(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】シャント音解析装置、シャント音解析方法、コンピュータプログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
A61M1/36 143
A61M1/36 ZDM
(21)【出願番号】P 2022047006
(22)【出願日】2022-03-23
(62)【分割の表示】P 2020147333の分割
【原出願日】2015-03-05
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】317007266
【氏名又は名称】エア・ウォーター・バイオデザイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】中島 太郎
(72)【発明者】
【氏名】莪山 真一
(72)【発明者】
【氏名】曽我 祐介
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-115547(JP,A)
【文献】特開2009-254678(JP,A)
【文献】特開2014-008263(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0249293(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者のシャント形成部位周辺から、シャント音に関するシャント音情報を取得する取得手段と、
前記シャント音情報から前記シャント音の一周期に相当する一周期音量情報を抽出する抽出手段と、
前記
一周期音量情報に基づいて
導出された前記一周期の、(i)音量変化量、(ii)最小音量、(iii)音量減衰率、(iv)音量変化の歪、及び(v)周波数重心の変化量の何れかに基づいて生成された前記シャント形成部位の狭窄可能性を示す情報を出力する出力手段と
を備えることを特徴とするシャント音解析装置。
【請求項2】
前記音量変化量は、前記一周期音量情報における前記シャント音の音量の最大値及び最小値の差分を示す情報であり、
前記出力手段は、前記音量変化量と正常時におけるシャント音の最大値及び最小値の差分とを対比して、前記狭窄可能性を数値化する第1数値化手段を有することを特徴とする請求項1に記載のシャント音解析装置。
【請求項3】
前記出力手段は、前記一周期音量情報における前記シャント音の音量の最小値と、正常時におけるシャント音の最小値とを対比して、前記狭窄可能性を数値化する第2数値化手段を有することを特徴とする請求項1に記載のシャント音解析装置。
【請求項4】
前記音量減衰率は、前記一周期音量情報における前記シャント音の音量の最大値から最小値に至る傾きを示す情報であり、
前記出力手段は、前記音量減衰率に基づいて、前記狭窄可能性を数値化する第3数値化手段を有することを特徴とする請求項1に記載のシャント音解析装置。
【請求項5】
前記音量変化の歪は、前記一周期音量情報における前記シャント音の音量の極大値及び極小値の差分を示す情報であり、
前記出力手段は、前記音量変化の歪と、正常時におけるシャント音の極大値及び極小値の差分とを対比して、前記狭窄可能性を数値化する第4数値化手段を有することを特徴とする請求項1に記載のシャント音解析装置。
【請求項6】
前記一周期音量情報に基づいて、周波数ごとの時間経過に伴う前記シャント音の音量を示す分布情報を導出する分布情報導出手段を更に備え、
前記周波数重心の変化量は、前記分布情報が示す時間経過に伴う周波数重心の変化量を示す情報であり、
前記出力手段は、前記周波数重心の変化量と、正常時における時間経過に伴う周波数重心の変化量とを対比して、前記狭窄可能性を数値化する第5数値化手段を有することを特徴とする請求項1に記載のシャント音解析装置。
【請求項7】
前記出力手段は、
前記一周期の、(i)音量変化量、(ii)最小音量、(iii)音量減衰率、(iv)音量変化の歪、及び(v)周波数重心の変化量の少なくとも2種類を導出し、
前記導出された少なくとも2種類を統合的に判定して、前記狭窄可能性を示す情報を出力する
ことを特徴とする請求項1に記載のシャント音解析装置。
【請求項8】
被測定者のシャント形成部位周辺から、シャント音に関するシャント音情報を取得する取得工程と、
前記シャント音情報から前記シャント音の一周期に相当する一周期音量情報を抽出する抽出工程と、
前記一周期音量情報に基づいて導出された、前記一周期の、(i)音量変化量、(ii)最小音量、(iii)音量減衰率、(iv)音量変化の歪、及び(v)周波数重心の変化量の何れかに基づいて生成された前記シャント形成部位の狭窄可能性を示す情報を出力する出力工程と
を備えることを特徴とするシャント音解析方法。
【請求項9】
被測定者のシャント形成部位周辺から、シャント音に関するシャント音情報を取得する取得工程と、
前記シャント音情報から前記シャント音の一周期に相当する一周期音量情報を抽出する抽出工程と、
前記一周期音量情報に基づいて導出された、前記一周期の、(i)音量変化量、(ii)最小音量、(iii)音量減衰率、(iv)音量変化の歪、及び(v)周波数重心の変化量の何れかに基づいて生成された前記シャント形成部位の狭窄可能性を示す情報を出力する出力工程と
をコンピュータに実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のコンピュータプログラムが記録されていることを特徴とする記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定者から取得したシャント音を解析するシャント音解析装置、シャント音解析方法、コンピュータプログラム及び記録媒体の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、被測定者から取得したシャント音を解析して、シャント狭窄等に関する医師の診断を支援する装置が知られている。例えば特許文献1では、アレイ状採音センサを被測定者の腕に固定して複数箇所からシャント音を取得し、取得したサンプルデータと、予め用意した多種多様なシャント狭窄音を含む指標サンプルとについて、STMEM法等による解析を行うシャント音解析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されているようなシャント音解析装置では、解析を行うに際し、予め膨大な量の指標サンプルを用意することが要求されてしまうだけでなく、被測定者固有の情報等が考慮されないために、正確な解析結果が得られないおそれがあるという技術的問題点が生ずる。また、解析処理も複雑であり、処理負荷が極めて大きくなってしまうという技術的問題点も生ずる。
【0005】
本発明が解決しようとする課題には上記のようなものが一例として挙げられる。本発明は、被測定者から取得したシャント音を解析して、シャント狭窄診断を好適に支援することが可能なシャント音解析装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのシャント音解析装置は、被測定者のシャント形成部位周辺から、シャント音に関するシャント音情報を取得する取得手段と、前記取得部が取得した前記シャント音情報に基づいて、前記シャント音の聴感上の断続度合いを示す情報を出力する出力手段とを備える。
【0007】
上記課題を解決するためのシャント音解析方法は、被測定者のシャント形成部位周辺から、シャント音に関するシャント音情報を取得する取得工程と、前記取得工程で取得した前記シャント音情報に基づいて、前記シャント音の聴感上の断続度合いを示す情報を出力する出力工程とを備える。
【0008】
上記課題を解決するためのコンピュータプログラムは、被測定者のシャント形成部位周辺から、シャント音に関するシャント音情報を取得する取得工程と、前記取得工程で取得した前記シャント音情報に基づいて、前記シャント音の聴感上の断続度合いを示す情報を出力する出力工程とをコンピュータに実行させる。
【0009】
上記課題を解決するための記録媒体は、上述したコンピュータプログラムが記録されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例に係るシャント音解析装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】時間周波数波形の一例を示すスペクトログラム(その1)である。
【
図4】時間周波数波形の一例を示すスペクトログラム(その2)である。
【
図5】周波数重心解析波形の一例を示すグラフである。
【
図6】個人差入力部の動作を示すフローチャートである。
【
図7】被測定者の過去から蓄積されたシャント音の最小値の分布を示すヒストグラムである。
【
図8】被測定者の過去から蓄積されたシャント音の最大値の分布を示すヒストグラムである。
【
図9】正常時における1心拍区間の時間周波数波形の一例を示すスペクトログラムである。
【
図10】正常時における1心拍区間の周波数重心解析波形の一例を示すグラフである。
【
図11】狭窄発生時における1心拍区間の時間周波数波形の一例を示すスペクトログラムである。
【
図12】狭窄発生時における1心拍区間の周波数重心解析波形の一例を示すグラフである。
【
図13】正常時における1心拍区間の音量変化量の一例を示すグラフである。
【
図14】狭窄発生時における1心拍区間の音量変化量の一例を示すグラフである。
【
図15】正常時における1心拍区間の音量最小値の一例を示すグラフである。
【
図16】狭窄発生時における1心拍区間の音量最小値の一例を示すグラフである。
【
図17】正常時における1心拍区間の音量減衰率の一例を示すグラフである。
【
図18】狭窄発生時における1心拍区間の音量減衰率の一例を示すグラフである。
【
図19】歪み発生時の音量解析波形の一例を示すグラフである。
【
図20】歪み発生時の音量解析微分波形の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<1>
本実施形態に係るシャント音解析装置は、被測定者のシャント形成部位周辺から、シャント音に関するシャント音情報を取得する取得手段と、前記取得部が取得した前記シャント音情報に基づいて、前記シャント音の聴感上の断続度合いを示す情報を出力する出力手段とを備える。
【0012】
本実施形態に係るシャント音解析装置の動作時には、先ず取得手段により、被測定者のシャント形成部位周辺から、シャント音に関するシャント音情報が取得される。なお、ここでの「シャント音」とは、血液を体外に取り出すためのシャント形成部位周辺において取得される血流音であり、被測定者の脈拍に同期した音である。シャント音の取得は各種センサを用いて行えばよく、その取得方法が特に限定されるものではない。また「シャント音情報」とは、シャント音に関する各種パラメータを含む情報であって、例えば音量や周波数等の時間変化などを含んでいる。
【0013】
シャント音情報が取得されると、出力手段において各種解析が実行され、シャント音の聴感上の断続度合いを示す情報が出力される。ここでの「断続度合いを示す情報」とは、単にシャント音が途切れる程度を示す情報を意味するのではなく、狭窄を診断する際の指標とされる断続感が生じる原因となる各種パラメータを含む複合的な情報、或いは断続感に関連する複数のパラメータが統合された情報を意味している。なお、断続度合いを示す情報は、例えば数値化した状態、或いはグラフやチャートによって可視化された状態で出力される。
【0014】
本願発明者の研究するところによれば、シャント形成部位に狭窄が生じていない場合には、シャント音は大きく連続した低い音となる傾向があるのに対し、狭窄が進行すると、シャント音が小さくなり、音の途切れや狭窄部位の乱流による高い音の成分が単独で又は複合的に表れてくることが判明している。よって、シャント音の断続度合いを示す情報を利用すれば、シャント形成部位に狭窄が生じているか否か、或いは狭窄の程度を容易且つ的確に診断することが可能となる。具体的には、従来から狭窄診断に利用されているエコー診断等を利用せずとも、容易に狭窄診断を行うことができる。また、シャント音の断続度合いを示す情報により、狭窄を診断する医師の技量や経験に左右されない定量的な診断が可能となる。
【0015】
以上説明したように、本実施形態に係るシャント音解析装置によれば、シャント形成部位の狭窄診断を好適に支援することが可能である。
【0016】
<2>
本実施形態に係るシャント音解析装置の一態様では、前記出力手段は、前記シャント音情報に基づいて、時間経過に対する前記シャント音の音量の変化を示す音量情報を導出する音量情報導出手段を有する。
【0017】
この態様によれば、音量情報導出手段によって導出された音量情報に基づいて、シャント音の断続度合いを示す情報を出力することが可能となる。ここで特に、本願発明者の研究するところによれば、シャント音の断続感は、時間経過に対するシャント音の音量の変化に大きく依存していることが判明している。よって、導出された音量情報を利用すれば、シャント音の断続度合いを示す情報として、より適切な情報を出力することが可能となる。
【0018】
<3>
上述した音量情報導出手段を備える態様では、前記出力手段は、前記音量情報から前記シャント音の一周期に相当する一周期音量情報を抽出する抽出手段を有してもよい。
【0019】
この場合、音量情報が導出されると、そこからシャント音の一周期(言い換えれば、被測定者の脈動の一周期)に相当する一周期音量情報が抽出される。このため、シャント音の一周期における音量変化(例えば、収縮期から拡張期にかけての音量変化)を好適に解析できる。従って、シャント音の断続度合いを示す情報として、より適切な情報を出力することが可能となる。
【0020】
<4>
上述した抽出手段を備える態様では、前記出力手段は、前記一周期音量情報における前記シャント音の音量の最大値及び最小値の差分と、正常時におけるシャント音の最大値及び最小値の差分とを対比して、前記断続度合いを数値化する第1数値化手段を有してもよい。
【0021】
この場合、先ず一周期音量情報におけるシャント音の音量の最大値(例えば、収縮期の音量)から最小値(例えば、拡張期の音量)が減算され、一周期における音量変化量がされる。そして、算出された音量変化量が、予め記憶された正常時における音量変化量と対比されることで、断続度合いが数値化される。
【0022】
本願発明者の研究するところによれば、シャント音の断続度合いが高まると、一周期における音量変化量が大きくなる傾向があることが判明している。よって、算出された音量変化量が、正常時の音量変化量より大きい場合には、断続度合いが高い数値として出力されればよい。一方で、算出された音量変化量が、正常時の音量変化量より小さい場合には、断続度合いが低い数値として出力されればよい。
【0023】
<5>
或いは抽出手段を備える態様では、前記出力手段は、前記一周期音量情報における前記シャント音の音量の最小値と、正常時におけるシャント音の最小値とを対比して、前記断続度合いを数値化する第2数値化手段を有してもよい。
【0024】
この場合、先ず一周期音量情報におけるシャント音の音量の最小値(例えば、拡張末期の音量)が抽出される。そして、抽出された最小値が、予め記憶された正常時における最小値と対比されることで、断続度合いが数値化される。
【0025】
本願発明者の研究するところによれば、シャント音の断続度合いが高まると、一周期における音量の最小値が小さくなる傾向があることが判明している。よって、算出された最小値が、正常時の最小値より大きい場合には、断続度合いが低い数値として出力されればよい。一方で、算出された最小値が、正常時の最小値より小さい場合には、断続度合いが高い数値として出力されればよい。
【0026】
<6>
或いは抽出手段を備える態様では、前記出力手段は、前記一周期音量情報における前記シャント音の音量の最大値から最小値に至る傾きに基づいて、前記断続度合いを数値化する第3数値化手段を有してもよい。
【0027】
この場合、先ず一周期音量情報におけるシャント音の音量の最大値から最小値に至る傾き(言い換えれば、音量が最大値となってから最小値に至るまでの減衰率)が算出される。そして、算出された傾きに基づいて、断続度合いが数値化される。
【0028】
本願発明者の研究するところによれば、シャント音の断続度合いが高まると、収縮期から拡張期にかけての音量の減衰が急激になる傾向があることが判明している。よって、算出された傾きの変動が大きいほど、断続度合いが高い数値として出力されればよい。
【0029】
<7>
或いは抽出手段を備える態様では、前記出力手段は、前記一周期音量情報における前記シャント音の音量の極大値及び極小値の差分と、正常時におけるシャント音の極大値及び極小値の差分とを対比して、前記断続度合いを数値化する第4数値化手段を有してもよい。
【0030】
この場合、先ず一周期音量情報におけるシャント音の音量の極大値及び極小値が抽出される。極大値及び極小値は、例えば微分波形を平滑化したもの利用して抽出することができる。続いて、抽出された極大値から極小値が減算され、極大値から極小値までの音量変化量がされる。そして、算出された音量変化量が、予め記憶された正常時における音量変化量と対比されることで、断続度合いが数値化される。
【0031】
本願発明者の研究するところによれば、シャント音の断続度合いが高まると、極大値から極小値までの音量変化量が大きくなる(具体的には、収縮期から拡張期にかけての音量の変化に歪みが生じる)傾向があることが判明している。よって、算出された音量変化量が、正常時の音量変化量より大きい場合には、断続度合いが高い数値として出力されればよい。一方で、算出された音量変化量が、正常時の音量変化量より小さい場合には、断続度合いが低い数値として出力されればよい。
【0032】
<8>
本実施形態に係るシャント音解析装置の他の態様では、前記出力手段は、前記シャント音情報に基づいて、周波数ごとの時間経過に伴う前記シャント音の音量を示す分布情報を導出する分布情報導出手段を有する。
【0033】
この態様によれば、分布情報導出手段によって導出された分布情報に基づいて、シャント音の断続度合いを示す情報を出力することが可能となる。ここで特に、本願発明者の研究するところによれば、シャント音の断続感は、周波数ごとのシャント音の音量の分布に大きく依存していることが判明している。よって、導出された分布情報を利用すれば、シャント音の断続度合いを示す情報として、より適切な情報を出力することが可能となる。
【0034】
<9>
上述した分布情報導出手段を備える態様では、前記出力手段は、前記分布情報が示す時間経過に伴う周波数重心の変化量と、正常時における時間経過に伴う周波数重心の変化量とを対比して、前記断続度合いを数値化する第5数値化手段を有してもよい。
【0035】
この場合、先ず分布情報から時間経過に伴う周波数重心の変化量が算出される。周波数重心の変化量は、例えば最大重心周波数から最小重心周波数を減算することで算出できる。そして、算出された周波数重心の変化量が、予め記憶された正常時における周波数重心の変化量と対比されることで、断続度合いが数値化される。
【0036】
本願発明者の研究するところによれば、シャント音の断続度合いが高まると、周波数重心の変化量が大きくなる(具体的には、高周波成分が増加する)傾向があることが判明している。よって、算出された周波数重心の変化量が、正常時の周波数重心の変化量より大きい場合には、断続度合いが高い数値として出力されればよい。一方で、算出された周波数重心の変化量が、正常時の周波数重心の変化量より小さい場合には、断続度合いが低い数値として出力されればよい。
【0037】
<10>
本実施形態に係るシャント音解析装置の他の態様では、前記出力手段は、前記第1から第5数値化手段を少なくとも2種類有しており、前記第1から第5数値化手段が数値化した前記断続度合いの各々を統合的に判定して、前記断続度合いを示す情報を出力する。
【0038】
この態様によれば、互いに異なる指標を利用して数値化された断続度合いが統合的に判定されるため、より正確な断続度合いを示す情報を出力することができる。統合的な判定する際には、例えば各数値化手段で数値化された断続度合いを正規化した上で、所定の重み付けを行えばよい。なお、出力される断続度合いを示す情報としては、例えば聴感に合うことを重視した1つの値、波形の断続性を重視した1つの値、或いは聴感に合った断続傾向と波形的な断続傾向を示す2つの値等が挙げられる。
【0039】
<11>
本実施形態に係るシャント音解析方法は、被測定者のシャント形成部位周辺から、シャント音に関するシャント音情報を取得する取得工程と、前記取得工程で取得した前記シャント音情報に基づいて、前記シャント音の聴感上の断続度合いを示す情報を出力する出力工程とを備える。
【0040】
本実施形態に係るシャント音解析方法によれば、上述した本実施形態に係るシャント音解析装置と同様に、シャント音の聴感上の断続度合いを示す情報が出力される。従って、シャント形成部位の狭窄診断を好適に支援することが可能である。
【0041】
<12>
本実施形態に係るコンピュータプログラムは、被測定者のシャント形成部位周辺から、シャント音に関するシャント音情報を取得する取得工程と、前記取得工程で取得した前記シャント音情報に基づいて、前記シャント音の聴感上の断続度合いを示す情報を出力する出力工程とをコンピュータに実行させる。
【0042】
本実施形態に係るコンピュータプログラムによれば、コンピュータに上述した本実施形態に係るシャント音解析方法の各工程を実行させることができる。従って、シャント形成部位の狭窄診断を好適に支援することが可能である。
【0043】
<13>
本実施形態に係る記録媒体は、上述したコンピュータプログラムが記録されている。
【0044】
本実施形態に係る記録媒体によれば、記録されたコンピュータプログラムを実行させることで、シャント音の聴感上の断続度合いを示す情報が出力させることが可能である。従って、シャント形成部位の狭窄診断を好適に支援することが可能である。
【0045】
本実施形態に係るシャント音解析装置、シャント音解析方法、コンピュータプログラム及び記録媒体の作用及び他の利得については、以下に示す実施例において、より詳細に説明する。
【実施例】
【0046】
以下では、図面を参照してシャント音解析装置の実施例について詳細に説明する。
【0047】
<装置構成>
先ず、
図1を参照して、本実施例に係るシャント音解析装置の全体構成について説明する。ここに
図1は、実施例に係るシャント音解析装置の全体構成を示すブロック図である。
【0048】
図1において、本実施例に係るシャント音解析装置は、音声信号入力部110と、音声信号解析部120と、個体差入力部130と、大局的特徴抽出部140と、局所的特徴抽出部150と、統合判定部160と、表示部170とを備えて構成されている。
【0049】
音声信号入力部110は、例えば振動センサ等により構成されており、被測定者のシャント形成部位からシャント音を検出する。音声信号入力部110で検出されたシャント音は、音声信号として音声信号解析部120へと出力される構成となっている。音声信号入力部110は、「取得部」の一具体例である。
【0050】
音声信号解析部120は、音声信号入力部110から入力された音声信号に対して時間周波数解析を行う。音声信号解析部120による解析結果は、大局的特徴抽出部140及び局所的特徴抽出部150の各々に出力される構成となっている。
【0051】
個体差入力部130は、予め被測定者から取得した音量波形に基づいて、被測定者固有のシャント音を示すパラメータを算出する。個体差入力部130で算出された被測定者固有のパラメータは、大局的特徴抽出部140及び局所的特徴抽出部150の各々に出力される構成となっている。
【0052】
大局的特徴抽出部140は、シャント音の断続感を生む要因のうち、大局的特徴(具体的には、周波数重心の変化量、1心拍区間の音量変化量、及び1心拍区間の音量最小値)を抽出し、各特徴に基づいて断続度合いを示す情報を算出する。なお、大局的特徴抽出部140は、大局的特徴を抽出する際に、個体差入力部130から入力される被測定者固有の情報を考慮する。大局的特徴抽出部140において算出された断続度合いを示す情報は、それぞれ統合判定部160に出力される構成となっている。
【0053】
局所的特徴抽出部150は、シャント音の断続感を生む要因のうち、局所的特徴(具体的には、1心拍区間の音量減衰率、及び音量変化の歪み)を抽出し、各特徴に基づいて断続度合いを示す情報を算出する。なお、局所的特徴抽出部150は、局所的特徴を抽出する際に、個体差入力部130から入力される被測定者固有の情報を考慮する。局所的特徴抽出部150において算出された断続度合いを示す情報は、それぞれ統合判定部160に出力される構成となっている。
【0054】
統合判定部160は、大局的特徴抽出部140及び局所的特徴抽出部150から入力されたシャント音の断続度合いを示す情報を統合的に判定し、シャント形成部位における狭窄可能性を示す情報を算出する。統合判定部160において算出された狭窄可能性を示す情報は、表示部170に出力される構成となっている。統合判定部160は、「出力部」の一具体例である。
【0055】
表示部170は、例えば液晶ディスプレイ等として構成されており、統合判定部160から出力された狭窄可能性を示す情報(シャント音の断続度合いを示す情報)を、例えば医師等の使用者に視覚的に提示することが可能に構成されている。また、表示部170は、上述した、周波数重心の変化量、1心拍区間の音量変化量、1心拍区間の音量最小値、1心拍区間の音量減衰率、及び音量変化の歪み、の何れかを視覚的に提示するようにしてもよい。
【0056】
<動作説明>
次に、本実施例に係るシャント音解析装置の動作について説明する。なお、以下では、本実施例に係るシャント音解析装置が有する各部位のうち、本実施例に特有な部位(即ち、音声信号解析部120、個体差入力部130、大局的特徴抽出部140、局所的特徴抽出部150、及び統合判定部160)の動作について詳細に説明する。
【0057】
<音声信号解析部>
先ず、
図2から
図5を参照して、音声信号解析部120の動作について具体的に説明する。ここに
図2は、時間周波数波形の一例を示すスペクトログラム(その1)であり、
図3は、音量解析波形の一例を示すグラフである。また
図4は、時間周波数波形の一例を示すスペクトログラム(その2)であり、
図5は、周波数重心解析波形の一例を示すグラフである。
【0058】
図2において、音声信号解析部120は、音声信号入力部110から入力された音声信号の時間周波数解析を行い、時間周波数波形を取得する。時間周波数波形は、シャント音の周波数ごとのパワーを時系列で示すものである。音声信号解析部120は、時間周波数波形からシャント音の音量を算出する。具体的には、音声信号解析部120は、以下の数式(1)を用いて、シャント音の音量y(t)を算出する。
【0059】
【数1】
なお、f(n)は周波数であり、p(n)は周波数f(n)におけるパワーである。
【0060】
図3に示すように、音声信号解析部120が算出した音量解析波形(即ち、シャント音の音量の時間変化を示す波形)は、被測定者の脈動に応じた周期的な波形となる。音量解析波形は、1心拍区間ごとに分割された後、大局的特徴抽出部140及び局所的特徴抽出部150に出力され、それぞれ大局的特徴及び局所的特徴の抽出に利用される。
【0061】
図4において、音声信号解析部120は更に、時間周波数波形からシャント音の周波数重心を算出する。具体的には、音声信号解析部120は、以下の数式(2)を用いて、シャント音の周波数重心g(t)を算出する。
【0062】
【数2】
図5に示すように、音声信号解析部120が算出した周波数重心解析波形(即ち、シャント音の周波数重心の時間変化を示す波形)は、音量解析波形と同様に、被測定者の脈動に応じた周期的な波形となる。周波数重心解析波形は、大局的特徴抽出部140に出力され、大局的特徴(具体的には、周波数重心の変化)の抽出に利用される。
【0063】
<個体差入力部>
次に、
図6から
図8を参照して、個体差入力部130の動作について具体的に説明する。ここに
図6は、個人差入力部130の動作を示すフローチャートである。また
図7は、被測定者の過去から蓄積されたシャント音の最小値の分布を示すヒストグラムであり、
図8は、被測定者の過去から蓄積されたシャント音の最大値の分布を示すヒストグラムである。
【0064】
図6において、個体差入力部130は、予め取得した音声信号から被測定者固有のパラメータを算出する。具体的には、個体差入力部130では、音声信号が取得されると(ステップS101)、音量解析によって音量解析波形が取得される(ステップS102)。音量解析波形は1心拍区間単位で分割され(ステップS103)、各区間における最大値及び最小値が検出される(ステップS104)。検出された最大値及び最小値は、メモリに記憶され(ステップS105)、そのヒストグラムから最も頻度の高かった値が、その被測定者の固有のシャント音の音量最大値及び音量最小値として決定される(ステップS106)。
【0065】
図7及び
図8において、最小値及び最大値の検出頻度が図に示すような分布となった場合、被測定者の固有のシャント音の音量最小値は約137と決定される。同様に、被測定者の固有のシャント音の音量最大値は約425と決定される。
【0066】
このようにして決定された被測定者の固有の音量最大値及び音量最小値は、音量解析波形として得られるシャント音の音量の個人差補正に用いられる。補正音量Y(t)は、音量解析によって得られた音量y(t)の平均値をy_ave、最大値をy_max、最小値をy_minとし、被測定者の固有の音量の最大値をY_max、最小値をY_minとすると、以下の数式(3)を用いて算出できる。
【0067】
Y(t)=y_ave+(y(t)-y_ave)×(y_max-y_min)/(Y_max-Y_min) ・・・(3)
なお、ここでの説明は省略するが、周波数重心についても被測定者ごとの固有の最大値及び最小値が決定されてもよい。周波数重心の個人差補正についても、上述した音量の個人差補正と同様の方法で行うことができる。
【0068】
<大局的特徴抽出部>
次に、
図9から
図16を参照して、大局的特徴抽出部140の動作について具体的に説明する。なお、以下では、大局的特徴抽出部140で抽出可能な複数の特徴について、特徴別に断続度合いを算出する方法を説明する。
【0069】
<1心拍区間の周波数重心の変化量>
先ず、
図9から
図12を参照して、1心拍区間の周波数重心の変化量に基づく断続度合いの算出方法について説明する。ここに
図9は、正常時における1心拍区間の時間周波数波形の一例を示すスペクトログラムであり、
図10は、正常時における1心拍区間の周波数重心解析波形の一例を示すグラフである。また
図11は、狭窄発生時における1心拍区間の時間周波数波形の一例を示すスペクトログラムであり、
図12は、狭窄発生時における1心拍区間の周波数重心解析波形の一例を示すグラフである。
【0070】
図9及び
図10において、正常時のシャント音は、低い周波数を多く含む音として検出される。
図10を見ると分かるように、正常時のシャント音の周波数重心の最小値は約610Hzであり、最大値は約700Hzである。よって、正常時におけるシャント音の周波数重心の変化量(即ち、最大値-最小値)は約90Hzとなる。
【0071】
図11及び
図12において、狭窄発生時(即ち、断続感が強い)シャント音は、正常時と比べると、高周波成分を多く含む音として検出される。
図12を見ると分かるように、狭窄発生時のシャント音の周波数重心の最小値は約590Hzであり、最大値は約740Hzである。よって、狭窄発生時におけるシャント音の周波数重心の変化量(即ち、最大値-最小値)は約150Hzとなる。
【0072】
以上の結果から分かるように、正常時のシャント音と狭窄発生時のシャント音とでは、1心拍区間の周波数重心の変化量に明確な差が生ずる。よって、周波数重心解析によって得られた周波数重心の変化量を正常時の周波数重心の変化量と対比すれば、狭窄発生可能性(即ち、シャント音の断続度合い)を好適に算出できる。
【0073】
<1心拍区間の音量変化量>
次に、
図13及び
図14を参照して、1心拍区間の音量変化量に基づく断続度合いの算出方法について説明する。ここに
図13は、正常時における1心拍区間の音量変化量の一例を示すグラフである。また
図14は、狭窄発生時における1心拍区間の音量変化量の一例を示すグラフである。
【0074】
図13において、正常時のシャント音では、1心拍区間における音量の最大値と最小値との差分が小さい。即ち、正常時のシャント音は、収縮期から拡張期にかけての音量変化量が比較的小さい。
【0075】
図14において、狭窄発生時のシャント音では、1心拍区間における音量の最大値と最小値との差分が、正常時と比べて大きい。即ち、狭窄発生時のシャント音は、収縮期から拡張期にかけての音量変化量が比較的大きい。
【0076】
従って、音量解析波形から得られた1心拍区間における音量変化量が、正常時の1心拍区間における音量変化量と比べてどの程度大きいかによって、狭窄発生可能性(即ち、シャント音の断続度合い)を好適に算出できる。
【0077】
<1心拍区間の音量最小値>
次に、
図15及び
図16を参照して、1心拍区間の音量最小値に基づく断続度合いの算出方法について説明する。ここに
図15は正常時における1心拍区間の音量最小値の一例を示すグラフである。また
図16は。狭窄発生時における1心拍区間の音量最小値の一例を示すグラフである。
【0078】
図15において、正常時のシャント音では、1心拍区間における音量の最小値が比較的大きい。具体的には、正常時のシャント音は、音量が小さくなる拡張期においても、比較的音量が大きいまま維持される。
【0079】
図16において、狭窄発生時のシャント音では、1心拍区間における音量の最小値が、正常時と比べて大きい。具体的には、狭窄発生時のシャント音は、収縮期の音量については正常時に近い値まで大きくなるが、拡張期の音量が大きく減衰してしまう。
【0080】
従って、音量解析波形から得られた1心拍区間における音量最小値が、正常時の1心拍区間における音量最小値と比べてどの程度小さいかによって、狭窄発生可能性(即ち、シャント音の断続度合い)を好適に算出できる。
【0081】
<局所的特徴抽出部>
次に、
図17から
図20を参照して、局所的特徴抽出部150の動作について具体的に説明する。なお、以下では、局所的特徴抽出部150で抽出可能な複数の特徴について、特徴別に断続度合いを算出する方法を説明する。
【0082】
<1心拍区間の音量減衰率>
先ず、
図17及び
図18を参照して、1心拍区間の音量減衰率に基づく断続度合いの算出方法について説明する。ここに
図17は、正常時における1心拍区間の音量減衰率の一例を示すグラフである。また
図18は、狭窄発生時における1心拍区間の音量減衰率の一例を示すグラフである。
【0083】
図17において、正常時のシャント音では、1心拍区間における音量の減衰が直線的である。具体的には、正常時のシャント音では、音量の最大値から最小値までの傾き(減衰率)が一定である。
【0084】
図18において、狭窄発生時のシャント音では、1心拍区間における音量の減衰が急激な部分が生じている。具体的には、狭窄発生時のシャント音では、収縮期末期から拡張期初期にかけて音量が著しく減少し、その後は比較的緩やかに減少する。このため、音量の最大値から最小値までの傾き(減衰率)は一定とならない。
【0085】
従って、音量解析波形から得られた1心拍区間における音量減衰率を利用すれば、狭窄発生可能性(即ち、シャント音の断続度合い)を好適に算出できる。減衰率drは、以下の数式(4)を用いて算出することができる。
【0086】
【数3】
なお、Nは1心拍区間のデータ数であり、max及びminは、それぞれ1心拍区間内の音量の最大値及び最小値である。減衰率drは、
図18中に破線で示す直線的な減衰率である0.5を基準として、そこからの乖離が大きいほど小さい値として算出される。よって、算出された減衰率drが0.5よりどの程度小さいかによって、狭窄発生可能性(即ち、シャント音の断続度合い)を好適に算出できる。
【0087】
<音量変化の歪み>
次に、
図19及び
図20を参照して、収縮期から拡張期にかけて発生する音量変化の歪みに基づく断続度合いの算出方法について説明する。ここに
図19は、歪み発生時の音量解析波形の一例を示すグラフである。また
図20は、歪み発生時の音量解析微分波形の一例を示すグラフである。
【0088】
図19において、狭窄発生時のシャント音では、収縮期末期から拡張期初期にかけて、音量の変化に歪みが生じることがある。具体的には、図中の破線で囲った部分のように、音量が急激に低下した後、一時的に上昇することがある。よって、音量解析波形における極大値の存在によって、狭窄発生可能性(即ち、シャント音の断続度合い)を算出することができる。
【0089】
図20において、音量解析波形における極大値は、音量解析波形の微分波形を平滑化したものを用いることで容易に検出できる。具体的には、音量解析波形の微分波形の極大値と極小値との差分を算出すること好適に検出することができる。
【0090】
<統合判定部>
最後に、統合判定部160の動作について具体的に説明する。以下では、大局的特徴である周波数重心の変化量として抽出された特徴量をρ1、1心拍区間の音量変化量として抽出された特徴量をρ2、1心拍区間の音量最小値として抽出された特徴量をρ3、局所的特徴である1心拍区間の音量減衰率として抽出された特徴量をρ4、音量変化の歪みとして抽出された特徴量をρ5として説明する。なお、各直量ρ1~ρ5は、それぞれ正規化されている(例えば、断続度合いが最も強い場合が0、最も弱い場合(即ち、正常時)が100となるように調整されている)ものとする。
【0091】
統合判定部160は、各特徴量ρ1~ρ5に対して重み付けを行って断続度を算出する。具体的には、断続度は、各特徴量ρ1~ρ5に対応する重みをω1~ω5として、以下の数式(5)を用いて算出される。
【0092】
断続度=ω1×ρ1+ω2×ρ2+ω3×ρ3+ω4×ρ4+ω5×ρ5 ・・・(5)
ここで、断続度を聴感に合うことを重視した1つの数値として出力する場合には、重みω1~ω5についてω1、ω2、ω3>>ω4、ω5の関係が成立するようにすればよい。このようにして得られる断続度は、例えば人工透析現場において当日の透析が可能か否かを判定するのに適している。
【0093】
また、断続度を波形の断続性を重視した1つの数値として出力する場合には、重みω1~ω5についてω4、ω5>ω2>ω1、ω3の関係が成立するようにすればよい。このようにして得られる断続度は、例えばエコー診断との比較に適している。
【0094】
或いは、断続度を聴感に合うことを重視した数値及び波形の断続性を重視した数値の2つの値として出力する場合には、以下の数式(6)及び(7)を利用して別々に算出すればよい。
【0095】
聴感による断続度=ω1×ρ1+ω2×ρ2+ω3×ρ3 ・・・(6)
波形による断続度=ω4×ρ4+ω5×ρ5 ・・・(7)
このようにして得られる断続度は、例えば聴感と波形との両方の経時変化から断続(即ち、狭窄)の進行具合を判定する場合に適している。
【0096】
なお、統合判定部160による統合的な判定を行わずに、各特徴量ρ1~ρ5を単独で出力するようにしてもよい。この場合、表示部170には、例えば各特徴量ρ1~ρ5に応じた数値が別々に表示されたり、レーダーチャートとして表示されたりする。これにより、ユーザである医師等は、各特徴量ρ1~ρ5の各々を利用して複数の視点から狭窄診断を行うことができる。或いは、各特徴量ρ1~ρ5の各々を用いて、医師等が自ら統合的な判断をして、狭窄診断を行うことができる。
【0097】
以上説明したように、本実施例に係るシャント音解析装置によれば、シャント音の解析結果として、断続度合いを示す情報が出力される。従って、シャント形成部位における狭窄診断を好適に支援することが可能である。
【0098】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うシャント音解析装置、シャント音解析方法、コンピュータプログラム及び記録媒体もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0099】
110 音声信号入力部
120 音声信号解析部
130 個体差入力部
140 大局的特徴抽出部
150 局所的特徴抽出部
160 統合判定部
170 表示部