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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-27
(45)【発行日】2023-07-05
(54)【発明の名称】データ伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/00 20060101AFI20230628BHJP
   H01P 3/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
H01P5/00
H01P3/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022580083
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 EP2021066219
(87)【国際公開番号】W WO2021259727
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】20182053.7
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】322001037
【氏名又は名称】ローゼンバーガー ホーフフレクベンツテクニーク ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォリツァー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ライター,ヘルムート
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-75798(JP,A)
【文献】米国特許第4328487(US,A)
【文献】米国特許第10673116(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2017/018833(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 5/00
H01P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ伝送チャネル(2; 21, 22)と、
複数のトランシーバユニット(3)と、
少なくとも1つの導電体(5)と、
を具備し、
前記データ伝送チャネル(2; 21, 22)は、電気線路であり、電気絶縁性材料からなるレール(4; 41, 42)を有し、
前記少なくとも1つの導電体(5)は、各場合において、前記レール(4; 41, 42)の長手方向軸(6)に沿った一長手軸方向に沿って延び、
前記レール(4; 41, 42)は、前記導電体(5)のうちの1つによって側面側で包囲され、かつ/または、
前記レール(4; 41, 42)は、各場合に、前記導電体(5)のうちの少なくとも2つを互いに離間し、
前記複数のトランシーバユニット(3)は、前記レール(4; 41, 42)に沿って配置され、
前記複数のトランシーバユニット(3)は、各場合において、電磁波を前記電気線路に結合するか、または、前記電気線路から結合するように設計されており、
前記トランシーバユニット(3)と前記電気線路の間に、前記トランシーバユニット(3)と前記電気線路の間の近傍電磁界結合のための結合装置(13)が配置されており、
前記結合装置(13)は、各々が電気端子(15)を有する少なくとも2つの結合要素(14)、および/または、2つの電気端子(15)を有する少なくとも1つの結合要素(14)を有しており、
前記トランシーバユニット(3)は、前記結合要素(14)の前記電気端子(15)にそれぞれ接続されているMIMO等化用ユニットおよびMIMO駆動用ユニットを有する
データ伝送システム(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ伝送システム(1)であって、
前記複数のトランシーバユニット(3)の1つは、前記電磁波を、界磁結合によって、または、流電結合によって内外に結合させ、
残りの他のトランシーバユニット(3)は、各場合において、前記電磁波を、界磁結合によって内外に結合させる
データ伝送システム(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のデータ伝送システム(1)であって、
前記レール(4; 41, 42)の外面から前記レール(4; 41, 42)の前記長手方向の範囲に沿って、前記レール(4; 41, 42)に切り欠き部(9)が形成されている
データ伝送システム(1)。
【請求項4】
請求項1に記載のデータ伝送システム(1)であって、
前記結合装置(13)が、各々が電気端子(15)を有する2つの結合要素(14)、好ましくは、2つのE界結合要素または2つのH界結合要素、もしくは、1つのE界結合要素と1つのH界結合要素の組み合わせを有する
データ伝送システム(1)。
【請求項5】
請求項4に記載のデータ伝送システム(1)であって、
前記2つのE界結合要素または前記2つのH界結合要素の前記電気端子(15)は、各場合において、前記レール(4; 41, 42)の前記長手方向の範囲に沿って、互いに、λ/4・(2n+1)の軸方向間隔で離間されており、
ここで、λは前記電磁波の波長であり、nは整数である
データ伝送システム(1)。
【請求項6】
請求項4または5に記載のデータ伝送システム(1)であって、
前記MIMO駆動用ユニットは、各場合に、前記2つの結合要素(14)の前記電気端子(15)に、第1の電気信号および第2の電気信号を注入するように設計されており、
一方の結合要素(14)において注入される前記第1の電気信号は、他方の結合要素(14)において注入される前記第1の電気信号に対して90°の位相遅れを有し、
前記他方の結合要素(14)において注入される前記第2の電気信号は、前記第1の結合要素(14)において注入される前記第2の電気信号に対して90°の位相遅れを有する
データ伝送システム(1)。
【請求項7】
請求項1に記載のデータ伝送システム(1)であって、
2つの電気端子(15)を有する前記結合要素(13)は、方向性結合器の第1の電気導体であり、
前記方向性結合器の前記第1の電気導体は、前記方向性結合器の第2の電気導体として機能する前記電気導体(5)に連結されている
データ伝送システム(1)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つに記載のデータ伝送システム(1)であって、
前記電気線路は、端部側で互いに接続可能であり、電気絶縁材および関連する相互接続可能な複数の導電体(5)とからなる複数のレール(41, 42)を有する
データ伝送システム(1)。
【請求項9】
請求項8に記載のデータ伝送システム(1)であって、
外側導体側では、2つの相互接続可能な導電体(5)が金属カラー(7)を介して互いに電気的に接続されており、
前記金属カラー(7)は、それぞれ共振方式で、端部側で互いに接続可能な前記レール(41, 42)の外側導体側で前記導電体(5)に結合されている
データ伝送システム(1)。
【請求項10】
請求項8に記載のデータ伝送システム(1)であって、
内部導体側では、2つの相互接続可能な導電体(5)が、接続要素(20)を介して接触要素(21)に電気的に接続されるか、または、
導電体(5)が、前記レール(4; 41, 42)に対して軸方向に延在するように設計されることによって、互いに電気的に接続されている
データ伝送システム(1)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1つに記載のデータ伝送システム(1)であって、
前記電気線路は少なくとも2つの電気線路に分岐し、
前記レール(4; 41, 42)は少なくとも2つのレール(4; 41、42)に分岐し、関連する複数の導電体(5)は各場合において、少なくとも2つの導電体(5)に分岐する
データ伝送システム(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1つに記載のデータ伝送システム(1)であって、
各場合において、1つの遮蔽板(25)が、複数の導電体(5)の間、または、複数のペア(12)の導電体(5)の間で、前記レール(4; 41, 42)の前記長手方向の範囲に沿って配置されている
データ伝送システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の特徴を有するデータ伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レールに基づく照明システムが、民間および商業部門で長い間使用されてきた。
個別の照明器具は、レールプロファイル上でクリックインされている照明器具すなわち照明器具ホルダによって、通常、レールに沿ってそれぞれ固定される。電源系統からの必要な単相または多相交流電圧、例えばAC230Vを用いて個々の照明器具に電力を供給するための電気線は、レール内にタッチセーフ方式で敷設される。
照明器具を駆動するために、例えば照明器具を調光するために、直流電圧、例えば42 V DC用の付加的な電気ライン、または、低いデータ伝送速度を有するデータバスがレール内に敷設される。
レールシステムは、通常、部屋またはホールの天井に機械的に固定され、建物設備の関連するDC電圧ラインおよびAC電圧ラインに電気的に接続される。
【0003】
各種端末機器、例えば、サーバ、プリンタなどの間の建物内のデータ伝送は、通常、ケーブルを介して行われる。建物内でのデータ伝送規格としてIEEE 802.3に準拠したイーサネット(登録商標)が確立されている。光導波路を用いる場合、この場合、3桁のGbit/s範囲までのデータ伝送速度を実現することができる。
2つの端末機器間のデータ伝送は、イーサネットの場合には、それぞれの場合に設けられたデータケーブルを介して、端末機器の2つの項目間で行われる(いわゆるピア・ツー・ピア伝送)。
これに代えて、データ送信は、イーサネットの場合に個々のルータまたはスイッチを介して行われ、各ケースで端末機器の個々の項目がデータケーブルを介して接続され、個々のルータまたはスイッチ間に配線されたデータケーブルを介して接続される。
どちらの場合も、建物内のデータ配線の量、ひいてはこれに必要なスペースとエネルギの量、ならびに建物の配線の計画、設置および始動に伴う複雑さが著しく増加している。
【0004】
これは改善が必要な状態である。
【発明の概要】
【0005】
この背景に対して、本発明は、建物内のデータ伝送システムを提供するという目的に基づいており、このシステムでは、データ線の体積、特にデータ線の全長体積が、低減された空間およびエネルギ要件に関して最適化される。
【0006】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有するデータ伝送システムによって達成される。
【0007】
従って、以下のデータ伝送システムが提供される。
データ伝送システムは、
データ伝送チャネルと、
複数のトランシーバ(送受信)ユニットと、
少なくとも1つの導電体と、
を具備し、
上記データ伝送チャネルは、電気線路であり、電気絶縁性材料からなるレールを有し、
上記レールは、上記導電体(上記少なくとも1つの導電体)のうちの1つによって側面側で包囲され、かつ/または、
上記レールは、各場合に、上記導電体(上記少なくとも1つの電気導体)のうちの少なくとも2つを互いに離間し、
上記複数のトランシーバユニットは、上記レールに沿って配置され、
上記複数のトランシーバユニットは、各場合において、電磁波を上記電気線路に結合するか、または、上記電気線路から結合するように設計されている。
【0008】
本発明の基礎となる発見/概念は、複数の端末機器間のデータ伝送用のデータ伝送チャネルを提供することにあり、好ましくは、3つ以上の端末機器を提供することにある。この目的のために、電気的データ伝送チャネルが、複数の送受信ユニットの間で使用され、それらはそれぞれ、端末機器の項目に属する。
データ送信チャネルは、電気絶縁性材料および少なくとも1つの電気導電体からなるレールを備える。この場合、少なくとも1つの導電体は、それぞれの場合に、誘電体レールの長手方向の全範囲に沿って延在する。
【0009】
このようなデータ送信チャネルで電磁波の伝搬を可能にするために、電気絶縁レールが、データ送信チャネルの第1の実施形態では、導電体によって横表面側に包囲される。外面が金属被覆によって横表面側に被覆された誘電体レールは、電磁波、特にTEM波の、レールの縦軸両方向への伝搬を可能にする。
【0010】
データ送信チャネルの第2の実施形態では、誘電体レール内に2つの導電体が配置され、これらの導電体は、誘電体レールによって互いに離間されるように配置される。同様に、電磁波、特にTEM波は、2つの電気導体間でレールの両方の長軸方向に伝搬することができる。特に、無線周波数電磁波が、差動無線周波数信号に対応する差動モードで伝搬することが可能である。
【0011】
データ伝送チャネルの第3の実施形態では、第2の実施形態に加えて、誘電体レールが金属被覆によって横表面側に被覆される。このようなデータ伝送チャネルでは、電磁波の2つのモード、すなわちコモンモードと差動モードが伝搬できる。
誘電体レール内の2つの電気導体は2つの内部導体を形成し、横表面側の被覆はデータ伝送チャネルの外部導体を形成する。外部導体被覆により、電磁波の誘電率が改善され、信号導体周辺の漏れ電界・磁界の範囲が低減される。このため、電磁波の送信頻度を高くすることができる。
【0012】
データ送信チャネルの第4の実施形態では、導電体が誘電体レール内を走行し、その一方で、誘電体レールは、金属被覆によって横表面側に被覆される。このようにして、内側導体および外側導体を含む同軸構造を有する伝送チャネルが形成され、これは、レールの長手方向の両方の軸方向における高周波電磁波のモードの伝搬を可能にする。
【0013】
さらに、複数の個々の導電体を有する、かつ/または、複数対の導電体を有する伝送チャネルも考えられる。この複数対の導電体は、それぞれの場合に、互いに平行であるか、または、互いに交差するかのいずれかで、誘電体レール内に配置される。
外部導体が存在する場合、内部導体の数に対応する電磁波の多数のモードが、このような伝送チャネル内を伝搬することができる。
【0014】
伝送チャネルのすべての実施形態において、高周波電磁波は、レールに沿って伝搬することができる。この場合、高周波電磁波はレールに沿って誘導される。
【0015】
電磁波の自由空間経路損失と比較して、無線チャネル上の自由空間伝搬の場合、レールベースのデータ伝送システムにおける電磁波の伝送損失は、レールの長手方向の範囲が数100mに対してより低い。
レールに沿った電磁波の誘導により、隣接するレールベースデータ伝送システム間の結合損失は、隣接する無線通信ネットワークの場合よりも高かった。したがって、2つのレールベースのデータ伝送システム間の可能な最小間隔は、隣接する無線通信ネットワークの場合よりも小さい。
【0016】
レール上を伝搬する高周波電磁波の実現可能な周波数帯域は、誘電体レールの外部導体被覆のおかげで増加させることができる。この場合、高周波は、1MHz~500GHzの周波数帯域、特に10MHz~20GHzの周波数帯域、特に500MHz~6GHzの周波数帯域を意味することが好ましいと理解される。
【0017】
誘電体レールの金属外部導体被覆は、トランシーバユニットの基準電位、好ましくは接地電位に電気的に接続されることが好ましい。界磁(フィールド)結合を介して電磁波を内外に結合するために、導電性被覆は、それぞれの場合に、トランシーバユニットの領域において露出されることが好ましい。
しかしながら、誘電体レールの外部導体遮蔽を介して電磁波の内外への流電結合(ガルバニックカップリング)を実現することもできる。
【0018】
個々のトランシーバユニットがレールに沿って配置され、各場合において電磁波を電気線路に結合するか、または、電磁波を電気線路から結合するように設計されている場合、データを有するTEM波をトランシーバユニットによって送信チャネルに供給することができ、この送信チャネルを介して伝搬するこのTEM波は、別のトランシーバユニットによって送信チャネルから供給されることができる。
【0019】
個々のトランシーバユニットがビル内の様々な場所にそれぞれのケースに配置され、コモンレール上に配置されていれば、このようにして複数の端末機器間のデータ伝送が可能となる。このようなデータ伝送システムの電気線路長は、レールの長手方向の範囲に制限される。
このデータ送信は、ピア・ツー・ピア伝送の合計電気線路長、または、端末機器の項目の同じ数を与えられたルータまたはスイッチを介した伝送と比較して低減される。
【0020】
このようなデータ伝送システムは、例えば、オープンプランオフィス、製造および貯蔵ホール、物流センター、スーパーマーケット、ならびにモールにおいて使用することができる。
そのようなレールベースのデータ伝送システムの長手方向の範囲は、好ましくは5mより大きく500m未満、特に好ましくは10mより大きく300m未満、非常に特に好ましくは20mより大きく100m未満である。
【0021】
レールベースのデータ伝送システムは、各々がトランシーバユニットを介してレールベースの伝送チャネルに結合されている端末機器の複数の項目間でデータを伝送するために使用することができる。
端末機器の項目は、最も単純な場合には、一体化されたセンサ信号処理を有するセンサ、例えば、温度センサまたは監視カメラ、もしくは、一体化された駆動電子回路を有するアクチュエータ、例えば、窓を開閉するためのサーボモータであり得る。
また、端末機器の項目は、例えば、プリンタ、パーソナルコンピュータ、またはデータ取得装置など、より高い技術的機能を有することができる。また、無線アクセスポイントのような要素を、レールシステムを介してリンクすることも考えられる。
【0022】
あるいは、個々のトランシーバユニットに加えて、レールベースのデータ伝送システム上に1つ以上の照明器具を配置することもできる。この目的のために、データ線路として作用する各場合の導電体に加えて、個別の照明器具に電圧を供給し、駆動するために、電気絶縁レール内にさらに電気線路を統合する必要がある。
しかし、照明器具は、端末機器の項目と同様に、関連するトランシーバユニットを介したレールベースのデータ伝送システムに統合することもできる。さらに、各場合において、データ信号が、電源供給のための導電体上に追加的に送信されることも考えられる。
【0023】
トランシーバユニットは、関連する端末機器の項目に統合されるか、または、関連する端末機器の項目から分離され、無線データリンクまたは有線データリンクを介して接続されるかのいずれかであり得る。共通の送受信部に複数の端末機器が接続されることも考えられる。
【0024】
個々のトランシーバユニットは、電気絶縁レールに直接隣接して配置され、レールに直接機械的に接続されることが好ましい。レール上の照明器具の締結と類似して、機械的締結としてクリック機構を使用することができ、この締結では、例えば、トランシーバユニットの1つ以上のラッチフック等が、各場合において、レールの対応するラッチ切り欠きまたはラッチ溝にラッチ留めされる。
代替として、ねじ継手、接着結合、または別の適切な接続も可能である。しかし、個々のトランシーバユニットは、追加の装置を介してレールから離間されるような態様でレールに固定することもできる。また、トランシーバユニットのサブ領域が、レールに設けられた切り欠きを介してレール内に突出することも考えられる。
個々のトランシーバユニットは、建物内の端末機器の関連する商品の空間的な位置決めに応じて、レールの長手方向の全範囲にわたって、対応する軸方向位置に分散して配置することができる。また、複数の送受信ユニットの位置決めを実現することも可能であり、好ましくは2つの送受信ユニットを、レールの同一軸方向位置に配置する。
【0025】
トランシーバユニットは、増幅器、フィルタ、ミキサなどのような送受信用の典型的なアナログ構成要素または機能部と、アナログ-デジタル変換またはデジタル-アナログ変換器などのような結合されたデジタル-アナログ機能部とを含むことができる。
さらに、トランシーバユニットは、例えば、変調(復調)、符号化(復号)、信号等化等のような、送受信のための全ての従来のデジタル信号処理機能部を含むことができる。デジタル信号処理機能部は、ソフトウェアまたはハードウェア(例えば、FPGAまたはASIC)で実装することができる。
【0026】
電気絶縁レールは、好ましくは、誘電体からの押出工程によって製造される。このための適切な誘電体材料は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のような、できるだけ少ない誘電損失を有する電気的絶縁のための従来の誘電体材料である。
この場合、以下のテキストにおいて、レールは、その長手方向の範囲がその横方向の範囲の倍数である剛体を意味すると理解される。レールは、その長手方向の全範囲にわたって一定の断面プロファイルを有することが好ましい。レールの長手範囲は制限されており、有限である。
【0027】
電気絶縁レールは、直線の長手方向の範囲を有することが好ましい。しかし、代替例として、湾曲または屈曲した長手方向の延長プロファイルを有するレールも考えられる。湾曲部または屈曲部は、この場合、長手方向範囲全体にわたって、または、長手方向範囲の1つ以上の小区画にわたって形成され得る。
【0028】
電気絶縁レールの断面プロファイルは、全ての従来型および技術的に顕著なプロファイル形態で形成することができる。レール内に配置された単一の電気導電体と、レールの外面上の導電性被覆の形成を成す電気導電体とを有する電気絶縁レールの場合、円形断面プロファイルは、同軸構造を実現するために有利である。
しかし、これとは別に、正方形、長方形、三角形、多角のまたは多角形、長円形または楕円形の断面プロファイルなども可能である。断面プロファイルの選択は、むしろ、レール内に配置される電気導体の数および配置に、より依存する。
【0029】
レールの外形は、好ましくは、その長手方向の全範囲にわたってキャビティを有することもできる。
【0030】
少なくとも1つの導電体は、好ましくは、それぞれ金属レールの形態であってもよい。代替例として、丸線または角線としての実施形態も可能である。好ましくは、誘電体レール内の個々の電気導体は、共通の押出工程で製造される。
【0031】
代替例として、各ケースにおける押出工程において、キャビティ、すなわちブッシングまたは切り欠き部が、レールの長手方向の全範囲にわたって個々の電気導体用の誘電体レール内に形成されることができる。
押出工程の後または中に、個々の電気導体がこれらのブッシュまたは切り欠きに挿入され、レールに固定される。
【0032】
誘電性レール内の各電気導電体の機械的締結は、関連する切り抜きまたはブッシュ内の圧入によって、力嵌め方式で行うことができる。代替として、例えば、接着接合による材料的に接合された接合部が考えられる。また、レールの軸方向端部をそれぞれの場合に1個のキャップで閉じることができる場合にも、形状適合接続が可能である。
レールの軸方向端部を越えて突出する個々の電気導体の軸方向端部が、例えば熱プロセスによって90°を介して好ましくは再成形されるとき、更なる可能な形状嵌合接続が考えられる。
【0033】
誘電体レール内の個々の電気導体の位置が、レールの外側からアクセス可能である場合、例えば、レールの長手方向の全範囲にわたって溝形の切欠きを形成する場合、個々の電気導体は、コーティングプロセス(被覆工程)によって誘電体レール上に構築することもできる。
【0034】
例えば、銅または真鍮などの従来の材料を、誘電体レール内の電気導体のための金属材料として使用することができる。低い線路損失を達成するために、導電体は、非常に良好な導電性を有し、送信される信号の周波数に一致する厚さを有する表面コーティングを備えるべきである。
【0035】
信号導体は、誘電体レールおよび金属境界と共に、線路長にわたって均質な所定の波動インピーダンスを有する導波路を生成する。
【0036】
有利な構成および発展形態は、さらなる従属請求項から、および図面の図を参照した説明から、把握することができる。
【0037】
本発明の範囲から逸脱することなく、上述の特徴および以下に説明する特徴を、それぞれ引用した組み合わせだけでなく、他の組み合わせまたはそれら自体で使用することができることは言うまでもない。
【0038】
本発明の好ましい実施形態では、トランシーバユニットの全てが、電界結合によって、電気線路に電磁波を供給するか、または、電気線路から電磁波を供給する。この目的のために、各トランシーバユニットは、関連する結合装置を介してレールベースのデータ伝送チャネルに結合される。
個々の結合装置は、各々反射を最小にするように構成することができるので、レールベースのデータ送信チャネルの軸方向端部のインピーダンス整合終端の場合には、データ送信チャネルにおける電磁波の反射を著しく低減することができる。
【0039】
2つのトランシーバユニット間のデータ伝送が、好ましくはデータ伝送チャネルの中心に配置され、アクセスポイントとして機能する、挿入されたトランシーバユニットを介して行われる場合、アクセスポイントとして機能するトランシーバユニットは、電界結合の代替として、流電結合を介してデータ伝送チャネルに結合することもできる。
アクセスポイントとして機能するトランシーバユニットは、レールベースのデータ伝送チャネルにおける各データ伝送において、送信機としてまたは受信機としてアクティブである。
したがって、流電結合の場合に、アクセスポイントとして作用するトランシーバユニットをレールベースのデータ送信チャネルの電気導体に接続する電気導体は、データ送信チャネルの電気スパー(electrical spur)を表すものではない。
したがって、流電結合は、アクセスポイントとして作用するトランシーバユニットの場合の代替の電界結合として、反射を最小限に抑えた形で構成される。
【0040】
誘電体レール内を走る各電気導電体は、流電結合の場合には、2つの電気導電体を介して、各場合にアクセスポイントとして作用するトランシーバユニットに接続される。流電結合の2つの電気導体は、λ/4・(2n+1)、好ましくはλ/4の軸方向間隔でレールベースのデータ伝送チャネルの関連する電気導体に接続される。
この場合、λはデータ伝送チャネルを伝搬する電磁波の波長であり、nは非負の整数である。
【0041】
本発明のさらに好ましい実施形態では、誘電体レールは、照明器具用のレールシステムと同様に、その長手方向の範囲に沿って切欠き部を有する。この切り欠き部は、好ましくは、長手方向の全範囲に亘って延在し、好ましくは長方形の断面プロフィールを有する。
しかしながら、他の技術的に合理的な断面プロファイル、例えば、三角形または多角形の断面プロファイルも考えられる。切欠き部は、まず、個々のトランシーバユニットをレールに機械的に固定するため、レールを建物に、好ましくは部屋またはホールの天井に機械的に固定するため、かつ、個々の導電体を配置またはガイドするために使用される。
【0042】
個々のトランシーバユニットをレールに、レールを建物に機械的に締結することは、本発明にとって必須ではない。それは、当技術分野で従来の締結技術を使用して達成することができる。
【0043】
個々の電気導電体は、好ましくは、切り欠き部の基部上に配置され、誘電体レール内またはその上に固定される。2つ以上の導電体が誘電体レール内に配置される場合、それらは、切り欠き部の基部上で互いに適切に離間されて配置され、誘電体レールに固定されるべきである。
個々の導電体は、代わりに、それぞれの場合において、関連する溝部内でガイドされ、形状嵌合、力嵌合または材料接着の様式で誘電体レールに接続され得る。個々の溝は、好ましくは、切欠き部の側壁および/または基部に形成することができる。
データ送信のための導電体用の溝の隣に、さらなる溝が、個々のトランシーバユニットおよび個々の照明器具に電圧を供給するためのさらなる導電体用の誘電体レールの切り欠き部に設けられてもよい。しかし、個々の導電体は、レールの誘電領域内に完全に導くこともでき、したがって、切り欠き部内にも、切り欠き部に隣接する溝内にも配置されない。
【0044】
縦軸方向に切り欠き部を有する誘電体レールも、内部導体に加えて、横方向表面に金属外部導体被覆を有する場合、「準同軸」断面プロファイルを有するデータ伝送チャネルが存在する。GHz範囲までの高周波電磁波は、このような「準同軸」データ伝送チャネルでも伝搬することができる。
【0045】
データ送信チャネル内外への各トランシーバユニット間の電磁波の給電は、好ましくは、結合装置を介して電磁的に行われる。このような電界結合は、電気的変数がもはや静止ではなく、むしろ時間可変、すなわち好ましくは1MHzよりも大きい場合に生じる。この場合、電界および磁界は、もはや分離された形ではなく、現在では、電磁界の形で結合された形式でのみ発生する。
【0046】
結合装置は、レール形状のデータ送信チャネルの軸方向端部に配置されていないとき、原理的に、レールの両方の縦軸方向に電磁波をデータ送信チャネルに結合または送信することができる。結合装置は、RF伝送チャネルとの両方の結合方向での近接界結合、すなわち、フィードインまたは送信およびフィードアウトまたは受信のために使用される。
【0047】
データ伝送チャネルにおける反射のために、互いに干渉する反射の重畳は、電気線路に沿って結果として生じる。結合高周波電磁波は、多数の波動成分への反射のために分割される。したがって、各反射電磁波は、異なる経路上を伝搬し、したがって、異なる振幅および位相の歪みを受ける。
異なる長さの経路においてそれぞれの場合に異なる振幅および位相歪である複数の電磁波成分の重畳からの高周波電磁波が受信される。この場合、個々の経路や電磁波の周波数によっては、ある周波数範囲でフェージングを起こすと不利に見える破壊的な干渉が発生することがある。
したがって、誘電体レールシステム内の干渉反射のこの非破壊重畳は、モバイルマルチウェイ伝送チャネル内の電磁波の重畳と同様に考えることができる。受信機における受信無線周波数RF信号の信号等化を改善するために、有利には、空間的多様性を利用しながら、いわゆる空間多重化が使用される。
【0048】
空間的多様性が使用される結合装置は、好ましくは、各々が電気端子を有する複数の結合要素、および/または、各々が電磁波を出し入れするための2つの電気端子を有する少なくとも1つの空間的に延長された結合要素を備える。
結合要素の各電気端子は、それぞれの場合に、結合装置に属する送受信ユニットに電気的に接続される。RF信号は、トランシーバユニットによって結合装置に供給されるか、RF信号は、結合要素の電気端子を介して結合装置からトランシーバユニットに供給される。
それゆえ、多入力多出力伝送システム(MIMO伝送システム)は、そのようなレールベースのデータ伝送チャネルとそのような設計を備えた結合装置を備える配置で実現できる。以下でさらに詳細に説明するMIMO等化部と組み合わせて、有利には、そのように歪んだ受信信号を良好な等化品質で等化することができる。
【0049】
2つの導電体を有するレールベースの伝送チャネルの場合、好ましくは、各々が電気端子を有する2つの結合要素、または、各々がフィードイン/送信およびフィードアウト/受信のために双方向に使用される2つの電気端子を有する空間的に延長された結合要素を備える結合装置を有する2×2 MIMO構造が開発される必要がある。
より高い数の伝搬可能なモードを有するレール内の複数の電気導体の場合には、MIMO構造の次数をより高くすることもでき、例えば、3×3 MIMO構造、4×4 MIMO構造または一般的にn×n MIMO構造(nはこの場合は自然数)とすることができる。電気端子の最大顕在数は、レールシステムで伝送されるモード数の2倍に相当する。
電磁波またはそれに対応する電気信号を結合するために各場合に使用される、結合装置内の各場合に含まれる結合要素のすべての電気端子の合計数は、各結合装置内のMIMO構造の順序に対応する必要はなく、むしろ、いくつかの結合装置の場合にはより小さくすることもできる。
【0050】
各場合、MIMO等化のための1つのユニットおよびMIMO駆動のための1つのユニットが各トランシーバユニットに設けられ、これらのユニットのそれぞれは、MIMO等化のために、かつ、MIMO駆動のために、介在するアナログおよび/またはデジタル信号処理ユニットを介してトランシーバユニットに属する結合装置の結合要素の電気端子に接続される。
【0051】
MIMO等化のためのユニットでは、送信トランシーバユニットによって送信されるRF信号のデータの再構築が行われる。空間的多様性を用いて、この場合、レールベース伝送システムにおける異なる伝搬経路に起因する送信RF信号の歪みを等化する。この空間的多様性は、送信機と受信機側の多重アンテナ配置により実現される。
多重アンテナ構成は、複数の結合要素を有する送信機側および受信機側の結合装置によって形成される。これらの結合要素は、それぞれの場合には、関連するトランシーバユニットのための1つの電気端子を有し、または、それぞれの場合には、関連するトランシーバユニットのための2つの電気端子を有する。
MIMO等化のために、従来のMIMO等化法を使用することができる。
【0052】
MIMO駆動のためのユニットでは、実質的に、結合装置の個々の電気端子に供給される高周波電気信号が生成される。この目的のために、送信されるデータは、使用されるMIMO送信方法に対応して、個々の高周波電気信号の間に分配され、高周波電気信号上に変調される。
それぞれの場合、異なるデータを有するそれぞれの高周波電気信号を、MIMO駆動用のユニットを介して、結合装置の個々の電気端子に供給することができる。代替として、すべてのデータを有する無線周波数の個々の信号の1つの同一または異なる線形結合を、結合装置の個々の電気端子にそれぞれ供給することも可能である。
まれな適用例では、それぞれの場合に同一のデータを有する同一の高周波電気信号を、結合装置の個々の電気端子に供給することもできる。
【0053】
結合装置は、第1の変形例において、方向性結合器の原理に従って設計することができる。個々の送受信ユニットにそれぞれ属する結合装置は、方向性結合器の第1の導電体を備え、レール内の導電体は、方向性結合器の第2の導電体を形成する。
したがって、結合装置および誘電体レール内の関連する電気導電体は、方向性結合器の2つの結合相手である。
【0054】
2×2 MIMO構造を実現するために、結合装置は、結果的に、トランシーバユニットへの電気的リンクのために2つの電気端子に接続される結合要素を備える。各場合、電気信号は、トランシーバユニットのMIMO駆動用のユニットから結合装置に供給されるか、または、これら2つの電気端子を介してトランシーバユニットのMIMO等化用のユニットに結合装置から供給される。
【0055】
高い結合係数を実現し、同時にレール内の電気導体への高いリターンロスを実現するために、結合装置の結合要素は、レール内の電気導体に対して適切に配置され、適切な寸法にされる必要がある。
【0056】
高い結合係数で結合を達成するために、結合装置は、切り欠き部を形成することなく、誘電体レール上に直接配置することができる。外側導体被覆は、この目的のために、結合装置の領域において露出されることが好ましい。
しかしながら、結合装置は、導波管内の電磁波の結合係数を増加させるために、誘電体レール内に形成される切欠き部内に突出することが好ましい。
【0057】
レールの長軸方向に送信される電磁波の電力の非常に小さい割合だけが結合装置を介してトランシーバユニットに結合されるため、結合・アウト処理を行う結合装置の領域におけるレールベースのデータ伝送システムの伝送損失は、比較的小さい降下(ディップ)しか有しない。
さらに、結合装置をレール上に伝達される電磁波に結合することは、適切に弱くなるように寸法化する必要があり、弱い反射しか発生せず、その結果、複数の結合装置がレールに沿って取り付けられた場合でも、信号の伝達がわずかな程度しか損なわれない。
【0058】
結合装置は、さらに、レールの外部導体被覆と、それぞれのトランシーバユニットの基準電位端子との間の外部導体結合を備える。この外部導体の結合は、流電結合によって、例えば、結合装置の結合要素に金属カバーを設けることによって、または代替的に容量結合によって行うことが好ましい。
【0059】
第2の変形例では、結合装置は、電場のための結合素子、すなわちE界結合要素、および/または、磁界のための結合要素、すなわちH界結合要素を含むこともできる。
E界結合要素は、小型モノポールアンテナまたは小型ダイポールアンテナの形成であることが好ましく、一方、H界結合要素は、小型ループアンテナの形成であることが好ましい。
E界磁結合要素は、トランシーバユニットに電気的に接続され、電気信号を出し入れする電気端子を有する。H界結合要素は、電気信号を出し入れするためにトランシーバユニットに電気的に接続される電気端子を有する。
H界結合要素の他方の電気端子は、トランシーバユニットの接地端子および/または誘電体レールの外側導体被覆に接続され、トランシーバユニットとの電気信号の出し入れには使用されない。
したがって、E界結合要素とH界結合素子はともに、近い場(界)における電磁波のフィードイン/送信およびフィードアウト/受信のために、双方向に設計される。
【0060】
2×2 MIMO構造の場合、2つのE界結合要素または2つのH界結合要素のいずれかが必要である。2×2 MIMO構造の結合装置の場合、1つのE界結合要素と1つのH界結合要素の組み合わせも考えられる。
この場合、Eおよび/またはH界結合要素は、電気線路に沿って互いに対して、波動力学によって予め定められた長手方向間隔で配置される必要がある。高次のMIMO構造の場合、E界結合要素および/またはH界結合要素の数は、それに対応して増加させる必要がある。
【0061】
個々のE界またはH界結合要素は、同様に、高い結合係数に関して相応に形成され、同時に高い反射損失と、誘電体レール内の切り欠き部に相応に配置される必要がある。外側導体結合に関しては、方向性結合器原理に従った結合装置に関して上述したものが等価に適用される。
【0062】
MIMO駆動用のユニットによってE界磁結合要素またはH界結合要素の電気端子に供給される高周波電気信号は、それぞれの場合に、レールの長手方向の両方向に伝搬するレールベースのデータ伝送チャネル内の電磁波に結合される。
各ケースにおいてE界結合要素またはH界結合要素から結合され、個々の電磁波の干渉反射が重畳された結果として生じる電磁波は、対応する高周波電気信号としてMIMO等化用のユニットに供給される。MIMO等化用のユニットでは、別のトランシーバユニットによって送信される2つの高周波電気信号の等化および再構成が行われる。
【0063】
さらにMIMO等化部において等化品質を改善するために、有利にはビーム成形が使用される。この目的のために、個々のトランシーバユニットは、レールの2つの縦軸方向にそれぞれ異なるRF信号を送信する。
【0064】
方向性結合器原理に従って機能する結合装置については、この目的のために、各々の場合に1つの異なる高周波電気信号、すなわち各々の場合に異なるデータが変調された1つの高周波電気信号が、トランシーバユニットのMIMO駆動用のユニットの送信モードで結合要素の2つの電気端子に供給される必要がある。
各々が異なるデータを有する2つのRF信号は、結合装置の方向作用により、各々の場合には、高周波電磁波に放射され、各々の場合には、レールの異なる縦軸方向に伝搬する。
受信モードでは、各場合において、レールシステムの2つの縦軸方向から伝搬する電磁波は、各場合において、結合装置の方向作用により、結合要素の2つの電気端子で別々に結合され、従って、別々にトランシーバユニットのMIMO等化用のユニットに供給される。
【0065】
レールの2つの縦軸方向に異なるデータ内容を有する電磁波中で結合するために、E界結合要素を有する結合装置において、2つのE界結合要素が必要である。2つのE界結合要素は、λ/4・(2n+1)、好ましくはλ/4の軸方向間隔で、レールの縦軸に沿って互いに離間される。
この場合、λはデータ伝送チャネルを伝搬する電磁波の波長であり、nは非負の整数である。MIMO駆動用のユニットは、各々の場合において、2つのE界磁結合要素の電気端子に第1電気信号および第2電気信号を注入するように設計される。
一方のE界結合要素において注入された第1の電気信号は、他方の結合要素において注入された第1の電気信号に対して90°を介して位相の遅れを有し、他方のE界結合要素において注入された第2の電気信号は、第1のE界結合要素において注入された第2の電気信号に対して90°を介して位相の遅れを有する。
【0066】
各々がレールの異なる縦軸方向に伝搬する異なるデータを有する2つの高周波電磁波が結合されるとき、それぞれが結合装置の電気端子を有する2つのE界結合要素は、2つの縦軸方向に異なるデータ内容を有する電磁波の結合のために既に使用されているものを使用することができる。
2つのE界磁結合要素の電気端子は、トランシーバユニットのMIMO等化用のユニットに接続される。MIMO等化用のユニットは、MIMO等化方法によって、それぞれの場合に、別のトランシーバユニットによって関連する結合装置内に結合される2つの電気信号を、それぞれの場合に、2つのE界結合要素の電気端子においてそれぞれの場合に供給される電気信号から再構成するように設計される。
【0067】
2つのE界磁結合要素の代わりに2つのH界磁結合要素が結合装置に使用される場合、レールの2つの縦軸方向に2つの異なるRF信号を送信または受信する手順は、2つのE界磁結合要素の場合と同等である。
【0068】
最後に、1つのE界結合要素および1つのH界結合要素を有する結合装置も可能である。
【0069】
異なるデータを有する電磁波をレールの異なる長手軸方向に供給するために、または、レールの異なる長手軸方向からこのような電磁波を供給するために、E界結合要素およびH界結合要素が必要とされる。
E界およびH界は互いに対して90°の位相ずれを有するので、それぞれの場合においてトランシーバユニットによって1つの電気信号が供給されるE界結合要素およびH界結合要素の電気端子は、レールの縦軸に沿って、n λ/2、好ましくはλ/2の軸方向間隔で離間される(この場合、nは0を含む非負の整数である)。
【0070】
一般に、レールベースの伝送システム内を伝搬する電磁波の送信周波数または送信周波数範囲、したがって波長または波長範囲は、個々の結合要素間のλ/4またはλ/2の間隔によって決定される結合装置の空間的広がりがコンパクトなサイズに達するように、高く選択されるべきである。
【0071】
複数のユーザによって使用されるレールベースのデータ送信チャネルは、2つのトランシーバユニット間の直接通信(いわゆるピア・ツー・ピア通信)から除外されるが、その理由は、そのようなデータ送信チャネルは、複数の伝送可能トランシーバユニットによって同時に使用することができないからである。
むしろ、共通の伝送媒体への個々のトランシーバユニットごとのアクセスを編成する必要がある。レールベースのデータ伝送チャネルにおけるデータ伝送は、好ましくは、マスター-スレーブ原理に従って実施されるべきである。
【0072】
1つのトランシーバユニットはマスターユニット(親機)形式であり、残りのトランシーバユニットはそれぞれスレーブユニット(子機)形式である。マスターユニットは、好ましくは、アクセスポイントの形成でもある。したがって、マスターユニットは、建物内のさらなるデータ伝送システム、好ましくはハードワイヤード・データ・ネットワークとのデータ・インタフェースを有する。
データ・インタフェースは、好ましくは、さらなるデータ伝送システムに、ガルバニック(流電的)に、または、有線方式で、もしくは、ワイヤレスで接続される。アクセスポイントは、好ましくは、マスターまたはスレーブユニットと建物内の電源との間のいずれの場合にも必要とされる電源インターフェースを含むことができる。
【0073】
伝送容量の走査および伝送容量の割り当ては、マスターユニットによって行われる。これは、例えば、IEEE 802.11のような個々の伝送規格において典型的に確立されている従来の方法を使用して行われる。
送信可能なスレーブユニットは、親機(いわゆる時分割多元接続(TDMA)方法)によって割り当てられた個々のタイムスロットで、受信トランシーバユニットに送信すべきデータを送信することができる。
また、時分割多元接続方法に代えて、周波数分割多元接続方法(FDMA(Frequency-Division Multiple Access)方法)や、符号分割多元接続方法(CDMA(Code-Division Multiple Access)方法)を用いることもできる。
周波数分割多元接続方法の特別なケースは、いわゆるOFDM方法(直交周波数分割多重)である。
【0074】
データ送信は、好ましくは、送信子機から親機へ、次いで親機から受信子機へ行われる。また、送信側の子機が、親機を介して、複数の受信側の子機、または、残りのすべての受信側の子機とデータ通信を行うマルチキャストモードも考えられる。
【0075】
トランシーバユニットが親機として動作し、したがって、どのトランシーバユニットが子機として動作するかの判定は、動作開始時に1回行われることが好ましい。好ましくは、建物の電源系への電力供給インターフェースを有するトランシーバユニットは、親機として作用する。
アドホックネットワークと同様に、トランシーバユニットが親機として動作し、したがってどのトランシーバユニットが子機として動作するかを特定の方法によって、特定の比較的長い時間フレーム内で個々のトランシーバユニットがそれらの間で判断することも考えられる。
後者の変形例は、時間とともに変化するトランシーバユニットを備えたレールベースのデータ伝送チャネルの場合に特に適している。
【0076】
親機が予め決定されるとき、親機の形態のトランシーバユニットは、好ましくは、レールの長手方向の範囲に沿って、幾何学的中心に、または、幾何学的中心の周りの軸方向領域に位置決めされる必要がある。
この場合、親機からレールの長手方向の一方に離間して配置されたトランシーバユニットの数は、親機からレールの長手方向の他方に離間して配置されたトランシーバユニットの数にほぼ対応する。
したがって、送信されるデータ量は、親機と2つのグループの子機との間でほぼ均等に高くなり、これらの子機は、それぞれ、レールの一方の縦軸方向または他方の縦軸方向に配置される。親機のこのような配置は、レールベースのデータ伝送チャネルの伝送容量の最良の可能な利用を可能にするので、ビーム成形法に特に適している。
【0077】
レールベースのデータ伝送システムの比較的大きな長手方向の範囲の場合には、本発明の好ましい発展として、データ伝送チャネルの電気線路は、複数のレールを有し、このレールは、端部側で互いに接続可能であり、電気的絶縁材料と、関連する相互接続可能な電気導体とからなる。
この場合の誘電体レールは、電気線路全体に沿った単位長さ当たりの連続的な誘電性を実現し、それによって伝送チャネルにおける電気的不完全性を回避するか、または、少なくとも最小化するために、端部における縁部に縁部が接触する。
【0078】
個々の連続する誘電体レールの軸方向接続は、接続されるべき2つのレールの間で直接行われるか、または、追加の接続要素によって行われる。
接続される2つのレールの直接接続の場合には、2つのレールの軸方向端部は、例えば円錐形状のプロファイルによる力嵌め接続、例えばラッチ要素対による形状嵌め接続、例えば接着接合による材料接着接続、または、ねじ接続手段が可能であるような形状にされる。
追加の接続手段を介した間接接続は、例えば、隣接するレールの軸方向端部の関連する切り欠き部に力嵌め方式でクランプされるクランプ要素を介して可能である。2つの隣接するレールは、カラーを介して外側で互いに接続することができ、カラーは、力嵌め方式または形状嵌め方式のいずれかで、もしくは、ねじ接続を介して、2つのレールに接続可能である。
【0079】
2つの隣接する誘電体レールの外部導体被覆の電気的接続は、好ましくは、既に上述したカラーによって実現することができる。互いに接続されるべき2つのレールの金属カラーと外部導体被覆との間の結合は、各場合においてλ/4共振器の形式であることが好ましい。
この目的のために、互いに接続されるレールの隣接する領域における金属カラーの長手方向の範囲は、いずれの場合も、導波管内を伝搬する電磁波の波長の4分の1に対応する。さらに、誘電体被覆が、λ/4重複部の領域において、金属カラーと金属外部導体被覆との間の個々のレールの金属外部導体被覆に適用される。
λ/4共振器として形作られたカラーにより、所定の帯域幅内での高周波電磁波の伝送のために、二つの隣接レール間の遷移における伝送損失を改善することができる。ここで重要なパラメータは、カラーの電気的長さである。
【0080】
内部導体の数に対応する多数の電気接触要素を有する接続要素は、内部導体として作用する個々の電気導体の電気的接続のために好ましくは使用することができる。誘電体レール内の接続要素の位置決めのために、それぞれの場合に、レールの軸方向端部に対応する形状の切り欠き部が形成される。
この切り欠き部は、接続要素がレールの誘電体領域において完全に消失するように設計されることが好ましい。個々の接触要素は、それぞれの場合に、関連する電気導体の軸方向端部に十分な接触圧力をかける1つの接触ラグをそれらの軸方向端部に有する。
個々の内部導体のこのような流電結合に加えて、代替の共振として、外部導体の接点閉路に基づくλ/4共振器によるDC分離結合も実現することができる。
【0081】
2つのレール間の電気的接続は、代わりに、接触要素を使用する接続要素なしで実施することもできる。この場合、電気的内部導体は、レールの軸方向端部を越えてレールの軸方向端部の一方に突出し、この領域内で接触ラグとして成形される。
【0082】
本発明の好ましい実施形態では、レールベースのデータ伝送システムの電気線路は、少なくとも2つの電気線路に分岐することができる。
【0083】
この場合、誘電体レールは、少なくとも2つの誘電体レールに分岐し、関連する電気導体は、それぞれの場合に、少なくとも2つの電気導体に分岐する。
このようにして、レールのリニア長手方向に沿って端末機器の項目をデータ伝送システムに接続することができるだけでなく、データ伝送システムに、エリア的に分散されるように配置された端末機器の項目を接続することができる。
【0084】
好ましくは、この分岐は、T字形またはY字形の形状であり得る。しかしながら、分岐の他の形状も考えられる。高周波電磁波の良好な伝送特性に関して、個々の分岐アーム間の分岐角度は、いずれの場合も鋭角を有してはならない。
好ましくは、分岐角度は、この場合、45°より大きく、特に好ましくは60°より大きく、非常に特に好ましくは90°または90°より大きくするべきである。
【0085】
すでに述べたように、レールベースのデータ伝送システムにおいて、複数の電気導体または複数対の電気導体を誘電体レール内に配置することができる。このように、それぞれの場合に異なるデータを持つ電磁波の複数の独立モードを、レールベースのデータ伝送システムで伝送することができる。
電磁波のそれぞれ独立したモードをレールシステムに送り、レールシステムから送り出すために、結合装置は、それぞれの場合において、それぞれの内部導体ごとに、または、それぞれの内部導体対ごとに別個の結合要素を有し、それぞれの結合要素は、送信モードおよび受信モードにおいてトランシーバユニットと別個のRF信号を交換する。
誘電体レール内のこれらの個々の伝送チャネル間のクロストークを最小限に抑えるために、好ましくは、金属遮蔽板が、その長手方向の範囲に沿って、誘電体レール内の個々の電気導体または個々の電気導体対の間に配置される必要がある。
【0086】
レールの軸方向端部における反射を最小限に抑え、従ってレールの長手方向の全範囲に沿った高周波電磁波の反射を最小限に抑えるために、各場合には、各内部導体とレールの軸方向両端部の外部導体との間に1つの低反射終端抵抗を接続するのが好ましい。
反射がない理想的な場合には、反射のないインピーダンス、すなわち整合インピーダンスが、各内部導体と外部導体との間に接続される。整合インピーダンスは、それぞれの内部導体のシングルエンド(回路の一方がアースしてある)システムインピーダンスに対応し、例えば50Ωである。
【0087】
2つの隣接する電気導体が、差動信号の伝送のために誘電体レール内でガイドされる場合、整合インピーダンスを、これらの2つの電気導体の間に接続する必要があり、これは、例えば、100Ωのようなシングルエンドシステムインピーダンスの2倍に対応する。
代替として、差動信号の伝送のための一対の電気導体の場合、整合インピーダンスを、各電気導体と、例えば50Ωのシングルエンドシステムインピーダンスに対応する誘電体レールの外部導体被覆との間に接続することができる。
【0088】
終端抵抗の実現は、それぞれの場合に、適切に成形された金属接続要素、例えば、スリーブまたはウェブを介して行うことができる。例えばSMD抵抗器のような別個の電気部品の使用も同様に可能である。
【0089】
MIMO等化が個々のトランシーバユニット内で実施されるので、高周波電磁波の反射がレールの軸方向端部で受信される場合、代替的に、内部導体および外部導体の軸方向端部は、それぞれの場合に、短絡接続を介して、または、不整合インピーダンスを介して接続され得る。
外部導体被覆を有しかつ内部導体を有さない誘電体レールの場合、レールの軸方向端面にも金属被覆を設けることができる。導電体の軸方向端部は、反射を受け入れることにより、代わりに、それぞれの場合において、非接続、すなわち開放とすることができる。
また、全反射は、レールの終端抵抗における伝送信号の信号線を減少させず、レール端部の不都合な加熱を回避するために、短絡回路によって、または開回路によって、導電体の軸方向端部において得られる。
【0090】
例えば、Bluetooth(登録商標)またはIEEE 802.11(WIFI(登録商標))のような現在の無線通信規格、または例えば、DOCSIS (Data Over Cable Services Interface Specification)のような現在の通信規格は、データ伝送チャネルにおけるデータ伝送に使用することができる。
【0091】
上記の構成および発展形態は、必要に応じて互いに組み合わせることができ、そうすることが合理的である。本発明のさらなる可能な構成、発展形態、および実装形態は、例示的な実施形態に関して上記または下記で説明された本発明の特徴の明示的に言及されていない組合せも含む。
特に、この場合、当業者は、本発明のそれぞれの基本的な形態に対する向上または追加として個々の態様をさらに追加する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
本発明は、図面の模式図に明記された例示的な実施形態を参照して、以下でより詳細に説明される。
同図における添付の同図は、本発明の実施形態のさらなる理解を与えることを意図している。それらは、実施形態を例示し、本発明の原理および概念を説明するために、説明とともに役立つ。
他の実施形態および上述の利点の多くは、図面から得ることができる。図面中の要素は、互いに対して必ずしも正確な縮尺で描かれていない。
図面の図において、同一の、機能的に同一の、および同一に作用する要素、特徴、および構成要件は、反対のことが明記されていない場合、それぞれ、同一の参照記号を与えられる。
図面は、相互に関連して、以下のテキストにおいて包括的に説明される。
図1】本発明によるデータ伝送システムの斜視図を示す。
図2】Aは、本発明によるデータ伝送システムにおける伝送チャネルの第1の実施形態の断面図を示す。Bは、本発明によるデータ伝送システムにおける伝送チャネルの第2の実施形態の断面図を示す。Cは、本発明によるデータ伝送システムにおける伝送チャネルの第3の実施形態の断面図を示す。Dは、本発明によるデータ伝送システムにおける伝送チャネルの第4の実施形態の断面図を示す。Eは、本発明によるデータ伝送システムにおける伝送チャネルの好ましい変形例の断面図を示す。Fは、本発明によるデータ伝送システムにおける伝送チャネルのさらなる変形例の断面図を示す。Gは、本発明によるデータ伝送システムにおける複数の伝送チャネルの断面図を示す。
図3AB】Aは、方向性結合器原理による結合装置、および関連するトランシーバユニットの説明図を示す。Bは、2つのE界結合素子と、関連するトランシーバユニットとを有する結合装置の説明図を示す。
図3CD】Cは、2つのH界結合要素および関連のトランシーバユニットを有する結合装置の説明図を示す。Dは、1つのE界結合要素および1つのH界場結合要素と、関連するトランシーバユニットとを有する結合装置の図を示す。
図3E】Eは、流電結合要素および関連のトランシーバユニットを有する結合装置の説明図を示す。
図4】Aは、非対称伝送チャネルの場合の終端インピーダンスを有する縦断面図を示す。Bは、差動モードにおける対称伝送チャネルの場合の終端インピーダンスを有する縦断面図を示す。Cは、コモンモードにおける対称伝送チャネルの場合の終端インピーダンスを有する縦断面図を示す。
図5】Aは、連結されていない状態において端部側で連結することができるレールの斜視図を示す。Bは、端部側で互いに接続された2つのレールの斜視図を示す。Cは、端部側で互いに接続された2つのレールの場合の外部導体接続の縦断面図の詳細を示す。
図6】レールベースのデータ伝送システムにおける分岐の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0093】
以下、本発明によるデータ伝送システムを、個々の図面を参照して詳細に説明する。
【0094】
図1に示すデータ伝送システム1は、データ伝送チャネル2と、データ伝送チャネル2の長手方向に沿って配置された複数のトランシーバユニット3とを有する。データ伝送チャネル2は、電気データ伝送チャネルであり、したがって、電気線路を含む。
この電気線路は、誘電体レール4と少なくとも1つの電気導電体5とを有し、この導電体は、誘電体レール4の長手方向の範囲に沿って各場合において延び、誘電体レール4に接続されている。誘電体レール4は、剛体の誘電材料から作られ、その縦軸6に沿った縦方向の範囲を有し、この縦軸6はその横方向の範囲の倍数である。
レールベースのデータ伝送システム1は、関連する導電体5または端部側で互いに電気的および機械的に接続され、関連する導電体5を有する、複数のレール4を有する単一のレール4を備えることができる。図1は、両端部にカラー7を介して互いに接続された2つの誘電体レール41および42を有するレールベースのデータ伝送システム1を示す。
【0095】
電気データ伝送チャネル2は、例えば、図2A図2Gに示されるように、複数の実施形態を有することができる。
【0096】
図2Aに示す電気データ送信チャネル2の第1の実施形態は、1つの誘電体レール4と、誘電体レール4の外側表面の横方向表面側に金属コーティングの形状をしている単一の電気導体(導電体)5とだけを備えている。
この金属コーティングは、個々のトランシーバユニット3がレール4上に配置される領域を除いて、誘電体レール4の側面全体に塗布される。レールの断面プロフィールは、好ましくは正方形である。しかしながら、他の技術的に合理的な断面プロファイルも考えられる。
このようなデータ伝送チャネル2では、電磁波は、レール4の縦軸6に沿って金属コーティング間で誘電体レール4内を伝搬することができる。トランシーバユニット3によって電気データ送信チャネル2に結合された電磁波は、レール4の長手方向の両方の軸方向に最も単純な場合に移動する。
レールベースのデータ伝送チャネル2は、その長手方向の全範囲にわたって均一な波インピーダンスを有する。
【0097】
レール4の軸方向端部8において、電気データ伝送チャネル2のこれらの軸方向端部8が、電気データ伝送チャネル2の波動インピーダンスに対応する整合終端抵抗によって終端されていない場合、電磁波の反射が生じ得る。
電気データ送信チャネル2の軸方向端部8が整合された形で終端されていない場合には、各場合において電磁波の反射が生じ、その結果、送信トランシーバユニット3と受信トランシーバユニット3との間の反射波も干渉する。
個々の反射電磁波間の干渉は、移動マルチウェイ伝送チャネルの場合と同様に、フェージングや歪みの影響と類似していると考えることができる。MIMO等化により、以下でさらに説明するように、個々の反射電磁波の干渉から生じる無線周波数受信信号に含まれるフェージングおよび歪み効果を等化することができる。
【0098】
図2Bに示す電気データ送信チャネル2の第2の実施形態では、2つの電気導体5が、誘電体レール4内で互いに離間して配置される。2つの電気導体5は、誘電体レール4の縦軸6と平行に走る。2つの電気導体5は、図2Bの矩形断面プロファイルを有する。代替として、別のプロファイル、例えば丸いプロファイルも可能である。
電磁波は、レール4の縦軸6に沿って差動モードで2つの電気導体5間を伝播することができる。したがって、差動RF信号、すなわち対称RF信号を、このような電気データ送信チャネル2内で送信することができ、この信号は、差動モードにおける無線周波数電磁波に対応する。
【0099】
図2Cに示す電気データ送信チャネル2の第3の実施形態は、誘電体レール4内で互いに離間して配置される2つの電気導体5に加えて、誘電体レール4の外面の横方向表面側に金属コーティングの形態をとる、さらなる電気導体5を有する。
誘電体レール4内に配置された2つの電気導体5は、内部導体を形成し、金属コーティングは、電気データ送信チャネル2の外部導体を形成する。電気データ伝送チャネル2の第3実施形態では、外部導体により、第2実施形態に比べて高い周波数のRF信号を伝送することができる。
【0100】
図2Dに示す電気データ送信チャネル2の第4の実施形態では、同軸構造が存在する。このために、円形の断面プロファイルを有する誘電体レール4の中心に電気導体5を配置し、誘電体レール4の外側表面の横方向表面に金属コーティングを施す。
非対称RF信号に対応する高周波電磁波は、このような設計を有する電気データ送信チャネル2内で送信することができる。
【0101】
図2Eに示す電気データ送信チャネル2の特定の実施形態では、誘電体レール4は、その長手方向の全範囲にわたって切り欠き部9を有する。この切り欠き部9は、矩形断面プロファイルを有する溝の形成に成形されることが好ましい。
しかし、他の基本断面プロファイル、例えば三角形の基本断面プロファイルも考えられる。誘電体レール4に固定される電気導電体5は、切り欠き部9の側壁上、好ましくは切り欠き部9の基部上に配置される。
金属コーティングが、切り抜き部9の外側の外面の横方向表面上の誘電体レール4に適用される。切り欠き部9の適切な寸法決めが与えられると、「準同軸」断面プロファイルを有する電気的データ伝送チャネル2が存在し、そこでは、高周波電磁波が導波され得る。
【0102】
図2Fに示す電気データ送信チャネル2の好適な実施形態の展開では、誘電体レール4の長手方向の軸方向にそれぞれの場合に延びる複数の溝10が、好ましくは切欠き部9の2つの側壁に成形され、さらに複数の導電体11が上記複数の溝10に案内される。
溝部10はそれぞれ、さらなる導電体11の断面プロファイルに対応する断面プロファイル、例えば、丸形または正方形の断面プロファイルを有する。さらなる導電体11は、好ましくは、力嵌めまたは代替的に形状嵌めまたは材料接着の方法で関連する溝部10内に固定される。
【0103】
これらのさらなる導電体11は、電力供給のための直流電流または単相交流電流のいずれかを、個々のトランシーバユニット、または追加の電気部品またはアセンブリ、例えば、照明器具に伝導する。
多導体システムにおいて、消費電力が増大する用途では三相交流の伝送も考えられる。また、さらなる導電体11は、更なる電気部品またはアセンブリを駆動するための駆動信号を伝達することができる。データ信号が重畳された電源導体も考えられる。
【0104】
最後に、図2Gは、誘電体レール4内に2つの導電体5の2つのペア12が図示されている電気データ送信チャネル2の実施形態を示しており、これらの導電体5は、電磁波の合計4つのモード、すなわち各々が異なるデータを有する2つの差動RF信号で送信する。
【0105】
これらの2つの電気データ伝送チャネル21および22間のクロストークを排除するか、または少なくとも最小限にするために、金属遮蔽板25が、レール4の長手方向範囲に沿って、2つの導電体5の2つのペア12の間の誘電体レール4内に配置される。
【0106】
以下のテキストでは、結合装置13による個々のトランシーバユニット3の電気データ送信チャネル2への結合が、図3A図3Eを参照して説明される。
【0107】
結合装置13の第1の変形例では、方向性結合器の技術原理が使用される。この場合の結合装置13は、方向性結合器の1つの結合相手を形成し、この目的のために、方向性結合器の第1の電気導体を結合要素14として有する。
誘電体レール4の内部を走る電気導体5は、方向性結合器の第2の電気導体を表す。このようなラインカプラの場合、第1の電気導体は、第2の電気導体に電磁気的に結合される。
【0108】
方向性結合器原理に従って動作する結合装置13は、電磁波を、内部電気導体5との誘導性結合および容量性結合を介して、データ伝送チャネル2内に結合する。等価な態様で、結合装置13は、データ送信チャネル2の中を伝搬する電磁波の部分的なエネルギを、データ送信チャネルの外に結合する。
方向性結合器の指向性により、結合装置13の電気端子15でトランシーバ装置3によって供給される高周波電気信号は、高周波電磁波のように結合され、無線周波電磁波は、レールベースのデータ伝送チャネル2の長軸方向に単独で伝搬する。
結合装置13の他方の電気端子15に供給された高周波電気信号は、レールベースのデータ伝送チャネル2の他方の縦軸方向に単一に伝搬する高周波電磁波として、方向性結合器の指向性のために結合される。
【0109】
方向性結合器の第1の電気導体により、方向性結合器原理に従って作動する結合装置13は、2つの電気端子15を有する結合要素14を有する。高い結合係数を達成するために、結合装置13の結合要素14は、誘電体レール4の金属外部導体被覆内の2つのブッシングを介してレール4内に形成された空洞に挿入され、したがってデータ伝送チャネル2の電気導体5にできるだけ近接して、かつできるだけ平行に配置される。
【0110】
さらに、結合装置13は、誘電体レール4上の金属コーティングを、それぞれのトランシーバユニット3の基準電位、好ましくは接地電位に電気的に接続する外部導体結合16を有する。
良好な遮蔽効果に関しては、好ましい実施形態における外部導体結合部16は、2つの金属スリーブを有し、これらの金属スリーブは、各々、誘電体レール4の外部導体被覆とトランシーバユニット3のハウジングとの間の領域において、電気端子15を備えた結合要素14の2つの端部セクションの1つを包絡する。
【0111】
結合要素14の2つの電気端子15は、関連するトランシーバユニット3のベースバンド信号処理のために、高周波電子機器(図示せず)を介して機能ユニットに電気的に接続される。結合装置13の2つの結合要素14は、「多重アンテナ配置」を形成し、各場合において、送信される1つのRF信号または1つの受信RF信号がその電気端子15に存在する。
複数のRF信号にそれぞれ属するベースバンド信号は、MIMOベースバンド信号処理において生成(送信モード)されるか、さらに処理(受信モード)される。受信モードでは、受信信号は、トランシーバユニット3内のベースバンド信号処理の一部であるMIMO等化部17用のユニット内で等化される。
送信モードでは、送信される2つの信号は、トランシーバユニット3内のベースバンド信号処理の一部であるMIMO駆動用ユニット18内で生成される。送信信号と受信信号の分離は、使用される無線伝送規格に応じて、例えば時分割多重または周波数分割多重を使用して行うことができる。
【0112】
方向性結合器原理による結合装置13を用いると、各々が異なるデータを有する2つのRF信号を2つの結合要素14に供給することが可能であり、したがって、各々が異なるデータを有する2つの電磁波を、各々が別々に、かつ同時に、レール4の2つの縦軸方向に結合することが可能である。
同時に、このような結合装置13を用いて、レール4の異なる長手軸方向にそれぞれの場合に伝搬する2つの電磁波を別々に結合することができる。従って、このような結合装置を用いてビーム成形が可能である。
【0113】
図3Bに示す結合装置13の第2の変形例では、各々が小さなモノポールアンテナまたはダイポールアンテナの形態である2つのE界結合素子が結合素子14として使用される。
このようなE界結合素子は、それぞれ、静電容量結合によって、電磁波をデータ送信チャネル2に結合するか、またはデータ送信チャネル2の外に結合することができる。
【0114】
このような結合装置13を用いれば、レールベースのデータ伝送チャネル2に結合される2つの電磁波についても可能である。MIMO等化用ユニット17では、別のトランシーバユニット3によってそれぞれの場合に送信される2つの電気信号は、レールベースのデータ伝送チャネル2から2つのE界結合要素を介して結合され、電気信号として2つの電気端子15を介してMIMO等化用ユニット17に供給される2つの電磁波からMIMO等化方法を使用して再構成することができる。
【0115】
MIMO等化用ユニット17内の送信された電気信号の等化および再構成を追加的に最適化するために、2つのE界結合要素を有する結合装置13は、それぞれの場合に、データ伝送チャネル内で互いに異なる一方向に伝搬する各々が異なるデータを有する2つの電磁波内で結合する。
このようにして、レールベースのデータ伝送システム1の2つの縦軸方向のうちの1つのそれぞれの場合における2つの内部結合電磁波のビームフォーミングが実現される。
【0116】
このために、2つのE界結合素子は、各々の場合において、λ/4・(2n+1)、好ましくはλ/4の軸方向間隔で、レール4の縦軸6に沿って互いに離間される。この場合、λは電磁波の波長であり、nは非負の整数である。
【0117】
さらに、MIMO駆動用ユニット18は、この目的のために、2つのE界結合要素の電気端子15に第1電気信号および第2電気信号をそれぞれの場合に注入するように設計されている。
一方のE界結合要素において注入される第1の電気信号は、他方のE界結合要素において注入される第1の電気信号に対して90°を介して位相の遅れを有し、他方のE界結合要素において注入される第2の電気信号は、第1のE界結合要素において注入される第2の電気信号に対して90°を介して位相の遅れを有する。
【0118】
第1の電気信号が、他方のE界結合要素に対して90°の位相シフトを有する一方のE界結合要素において供給され、かつ、一方のE界結合要素と他方のE界結合要素との間の軸方向間隔がλ/4に対応することから、それぞれの場合に第1の電気信号に属する電磁波は、一方のE界結合要素において破壊的にかつ他方のE界結合素子において建設的に互いに重ね合わされる。
したがって、電磁波は、データ伝送チャネル2の縦軸6に沿って、一方のE界結合要素から他方のE界結合要素へ、2つの第1電気信号の送り込みから単一に伝搬する。
【0119】
2つのE界結合要素における第2の電気信号の送り込みは、2つの第1電気信号の送り込みとは反対である。したがって、各ケースにおいて第2の電気信号に属する電磁波は、一方のE界結合要素において建設的に、他方のE界結合要素において破壊的に、互いに重ね合わされる。
したがって、電磁波は、他方のE界結合要素から一方のE界結合要素への、データ伝送チャネル2の縦軸6に沿った一縦軸方向において、2つの第2の電気信号の送り込みから単独に伝搬する。
【0120】
それぞれが異なるデータを有する2つの電磁波は、それぞれの場合に互いに異なる単一の縦軸方向のみに結合装置13によって放射されるため、データ送信チャネル2の軸方向端部8で反射される電磁波の干渉が低減される。
このため、結合装置13の電気端子15においてそれぞれの場合に送り出される2つの電気信号の歪みの程度が低減される。したがって、2つの送信された電気信号は、MIMO等化部17のためのユニット内でより良く再構成することができる。
【0121】
図3Cに示す第3の変形例の結合装置13では、各々が小型ループアンテナの形態である2つのH界結合要素を結合要素14として使用する。このようなH界結合要素は、誘導結合によって、電磁波をデータ送信チャネル2に、または、データ送信チャネル2から結合することができる。
H界結合要素は、単一の電気端子15を介してトランシーバユニット3に接続される。H界結合要素の他方の電気端子は、誘電体レール4の外部導体被覆に電気的に接続され、従って、外部導体被覆16を介してトランシーバユニット3の接地電位に接続される。H界結合要素の軸方向の範囲は、好ましくは、λ/4未満に選択されるべきである。
【0122】
2つのH界結合要素の電気端子15に、2つのRF信号が供給されることにより、2つのE界結合要素と等価な方法で、2つの電磁波をデータ送信チャネル2に結合し、データ送信チャネル2から出力することができる。
MIMO駆動用ユニット18およびMIMO等化用ユニット17における信号処理は、2つのE界結合要素を有する結合装置13の場合と同一である。
【0123】
ビーム成形のためには、同様に2つのH界結合要素が必要である。それぞれの場合においてMIMO駆動用ユニット18およびMIMO等化用ユニット17に接続されるそれぞれのH界結合素子の2つの電気端子15は、同様に、λ/4・(2n+1)の軸方向間隔、好ましくはλ/4で、レール4の縦軸6に沿って互いに離間される必要がある。
【0124】
ビーム成形中の2つのH界結合要素の電気端子15への第1の電気信号および第2の電気信号の注入は、2つのE界結合要素を有する結合装置の場合のビーム素子の場合と同じ様式で行われる。
【0125】
最後に、図3Dは、1つのE界結合要素および1つのH界結合要素を有する結合装置を示す。
【0126】
ビーム成形のために、MIMO駆動用ユニット18およびMIMO等化用ユニット17にそれぞれ電気的に接続されているE界結合要素およびH界結合要素の電気端子15は、レール4の縦軸6に沿って、λ/2・n、好ましくはλ/2の軸方向間隔で互いに離間されるべきである。
この場合、λは電磁波の波長であり、nはゼロを含む非負の整数である。これは、E界結合要素とH界結合要素が同一点に位置していてもよいことを意味している。
【0127】
最後に、図3Eは、流電結合(ガルバニックカップリング)を有する結合装置13を示している。
2つの結合要素14は、この目的のために、トランシーバユニットからまたはトランシーバユニットに高周波電気信号を送り込むまたは送り出すための各々の場合に、1つの電気端子15を有する。
レールベースのデータ伝送システム1の電気線路への2つの結合要素14の流電結合は、電気端子15を、レール4の電気導電体5に対してそれぞれ対向させた2つの結合要素14の素子端部の電気的および機械的な接続によって行われる。
2つの結合要素14と電気導電体5との間の電気的および機械的接続は、レールの縦軸6に沿って、λ/4 (2n+1)、好ましくはλ/4の軸方向間隔で互いに離間されている(nは、この場合、非負の自然数である)。
このような流電結合は、レールベースのデータ伝送システム1のアクセスポイントの形態であるトランシーバユニット3に対してのみ実現可能である。
【0128】
以下に続くテキストでは、誘電体レール4の軸方向端部8の構成が、同図4A、同図4B、および同図4Cを参照して説明される。
【0129】
データ伝送チャネル2の軸方向端部8は、電磁波の反射を最小限に抑えるために、適切に選択された終端抵抗19によって終端可能である。図4Aに示す非対称データ伝送チャネル2の場合、これは、導電性接続要素、例えばスリーブであり、この接続要素は、2つの電気導体5、すなわち内側導体と外側導体との間の軸方向端部8に配置される。
この導電性接続要素は、このような寸法に形成され、終端抵抗19がデータ伝送チャネル2の波動インピーダンス、例えば50Ωに対応するような導電性材料から製造される。
【0130】
対称的なデータ送信チャネルの場合、導電性接続要素、例えばビームが、図4Bに示すように、差動モード用に、2つの電気導体5、すなわち2つの内部導体の間で、データ送信チャネル2の軸方向端部8に配置される。
この導電性接続要素は、このような寸法にされ、終端抵抗19がデータ伝送チャネル2のシングルエンド(回路の一方がアースしてある)インピーダンスの2倍、例えば100Ωに対応するような導電性材料から製造される。
【0131】
対称的なデータ送信チャネルの場合、各々の場合、1つの導電性接続要素は、図4Cに示されるように、コモンモード用に、2つの内側導体のうちの1つと外側導体被覆との間でデータ送信チャネル2の軸方向端部8に配置される。
これらの導電性接続要素の各々は、それぞれの場合に、このような方法で寸法決めされ、終端抵抗19がデータ伝送チャネル2のシングルエンドインピーダンス、例えば50Ωに対応するような導電性材料から製造される。
【0132】
データ信号が2つの電源導体を介して追加的に送信される場合、2つの電源導体は、それぞれの場合に、第1変形例において、データ送信チャネル2の軸方向端部8において開いている、すなわち未接続である。
第2の変形例では、2つの電源導体は、高い静電容量を有するコンデンサを介して軸方向端8で互いに接続される。第3の変形例では、2つの電源導体の軸方向端部8は、高い静電容量と終端抵抗とを有するコンデンサからなる直列回路を介して互いに接続される。
【0133】
データ伝送チャネル2の軸方向端部8の整合終端に加えて、非整合終端抵抗を使用する非整合終端も考えられる。この場合、電磁波の信号電力は、データ伝送チャネル2の軸方向端部8で完全に破壊的な熱に変換されず、むしろ信号エネルギの一部は軸方向端部8で反射される。
個々の電気導体5の接続されていない軸方向端部、すなわち、開放された軸方向端部、または、個々の電気導体5間の短絡接続の場合の全反射の場合、信号電力の熱への破壊的な変換はない。
部分反射および全反射の場合、個々の反射電磁波の干渉が生じる。個々の反射電磁波のこれらの干渉は、トランシーバユニット3における受信信号のフェージングおよび歪みの影響をもたらす。受信した電気信号から元々送信された電気信号を再構成するために、MIMO等化部17用の上述のユニットが使用される。
【0134】
MIMOシステムは、原則として、多重反射で非常によく管理できる。したがって、レールの端部における無負荷動作は、信号送信に関しては問題を示さない。この終端が用いられていない場合には、有用な信号に含まれるエネルギの割合が終端において消散されないので、さらに良好な信号対雑音比が期待される。
【0135】
以下のテキストでは、端部で互いに接続される2つのレール4間のレールベースのデータ伝送チャネル2における電気導体5間の電気的接続について、図5A図5Cを参照して説明する。
【0136】
図5Aの斜視図は、図2Fに示す電気データ送信チャネル2の一実施形態の軸方向端部8を示す。
誘電体レール4の内部に配置されている全ての電気導体5は、誘電体レール4の終端側端部までは導かれない。
データ伝送チャネル2の内側導体が、その軸方向端部においてそのような方法で短くされるという事実の結果として、図5Bに示すように、誘電体接続要素20を、レール4の軸方向端部8の領域の端部において互いに接続されるべき2つのレール4の中に挿入することができる。
【0137】
接続要素20は、それぞれの場合に、互いに接続される電気導体5の各対に対して1つの導電性接触要素21を含む。個々の接触要素21の2つの軸方向端部には、それぞれの場合に接触ラグ22が形成されており、これら接触ラグは、2つのレール4の差し込まれた状況において、それぞれの電気導体5に十分な接触圧力を及ぼす。
接続要素20は、両端で互いに連結される2本のレール4を機械的に固定するためにも使用される。この目的のために、好ましくは、接続要素20の側壁は、圧入によって隣接するレール4との力嵌め接続を実現するために円錐形に形作られている。
代替として、接着剤結合による材料的に結合された接続、または、ラッチ要素の成形による形状嵌合接続も可能である。
【0138】
これに代わるものとして、接続要素20なしで端部において互いに接続されるべき2つのレール4の電気的および機械的接続も可能である。この目的のために、内部導体は、誘電体レール4の軸方向端部に対する軸方向端部において延在されて、接触ラグを含む。
機械的固定のために、端部側の延長部は、誘電体レール4の軸方向の一端にコーン(円錐状のもの)またはベベル(斜面)が形成される必要があり、このコーンまたはベベルは、力嵌め方式で、さらなるレール3の軸方向の端部の対応する切欠き部に挿入される。
【0139】
それぞれの場合に接続される2つの誘電体レール4上の金属外部導体被覆の電気的接続には、図5Cに示すように、すでに上述した非常に導電性の高いカラー7が使用される。
カラー7の電気的機能は、カラーの端部における電気的無負荷動作をレールセグメント間の当接面における短絡回路に変換する動作周波数に同調された2つの1/4波長共振器の直列回路として説明することができる。
【0140】
この目的のために、カラー7は、金属であるように設計され、レールベースのデータ伝送チャネル2内の電磁波の波長の半分のオーダーの電気長を有する。この場合の金属カラー7は、それぞれの場合に、その軸方向の範囲の半分、すなわち、波長の4分の1の電気長で重なり、それぞれの外側導体被覆は、2つの隣接するレール4のものである。
金属カラー7と外部導体被覆との間の共振結合を実現するために、外部導体被覆上の共振結合の領域に誘電体層23を付けることが好ましい。
【0141】
端部側で複数のレール4を接続することによるレールベースのデータ送信チャネル2の拡張に加えて、レールベースのデータ送信チャネル2での分岐も可能である。
図6は、全部で3つの分岐アーム24を有するレールベースのデータ伝送チャネル2のT字型分岐を示す。
分岐の他の実施形態、例えばY字型分岐も同様に考えられる。個々の分岐アーム24間の分岐角度は、分岐領域における反射を最小限に抑えるために、小さすぎないように、特に鋭角でないように構成されるべきである。
【0142】
以上、本発明を好適な実施の形態に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
図1
図2
図3AB
図3CD
図3E
図4
図5
図6