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特許7303836前部弓形材とヘッドライナーを有するコンバーチブル車両用のトップ
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  • 特許-前部弓形材とヘッドライナーを有するコンバーチブル車両用のトップ 図1
  • 特許-前部弓形材とヘッドライナーを有するコンバーチブル車両用のトップ 図2
  • 特許-前部弓形材とヘッドライナーを有するコンバーチブル車両用のトップ 図3
  • 特許-前部弓形材とヘッドライナーを有するコンバーチブル車両用のトップ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】前部弓形材とヘッドライナーを有するコンバーチブル車両用のトップ
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/12 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
B60J7/12 G
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021032252
(22)【出願日】2021-03-02
(65)【公開番号】P2021151856
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】10 2020 105 823.3
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591018763
【氏名又は名称】ベバスト エスエー
【氏名又は名称原語表記】Webasto SE
【住所又は居所原語表記】Kraillinger Strasse 5,82131 Stockdorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハイマール アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルリッヒ ハインリッヒ
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01473180(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011056731(DE,A1)
【文献】特開平04-260817(JP,A)
【文献】特開2015-042516(JP,A)
【文献】特開2005-238978(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0389290(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の室内が覆われるカバー位置と、車両の室内が覆われない収納位置との間で変位可能なトップリンケージ(20)と、トップがカバー位置にあるときにトップの前縁を形成する前部弓形材(30)であってトップがカバー位置にあるときに前部弓形材(30)をコンバーチブル車両のフロントヘッダー(16)に固定できるフロントロック(32)を収容する前部弓形材(30)と、ヘッドライナー(28)と、を備え、前部弓形材(30)が、フロントロック(32)の駆動部が取り付けられ且つその上面がトップカバー(26)によって覆われる上部弓形シェル(40)を備えるコンバーチブル車両用のトップであって、
前部弓形材(30)は、前部弓形材(30)の全幅の実質的に全域でトップの横方向へ延びるとともにその下面(50)の全体がヘッドライナー(28)との接触面として構成され且つ該ヘッドライナー(28)に覆われて該ヘッドライナー(28)の表面形状を定める下部弓形シェル(46)を備えることを特徴とするトップ。
【請求項2】
請求項1に記載のトップにおいて、
下部弓形シェル(46)が、トップの横方向に前部弓形材(30)の幅の全域に延び且つヘッドライナー(28)によって覆われる前端面(54)を有することを特徴とするトップ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトップにおいて、
下部弓形シェル(46)が上部弓形シェル(40)に固定されることを特徴とするトップ。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1つに記載のトップにおいて、
下部弓形シェル(46)の少なくとも一部がプラスチック材料で形成されていることを特徴とするトップ。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1つに記載のトップにおいて、
下部弓形シェル(46)の少なくとも一部が発泡材料で形成されていることを特徴とするトップ。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1つに記載のトップにおいて、
下部弓形シェル(46)が衝突保護要素であることを特徴とするトップ。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1つに記載のトップにおいて、
下部弓形シェル
(46)が、ヘッドライナー(28)によって覆われ、フロントロック(32)の駆動軸(38)の軸心に位置が合わされる材料テーパ部(58)または凹部を有することを特徴とするトップ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載のトップを備えたコンバーチブル車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバーチブル車両用のトップに関し、このトップは、請求項1の前提部の特徴を有する。
【背景技術】
【0002】
この種のトップは、従来から知られており、コンバーチブル車両の変位可能なルーフである。トップは、車両の室内が覆われるカバー位置と、車両の室内が覆われずにトップが当該車両の後部のトップ収納ボックスに収納される収納位置との間で変位可能である。トップは、その変位のために、トップの垂直な長手方向中心平面の両側にリンク装置を有するトップリンケージを備え、各リンク装置は、車両に取り付けられた主軸受に揺動可能に取り付けられる。両側に配置されたリンク装置の間には、カバー位置を固定するためにコンバーチブル車両のフロントヘッダーに固定できる前部弓形材が延びている。トップリンケージによって、折り畳み可能で耐候性のある布製のトップカバーを展開することができる。その内側にはヘッドライナーが配置され、このヘッドライナーは、トップがカバー位置にあるときに車両の室内から見える、トップの視認可能な表面を形成する。前部弓形材は、前部弓形材をフロントヘッダーに固定するためのフロントロックを収容している。フロントロックの駆動部の下方には、車両の室内の方向へ突出するドームを形成し且つ車両の室内から見ることができる視認可能な表面を有するカバーまたはケーシングが設けられている。カバーは、ヘッドライナーによってその縁部で制限される。しかしながら、カバーとヘッドライナーとの間の移行部は、デザインに関する要望を満たせないことがよくある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、前部弓形材の部分で、その内側面が調和のとれた視覚的な外観を有することを特徴とする、前述した種類のトップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有するトップによって達成される。
【0005】
本発明によれば、前部弓形材を有するコンバーチブル車両用のトップが提案され、前部弓形材は、上部弓形シェルに取り付けられるフロントロックを収容する。フロントロックは、下部では、前部弓形材の全幅の実質的に全域で延び、少なくともその横方向の概ね縁部まで拡がる下部弓形シェルによって覆われる。下部弓形シェルの下側は、折り畳み可能で形成可能な布地で形成できるヘッドライナーによって全体が覆われる。同時に、それ自体は上面の視認可能な表面ではない下部弓形シェルの下面が、その全面でヘッドライナーの形状を定める。したがって、下部弓形シェルのデザインと形状は、トップの前部弓形材の部分でヘッドライナーの形状を決定する。このように、材料移行部が分断されない視覚的に好ましい外観を、トップの内側面で実現できる。
【0006】
特に、下部弓形シェルには、トップの長手方向の曲率が下部弓形シェルの幅の全域で少なくとも概ね一定の下面を設けることができ、このことは、形状が急激に変化しないことを意味する。
【0007】
本発明に係るトップの好ましい実施形態では、下部弓形シェルは、前部弓形材の横方向の縁部の間で延びるとともにヘッドライナーによって覆われる前端面を有する。この前端面は、当該車両のフロントヘッダーの曲率に対応する曲率にすることができ、これにより、トップがカバー位置にあるときにその前端面を一定のクリアランスでフロントヘッダーに隣接させることができる。
【0008】
折り畳み可能な布地で形成するのが好適なヘッドライナーは、下部弓形シェルの下面の全体に緩く拡げてもよいし、下部弓形シェルの下面の全体または一部に繋げてもよい。例えば、ヘッドライナーは下部弓形シェルに接着される。しかしながら、射出成形工程または発泡工程などの成形工程によって下部弓形シェルをヘッドライナーと一体的に形成することも考えられる。
【0009】
本発明に係るトップの好ましい実施形態では、下部弓形シェルの少なくとも一部はプラスチック材料で形成される。
【0010】
本発明に係るトップの特定の実施形態では、下部弓形シェルの少なくとも一部は発泡材料で形成される。
【0011】
好適には、下部弓形シェルは、例えばねじ、リベット、ラッチピン、ラッチ片などで上部弓形シェルに固定される。
【0012】
また、フロントロック駆動部が故障した場合にフロントロックの緊急動作を保証できるようにするために、下部弓形シェルは、フロントロックの駆動軸の軸心に位置が揃えられた材料テーパ部または凹部を有する。緊急時には、材料テーパ部または凹部を覆うヘッドライナーに穴が開いて、工具が駆動軸と噛み合い、駆動軸がフロントロックを作動させるように回転することが可能になる。
【0013】
特に、トップカバーの布地が全体に置かれる連続した表面を形成する上部弓形シェルは、種々の方法で製造でき、例えばハニカム構造及び/またはアルミニウム要素などを有する複合部品を備える。どのような場合でも、上部弓形シェルは、フロントロックを取り付けることができるソケットを有する。下部弓形シェルは、フロントロックのための耐荷重機能を有さないことが好ましい。
【0014】
また、本発明は、前述した種類のトップを構成するコンバーチブル車両に関する。
【0015】
本発明の主題の他の利点及び有利な構成は、発明の詳細な説明、図面及び特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係るトップを有するコンバーチブル車両の概略の側面図である。
図2図2は、前部弓形材の部分におけるトップの前端部分の断面斜視図である。
図3図3は、その前端部分におけるトップの底面斜視図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿ったトップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係るトップを有するコンバーチブル車両の一実施形態の例を、図面に簡略化して模式的に示し、以下においてより詳細に説明する。
【0018】
図1は、車両のルーフを形成する折り畳み式トップ12を備えたコンバーチブル車両として構成され、折り畳み式トップ12が、車両の室内が覆われる図1に示すカバー位置と、車両の室内が覆われずに折り畳み式トップ12が自動車10の後部のトップ収納スペース14に収納される収納位置(図示せず)との間で変位可能な自動車10を示す。折り畳み式トップ12がカバー位置であるとき、折り畳み式トップ12の前縁部は、フロントガラス18のフレームの上部レッグを形成するフロントヘッダー16に固定され、このフロントレッグは自動車10の横方向に延びる。
【0019】
折り畳み式トップ12は、変位するために、折り畳み式トップ12の垂直長手方向の中心平面の両側にリンク装置22を有するトップリンケージ20を有し、各リンク装置22は、車体または車両に取り付けられた各主軸受24に回転可能に取り付けられる。図2に破線で示されているトップカバー26は、トップリンケージ20を用いて展開できる。トップリンケージ20を駆動するために、折り畳み式トップ12は、両側に配置された主軸受24のところに各駆動ユニット27を有し、各駆動ユニット27は、各リンク装置22のメインリンク29を駆動し、各メインリンク29は、各主軸受24に回転可能に取り付けられている。駆動ユニット27は、油圧駆動装置であってもよいし、電気駆動装置であってもよい。
【0020】
折り畳み式トップ12は、折り畳み式トップ12がカバー位置にあるときに車両の室内に面するその内側に、折り畳み可能なライナー布地で形成され且つ折り畳み式トップ12の内側の視認可能な表面を形成するヘッドライナー28を有する。
【0021】
トップリンケージ20は、両側に配置されたリンク装置22の間で延び且つ折り畳み式トップ12の前縁部を形成する前部弓形材30を有し、前記前縁部は、折り畳み式トップ12がカバー位置にあるときに、ウェザーストリップ装置を介してフロントヘッダー16と接触する。
【0022】
前部弓形材30は、2つのラッチフック34を有するフロントロック32を収容し、ラッチフック34は、前部弓形材30をフロントヘッダー16に固定するためにフロントヘッダー16に形成される、対応するラッチ要素と係合する。
【0023】
ラッチフック34を駆動するため、フロントロック32は、リンク装置(図示せず)を介してラッチフック34に連結された駆動軸38を駆動する電気駆動モータ36を有する。
【0024】
前部弓形材30は、金属シート及び/またはプラスチック部品を有する複合材料で形成できる上部弓形シェル40を有し、上部弓形シェル40はトップカバー26用の実質的に連続する支持面42を形成し、トップカバー26は折り畳み式トップ12の外皮を形成する。さらに、上部弓形シェル40は、フロントロック32の駆動モータ36が下方から取り付けられ且つ駆動軸38が貫通する支持シート44を有する。
【0025】
前部弓形材30は、その下面に、発泡材料で形成され且つねじ及びリベット等にすることができる連結要素48を介して上部弓形シェル40に連結される下部弓形シェル46を有する。衝突保護要素である下部弓形シェル46は、両側に配置されたリンク装置22の間で前部弓形材30の全幅の少なくとも大部分に延びる。下部弓形シェル46の下面50は、ヘッドライナー28のための接触面を形成する。下面50は、ヘッドライナー28によって全体が覆われており、前部弓形材30の領域におけるヘッドライナー28の形状を定め、下側50は、折り畳み式トップ12の横方向に下部弓形シェル46が延びる方向の全域で少なくとも概ね一定の曲率を有する。前部弓形材30の後縁部の部分において、ヘッドライナー28は、タイ52によって上部弓形シェル40に連結される。ヘッドライナー28は、タイ52から下面50を超えて下部弓形シェル46の前端面54へ案内され、このことにより、下部弓形シェル46の前端面54も、折り畳み式トップ12の横方向へ前部弓形材30の幅の全域でヘッドライナー28によって覆われる。ヘッドライナー28の前縁部は、固定手段56によって保持される。端面54は、折り畳み式トップ12の横方向に、フロントヘッダー16の曲率に対応する曲率を有する。
【0026】
駆動軸38の軸心に位置が揃えられた材料テーパ部58が下部弓形シェル46に形成されている。このため、駆動モータ36が故障した場合には、駆動軸38を緊急で動作させることができる。この目的のために、ヘッドライナー28及び材料テーパ部58を工具で孔を形成し、駆動軸38に形成された六角ソケット等の工具ソケットに工具を係合させることができる。そして、駆動軸38を工具によって手動で回転させることができる。
【符号の説明】
【0027】
10 自動車
12 折り畳み式トップ
14 トップ収納スペース
16 フロントヘッダー
18 フロントガラス
20 トップリンケージ
22 リンク装置
24 主軸受
26 トップカバー
27 駆動ユニット
28 ヘッドライナー
29 メインリンク
30 前部弓形材
32 フロントロック
34 ラッチフック
36 駆動モータ
38 駆動軸
40 上部弓形シェル
42 支持面
44 支持シート
46 下部弓形シェル
48 連結要素
50 下面
52 タイ
54 端面
56 固定手段
58 材料テーパ部
図1
図2
図3
図4