(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】ビアを有さない複数領域ペデスタルヒーター
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230628BHJP
H05B 3/02 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H05B3/02 B
(21)【出願番号】P 2020545074
(86)(22)【出願日】2018-11-20
(86)【国際出願番号】 US2018062055
(87)【国際公開番号】W WO2019104060
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-12
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502137880
【氏名又は名称】ワトロー エレクトリック マニュファクチュアリング カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】プタシエンスキ, ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ブレイトロウ, スタントン ホプキンス
(72)【発明者】
【氏名】ノスラチ, モハンマド
(72)【発明者】
【氏名】スミス, ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス, ブリタニー
(72)【発明者】
【氏名】エームズ, ケン
(72)【発明者】
【氏名】マルガヴィオ, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】イングリッシュ, カート
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/100304(WO,A1)
【文献】特開2001-102157(JP,A)
【文献】特表2014-533431(JP,A)
【文献】特開2017-201690(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0092072(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H05B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の一組の領域を画定する頂部抵抗層、及び第2の一組の領域を画定する底部抵抗層を有する基板を備え、
前記第1及び第2の一組の領域の各領域が
、独立して制御可能であり、且つ複数の電気端子のうちの少なくとも2つの電気端子に
前記基板を延びるビアを使用することなく接続され、電気端子の総数が前記第1及び第2の一組の領域の総数以下であ
り、
前記複数の電気端子の全てが前記基板の中央領域に配置されている、支持ペデスタル。
【請求項2】
当該支持ペデスタルが経路層を含まない、請求項1に記載の支持ペデスタル。
【請求項3】
前記複数の電気端子が端子パッドである、請求項1に記載の支持ペデスタル。
【請求項4】
前記第1の一組の領域及び第2の一組の領域の少なくとも一方のうちの少なくとも2つの領域が前記複数の電気端子のうちの同じ電気端子に接続されている、請求項1に記載の支持ペデスタル。
【請求項5】
前記頂部抵抗層と前記底部抵抗層とのうちの少なくとも一方が二線式ヒーター構造を有する、請求項1に記載の支持ペデスタル。
【請求項6】
前記頂部抵抗層と前記底部抵抗層とのうちの少なくとも一方が、前記頂部抵抗層と前記底部抵抗層とのうちの前記少なくとも一方を外部電源に接続するためのマトリクス配線構造と、前記頂部抵抗層と前記底部抵抗層とのうちの前記少なくとも一方を外部電源に接続するための複数並列配線構造と、のうちの一方を有する、請求項1に記載の支持ペデスタル。
【請求項7】
前記頂部抵抗層及び前記底部抵抗層の前記第1及び第2の一組の領域の各領域への電力を調節するための複数の電力変換器を含む制御システムをさらに備える、請求項1に記載の支持ペデスタル。
【請求項8】
前記頂部抵抗層が前記基板の第1表面に配置され、前記底部抵抗層が前記第1表面の反対側の前記基板の第2表面に配置されている、請求項1に記載の支持ペデスタル。
【請求項9】
前記複数の電気端子のうちの少なくとも2つの電気端子が、前記頂部抵抗層と前記底部抵抗層とのうちの少なくとも一方と同じ面に配置されている、請求項1に記載の支持ペデスタル。
【請求項10】
前記頂部抵抗層が6つの領域と4つの電気端子を有し、前記底部抵抗層が4つの領域と5つの電気端子を有する、請求項1に記載の支持ペデスタル。
【請求項11】
少なくとも1つの追加の機能層を有する、請求項1に記載の支持ペデスタル。
【請求項12】
前記少なくとも1つの追加の機能層がRFグリッド層である、請求項
11に記載の支持ペデスタル。
【請求項13】
前記電気端子が前記基板の中央に配置されている、請求項1に記載の支持ペデスタル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、「複数領域セラミックペデスタル(Multi-Zone Ceramic Pedestal)」と題する、2017年11月21日に出願された米国仮出願62/589,023号の利益を主張し、その内容は参照により全体としてここに組み入れられる。
【0002】
本開示は、概して、半導体処理装置に関し、より具体的にはウエハーなどの基板をその上で支持して加熱するためのペデスタルに関する。
【背景技術】
【0003】
ここでの記述は、本開示に関連する背景情報を提供するだけであり、必ずしも公知技術を述べるものではない。
【0004】
半導体処理用のペデスタルのようなウエハー支持組立体は、半導体処理チャンバ内に配置され、通常、ウエハー支持部と、ウエハー支持部の中央領域に固定されたシャフトとを含む。ウエハー支持部は、熱を発生させるための抵抗加熱素子と、抵抗加熱素子を外部電源に接続するための電気端子とを含む。電気端子は、ウエハー支持部の中央領域に隣接して配置されて、シャフト内を延びる。抵抗加熱素子はウエハー支持部の中央領域の外側に配置されており、普通は、中央シャフトエリアの近くには電気端子があるため抵抗加熱素子はない。結果として、中央領域にはコールドスポットが生じ、コールドスポットの領域を減らすために中央領域の大きさは比較的に小さくされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、中央領域の大きさを小さくすることにより、中央領域に配置できる電気端子の数が制限され、結果として独立して制御できる加熱領域の数が制限される。ペデスタル内に温度検知デバイスを一体化することの複雑さとシャフト領域の近くのコールドスポットのために、従来のウエハー支持ペデスタルは、通常、1つか2つだけの加熱領域を設けるようになっている。加熱領域が制限されている場合、半導体処理チャンバに存在する様々な要因によりウエハー支持部における予め決められた温度プロファイルを提供することができず、ウエハー支持部の局部温度に影響を及ぼす。
【0006】
また、中央領域のサイズを小さくすることにより、ウエハー支持部の温度を監視するために使用できる温度センサの数も制限される。温度センサの数が制限されることにより、ウエハー支持部の温度の精密な監視ができなくなる。そのため、ウエハー支持部の抵抗加熱素子は、通常は、無線制御(すなわち、オープンループ)を用いて操作される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一形態においては、本開示は、第1の一組の領域を画定する頂部抵抗層、及び第2の一組の領域を画定する底部抵抗層を有する基板を備える支持ペデスタルを提供する。前記第1及び第2の一組の領域の各領域は、異なる面にあり、複数の電気端子のうちの少なくとも2つの電気端子に接続されている。電気端子の総数は前記第1及び第2の一組の領域の総数以下である
【0008】
一変形例においては、複数の電気端子のうちの少なくとも2つの電気端子が、頂部抵抗層と底部抵抗層とのうちの少なくとも一方の中央領域に配置されている。複数の電気端子は端子パッドの形とすることができる。
【0009】
別の変形例においては、第1及び第2の一組の領域の少なくとも一方のうちの少なくとも2つの領域が複数の電気端子のうちの同じ電気端子に接続されている。
【0010】
別の変形例においては、支持ペデスタルはビア及び/又は経路層を含まない。
【0011】
さらに別の変形例においては、頂部抵抗層と底部抵抗層とのうちの少なくとも一方が、二線式ヒーター構造、頂部抵抗層と底部抵抗層とのうちの少なくとも一方を外部電源に接続するためのマトリクス配線構造、及び頂部抵抗層と底部抵抗層とのうちの少なくとも一方を外部電源に接続するための複数並列配線構造、のうちの1以上を有する。
【0012】
さらに別の変形例においては、支持ペデスタルは、頂部抵抗層及び底部抵抗層の第1及び第2の一組の領域の各領域への電力を調節するための複数の電力変換器を含む制御システムをさらに備える。
【0013】
さらに別の変形例においては、第1表面及びその反対側の第2表面を有する基板、基板の第1表面に配置された頂部抵抗層、及び基板の第2表面に配置された底部抵抗層を備える支持ペデスタルを提供する。頂部抵抗層及び底部抵抗層は、第1の組の領域及び第2の組の領域をそれぞれ画定する。第1及び第2の組の領域の各領域は、複数の電気端子のうちの少なくとも2つの電気端子に接続されている。電気端子の数は第1及び第2の組の領域の数以下である。
【0014】
一変形例においては、支持ペデスタルはビア及び/又は経路層を含まない。
【0015】
別の変形例においては、第1及び第2の一組の領域の少なくとも一方のうちの少なくとも2つの領域が複数の電気端子のうちの同じ電気端子に接続されている。
【0016】
さらに別の変形例においては、頂部抵抗層と底部抵抗層とのうちの少なくとも一方が、二線式ヒーター構造、頂部抵抗層と底部抵抗層とのうちの前記少なくとも一方を外部電源に接続するためのマトリクス配線構造、及び頂部抵抗層と底部抵抗層とのうちの少なくとも一方を外部電源に接続するための複数並列配線構造、のうちの1以上を有する。
【0017】
さらに別の変形例においては、支持ペデスタルは、頂部抵抗層及び底部抵抗層の第1及び第2の一組の領域の各領域への電力を調節するための複数の電力変換器を含む制御システムをさらに備える。
【0018】
別の変形例においては、複数の電気端子のうちの少なくとも2つの電気端子が、頂部抵抗層と底部抵抗層とのうちの少なくとも一方の中央領域に配置されている。
【0019】
さらに別の変形例においては、少なくとも2つの領域を有する頂部抵抗層と、頂部抵抗層の面とは異なる面に配置されて少なくとも2つの領域を有する底部抵抗層とを備える支持部材を提供する。頂部抵抗層と底部抵抗層との間にメイン基板が配置されている。頂部抵抗層と底部抵抗層とのうちの少なくとも一方と同じ面に複数の電気端子のうちの少なくとも2つの電気端子が配置され、頂部抵抗層と底部抵抗層の各領域が複数の電気端子のうちの少なくとも2つの電気端子に接続されている。電気端子の数は頂部抵抗層と底部抵抗層の領域の総数以下である。
【0020】
一変形例においては、支持ペデスタルはビア及び/又は経路層を含まない。
【0021】
さらに別の変形例においては、頂部抵抗層と底部抵抗層とのうちの少なくとも一方が、二線式ヒーター構造、頂部抵抗層と底部抵抗層とのうちの少なくとも一方を外部電源に接続するためのマトリクス配線構造、及び頂部抵抗層と底部抵抗層とのうちの少なくとも一方を外部電源に接続するための複数並列配線構造、のうちの1以上を有する。
【0022】
本明細書の説明から、本開示のさらなる適用範囲が明らかになるであろう。本明細書における説明および特定の例は、例示のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【0023】
本開示は、本明細書の詳細な説明および添付の図面からより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本開示の教示にしたがって構成された支持ペデスタルの平面図である。
【0025】
【0026】
【
図3】
図3は、本開示の教示に係る4つの終端配線を有する6領域ヒーターを示す。
【0027】
【
図4】
図4は、本開示の教示に係る、領域の端部が基板の中央で接続された6領域の頂部抵抗加熱層を示す。
【0028】
【
図5】
図5は、本開示の教示に係る、領域の端部が基板の中央で接続された4領域の底部抵抗加熱層を示す。
【0029】
【0030】
【
図7】
図7は、本開示の教示に係る、基板の中央での配線の端子パッドへの接続を示す。
【0031】
【
図8】
図8は、
図1及び
図2の支持ペデスタルの抵抗層を制御するための配線構造の概略図である。
【0032】
【
図9】
図9は、本開示の教示に係る電力変換システムを有する制御システムのブロック図である。
【0033】
【
図10】
図10は、本開示の教示に係る電力変換システムの電力変換器のブロック図である。
【0034】
【
図11A】
図11Aは、本開示の教示に係る、様々な入力状態に基づいた電力変換器の出力電圧の波形を示す。
【
図11B】
図11Bは、本開示の教示に係る、様々な入力状態に基づいた電力変換器の出力電圧の波形を示す。
【
図11C】
図11Cは、本開示の教示に係る、様々な入力状態に基づいた電力変換器の出力電圧の波形を示す。
【
図11D】
図11Dは、本開示の教示に係る、様々な入力状態に基づいた電力変換器の出力電圧の波形を示す。
【0035】
対応する参照番号は、図面のいくつかの図を通して対応する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の説明は、実際には単なる例示であり、本発明、その用途、または使用を限定することを意図するものではない。
【0037】
図1及び
図2を参照して、本開示の教示にしたがって構成された複数領域ヒーターペデスタル10は、半導体処理チャンバ内で、ウエハーなどの加熱ターゲットをその上に支持し加熱するために使用される。複数領域ペデスタル10は、支持部材12と、支持部材12の中央領域15に取り付けられた管状シャフト14とを備える。支持部材12は、ウエハー(図示せず)のような基板をその上に支持するための頂面16と、管状シャフト14が取り付けられる底面18とを有する。複数領域ペデスタル10はさらに、管状シャフト14に受け入れられた複数の電気ケーブル20を有する。電気ケーブル20は、支持部材12に埋め込まれた電気素子/層の少なくとも1つに接続されると共に、外部電源に接続される。電気層は、用途に応じて、抵抗加熱層、温度センサ、静電チャック(ESC)用の電極、又は無線周波数(RF)アンテナなどとすることができる。図面には示されていないが、支持部材12は、付随的に、パージガスを受け入れるためのガス導管、及びウエハーに対する真空クランプを供給するための真空導管を画定していてもよい。
【0038】
2つ以上のヒーターを異なる層に一体化するときには、ペデスタルの中央/シャフトエリアでヒーター回路を相互接続または終端するために、通常は経路層およびビアが使用される。しかしながら、本開示の複数領域ヒーターペデスタル10は、ビアやインターコネクトを使用することなく、複数のヒーター領域とクローズドループ制御を組み合わせた熱アレイシステムを利用している。熱アレイシステムは、ヒーター設計を、カスタマイズ可能なフィードバック制御システムにおける電力、抵抗電圧、及び電流を包含する制御に融合しており、カスタマイズ可能なフィードバック制御システムはこれらパラメータの幾つか又は全てを制限しつつ他の信号を制御する。熱アレイシステムの各領域は、温度センサとしても使用でき且つ複数並列回路として配置された抵抗加熱素子を備えており、これにより配線の数が少なくなるとともにシステムの複雑さが低減される。これについては後に詳述する。そのような熱アレイシステムに関する追加情報は、本願と共通の出願人が所有する「熱アレイを制御するためのシステム及び方法(System and Method for Controlling a Thermal Array)」と題された米国特許第9,196,513号に記載されており、その内容は参照により全体としてここに組み入れられる。
【0039】
図3を参照すると、4つの終端配線52a、52b、52c、52dを有する6領域ヒーター50の構成が示されており、各領域51a、51b、51c、51d、51e、及び51fは抵抗として表わされている。図示の通り、所与の領域51a、51b、51c、51d、51e、51fは、配線52a、52b、52c、52dに接続された少なくとも1つの端部53を有し、端部53は別の領域51a、51b、51c、51d、51e、51fに共有されている。この構成を用いると、領域の端部53に接続するために使用される配線の数が12からたったの4に減少する。また、この構成により、6領域ヒーター50がヒーターの同じ平面の中央領域において終端されるようにすることが可能となり、これにより経路層及び/又はビアが不要になる。
【0040】
図4乃至
図7を参照して、複数領域ペデスタルは、頂部抵抗加熱層22、メインプレートまたは基板26、底部抵抗加熱層24、及び端子パッドの形をした複数の電気端子34’を備える。一形態においては、基板26はセラミック材料である。頂部抵抗加熱層22は4つの電気端子34’に接続された6つの加熱領域を有し、電気端子34’は基板26の中央に位置している。底部抵抗加熱層24は、4つの加熱領域と、基板26の中央で接続された5つの電気端子34”とを有する。
図6には、異なる領域と基板26の中央での接続とを示すために、頂部加熱層22及び底部加熱層24の両方の平面図が示されている。
【0041】
ヒーターの抵抗材料は、高TCR巻線、箔、厚膜、又は薄いフィルム材とすることができる。一形態においては、ヒーターは中間セラミックプレートに一体化され、この中間セラミックプレートは、緑で(in green)、部分的または完全に焼結された状態とすることができる。このヒータープレートは、頂部及び底部上にブランクを配置し拡散接合または補助ホットプレス焼結(assisted hot press sintering)により完全に焼結することによって、密閉されている。一形態においては、中央終端エリアは機械加工されていて、ピンが電気端子に接続されるか又はろう付けされている(
図7)。ある時点で、中央シャフトは、セラミックプレート組立体に接着されるか又は焼結される。ヒーターを操作及び制御するための制御システムは、端子ピンを介してセラミックペデスタルに一体化されている。これについては、後に詳述する。
【0042】
複数領域ヒーターペデスタル10は、ヒーターの性能を向上させ、且つ製造過程を簡略化する。特に、本開示の複数領域セラミックペデスタルは、(1)経路層、インターコネクト、及び領域を終端するためのビアが不要になり、(2)抵抗層が温度測定にも使用可能であるので各領域またはヒーターのための別個の検知デバイスが不要になり、(3)経路層の排除により製造を簡略化し、(4)熱アレイシステムのクローズドループアルゴリズムを利用することによってセラミックペデスタルの性能が向上し、(5)経路層およびインターコネクトが不要であるのでセラミックペデスタルの信頼性が向上し、(6)セラミックペデスタルの期待寿命が増加し、(7)ペデスタルのコストを低減する。
【0043】
したがって、頂部抵抗層22および底部抵抗層24のそれぞれは、独立して制御可能であり且つ複数の加熱領域を画定する複数の抵抗加熱素子28を備える。本開示の範囲から逸脱することなく、如何なる数の抵抗加熱素子28/領域を採用することができることが理解されよう。また、「経路層を有する複数領域ペデスタルヒーター(MULTI-ZONE PEDESTAL HEATER HAVING A ROUTING LAYER)」と題され、本願と同時に出願されて共通の出願人に譲渡された同時継続の出願に記載されたさまざまな構成技術およびペデスタル構成が、本開示の範囲を維持しながら、組み込まれる。
【0044】
複数領域ペデスタルは、ここに開示の頂部及び底部抵抗層22/24を備える特定の構成に限定されず、本開示の範囲内にとどまりながら、2よりも多い複数の抵抗層に加えて、追加の層(例えば、ボンディング層、絶縁層、センシング層、及び保護層のような機能層)を採用してもよいことが理解されよう。一実施例においては、支持部材12が、RFプラズマまたは処理チャンバによって与えられる磁場を補償するために接地端子に電気的に接続されている、一体化された無線周波数(RF)グリッド層をさらに備える。代わりに、頂部及び/又は底部抵抗層22、24がRFグリッド層である。一般に、RFグリッド層は、RFプラズマまたは処理チャンバによって与えられる磁場を接地端子を通過させて、ヒーター及びセンサーデバイスを保護するためのアンテナとして使用される。
【0045】
ここで
図8を参照して、複数の加熱領域を有する頂部及び底部抵抗層22、24を制御するための制御システムが記載されている。支持部材12は、加熱領域を追加のセンサなしで制御するために、適応熱システム(Adaptive Thermal System (ATS))技術を利用することによりクローズドループ制御を使用する制御システムに接続することができる。適応熱システムは、ヒーター設計を制御システムに融合して、システム統合を簡素化しながら分化したクローズドループ制御を実現する。頂部及び底部抵抗層22、24の抵抗加熱素子28は、モリブデン、チタン、ニッケルのような比較的に高い抵抗温度係数(TCR)を有する材料を含んでいて、頂部及び底部抵抗層22、24のそれぞれが、抵抗加熱回路の抵抗変化に基づいて温度情報を提供するセンサとしても使用可能となるようにしている。
【0046】
換言すれば、抵抗加熱素子28の温度は、比較的に高い抵抗温度係数を有する抵抗加熱素子28の抵抗変化から推定される。そのため、熱電対のような追加の温度センサが必要なく、よって、支持ペデスタル10の配線接続を簡素化することができる。熱電対よりもむしろ抵抗加熱素子28を使用することにより、複数温度領域でのより良い温度フィードバックとクローズドループ制御をもたらすことができ、高温でのセラミック破損のリスクを低減することが可能となる。この「二線式」構造の様々な形態は後に詳述する。
【0047】
また、マトリクスおよび複数並列の配線トポロジーがカスタム制御アルゴリズムに統合される。
図8に示すように、抵抗加熱素子28および抵抗加熱素子28を外部電源に接続するための配線は、配線60の全ての対がその間に接続された抵抗加熱素子28を有するように配置されている。そのような配線の配置は、「熱アレイを制御するためのシステム及び方法(System and Method for Controlling a Thermal Array)と題した本願出願人の米国特許第9,123,755号、及び本願出願人に譲渡されたそれに関連した特許/出願に記載されており、その内容は参照により全体としてここに組み入れられる。この配線の配置により、全ての抵抗加熱素子28の電力制御と温度制御とを同時に行うことができ、支持部材のあるエリアの温度が高くなりすぎて閾値温度を超えたときに支持部材12のセラミック材料が破損してしまうことを防止することが可能となる。また、この制御方式により、少ない配線で複数領域ペデスタル10のより良い温度性能を実現するより良い制御が可能となる。例えば、一形態においては、ここに記載の配線トポロジーを使用して接続可能なヒーターの数はn(n-1)/2に等しく、ここでnは配線の数である。したがって、ヒーター/領域の数は、通常、配線60の数より多いか又はそれに等しい。
【0048】
本開示の一形態においては、頂部抵抗層22と底部抵抗層24のうちの少なくとも一方の抵抗加熱素子28が、熱を生成するために使われ、且つ素子の温度を検知するために使われる。換言すれば、抵抗加熱素子28は、4つのリード線(例えば、加熱素子のための2つと別の温度センサのための2つ)ではなく、加熱抵抗素子に接続された2つのリード線だけを有しヒーターとしても温度センサとしても機能するようにされた「二線式」の加熱素子である。そのような二線式の機能は、本願と共通の出願人に上とされた米国特許第7,196,295号に開示されており、その内容は参照により全体としてここに組み入れられる。
【0049】
一般に、制御システムは、第1及び第2のリード線と通信し、2つのリード線の間の電圧の変化を測定するようにされている。より詳細には、制御システムは、リード線にわたるミリボルド(mV)の変化を測定し、これらの電圧変化を使って抵抗加熱素子28の平均温度を計算する。一形態においては、制御システムは、抵抗加熱素子28への電力供給を中断することなく電圧の変化を測定することができる。これは、例えば、AC入力電力信号のゼロ交差点で測定することによって実現することができる。別の形態においては、電力供給が中断され、制御システムが、電圧の変化を測定するために加熱モードから測定モードに切り替わる。平均温度が求められると、制御システムはもう一度加熱モードに切り替わる。
【0050】
同じ電力供給が加熱素子28に加えられるとしても、上部抵抗層22及び/又は底部抵抗層24の別々の加熱素子28が同じ速度で加熱されないかもしれない。これは、ヒートシンクに対する加熱素子28の位置や加熱領域の製造上の不均一性のようなさまざまな要因によって生じ得る。隣接する加熱領域の間で大きな温度差が生じたときには、その隣接する加熱領域における熱膨張の大きな差により誘発される熱機械応力によって、加熱プレートのセラミック基板にクラックが生じうる。この問題に対応するために、本開示の一形態においては、制御システムが、抵抗層に印加される電力を調整するための1つまたはそれ以上の電力変換器を有する電力変換システムを備える。
【0051】
図9を参照して、制御システムは、制御器200と、複数の電力変換器204を有する電力変換システム202とを備える。1つ以上の電力変換器204は、支持ペデスタル206の抵抗層の加熱素子に接続されている。各電力変換器204は、電源208からの入力電圧(V
IN)を加熱素子に印加される出力電圧(V
OUT)に調節するように動作可能である。ここで、出力電圧は入力電圧よりも小さいかそれに等しい。
【0052】
図10を参照して、電力変換器204は、ドライバー回路232と、電界効果トランジスタである制御スイッチ236を有する降圧変換器234とを備える。ドライバー回路232は制御器200からの入力信号に基づいて制御スイッチ236を操作する。
【0053】
通常、降圧変換器234(ステップダウン電圧変換器)は、電源208からの電圧を低減するように動作可能である。具体的には、電源208(例えば、208VAC)からのAC電圧は、降圧変換器234によって受け取られるDC電圧に整流される。制御スイッチ236の動作に基づいて、降圧変換器234は、電源208からの電圧を低減して電流を増加させ、調整された電圧および電流を各加熱素子に印加する。制御スイッチの伝達速度が出力電圧の振幅を制御し、制御スイッチの低い伝達速度は低い振幅の出力電圧を出力し、制御スイッチの高い伝達速度は高い振幅の出力電圧を出力するようにする。電圧リップルを低減するために、キャパシタ又はキャパシタ及びインダクタの組み合わせからなるフィルタが降圧変換器234の出力及び/又は入力に加えられる。電力変換システムに関する追加情報は、本願と共通の出願人が所有していて同時係属中の、「熱システムのための電力変換器(Power Converter for a Thermal System)」と題され、2017年6月15日に出願された米国特許出願第15/624,060号に記載されており、その内容は参照により全体としてここに組み入れられる。
【0054】
制御器200は、マイクロプロセッサ及びメモリを有する電子機器を備え、電力変換システム202によって抵抗加熱素子に供給される電力を制御するようにされている。制御器200は、電力変換システム202を操作して、ペデスタルの加熱素子からのフィードバックデータと、予め保存された制御アルゴリズム及び又はプロセスとに基づいて、ヒーター素子に印加される電圧を調整する。フィードバック情報は、抵抗、負荷電流、及び/又は電圧のうちの少なくとも1つを含む。負荷電流及び/又は電圧は、センサ回路238によって検知される。
【0055】
本開示の一形態においては、電源208からの入力電圧が倍率を用いて増減される。倍率については、本願と共通の出願人に譲渡された米国特許第7,257,464号及び8,423,193号に開示されており、その内容は参照により全体としてここに組み入れられる。入力電圧は、予め設定されたユーザー値に基づいて増減することもできる。予め設定されたユーザー値は、最大電圧出力レベルと最大電力出力レベルのうちの一方であるが、一般に、電流、電圧、又は消費電力としてもよい。電流は、電圧を増減して電力をヒーターに供給するのと同時に測定される。増減することには、その最中にヒーター特性を検知するための段階的なランプアップを含む。
【0056】
本開示の一形態においては、制御器200は、センサ回路238からのデータ及び加熱素子の動作状態に基づいて、電力変換器204の望ましい出力電圧を求める。加熱素子の動作状態には、ヒータータイプ、ヒーターの開放、ヒーターの短絡、スタートアップ、ウォーミングアップ、定常状態、及び/又はヒーター温度のようなものがある。この実施例においては、制御器は電力変換器を操作しヒーターの加熱素子の温度に基づいて電圧を調整して、電圧変換器からの電力が各加熱素子の温度の変化に合うようにさせる。別の形態においては、制御器は選択されたデューティーサイクルで制御スイッチを切り替える。ここでデューティーサイクルは加熱素子の動作モードに基づいて決定される。例えば、
図11Aから11Dには、スタートアップモード、ウォーミングアップモード、定常状態モード、及び外乱時のそれぞれの最中の、ヒーターの1つ以上の加熱素子に電力を供給する電力変換器の出力電圧波形が示されている。図示のとおり、加熱素子に印加される電圧波形は異なる。電圧は、加熱素子の抵抗、加熱素子を流れる電流、及び加熱素子の温度により変わる。温度が比較的に低いスタートアップ及びウォーミングアップ中は、電圧は比較的に小さい振幅を有し、よって消費電圧は比較的に小さい。温度が比較的に高い定常状態及び外乱/サージ中は、電圧の振幅は増加し、結果として消費電力が大きくなる。制御方式に関する追加情報は、本願と共通の出願人に譲渡されて同時係属中の、「ヒーターへの電力を制御するためのシステム及び方法(System and Method for Controlling Power to a Heater)」と題され、2017年8月10日に出願された米国仮特許出願第62/543,457号に記載されており、その内容は参照により全体としてここに組み入れられる。
【0057】
電力変換システム202を備えることによって、制御システムは加熱素子よってヒーターの精確で安全な制御のために、加熱素子への電力を変化させる。例えば、ピーク電流を最小にするために1つ以上の加熱素子により小さい電力が供給されても良いし、加熱プレートの基板に熱クラックが生じることを防止するために加熱の早い段階やシャットダウン中により小さい電力が提供されても良い。制御器200は、電力変換システム202を制御して異なる電圧を出力し、これにより個々の温度領域の温度を制御する。したがって、制御システムは、異なる領域間の温度差を調整して、ペデスタルのヒーターの全体に均一な温度をもたらす。
【0058】
本開示は、例として説明および図示された様々な形態に限定されないことに留意されたい。多種多様な変更が説明されており、さらに多くの変更が当業者の知識の一部である。これらおよびさらなる修正ならびに技術的同等物によるあらゆる置換は、本開示および本発明の範囲を離れることなく、追加可能である。