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特許7303961長尺の繊維強化熱可塑性樹脂製品の成形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】長尺の繊維強化熱可塑性樹脂製品の成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/84 20060101AFI20230629BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20230629BHJP
   B29C 70/52 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B29C70/84
B29C70/16
B29C70/52
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018245894
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020104419
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000143776
【氏名又は名称】株式会社佐藤鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100101524
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】仲井 朝美
(72)【発明者】
【氏名】大谷 章夫
(72)【発明者】
【氏名】大石 正樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 篤
(72)【発明者】
【氏名】半田 真一
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-169647(JP,A)
【文献】特開昭61-195825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/84
B29C 70/16
B29C 70/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂及び繊維を有する材料を用いて最終成形物を製造する成形装置であって、
所定の断面を有し一方向に延びるキャビティと、そのキャビティを前記材料が通過すべく当該材料を下流側に引き抜く引抜機構とを有し、長さ方向のいずれの部位においても同一の断面を有し一方向に延びる基本的形状を有する中間成形物を成形する引抜成形装置と、
前記引抜成形装置の下流側に設けられ、前記中間成形物に対して射出成形することによって付加的形状を付与する射出成形装置とを有し、
前記引抜成形装置は、前記射出成形装置に対して接近した接近位置と前記射出成形装置から離隔した離隔位置との間を移動可能であり、
前記引抜成形装置が前記離隔位置から前記接近位置に移動しつつ、当該引抜成形装置によって前記中間成形物を成形するとともに、当該中間成形物を前記射出成形装置に対して下流側に相対的に移動させる接近引抜状態と、前記引抜成形装置が前記接近位置から前記離隔位置に移動しつつ、当該引抜成形装置によって前記中間成形物を成形するとともに、当該中間成形物を前記射出成形装置に対して相対的に移動させない離隔引抜状態との間を変相し、
前記離隔引抜状態において前記射出成形装置によって前記中間成形物に対して前記付加的形状を付与すべく制御される、
成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の成形装置であって、
前記射出成形装置は、第1型及び第2型を有し、
前記第1型は、第1型待機位置と第1型型締位置との間を移動可能であり、
前記第2型は、第2型待機位置と第2型型締位置との間を移動可能であり、
前記第1型型締位置に位置する前記第1型と、前記第2型型締位置に位置する前記第2型とが前記中間成形物を挟持した状態で、当該中間成形物に対して射出成形するものである、
成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の繊維強化熱可塑性樹脂製品を成形するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維強化熱可塑性樹脂(熱可塑性樹脂及び繊維を有する材料)による成形物は、例えば、プレス成形等によって成形される場合がある。プレス成形に対して射出成形が加わる場合もある。
【0003】
ところで、一方向に長く延びる長尺物についても、繊維強化熱可塑性樹脂によって成形されることが求められている。
しかしながら、上述の技術(第1の従来技術)では、長尺物の長さに対応する長さを有する成形装置が必要となり、それではコストも高くなるとともに、大きなスペースを必要とすることとなる。
【0004】
一方で、繊維強化熱可塑性樹脂による長尺物は、次のように成形される場合がある(第2の従来技術)。
その成形装置は、所定の断面を有するキャビティを有している。そして、繊維を含んだ熱可塑性樹脂(材料)が、加熱されつつ、キャビティを通過すべく引き抜かれる。
こうして、長さ方向のいずれの部位においても同一断面を有し長く延びる長尺物が繊維強化熱可塑性樹脂によって形成される。
【0005】
ところで、基本的にはいずれの部位においても同一の断面を有する(基本的形状を有する)とともに、さらに、長さ方向の一部において付加的形状を有する長尺物についての需要もある。付加的形状を有することによって強度が補強される等のためである。
しかしながら、上述の技術(第2の従来技術)においては、そのような成形物を成形することは不可能である。
【0006】
なお、従来技術を示す特許文献として、下記に記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-136653号公報
【文献】特開2014-148124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、長さ方向のいずれの部位においても同一の断面を有し一方向に延びるという基本的形状を有するとともに、長さ方向の一部において付加的形状を有する長尺の繊維強化熱可塑性樹脂製品を成形するための技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様は、熱可塑性樹脂及び繊維を有する材料を用いて最終成形物を製造する成形装置であって、所定の断面を有し一方向に延びるキャビティと、そのキャビティを前記材料が通過すべく当該材料を下流側に引き抜く引抜機構とを有し、長さ方向のいずれの部位においても同一の断面を有し一方向に延びる基本的形状を有する中間成形物を成形する引抜成形装置と、前記引抜成形装置の下流側に設けられ、前記中間成形物に対して射出成形することによって付加的形状を付与する射出成形装置とを有し、前記引抜成形装置は、前記射出成形装置に対して接近した接近位置と前記射出成形装置から離隔した離隔位置との間を移動可能であり、前記引抜成形装置が前記離隔位置から前記接近位置に移動しつつ、当該引抜成形装置によって前記中間成形物を成形するとともに、当該中間成形物を前記射出成形装置に対して下流側に相対的に移動させる接近引抜状態と、前記引抜成形装置が前記接近位置から前記離隔位置に移動しつつ、当該引抜成形装置によって前記中間成形物を成形するとともに、当該中間成形物を前記射出成形装置に対して相対的に移動させない離隔引抜状態との間を変相し、前記離隔引抜状態において前記射出成形装置によって前記中間成形物に対して前記付加的形状を付与すべく制御される、成形装置である。
【0010】
この態様の成形装置では、次の作用効果が得られる。
引抜成形装置においては、引抜機構によって材料が引き抜かれることによって、当該材料が、所定の断面を有し一方向に延びるキャビティを通過する。こうして、長さ方向のいずれの部位においても同一の断面を有し一方向に延びる基本的形状を有する中間成形物が成形される。
そして、引抜成形装置の下流側に設けられた射出成形装置において、中間成形物に対して射出成形されて付加的形状が付与される。こうして、最終成形物が成形される。
【0011】
すなわち、接近引抜状態においては、引抜成形装置が離隔位置から接近位置に移動しつつ、当該引抜成形装置によって中間成形物が成形されるとともに、中間成形物が射出成形装置に対して下流側に相対的に移動する。
離隔引抜状態においては、引抜成形装置が接近位置から離隔位置に移動しつつ、当該引抜成形装置によって中間成形物が成形されるとともに、中間成形物が射出成形装置に対して相対的に移動しない。
そして、その離隔引抜状態において、射出成形装置によって中間成形物に対して付加的形状が付与され、最終成形物が成形されるのである
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様の成形装置であって、前記射出成形装置は、第1型及び第2型を有し、前記第1型は、第1型待機位置と第1型型締位置との間を移動可能であり、前記第2型は、第2型待機位置と第2型型締位置との間を移動可能であり、前記第1型型締位置に位置する前記第1型と、前記第2型型締位置に位置する前記第2型とが前記中間成形物を挟持した状態で、当該中間成形物に対して射出成形するものである、成形装置である。
【0013】
この態様の成形装置では、第1の態様の成形装置の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
引抜成形装置から射出成形装置に流入してくる中間成形物に対して射出成形をしない状態においては、中間成形物/最終成形物は、第1型待機位置に位置する第1型と、第2型待機位置に位置する第2型との間において、円滑に射出成形装置を移動することが可能である。
一方、中間成形物に対して射出成形をしようとする状態においては、第1型型締位置に位置する第1型と、第2型型締位置に位置する第2型とが中間成形物を挟持することによって、当該中間成形物に対して適切に射出成形される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例の成形装置を示す側面図である。
図2】本発明の一実施例の成形装置のうちの引抜成形装置を示す正面図である。
図3】本発明の一実施例の成形装置のうちの引抜成形装置の型を取り出して示す図である。(a)は側断面図であり、(b1)は正面図(上流側から見た図)であり、(b2)は背面図(下流側から見た図)である。
図4】本発明の一実施例の成形装置のうちの引抜成形装置の型を取り出して示す分解斜視図である。(a)は上型を示す図(斜め下方から見た図)であり、(b)は下型を示す図(斜め上方から見た図)である。
図5】本発明の一実施例の成形装置のうちの射出成形装置の上型及び下型を示す側面図(上型が上型下降位置に位置し、下型が下型上昇位置に位置する状態を示す図)である。
図6】本発明の一実施例の成形装置のうちの射出成形装置の上型及び下型を示す分解斜視図である。(a)は上型を示す図(斜め下方から見た図)であり、(b)は下型を示す図(斜め上方から見た図)である。
図7】本発明の一実施例の成形装置の制御装置及びその接続状態を示すブロック図である。
図8A】本発明の一実施例の成形装置のうちの作用を示す図である。当初の段階を示す図である。
図8B】本発明の一実施例の成形装置のうちの作用を示す図である。図8Aの次の段階を示す図である。
図8C】本発明の一実施例の成形装置のうちの作用を示す図である。図8Bの次の段階を示す図である。
図8D】本発明の一実施例の成形装置のうちの作用を示す図である。図8Cの次の段階を示す図である。
図8E】本発明の一実施例の成形装置のうちの作用を示す図である。図8Dの次の段階を示す図である。
図9】本発明の一実施例の成形装置によって成形される対象物(ワーク)を示す斜視図である。(a)は材料を示し、(b)は中間成形物を示し、(c)は最終成形物を示す。(b)及び(c)においては、中間成形物/最終成形物は、上下反転されて示されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の一実施例について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この成形装置は、引抜成形装置10及び射出成形装置70を有しているとともに、制御装置90(図7)を有している。
そして、この成形装置は、熱可塑性樹脂及び繊維からなる材料(被成形物)W1(図9(a))を用いて、中間成形物W2(図9(b))の成形を経て、成形物(最終成形物)W3(図9(c))を成形(製造)するものである。
なお、材料W1,中間成形物W2,最終成形物W3、及び、それらの間の状態のものを総称して、ワークWということとする。
【0016】
図9(a)に示すように、材料W1は、可撓性を有するとともに帯状をなす長尺物である。すなわち、材料W1は、長さ方向において同一の幅を有するとともに一方向に延びている。
図9(b)に示すように、中間成形物W2は、上下反転された角張った略U字状(角U字状)断面を有し、一方向(長さ方向)に延びるという基本的形状を有する長尺物である。すなわち、中間成形物W2は、一対の縦壁部Vと、両者の上端部同士をつなぐ上板部Uを有している。
図9(c)に示すように、最終成形物W3は、上記の基本的形状を有するとともに、その長さ方向の一部において、所定の間隔を隔ててリブR(付加的形状)を有する長尺物である。リブRは、板状をしており、上板部U及び一対の縦壁部Vをつないでいる。
【0017】
図1及び図7に基づいて前述したように、この成形装置は、引抜成形装置10及び射出成形装置70を有しているとともに、制御装置90を有している。制御装置90によって、引抜成形装置10及び射出成形装置70の作動が制御される。
引抜成形装置10及び射出成形装置70は直列的に配置されており、射出成形装置70は引抜成形装置10の下流側に位置している。
そして、長尺状の材料W1(図9(a))が、引抜成形装置10によって中間成形物W2(図9(b))に成形される。その後、その中間成形物W2が、射出成形装置70によって最終成形物W3(図9(c))に成形される。
すなわち、図8A図8Eに示すように、この成形装置の作動状態において、上流側から下流側にかけて材料W1・中間成形物W2・最終成形物W3が長さ方向に一体となったもの(上下反転したもの)が存在することとなる。
【0018】
図1に示すように、射出成形装置70は、位置固定的に据え付けられている。
一方、引抜成形装置10は、接近位置(接近状態)(図1中実線で示す)と離隔位置(離隔状態)(図1中二点鎖線で示す)との間を移動(変位)可能に設けられている。
接近位置(接近状態)とは、射出成形装置70に接近した位置(状態)であり、離隔位置(離隔状態)とは、射出成形装置70から離隔した位置(状態)である。
【0019】
引抜成形装置10は、上流側から下流側にかけて、予備的加熱装置20,型30(下型30A及び上型30B),冷却装置40,引抜装置50(引抜機構)を有している。
引抜成形装置10はフレーム11を有しており、予備的加熱装置20,型30(下型30A及び上型30B),冷却装置40,引抜装置50は、フレーム11に対して設けられている。
【0020】
図1及び図2に示すように、引抜成形装置10には、ベース60が伴っている。ベース60は位置固定的に据え付けられている。
ベース60は、材料W1(ワークW)の長さ方向(移動方向)に延びている。ベース60には、一対のレール62が設けられている。各レール62に対応して、フレーム11には、その移動方向に沿って複数対の把跨部12が設けられている。
【0021】
引抜成形装置10(フレーム11)は、移動用モータ14によって、把跨部12において一対のレール62に沿って、接近位置と離隔位置との間を移動可能である。
すなわち、移動用モータ14は、フレーム11に固定されており、移動用モータ14の回転軸にはピニオン15が固定されている。一方、ベース60にはラック65が設けられており、ピニオン15がラック65にかみ合っている。
そして、移動用モータ14の回転に伴うピニオン15の回転(正方向/逆方向の回転)によって、ピニオン15に対してラック65が自身の長さ方向に沿って相対的に移動し、結果的には引抜成形装置10(フレーム11)がワークWの長さ方向(移動方向)に沿って往復移動する。
【0022】
移動用モータ14は、制御装置90(図7)に接続されている。移動用モータ14の回転軸の回転度合いが制御装置90において認識され、引抜成形装置10の位置及び移動速度が認識される。それとともに、移動用モータ14の回転軸の回転度合いが制御装置90に制御され、引抜成形装置10の位置及び移動速度が制御される。
【0023】
図1に示すように、予備的加熱装置20は、型30(下型30A及び上型30B)に流入する直前の材料W1(ワークW)を加熱するものである。すなわち、図2に示すように、予備的加熱装置20は、材料W1の左右両側に位置し、材料W1を加熱する。
【0024】
図1に示すように、引抜成形装置10は、型30を有している。型30は、下型30A及び上型30Bが結合されて形成されている。
型30(下型30A及び上型30B)は、一方向(材料W1(ワークW)の長さ方向(移動方向))に沿って長く延び、フレーム11に対して位置固定的に設けられている。下型30A及び上型30Bには、電熱線による加熱機構(図示省略)が設けられている。
【0025】
図3に示すように、下型30Aと上型30Bとの間にはキャビティ35が設けられている。キャビティ35は、型30の長さ方向に沿って長く延びている。
図4に示すように、下型30Aには凹部35Aが設けられており、それに対応して、上型30Bには凸部35Bが設けられている。凹部35A及び凸部35Bは、型30(下型30A及び上形30B)の長さ方向に沿っている。凹部35Aと凸部35Bとの間の部分がキャビティ35(図3)である。
【0026】
図3に示すように、キャビティ35のうち、上流部及び中流部は、漸狭断面部31であり、同じく下流部は同一断面部32である。
下型30Aの凹部35Aは、その長さ方向のいずれの部位においても同一の大きさ・形状を有している。
上型30Bの凸部35Bは、同一断面部32においては、その長さ方向のいずれの部位においても同一の大きさ・形状を有しており、漸狭断面部31においては、下流側から上流側に向けて、ほぼ相似の形状を維持しつつ徐々に小さくなっている。
【0027】
そして、同一断面部32におけるキャビティ35の断面は、一律的に、中間成形物W2の断面に対応している。すなわち、同一断面部32においては、その長さ方向のいずれの部位においても、中間成形物W2の断面に対応した角U字状をしており、その幅は中間成形物W2の肉厚に対応している。
【0028】
漸狭断面部31においては、下流側から上流側に向かうにつれて、キャビティ35の断面の幅が徐々に広くなっている。すなわち、漸狭断面部31の断面も角U字状をしているが、型30(漸狭断面部31)の上流端においては、中間成形物W2の肉厚よりもかなり広い幅を有し、上流側から下流側に向かうにつれて、その幅が徐々に狭くなっていき、同一断面部32に至っている。
【0029】
図1に示すように、冷却装置40は、型30(下型30A及び上型30B)の下流側に設けられている。冷却装置40は、型30(上型30B及び下型30A)から流出した直後のワークWに対して、その左右両側から空気を噴出して、ワークWを冷却するものである。
【0030】
図1に示すように、引抜装置50は、上下に2対のローラ52A,52Bを有している。各ローラ52A,52Bは引抜駆動用モータ54によって回転し、引抜装置50(ローラ52A,52B)は、冷却装置40の下流側において、中間成形物W2(ワークW)を相対的に下流側に移動させる。
こうして、引抜装置50は、材料W1(ワークW)を型30(キャビティ35)の上流端(開口)を通して型30内に引き込んで(型30内に流入させ)、型30(キャビティ35)内をその上流端から下流端に移動させ、型30(キャビティ35)の下流端(開口)を通して型30外に引き抜く(型30外に流出させる)。
さらに、引抜装置50は、中間成形物W2(ワークW)を射出成形装置70に導入し、最終成形物W3を射出成形装置70から流出させる、ということにも寄与する。
【0031】
引抜駆動用モータ54は、制御装置90(図7)に接続されている。引抜駆動用モータ54の回転軸の回転度合いが制御装置90において認識され、ワークWの位置及び移動速度が認識される。それとともに、引抜駆動用モータ54の回転軸の回転度合いが制御装置90に制御され、ワークWの位置及び移動速度が制御される。
【0032】
そして、図1に示すように、引抜成形装置10においては、材料W1(図9(a))が引抜装置50の作動によって下流側に移動しつつ、予備的加熱装置20において予備的に加熱されてやや軟化し、そのやや軟化した材料W1(ワークW)が型30のキャビティ35(図3)に流入する。
【0033】
その後、ワークWは、キャビティ35(図3)内においてさらに加熱されてさらに軟化しつつ、キャビティ35内を移動する。その際、漸狭断面部31において徐々に所定の形状(中間成形物W2の形状)に近づけられていき、同一断面部32において所定の形状(中間成形物W2の形状)になじんでいく。
【0034】
その後、ワークWが型30から流出した後には、冷却装置40(図1)によって冷却され、所定の形状に維持されることとなり、中間成形物W2(上下反転状態)(図9(b))の成形が完了することとなる。
【0035】
図1に示すように、射出成形装置70は、下型80A(第1型)及び上型80B(第2型)を有している。下型80A及び上型80Bとも可動型である。
下型80Aは、下型用シリンダ72Aの作動によって、下降位置(実線で示す)と上昇位置(二点鎖線で示す)との間を上下動可能である。下降位置(下型下降位置)は待機位置(第1型待機位置)であり、上昇位置(下型上昇位置)は型締位置(第1型型締位置)である。
同様に、上型80Bは、上型用シリンダ72Bの作動によって、上昇位置(実線で示す)と下降位置(二点鎖線で示す)との間を上下動可能である。上昇位置(上型上昇位置)は待機位置(第2型待機位置)であり、下降位置(上型下降位置)は型締位置(第2型型締位置)である。
【0036】
図6に示すように、下型80Aの上面には、溝85Aが形成されている。溝85Aは、ワークW(中間成形物W2/最終成形物W3)の移動方向に沿って延びており、下型80Aの上面の上流端から下流端にまで及んでいる。
溝85Aの幅及び深さは、中間成形物W2/最終成形物W3の幅及び高さに対応している。正確には、中間成形物W2/最終成形物W3のいずれも外側の幅(両縦壁部Vの外面間の距離)及び高さ(上板部Uの上面と両縦壁部Vの上端部との間の距離)に対応している。
【0037】
上型80Bの下面には、嵌合突出部85Bが設けられている。嵌合突出部85Bは、下型80Aの溝85Aのうちの一部(中央及びその近傍)に対応して、細長い直方体状をしている。
嵌合突出部85Bの幅及び深さは、中間成形物W2/最終成形物W3の幅及び高さに対応している。正確には、中間成形物W2/最終成形物W3のいずれも内側の幅(両縦壁部Vの内面間の距離)及び高さ(上板部Uの下面と両縦壁部Vの上端部との間の距離)に対応している。
【0038】
図5に示すように、上型80Bの上部には、溶融樹脂流入部81が形成されている。溶融樹脂流入部81には、射出装置75(図1)が接続されている。射出装置75は、制御装置90(図7)に接続されている。
図5に示すように、上型80Bには、溶融樹脂流路82が形成されている。溶融樹脂流路82は、その上端部において溶融樹脂流入部81に接続されている。溶融樹脂流路82は、上型80B内を下方に延び、途中で3本に分岐し、嵌合突出部85Bに至っている。
図5及び図6に示すように、嵌合突出部85Bにおいては、最終成形物W3(図9(c))の3つのリブRに対応して、3つのリブ形成溝部86が形成されている。
【0039】
そして、射出成形装置70(図1)においては、下型80Aが下型下降位置に位置し、上型80Bが上型上昇位置に位置する状態(いずれも図1中実線で示す)で、ワークW(中間成形物W2/最終成形物W3)(上下反転状態)は移動可能である。
【0040】
一方、ワークW(中間成形物W2)(上下反転状態)が移動しない状態で、上型80Bが上型下降位置に位置する(図1中二点鎖線で示す)ことによって、嵌合突出部85B(図6(a))がワークW(中間成形物W2)の内部(一対の縦板部V(図9(b))の間)に嵌合する。また、下型80Aが下型上昇位置に位置する(図1中二点鎖線で示す)ことによって、ワークW(中間成形物W2)が下型80Aの溝85Aに嵌合する。
こうして、下型80Aの溝85Aと上型80Bの嵌合突出部85Bとが、中間成形物W2(上下反転状態)を挟持することとなる。
【0041】
その状態で、射出装置75(図1)の作動に基づいて溶融樹脂流入部81(図5)を通して流入した溶融樹脂が溶融樹脂流路82を流れ、嵌合突出部85Bの3つのリブ形成溝部86に充填され中間成形物W2(上下反転状態)(図9(b))の両縦壁部Vの内面及び上板部Uの下面に接触し、その後、当該リブ形成溝部86に充填された溶融樹脂が固化する。それとともに下型80Aが下降し、上型80Bが上昇することによって、中間成形物W2に3つのリブRが形成され、最終成形物W3(図9(c))が成形される。
【0042】
下型用シリンダ72A・上型用シリンダ72B(図1)及び射出装置75(図1)は、制御装置90(図7)に接続されている。そして、引抜成形装置10の位置及びワークWの状況(移動/停止状況)に連動して、下型用シリンダ72A・上型用シリンダ72B及び射出装置75の作動が制御される。
【0043】
次に、この成形装置の制御内容及び作用効果について説明する。
引抜駆動用モータ54(図1)は、基本的に、常に同速度で同方向に回転するようにされる。
これによって、ワークW(材料W1/中間成形物W2)は、引抜成形装置10に対して基本的に同速度で下流側に移動する(図8A図8Eも参照)。すなわち、材料W1(図9(a))は、引抜装置50(ローラ52A,52B)によって型80(キャビティ35)を基本的に同速度で下流側に移動し、中間成形物W2(図9(b))が成形される。この工程が「引抜成形工程」である。
【0044】
一方、移動用モータ14(図1)については、正方向への回転・逆方向への回転の間を適宜切り換えられる。
これによって、引抜成形装置10は、離隔位置(前述したように図1中二点鎖線で示す。図8Aも参照)から接近位置(前述したように図1中実線で示す。図8Bも参照)に移動したり、接近位置から離隔位置に移動したりする。
離隔位置から接近位置への移動速度は、引抜装置50によるワークW(材料W1/中間成形物W2)の移動速度と基本的に同一であり、接近位置から離隔位置への移動速度は、引抜装置50によるワークW(材料W1/中間成形物W2)の移動速度と基本的に逆方向に同一である。
【0045】
図8A図8Bに示すように、射出成形装置70において下型80Aは下型下降位置に位置し上型80Bは上型上昇位置に位置した状態で、引抜成形装置10が離隔位置から接近位置に向かって移動することによって、中間成形物W2は、射出成形装置70を下流側に移動する。すなわち、下型80A(下型下降位置)と上型80B(上型上昇位置)との間の空間を円滑に移動する。この状態が「接近引抜状態」である。その移動速度は、基本的に引抜装置50の移動速度の2倍の速度である。
【0046】
図8Bに示すように引抜成形装置10が接近位置に位置した後には、図8B図8C図8D図8E図8Aに示すように、引抜装置50は、接近位置から離隔位置に向かって移動する。その際には、中間成形物W2は、射出成形装置70に対して基本的に停止した状態となる。この状態が「離隔引抜状態」である。
その状態において、射出成形装置70において射出成形され、最終成形物W3が成形される。この工程が「射出成形工程」である。
【0047】
すなわち、図8B図8Cに示すように、上型80Bが上型上昇位置から上型下降位置に向かって移動(下降)する。上型80Bが上型下降位置に到達した直後に、図8C図8Dに示すように、下型80Aが下型下降位置から下型上昇位置に向かって移動(上昇)する。
そして、図8Dに示すように、下型80Aが下型上昇位置に到達して下型80Aの溝85Aと上型80Bの嵌合突出部85Bとが中間成形物W2(上下反転状態)を挟持することになった直後に、射出装置75が作動状態にされ、溶融樹脂が中間成形物W2に供給される。
【0048】
その直後に、図8D図8Eに示すように、下型80Aが下型上昇位置から下型下降位置に向かって移動(下降)し、上型80Bが上型下降位置から上型上昇位置に向かって移動(上昇)する。それとともに、引抜成形装置10はさらに離隔位置に向かって移動し、図8Aの状態に戻る。
【0049】
以上が繰り返されることによって、材料W1から中間成形物W2が連続的に成形され、中間成形物W2から最終成形物W3が間欠的に成形される。
【0050】
なお、上記のものはあくまで本発明の一実施例にすぎず、当業者の知識に基づいて種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。
【0051】
例えば、上記の実施例では、射出成形装置70が移動せず、引抜成形装置10が射出成形装置70に対して接近位置と離隔位置との間を移動するが、それとは逆に、引抜成形装置10が移動せず、射出成形装置70が引抜成形装置10に対して接近位置と離隔位置との間を移動するようにされてもよい。
また、引抜成形装置10及び射出成形装置70の双方が、相互に対して接近位置と離隔位置との間を移動するようにされてもよい。
【0052】
また、中間成形物(W2)及び最終成形物(W3)の形状は、図9(b)(c)に基づいて説明したものに限らず、種々のものが適用され得る。
例えば、「基本的形状」は、V字状断面や台形状断面を有し、一方向に延びるというものでもよい。また、「付加的形状」は、基本的形状に対応して種々の形状があり得る。
また、上記の実施例のものが上下反転されたもの、又は、90度回転されたものでもよい。
【0053】
また、射出成形装置70において、上記の実施例では、第1型及び第2型として、下型80A及び上型80Bが設けられているが、左型及び右型が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 引抜成形装置
14 移動用モータ
35 キャビティ
50 引抜装置(引抜機構)
70 射出成形装置
80A 下型(第1型)
80B 上型(第2型)
W ワーク
W1 材料
W2 中間成形物
W3 最終成形物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9