺伝子配列の組成は、得られるベクターの用途に依存するであろう。例えば導入遺伝子は、光遺伝学療法を提供するように選択される。光遺伝学療法では、残っている網膜回路の中の生き延びている細胞種に、光によって活性化されるチャネルまたはポンプを遺伝子送達することにより、人工的な光受容器が構成される。これは特に、かなりの量の光受容器機能を失ったが、神経節細胞と視神経への双極細胞回路が完全なまま残っている患者にとって有用である。一実施態様では、異種核酸配列(導入遺伝子)としてオプシンが可能である。オプシン配列は、適切な任意の単細胞生物または多細胞生物(ヒト、藻類、細菌が含まれる)に由来するものが可能である。オプシンとして、例えばロドプシン、フォトプシン、L/M波長(赤/緑)オプシン、短波長(S)オプシン(青)が可能である。別の一実施態様では、オプシンは、チャネルロドプシンまたはハロロドプシンである。
【0136】
導入遺伝子は、遺伝子増強療法で使用するために、すなわち失われているか欠陥のある遺伝子の代わりになるコピーを提供するために選択することもできる。必要な置換遺伝子を提供するため、当業者は、導入遺伝子を容易に選択することができる。一実施態様では、失われている/欠陥のある遺伝子は、眼科疾患に関係する。導入遺伝子としてYX、GRM6、TRPM1L、GPR179も可能であり、眼科疾患は、先天性停在性夜盲症である。例えばZeitz他、Am J Hum Genet. 2013年1月10日;第92巻(l):67~75ページを参照されたい。
【0137】
導入遺伝子は、遺伝子抑制療法で用いるために、すなわち1つ以上の天然遺伝子の発現を転写レベルまたは翻訳レベルで中断または抑制するために選択することもできる。これは、例えば短いヘアピンRNA(shRNA)を利用して、または本分野で周知の技術を利用して実現することができる。例えばSun他、Int J Cancer. 2010年2月;第126巻(3):764~774ページと、O'Reilly M他、Am J Hum Genet. 2007年7月;第81巻(l):127~135ページを参照されたい。当業者は、沈黙させたい遺伝子に基づいて導入遺伝子を容易に選択することができる。
【0138】
導入遺伝子は、2つ以上の導入遺伝子を含むことができる。これは、2つ以上の異種配列を有する単一のベクターを用いて、またはそれぞれが1つ以上の異種配列を有する2つ以上のAAVまたはウイルスベクターを用いて実現することができる。
【0139】
AAVまたはウイルスベクターは、遺伝子抑制(またはノックダウン)と遺伝子増強の併用療法で用いることもできる。ノックダウン/増強併用療法では、興味ある遺伝子の欠陥のあるコピーを沈黙させ、変異していないコピーを供給する。これは、同時に投与される2つ以上のベクターを用いて実現することができる。Millington-Ward他、Molecular Therapy、 2011年4月、第19巻(4):642~649ページを参照されたい。当業者は、望む結果が何であるかに基づき、導入遺伝子を容易に選択することができる。
【0140】
導入遺伝子は、遺伝子修正療法で使用するために選択することができる。これは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)によって誘導されるDNA二本鎖の切断を外来性DNAドナー基質とともに用いることのほか、TALENまたはCAS9/CRISPR系を外来性DNAドナー基質とともに用いることによって実現することができる。例えばEllis他(2013年)「単一AAVベクターによる形質導入と食品医薬品局が認可した薬による増強を利用した、ジンクフィンガーヌクレアーゼを媒介とした遺伝子修正」Gene Ther. 第20巻(1):35~42ページと、Singh、Braddick、Dhar(2017年)「ゲノム編集CRISPR-Cas9技術の潜在力を探究する」Gene;第599巻、1~18ページを参照されたい。当業者は、望む結果が何であるかに基づき、導入遺伝子を容易に選択することができる。例えばCas9と多数のgRNAを別々のAAVベクターにパッケージングすると、全体的なパッケージング能力は増大するが、2つのAAVを精製することと、同時に感染させることが必要になる。
【0141】
導入遺伝子は、発現すると検出可能な信号を発生するレポータ配列を含むこと、またはそのようなレポータ配列からなることが可能である。そのようなレポータ配列の非限定的な例に含まれるのは、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、膜結合タンパク質(例えばCD2、CD4、CD8、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質や、本分野で周知の他の膜結合タンパク質であって、その膜結合タンパク質に対する高親和性抗体が存在しているか、従来からの手段で作製できるものが含まれる)、および、特にヘマグルチニンまたはMycに由来する抗原タグドメインに適切に融合される膜結合タンパク質を含む融合タンパク質、をコードするDNA配列である。
【0142】
本明細書に記載されているこれらのコード配列は、その発現を駆動する調節エレメントと組み合わされると、従来の手段(酵素、放射線、色彩、蛍光、他の分光アッセイ、蛍光活性化セルソーティングアッセイ、免疫学的アッセイ(酵素固定免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫組織化学が含まれる)が含まれる)によって検出可能な信号を発生させることができる。例えばマーカー配列がLacZ遺伝子である場合には、信号を出すベクターの存在は、β-ガラクトシダーゼ活性を探すアッセイによって検出される。導入遺伝子が緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼである場合には、信号を出すベクターは、色によって目で測定すること、または光度計で光の発生を測定することができる。
【0143】
導入遺伝子は、(上記の用途におけるように)遺伝子の欠陥を修正または改良するのに用いることができる。欠陥には、正常な遺伝子の発現が正常なレベルよりも低いという欠陥や、機能する遺伝子産物が発現しないという欠陥を含めることができる。好ましいタイプの導入遺伝子配列は、標的細胞の中で発現する治療用のタンパク質またはポリペプチドをコードしている。
【0144】
本発明はさらに、多数の導入遺伝子を用いて例えば多数のサブユニットを有する1つのタンパク質によって起こる遺伝子の欠陥を修正または改良することを含んでいる。いくつかの場合には、異なる1つの導入遺伝子を用いて1つのタンパク質の各サブユニットをコードすること、または異なる複数のペプチドまたはタンパク質をコードすることができる。これは、タンパク質のサブユニットをコードするDNAのサイズが大きいときに望ましい。多数のサブユニットを有するタンパク質を細胞に産生させるには、異なるサブユニットのそれぞれを含有する組み換えウイルスを細胞に感染させる。あるいは1つのタンパク質の異なるサブユニットを同じ導入遺伝子によってコードすることができる。この場合には、単一の導入遺伝子がサブユニットのそれぞれをコードするDNAを含んでいて、各サブユニットのためのDNAは、内部リボザイム侵入部位(IRES)によって分離されている。これは、各サブユニットをコードするDNAのサイズが小さい(例えばサブユニットとIRESをコードするDNAの全体サイズが5キロ塩基未満である)ときに望ましい。
【0145】
調節配列は、導入遺伝子に機能可能に連結させることのできる従来からの制御エレメントを含んでいるため、制御エレメントは、ベクターをトランスフェクトした細胞、または本明細書に記載されているようにして作製したウイルスを感染させた細胞の中で、導入遺伝子の転写、および/または翻訳、および/または発現を可能にする。本明細書では、「機能可能に連結された」配列には、興味ある遺伝子と連続した発現制御配列と、興味ある遺伝子とはトランスで(すなわち離れた距離で)作用する発現制御配列の両方が含まれる。
【0146】
本明細書では、発現制御配列に含めることができるのは、適切な転写開始配列、転写終止配列、プロモータ配列、エンハンサ配列;効率的なRNAプロセシングシグナル(スプライシングシグナル、ポリアデニル化(polyA)シグナルなど);細胞質mRNAを安定化させる配列;翻訳効率を増大させる配列(すなわちコザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を増大させる配列;望むのであれば、コードされた産物の分泌を増加させる配列である。非常に多数の発現制御配列(プロモータが含まれる)が本分野で知られており、それらを利用することができる。
【0147】
本明細書に提示されているAAVにおいて有用な調節配列は、イントロンも含むことができる。イントロンは、プロモータ/エンハンサ配列と遺伝子の間に位置することが望ましい。望ましい1つのイントロン配列はSV-40に由来するものであり、SD-SAと呼ばれる100 bpのミニイントロンスプライスドナー/スプライスアクセプタである。別の適切な配列は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後エレメントを含んでいる(例えばL. WangとI. Verma、1999年 Proc. Natl. Acad. Sci., USA、第96巻:3906~3910ページを参照されたい)。ポリAシグナルは多数の適切な種に由来するものが可能であり、種の非限定的な例に含まれるのは、SV-40、ヒト、ウシである。
【0148】
本明細書に記載されているAAVの別の調節要素は、内部リボソーム侵入部位(IRES)である。IRES配列、または他の適切な系を用いて単一の遺伝子転写産物から2つ以上のポリペプチドを産生させることができる。IRES(または他の適切な配列)を用い、2つ以上のポリペプチド鎖を含有するタンパク質を産生させるか、同じ細胞から、または同じ細胞の中で2つの異なるタンパク質を発現させる。代表的な1つのIRESは、ポリオウイルス内部リボソーム侵入配列であり、この配列は、光受容器、RPE、神経節細胞の中で導入遺伝子が発現するのをサポートする。IRESは、rAAVベクターの中で導入遺伝子に対して3'に位置することが好ましい。
【0149】
本発明のAAVは、プロモータ(またはプロモータの機能性断片)を含むことができる。AAVで使用されるプロモータの選択は、望む標的細胞の中で選択された導入遺伝子を発現させることのできる多数の構成性プロモータまたは誘導性プロモータからなすことができる。標的細胞として光受容器細胞が可能である。プロモータは、ヒトを含む任意の種に由来するものが可能である。プロモータは「細胞特異的」であることが望ましい。「細胞特異的」という用語は、組み換えベクターのために選択された特定のプロモータが、特定のタイプの細胞または眼細胞の中で選択された導入遺伝子の発現を指示できることを意味する。有用なプロモータの非限定的な例に含まれるのは、桿体オプシンプロモータ(RHO)、赤-緑オプシンプロモータ、青オプシンプロモータ、cGMP-ホスホジエステラーゼプロモータ、SWSプロモータ(青短波長感受性(SWS)オプシンプロモータ)、マウスオプシンプロモータ(Beltran他、2010年、上記文献)、ロドプシンプロモータ(Mussolino他、Gene Ther、2011年7月、第18巻(7):637~645ページ);錐体トランスデューシンのαサブユニット(Morrissey他、BMC Dev, Biol、2011年1月、第11巻:3ページ);錐体アレスチン(ARR3)プロモータ(Kahle NA他、Hum Gene Ther Clin Dev、2018年9月、第29巻(3):121~131ページ)、βホスホジエステラーゼ(PDE)プロモータ;網膜色素変性症(RP1)プロモータ(Nicord他、J. Gene Med、2007年12月、第9巻(12):1015~1023ページ);NXNL2/NXNL1プロモータ(Lambard他、PLoS One、2010年10月、第5巻(10):e13025ページ)、RPE65プロモータ、網膜変性遅延/ペリフェリン2(Rds/perph2)プロモータ(Cai他、Exp Eye Res 2010年8月;第91巻(2):186~194ページ);VMD2プロモータ(Achi他、Human Gene Therapy、2009年、第20巻:31~39ページ)、ABCA4プロモータである。
【0150】
これらベクター、それ以外の一般的なベクター、調節エレメントの選択は従来通りであり、多数のそのような配列を利用することができる。例えばSambrookらの例えば3.18~3.26ページおよび16.17~16.27ページとその中に引用されている参考文献と、Ausubel他、『Current Protocols in Molecular Biology』、John Wiley & Sons社、ニューヨーク、1989年を参照されたい。もちろん、すべてのベクターと発現制御配列が、本明細書に記載のすべての導入遺伝子を同じようによく発現させるわけではなかろう。しかし当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、これらの発現制御配列と他の発現制御配列の中から選択をなすことができる。
【0151】
一般に、疾患の治療または処置または予防は、それを必要とする対象哺乳動物に、例えば対象の眼細胞の中で遺伝子の産物を発現させる調節配列の制御下にある導入遺伝子またはその断片をコードする核酸配列を有する本明細書に記載のrAAVまたはウイルスベクターを含むとともに、場合によってはさらに、医薬として許容可能な基剤を含む組成物を、有効な量で投与することを含んでいる。
【0152】
本発明は、本明細書に記載のrAAVまたはウイルスベクターを含む医薬組成物にも関する。このような医薬組成物はさらに、基剤を、好ましくは医薬として許容可能な基剤を含むことができる。医薬組成物は注射可能な溶液の形態にすることができる。注射可能な溶液または懸濁液は、既知のやり方に従い、医薬として許容可能な適切な非毒性の希釈剤または溶媒(マンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンゲル溶液、等張塩化ナトリウム溶液など)や、適切な分散剤、湿潤剤、懸濁剤(減菌無刺激不揮発油(モノグリセリド、ジグリセリドが含まれる)、脂肪酸(オレイン酸が含まれる)など)を用いて製剤にすることができる。
【0153】
注射可能な製剤にするため、医薬組成物を凍結乾燥粉末にし、適切なバイアルまたはチューブの中で適切な賦形剤と混合することができる。薬は、臨床現場で使用する前に凍結乾燥粉末を適切な溶媒系の中に溶かすことによって再構成し、静脈内注射、筋肉内注射、網膜下注射、硝子体内注射、結膜下注射に適した組成物を形成することができる。
【0154】
本発明の医薬組成物を点眼剤として製剤化/投与することも考えられる。
【0155】
本発明のAAVまたは本発明の医薬組成物は、治療に有効な量で投与することができる。AAVに関する「治療に有効な量」はさまざまな因子によって変化する可能性があり、因子の非限定的な例に含まれるのは、当業者には明らかなように、患者の体内での活性化合物の安定性、緩和すべき病気の重症度、治療する患者の全体重、投与経路、身体による活性化合物の吸収、分布、排泄の容易さ、治療すべき患者の年齢と感受性、有害事象などである。投与量は、さまざまな因子が経時変化するのに合わせて調節することができる。
【0156】
原則として、本発明のAAV/医薬組成物は適切な任意のやり方で投与することができる。例えば標的光受容器細胞で用いるための望む導入遺伝子を含む本発明のAAVは、網膜下または硝子体内に注射することを想定した医薬組成物にすることができる。本明細書に記載の方法において有用である可能性のある他の投与形態の非限定的な例に含まれるのは、望む器官への直接送達(例えば目、例えば点眼剤)、経口投与、吸入、鼻腔内投与、気管内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、他の非経口投与経路である。投与経路は、望むのであれば組み合わせることができる。
【0157】
さらに、非侵襲的な網膜のイメージングと機能研究を実施して治療の標的とする特定の眼細胞の領域を特定することが望ましい可能性がある。
【0158】
本明細書に記載されているように、AAVは、生理学的に許容可能な基剤に含まれた状態で対象に投与することができる。医薬組成物の中または投与時のAAVの濃度は、1μl当たり合計108~1012個のベクターゲノム、好ましくは1μl当たり合計6×108~6×109個のベクターゲノムである。AAVは、1μl当たり109個のベクターゲノムという濃度で投与することもできる。
【0159】
本発明のAAVは、単独で投与すること、または他の治療剤と組み合わせて投与することができる。したがって医薬組成物は、それに加えて、またはその代わりに、1つ以上の追加活性成分も含むことができる。
【0160】
本発明で利用するための医薬組成物/AAVは対象に投与することができる、本明細書に記載のAAVと医薬組成物は、ヒトの治療と獣医学の用途の両方に適用することができる。対象として、哺乳動物または鳥類が可能である。適切な哺乳動物の非限定的な例に含まれるのは、マウス、ラット、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ(dog)、ネコ、ウマ、モルモット、イヌ(canine)、ハムスター、ミンク、アザラシ、クジラ、ラクダ、チンパンジー、アカゲザル、ヒトであり、その中でもヒトが好ましい。適切な鳥類の非限定的な例に含まれるのは、いくつか挙げると、シチメンチョウ、ニワトリ、ガチョウ、アヒル、コガモ、マガモ、ムクドリ、オナガカモ、カモメ、ハクチョウ、ホロホロチョウ、水鳥である。医薬組成物は、医薬として許容可能な基剤をさらに含むことができる。
【0161】
本発明は、光受容器細胞疾患の治療に用いるための本発明のAAVにも関する。そのような実施態様では、AAV(例えばrAAV)またはウイルスベクターは、治療用ポリペプチド、治療用核酸、治療用タンパク質/ポリペプチドまたは治療用分子のいずれかをコードする異種核酸を含むことができる。
【0162】
本発明はさらに、対象(例えば治療を必要とする対象)を治療する方法に関するものであり、この方法は、本発明のAAVを投与することを含んでいる。AAVは、治療に有効な量を投与することが好ましい。
【0163】
本発明のAAVは、インビトロ診断法でも使用できると考えられる。したがって本発明は診断法にも関係しており、この方法は、本発明のAAVを、対象から得られたサンプルと接触させることを含んでいる。
【0164】
本発明は、薬の製造にも関係しており、この薬は本発明のAAVを含んでいる。
【0165】
本発明は、本発明のAAVを含む調製物にも関係している。
【0166】
異種核酸は、網膜で発現するプロモータ配列の制御下に置くことができる。異種核酸は、1つ以上の網膜細胞種(桿体と錐体など)の中で治療用ペプチドまたは治療用核酸を発現させるのに適したプロモータに機能可能に連結させることができる。例えばプロモータとして、ロドプシンキナーゼ(RK)プロモータ、オプシンプロモータ、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ、ニワトリβ-アクチン(CBA)プロモータが可能である。
【0167】
本発明のAAVは、対象の光受容器細胞に送達するための異種核酸を含むことができる。
【0168】
異種核酸、治療用核酸、治療用タンパク質/ポリペプチドまたは治療用分子のいずれかを用いて眼科障害を治療することができる。治療可能な眼科障害の選択は、常染色体劣性早期発症網膜変性症(レーバー先天性黒内障)、先天性色覚異常、シュタルガルト病、ベスト病、ドイン病、錐体ジストロフィ、網膜色素変性症、X連鎖性網膜分離症、アッシャー症候群、加齢性黄斑変性、萎縮性加齢性黄斑変性、血管新生AMD、糖尿病黄斑症、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)、嚢胞様黄斑浮腫、中心性漿液性網膜症、網膜剥離、眼内炎、緑内障、後部ブドウ膜炎からなるグループからなされる。
【0169】
本明細書に記載されているような光受容器細胞疾患として、光受容器細胞(桿体および/または錐体)に影響を与える任意の疾患が可能である。光受容器細胞疾患の非限定的な例に含まれるのは、失明、色覚異常、加齢黄斑変性、網膜変性、網膜ジストロフィ、網膜色素変性、錐体ジストロフィ、桿体-錐体ジストロフィ、色盲、黄斑変性、夜盲症、網膜分離症、コロイデレミア、糖尿病性網膜症、遺伝性視神経症、小口病I型、白点状網膜炎(RPA)、進行性網膜萎縮症(PRA)、眼底白点症(FA)、先天性停在性夜盲症(CSNB)である。
【0170】
本発明は、網膜細胞の核に形質導入するための、インビトロでの本発明のAAVまたはウイルスベクターの使用にも関する。
【0171】
本発明は、挿入配列をスクリーニングする方法にも関係しており、この方法は、
i)それぞれが挿入配列を含むAAV からなるAAVライブラリを対象に静脈内投与し;
ii)網膜核抽出物からウイルスAAV DNAを単離し;
iii)挿入配列の配列を決定すること
により、その挿入配列を取得することを含んでいる。
【0172】
本発明は、挿入配列をスクリーニングする方法にも関係しており、この方法は、
i)それぞれが挿入配列を含むAAV からなるAAVライブラリを対象に静脈内投与し;
ii)網膜核抽出物からウイルスAAV DNAを単離し;
iii)単離したそのウイルスAAV DNAを第2のAAVライブラリにサブクローニングし;
iv)工程iii)で得られたその第2のAAVライブラリを対象に静脈内投与し;
v)桿体光受容器または錐体光受容器からウイルスAAV DNAを単離し;
vi)挿入配列の配列を決定すること
により、その挿入配列を取得することを含んでいる。
【0173】
本明細書に記載されている挿入配列のスクリーニング法では、工程i)、ii)およびiii)を繰り返すことができる。
【0174】
AAVライブラリは、本明細書の別の箇所に記載されているウイルスライブラリである。サブクローニングは、本明細書の別の箇所に記載されているようにして実施した。
【0175】
本発明は、本明細書に記載のスクリーニング法によって得られるペプチド(挿入配列)にも関する。
【0176】
本発明は、本発明のAAVまたは本発明の医薬組成物を含むキットにも関する。このキットはさらに、
(i)バッファー;
(ii)オリゴヌクレオチド;
(iii)活性成分;
(iv)硝子体内注射に適した注射器
のうちの1つ以上を含むことができる。
【0177】
本発明は、本発明のAAVまたは本発明の医薬組成物を含むキットにも関する。このキットはさらに、
(i)バッファー;
(ii)オリゴヌクレオチド;
(iii)活性成分;
(iv)点眼剤を提供するのに適した容器
のうちの1つ以上を含むことができる。
【0178】
本発明は、硝子体内注射に適していて、本発明のAAVまたはウイルスベクターを含む溶液か、本発明の医薬組成物を含む注射器にも関する。
【0179】
本発明により、本発明のAAVを生成させる方法も提供される。例えばAAVの生成は、本明細書に記載のAAVカプシドタンパク質をコードする核酸配列、またはその断片と;少なくとも、AAV逆方向末端反復(ITR)と、場合によっては、望む導入遺伝子をコードしている異種核酸配列とからなる機能的rep遺伝子と;AAVカプシドタンパク質へのパッケージングを可能にするのに十分なヘルパー機能を有する宿主細胞を培養することによって可能である。AAVカプシドの中にAAVをパッケージングするために宿主細胞の中で培養する必要のある構成要素は、トランスで宿主細胞に提供することができる。あるいは当業者に知られている方法を利用して、必要な構成要素(例えばrep配列、および/またはcap配列、および/またはヘルパー機能)のうちの任意の1つ以上を安定な宿主細胞によって供給することができる。
【0180】
このような安定な宿主細胞は、誘導性プロモータの制御下にある必要な構成要素を含有することになろう。しかし必要な構成要素は、構成性プロモータの制御下に置いてもよい。適切な誘導性プロモータと構成性プロモータの例は本明細書に提示されている。さらに別の代替例では、選択された安定な宿主細胞は、1つの構成性プロモータの制御下にある選択された構成要素と、1つ以上の誘導性プロモータの制御下にある選択された他の構成要素を含有することができる。例えば安定な宿主細胞として、(構成性プロモータの制御下にあるElヘルパー機能を含有するが)誘導性プロモータの制御下にあるrepおよび/またはcapタンパク質を含有するHEK293細胞に由来する宿主細胞を生成させることができる。当業者は、さらに別の安定な宿主細胞を生成させることができる。
【0181】
本明細書に記載のrAAVを生成させるのに必要なrep配列、cap配列、ヘルパー機能は、任意の遺伝エレメントの形態でパッケージング宿主細胞に送達することができ、その遺伝エレメントが、その上に担持している配列を移動させる。選択された遺伝エレメントは、適切な任意の方法(本明細書に記載の方法が含まれる)で送達することができる。本発明の任意の実施態様を構成するのに用いる方法は、核酸操作の当業者に知られており、そのような方法には、遺伝子操作、組み換え操作、合成技術が含まれる。例えばSambrook他、『Molecular Cloning: A Laboratory Manual』、Cold Spring Harbor Press、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク州を参照されたい。同様に、rAAVビリオンを生成させる方法は周知であり、適切な方法としてどの方法を選択するかが本発明に対する制限になることはない。例えばK. Fisher他、1993年 J. Virol、第70巻:520~532ページと、アメリカ合衆国特許第5,478,745号を特に参照されたい。
【0182】
本発明は以下の項目によってさらに特徴づけられる。
【0183】
1.配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部を含み、その挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式I:
X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7(式I)
を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)であって(式中、
X5は、P(Pro)、L(Leu)およびV(Val)から選択され;
X7はR(Arg)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している、
または
X5は、S(Ser)およびT(Thr)から選択され;
X7はS(Ser)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している、
または
X5は、A(Ala)およびQ(Gln)から選択され;
X7はA(Ala)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している)、
ここで、このAAVをC57-Bl6Jマウスの尾の静脈に静脈内投与する場合、24時間後にウイルスAAV DNAがマウス網膜核抽出物の中に存在しており、
ここで、このAAVをC57-Bl6Jマウスの尾の静脈に静脈内投与して桿体をソーティングする場合、およびこのAAVをRG-eGFPマウス系R685933の尾の静脈に静脈内投与して錐体をソーティングする場合、投与してから24時間後にウイルスAAV DNAが、抗CD73で被覆した磁性ビーズを用いてMACでソーティングした桿体の中、および/またはFACSでソーティングした錐体の中に存在しており、その錐体はeGFPを発現していて、そのeGFPの発現に基づいてFACSでソーティングされるAAV。
【0184】
2.配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部(挿入配列)を含み、その挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式I:
X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7(式I)
を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)であって(式中、
X5は、P(Pro)、L(Leu)およびV(Val)から選択され;
X7はR(Arg)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している)、このAAVをC57-Bl6Jマウスの尾の静脈に静脈内投与する場合には、24時間後に、場合によってはウイルスAAV DNAがマウス網膜核抽出物の中に存在しているAAV。
【0185】
3.配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部を含み、その挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式I:
X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7(式I)
を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)であって(式中、
X5は、S(Ser)およびT(Thr)から選択され;
X7はS(Ser)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している)、このAAVをC57-Bl6Jマウスの尾の静脈に静脈内投与する場合には、24時間後に、場合によってはウイルスAAV DNAがマウス網膜核抽出物の中に存在しているAAV。
【0186】
4.配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部を含み、その挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式I:
X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7(式I)
を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)であって(式中、
X5は、A(Ala)およびQ(Gln)から選択され;
X7はA(Ala)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している)、このAAVをC57-Bl6Jマウスの尾の静脈に静脈内投与する場合には、24時間後に、場合によってはウイルスAAV DNAがマウス網膜核抽出物の中に存在しているAAV。
【0187】
5.配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部(挿入配列)を含み、その挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式I:
X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7(式I)
(式中、
X5は、P(Pro)、L(Leu)およびV(Val)から選択され;
X7はR(Arg)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している)
を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)VP1カプシドタンパク質。
【0188】
6.配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部を含み、その挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式I:
X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7(式I)
(式中、
X5は、S(Ser)およびT(Thr)から選択され;
X7はS(Ser)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している)
を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)VP1カプシドタンパク質。
【0189】
7.配列番号1の位置587と588に対応する位置の間に少なくとも6~8個のアミノ酸からなる挿入部(挿入配列)を含み、その挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式I:
X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7(式I)
(式中、
X5は、A(Ala)およびQ(Gln)から選択され;
X7はA(Ala)であり;
X1A、X1B、X2、X3、X4、X6は、独立に、任意のアミノ酸であり;
X1Aおよび/またはX1Bは、独立に、場合によっては不在であるか存在している)
を有するアデノ随伴ウイルス(AAV)VP1カプシドタンパク質。
【0190】
8.X1Aが不在であり、かつX1Bが存在するか、または、X1Bが不在であり、かつX1Aが存在する、項1~7のいずれか1項に記載のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質。
【0191】
9.前記挿入配列が、N末端からC末端に向かって、式II:
L3-L2-L1-X1A-X1B-X2-X3-X4-X5-X6-X7-L4-L5-L6(式II)
(式中、
Lは可撓性アミノ酸であり;
L1、L2、L3、L4、L5およびL6は、Ala、Leu、Gly、SerおよびThrから独立に選択され、
L1、L2、L3、L4、L5およびL6は、独立に、場合によっては不在であるか存在している)
を有する、項1~8のいずれか1項に記載のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質。
【0192】
10.X1AまたはX1Bの一方が存在し、かつX1AまたはX1Bの他方が不在であり、かつ
L1、L2、L3、L4およびL5のすべてが存在し、かつL6が不在である、項1~9のいずれか1項に記載のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質。
【0193】
11.X1Aおよび/またはX1Bおよび/またはX2および/またはX3が酸性アミノ酸ではない、項1~10のいずれか1項に記載のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質。
【0194】
12.X1AまたはX1Bの一方が存在し、かつX1AまたはX1Bの他方が不在であり、かつX2が、塩基性アミノ酸または酸性アミノ酸ではない、項1~11のいずれか1項に記載のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質。
【0195】
13.X1Aおよび/またはX1Bおよび/またはX2および/またはX3および/またはX4および/またはX6が疎水性芳香族アミノ酸ではない、項1~12のいずれか1項に記載のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質。
【0196】
14.X1AまたはX1Bの一方が存在し、かつX1AまたはX1Bの他方が不在であり;および
X1AまたはX1Bは、A、L、V、I、S、T、N、Q、C、PおよびGから選択され、好ましくは、X1AまたはX1Bは、G、PおよびNから選択される、および/または
X2は、S、T、N、Q、A、L、VおよびIから選択され、好ましくは、X2は、NおよびLから選択される、および/または
X3は、A、L、V、I、S、T、N、Q、C、GおよびPから選択され、好ましくは、X3は、S、QおよびPから選択される、および/または
X4は、K、R、H、D、E、S、T、N、Q、A、V、I、L、C、GおよびPから選択され、好ましくは、X4は、P、AおよびTから選択される、および/または
X6は、K、R、H、D、E、S、T、N、Q、A、C、GおよびPから選択され、好ましくは、X6は、T、PおよびSから選択される、項1~13のいずれか1項に記載のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質。
【0197】
15.薬として用いるための/疾患の治療に用いるための、項1~14のいずれか1項に記載のAAVまたはAAV VP1カプシドタンパク質。
【0198】
16.光受容器細胞疾患の治療に用いるための、項1~15のいずれか1項に記載のAAV。
【0199】
17.項1~16のいずれか1項に記載のAAV VP1カプシドタンパク質を含み、場合によってはさらにAAVカプシドタンパク質VP2および/またはVP3の1つ以上を含むAAVカプシド。
【0200】
18.項17のAAVカプシドを含むともに、導入遺伝子、分子、ポリペプチドのいずれかを含み、その導入遺伝子、分子、ポリペプチドが、前記AAVカプシドによって包まれているウイルスベクター。
【0201】
19.項1~18のいずれか1項に記載のAAVまたはウイルスベクターを含む医薬組成物。
【0202】
20.網膜細胞の核に形質導入するための、項1~18のいずれか1項に記載のAAVまたはウイルスベクターのインビトロでの使用。
【0203】
21.挿入配列をスクリーニングする方法であって、
i)それぞれが挿入配列を含むAAV からなるAAVライブラリを対象に静脈内投与し;
ii)網膜核抽出物からウイルスAAV DNAを単離し;
iii)単離したそのウイルスAAV DNAを第2のAAVライブラリにサブクローニングし;
iv)工程iii)で得られたその第2のAAVライブラリを対象に静脈内投与し;
v)桿体光受容器または錐体光受容器からウイルスDNAを単離し;
vi)前記挿入配列の配列を決定すること
により、その挿入配列を取得することを含む方法。
【0204】
22.項21の方法によって得られるペプチド(挿入配列)。
【0205】
23.項1~18のいずれか1項に記載のAAVまたはウイルスベクターを含むキット。
【0206】
24.薬として用いるための/疾患の治療に用いるための、項18に記載のウイルスベクター。
【0207】
25.光受容器細胞疾患の治療に用いるための、項18または24に記載のウイルスベクター。
【0208】
本明細書に記載されているさまざまなAAVのゲノム配列とVP1タンパク質配列。
【表1】
【0209】
【実施例】
【0210】
以下の実施例は本発明を説明している。これら実施例が本発明の範囲を制限すると推測してはならない。実施例が含まれているのは説明を目的としてのことであり、本発明は請求項によってだけ規定される。
【0211】
実施例1:新規なAAVカプシド
【0212】
網膜細胞を標的とする能力が改善されたAAVを同定するため、AAVペプチド提示選択を実施した。AAV2カプシドタンパク質VP1のアミノ酸位置587にランダムな7量体ペプチド(6量体と8量体のときもある)を提示する変異体のAAVライブラリを使用した(Perabo他(2003年)「改変された指向性を有するウイルスベクターのインビトロ選択:アデノ随伴ウイルス提示」、Molecular therapy: the journal of the American Society of Gene Therapy 第8巻、151~157ページ)。挿入されるペプチドは、いずれかの端部(N末端とC末端)の近傍に2~3個の追加の「可撓性」アミノ酸(例えばアラニン)が存在している。アミノ酸位置587は、カプシドの三重対称軸(Xie他(2002年)「アデノ随伴ウイルス(AAV-2)、すなわちヒト遺伝子療法のためのベクターの原子構造」Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America第99巻、10405~10410ページ)の位置にあるピークの先端、かつヘパリン硫酸プロテオグリカン(HSPG)結合部位(Opie他(2003年)「ヘパリン硫酸プロテオグリカン結合に寄与するアデノ随伴ウイルス2型のカプシドタンパク質の中のアミノ酸残基の同定」Journal of virology第77巻、6995~7006ページと、Kern他(2003年)「アデノ随伴ウイルス2型カプシドの表面にあるヘパリン結合モチーフの同定」Journal of virology第77巻、11072~11081ページ)の中に位置する。
【0213】
この露出した位置に7量体を挿入することによって挿入されたペプチドが受容体に容易に結合し、HSPGの主要な受容体結合モチーフを遮断する(Perabo他(2006年)「アデノ随伴ウイルス再ターゲティング変異体のヘパラン硫酸プロテオグリカン結合特性と、その生体内指向性の帰結」Journal of virology、第80巻、7265~7269ページ)。これは、ウイルス指向性をリダイレクトさせようとするアプローチにとって非常に重要である。それに加え、AAVライブラリは、挿入されたペプチド配列によってHSPGに結合する変異体が激減しているため(Perabo他(2006年)「アデノ随伴ウイルス再ターゲティング変異体のヘパラン硫酸プロテオグリカン結合特性と、その生体内指向性の帰結」Journal of virology、第80巻、7265~7269ページ)、HSPGの二次的高親和性結合部位を露出させるAAVの存在が最少になっている(Sallach他(2014年)「指向性が改変されたAAVベクターが障害を克服して皮膚療法の成功に至る」Molecular therapy: the journal of the American Society of Gene Therapy 第22巻:929~939ページ)。このAAVライブラリ(ライブラリ#1)の8×10
10個のゲノム粒子を4週齢のC57-BL6Jマウスの尾の静脈に注射した。24時間後、網膜組織を回収し、ウイルスDNAを網膜核抽出物から単離した。静脈内投与から24時間以内に網膜細胞の核に侵入する能力を有するAAVのゲノムをPCRで増幅し、最初のラウンドから選択された7量体挿入部を含有する第2のAAVライブラリを生成させるのに用いた。次に、第2のAAVライブラリ(ライブラリ#2)の8×10
10個のゲノム粒子を4週齢のC57-BL6Jマウスの尾の静脈に注射した。24時間後、網膜組織(RPEまたは余分な網膜組織なし)を回収し、ウイルスDNAを網膜核抽出物から単離した。PCRに基づく増幅の後、7量体AAVをコードするDNA配列を明らかにし、これら7量体挿入部を有する第3のAAVライブラリを生成させた。次に、第3のAAVライブラリ(ライブラリ#3)の8×10
10個のゲノム粒子を、錐体光受容器においてeGFPを発現している4週齢のC57-BL6JマウスまたはRG-eGFP系R685933のマウス(FeiとHughes(2001年)「マウスの錐体光受容器の中でのクラゲ緑色蛍光タンパク質のトランスジェニック発現」Vis Neurosci. 第18巻:615~623ページ)の尾の静脈に注射した。24時間後、抗CD73で被覆した磁性ビーズ(Eberle他(2011年)「移植されたCD73陽性光受容器前駆体の成体マウス網膜への組み込み」Investigative ophthalmology & visual science 第52巻、6462~6471ページ)を用いて桿体光受容器をMACでソーティングし、錐体光受容器をeGFP蛍光に基づいてFACでソーティングした(FeiとHughes(2001年)「マウスの錐体光受容器の中でのクラゲ緑色蛍光タンパク質のトランスジェニック発現」Vis Neurosci. 第18巻:615~623ページ)。その後、ソーティングされた桿体光受容器と錐体光受容器からウイルスDNAを単離し、次世代シークエンシング(NGS)を利用してシークエンシングした。列挙されているペプチド挿入部をAAV2 VP1の位置587に有する以下の新規なAAVは、静脈内送達が確認できてから24時間以内に、網膜の細胞を標的としてそのAAVのゲノムを網膜細胞の核に移動させる能力を与えた(NGSリードが2つ以上であったバリアントだけを列挙してあり、NGSリードが20を超えるバリアントは太字にしてある)。
図1を参照されたい。
【0214】
それに加え、列挙されているペプチド挿入部をAAV2 VP1の位置587に有する以下の新規なAAVは、静脈内送達が確認できてから24時間以内に、桿体光受容器を標的とする能力を与えた(NGSリードが2つ以上であったバリアントだけを列挙してあり、NGSリードが20を超えるバリアントは太字にしてある)(
図2を参照されたい)。
【0215】
最後に、列挙されているペプチド挿入部をAAV2 VP1の位置587に有する以下の新規なAAVは、静脈内送達が確認できてから24時間以内に、錐体光受容器を標的とする能力を与えた(NGSリードが2つ以上であったバリアントだけを列挙してあり、NGSリードが20を超えるバリアントは太字にしてある)(
図3を参照されたい)。
【0216】
同定されたバリアントのいくつかは、推定インテグリン結合モチーフ(RGD、RGS、NGRなど)を含有していた。示されている挿入配列を有するこれらAAVは、
図4にまとめられている。
【0217】
いくつかのAAVは、2つ以上の実験で検出された。重複するこれらAAVは、それぞれのNGSリードの数とともに
図5にまとめられている。注目すべきことに、配列「RGSLQNA」については、網膜全体からのNGSリードの数が0と考えられることが示されている。しかしこれは間違いである。その理由は、NGSリードが桿体と錐体について検出されることにある。これらのデータは、挿入配列が以前の選択ラウンド1と2(両方の選択ラウンドの特徴は、DNAが網膜の中で検出されることである)で選択されたときだけ得ることができる。したがってこの挿入配列は、以前にも網膜の中で検出されていたはずである。
【0218】
実施例2:新規なAAVカプシドの生物学的試験
【0219】
いずれかの端部の近傍に2~3個のアラニンが存在する選択されたペプチドバリアントをコードする合成DNAオリゴを、AAV2のRep遺伝子とCap遺伝子を発現するAAVトランスプラスミドpRC99(Nickiin他(2001年)「ヒト血管内皮細胞へのAAV2を媒介とした効率的かつ選択的な遺伝子導入」Molecular therapy: the journal of the American Society of Gene Therapy 第4巻、174~181ページと、 Girod他(1999年)「カプシドの遺伝子改変によってアデノ随伴ウイルス2型の効率的な再ターゲティングが可能になる」Nat. Med. 第5巻:1052~1056ページ)のAscl/Mlul制限部位に挿入すると、VP1のアミノ酸587に対応する位置に想定する挿入部を有するAAV2 VP1~3オープンリーディングフレームが生成した。生物学的試験のため、改変されたこれらpRC99プラスミドを用いて新規なAAVカプシドバリアントを含有するAAV粒子を生成させた。AAVの生成は、(Michalakis他(2010年)「先天的に錐体光受容器機能が完全に欠けたCNGA3
-/-マウスモデルにおける錐体視力の回復」Mol Ther. 第18巻:2057~2063ページ)に記載されている標準的な技術によって実施した。CMV-eGFP発現カセット(AAV-sc-CMV-eGFP)を有する自己相補的(sc)AAV eisプラスミドを用いてパッケージングした。次に、このようなAAV粒子(合計6×10
8~6×10
9個のベクターゲノム)を成体野生型マウスC56-BL6/Jの硝子体(1 piのAAV懸濁液を硝子体内に注射)の中に送達した後、生体内蛍光眼底顕微鏡(共焦点走査レーザー眼科顕微鏡)を用いてマウスを調べた。その後、目を取り出して眼杯を処理し、組織学的分析と、eGFP蛍光イメージングと、免疫組織化学を実施した。
図6~
図9に結果が示されている。
【0220】
野生型AAV2血清型ベクターは、網膜下または硝子体内に送達されたときには限られた形質導入効率しか示さない(Lebherz他(2008年)「目への改善された遺伝子導入のための新規なAAV血清型」The journal of gene medicine第10巻、375~382ページ、Auricchio他(2001年)「表面タンパク質の交換がウイルスベクター細胞特異性と形質導入特性に影響を与える:モデルとしての網膜」Hum Mol Genet、第10巻、3075~3081ページ、Hellstrom他(2009年)「硝子体内注射の後の成体網膜における7つのアデノ随伴ウイルスベクター血清型の細胞指向性と形質導入特性」Gene therapy 第16巻、521~532ページ)。特にAAV2は、主に網膜下区画からの網膜色素上皮(rpe)細胞に形質導入する(Auricchio他(2001年)「表面タンパク質の交換がウイルスベクター細胞特異性と形質導入特性に影響を与える:モデルとしての網膜」Hum Mol Genet、第10巻、3075~3081ページと、Trapani他(2014年)「遺伝性網膜症の遺伝子療法のためのベクタープラットフォーム」Prog Retin Eye Res)。AAV2は主に、硝子体内区画からミュラーグリア細胞と網膜神経節細胞に形質導入する(Auricchio他(2001年)「表面タンパク質の交換がウイルスベクター細胞特異性と形質導入特性に影響を与える:モデルとしての網膜」Hum Mol Genet、第10巻、3075~3081ページと、Trapani他(2014年)「遺伝性網膜症の遺伝子療法のためのベクタープラットフォーム」Prog Retin Eye Res)。
【0221】
例えば硝子体内への形質導入に関しては、Hellstrom他(2009年)「硝子体内注射の後の成体網膜における7つのアデノ随伴ウイルスベクター血清型の細胞指向性と形質導入特性」Gene therapy 第16巻、521~532ページの中の
図2a、またはAuricchio他(2001年)「表面タンパク質の交換がウイルスベクター細胞特異性と形質導入特性に影響を与える:モデルとしての網膜」Hum Mol Genet、第10巻、3075~3081ページの中の
図4aを参照されたい。例えば網膜下への形質導入パターンについては 、Lebherz他(2008年)「目への改善された遺伝子導入のための新規なAAV血清型」The journal of gene medicine第10巻、375~382ページの中の
図4を参照されたい。
【0222】
本明細書に記載されている具体的な改変により、われわれの新規なAAVカプシドバリアントの指向性と形質導入の挙動が顕著に変化し、今やこれらバリアントは、網膜下区画と硝子体内区画から多くの網膜細胞種への形質導入を非常に効率的に行なうことができる(
図6~
図10参照)。より重要なことは、新規なAAVが、網膜下区画および/または硝子体内区画から桿体光受容器と錐体光受容器への形質導入を非常に効率的に行なうことである。結論として、選択されたAAVカプシドバリアントの生物学的試験は、われわれの新規なペプチド挿入部によって形質導入の挙動に顕著な変化が誘導されることを示唆している。これは、基礎研究や、遺伝子導入に基づく眼科疾患の治療法(例えば目の遺伝子療法)の開発において特定の網膜細胞種への効率的かつ高レベルの形質導入を目的とするあらゆる種類の実験にとって非常に有用であろう。新規なAAVカプシドバリアントは、細胞の種類に特異的なプロモータ(例えば錐体特異的プロモータまたは桿体特異的プロモータ)と組み合わせることで、全身に適用した後や硝子体内送達または結膜下送達の後に特定の細胞種に形質導入したり、特定の細胞種を標的としたりする際の天然の障害を克服することを可能にするであろう。
【0223】
われわれの新規なAAVカプシドバリアントの形質導入効率を、不死化された錐体光受容器細胞系661w(Tan他(2004年)「トランスジェニックマウスの網膜腫瘍に由来する細胞系における錐体光受容器特異的抗原の発現」Investigative Ophthalmology & Visual Science第45巻764~768ページ)においてさらに特徴づけた。その目的で、約60%の集密度で増殖させた661wに、新規なAAVカプシド、または野生型AAV2、または操作したAAV2バリアント7m8(Dalkara他(2013年)「硝子体から外側網膜に治療用遺伝子を送達するための新規なアデノ随伴ウイルスの生体内定向進化」Science Translational Medicine、第5巻(189) 189ra76ページ)、すなわちCMVプロモータの制御下でeGFPを発現するLALGETTRP(配列番号23)を、細胞1個当たり100,000ウイルスゲノムの感染多重度(MOI)で感染させた。48時間後、落射顕微鏡(EVOS FL細胞イメージングシステム、Thermo Fisher Scientific社)を用いてeGFPの蛍光を求めた。その後、細胞を、4%パラホルムアルデヒドを含むリン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)を用いて15分間固定し、PBSで洗浄し、PBSの中に再懸濁させ、フローサイトメトリー(FACSCantoIIシステム、BD Bioscience社)に基づいてeGFPシグナルを分析した。新規なAAVカプシドバリアント「NNPTPSR」と「GLSPPTR」は、AAV2または7m8と比べて優れた661wへの形質導入効率を示した。
図11に結果が示されている。
【0224】
ここまでの実験はすべて、改変されたAAV2カプシドを用いたものであった。しかし他のAAVカプシドも、対応するカプシド位置にペプチド挿入部を許容する(Michelfelder他(2011年)「生体内でAAV8とAAV9 の遺伝子形質導入をリダイレクトするために三重スパイクカプシドドメインに組み込まれたペプチドリガンド」PloS one、第6巻、e23101ページ)。したがってわれわれの新規なペプチド挿入部は、公知の他のAAVカプシド(AAV2と比べて網膜においてより大きな効率とより広い形質導入プロファイルを有することが知られている例えばAAV8、AAV9、AAV7、AAV5)に移すことができる。さらに、われわれの新規なAAV2カプシドペプチド挿入部は、カプシドのチロシン変異、トレオニン変異、セリン変異(Petrs-Silva他(2009年)「チロシン変異AAV血清型ベクターによるマウス網膜への高効率な形質導入」Molecular therapy: the journal of the American Society of Gene Therapy第17巻463~471ページと、Zhong他(2008年)「次世代のアデノ随伴ウイルス2ベクター:チロシンの点変異が、より低用量での高効率な形質導入につながる」Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 第105巻、7827~7832ページ)と組み合わせることで、プロテアソームが媒介する分解を減らし、形質導入の効率を増大させることができる。
【0225】
実施例3:網膜切片
【0226】
本明細書に記載のAAVベクターが確かに光受容器への形質導入を媒介することを示すため、AAV2「GLSPPTR」カプシドを生きているマウスの硝子体内に適用した。特に、AAV2「GLSPPTR」カプシドでパッケージングされたss-mSWS-eGFPのウイルス懸濁液1μl(約2×10
9個のベクターゲノムを含有する)の硝子体内注射を1回だけ(実施例2も参照されたい)、10週齢のC57-BL6Jマウスの硝子体内に適用した。AAV-ss-mSWS-eGFPは、マウスSWSプロモータの制御下でeGFPを発現させる。次に、GFPの発現を6週間後に分析した。この点について、目の光受容器領域からの共焦点走査顕微鏡画像を取得した。
図12に見られるように、eGFPを錐体光受容器からの網膜切片で検出することができる。ここでは、錐体光受容器において強い抗eGFP免疫シグナル(灰色)が観察された。錐体マーカーである錐体アレスチンを用いた二重標識の定量から、錐体アレスチン陽性錐体の78.7±3.1%(n=4)がeGFPに関して陽性であることが明らかになった。したがってこの実験は、AAVが光受容器を特異的に標的とすることを示している。
【0227】
実施例4:ヒト外植片
【0228】
実施例1と2に記載されているAAVベクターがヒト光受容器細胞への形質導入も媒介するかどうかを分析するため、ヒト外植片を分析した。死後のヒト網膜組織を、以前に公開されている方法(Fradot M他、2011年5月「眼科学における遺伝子療法:培養した網膜細胞と死後のヒトの目からの外植片での検証」Human gene therapy 第22巻(5):587~593ページ)に従い、光受容器の側を下にして培養した。0日目、ヒト網膜組織外植片に、新規なAAV2「GLSPPTR」カプシドとAAV2「NNPTPSR」カプシドの一方でパッケージングされたsc-CMV-eGFPの合計1×1011個のvgを網膜の硝子体側に適用することによって形質導入し、インビトロで9日間培養した(DIV)。DIVの 9日目、培地を除去し、組織を、4%パラホルムアルデヒドを含むリン酸塩緩衝化生理食塩水を用いて固定した後、凍結切片化のための処理をし、共焦点顕微鏡を用いて天然eGFP蛍光イメージングを実施した。
【0229】
図13には、ヒト網膜外植片におけるAAVを媒介としたeGFPの発現を示す代表的な共焦点走査顕微鏡画像が示されている(カプシドのペプチド挿入配列が各画像列の上部に与えられている)。注目すべきことに、多くの網膜細胞種と網膜細胞層で強い天然eGFP蛍光(灰色)が観察された。特に、外顆粒層(onl)の中の多くの光受容器内節(is)と細胞体がeGFP陽性であった。is:内節。onl:外顆粒層。inl:内顆粒層。gcl:神経節細胞層。
【0230】
実施例5:ERG測定(錐体における導入遺伝子発現)
【0231】
実施例1と2で得られたAAVベクターも光受容器細胞に導入遺伝子を提供するのに効率的であるかどうかを分析するため、ERG測定を実施した。網膜電図(ERG)は当業者に知られている診断検査であり、光刺激に反応して網膜の中で神経細胞と非神経細胞が発生させる電気活性を測定する。電気的反応は、光が誘導する網膜横断イオン流(主にナトリウムとカリウム)の変化によって生じる網膜電位の結果である。
【0232】
この実験では、錐体光受容器サイクリックヌクレオチド-ゲーティッド(CNG)チャネルサブユニットCNGA3の中の遺伝子欠失が原因で先天的に機能していない錐体光受容器を有するCnga3欠損マウス(CNGA3-/-)マウスを使用した。実施例2のAAVベクターを改変し、青(短波長感受性、SWS)オプシンプロモータ(ss-mSWS-mCnga3-WPRE)標的化錐体の制御下でマウスCNGA3の相補的DNAが発現するようにした。この技術は、(Michalakis他(2010年)「先天的に錐体光受容器機能が完全に欠けたCNGA3-/-マウスモデルにおける錐体視力の回復」Mol Ther. 第18巻:2057~2063ページ)にも記載されている。AAV2は、実施例2に開示されている「GLSPPTR」カプシドでパッケージングした。合計約1×1010個のAAV粒子を4週齢のCnga3欠損マウスの硝子体内に送達した。
【0233】
具体的には、(ss-mSWS-mCnga3-WPREの合計約1×10
10個のvgを含有する)1μlを硝子体内に1回だけ注射してから2ヶ月後にERG測定を実施した。代表的な明所視フリッカERG測定の結果が
図14に示されている。そこには、示されている周波数で3.1 log cd秒/m
2の刺激を与えたときの処置した目(黒色)と対照である処置なしの目(灰色の点線)からのトレースが示されている。
【0234】
導入遺伝子を含むAAVベクターを受け取ったCnga3欠損マウスは、振幅の増加を示す。振幅の増加は、明所視条件のもとで錐体系機能が改善したことを意味するが、処置なしCnga3欠損マウスは、光刺激に反応しない(Michalakis他(2010年)「先天的に錐体光受容器機能が完全に欠けたCNGA3-/-マウスモデルにおける錐体視力の回復」Mol Ther. 第18巻:2057~2063ページ)。
【0235】
ERG測定の後、処置した目と対照である処置なしの目を回収し、(Michalakis他(2010年)「先天的に錐体光受容器機能が完全に欠けたCNGA3-/-マウスモデルにおける錐体視力の回復」Mol Ther. 第18巻:2057~2063ページ)に記載されているようにしてCNGA3タンパク質の発現を調べる抗CNGA3免疫組織学分析のための処理をした。
【0236】
代表的なデータが
図15に示されている。特に、新規なAAV2「NNPTPSR」カプシドでパッケージングされた(ss-mSWS-mCnga3-WPRE(Michalakis他、2010年、本明細書の別の箇所で引用)の合計約1×10
10個のvgを含有する)1μlを硝子体内に1回だけ注射してから2ヶ月後の月齢3ヶ月のCnga3欠損マウスからの網膜切片について、錐体光受容器におけるCNGA3タンパク質の発現を示す共焦点走査顕微鏡画像が示されている。強い抗CNGA3免疫シグナルが、ピーナツのアグルチニン(PNA)陽性錐体光受容器に見られる。os:外節。onl:外顆粒層。inl:内顆粒層。gcl:神経節細胞層。
【0237】
実施例6:ERG測定(桿体における導入遺伝子発現)
実施例5と同様、
図16は、新規なAAV2「NNPTPSR」カプシドでパッケージングされた(ss-mRho-mCngb1-sv40(Koch他、2012年)「遺伝子療法は、網膜色素変性症のCNGB1
-/-マウスモデルにおいて視力を回復させ、変性を遅延させる」Hum Mol Genet.:4486~4496ページ)の合計約1×10
10個のvgを含有する)1μlを硝子体内に1回だけ注射してから2ヶ月後の月齢3ヶ月のCnga3欠損マウスからの代表的な暗所単一フラッシュERG測定を示している。示されている輝度の光刺激における、処置した目(黒色)と対照である処置なしの目(灰色の点線)からのトレースが示されている。
【0238】
本明細書では、単数形「1つの」、「その」は、文脈から明らかに異なる場合を除いて複数を含むことに注意する必要がある。したがって例えば「1つの試薬」への言及は、そのようなさまざまな試薬の1つ以上を含み、「その方法」への言及は、当業者に知られている同等な複数の工程と方法を含み、それらの工程と方法は、改変することや、本明細書に記載されている方法で置換することができよう。
【0239】
さらに、本明細書で測定可能な値に言及して用いられる「約」という用語は、特定されている量の±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%、±0.1%の変動を包含することを意味する。また、本明細書では、「および/または」は、関連して列挙されている項目の1つ以上の組み合わせのほか、代替(「または」)で解釈されるときには組み合わせの欠如を意味するとともに、そのような状態を包含する。
【0240】
文脈で異なることが記載されていない限り、本明細書に記載されている本発明のさまざまな特徴は任意に組み合わせて使用できることが具体的に想定されている。
【0241】
さらに、本発明で、本発明のいくつかの実施態様において、本明細書に記載されている任意の特徴、または特徴の組み合わせを除外または省略できることも考えられる。
【0242】
本開示の中で引用されているあらゆる刊行物と特許は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている。参照によって組み込まれている材料が本明細書と矛盾したり合致しなかったりする場合には、そのようないかなる材料よりも本明細書が優先する。
【0243】
特に断わらない限り、一連の要素の前に置かれた「少なくとも」という用語は、その一連のすべての要素を意味すると理解すべきである。当業者は、定型的な実験を利用して、本明細書に記載されている本明細書の特定の実施態様に対する多くの等価物を認識すること、または確認することができよう。そのような等価物は、本発明に包含されることが想定されている。
【0244】
本明細書と下記の請求項の全体を通じ、特に断わらない限り、「含む」という単語と、「含んでいる」などのバリエーションは、記載されている整数または工程、または一群の整数または工程を含むことを意味するが、他の任意の整数または工程、または一群の整数または工程が除外されることはないと理解される。本明細書で使われている「含んでいる」という用語は、「含有する」という用語、またはときには「有する」という用語で置き換えることができる。
【0245】
本明細書で使われている「からなる」という表現は、請求項の要素の中で特定されていないあらゆる要素、工程、成分を排除する。本明細書で使われている「主に…からなる」は、請求項の基本的で新規な特徴に実質的に影響を与えない材料または工程を排除しない。
【0246】
本明細書では、それぞれの場合に、「含んでいる」、「主に…からなる」、「からなる」という表現のいずれも、他の2つの表現のいずれかと置き換えることができる。
【0247】
いくつかの文献が、本明細書のテキスト全体を通じて引用されている。本明細書で引用されているそれら文献(あらゆる特許、特許出願、学術刊行物、製造者の仕様書、指示など)のそれぞれは、上記のものであれ、下記のものであれ、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている。本明細書のいかなる記述も、以前の発明を理由として、そのような開示よりも本発明が先行している資格はないと認めたことであると推定してはならない。
【0248】
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