(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】液圧制御ユニット、ブレーキシステム及び鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B60T 8/36 20060101AFI20230628BHJP
B62L 1/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
B60T8/36
B62L1/00 Z
(21)【出願番号】P 2021541743
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(86)【国際出願番号】 IB2020057722
(87)【国際公開番号】W WO2021038365
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2019156224
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】池田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】篤 浩明
(72)【発明者】
【氏名】千葉 和樹
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/159046(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/36
B62L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のフロントフォーク(216)の間に保持される前輪(217)を備える鞍乗型車両(200)であって、
前記鞍乗型車両(200)に搭載され、且つ、アンチロックブレーキ制御を実行可能なブレーキシステム(100)の液圧制御ユニット(1)
を備え、
前記液圧制御ユニット(1)は、
前記アンチロックブレーキ制御における減圧時にホイールシリンダ(251)から逃がしたブレーキ液をアキュムレータ(33)に蓄え、前記アキュムレータ(33)内のブレーキ液をポンプレスで前記アキュムレータ(33)外へ排出する構成であり、
マスタシリンダ(242)に連通する液管(101)が接続されるマスタシリンダポート(11)と、前記ホイールシリンダ(251)に連通する液管(102)が接続されるホイールシリンダポート(12)と、前記マスタシリンダポート(11)と前記ホイールシリンダポート(12)とを連通させる内部流路(13)とが形成された基体(10)と、
前記基体(10)に形成された込め弁用凹部(18)に設けられ、前記アンチロックブレーキ制御時に前記内部流路(13)を開閉する込め弁(31)と、
前記基体(10)に形成された弛め弁用凹部(19)に設けられ、前記アンチロックブレーキ制御時に前記内部流路(13)を開閉する弛め弁(32)と、
を備え、
前記マスタシリンダポート(11)は、前記基体(10)の第1面(25)に形成されており、
前記ホイールシリンダポート(12)は、前記基体(10)における前記第1面(25)と対向する第2面(26)に形成されており、
前記内部流路(13)は、
前記アキュムレータ(33)内のブレーキ液を前記弛め弁(32)を介さずに前記マスタシリンダポート(11)に戻せない構成であり、
前記込め弁用凹部(18)及び前記弛め弁用凹部(19)は、前記第1面(25)と前記第2面(26)とが並ぶ方向(Z)において並んで
おり、
前記フロントフォーク(216)と前記前輪(217)との間に前記マスタシリンダポート(11)及び前記ホイールシリンダポート(12)が位置するように、前記基体(10)が配置されている
鞍乗型車両(200)。
【請求項2】
前記内部流路(13)のうち、前記込め弁用凹部(18)と前記弛め弁用凹部(19)とを接続する部分は、直線状に延びる流路となっている
請求項1に記載の
鞍乗型車両(200)。
【請求項3】
前記内部流路(13)のうち、前記込め弁用凹部(18)と前記弛め弁用凹部(19)と前記ホイールシリンダポート(12)を接続する部分は、直線状に延びる流路となっている
請求項2に記載の
鞍乗型車両(200)。
【請求項4】
前記基体(10)に形成された圧力センサ用凹部(22)に設けられ、前記ホイールシリンダ(251)のブレーキ液の圧力を検出する圧力センサ(103)を備え、
前記込め弁用凹部(18)、前記弛め弁用凹部(19)及び前記圧力センサ用凹部(22)は、前記第1面(25)と前記第2面(26)とが並ぶ方向(Z)において並んでいる
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の
鞍乗型車両(200)。
【請求項5】
前記圧力センサ(103)は、前記内部流路(13)における前記弛め弁用凹部(19)と前記ホイールシリンダポート(12)とを接続する部分に連通している
請求項4に記載の
鞍乗型車両(200)。
【請求項6】
前記込め弁用凹部(18)の内周面に、外側に凹む込め弁用切り欠き(23)が形成されており、
前記内部流路(13)のうちの前記込め弁用凹部(18)と前記弛め弁用凹部(19)とを接続する部分は、前記込め弁用切り欠き(23)に接続されている
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の
鞍乗型車両(200)。
【請求項7】
前記第1面(25)を上面とし、前記第2面(26)を下面とした場合、前記込め弁用切り欠き(23)の上端部(23a)は、前記込め弁用凹部(18)の前記内周面の上端部(18c)よりも下側に位置する
請求項6に記載の
鞍乗型車両(200)。
【請求項8】
前記弛め弁用凹部(19)の内周面に、外側に凹む弛め弁用切り欠き(24)が形成されており、
前記内部流路(13)のうちの前記込め弁用凹部(18)と前記弛め弁用凹部(19)とを接続する部分は、前記弛め弁用切り欠き(24)に接続されている
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の
鞍乗型車両(200)。
【請求項9】
前記第1面(25)を上面とし、前記第2面(26)を下面とした場合、前記弛め弁用切り欠き(24)の上端部(24a)は、前記弛め弁用凹部(19)の前記内周面の上端部(19c)よりも下側に位置する
請求項8に記載の
鞍乗型車両(200)。
【請求項10】
前記込め弁(31)及び前記弛め弁(32)が、一対のみ設けられている
請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の
鞍乗型車両(200)。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の液圧制御ユニット(1)を備えているブレーキシステム(100)
を有する
鞍乗型車両(200)。
【請求項12】
前記鞍乗型車両(200)を正面視した状態において、前記液圧制御ユニット(1)は、前記第1面(25)が上面となり、前記第2面(26)が下面となる状態で配置されている
請求項11に記載の鞍乗型車両(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に搭載されるブレーキシステムの液圧制御ユニット、該液圧制御ユニットを備えたブレーキシステム、及び、該ブレーキシステムを備えた鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鞍乗型車両には、ブレーキ液の液圧を制御することによって車輪の制動力を制御する、アンチロックブレーキ制御を実行可能なブレーキシステムを備えたものが存在する。このようなブレーキシステムは、液圧制御ユニットを備えている。この液圧制御ユニットは、マスタシリンダに連通する液管が接続されるマスタシリンダポートと、ホイールシリンダに連通する液管が接続されるホイールシリンダポートと、マスタシリンダポートとホイールシリンダポートとを連通させる内部流路とが形成された基体を備えている。また、液圧制御ユニットは、基体に形成された込め弁用凹部に設けられ、アンチロックブレーキ制御時に内部流路を開閉する込め弁と、基体に形成された弛め弁用凹部に設けられ、アンチロックブレーキ制御時に内部流路を開閉する弛め弁と、を備えている。
【0003】
液圧制御ユニットは、鞍乗型車両に搭載される際、例えば、鞍乗型車両のフロントフォークに保持される(特許文献1参照)。この際、従来の液圧制御ユニットは、鞍乗型車両を正面視した際、少なくとも一部がフロントフォークの外側に配置されている。換言すると、従来の液圧制御ユニットが搭載された鞍乗型車両を正面視した際、従来の液圧制御ユニットの少なくとも一部は、該液圧制御ユニットを保持しているフロントフォークを基準として、前輪と反対側に位置する領域に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来の液圧制御ユニットは、鞍乗型車両を正面視した際、少なくとも一部がフロントフォークの外側に配置されている。このため、従来の液圧制御ユニットは、鞍乗型車両の走行中に飛び石等が衝突する等によって外力を受けやすい。また、従来の液圧制御ユニットは、鞍乗型車両が転倒した際、地面等に衝突して外力を受けやすい。このように、従来の液圧制御ユニットは、鞍乗型車両に搭載された際、外力を受けやすい状態になっているという課題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を背景としてなされたものであり、鞍乗型車両に搭載された際、外力を受けることを従来よりも抑制できる液圧制御ユニットを得ることを目的とする。また、本発明は、このような液圧制御ユニットを備えたブレーキシステムを得ることを目的とする。また、本発明は、このようなブレーキシステムを備えた鞍乗型車両を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液圧制御ユニットは、鞍乗型車両に搭載され、且つ、アンチロックブレーキ制御を実行可能なブレーキシステムの液圧制御ユニットであって、前記アンチロックブレーキ制御における減圧時にホイールシリンダから逃がしたブレーキ液をアキュムレータに蓄え、前記アキュムレータ内のブレーキ液をポンプレスで前記アキュムレータ外へ排出する構成であり、マスタシリンダに連通する液管が接続されるマスタシリンダポートと、前記ホイールシリンダに連通する液管が接続されるホイールシリンダポートと、前記マスタシリンダポートと前記ホイールシリンダポートとを連通させる内部流路とが形成された基体と、前記基体に形成された込め弁用凹部に設けられ、前記アンチロックブレーキ制御時に前記内部流路を開閉する込め弁と、前記基体に形成された弛め弁用凹部に設けられ、前記アンチロックブレーキ制御時に前記内部流路を開閉する弛め弁と、を備え、前記マスタシリンダポートは、前記基体の第1面に形成されており、前記ホイールシリンダポートは、前記基体における前記第1面と対向する第2面に形成されており、前記内部流路は、前記アキュムレータ内のブレーキ液を前記弛め弁を介さずに前記マスタシリンダポートに戻せない構成であり、前記込め弁用凹部及び前記弛め弁用凹部は、前記第1面と前記第2面とが並ぶ方向において並んでいる。
【0008】
また、本発明に係るブレーキシステムは、本発明に係る液圧制御ユニットを備えている。
【0009】
また、本発明に係る鞍乗型車両は、本発明に係るブレーキシステムを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る液圧制御ユニットにおいては、マスタシリンダポートが基体の第1面に形成されており、ホイールシリンダポートが基体における第1面と対向する第2面に形成されている。また、本発明に係る液圧制御ユニットにおいては、込め弁用凹部及び弛め弁用凹部が、第1面と第2面とが並ぶ方向において並んでいる。このため、本発明に係る液圧制御ユニットでは、第1面と第2面とが並ぶ方向と垂直な方向の幅が小さくなるように、基体を形成することができる。したがって、鞍乗型車両を正面視した状態において第1面と第2面とが並ぶ方向が上下方向となるように、本発明に係る液圧制御ユニットをフロントフォークに保持させることにより、基体の少なくとも一部をフロントフォークと前輪との間に配置することができる。このため、本発明に係る液圧制御ユニットのうち、基体におけるフロントフォークと前輪との間に配置される箇所からフロントフォーク側へ突出する部分の少なくとも一部を、乗型車両を正面視した状態においてフロントフォークの後方となる位置に配置させることができる。したがって、本発明に係る液圧制御ユニットは、当該液圧制御ユニットが搭載された鞍乗型車両を正面視した際、フロントフォークの外側に配置される領域を従来よりも小さくでき、外力を受けることを従来よりも抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムが搭載される自転車の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの概略構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットを示す平面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットを示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットを示す側面図であり、一部を断面にした図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットを示す平面図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの基体を示す斜視図であり、内部を透過した図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの基体を示す斜視図であり、内部を透過した図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの別の一例を示す平面図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットにおける回路基板の組み付け方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る液圧制御ユニット、ブレーキシステム及び鞍乗型車両について、図面を用いて説明する。
【0013】
なお、以下では、本発明が自転車(例えば、二輪車、三輪車等)に採用される場合を説明するが、本発明は自転車以外の他の鞍乗型車両に採用されてもよい。自転車以外の他の鞍乗型車両とは、例えば、エンジン及び電動モータのうちの少なくとも1つを駆動源とする自動二輪車、自動三輪車、及びバギー等である。また、自転車とは、ペダルに付与される踏力によって路上を推進することが可能な乗物全般を意味している。つまり、自転車には、普通自転車、電動アシスト自転車、電動自転車等が含まれる。また、自動二輪車又は自動三輪車は、いわゆるモータサイクルを意味し、モータサイクルには、オートバイ、スクーター、電動スクーター等が含まれる。
【0014】
また、以下で説明する構成、動作等は、一例であり、本発明に係る液圧制御ユニット、ブレーキシステム及び鞍乗型車両は、そのような構成、動作等である場合に限定されない。例えば、以下では、本発明に係るブレーキシステムが、前輪に生じる制動力のみに対してアンチロックブレーキ制御を実行するものである場合を説明しているが、本発明に係るブレーキシステムが、後輪に生じる制動力のみに対してアンチロックブレーキ制御を実行するものであってもよく、また、前輪に生じる制動力及び後輪に生じる制動力の両方に対してアンチロックブレーキ制御を実行するものであってもよい。
【0015】
また、各図においては、同一の又は類似する部材又は部分に、同一の符号を付している、又は、符号を付すことを省略している。また、細かい構造については、適宜図示を簡略化又は省略している。また、重複する説明については、適宜簡略化又は省略している。
【0016】
<ブレーキシステムの自転車への搭載>
実施の形態に係るブレーキシステムの自転車への搭載について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムが搭載される自転車の概略構成を示す図である。なお、
図1では、自転車200が二輪車である場合を示しているが、自転車200は三輪車等の他の自転車であってもよい。
【0017】
鞍乗型車両の一例である自転車200は、フレーム210と、旋回部230と、サドル218と、ペダル219と、後輪220と、後輪制動部260と、を備えている。
【0018】
フレーム210は、例えば、旋回部230のステアリングコラム231を軸支するヘッドチューブ211と、ヘッドチューブ211に連結されているトップチューブ212及びダウンチューブ213と、トップチューブ212及びダウンチューブ213に連結され、サドル218を保持するシートチューブ214と、シートチューブ214の上下端に連結され、後輪220及び後輪制動部260を保持しているステー215と、を含む。
【0019】
旋回部230には、ステアリングコラム231と、ステアリングコラム231に保持されているハンドルステム232と、ハンドルステム232に保持されているハンドルバー233と、ハンドルバー233に取り付けられている制動操作部240と、ステアリングコラム231に連結されているフロントフォーク216と、フロントフォーク216に回転自在に保持されている前輪217と、前輪制動部250と、が含まれる。フロントフォーク216は、前輪217の両側に設けられている。フロントフォーク216は、一端がステアリングコラム231に連結され、他端が前輪217の回転中心に接続されている。すなわち、前輪217は、一対のフロントフォーク216の間に、回転自在に保持されている。なお、フロントフォーク216は、サスペンション付きフロントフォークであってもよい。
【0020】
制動操作部240は、前輪制動部250の操作部として用いられる機構と、後輪制動部260の操作部として用いられる機構と、を含む。例えば、前輪制動部250の操作部として用いられる機構は、ハンドルバー233の右端側に配設され、後輪制動部260の操作部として用いられる機構は、ハンドルバー233の左端側に配設される。
【0021】
旋回部230のフロントフォーク216に、液圧制御ユニット1が保持されている。液圧制御ユニット1は、前輪制動部250のブレーキ液の圧力の制御を担うユニットである。なお、後輪制動部260は、ブレーキ液の圧力を増加させることによって制動力を生じさせるタイプの制動部であってもよく、また、機械式に制動力を生じさせるタイプの制動部(例えば、ワイヤに張力を生じさせることによって制動力を生じさせるタイプの制動部等)であってもよい。
【0022】
例えば、フレーム210のダウンチューブ213には、液圧制御ユニット1の電源となる電源ユニット270が取り付けられている。電源ユニット270は、バッテリであってもよく、また、発電機であってもよい。発電機には、例えば、自転車200の走行によって発電するもの(例えば、前輪217又は後輪220の回転によって発電するハブダイナモ、前輪217又は後輪220の駆動源の電動機であって回生電力を発電するもの等)、太陽光によって発電するもの等が含まれる。
【0023】
つまり、自転車200には、少なくとも、制動操作部240と、前輪制動部250と、液圧制御ユニット1と、電源ユニット270と、を含む、ブレーキシステム100が搭載されている。ブレーキシステム100は、前輪制動部250のブレーキ液の圧力を液圧制御ユニット1によって制御することで、アンチロックブレーキ制御を実行可能である。
【0024】
<ブレーキシステムの構成>
【0025】
実施の形態に係るブレーキシステムの構成について説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係るブレーキシステムの概略構成を示す図である。
液圧制御ユニット1は、基体10を備えている。基体10には、マスタシリンダポート11と、ホイールシリンダポート12と、マスタシリンダポート11とホイールシリンダポート12とを連通させる内部流路13と、が形成されている。
【0026】
内部流路13はブレーキ液の流路である。内部流路13には、第1流路14と、第2流路15と、第3流路16と、第4流路17と、が含まれる。マスタシリンダポート11とホイールシリンダポート12とは、第1流路14及び第2流路15を介して連通している。また、第2流路15の途中部には、第3流路16の入口側の端部が接続されている。
【0027】
マスタシリンダポート11には、液管101を介して制動操作部240が接続される。制動操作部240は、ブレーキレバー241と、マスタシリンダ242と、リザーバ243と、を含む。マスタシリンダ242は、ブレーキレバー241の使用者の操作に連動して移動するピストン部(図示省略)を備えており、液管101及びマスタシリンダポート11を介して、第1流路14の入口側に接続されている。換言すると、マスタシリンダポート11には、マスタシリンダ242に連通する液管101が接続されている。ピストン部の移動によって、第1流路14のブレーキ液の圧力が上昇又は減少する。また、リザーバ243には、マスタシリンダ242のブレーキ液が蓄えられる。
【0028】
ホイールシリンダポート12には、液管102を介して前輪制動部250が接続される。前輪制動部250は、ホイールシリンダ251と、ロータ252と、を含む。ホイールシリンダ251は、フロントフォーク216の下端部に取り付けられている。ホイールシリンダ251は、液管102の圧力に連動して移動するピストン部(図示省略)を備えており、液管102及びホイールシリンダポート12を介して、第2流路15の出口側に接続されている。換言すると、ホイールシリンダポート12には、ホイールシリンダ251に連通する液管102が接続されている。ロータ252は、前輪217に保持され、前輪217と共に回転する。ピストン部の移動によって、ロータ252にブレーキパッド(図示省略)が押し付けられることで、前輪217が制動される。
【0029】
また、液圧制御ユニット1は、内部流路13の開閉を行う込め弁31及び弛め弁32を備えている。込め弁31及び弛め弁32は、基体10に設けられている。具体的には、込め弁31は、第1流路14の出口側と第2流路15の入口側との間に設けられており、第1流路14と第2流路15との間のブレーキ液の流通を開閉する。弛め弁32は、第3流路16の出口側と第4流路17の入口側との間に設けられており、第3流路16と第4流路17との間のブレーキ液の流通を開閉する。込め弁31及び弛め弁32の開閉動作によって、ブレーキ液の圧力が制御される。なお、本実施の形態に係るブレーキシステム100は、前輪に生じる制動力のみに対してアンチロックブレーキ制御を実行する一系統のブレーキシステムとなっている。このため、本実施の形態では、込め弁31及び弛め弁32は、基体10に一対のみ設けられている。
【0030】
また、液圧制御ユニット1は、込め弁31の駆動源としての第1コイル61と、弛め弁32の駆動源としての第2コイル62と、を備えている。例えば、第1コイル61が非通電状態である時、込め弁31は、双方向へのブレーキ液の流動を開放する。そして、第1コイル61に通電されると、込め弁31は、閉止状態となってブレーキ液の流動を遮断する。すなわち、本実施の形態では、込め弁31は、非通電時開の電磁弁となっている。また例えば、第2コイル62が非通電状態である時、弛め弁32は、ブレーキ液の流動を遮断する。そして、第2コイル62に通電されると、弛め弁32は、開放状態となって双方向へのブレーキ液の流動を開放する。すなわち、本実施の形態では、弛め弁32は、非通電時閉の電磁弁となっている。
【0031】
また、液圧制御ユニット1は、アキュムレータ33を備えている。アキュムレータ33は、第4流路17の出口側に接続されており、弛め弁32を通過したブレーキ液が貯留される。
【0032】
また、液圧制御ユニット1は、ブレーキ液の圧力を検出するための圧力センサ103を備えている。圧力センサ103は、基体10に設けられている。本実施の形態では、圧力センサ103は、ホイールシリンダ251のブレーキ液の圧力を検出している。圧力センサ103は、第2流路15に連通している。
【0033】
また、液圧制御ユニット1は、制御部35を備えている。制御部35には、圧力センサ103、前輪217の回転速度を検出するための車輪速センサ(図示省略)等の各種センサの信号が入力される。なお、制御部35の各部が、纏められて配設されていてもよく、また、分散して配設されていてもよい。制御部35は、例えば、マイコン、マイクロプロセッサユニット等を含んで構成されてもよく、また、ファームウェア等の更新可能なものを含んで構成されてもよく、また、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等を含んで構成されてもよい。
【0034】
制御部35は、第1コイル61及び第2コイル62への通電を制御する。詳しくは、制御部35は、第1コイル61への通電を制御することにより、込め弁31の駆動(開閉動作)を制御する。また、制御部35は、第2コイル62への通電を制御することにより、弛め弁32の駆動(開閉動作)を制御する。すなわち、制御部35は、込め弁31及び弛め弁32の開閉動作を制御することによって、ホイールシリンダ251のブレーキ液の圧力、つまり、前輪217の制動力を制御する。
【0035】
なお、本実施の形態では、制御部35は、後述のように回路基板36を備えている。回路基板36は、第1コイル61及び第2コイル62と電気的に接続されており、第1コイル61及び第2コイル62への通電を制御する。すなわち、回路基板36は、第1コイル61及び第2コイル62への通電を制御することにより、込め弁31及び弛め弁32の駆動を制御する。
【0036】
例えば、制御部35は、使用者によるブレーキレバー241の操作によって前輪217が制動されている際に、車輪速センサ(図示省略)の信号から、前輪217のロック又はロックの可能性があると判断すると、アンチロックブレーキ制御を開始する。
【0037】
アンチロックブレーキ制御が開始されると、制御部35は、第1コイル61を通電状態にして、込め弁31を閉止させ、マスタシリンダ242からホイールシリンダ251へのブレーキ液の流動を遮断することで、ホイールシリンダ251のブレーキ液の増圧を抑制する。一方、制御部35は、第2コイル62を通電状態にして、弛め弁32を開放させ、ホイールシリンダ251からアキュムレータ33へのブレーキ液の流動を可能にすることで、ホイールシリンダ251のブレーキ液の減圧を行う。これにより、前輪217のロックが解除又は回避される。制御部35は、圧力センサ103の信号から、ホイールシリンダ251のブレーキ液が所定の値まで減圧されたと判断すると、第2コイル62を非通電状態にして弛め弁32を閉止させ、短時間の間、第1コイル61を非通電状態にして込め弁31を開放させて、ホイールシリンダ251のブレーキ液の増圧を行う。制御部35は、ホイールシリンダ251のブレーキ液の増減圧を1回のみ行ってもよく、また、複数回繰り返してもよい。
【0038】
アンチロックブレーキ制御が終了して、ブレーキレバー241が戻されると、マスタシリンダ242内が大気圧状態となり、ホイールシリンダ251内のブレーキ液が戻される。また、アンチロックブレーキ制御が終了して、ブレーキレバー241が戻された際、弛め弁32を開放状態にする。内部流路13内のブレーキ液の圧力がアキュムレータ33に蓄えられているブレーキ液の圧力よりも低くなると、アキュムレータ33に蓄えられているブレーキ液は、昇圧レス(つまり、ポンプレス)でアキュムレータ33外へ排出される。そして、アキュムレータ33外へ放出されたブレーキ液は、第4流路17、弛め弁32、第3流路16、第2流路15、込め弁31及び第1流路14の順に流れ、マスタシリンダポート11及び液管101を通ってマスタシリンダ242に戻る。すなわち、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、アンチロックブレーキ制御における減圧時にホイールシリンダ251から逃がしたブレーキ液をアキュムレータ33に蓄え、アキュムレータ33内のブレーキ液をポンプレスでアキュムレータ33外へ排出する構成となっている。また、内部流路13は、アキュムレータ33内のブレーキ液を弛め弁32を介さずにマスタシリンダポート11に戻せない構成となっている。
【0039】
<液圧制御ユニットの構成>
実施の形態に係るブレーキシステムの液圧制御ユニットの構成について説明する。
なお、以下では、液圧制御ユニット1が自転車200のフロントフォーク216に保持されている状態において、フロントフォーク216の軸216aの延びる方向が液圧制御ユニット1の上下方向となるように液圧制御ユニット1を観察しながら、液圧制御ユニット1の構成について説明していく。
【0040】
図3は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットを示す平面図である。この
図3には、液圧制御ユニット1と共に、前輪217と、液圧制御ユニット1を保持するフロントフォーク216とを図示している。
図3では、紙面左側が自転車200の前方となる。すなわち、液圧制御ユニット1が搭載された自転車200を正面視した状態とは、
図3の紙面左側から、液圧制御ユニット1、フロントフォーク216及び前輪217を観察した状態となる。
【0041】
図4は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットを示す斜視図である。
図5は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットを示す側面図であり、一部を断面にした図である。なお、
図5は、
図4に示す矢印A方向に液圧制御ユニット1を観察した一部断面側面図となっている。また、
図5では、内部流路13の第2流路15は、断面部分の前方に位置することとなる。このため、
図5では、第2流路15の一部を、想像線である二点鎖線で示している。
図6は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットを示す平面図である。
図7及び
図8は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの基体を示す斜視図であり、内部を透過した図である。詳しくは、
図7は、
図4の矢印B方向に基体10を観察した図となっている。また、
図8は、
図4の矢印C方向に基体10を観察した図となっている。なお、
図7及び
図8では、基体10内の内部流路13を見やすくするため、基体10の前面27に形成されている雌ネジ27aの図示を省略している。
【0042】
以下、
図3~
図8を用いて、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1の構成について説明する。なお、液圧制御ユニット1の構成を説明するに際し、
図4に示す接続方向X、幅方向Y及び軸方向Zを、次のように定義する。接続方向Xは、基体への後述するハウジングの接続方向である。幅方向Yは、接続方向Xと垂直な方向である。幅方向Yは、フロントフォーク216と前輪217とが対向する方向でもあり、液圧制御ユニット1の横幅を示している。軸方向Zは、フロントフォーク216の軸216aと平行な方向である。軸方向Zは、幅方向Yと垂直な方向でもある。より詳しくは、軸方向Zは、接続方向Xと垂直で、且つ幅方向Yと垂直な方向である。なお、基体10の後述する上面25及び下面26は、軸方向Zに並んでいる。このため、軸方向Zは、上面25と下面26とが並ぶ方向ということもできる。
【0043】
液圧制御ユニット1は、基体10と、込め弁31と、弛め弁32と、第1コイル61と、第2コイル62と、回路基板36と、ハウジング40と、を備えている。
【0044】
基体10は、例えば、アルミニウム合金を素材とする、略直方体の部材である。なお、基体10の各面は、平坦であってもよく、湾曲部を含んでいてもよく、また、段差を含んでいてもよい。基体10には、上述のように、マスタシリンダポート11と、ホイールシリンダポート12と、マスタシリンダポート11とホイールシリンダポート12とを連通させる内部流路13と、が形成されている。また、基体10には、込め弁31が設けられた込め弁用凹部18と、弛め弁32が設けられた弛め弁用凹部19と、が形成されている。
【0045】
図7及び
図8に示すように、マスタシリンダポート11は、基体10の上面25に形成されている。込め弁用凹部18は、基体10の後面28に開口して形成されている。込め弁用凹部18は、第1凹部18a及び第2凹部18bを備えている。第1凹部18aは、基体10の後面28に開口した、略円筒形状の凹部である。第2凹部18bは、第1凹部18aよりも基体10の前面27側に配置されている。第2凹部18bは、第1凹部18aよりも小径な略円筒形状をしており、第1凹部18aの底部に連通している。また、マスタシリンダポート11と込め弁用凹部18の第2凹部18bとは、内部流路13の第1流路14で接続されている。
【0046】
込め弁用凹部18の第1凹部18aには、内部流路13の第2流路15が接続されている。第1凹部18aと第2流路15とが直接接続されていてもよいが、本実施の形態では、第1凹部18aと第2流路15とは込め弁用切り欠き23を介して接続されている。込め弁用切り欠き23は、第1凹部18aの内周面に、外側に凹むように形成されている。また、込め弁用切り欠き23の上端部23aは、第1凹部18aの内周面の上端部18cよりも下側に位置している。
【0047】
弛め弁用凹部19は、基体10の後面28に開口して形成されている。弛め弁用凹部19と込め弁用凹部18とは、軸方向Zにおいて並んでいる。弛め弁用凹部19は、第1凹部19a及び第2凹部19bを備えている。第1凹部19aは、基体10の後面28に開口した、略円筒形状の凹部である。第2凹部19bは、第1凹部19aよりも基体10の前面27側に配置されている。第2凹部19bは、第1凹部19aよりも小径な略円筒形状をしており、第1凹部19aの底部に連通している。
【0048】
弛め弁用凹部19の第1凹部19aと込め弁用凹部18の第1凹部18aとは、内部流路13の第2流路15で接続されている。すなわち、弛め弁用凹部19の第1凹部19aと内部流路13の第2流路15との接続箇所が、
図2に示す第3流路16として機能する。第2流路15のうち、込め弁用凹部18と弛め弁用凹部19とを接続する部分は、直線状に延びる流路となっている。また、第2流路15は、基体10の下面26(上面25と対向する面)に形成されたホイールシリンダポート12と接続されている。すなわち、マスタシリンダポート11とホイールシリンダポート12とは、上面25及び下面26に分かれて形成されている。換言すると、マスタシリンダポート11とホイールシリンダポート12とは、軸方向Zにおいて対向する一対の側面に分かれて形成されている。第2流路15のうち、込め弁用凹部18と弛め弁用凹部19とホイールシリンダポート12とを接続する部分もまた、直線状に延びる流路となっている。なお、弛め弁用凹部19の第1凹部19aと第2流路15とが直接接続されていてもよいが、本実施の形態では、第1凹部19aと第2流路15とは弛め弁用切り欠き24を介して接続されている。弛め弁用切り欠き24は、第1凹部19aの内周面に、外側に凹むように形成されている。また、弛め弁用切り欠き24の上端部24aは、第1凹部19aの内周面の上端部19cよりも下側に位置している。
【0049】
また、本実施の形態に係る基体10には、圧力センサ103が設けられた圧力センサ用凹部22が形成されている。圧力センサ用凹部22は、基体10の後面28に開口して形成されている。込め弁用凹部18と弛め弁用凹部19と圧力センサ用凹部22とは、軸方向Zにおいて並んでいる。圧力センサ用凹部22は、内部流路13の第2流路15における弛め弁用凹部19とホイールシリンダポート12とを接続する部分に連通している。すなわち、圧力センサ103は、内部流路13の第2流路15における弛め弁用凹部19とホイールシリンダポート12とを接続する部分に連通している。
【0050】
また、基体10の下面26には、アキュムレータ33が形成されている。アキュムレータ33は、内部流路13の第4流路17によって、弛め弁用凹部19の第2凹部19bと接続されている。
【0051】
図5に示すように、込め弁用凹部18の第1凹部18aには、第1凹部18aの軸方向となる接続方向Xに摺動自在に、込め弁31が設けられている。込め弁31の一部は、基体10の後面28から後方に突出している。また、基体10の後面28には、第1コイル61が立設されている。第1コイル61は、込め弁31における基体10の後面28から後方に突出している箇所を囲うように、設けられている。すなわち、第1コイル61の軸61aは、第1凹部18a及び込め弁31の軸と同様に、接続方向Xに延びている。また、第1コイル61の頂面61bには、端子63が設けられている。この端子63を介して、第1コイル61は、該第1コイル61の後方に配置された回路基板36と電気的に接続されている。なお、本実施の形態では、折り曲げ形成された端子63を用いている。このように端子63を形成することにより、端子63の位置と、回路基板36における端子63の挿入穴との位置がずれている場合でも、端子63が変形することによって両者の位置ずれを吸収することができ、端子63を回路基板36に電気的に接続することが容易となる。
【0052】
回路基板36から第1コイル61への通電を制御することにより、込め弁31は、込め弁用凹部18の第1凹部18a内を接続方向Xに摺動する。これにより、込め弁31は、込め弁用凹部18の第1凹部18aと第2凹部18bとの間の流路を開閉する。これにより、第1凹部18aと第2凹部18bとの間の流路が開かれた際、
図7に示すように、第1流路14及び第2流路15を介して、マスタシリンダ242からホイールシリンダ251へのブレーキ液の流動が可能となる。また、第1凹部18aと第2凹部18bとの間の流路が閉じられた際、
図7に示すように、マスタシリンダ242からホイールシリンダ251へのブレーキ液の流動が遮断される。
【0053】
また、
図5に示すように、弛め弁用凹部19の第1凹部19aには、第1凹部19aの軸方向となる接続方向Xに摺動自在に、弛め弁32が設けられている。弛め弁32の一部は、基体10の後面28から後方に突出している。また、基体10の後面28には、第2コイル62が立設されている。第2コイル62は、弛め弁32における基体10の後面28から後方に突出している箇所を囲うように、設けられている。すなわち、第2コイル62の軸62aは、第1凹部19a及び弛め弁32の軸と同様に、接続方向Xに延びている。また、第2コイル62の頂面62bには、端子64が設けられている。この端子64を介して、第2コイル62は、該第2コイル62の後方に配置された回路基板36と電気的に接続されている。なお、本実施の形態では、折り曲げ形成された端子64を用いている。このように端子64を形成することにより、端子64の位置と、回路基板36における端子64の挿入穴との位置がずれている場合でも、端子64が変形することによって両者の位置ずれを吸収することができ、端子64を回路基板36に電気的に接続することが容易となる。
【0054】
回路基板36から第2コイル62への通電を制御することにより、弛め弁32は、弛め弁用凹部19の第1凹部19a内を接続方向Xに摺動する。これにより、弛め弁32は、弛め弁用凹部19の第1凹部19aと第2凹部19bとの間の流路を開閉する。これにより、第1凹部19aと第2凹部19bとの間の流路が開かれた際、
図7に示すように、第2流路15及び第4流路17を介して、ホイールシリンダ251からアキュムレータ33へのブレーキ液の流動が可能となる。
【0055】
ここで、上述のように、込め弁用凹部18と弛め弁用凹部19とは、軸方向Zにおいて並んでいる。このため、込め弁用凹部18に設けられた込め弁31の一部を囲うように設けられた第1コイル61と、弛め弁用凹部19に設けられた弛め弁32の一部を囲うように設けられた第2コイル62とは、軸方向Zにおいて並んでいることとなる。また、上述のように、込め弁用凹部18と弛め弁用凹部19と圧力センサ用凹部22とは、軸方向Zにおいて並んでいる。このため、第1コイル61と、第2コイル62と、圧力センサ用凹部22に設けられた圧力センサ103とは、軸方向Zにおいて並んでいることとなる。
【0056】
図5に示すように、ハウジング40は、込め弁31、弛め弁32、第1コイル61、第2コイル62及び回路基板36が収納されているものである。ハウジング40は、例えば略直方体の、箱形形状をしている。なお、ハウジング40の各面は、平坦であってもよく、湾曲部を含んでいてもよく、また、段差を含んでいてもよい。本実施の形態では、ハウジング40は、樹脂で形成されている。また、ハウジング40の前面43は、基体10の後面28に接続されている。すなわち、上述した第1コイル61及び第2コイル62は、基体10におけるハウジング40が接続される面に立設されている。
【0057】
図4及び
図6等に示すように、ハウジング40の幅方向Yの寸法は、基体10の幅方向Yの寸法よりも大きくなっている。ここで、ハウジング40は、幅方向Yにおいて対向する一対の側面を備えている。以下、これらの側面のうちの一方を第1側面45とし、これらの側面のうちの他方を第2側面46とする。このように第1側面45及び第2側面46を定義した場合、液圧制御ユニット1を接続方向Xから視た状態において、基体10の幅方向Yの中心がハウジング40の幅方向Yの中心よりも第1側面45側に位置している。
【0058】
液圧制御ユニット1をこのように構成することにより、基体10に対するハウジング40の幅方向Yの突出量は、第2側面46側と比べ、第1側面45側の方が小さくなる。このため、
図3からわかるように、ハウジング40の第1側面45を前輪217と対向させて液圧制御ユニット1をフロントフォーク216に保持させることにより、基体10の少なくとも一部をフロントフォーク216と前輪217との間に配置させやすくなる。
【0059】
なお、本実施の形態では、第2側面46は、基体10に近づくにしたがって幅方向Yの寸法が小さくなる傾斜部47を含んでいる。しかしながら、第2側面46の形状は、このような形状に限定されない。
【0060】
図9は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットの別の一例を示す平面図である。
図9に示すように、第2側面46は、例えば階段状に形成されていてもよい。このように第2側面46を形成しても、ハウジング40の第1側面45を前輪217と対向させて液圧制御ユニット1をフロントフォーク216に保持させることにより、基体10の少なくとも一部をフロントフォーク216と前輪217との間に配置させやすくなる。ただし、第2側面46が傾斜部47を含むことにより、第2側面46とフロントフォーク216との間の隙間を小さくすることができ、ハウジング40の収納容量を増大させることができる。
【0061】
図4~
図6に示すように、本実施の形態に係るハウジング40は、本体部51及び蓋部58を備えている。本体部51は、前面が基体10の後面28に接続されている。また、本体部51には、基体10と接続されている面と対向する面に、すなわち当該本体部51の後面に開口部52が形成されている。蓋部58は、本体部51の開口部52を覆う部材である。すなわち、蓋部58は、ハウジング40の後面44を構成している。
【0062】
また、本実施の形態に係る本体部51においては、開口部52の周縁の一部である第1側面45側の辺53と、開口部52の周縁における辺53と対向する他部である辺54とは、接続方向Xにおいて、
図6に示す位置関係となっている。具体的には、接続方向Xにおいて、辺53は、回路基板36に対して基体10に近い側に位置している。また、辺54は、辺53に対して基体10から遠い側に位置している。辺53及び辺54をこのような位置に配置しているのは、次の理由からである。
【0063】
図10は、本発明の実施の形態に係る液圧制御ユニットにおける回路基板の組み付け方法を説明するための図である。
込め弁31、弛め弁32、第1コイル61、第2コイル62、及びハウジング40の本体部51が基体10に接続された組立体を用意し、基体10の前面27が下面となる姿勢に組立体を保持した状態で、組立体に回路基板36が組み付けられる。この際、組立体に回路基板36を組み付けるときに、回路基板36の下方に、ジグ75を配置する場合がある。例えば、本実施の形態の場合、上述のように、折り曲げ形成された端子63及び端子64を用いている。このような場合、端子63及び端子64を回路基板36の挿入穴へ挿入する際、端子63及び端子64に過負荷がかからないように、回路基板36の下方に、端子63及び端子64を支持するジグ75を配置する。
【0064】
回路基板36の下方にジグ75を配置させるには、本体部51の開口部52の周縁におけるジグ75と対向する箇所を、
図10においてジグ75の下方となる位置に配置する必要がある。この際、本体部51の開口部52の周縁全体を接続方向Xにおいて基体10から等距離に配置した場合、接続方向Xに対する傾斜部47の傾斜角度が大きくなる。換言すると、
図3において、傾斜部47がフロントフォーク216に近づくこととなる。また、ハウジング40の第2側面46が
図9のように構成されている場合、ハウジング40における基体10から第2側面46側に突出した部分は、
図10に示す位置と比べ、基体10に近づくこととなる。
図3に示すように、液圧制御ユニット1が搭載された自転車200を正面視した際、ハウジング40における基体10から第2側面46側に突出した部分は、フロントフォーク216の後方に配置されることとなる。このため、本体部51の開口部52の周縁全体を接続方向Xにおいて基体10から等距離に配置した場合、ハウジング40における基体10から第2側面46側に突出した部分をフロントフォーク216の後方に配置するには、液圧制御ユニット1の接続方向Xの長さを、
図4及び
図9で示す状態よりも長くしなければならない。すなわち、本体部51の開口部52の周縁全体を接続方向Xにおいて基体10から等距離に配置した場合、液圧制御ユニット1は、
図4及び
図9で示す状態よりも大型化することとなる。
【0065】
一方、辺53及び辺54を本実施の形態のように配置することにより、回路基板36の下方にジグ75を配置させることができ、且つ、本体部51の開口部52の周縁全体を接続方向Xにおいて基体10から等距離に配置した場合と比べ、接続方向Xに対する傾斜部47の傾斜角度が大きくなることを抑制できる。また、ハウジング40の第2側面46が
図9のように構成されている場合、辺53及び辺54を本実施の形態のように配置することにより、回路基板36の下方にジグ75を配置させることができ、且つ、本体部51の開口部52の周縁全体を接続方向Xにおいて基体10から等距離に配置した場合と比べ、ハウジング40における基体10から第2側面46側に突出した部分が基体10に近づくことを抑制できる。すなわち、辺53及び辺54を本実施の形態のように配置することにより、回路基板36の下方にジグ75を配置させることができ、且つ、本体部51の開口部52の周縁全体を接続方向Xにおいて基体10から等距離に配置した場合と比べ、液圧制御ユニット1を小型化することができる。
【0066】
なお、本実施の形態では、本体部51の開口部52の周縁のうち、辺53と辺54とを接続する辺55は、直線形状となっている。すなわち、辺53は、辺54に連続的に接続されている。しかしながら、辺55は、直線形状に限定されるものではなく、例えば階段形状となっていてもよい。ただし、辺53を辺54に連続的に接続することにより、本体部51の開口部52の周縁と蓋部58との間に隙間が形成されることを抑制できる。このため、辺53を辺54に連続的に接続することにより、本体部51の開口部52の周縁と蓋部58との間の気密性を向上させることができる。
【0067】
液圧制御ユニット1は、ハウジング40に、回路基板36と電気的に接続されたコネクタ48を備えている。コネクタ48には、圧力センサ103、前輪217の回転速度を検出するための車輪速センサ(図示省略)等の各種センサの信号線(図示省略)、電源ユニット270から延びる電源線(図示省略)等のケーブルが接続される。ここで、
図3~
図6に示すように、本実施の形態では、コネクタ48は、ハウジング40の上面41及び下面42のうちの少なくとも一方に設けられている。換言すると、コネクタ48は、ハウジング40における、軸方向Zにおいて対向する一対の側面のうちの少なくとも一方に配置されている。本実施の形態では、コネクタ48がハウジング40の上面41及び下面42の双方に設けられている例を示している。
【0068】
本実施の形態では、液圧制御ユニット1は、
図3に示すように、フロントフォーク216に保持されて、自転車200に搭載されている。具体的には、
図4に示すように、基体10の前面27には、雌ネジ27aが形成されている。一方、
図3に示すように、フロントフォーク216は、前輪217に向かって突出するブラケット70を備えている。ブラケット70の図示せぬ貫通穴に挿入されたボルト71を液圧制御ユニット1の雌ネジ27aにねじ込むことにより、液圧制御ユニット1はフロントフォーク216に保持されている。なお、液圧制御ユニット1がフロントフォーク216に保持される構成は、
図3に示す構成に限定されない。例えば固定ベルトのような、フロントフォーク216とは別体の保持部材を用いて、液圧制御ユニット1がフロントフォーク216に保持されていてもよい。
【0069】
ここで、
図3~
図6からわかるように、液圧制御ユニット1が搭載された自転車200を正面視した状態において、回路基板36は、フロントフォーク216及び基体10の後方に位置している。また、第1コイル61及び第2コイル62は、基体10の後面28に立設されている。換言すると、液圧制御ユニット1が搭載された自転車200をフロントフォーク216の軸216a方向に観察した状態において、回路基板36は、フロントフォーク216及び基体10の後方に位置している。また、第1コイル61及び第2コイル62は、基体10の後面28に立設されている。
【0070】
また、
図3に示すように、液圧制御ユニット1が自転車200に搭載された状態では、基体10の少なくとも一部は、フロントフォーク216と前輪217との間に位置している。本実施の形態では、基体10の全部が、フロントフォーク216と前輪217との間に位置している。
【0071】
また、
図3に示すように、本実施の形態では、液圧制御ユニット1が搭載された自転車200を正面視した状態において、基体10は、フロントフォーク216の前方に位置する領域を有しない。換言すると、液圧制御ユニット1が搭載された自転車200をフロントフォーク216の軸216a方向に観察した状態において、基体10は、フロントフォーク216の前方に位置する領域を有しない。
【0072】
また、
図3に示すように、本実施の形態では、液圧制御ユニット1が搭載された自転車200を正面視した状態において、基体10は、フロントフォーク216に対して、前輪217と反対側に位置する領域を有しない。換言すると、液圧制御ユニット1が搭載された自転車200をフロントフォーク216の軸216a方向に観察した状態において、基体10は、フロントフォーク216に対して、前輪217と反対側に位置する領域を有しない。さらに換言すると、液圧制御ユニット1が搭載された自転車200を正面視した状態において、基体10は、フロントフォーク216よりも外側に配置される領域を有しない。
【0073】
また、
図3に示すように、本実施の形態では、液圧制御ユニット1が搭載された自転車200を正面視した状態において、第1コイル61の軸61a及び第2コイル62の軸62aは、フロントフォーク216の軸216aに対して前輪217に近い側に位置している。換言すると、液圧制御ユニット1が搭載された自転車200をフロントフォーク216の軸216a方向に観察した状態において、第1コイル61の軸61a及び第2コイル62の軸62aは、フロントフォーク216の軸216aに対して前輪217に近い側に位置している。
【0074】
また、
図3に示すように、本実施の形態では、液圧制御ユニット1が搭載された自転車200を正面視した状態において、基体10は、ハウジング40に対して前輪217と反対側に位置する領域を有しない。換言すると、液圧制御ユニット1が搭載された自転車200をフロントフォーク216の軸216a方向に観察した状態において、基体10は、ハウジング40に対して前輪217と反対側に位置する領域を有しない。すなわち、液圧制御ユニット1が搭載された自転車200を正面視した状態において、基体10は、ハウジング40からフロントフォーク216側に突出する箇所を有しない。
【0075】
<液圧制御ユニットの効果>
実施の形態に係る液圧制御ユニットの効果について説明する。
【0076】
本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、自転車200に搭載され、且つ、アンチロックブレーキ制御を実行可能なブレーキシステム100の液圧制御ユニット1である。液圧制御ユニット1は、アンチロックブレーキ制御における減圧時にホイールシリンダ251から逃がしたブレーキ液をアキュムレータ33に蓄え、アキュムレータ33内のブレーキ液をポンプレスでアキュムレータ33外へ排出する構成となっている。液圧制御ユニット1は、基体10を備えている。基体10には、マスタシリンダ242に連通する液管101が接続されるマスタシリンダポート11と、ホイールシリンダ251に連通する液管102が接続されるホイールシリンダポート12と、マスタシリンダポート11とホイールシリンダポート12とを連通させる内部流路13とが形成されている。また、液圧制御ユニット1は、基体10に形成された込め弁用凹部18設けられ、アンチロックブレーキ制御時に内部流路13を開閉する込め弁31と、基体10に形成された弛め弁用凹部19に設けられ、アンチロックブレーキ制御時に内部流路13を開閉する弛め弁32と、を備えている。マスタシリンダポート11は、基体10の上面25に形成されている。ホイールシリンダポート12は、基体10における上面25と対向する下面26に形成されている。内部流路13は、アキュムレータ33内のブレーキ液を弛め弁32を介さずにマスタシリンダポート11に戻せない構成となっている。そして、込め弁用凹部18及び弛め弁用凹部19は、上面25と下面26とが並ぶ方向である軸方向Zにおいて並んでいる。ここで、上面25が本発明の第1面に相当し、下面26が本発明の第2面に相当する。
【0077】
本実施の形態に係る液圧制御ユニット1においては、上面25と下面26とが並ぶ方向と垂直な方向である幅方向Yの寸法が小さくなるように、基体10を形成することができる。したがって、基体10の少なくとも一部をフロントフォーク216と前輪217との間に配置することができる。このため、液圧制御ユニット1のうち、基体10におけるフロントフォーク216と前輪217との間に配置される箇所からフロントフォーク216側へ突出する部分の少なくとも一部を、自転車200を正面視した状態においてフロントフォーク216の後方となる位置に配置させることができる。したがって、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、当該液圧制御ユニット1が搭載された自転車200を正面視した際、フロントフォーク216の外側に配置される領域を従来よりも小さくでき、外力を受けることを従来よりも抑制できる。また、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1は、該液圧制御ユニット1が搭載された自転車200を正面視した際、フロントフォーク216の外側に配置される領域を従来よりも小さくできるので、自転車200の美観を向上させることもできる。
【0078】
好ましくは、内部流路13のうち、込め弁用凹部18と弛め弁用凹部19とを接続する部分は、直線状に延びる流路となっている。このような構成にすることにより、内部流路13のうちの込め弁用凹部18と弛め弁用凹部19とを接続する部分を流れるブレーキ液の圧力損失を抑制できる。このため、液圧制御ユニット1を備えたブレーキシステム100の性能を向上させることができる。また、この様な構成にすることにより、内部流路13のうちの込め弁用凹部18と弛め弁用凹部19とを接続する部分の加工形状が簡単になるため、液圧制御ユニット1の価格を低減することもできる。この際、好ましくは、内部流路13のうち、込め弁用凹部18と弛め弁用凹部19とホイールシリンダポート12を接続する部分は、直線状に延びる流路となっている。このように構成することにより、液圧制御ユニット1を備えたブレーキシステム100の性能をさらに向上させることができ、液圧制御ユニット1の価格をさらに低減することができる。
【0079】
好ましくは、液圧制御ユニット1は、基体10に形成された圧力センサ用凹部22に設けられ、ホイールシリンダ251のブレーキ液の圧力を検出する圧力センサ103を備えている。そして、込め弁用凹部18、弛め弁用凹部19及び圧力センサ用凹部22は、軸方向Zにおいて並んでいる。このような構成にすることにより、液圧制御ユニット1が圧力センサ103を備えている場合でも基体10の幅方向Yの寸法を小さく形成しやすくなる。このため、液圧制御ユニット1が圧力センサ103を備えている場合でも、液圧制御ユニット1は、該液圧制御ユニット1が搭載された自転車200を正面視した際、フロントフォーク216の外側に配置される領域を従来よりも小さくでき、外力を受けることを従来よりも抑制できる。
【0080】
好ましくは、込め弁用凹部18の内周面に、外側に凹む込め弁用切り欠き23が形成されている。そして、内部流路13のうちの込め弁用凹部18と弛め弁用凹部19とを接続する部分は、込め弁用切り欠き23に接続されている。
図7に示すように、本実施の形態では、内部流路13のうちの第2流路15が、込め弁用切り欠き23に接続されている。例えば、圧力センサ用凹部22又はアキュムレータ33の配置位置等によっては、第2流路15を込め弁用凹部18に直接接続できない場合がある。このような場合、第2流路15と込め弁用凹部18とを接続するためには、例えば、基体10の側面から、第2流路15と込め弁用凹部18とを接続する流路となる穴を形成する必要がある。このような場合、第2流路15と込め弁用凹部18とを接続する流路となる穴を形成する工程に加え、基体10の側面に形成された当該穴の開口部を封止する封止工程が必要となる。また例えば、第2流路15を込め弁用凹部18に直接接続できない場合、第2流路15と弛め弁用凹部19とを接続し、基体10の上面25から、込め弁用凹部18と弛め弁用凹部19とを接続する流路となる穴を形成する必要がある。このような場合も、込め弁用凹部18と弛め弁用凹部19とを接続する流路となる穴を形成する工程に加え、基体10の上面25に形成された当該穴の開口部を封止する封止工程が必要となる。また、基体10の上面25から込め弁用凹部18と弛め弁用凹部19とを接続する流路となる穴を形成する場合、込め弁用凹部18の上方に、空間が形成されることとなる。このため、液圧制御ユニット1をブレーキシステム100に組み込んで、ブレーキシステム100のブレーキ液の流路にブレーキ液を充填させた際、込め弁用凹部18の上方の空間に空気が残り、ブレーキシステム100のブレーキ液の流路内に空気が入り込んでしまう。一方、第2流路15を込め弁用切り欠き23に接続する構成にすることにより、第2流路15を込め弁用凹部18に直接接続できない場合でも、上述の封止工程を削減しつつ、第2流路15と込め弁用凹部18とを接続することができる。すなわち、第2流路15を込め弁用切り欠き23に接続する構成にすることにより、第2流路15を込め弁用凹部18に直接接続できない場合でも、基体10の加工工程の増加を抑制しつつ、第2流路15と込め弁用凹部18とを接続することができる。
【0081】
好ましくは、込め弁用切り欠き23の上端部23aは、込め弁用凹部18の内周面の上端部18cよりも下側に位置する。このような構成にすることにより、液圧制御ユニット1をブレーキシステム100に組み込んで、ブレーキシステム100のブレーキ液の流路にブレーキ液を充填させた際、込め弁用切り欠き23に空気が残ることを抑制でき、ブレーキシステム100のブレーキ液の流路内に空気が入り込んでしまうことを抑制できる。
【0082】
好ましくは、弛め弁用凹部19の内周面に、外側に凹む弛め弁用切り欠き24が形成されている。そして、内部流路13のうちの込め弁用凹部18と弛め弁用凹部19とを接続する部分は、弛め弁用切り欠き24に接続されている。
図7に示すように、本実施の形態では、内部流路13のうちの第2流路15が、弛め弁用切り欠き24に接続されている。例えば、圧力センサ用凹部22又はアキュムレータ33の配置位置等によっては、第2流路15を弛め弁用凹部19に直接接続できない場合がある。このような場合、第2流路15と弛め弁用凹部19とを接続するためには、例えば、基体10の側面から、第2流路15と弛め弁用凹部19とを接続する流路となる穴を形成する必要がある。このような場合、第2流路15と弛め弁用凹部19とを接続する流路となる穴を形成する工程に加え、基体10の側面に形成された当該穴の開口部を封止する封止工程が必要となる。一方、第2流路15を弛め弁用切り欠き24に接続する構成にすることにより、第2流路15を弛め弁用凹部19に直接接続できない場合でも、上述の封止工程を削減しつつ、第2流路15と込め弛め弁用凹部19とを接続することができる。すなわち、第2流路15を弛め弁用切り欠き24に接続する構成にすることにより、第2流路15を弛め弁用凹部19に直接接続できない場合でも、基体10の加工工程の増加を抑制しつつ、第2流路15と弛め弁用凹部19とを接続することができる。
【0083】
好ましくは、弛め弁用切り欠き24の上端部24aは、弛め弁用凹部19の内周面の上端部19cよりも下側に位置する。このような構成にすることにより、液圧制御ユニット1をブレーキシステム100に組み込んで、ブレーキシステム100のブレーキ液の流路にブレーキ液を充填させた際、弛め弁用切り欠き24に空気が残ることを抑制でき、ブレーキシステム100のブレーキ液の流路内に空気が入り込んでしまうことを抑制できる。
【0084】
好ましくは、込め弁31及び弛め弁32が、一対のみ設けられている。込め弁及び弛め弁が一対のみ設けられる一系統のブレーキシステムの液圧制御ユニットは、小型化して、鞍乗型車両の目立たない位置に搭載されることが望まれる。このため、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1を一系統のブレーキシステムの液圧ユニットとして用いることは好適である。
【0085】
本実施の形態に係る自転車200は、本実施の形態に係る液圧制御ユニット1と、一対のフロントフォーク216と、一対のフロントフォーク216の間に回転自在に保持されている前輪217と、を備え、基体10の少なくとも一部がフロントフォーク216と前輪217との間に配置されている。このように自転車200を構成することにより、当該自転車200を正面視した際、液圧制御ユニット1がフロントフォーク216の外側に配置される液圧制御ユニット1の部分を従来よりも小さくでき、液圧制御ユニット1が外力を受けることを従来よりも抑制できる。また、このように自転車200を構成することにより、該液圧制御ユニット1が搭載された自転車200を正面視した際、フロントフォーク216の外側に配置される液圧制御ユニット1の部分を従来よりも小さくできるので、自転車200の美観を向上させることもできる。
【0086】
以上、実施の形態について説明したが、本発明は実施の形態の説明に限定されない。例えば、実施の形態の説明の一部のみが実施されていてもよい。また例えば、本発明に係る液圧制御ユニットが保持される箇所は、フロントフォークに限定されない。本発明に係る液圧制御ユニットを鞍乗型車両のフロントフォーク以外のフレーム等に保持させても勿論よい。上述のように、本発明に係る液圧制御ユニットは、従来用いられなかったスペースに、本発明に係る液圧制御ユニットの少なくとも一部を配置することができる。このため、本発明に係る液圧制御ユニットを鞍乗型車両のフロントフォーク以外のフレーム等に保持させても、本発明に係る液圧制御ユニットが外力を受けることを従来よりも抑制でき、鞍乗型車両の美観を向上させることができる。
【符号の説明】
【0087】
1 液圧制御ユニット、10 基体、11 マスタシリンダポート、12 ホイールシリンダポート、13 内部流路、14 第1流路、15 第2流路、16 第3流路、17 第4流路、18 込め弁用凹部、18a 第1凹部、18b 第2凹部、18c 上端部、19 弛め弁用凹部、19a 第1凹部、19b 第2凹部、19c 上端部、22 圧力センサ用凹部、23 込め弁用切り欠き、23a 上端部、24 弛め弁用切り欠き、24a 上端部、25 上面、26 下面、27 前面、27a 雌ネジ、28 後面、31 込め弁、32 弛め弁、33 アキュムレータ、35 制御部、36 回路基板、40 ハウジング、41 上面、42 下面、43 前面、44 後面、45 第1側面、46 第2側面、47 傾斜部、48 コネクタ、51 本体部、52 開口部、53 辺、54 辺、55 辺、58 蓋部、61 第1コイル、61a 軸、61b 頂面、62 第2コイル、62a 軸、62b 頂面、63 端子、64 端子、70 ブラケット、71 ボルト、75 ジグ、100 ブレーキシステム、101 液管、102 液管、103 圧力センサ、200 自転車、210 フレーム、211 ヘッドチューブ、212 トップチューブ、213 ダウンチューブ、214 シートチューブ、215 ステー、216 フロントフォーク、216a 軸、217 前輪、218 サドル、219 ペダル、220 後輪、230 旋回部、231 ステアリングコラム、232 ハンドルステム、233 ハンドルバー、240 制動操作部、241 ブレーキレバー、242 マスタシリンダ、243 リザーバ、250 前輪制動部、251 ホイールシリンダ、252 ロータ、260 後輪制動部、270 電源ユニット。