(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】三次元印刷プロセスのプロセス制御方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20230628BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230628BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20230628BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230628BHJP
B29C 64/129 20170101ALI20230628BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y50/02
B33Y30/00
B29C64/129
(21)【出願番号】P 2021167242
(22)【出願日】2021-10-12
【審査請求日】2021-10-12
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム ライスナー
(72)【発明者】
【氏名】イェルク エーベルト
(72)【発明者】
【氏名】ローレンツ ヨーゼフ ボンデルアー
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-051958(JP,A)
【文献】特表2019-519399(JP,A)
【文献】特表2019-507236(JP,A)
【文献】特開2010-179496(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0055251(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築プラットフォームと、光源と、印刷原料の収容装置と、制御装置を備えた三次元プリンタを使用する三次元印刷プロセス、光造形プロセスおよび/またはDLPプロセス(デジタル光処理プロセス)をプロセス制御するためのもので、前記三次元プリンタによって対象物を印刷原料から層ごとにあるいは連続的に製造可能である方法であり、
前記三次元プリンタに熱画像カメラが接続されていてその熱画像カメラの出力信号が前記制御装置に伝送され、その際この方法が:
・層あるいは層の各部分を位置解像式に光照射し、
・重合中に前記熱画像カメラによって層の温度を検出し、
・光照射を終了することによって構築プロセスを終了し、その際光照射終了の時点を予め定義された温度変化dT/dtへの到達によって決定する、各ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
予め定義された温度Tmaxは熱画像カメラによって検出され
て、重合する層の表面上の最大加熱温度として決定され、その際温度変化dT/dtがその時点で0付近に収束して0値となることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
層の熱放射を熱画像カメラによって検出し、温度変化dT/dtは温度曲線の一次導関数に相当し、その際正の温度変化(dT/dt>0)が表面の昇温を示し、負の温度変化(dT/dt<0)は表面の冷却を示し、温度変化が無いこと(dT/dt=0)は一定の温度を示すことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
フィルム表面にわたった温度変化が熱画像カメラを使用して位置解像式に検出され、制御装置に伝送されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
光照射の終了後に層をフィルムから分離して構築プラットフォームを持ち上げ、その際発生した空隙内に新しく重合する原料が流入し、またその際フィルムからの対象物の分離が急激な温度降下(温度変化dT/dt<<0)として熱画像カメラによって検知されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
光照射の間に構築プラットフォームが定義された速度、0.5mm/分で連続的に持ち上げられてその際発生する間隙内に新たな重合すべき原料が流入し、阻害剤層がフィルムへの付着を防止することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
光照射時間と光照射時間の間に構築プラットフォームを定義されたステップ長、0.3ないし3cmで段階式に持ち上げ、その後所要の層厚まで降下させ、その際発生する間隙内に新たな重合すべき原料が流入して次の光照射工程中に硬化することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
光照射時間と光照射時間の間に構築プラットフォームが、一方の端部あるいはエッジ部を起点にして最大1cmの高さまで斜めに持ち上げられ、その後構築プラットフォームを実質的に水平に指向させ、さらにその後構築プラットフォームを所要の層厚まで降下させることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
構築プラットフォームとフィルムの間の気泡を伴ったあるいは伴わない原料流をいずれも温度変化(dT/dt>0あるいはdT/dt<0)として熱画像カメラによって検出し、制御装置内で認識することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
考えられる不良成形の残渣あるいは異物粒子の堆積、混入、付着によるフィルムあるいは阻害剤層上の汚染を熱画像カメラによって捕捉し、制御装置内で、構築プラットフォームの動作に際して、過度に低い検出温度に基づいて認識することを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
気泡あるいは考えられる不良成形の残渣あるいは異物粒子の堆積、混入、付
着による汚染がフィルム上に残留していないことが熱画像カメラによって記録されて制御装置内で認識された場合に初めて次の層の光照射プロセスを開始することを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
所与の閾値を超過する温度変化の後にさらなる温度変化が測定され得なくなったことが熱画像カメラによって記録されて制御装置内で認識された場合に初めて次の層の光照射プロセスを開始することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
フィルムあるいは阻害剤層上、対象物とフィルムあるいは阻害剤層の間に気泡あるいは小さな汚染が残留しているために温度分布がフィルム表面全体にわたって合理的なものではないということが熱画像カメラによって記録された場合に制御装置がエラーあるいは警告信号を発信することを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
光照射の開始に際して予め定義された時間内、2秒以内に熱放射が変化しないことを熱画像カメラが記録し制御装置が検知した場合に制御装置がエラーあるいは警告信号を発信することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
制御装置が警告信号を発信した場合に光照射工程が制御装置によって遅延、一時停止あるいは中止され、その後次の層の構築工程が調節されるかあるいは前の光照射プロセスが繰り返されることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
印刷された層の寸法をいずれも重合中に多次元、二次元で位置解像式の温度測定を使用して捕捉し、その際光照射された層の寸法を先行した層の実寸法ならびに対象物の理論寸法と比較し、その際寸法が減少した場合は次の層の光照射される領域が縮小され、寸法が増加した場合には拡大されることを特徴とする請求項1ないし15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
構築プラットフォームと、光源と、印刷原料の収容装置と、制御装置を備えた三次元プリンタを使用する三次元印刷プロセス、光造形プロセスおよび/またはDLPプロセス(デジタル光処理プロセス)をプロセス制御するためのもので、前記三次元プリンタによって対象物を印刷原料から層ごとにあるいは連続的に製造可能である方法であり、
前記三次元プリンタに熱画像カメラおよびDMDユニットが接続されていて、前記熱画像カメラの出力信号が前記制御装置に伝送され、かつ前記DMDユニットは前記制御装置によって制御され、その際この方法が:
・層あるいは層の各部分を位置解像式に光照射し、
・重合中に前記熱画像カメラによって層の温度を検出する、
・光照射を終了することによって構築プロセスを終了し、その際光照射終了の時点を予め定義された温度変化dT/dtへの到達によって決定する、ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
制御装置によって制御されるDMDユニットを使用して光照射される層および/または既に硬化した層の領域から放射線を逸らして誘導し得ることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれかに記載の方法
を実行するための制御装置。
【請求項20】
請求項1ないし18のいずれかに記載の方法
を実行するための熱画像カメ
ラ。
【請求項21】
請求項1ないし18のいずれかに記載の方法
をコンピュータに実行させるCAMソフトウェア。
【請求項22】
構築プラットフォームと、光源と、印刷原料の収容装置と、制御装置を備えていて、対象物を印刷原料から層ごとにあるいは連続的に製造可能である、光造形プロセ
スまたはDLPプロセス(デジタル光処理プロセス)用の三次元プリンタで
あって、
前記三次元プリンタに熱画像カメラが接続されていてその熱画像カメラの出力信号が前記制御装置に伝送され、その際;
・層を光照射し、
・重合中に前記熱画像カメラによって層の温度を検出し、
・光照射を終了することによって構築プロセスを終了し、その際光照射終了の正確な時点を
予め定義された温度変化dT/dtへの到達によって決定する、各ステップを実行可能であることを特徴とする三次元プリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1および17前文に記載の三次元印刷プロセスのプロセス制御方法ならびに請求項20前文に記載の構築プラットフォームを有する三次元プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
今日の技術水準によれば、同種の三次元印刷プロセス、光造形、および/またはDLPプロセス(デジタル光処理プロセス)において、液体状に存在するとともに選択的な光を使用して例えば0.1あるいは0.05mmの小さな厚みからなる層毎に光照射して硬化させるものである特殊な印刷可能な樹脂から構造部材が製造される。
【0003】
通常光は透明なフィルムを介して誘導され、該当する層の作成後にフィルムが構造部材からあるいは構造部材がフィルムから分離される。
【0004】
近年は、光造形装置および/またはDLPプロセス(デジタル光処理プロセス)を歯科技術、特に歯科補綴物の製造に使用することが知られている。
【0005】
その場合その種の構造部材が生体適合性でなければならず、また他方で口内への適合性についての高い要求性能を満たす必要があることが理解される。
【0006】
その種の三次元印刷プロセスを可能な限り効率的に構成するために、プロセスの進化を継続させる必要がある。それによって最小の印刷時間で最適な硬化を可能にし、その結果最良の費用対効果を実現する。
【0007】
熱画像カメラを使用した温度測定による微細な金属粉末の焼結プロセスにおける表面のモニタリングが、著者クラウス等による「サーモグラフィによる選択的レーザ溶融プロセスの層毎のモニタリング」から知られている。
【0008】
感光性材料が放射によって硬化され、測定放射が参照層へ入射され、内面反射によって大半の部分が前記参照層の内部にとどまり、そして測定放射がセンサによって位置解像式かつ時間解像式に検出される光造形プロセスあるいはデジタル光処理プロセスが国際公開第2017/106895号(A1)パンフレットによって知られている。その際、複雑な構成によって放射が位置解像および時間解像される。この構成は極めてコスト集中型であり、従って歯科技術のためには適さない。加えて、この解決方式においては光照射をいつ終了すべきかの最適な時点を判定することが不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2017/106895号(A1)パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の目的は、最小の時間消費で可能な限り最適な印刷結果を達成する、請求項1および17の前文に記載の三次元印刷プロセスのプロセス制御方法と請求項20に係る構築プラットフォームを有する三次元プリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る三次元印刷プロセスのプロセス制御方法によれば、熱画像カメラが三次元プリンタに接続されるか、または三次元プリンタの制御装置と結合される。熱画像カメラの出力信号が制御装置に伝送される。
【0012】
本発明によれば、三次元プリンタが構築プラットフォームと光源と印刷原料の収容装置と熱画像カメラと制御装置とから構成される。好適な適用可能性に光造形プロセスとデジタル光処理プロセスが含まれる。
【0013】
収容装置は液槽からなり、それが上方に向かって開口可能であるかあるいは少なくとも構築プラットフォームに向かって開口する。
【0014】
印刷原料の収容装置内に、例えばモノマーあるいはモノマー混合物ならびに光開始剤が収容される。さらに、感光性モノマー/モノマー混合物あるいは希釈されたモノマー溶液等のその他の初期溶液も可能である。
【0015】
収容装置は底床としてガラス板とその上の透明な層、例えばフィルムを備える。そのフィルムの上に、硬化あるいは重合に際して印刷原料の付着を阻止する阻害剤層を塗付することができる。
【0016】
本発明に従って印刷原料中に構築プラットフォームが導入され、従って構築プラットフォームは印刷原料内に浸漬されて殆ど収容装置の透明なフィルムまで到達する。底床フィルムと構築プラットフォームの間の定義された間隔を確保するために、構築プラットフォームを底床フィルムと接触するまで降下させてその後必要な定義された数値分持ち上げることができる。従って底床フィルムと構築プラットフォームの間に定義された厚みのモノマー層が存在し、そのモノマー層にその後位置選択式に光照射することができる。その層は例えば50ないし100μmの厚さにすることができる。
【0017】
その種の印刷プロセスの一般的なサイクルは約10秒であり、そのうち光源による光照射が2秒を占める。
【0018】
本発明の好適な構成形態において対象物が層ごとに作成される。その意味は、1つの層を照射した後構築プラットフォームが持ち上げられ、従って生じた間隙内に印刷原料が流れ込むことができ、その後その原料に光照射されることである。より大きな印刷対象物の場合構築プラットフォームがまず1つの層厚より大きく、好適には約1cm持ち上げられ、それによって光照射された層がより良好にフィルムから分離され発生した間隙内に印刷原料が流れ込めるようにする。その後構築プラットフォームを再び所要の高さまで降下させ、それによって構築プラットフォームとフィルムの間に適宜な層厚を達成する。従って、光照射工程ごとに追加的な硬化する印刷原料の層の分だけ印刷される対象物が拡大する。
【0019】
構築プラットフォームが非対称に持ち上げられれば極めて好適である。例えば、持ち上げを一端上あるいは一角部上で開始することができる。そのことが、構築材料がより良好にフィルムから分離されることを可能にする。剪断力がより少なくなり、従ってフィルムが破断する確率が極めて低くなる。そのため、構築プラットフォームを垂直上方に持ち上げる場合に比べてより少ない力がフィルムに作用し、従ってフィルムの寿命が延長される。対象物を層ごとに形成する際に、約0.5mm/分の形成速度で印刷することができる。
【0020】
剪断力を低減するために、形成された層の分離プロセスの間に構築プラットフォームを垂直移動させるとともに液槽は水平に動作させるように装置を構成することも考えられる。それに代えて、水平に対して小さな傾斜角度で構築プラットフォームと液槽を動作させることも可能である。
【0021】
別の好適な構成形態によれば、対象物を連続的に作成することができる。その際、印刷原料と接触する三次元プリンタの液槽の透明な層は、阻害剤層によって硬化した印刷原料の付着から保護される。この構成形態の利点は、個々の形成された層をフィルムから分離する必要がなく、むしろ光照射の間に構築プラットフォームが定義された速度、例えば10mm/分で連続的に持ち上げられることである。しかしながら、そのために層ごとの作成に比べてより高い光源出力が必要とされる。その結果、個々の層が確認されずむしろ一様に平滑な表面を有する最終製品が達成される。加えて、この方法は印刷プロセスの高速化とそれに従って製造時間の短縮、ならびに相当する製造コストの最小化を可能にする。
【0022】
例えば収容装置の透明な層の下側中央に設置される光源は、該当する光開始剤に適応する最良の波長を放射する、例えば極めて精密なレーザとするか、または好適にはLED光源とすることができる。光源は、液槽の透明な底床とその結果収容装置の底床フィルムに対して指向し、従って下方/外側から透明なフィルムを介して印刷原料に光照射することができる。その印刷原料は、好適には構築プラットフォームあるいは先行した照射プロセスによって既に硬化あるいは部分硬化した層と透明なフィルムとの間で硬化し、構築プラットフォームあるいは先行した層に付着するが、透明なフィルムには付着しない。
【0023】
この工程において層が位置選択的に光照射される。その照射は、層の表面全体に沿って、あるいは層のうちの選択された部分内のみ、例えば二次元パターン内で実行することができる。
【0024】
光源の光エネルギーによって光開始剤あるいは感光性ポリマーに基づいた位置選択的な発熱性重合が光照射された位置のみで開始する。
【0025】
本発明によれば、光照射工程の間と従って照射された部位の重合の間に継続的に層全体の温度、すなわち層の熱放射が熱画像カメラを使用して位置解像式に捕捉される。熱画像カメラは収容装置の下側の側方に位置することが好適であり、透明な底床フィルムに対して指向する。
【0026】
そのため熱画像カメラは、透明なフィルムの下側表面、特に例えば歯科技術の適用分野の場合数平方cm(1-10cm2)の大きさレベルである光照射されるフィルムの領域に対して指向する。その種の熱画像カメラは、面全体にわたる熱放射を100分の1mm2の数倍程度の位置解像度で、照射中(数秒)および照射と照射の間(約1分)に時間解像式に検出する。取得されたその種の光照射された面にわたった時間解像式の温度測定のデータは、測定された温度曲線の三次元ガウス分布に相当する。従って制御装置が、熱画像カメラによって検出された数値から、使用される材料(印刷原料およびプリンタ構成材料)の熱伝導係数と熱容量を考慮しながら、フィルムの表面全体にわたる時間解像された二次元の温度分布を計算することができる。
【0027】
第1に、熱画像カメラによって表面の過熱をもたらす光エネルギーの部分が捕捉される。しかしながら、その部分は光照射プロセス全体にわたって略一定であり、制御装置によって減算される。
【0028】
加えて、熱画像カメラによって材料の発熱性重合の際に発生するエネルギーが検出される。従って、測定された表面の温度が光照射された面の所定の波長あるいは波長領域の放射に相当する。その放射は熱画像カメラによって時間解像式に捕捉される。
【0029】
従って温度変化dT/dtは温度曲線の一次導関数に相当する。正の温度変化(dT/dt>0)が昇温(放射熱)を示し、負の温度変化(dT/dt<0)は表面の冷却(放射冷却)を示す。一定の温度、すなわち温度変化が無いこと(dT/dt=0)は一定の表面温度あるいは温度曲線の最大値/最小値(TmaxあるいはTmin)を意味する。
【0030】
フィルム表面にわたった温度変化は、熱画像カメラを使用して位置解像式に検出され制御装置に伝送される。
【0031】
好適な構成形態において温度曲線の積分、すなわちいわゆる熱量が位置解像式に捕捉される。
【0032】
光照射の終了の時点は、予め定義された温度Tmaxあるいは予め定義された温度変化dT/dtへの到達によって決定される。その数値あるいは温度変化が熱画像カメラによって測定されるかあるいは制御装置によって検出されると、制御装置が信号を発信する。その後制御装置が光照射を停止することによってその時点の層の形成プロセスを終了する。
【0033】
さらに、意図しない不均一な温度分布の検出に基づいて、層の特定の領域を引き続き光照射することができ、その際他の領域は既に硬化が充分に達成されているため追加的な光照射は実施されない。それによって所要の重合率を全ての領域で達成することができる。
【0034】
予め定義された温度Tmaxは、重合する層の表面上で熱画像カメラによって検出される最大の必要な加熱温度として決定される。その時点で温度変化dT/dtは0付近に収束するか、特に数値0になる。最終的な時間間隔内で温度変化を数値0まで追跡することは困難であるため、定義された閾値(例えばdT/dt=2ないし5K/秒)を利用して処理することも可能である。
【0035】
位置解像式の温度変化のモニタリングによって、過剰照射の理由による周囲材料の損傷あるいは不要な重合を防止することができる。過度に高いあるいは完全なモノマーの重合が次の層の付着を抑制する可能性があるため、所要の予め定義された硬化度合いに到達すると同時に光照射を停止することが好適である。その上、光源として使用されるLEDおよびLED-DMD、あるいはその他の光源は、いずれも有限の固有照射持続時間を有する。従って、位置解像式の温度変化のモニタリングによって最善の照射持続時間が判定され、光源の寿命を不要に短縮させる可能性がある不必要に長い照射を防止することができる。
【0036】
光照射の終了後、層をフィルムから分離することができる。そのことは、例えば構築プラットフォームを特定の数値分でフィルムから持ち上げることによって実行される。
【0037】
その数値は、少なくとも例えば印刷工程の層厚とする必要がある。しかしながら、完全な分離を容易にするために構築プラットフォームをまずより大きな数値分持ち上げ、その後所要の層厚(例えば50ないし100mm)に降下させることが好適である。さらに、フィルムを下方に移動させることも考えられる。そのために、フィルムを液槽と共に斜めに、すなわち一端を起点にして下降させ、それによっていわばフィルムを硬化した印刷原料から剥離する。
【0038】
連続的な印刷プロセスに際して阻害剤層が硬化した印刷原料の透明なフィルムへの付着を防止する。そのことによって前述の分離工程が不要になる。
【0039】
三次元印刷工程あるいはデジタル光処理プロセスにおける過剰な光照射は、さらに過度に強力な原料とフィルムの間の接着と不必要に延長された印刷プロセスにつながる。そのことは、熱画像カメラによる温度追跡によって最善の照射持続時間が判定されるため、本発明に係る方法によって防止することができる。そのことによって、(既述した光源の節約に加えて)透明なフィルムの寿命の延長と時間短縮も可能になる。過剰な接着は、阻害剤層の損傷、ひっかき傷、あるいは剥離、および/またはフィルムのひっかき傷、損傷あるいは破断、またはそれら両方につながり得る。そのような発生した損傷は、印刷プロセスを中断することによってのみ解消することができ、または印刷プロセスを完全に中止しなければならず、そうでなければ最終製品に製造不良が発生する。
【0040】
分離に際して、新しく重合する原料が発生した空隙内に流入する。そのことは、熱画像カメラによって測定される熱放射の強い低下、すなわち温度降下(温度変化dT/dt<<0)として検出することができる。分離後および最初の印刷原料の流入による飛躍的な温度降下の後、構築プラットフォームとフィルムの間の気泡を伴ったあるいは伴わない全ての追加的な原料流をいずれも温度変化(dT/dt>0あるいはdT/dt<0)として熱画像カメラによって検出し、制御装置内で検知することができる。
【0041】
加えて、阻害剤層を伴っても伴わなくてもフィルム上の(例えば考えられる不良工程からのあるいは異物粒子等の残留物の堆積、混入、付着による)汚染を検出し得ることが好適である。そのようなケースは、例えば構築プラットフォームを動作させた際に過度に小さな温度変化が熱画像カメラによって検出され制御装置内で認識されることによって検知することができる。そのことは、フィルム表面全体にわたった過度に小さい温度変化ばかりでなく表面の一部のものにも有効であり、すなわち温度分布/変化がフィルム表面全体にわたって合理的なものではないということが熱画像カメラによって記録される場合に有効である。その場合制御装置が警告信号を発信する。
【0042】
そのことは、フィルム上あるいは阻害剤層上、特に対象物とフィルムあるいは阻害剤層の間に気泡あるいは微小な汚染物が残留した場合に極めて重要である。そのことは、気泡の位置の温度が周囲に比べて低くなることから検知される。熱画像カメラが温度を位置解像式かつ極めて正確に検出し、従って制御装置がその種の温度差を検知してその後エラーあるいは警告信号を発信することができる。
【0043】
熱画像カメラの位置解像度は、構築プロセスの層厚のレベル、すなわち約0.1mm×0.1mmとすることが好適であるが、それより著しく大きく例えば10倍の1mm×1mm、または著しく小さい例えば0.025×0.025mmとすることもできる。
【0044】
障害が解消されるかあるいは使用者によって手動で光照射が許可された際に初めて、制御装置が後続の層の光照射プロセスを許可する。気泡あるいは汚染物がフィルム上に残留していないことが熱画像カメラによって記録されかつ制御装置内で認識された場合に、障害が解消したと認識される。そのことは、熱画像カメラが原料流に際して表面全体にわたって均一な温度変化を測定することに基づいて検知可能である。その場合制御装置は温度変化の不規則性を検知せず、従ってフィルムの表面上に汚染物あるいは気泡が付着していることを検知しない。新しい印刷原料の流入の終了後、すなわち原料流の停止後に、フィルム表面全体にわたって一定の温度が熱画像カメラによって測定される。従って原料流中に制御装置が結果を確認し、フィルム上に本当に汚染物あるいは気泡が残留していないかどうか検査することができる。
【0045】
別の構成形態によれば、障害要素の検知に際して全印刷工程が中断される。
【0046】
加えて、所与の(原料流に相当する)閾値を超過する温度変化の後にさらなる有意な温度変化が測定されなくなったこと(dT/dtが0付近に収束)が熱画像カメラによって記録され制御装置によって検知された場合に初めて、制御装置が次の層の光照射を許可する。そのことは、全ての硬化した原料がフィルム表面から分離されていて原料流が静止に近づいていることを意味する。
【0047】
好適な追加構成形態において、光照射の開始に際して予め定義された時間内、好適には2秒以内に熱放射が変化しないことを熱画像カメラが記録し制御装置が検知した場合に制御装置が警告あるいはエラー信号を発信する。そのことは、光源が故障しているか、光照射された層が既に完全に硬化しているか、またはその他の障害要因のため重合が開始されなかったかのいずれかを意味する。さらに、例えば層を完全にフィルムから分離できなかったか、フィルムが破断しているか、または印刷原料が使い切られている可能性もある。
【0048】
従って、重合工程中ならびに異なった層の光照射の中間における温度変化のモニタリングによって、三次元印刷プロセス中の殆どの障害、例えばフィルムの汚染、異物の堆積、対象物のフィルムからの不完全な分離、またはフィルム、LED、あるいはLED-DMDの劣化等を早期に検知することができる。
【0049】
結果として警告信号を発信した際に光照射工程が制御装置によって遅延、特に一時停止あるいは中断される。後続する層の構築工程は、損害を最小化するために例えば制御装置によって自動的にあるいは使用者の介入によって調整することができる。光照射工程中の警告信号の発信に際して、現行の層の光照射を再スタートすることも可能であり、それによって例えば光源の故障の場合その光源を検査あるいは修理した後、最終製品に不良な層を含ませることなく光照射工程を継続することができる。
【0050】
好適な構成形態によれば、三次元印刷される対象物の光照射される層の寸法を、重合の間に多次元、特に二次元の位置解像式の温度測定によって追跡することができる。そのため、印刷工程中、特に光照射の間および各光照射の中間にいずれも透明なフィルムの表面の熱放射を熱画像カメラによって捕捉して記録する。光照射される領域はその他の領域に比べてより多くの熱を放射する。そのことは、光源から入射する光エネルギーと放熱重合プロセスの間に発生する熱の双方に起因する。従って制御装置は、検出された熱画像カメラのデータから光照射された層の実際の寸法を計算し、理論値、すなわち光源から発出される光放射の生データと比較することができる。
【0051】
印刷プロセスをモニタリングおよび検査するために、光照射工程の度にフィルムの照射される部分の寸法を熱画像カメラによって検出し、制御装置が記憶する。それのデータは、その後相互におよび生データと比較される。
【0052】
光照射された層の寸法が先行した層と比べて減少する場合、光照射された領域が縮小したと定義することができる。または照射された層の寸法が増加した場合は、拡大したと定義される。そのことは、層の間の差がかなり大きい場合に極めて重要である。大きな差は構築プロセスのエラーを示唆する。2つあるいはそれ以上の層の間で照射された面積にそのような予想外に大きな変化が測定された場合、制御装置によって警告信号、特にエラー信号が発信される。
【0053】
従来は、三次元印刷方法に際して、印刷プロセス中の個々の層の相互のずれを補償するために、いわゆる歪み補正を行うことが必要であった。本発明によれば、製造する三次元対象物の印刷される層の面積の増減をモニタリングすることによって、重合中の対象物の大きさを捕捉しそれに従って構築プロセスを調整することができるため、前記の歪み補正が不要になる。制御装置の警告信号の発信に際して、使用者(あるいは場合によって制御装置が自動的に)面積の大幅な増減が意図されたものであるか否かを判断することができる。意図されていなかった場合は、エラー源を解消することができる。層が小さすぎる場合は、その不良な層の所要の領域を続いて再度光照射し、それによって所要の面積の最善の硬化を達成することができる。意図されていない過度に大きな光照射があった場合は、そのエラーを解消することが困難である。そのため、エラー源を排除した後、次の層を正常に印刷し、印刷プロセスの終了後に発生した不要な部分を使用者が手動で除去することができる。例えば、一般的な手持ち研磨機で実施することができる。
【0054】
本発明に係る三次元プリンタは、構築プラットフォームと、光源と、印刷原料の収容装置と、制御装置と、接続された熱画像カメラとから構成される。熱画像カメラは、制御装置に出力信号を送信する。
【0055】
制御装置は、例えば特殊なソフトウェアを備えたコンピュータとすることができ、そのコンピュータが上述したように印刷原料から対象物を層ごとにあるいは連続的に形成するように三次元印刷システムを制御することができる。
【0056】
本発明の別の構成形態によれば、三次元プリンタにDMDユニットが接続される。熱画像カメラと制御装置によって1つの層が不均一に硬化していることが検知されると、DMDユニットを使用して既に硬化した領域から照射を偏倚させることができる。それによってまだ完全に硬化していない領域が継続して光照射され、同時に既に完全に硬化した領域の過剰照射が防止される。
【0057】
このプロセスは「デジタル光処理プロセス(DLP)」の投射技術に基づいている。それによって、デジタル画像あるいは波長が定義されたエネルギーを光線に変調することによって、画像、あるいは本発明の場合定義された光エネルギーを有する光線が形成される。光線は、可動式のマイクロミラーを配置することによって個々の画像点、すなわちピクセルに分解され、その後個別に投射路内にあるいは投射路から外に反射される。そのことが、透明なフィルムの下側表面上の所要の領域への光線の精密かつ任意の制御を可能にし、それによって個別の領域の過剰照射を防止することが可能になる。
【0058】
この制御機構を含んだ可動式のマイクロミラーの配列は、DMDユニット(デジタルマイクロミラーデバイス)と呼称される。好適には、DMDユニットの個々のマイクロミラーが正方形のマトリクスの形式で配置され、制御装置によって個別に必要に応じて制御し、すなわち傾斜させることができる。その種の傾斜は個々のマイクロミラーに対して自律的に制御される「オン」と「オフ」のポジション間で実施され、電磁界の励起によって誘発される。そのことが、意外なほど繊細かつ正確な光線あるいはレーザ放射線の制御を可能にする。
【0059】
好適には、個々のマイクロミラーに対していずれも2個の静的な終端状態、すなわち「オン」と「オフ」のポジションが定義され、それらの間でマイクロミラーが1秒以内で頻繁に、特に5000回に及ぶ回数で切り換わることができる。「オン」ポジションが照射される領域に光エネルギーが誘導される状態を示し、それに対して「オフ」状態は光エネルギーが照射表面から偏倚する状態を示す。
【0060】
DMDユニットのそれらの個々のマイクロミラーのエッジ長は数μm、特に約16μmであることが好適である。DMDユニット中のミラーの数が投射される画像の解像度に相当し、すなわちここでは所要の照射される領域の解像度に相当するが、1個のマイクロミラーによって複数のピクセルを表示し得ることも好適である。
【0061】
好適な構成形態によれば、個々のピクセルを異なった任意の明度段階に制御することもできる。そのことは、個々のマイクロミラーをバイナリ式のパルス幅変調駆動、言い換えるとパルス密度変調によって制御することによって達成される。従ってピクセルの明度段階は、どれだけ長くマイクロミラーが付勢されるかに依存する。
【0062】
好適な構成形態によれば、DMDユニットの手前、すなわち光線の投射路内にカラーフィルタを配置することができる。そのカラーフィルタは、偏向された光から例えば1つの波長をフィルタ除去するか、あるいは偏向された光線を1つの波長に制限することができる。カラーフィルタの代わりに、入射した放射線から特定の波長をスペクトル分離するためのモノクロメータを使用することも可能である。
【0063】
このDMDユニットを使用したDLP技術の重要な利点は、向上した精度である。重合すべき原料が既に所要の硬度を有している透明なフィルムの下側表面の領域から、極めて正確に光エネルギー、すなわち光線を偏倚させ、それによって過剰照射を防止することができる。
【0064】
本発明のその他の詳細、特徴、および利点は、添付図面を参照しながら以下に記述する本発明の種々の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】本発明に係る三次元プリンタの第1の実施形態の横断面を概略的に示した説明図である。
【
図2】本発明に係る三次元プリンタの別の実施形態の横断面を概略的に示した説明図である。
【
図3】三次元印刷プロセス中の光出力、温度変化、ならびに構築プラットフォームのZ位置を示した概略説明図である。
【
図4】三次元印刷プロセス中の光出力、温度変化、ならびに構築プラットフォームのZ位置を示したさらに別の概略説明図である。
【
図5】本発明に係る三次元プリンタのさらに別の実施形態の光学的な構成を示した概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図1には、構築プラットフォーム4と、印刷原料8の収容装置10と、熱画像カメラ12と、制御装置14を備えた、本発明に係る光造形プロセスあるいはデジタル光処理プロセス用の三次元プリンタ2の横断面が概略的に示されている。この実施形態において、構築プラットフォーム4の下側で硬化した印刷原料6が概略的に示されている。硬化した印刷原料6は、印刷対象物ごとにそれぞれ違った形状を有することができ、ここでは異なった厚みの柱によって示されている。さらに、垂直方向に上下に移動可能な構築プラットフォーム4の動作方向が矢印によって示されている。
【0067】
構築プラットフォーム4の下側に印刷原料8の収容装置10が存在し、その際印刷原料8の充填レベルが破線によって示されている。収容装置10の下側境界11は透明な材料、好適には透明なフィルムによって形成される。
【0068】
このフィルム11の下側の外表面9に対して熱画像カメラ12が指向し、その熱画像カメラも制御装置14と結合される。その熱画像カメラ12によってフィルム11の表面9の検査すべき部位の温度を測定することができる。そのため、熱画像カメラが極めて薄いフィルム11の下側表面9に対して指向し、光照射中および光照射の中間の熱放出を記録する。この場合は歯科補綴物に係り、フィルム11のモニタリングすべき領域は約5cm×5cmである。制御装置14は、熱画像カメラ12によって記録されたデータから使用される材料(透明なフィルム11ならびに印刷原料8)の熱伝導係数および熱容量を考慮しながら、フィルム11の表面9の検査すべき部位上の二次元の温度分布を作成することができる。
【0069】
2つあるいはそれ以上の層の間の二次元温度分布の異常および/またはその他の想定外の温度変化に際して、制御装置14によってエラーを警告する信号が発信される。可能性のあるエラーは、例えば光照射の開始に際しての飛躍的な熱放射の上昇の欠如、あるいは硬化した印刷原料をフィルムから分離した際の急速な温度降下の欠如である。加えて、2つあるいはそれ以上の層の二次元の温度分布の比較(従ってならびに光照射され硬化した面の比較)に際して、硬化した層の面積の過剰な増減が記録されることも考えられる。
【0070】
印刷プロセスのエラー記録に際して、制御装置14によって自動的に調整することができる。しかしながら多くの場合は、警告信号の発信に際して使用者が全てのエラーを排除して印刷プロセスを再び許可するまで制御装置14が印刷プロセスを休止する。
【0071】
図2には、本発明に係る三次元プリンタ2の別の実施形態の横断面が概略的に示されている。ここでは、
図2の三次元プリンタを使用して実行中の印刷プロセス(すなわち層の光照射の実行中)が示されている。ここで図示されている硬化した印刷原料6の柱は既に印刷された対象物を概略的に示しており、それが印刷原料8内に浸かっている。収容装置10の下側中央に、円錐形の照射領域20を有する光源18が概略的に示されている。その種の光源は、該当する光開始剤に適合する最良の波長を放射する超精密なレーザとすることができるが、好適にはLED光源とすることができる。ここでは明瞭化のために可能な検出領域全体が示されているが、検出は例えば0.5mm×0.5mmの焦点範囲を有する位置解像式に実施することができる。既に硬化した印刷原料6と透明なフィルム11の間に、新たに硬化させる原料16が概略的に示されている。
【0072】
明瞭化のために円錐形の照射領域20が示されている。しかしながら、より小さな領域を照射する複数の光源あるいは適宜な偏向ミラーを使用して、既に硬化した原料6と透明なフィルム11の間の所要の領域(1ピクセル、例えば20×20μm)のみを(場合によって小さな面積の増減を伴って)光照射することも可能である。この実施形態において熱画像カメラ12は、(図面中には個々に示されていないものの)フィルム表面9の光照射される領域のみに対して方向づけられ、焦点合わせされ、従ってその(小さな)領域の熱放射のみを捕捉する。そのことは一点鎖線によって示されている。そのような重要な領域、すなわち三次元印刷工程の正確な領域への集中化によって、不要に多くのデータ量とその結果時間がかかる制御装置14による処理を回避することができる。
【0073】
図3には、三次元印刷プロセス中の光出力、温度変化、ならびに構築プラットフォーム4のZ位置、すなわち透明なフィルム11に対する構築プラットフォーム4の内部高低差がグラフィックによって示されている。
【0074】
曲線a)は、光源18の光出力[mW/cm2]に関する情報を提示する。光源18の点入に際して光出力は直線的かつ大きな増加を示し、最適には跳躍的に増加する。照射の実行中に光出力が一定に保持され、その後遮断されそれによって急激な光出力の降下が引き起こされる。
【0075】
曲線b)は三次元印刷プロセス中の室温を示す。その室温は、フィルム表面9上の温度変化の誤った測定を防止するために、最適には一定に保持される。
【0076】
曲線c)は、印刷プロセス中の透明なフィルム11の表面9上の最適な温度変化を示す。この温度変化は熱画像カメラ12によって記録され、制御装置14が評価する。その際温度は光源18の点入の時点で増加する。そのことは、入射する光源18の光出力と、印刷原料8の発熱性重合の発生によって引き起こされる。温度変化dT/dtが可能な限り0に近い特定の数値、特にちょうど0の値に近づくと、重合プロセス中の温度の最大値Tmaxに到達する。数値dT/dt=0には最終時間まで到達不可能であり、そのため照射時間を可能な限り短く抑えそれにもかかわらず適正な印刷原料8の硬化を達成するために、数値dT/dtが略0になることを基本にする。この時点で光源18が遮断され、透明なフィルム11の表面9の温度は再びゆっくり初期値に低下する。
【0077】
曲線d)は、三次元印刷プロセスの進行中の構築プラットフォーム4のZ位置、すなわち透明なフィルム11に対する構築プラットフォーム4の内部高低差に関する情報を示す。構築プラットフォーム4は、光照射の前に定義された間隙xmm(xは必要に応じて調節することができる)に到達するまで、透明なフィルム11の近くに移動する。
【0078】
照射プロセスが終了した後、硬化した原料6の透明なフィルム11からの分離を達成するために、構築プラットフォーム4が再びフィルム11から離れるように動かされる。
【0079】
加えて、
図3には時間ピリオド1ないし5が示されている。この時間ピリオドは、三次元印刷プロセスの個々のステップを示す。領域1は初期値であり、光照射がない際の初期位置と温度を示す。この点には、理想的な場合全ての曲線a)ないしd)において印刷プロセス後に再び到達する。
【0080】
領域2は、構築プラットフォーム4のフィルム11への接近を示す。この時点では光源18は遮断されていて、温度は初期値と同じである。領域2の終端において、すなわち構築プラットフォーム4のフィルム11への最適な接近に際して、光源18が点入され重合が開始される。そのことは曲線c)の温度上昇の開始で認識することができる。
【0081】
領域3内で、光照射中のフィルム9の最大加熱温度Tmaxに到達する。ここで、温度変化dT/dtが特定の数値、特に数値0に接近する。その数値に到達すると光源18が遮断され、透明なフィルム11の表面9の温度が再び降下を開始する。
【0082】
領域4は、光照射が終了し従って重合が終了した後のフィルム表面9の冷却プロセスを示す。フィルム表面9の初期温度に到達した際に、構築プラットフォーム4が再び初期位置に移動し、従って重合した印刷原料6が透明なフィルム11から分離される。領域5の終端に、全てのパラメータが再び初期値(領域1)に到達する。
【0083】
図4には、
図3に対しての変更形態が示されている。ここでも、三次元印刷プロセス中の光出力、温度変化、ならびに構築プラットフォーム4のZ位置、すなわち透明なフィルム11に対する構築プラットフォーム4の内部高低差がグラフィックによって示されている。
【0084】
図3と比較すると、構築プラットフォーム4のZ位置が異なっている。曲線a)は、構築プラットフォーム4のZ位置、すなわち透明なフィルム11に対する構築プラットフォーム4の内部高低差を示す。構築プラットフォーム4は、硬化(光照射)の後透明なフィルム11から離れて移動し、その後定義された間隙xmm(xは必要に応じて調節することができる)に到達するために再び接近する。
【0085】
曲線b)は、光源18の光出力[mW/cm2]の変化を示す。光源18が点入されている際に光出力が跳躍的に増加する。構築プラットフォーム4が移動する間に、光源が遮断され従って出力は0mW/cm2になる。光照射の間、光出力は一定に保持される。
【0086】
曲線c)は、
図3と同様に、印刷プロセス中の透明なフィルム11の表面9の考えられる温度変化を示す。ここで温度は、光源18の遮断および構築プラットフォーム4のz変位の時点で大きく低下し、所定の温度、特に液体状の印刷原料8の温度に到達すると一定に維持される。光源が再点入されると温度が再び上昇する。そのことは、入射する光源18の光出力と、印刷原料8の発熱性重合の発生によって引き起こされる。硬化の完了後に、温度は再び一定になる(温度変化dT/dtが0に接近)。その状態が重合プロセス中の温度の最大値T
maxに相当する。
【0087】
ここでも、フィルム表面9上の温度変化の誤った測定を防止するために、三次元印刷プロセス中の室温(曲線d))は可能な限り一定に保持すべきである。
【0088】
加えて、
図4には時間ピリオドIないしIIIが記入されている。それらは、三次元印刷プロセスの個々のステップを示す。
【0089】
領域Iは、光照射工程中の構築プラットフォーム4のZ位置を示す。その際光源18が点入され、フィルム表面9の光照射中に到達する最大の加熱温度Tmaxが示される。その際に温度変化dT/dtが数値0に接近する。
【0090】
領域IIは、2つの光照射工程の間の構築プラットフォーム4のZ位置の変化を示す。構築プラットフォーム4が持ち上げられる。構築プラットフォーム4の動作の開始に際して光源18が遮断され、それによって透明なフィルム11の表面9上の温度が大きく低下し、所定の温度、特に液体状の印刷原料8の温度に到達すると領域IIの終了まで一定に保持される。
【0091】
領域IIIは、再び光照射工程の開始に際して構築プラットフォーム4の降下したZ位置を示す。光源が再び点入され、透明なフィルム11の表面9上の温度が再び上昇する。そのことは、入射する光源18の光出力と、印刷原料8の発熱性重合の発生によって引き起こされる。
【0092】
硬化の完了後に、領域Iと同様に温度が一定値Tmaxになる(温度変化dT/dtが数値0に接近)。そのことが重合プロセスの終了を示し、従って新規にサイクルが開始可能になる。
【0093】
図5には、本発明に係る三次元プリンタの別の実施形態が概略的に示されている。ここで特徴的なことは使用される光学系であり、その光学系は光線を印刷対象物あるいは印刷原料6、すなわち透明なフィルム11の表面に向かって誘導し、熱線あるいは赤外線を印刷対象物/印刷原料6から熱画像カメラ12に向かって誘導するために使用される。
【0094】
この実施形態において光源18は印刷すべき対象物の近傍に配置され、
図5において対象物の上方に示されている。光源18から放射され光照射のために使用される放射線19は、ミラー30を介して集光レンズ28に向かって偏向される。
【0095】
好適な実施形態において、ミラー30はエッジフィルタを備えて、放射線19が確実に反射されるが自然光は自由にミラーを通過できるように形成される。レンズ28は、光照射放射線19の個々の光線と、場合によって追加的に自然光の放射線を集光して平行化するために適する。ここで光照射放射線19の平行化された放射線は、(集光)レンズ28から2個の積層プリズム25および26と、DMDユニット24に伝送される。
【0096】
この実施形態において、両方のプリズム25および26が組み合わせでいわゆる「内部全反射プリズム」(TIRプリズム)27を形成する。全反射(「内部全反射」)は、光線などの波で発生する物理現象であり、光の伝播速度が開始媒体よりも大きい別の透明媒体との境界面に光が浅く入射したときに発生する。入射角度が継続的に変化すると、その現象が特定の入射角度の値において比較的突発的に発生する。その固有の入射角度は、全反射の臨界角と呼ばれる。光がもはや大部分は前記の他の媒体に通過せず、その角度からは(幾分の多少があるが)全て前記開始媒体内に返される(反射される)。従って、TIRプリズム、すなわち両方の積層プリズム25および26から組成された光学要素を、ミラーのように使用することができる。TIRプリズム27の屈折率が充分に大きい場合、全反射(内部全反射、TIR)が得られ、TIRプリズム27が100%反射するミラーのように作用する。
【0097】
2個の積層プリズム25および26の組み合わせとして、TIRプリズム27が入射した光をDMDユニット24に向かって偏向し、形成すべき画像をDMDユニット24から反射された光線を使用して投射する。従って、TIRプリズム27の使用によって、複雑なミラーの組み合わせと同じ効果が達成されるため、顕著な省スペースが可能になる。加えて、このシステムによって達成されるコントラストは極めて高くなる。
【0098】
TIRプリズムから放射される放射線はさらに投射レンズ22まで延在し、その投射レンズが光照射放射線19の平行な放射線を再び円錐形の光照射領域20に分散させる。ここでは簡略化のために例示的な光照射領域20が示されているが、例えば0.5mm×0.5mmの焦点範囲を有する位置解像式に光照射を実行することもできる。
【0099】
円錐形の光照射領域20の放射線はその後半透光性のミラー32、いわゆる分割ミラーに誘導され、そのミラーを光照射放射線19が貫通することができる。その後、光照射放射線19は透明なフィルム11に当接し、そのフィルムと既に硬化した原料6の間の所要の領域に光照射する。その際発生する熱線13、すなわち赤外線は、原料6から放出されて透明なフィルム11を介して半透光性のミラー32に伝送される。
【0100】
好適な実施形態においてミラー32は分割ミラーであり、熱線13、すなわち赤外線を熱画像カメラ12に向かって反射するが光照射放射線19、例えば紫外線は変更なくミラーを通過し得るように形成される。
【0101】
簡略化のために円錐形の光照射領域20が図示されている。しかしながら、より小さな領域を照射する複数の光源によって、硬化した原料6と透明なフィルム11の間の必要な領域(1ピクセル例えば20×20μm)のみを(場合によって多少の面積の増減を伴って)光照射することも可能である。
【0102】
好適な実施形態において、さらにDMDユニット24によって硬化の完成度に応じて個々の照射領域のピクセルを点入および遮断することができる。それによって既に硬化した領域の過剰照射を防止することができる。
【符号の説明】
【0103】
2 三次元プリンタ
4 構築プラットフォーム
6,8 印刷原料
9 表面
10 収容装置
11 フィルム
13 熱線
12 熱画像カメラ
14 制御装置
16 原料
18 光源
19 放射線
20 照射領域
22 投射レンズ
24 DMDユニット
25,26 積層プリズム
27 TIRプリズム
28 集光レンズ
30,32 ミラー