(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】帯掛機
(51)【国際特許分類】
B65B 13/22 20060101AFI20230629BHJP
B65B 13/02 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B65B13/22 A
B65B13/02
(21)【出願番号】P 2023064018
(22)【出願日】2023-04-11
【審査請求日】2023-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592089205
【氏名又は名称】久米機電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143111
【氏名又は名称】青山 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】久米 隆司
【審査官】西塚 祐斗
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-282617(JP,A)
【文献】特開平05-097113(JP,A)
【文献】特開2003-146305(JP,A)
【文献】米国特許第03946539(US,A)
【文献】米国特許第05766280(US,A)
【文献】米国特許第06082254(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 11/00
B65B 13/00-13/34
B65B 27/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤格納部を有するシート体を積層させてなる積層体の周囲に帯体を帯掛けさせる帯掛機において、
周回手段と、帯体送出手段と、調整手段とを含み、
前記周回手段が、搬送手段と折返し手段とを有し、
前記積層体の第1の面を底面として、第2の面を前面として、第3の面を天面として、第4の面を後面として、
前記搬送手段が、前記帯体に前記積層体を押しあてながら搬送して、第1の面から第3の面まで、前記帯体を順に周回させ、
前記折返し手段が、昇降可能な板状体を備え、前記板状体が、供給ロールから第3の面に伸びている帯体を折り返して、第1の面に接しさせるように降下されて、前記帯体を第4の面に周回させ、
前記帯体送出手段が、滑動抵抗体からなり、前記板状体による帯体の降下速度に対して前記帯体の供給速度を相対的に小さくさせ、第4の面に接する前記帯体の折り返し先方に張力を発生させ、
前記調整手段が中央演算処理手段からなり、作動開始調整手段と、供給調整手段として機能され、
前記作動開始調整手段が、前記帯体を第4の面に周回中に、前記滑動抵抗体を前記帯体に接触させる作動開始時を変え、
前記供給調整手段が、前記滑動抵抗体による滑動抵抗の増減により、前記帯体の供給速度を変え、
前記作動開始時と前記供給速度の夫々が、前記錠剤格納部の積層形態又は前記シート体の材質に応じた前記積層体の変形容易性と、前記帯体の伸縮性とにより決定され、
前記帯体が、前記積層体を変形させず且つゆるまない張力で前記積層体に帯掛けされる、
ことを特徴とする帯掛機。
【請求項2】
前記供給調整手段が、供給速度設定手段と供給遅延制御手段とを備え、
前記供給速度設定手段が、前記帯体の供給速度の速度閾値を設定させ、
前記供給遅延制御手段が、前記供給速度を前記速度閾値以下にさせないように制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の帯掛機。
【請求項3】
前記帯体送出手段が、一対のローラと、ローラ間隔調整手段と、ローラ回転検知手段と、ローラ滑動手段とを備え、
前記一対のローラが、前記帯体の折り返し後方の位置に前記帯体の面を挟んで、予め、前記帯体の面から離間して配されると共に、前記滑動抵抗としての回転抵抗を有し、
前記ローラ間隔調整手段が、前記一対のローラで前記帯体を挟ませ、前記作動開始調整手段と前記供給調整手段として機能し、
前記ローラ回転検知手段が、ローラ回転状態を検知し、
前記供給速度が前記速度閾値に相当するローラ回転状態となるときに、前記ローラ滑動手段が、前記ローラを滑動させて回転抵抗を減少させ、前記帯体の供給速度を増加させ、前記供給遅延制御手段として機能される、
ことを特徴とする請求項2に記載の帯掛機。
【請求項4】
前記帯体送出手段が、接触体と、移動手段と、速度検知手段とを備え、
前記接触体が、前記帯体の折り返し後方の位置に、予め、前記帯体の面から離間して配されると共に、摩擦抵抗を有し、
前記接触体が、前記滑動抵抗体として機能され、
前記移動手段が、前記帯体に向けて前記接触体を移動させて接触させ、前記作動開始調整手段と前記供給調整手段として機能し、
前記速度検知手段が、前記供給速度を検知し、
前記供給速度が前記速度閾値となるときに、前記移動手段が、前記接触体を復帰する方向に移動させて、前記滑動抵抗としての摩擦抵抗を減少させ、前記帯体の供給速度を増加させ、前記供給遅延制御手段として機能される、
ことを特徴とする請求項2に記載の帯掛機。
【請求項5】
更に、前記帯掛機が、熱溶着手段と切断手段とを含み、
前記熱溶着手段が、第1の面から伸びる前記帯体の始端内面と、第4の面から伸びる前記帯体の終端内面とを所定の帯長で熱溶着させ、
前記切断手段が、前記帯長の範囲で前記帯体を切断させ、
熱溶着により繋がった状態の前記帯体と、帯掛けされた積層体とが切り離される、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の帯掛機。
【請求項6】
前記帯掛機が、バイオマス樹脂フィルムからなる帯体による帯掛けに適し、
前記調整手段が、溶着条件調整手段として機能され、
予め、前記帯体をなす樹脂フィルムのバイオマス度に応じた、前記熱溶着手段の溶着温度と溶着時間の複数の組が設定され、
前記溶着条件調整手段が、前記熱溶着手段の溶着温度と溶着時間を、前記複数の組のいずれかから選択させる、
ことを特徴とする請求項5に記載の帯掛機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤等のシート体を積層させた積層体の一方向の周囲に、帯体を帯掛けする帯掛機に関する。詳細には、帯体に掛ける張力が調整可能とされ、シート体の変形容易性や帯体の伸縮性に拘わらず、また、温度変化により積層体が縮むことがあっても、積層体を変形させず且つゆるまない張力で積層体に帯掛けさせる帯掛機に関する。
【背景技術】
【0002】
帯掛けがされるシート体には、例えば、錠剤格納部を有するPTPシート、粉粒体を収容させた分包シート等がある。PTPシートの場合には、上流の製造工程において、錠剤格納部を有する表側シートに、錠剤を投入させてから裏面シートを熱溶着させ、製造させたばかりの温かい状態のPTPシートを積層させ、帯掛機に受け渡している。帯掛機では、熱溶着性を有するフィルムからなる帯体を、温かい状態の積層体の一方向の周囲に巻いて、帯体の始端と終端とを熱溶着させて帯掛けさせている。
【0003】
温かかった積層体が、帯掛後に放熱により縮むために、帯体がゆるまないように張力をかけて積層体に帯掛けする必要がある。しかし、帯体に張力をかけすぎると積層体をなすPTPシートが湾曲するように変形し、帯体の張力をゆるくすると、放熱により縮んだ積層体が帯体から引き抜けやすいという課題があった。
【0004】
PTPシートの帯掛態様は、帯体の貼り合わせ方の違いにより、封筒貼り形式と称される帯掛態様(
図7(A)図参照)と、合掌貼り形式と称される帯掛態様(
図7(B)図参照)とがある。封筒貼り形式とは、積層体に巻いた帯体の両端部を重ねて熱溶着させるときに、帯体の始端の外面に、終端の内面が重ねられる帯掛態様である。
【0005】
封筒貼り形式の場合には、帯体の終端502の位置の外面から、ヒートシーラ503を押しあてて、終端502の内面に始端501の外面を熱溶着させて、帯体を一体にして積層体200を帯掛けさせている(
図7(A)図参照)。そのため、ヒートシーラからの熱が、帯体500からPTPシート200に伝わりやすく、ヒートシーラの温度を220℃以上に高くする必要があり、薬品の品質を劣化させる可能性があるという課題があった。
【0006】
一方、合掌貼り形式とは、積層体に巻いた帯体の端部の内面同士を接しさせて溶着させる帯掛態様である(
図7(B)図参照)。帯体で積層体の周囲を一方向に巻き、帯体の始端304の位置の内面と終端305の位置の内面とを接しさせて挟み、挟んだ外面から、ヒートシーラ40により熱溶着させている。
【0007】
合掌貼り形式は、重ねた帯体だけを挟んで熱溶着させるため、ヒートシーラ40の熱が逃げにくく、ヒートシーラ自体の温度を、封筒貼り形式よりも約50℃から70℃低くすることができ、且つ、積層体の外で挟んだ帯体の端部だけを加熱させるため、薬品の品質を劣化させる可能性が小さいという利点がある。
【0008】
反面、合掌貼り形式の場合には、熱溶着部が積層体の周囲から外方に張り出しているため、箱詰め・袋包装の際に、熱溶着した端部が包装箱等の開口部に引っ掛かる可能性もあり、熱溶着部306の突き出し長さを小さくすることが重要であった(
図7(B)図の斜線部分参照)。例えば、突き出し長さを、2mm以下に高精度に管理することが必要であった。
【0009】
ところで、CO2排出削減に寄与するため、これまで化石燃料由来の樹脂から製造されていた帯体も、バイオマス由来の樹脂材料、化石燃料由来の樹脂とバイオマス由来の樹脂との混合材料、紙基材に樹脂層を積層させた複合材料へと多様化している。帯体に含まれるバイオマス由来の樹脂の割合(以下、バイオマス度という。)が高くなると、樹脂の主成分が同一であっても、化石燃料由来の樹脂のみで製造した場合とは、熱溶着開始温度、伸縮性等が異なってくる。
【0010】
特許文献1には、バイオマス由来のエチレンを含む樹脂フィルムの技術が開示されている。この文献に記載の技術によれば、低密度ポリエチレンのバイオマス度を高くした場合は、従来の化石燃料由来の樹脂フィルムに対して、熱溶着開始温度を約10℃から約20℃高くする必要があるとされている。
【0011】
従来の樹脂フィルムからバイオマス度の高い樹脂フィルムに置き換えて帯掛けするためには、ヒートシーラの温度を高くする必要があるが、薬剤への熱影響を回避するために、積層体を外した位置で帯体を熱溶着させる合掌貼り形式の必要性が増大している。
【0012】
また、近年ではPTPシート自体の材質も多様化しており、錠剤格納部が弾性復元性の小さい材質からなることもある。具体的には、紫外線による薬剤の変質を避けるために、錠剤格納部が膨らんで形成された表側シートもアルミシートとされる場合には、従来の復元性のある樹脂製の表側シートに比べて錠剤格納部が潰れやすく、帯掛時に変形が残留した不良品が発生しやすくなっている。
【0013】
更に、従来のように抱き合わせて積層させないで、錠剤格納部を一方向に向けて積層させることがある。奇数枚の積層体に帯掛けされることもあり、抱き合わせ可能なPTPシートであっても、錠剤格納部と帯体とが直接に接する場合がある等、PTPシートの積層方式も多様化している。PTPシートの材質、積層方式、帯体の材質の多様化に伴って、錠剤格納部が潰れやすく不良品が発生しやすくなっているという新たな課題が発生している。
【0014】
特許文献2には、本出願人による合掌貼り形式の帯掛機が開示されている。この文献に記載の技術によれば、供給させる帯体を二つ折りにしてバランサにより荷重を掛けることにより、常に一定の張力を掛けながら帯体を供給させている。更に、帯体の内面同士を重ねるときに、ブレーキ装置を供給ロールに押しあてて回転を完全に停止させることにより、帯体の送り量を調整させている。
【0015】
ブレーキ装置により帯体の供給を急停止させることにより、帯体に短時間に強い力を掛けて、帯体を引き伸ばしながら帯掛けさせることができ、帯掛後に積層体が縮んでも、帯体自体も縮むため帯掛けがゆるみにくいという効果があった。反面、帯体に短時間に強い力をかけると、変形しやすいアルミシートを積層させた積層体、帯体が錠剤格納部に接する積層体等の場合には、錠剤格納部が潰れやすくなるという新たな課題が発生した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
特許文献1:特開2012-251006号公報
特許文献2:実開昭54-49397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、積層体をなすシート体の変形しやすさ、帯体の伸縮性、帯掛の前後における積層体の温度変化が多様であっても、シート体を変形させにくく、且つ、帯掛けがゆるみにくい帯掛機を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の発明は、錠剤格納部を有するシート体を積層させてなる積層体の周囲に帯体を帯掛けさせる帯掛機において、周回手段と、帯体送出手段と、調整手段とを含み、前記周回手段が、搬送手段と折返し手段とを有し、前記積層体の第1の面を底面として、第2の面を前面として、第3の面を天面として、第4の面を後面として、前記搬送手段が、前記帯体に前記積層体を押しあてながら搬送して、第1の面から第3の面まで、前記帯体を順に周回させ、前記折返し手段が、昇降可能な板状体を備え、前記板状体が、供給ロールから第3の面に伸びている帯体を折り返して、第1の面に接しさせるように降下されて、前記帯体を第4の面に周回させ、前記帯体送出手段が、滑動抵抗体からなり、前記板状体による帯体の降下速度に対して前記帯体の供給速度を相対的に小さくさせ、第4の面に接する前記帯体の折り返し先方に張力を発生させ、前記調整手段が中央演算処理手段からなり、作動開始調整手段と、供給調整手段として機能され、前記作動開始調整手段が、前記帯体を第4の面に周回中に、前記滑動抵抗体を前記帯体に接触させる作動開始時を変え、前記供給調整手段が、前記滑動抵抗体による滑動抵抗の増減により、前記帯体の供給速度を変え、前記作動開始時と前記供給速度の夫々が、前記錠剤格納部の積層形態又は前記シート体の材質に応じた前記積層体の変形容易性と、前記帯体の伸縮性とにより決定され、前記帯体が、前記積層体を変形させず且つゆるまない張力で前記積層体に帯掛けされることを特徴としている。
【0019】
搬送レールに沿って積層体を搬送しながら、帯体に積層体を押しあてて、第1の面から第3の面に帯体を周回させてから、供給ロールから第3の面に伸びている帯体を、上方から降下させた板状体で、第4の面に沿って折り返すようにして、帯体を積層体に一周させる。帯体送出手段は、板状体の降下速度に対して、帯体の供給速度を相対的に小さくさせ、第4の面に沿った帯体の折返し先方に張力を発生させる。発生された張力により、帯体が緊張した状態で積層体に周回され、ゆるみが発生しない状態とされる。
【0020】
帯体送出手段の作動開始時は、調整手段がなす作動開始調整手段により変更可能であり、帯体の供給速度は、調整手段がなす供給調整手段により変更可能とされる。調整手段は、帯掛機の駆動を制御するプログラマブルロジックコントローラ(以下PLCという)等の中央演算処理手段に機能させればよい。シート体を巻いている慣性力が大きい供給ロール自体を、ブレーキ装置により制動させる場合と比べて、張力の制御が容易であると共に多様な制御が可能である。
【0021】
供給調整手段は、慣性により供給されている帯体に滑動抵抗体を当接させて、滑動抵抗の増減により供給速度を変更させればよいが、駆動モータを備えさせて、駆動モータの駆動制御により、供給速度を変更させてもよい。滑動抵抗体の態様と滑動抵抗の増減の態様は限定されず、帯体を挟んだ挟持体の挟持力の増減、帯体に当接させるブレーキパッドの当接力の増減等限定されないのは勿論のことである。なお、滑動抵抗とは、帯体が滑り動く際の抵抗を称している。
【0022】
積層体の変形容易性はPTPシートの材質、積層形態等により、帯体の伸縮性は帯体の幅、材質、厚さ等による。積層体を帯掛けする際に、伸縮性の小さい帯体を使って、短時間に急激に張力を加えるようにすると、積層体を変形させやすい。一方、張力を長時間かけるようにすると生産効率が低下する。そこで作動開始時と供給速度の夫々を、積層体の変形容易性と帯体の伸縮性に応じて決定させるようにしている。
【0023】
変形が残留しやすいアルミ製のPTPシートの積層体や、最上段が錠剤格納部である積層体の場合には、伸縮性の高い帯体を使って、小さな張力を長時間作用させ、不良品を出さないようにすればよい。具体的には、伸縮性が高く且つ小さな張力となる帯体を、早いタイミングで張力をかけ始め、帯体を長く伸ばして、小さな張力で帯掛けするようにすればよい。
【0024】
一方、従来の樹脂製のPTPシートを抱き合わせた積層体のように、変形しにくい積層体の場合には、帯体の種類に応じた張力を短時間作用させ、換言すれば、溶着直前の僅かな距離だけに張力を作用させればよい。帯体の伸び量が小さい状態でゆるみなく帯掛けさせるには、伸縮性の小さな紙素材に樹脂層を積層させた複合材料からなる帯体が適している。
【0025】
また、温度変化により積層体の周長が変化しやすい場合は、帯体自体もストレッチフィルムと称される伸縮性の高い材質、例えばポリエチレン製のフィルムを使用して、積層体の縮小に、帯体の縮小が追随するようにしておけば、帯体がゆるむことがない。伸縮性が高い材質の帯体は、積層体の変形しやすさに応じて、張力発生時点と張力を決定すればよく、適用対象が広い。
【0026】
本発明の第1の発明によれば、シート体の変形のしやすさ、帯体の伸縮性、結束前後における積層体の温度変化に応じて、張力値と張力作用時間を変化させて、帯掛けすることができる。特に、小さな張力で、伸縮性が高い帯体により、変形しやすい積層体の変形を抑制しつつ且つゆるまないように帯掛けすることができるという従来にない有利な効果を奏する。
【0027】
本発明の第2の発明は、第1の発明の帯掛機において、前記供給調整手段が、供給速度設定手段と供給遅延制御手段とを備え、前記供給速度設定手段が、前記帯体の供給速度の速度閾値を設定させ、前記供給遅延制御手段が、前記供給速度を前記速度閾値以下にさせないように制御することを特徴としている。
【0028】
板状体が降下するにつれて、帯体の供給抵抗は増大し、帯体の供給速度が低下することになる。帯体の供給速度が低下すると、板状体の降下速度との相対的な速度差が大きくなり、張力が過大になることがある。しかし第2の発明によれば、設定した速度閾値以下にならないように、帯体の供給速度が制御されているため、張力が過大にならず、積層体を変形させないように、効率的に帯掛けすることができるという効果を奏する。
【0029】
本発明の第3の発明は、第2の発明の帯掛機であって、前記帯体送出手段が、一対のローラと、ローラ間隔調整手段と、ローラ回転検知手段と、ローラ滑動手段とを備え、前記一対のローラが、前記帯体の折り返し後方の位置に前記帯体の面を挟んで、予め、前記帯体の面から離間して配されると共に、前記滑動抵抗としての回転抵抗を有し、前記ローラ間隔調整手段が、前記一対のローラで前記帯体を挟ませ、前記作動開始調整手段と前記供給調整手段として機能し、前記ローラ回転検知手段が、ローラ回転状態を検知し、前記供給速度が前記速度閾値に相当するローラ回転状態となるときに、前記ローラ滑動手段が、前記ローラを滑動させて回転抵抗を減少させ、前記帯体の供給速度を増加させ、前記供給遅延制御手段として機能されることを特徴としている。
【0030】
第3の発明によれば、帯体送出手段をなす回転抵抗を有する一対のローラにより、帯体を挟んで、帯体の折返し先方に張力を発生させている。ローラ間隔調整手段が、作動開始調整手段と供給調整手段として機能し、ローラ間隔を狭くして帯体を挟んだタイミングが帯体送出手段の作動開始時とされ、帯体を挟んだローラの回転抵抗が供給速度を低下させる。
【0031】
また、ローラ回転検知手段が、ローラの回転抵抗を検知し、供給速度が速度閾値に相当するローラ回転状態となったときには、帯体をローラから滑り出させるように、ローラを滑動させて、供給速度が速度閾値以下にならないように制御される。ローラ回転検知手段は。ローラが電動駆動される場合には、電流値の変動により検知させればよい。
【0032】
ローラが電動機を有さない場合には、ローラの回転速度を検知して、速度閾値相当の回転状態を検知させればよい。第3の発明によれば、ローラから帯体を僅かに滑り出させるだけで、供給速度を速度閾値以下にさせず、容易且つ滑らかに供給速度を変化させることができるという効果を奏する。
【0033】
本発明の第4の発明は、第2の発明の帯掛機において、前記帯体送出手段が、接触体と、移動手段と、速度検知手段とを備え、前記接触体が、前記帯体の折り返し後方の位置に、予め、前記帯体の面から離間して配されると共に、摩擦抵抗を有し、前記接触体が、前記滑動抵抗体として機能され、前記移動手段が、前記帯体に向けて前記接触体を移動させて接触させ、前記作動開始調整手段と前記供給調整手段として機能し、前記速度検知手段が、前記供給速度を検知し、前記供給速度が前記速度閾値となるときに、前記移動手段が、前記接触体を復帰する方向に移動させて、前記滑動抵抗としての摩擦抵抗を減少させ、前記帯体の供給速度を増加させ、前記供給遅延制御手段として機能されることを特徴としている。
【0034】
第4の発明によれば、帯体送出手段をなす摩擦抵抗を有する接触体により、帯体の折返し先方に張力を発生させている。接触体の材質・形状は限定されず、帯体に接して帯体の供給を遅延させる摩擦抵抗を有すればよい。移動手段が接触体を帯体に接しさせたタイミングが、帯体送出手段の作動開始時とされ、接触体の摩擦抵抗が供給速度を低下させる。
【0035】
また、速度検知手段は、供給速度を検知し、供給速度が速度閾値になったときには、接触体を帯体から復帰する方向に移動させ、摩擦抵抗を減少させて、供給速度が速度閾値以下にならないように制御される。第4の発明によれば、移動手段により接触体を帯体に押しあてる距離を変化させるだけで、供給速度を速度閾値以下にさせず、簡単な機構で、容易且つ滑らかに供給速度を変化させることができるという効果を奏する。
【0036】
本発明の第5の発明は、第1から第4の発明の帯掛機において、更に、前記帯掛機が、熱溶着手段と切断手段とを含み、前記熱溶着手段が、第1の面から伸びる前記帯体の始端内面と、第4の面から伸びる前記帯体の終端内面とを所定の帯長で熱溶着させ、前記切断手段が、前記帯長の範囲で前記帯体を切断させ、熱溶着により繋がった状態の前記帯体と、帯掛けされた積層体とが切り離されることを特徴としている。
【0037】
第5の発明によれば、積層体を合掌貼り形式により帯掛けさせるため、帯体を溶着させるときの熱が積層体をなすシート体に伝わりにくい。熱による内容物の変質を防ぐ必要があるシート体、例えば薬剤のPTPシート等の帯掛けに適し、また、バイオマス樹脂フィルム等の熱溶着開始温度の高い帯体の帯掛けに適している
【0038】
ここで、先方と後方との中間部においての熱溶着は任意とされている。折返し手段が所定の帯長さで、帯体の始端内面と終端内面とを挟んで接触させた部分だけを熱溶着させ、熱溶着部の先方と後方との間を切断させている。熱溶着手段は積層体に熱を伝えず、且つ、熱溶着部の長さを短くさせても精度よく切断させることができる。これにより、医薬品を収容したPTPシートを結束させる場合であっても、薬剤を熱により変質させにくく、熱溶着部を短く形成させることができる。
【0039】
本発明の第6の発明は、第5の発明の帯掛機において、バイオマス樹脂フィルムからなる帯体による帯掛けに適し、前記調整手段が、溶着条件調整手段として機能され、予め、前記帯体をなす樹脂フィルムのバイオマス度に応じた、前記熱溶着手段の溶着温度と溶着時間の複数の組が設定され、前記溶着条件調整手段が、前記熱溶着手段の溶着温度と溶着時間を、前記複数の組のいずれかから選択させることを特徴としている。
【0040】
第6の発明によれば、帯体のバイオマス度に応じた、複数の溶着温度と溶着時間の組が設定され、帯体を容易に交換できる汎用性の高い帯掛機とすることができる。これにより、使用者がCO2排出削減の要請に応じて、適切な帯体を選択することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0041】
・第1の発明によれば、シート体の変形のしやすさ、帯体の伸縮性、結束前後における積層体の温度変化に応じて、張力値と張力作用時間を変化させて、帯掛けすることができる。特に、小さな張力で、伸縮性が高い帯体により、変形しやすい積層体の変形を抑制しつつ且つゆるまないように帯掛けすることができるという従来にない有利な効果を奏する。
・第2の発明によれば、設定した速度閾値以下にならないように、帯体の供給速度が制御されているため、張力が過大にならず、積層体を変形させないように、効率的に帯掛けすることができるという効果を奏する。
【0042】
・第3の発明によれば、ローラから帯体を僅かに滑り出させるだけで、供給速度を速度閾値以下にさせず、容易且つ滑らかに供給速度を変化させることができるという効果を奏する。
・第4の発明によれば、簡単な機構で、容易且つ滑らかに供給速度を変化させることができるという効果を奏する。
・第5の発明によれば、医薬品を収容したPTPシートを結束させる場合であっても、薬剤を熱により変質させにくく、熱溶着部を短く形成させることができる。
・第6の発明によれば、使用者がCO2排出削減の要請に応じて、適切な帯体を選択することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】PTPシートの製造ラインの概要図(実施例1)。
【
図7】封筒貼り形式と合掌貼り形式の説明図(従来例)。
【発明を実施するための形態】
【0044】
積層体の連続した一方向の周囲に、帯体を帯掛けする帯掛機に、最後の第4の面に帯体を巻いているときに作用させる帯体送出手段と調整手段とを備えさせた。帯体の供給速度を、帯体を折り返して降下させる板状体の降下速度よりも、帯体送出手段により相対的に小さくさせ、帯体の折返し先方に張力を発生させると共に、調整手段により帯体の供給速度と帯体送出手段の作動タイミングとを変化させ、張力発生時と張力とを変化させるようにした。
【実施例1】
【0045】
実施例1では、積層体に帯掛けする帯掛機1を、
図1から
図4を参照して説明する。
図1は、帯掛機1を含む製造ライン100の概要図を示し、
図2は、帯掛機1だけの拡大図を示している。
図2では、理解を容易にするため搬送機の一部を破線で示している。
図2(A)図は帯掛機の側面図を示し、
図2(B)図は、
図2(A)図のA-A位置から看た平面図を示している。
図3と
図4は、帯掛工程の説明図を示している。
【0046】
PTPシートが積層されてなる積層体200の製造ライン100(
図1参照)は、順に、表面シート搬送機101により錠剤格納部を形成させた表面シートが搬送され、錠剤投入機102により表面シートの窪んだ錠剤格納部に錠剤が投入され、裏面シート供給機103により供給された裏面シートに錠剤格納部が閉じられ、熱溶着機104により表面シートに裏面シートが熱溶着される。
【0047】
そして、シート切断機105によりPTPシートが所望の長さに切断され、抱合積層機106により2枚のPTPシートのうち、上方に重なるPTPシートが上下反転され、錠剤格納部が抱き合わされて重ねられる。更に、集積機107により、錠剤格納部が抱き合わされたPTPシートが、複数組積層されて積層体200とされる。なお、奇数枚のPTPシートを積層させる場合、または錠剤格納部を一方向に向けて積層させる場合には、錠剤格納部を上方に向けたPTPシートが最上段に積層される。
【0048】
本発明の帯掛機1は、集積機107の下流に配設され、集積機から受け渡された積層体200を帯掛けしながら搬送させ、下流工程に受け渡す。この製造工程においては、粉末の原料を打錠する際、PTPシートをなす表面シートと裏面シートとを熱溶着させる際において熱が加わるため、帯掛けをする際には、まだ熱溶着の余熱が残った状態となっている。そのため、余熱が高くなるPTPシートの場合には、積層体が帯掛け後に縮んで結束がゆるくなることがある。
【0049】
さて、帯掛機1は、本発明の特徴的な構成である帯体送出手段10と、調整手段(帯掛機の中央演算処理手段が機能する。)と、合掌貼り形式で帯掛けさせるように折返し手段をなす板状体31を備えた周回手段20と熱溶着手段と切断手段とを備えている(
図2参照)。以下、積層体200の底面を第1の面201とし、前面を第2の面202とし、天面を第3の面203とし、最後に帯体が巻かれる後面を第4の面204として説明する。帯体300は供給ロール60から供給され、供給された帯体は巻取ロール61に巻き取られる。帯体の始端とは、下流側である巻取ロール側をいい、帯体の終端、帯体の後方とは、上流側である供給ロール側をいう。
【0050】
帯体送出手段10は、一対のローラ11と、ローラ駆動手段12(
図2(B)図参照)と、ローラ間隔調整手段13とからなり、供給ロール60と積層体200との間に配されている。折返し手段をなす板状体31は、第4の面の近傍に配され、供給ロール60から第4の面204に伸びている帯体の上方から降下され、帯体の中間部を折り返し、帯体を第1の面201に接近させる。
【0051】
帯体300の始端304の端面と終端305の端面の内面同士を接しさせるまでに、ローラ間隔調整手段13により、一対のローラが帯体の後方を挟んで張力を発生させ、ローラ駆動手段12によりローラの回転抵抗が変化され、帯体の供給を遅延させて張力を発生させる。回転抵抗を発生させる前には、帯体には張力が発生されないように帯体の供給速度と板状体の降下速度を同期させておけばよい。
【0052】
ローラ間隔調整手段13(
図2(B)図参照)は、少なくともいずれか一方のローラ11を、帯体から一時的に離間させ、帯体に張力を掛けない状態とすることができる。例えば、一方のローラを周知のエアシリンダー、ボールねじ機構等によりスライドさせてローラの隙間を大きくさせればよい。一方、張力を発生させるときには、ローラの隙間を小さくすればよい。
【0053】
調整手段、例えばPLCは、供給調整手段と、作動開始調整手段として機能される。供給調整手段と作動開始調整手段とは、積層体200の変形容易性と帯体300の伸縮性とに応じて、張力値と張力作用時間とを決定させる。調整手段は、帯掛機を操作するタッチパネル機器等に備えられる中央演算処理装置に機能させてもよい。
【0054】
供給調整手段は、帯体送出手段10をなすローラ駆動手段12をなすモータの回転数を変えることにより、帯体をローラが挟持する挟持力を変化させて、帯体300に作用される張力を変化させている。具体的には、モータの回転数を変化させると、帯体に掛かる回転抵抗の値を変化させることができる。ローラの挟持力が大きくなると、帯体供給の遅延が大きくなり、帯体に作用する張力値が大きくなる。
【0055】
また、一対のローラ11とローラ駆動手段12に替えて、ブレーキパッドにより帯体に作用する張力値を変化させてもよい。この場合には、供給調整手段により、ブレーキパッドによる挟持力を変化させればよい。なお、帯体に接するブレーキパッドを複数として、各々の挟持力を変化させるだけでなく、ブレーキパッドの数によっても挟持力を変化させれば、細やかに張力値を調整させやすくなる。
【0056】
作動開始調整手段は、第4の面204に帯体を帯掛けするときに、帯体送出手段10に帯体を挟持させる作動開始時をずらして張力作用時間を変化させる。作動開始時は、例えば第4の面に帯体を巻き始めてからの経過時間又は板状体が降下した距離により管理させればよい。
【0057】
帯体300は、供給ロール60から供給され、巻取ロール61に逆流しないように巻き取られ、案内ローラ62により捻じれないように案内される。下流に向けて搬送された積層体の第2の面が、帯体に接してから、帯体300が、側面視「コ」字をなすように、積層体200に周回される。巻取ロール61側からの帯体は逆流が抑制されているため、供給ロール60からのみ帯体が繰り出される(
図3(A)図から
図3(B)図参照)。
【0058】
巻取ロール61には、繋がった状態の帯体300の巻取手段により、熱溶着がされる毎に、巻取ロール61が回転され、先に熱溶着された熱溶着部303の残部が巻き取られ、積層体に複数の熱溶着部が付属しないようにしている。
【0059】
帯掛機は、折返し手段をなす板状体31を含んだ周回手段20と、熱溶着手段と、切断手段とを備えている。周回手段20は、更に、積層体の天部を支える支持板22を備えている。帯体300は、搬送レールに接している第1の面201と、搬送下流側である第2の面202と、支持板22に接している第3の面203まで帯体が巻かれてから、折返し手段をなす板状体31により搬送上流側である第4の面204に帯体が巻かれ、積層体200の周囲に一方向に帯体が周回される。
【0060】
搬送機21は、左右に分離された一対の搬送片23を、積層体の第4の面204に接しさせて間欠搬送させる押送コンベアからなる。供給ロール60から引き出された帯体300は、並んで配された一対の搬送片の中間位置24(
図2(B)図)参照)を通過し、巻取ロール61に至る(
図2参照)。一対の搬送片23は、積層体の第4の面に、左右に分離した2点で接して搬送させながら、第2の面202を帯体300に押し付け、供給ロールから帯体を引き出しつつ、所定の帯掛け位置に至ったときに搬送を停止させる。
【0061】
積層体を支える支持板22は、帯掛け位置において、積層体の上方に配され、エアシリンダー、ボールねじ機構等により積層体に向かって降下され、帯体300を積層体の第3の面203に密着させる(
図2(A)図参照)。支持板22が、第3の面に巻かれた帯体を上方から支えているため、第4の面に帯体の中間部を折り返すように押し下げるときに、第1の面から第3の面に巻かれた帯体が第4の面側に引き込まれにくく、シート体を変形させにくい。
【0062】
折返し手段は、帯体を熱溶着させる所定の帯長に相当する厚さの板状体31からなっている。板状体31の下方には熱溶着手段をなすヒートシーラ40が配される。板状体31が降下されて、一対のローラ11に挟まれた帯体の後方と第3の面203に巻かれた部分との中間部301を折り返して第1の面201に接近させ、第4の面204に沿って帯体を降下させる。
【0063】
積層体の第4の面204の下縁の角隅部に、熱溶着部が形成されるように、板状体31の下面が、積層体の第1の面201の位置まで降下される。ヒートシーラ40は、上端部が第1の面201の位置まで上昇される。帯体の熱溶着の際には、板状体31とヒートシーラ40とにより帯体を挟んで支持する。板状体とヒートシーラは、いずれもエアシリンダー、ボールねじ機構等により昇降させればよい。
【0064】
また上流側のヒートシーラ40と下流側のヒートシーラ40とは、搬送方向に隙間をあけて配され、その隙間には切断手段をなす切断刃50が備えられている(
図2参照)。この切断刃もエアシリンダー等により昇降させればよい。積層体に近い側のヒートシーラ40は、帯体に残る熱溶着部306の突出長が2.0mm以下となるように、幅が2.0mm以下の細幅のヒートシーラからなる。
【0065】
板状体31が降下されて、第4の面204の上縁の角隅部で、帯体の中間部301が下方に折り下がる。板状体31が帯体を折り返す初期の段階では、帯体の供給速度を、板状体31の降下速度と同期させておくと、帯体に張力が作用されず、第1の面201から第3の面203に巻いた帯体が、第4の面204側に引き込まれず、積層体の上縁部を変形させない。板状体31が帯体を折り返し始めてから、供給速度が低下され、帯体に張力が発生される。
【0066】
帯体の供給速度が予め設定させた速度閾値以下になると、帯体の張力が過大となり、積層体に変形を生じさせる可能性があるため、PLCがなす供給遅延制御手段により、帯体をローラから滑り出させ、帯体の供給速度が速度閾値以下とならないようにローラが滑動される。帯体の供給速度は、図示していないローラ回転検知手段をなす、ローラ駆動手段の電流値計測手段により計測させればよい。また状態監視カメラにより帯体の速度を監視してもよい。
【0067】
板状体31の下端部が積層体の底面位置に至ると、帯体の終端305の内面が、帯体の始端304の内面に接し、折返し手段が帯体を重ねて接触させた状態となる(
図4(E)図参照)。ヒートシーラ40が帯体を熱溶着させて一体化させ、切断手段をなす切断刃50により、熱溶着部の先方と後方との間が切断される。熱溶着部の切断上流側は、巻取りロールに至る帯体に付属させ、熱溶着部の切断下流側は積層体を結束させた帯体の隅角部に付属する。分離された積層体は、搬送機21により搬送が再開される。
【0068】
積層体の変形容易性は、シート体の材質と、シート体の積層形式とにより決定させればよい。例えば、錠剤格納部に弾性復元性がある場合であっても、錠剤格納部を最上段に上向き積層させている場合には、錠剤格納部が潰れやすいことから「シート体が変形しやすい」とすればよい。表側シートが弾性復元性のないアルミシートからなる場合には、積層方式に拘わらず、「シート体が変形しやすい」とすればよい。
【0069】
帯体の伸縮性は、帯体をなす樹脂の種類だけでなく、帯体のバイオマス度、帯体の厚さ等によっても異なってくる。帯体がストレッチフィルムと称される伸縮性に優れた材質からなる場合、例えば低密度ポリエチレン等である場合には、「帯体の伸縮性が高い」ため、帯体を引き伸ばしても張力が所定値以内となる。一方、紙基材に樹脂層を積層させた複合材料のように、殆ど伸縮しない材質である場合には、「帯体の伸縮性が低い」ため、帯体の引き伸ばし量が小さくても張力が大きくなる。
【0070】
ここで
図3と
図4とを参照して、帯掛工程の全体の流れを、簡単に説明する。
図3(A)図は、帯体を引き出した状態を示し、
図3(B)図は、搬送機により積層体の前面を帯体に押し付けた状態を示している。
図3(C)図は、帯体の中間部を折り返すようにして押し下げて第1の面に接近させる状態を示し、
図3(D)図は、一対のローラを帯体に接触させ、張力を発生させた状態を示している。
【0071】
図4(E)図は、集積体に巻いた帯体を接触させた状態を示し、
図4(F)図は、熱溶着工程と切断工程とを示している。
図4(G)図は、帯体に形成された熱溶着部を巻き取っている状態を示している。
図4(H)図は、次の積層体の帯掛工程に移行する状態を示している。
【0072】
第1ステップでは、予め帯体300を搬送路に引き出した状態とし、巻取ロール61の巻取りを待機させ、引き続く工程において、帯体が供給ロール60側に戻らないようにさせる(
図3(A)図)。第2ステップでは、搬送機21をなす搬送片23により積層体200を搬送させ、積層体の第2の面202(前面)を引き出した帯体300に押し付ける(
図3(B)図)。
【0073】
このとき、帯体300は、帯体が屈曲される位置に設けられた案内ローラ62に接して滑らかに屈曲され、捻じれないように案内される。搬送片を帯掛け位置で停止させてから、支持板22を積層体に向けて降下させ、帯体を第3の面203に密着させる。帯体が積層体の第1の面から第3の面に密着されて周回されるため、引き続く第4の面に帯体を帯掛けするときに、先に周回させた帯体が、第4の面側に引き込まれにくい。
【0074】
第3ステップでは、帯体300を積層体の第4の面204に周回させる。折返し手段をなす板状体31を降下させ、第3の面203から帯体送出手段をなすローラ11に至る帯体の中間部301を折り返すように押し下げて、第1の面203に接近させる(
図3(C)図)。ヒートシーラ40は第1の面201の高さ位置にまで上昇させる。この段階では、帯体送出手段をなす一対のローラ11が、帯体に張力を発生させていない。
【0075】
第4ステップでは、張力を発生させるタイミングとなったときに、作動開始調整手段により離間された一対のローラ11が、帯体の両面から接触され、帯体の後方を挟んで、ローラの回転抵抗を帯体に伝達させて帯体の供給速度を低下させる(
図3(D)図)。なお、板状体31が積層体の第1の面201に至る前に、供給遅延制御手段により、帯体をローラから滑り出させ、帯体の供給速度が速度閾値以下とならないようにローラが滑動される。
【0076】
第5ステップでは、板状体31を積層体の第1の面201まで進出させ、板状態31とヒートシーラ40との間に帯体300を重ねて挟み、帯体の始端304の内面と終端305の内面とを接しさせる(
図4(E)図)。第4ステップから第5ステップにかけて、供給速度が予め設定した速度閾値より大きく維持されているため、積層体に設定させた以上の過大な張力が作用せず、帯掛けのときの積層体の変形が抑制される。
【0077】
第6ステップでは、熱溶着手段をなすヒートシーラ40が、帯体に接触した部分だけを熱溶着させると共に、切断手段をなす切断刃50が上昇して熱溶着部を搬送方向の上流側と下流側に分断させる(
図4(F)図)。第7ステップでは、支持板22と、板状体31とヒートシーラ40と、切断刃50のいずれもが積層体200から離れるように後退される(
図4(G)図)。
【0078】
そして、搬送を停止させていた一対の搬送片25が搬送を再開させ、結束済みの積層体を下流側に搬送させる。第8ステップでは、次の積層体への帯掛けの準備がされる(
図4(H)図)。具体的には、巻取ロール61を回転駆動させ、先の帯掛工程で一体になっている帯体300に付属した上流側の熱溶着部303を、巻取ロールに巻き取り、熱溶着部のない部分だけが次の積層体の第1の面から第3の面に巻かれるように準備させる(
図4(H)図)。
【実施例2】
【0079】
実施例2では、接触体の摩擦力により帯体の供給速度を相対的に小さくする帯掛機2を、
図5を参照して説明する。
図5は、帯掛機2の要部の側面図を示している。帯体送出手段以外の構成は、実施例1と同様であるため、図に同一の符合を付して説明を省略している。
【0080】
帯掛機2は、帯体送出手段として、接触体70をなす先方にスリット71を有するシリコンゴム72を付設させたアーム73と、アームを揺動させる移動手段と、帯体の供給速度の速度検知手段をなす計測カメラ74とを備え、図示していないPLCにより駆動制御されている。帯体300には長さ方向に一定の間隔で点模様が付され、計測カメラ74は点の数を計数して帯体の供給速度を計測している。
【0081】
アーム73は先方が屈曲され、アームの後方が帯体から離れた位置で軸支されている。アームは軸部75に対して、移動手段をなす揺動手段により揺動される。アームの先方に付設されたシリコンゴム72は帯体に沿って伸び、シリコンゴムには帯体に沿う方向にスリットが設けられている。スリット71の幅は、アームが揺動される前の原位置において、帯体300が接触しないで帯体が通過する幅よりも、やや広い幅とされている。
【0082】
帯体300は、板状体31の降下により帯体が折り返されることにより、板状体31の降下に追随して、供給ロール60から供給される。供給ロール60からの供給抵抗を小さくしておけば、帯体の供給速度は板状体の降下速度と略同一となる。帯体が積層体の第4の面に沿ってやや降下したタイミングで、アームが図示していない揺動手段により軸心まわりに揺動される(
図5破線参照)。
【0083】
移動手段をなす揺動手段にアーム73が揺動されると、アームの先方に付設されたシリコンゴム72が傾斜し、スリット71の内面が帯体300に接触するようになる。この最初の揺動が、作動開始調整手段、供給調整手段として機能される。シリコンゴムに接触した帯体の供給速度は、シリコンゴムの摩擦抵抗により、板状体の降下速度よりも相対的にやや小さくなる。供給速度の低下により第4の面に接する帯体に張力が発生され、接触体70は帯体送出手段として機能する。
【0084】
供給速度の低下が、張力の増大につながるため、計測カメラ74は、帯体の供給速度を常時計測し、帯体の供給速度が速度閾値以下にならないように監視している。速度閾値は、積層体200をなすシート体の性状、帯体の性状、積層態様等により、予め、帯掛けを試行して、シート体の変形の有無、積層体の変形の有無、帯体のゆるみ、生産効率等を総合的に観察して決定される。
【0085】
まず帯体に大きく張力を発生させるためには、シリコンゴム72の摩擦力を大きくさせるように、接触体70の揺動角度を大きくし、シリコンゴムを帯体に強く押圧するようにすればよい。しかし、揺動角度が過大になると、摩擦力も過大になり、積層体を変形させるような過大な張力を発生させる可能性がある。そのため、計測カメラ74により常時監視している帯体の供給速度が、速度閾値以下にならないようにされている。
【0086】
監視している供給速度が速度閾値に近づいたときには、揺動手段がシリコンゴム72を原位置に復帰する方向に揺動させる。そうするとシリコンゴムとの摩擦力が小さくなると共に、帯体300の屈曲角度が小さくなり帯体の供給量が増加されることにより供給速度が増大する。この移動手段をなす揺動手段の揺動復帰の制御が、PLCがなす供給遅延制御手段により実行される。
【0087】
この実施例では、スリットを有するシリコンゴムを接触体としたが、接触体の態様、材質は限定されないのは勿論のことである。また滑動抵抗を、スリットの内面の摩擦力で説明したが、接触体をローラとして、ローラの軸部を押圧して回転抵抗を変化させてもよく、滑動抵抗、換言すれば帯体が滑り動く抵抗の態様が限定されないのは、勿論のことである。
【実施例3】
【0088】
実施例3では、溶着条件調整手段を備えた帯掛機について、
図6を参照して説明する。
図6(A)図は、溶着条件調整手段をなすタッチパネル機器400の画面表示を示している。
図6(B)図は、溶着条件の組の具体例を示している。実施例3で示す帯掛機は、溶着条件調整手段を備える以外は実施例1と同一の構成としている。
【0089】
溶着条件調整手段は、溶着条件記憶手段と溶着条件の選択・変更手段と表示手段とを備えている。溶着条件記憶手段は、タッチパネル機器400に備えられるHDD、SSD等に機能させればよい。溶着条件の選択・変更手段は、タッチパネル機器に備えられる中央演算処理装置に機能させればよい。表示手段401はタッチパネル機器をなすモニターに機能させればよい。
【0090】
溶着条件記憶手段には、帯体をなす樹脂フィルムのバイオマス度に応じて、複数の溶着温度と溶着時間との組402が予め設定されている。選択・変更手段は、バイオマス度に応じた溶着温度と溶着時間との組を記憶手段から読み出し、前記組を一覧表403にして、表示手段401に表示させる。
【0091】
溶着条件を変更するときには、作業員がタッチパネル機器400を操作して溶着条件を調整する画面を表示させる(
図6(A)図参照)。この画面には、「現在の溶着条件」として、少なくともバイオマス度、ヒートシーラの溶着温度、帯体を加熱する溶着時間が表示される。このほか、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート等の帯体の材料名、帯体の厚さが表示されてもよい。
【0092】
バイオマス度の異なる帯体に交換するときには、作業員が「溶着条件選択」のアイコンをタッチして選択する。「溶着条件選択」が選択されると、表示手段401が表示させる画面表示が、溶着条件選択の画面に遷移し、記憶手段に記憶されている組が一覧表403をなすように表示される(
図6(B)図参照)。この画面では、現在の溶着条件が理解容易なように、着色等がされて表示される(同図の斜線参照)。
【0093】
溶着条件を変更するときには、一覧表403に示されたいずれかの組402をタッチして選択する。そうすると、選択された組が強調表示され(同図の太枠参照)、「選択」のアイコンが選択できるようになる。「選択」のアイコンが選択されると、溶着条件調整の画面表示(
図6(A)図参照)に戻り、変更後の溶着条件の枠内に、選択した溶着条件が表示される。ここで、「変更確定」のアイコンが選択されて溶着条件の変更が確定し、ヒートシーラの溶着温度と溶着時間とが、選択した組の値に切り替えられる。
【0094】
バイオマス樹脂フィルムは、バイオマス度が高くなるにつれて熱溶着開始温度が高くなる傾向がある。予め記憶させる溶着温度と溶着時間は、例えばバイオマス度0%の「150℃、1秒」を基準として設定しておけばよい。例えば、バイオマス度20%から30%のときは、溶着温度を「+10℃」として160℃とし、バイオマス度30%から50%のときは「+20℃」として170℃とする等である。温度を高くすると共に、溶着時間を長くさせてもよい。このほか、同一のバイオマス度に適用される組が、溶着温度と溶着条件を異にして複数組記憶されてもよい。
【0095】
(その他)
・本実施例では、理解を容易にするよう、搬送機をなす一対の搬送片により積層体を搬送させて帯掛けする例を説明したが、搬送機の態様はこれに限定されない。例えば、挟持部が放射状に備えられた回転搬送機により積層体を搬送させ、積層体を円弧軌道に沿って搬送させている途中で、帯掛けさせてもよい。
・実施例3で示した溶着温度と溶着時間の組は例示であって、これに限定されるものではなく、樹脂フィルムの製造者から提供される製品に応じて設定させればよい。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
1,2…帯掛機、100…製造ライン、200…積層体、300…帯体、
201…第1の面、202…第2の面、203…第3の面、204…第4の面、
10…帯体送出手段、20…周回手段、31…板状体、
40…ヒートシーラ、50…切断刃、60…供給ロール、70…接触体、
11…ローラ、12…ローラ駆動手段、13…ローラ間隔調整手段、
21…搬送機、22…支持板、23…搬送片、24…中間位置、
61…巻取ロール、62…案内ローラ、71…スリット、
72…シリコンゴム、73…アーム、74…計測カメラ、75…軸部、
101…表面シート搬送機、102…錠剤投入機、103…裏面シート供給機、
104…熱溶着機、105…シート切断機、106…抱合積層機、107…集積機、
301…中間部、303,306…熱溶着部、304…始端、305…終端、
400…タッチパネル機器、401…表示手段、402…組、403…一覧表、
500…帯体、501…始端、502…終端、503…ヒートシーラ
【要約】
【課題】積層体をなすシート体の変形のしやすさ、帯体の伸縮性、結束の前後におけるシート体の温度変化が多様であっても、シート体を変形させず、且つ、ゆるみがないように結束させる帯掛機を提供すること。
【解決手段】合掌貼り形式により積層体の4つの面の周囲に一方向に帯体を帯掛けする帯掛機1に、最後の第4の面204に帯体300を巻いているときに作用させる帯体送出手段と調整手段とを備えさせた。帯体送出手段により帯体の供給速度を、第4の面に帯体を折り下げる板状体31の降下速度よりも小さくさせ、帯体に張力を発生させると共に、調整手段により張力を発生させる作動開始時と帯体の供給速度を制御させるようにした。更に、供給遅延制御手段により、帯体の供給速度を速度閾値以下にさせず、帯体に過大な張力を発生させないようにした。
【選択図】
図2