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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】浴室暖房乾燥機
(51)【国際特許分類】
   F24D 15/00 20220101AFI20230629BHJP
   F26B 9/02 20060101ALI20230629BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20230629BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20230629BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20230629BHJP
   F24F 11/77 20180101ALI20230629BHJP
   F24F 11/81 20180101ALI20230629BHJP
   F24F 11/89 20180101ALI20230629BHJP
   F24F 11/48 20180101ALI20230629BHJP
   D06F 58/32 20200101ALI20230629BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20230629BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20230629BHJP
【FI】
F24D15/00 B
F26B9/02 A
F24F7/06 B
F24F7/007 B
F24F11/64
F24F11/77
F24F11/81
F24F11/89
F24F11/48
D06F58/32
F24F110:10
F24F110:20
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019153830
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021032495
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】西田 和馬
(72)【発明者】
【氏名】西田 和弘
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-134989(JP,U)
【文献】特開平04-285597(JP,A)
【文献】特開2004-092920(JP,A)
【文献】特開2008-275268(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0024106(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 15/00
F26B 9/02
F24F 7/06
F24F 7/007
F24F 11/64
F24F 11/77
F24F 11/81
F24F 11/89
F24F 11/48
D06F 58/32
F24F 110/10
F24F 110/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室に設置されたケース本体と、前記浴室内の空気を循環させる循環ファンと、前記循環ファンによって前記ケース本体内に導入された前記浴室内の空気を加熱する熱交換器と、前記浴室内の空気を屋外へ排出する換気ファンと、前記ケース本体内に導入されて前記熱交換器で加熱される前の空気の温度を検知するための温度検知手段と、これらを制御する制御手段を備えた浴室暖房乾燥機において、
前記制御手段は、前記浴室内に掛けられた衣類を乾燥させる衣類乾燥運転の開始時には、前記循環ファンを駆動して前記熱交換器によって加熱された空気を前記浴室内に送風し、前記温度検知手段の検知温度が予め設定された基準値以上になったときに前記換気ファンの駆動を開始し、
前記ケース本体内に導入された空気の湿度を検知するための湿度検知手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記換気ファンの駆動を開始する際に、前記湿度検知手段の検知湿に基づいて前記換気ファンによる換気能力を調整すると共に、前記換気ファンの駆動開始後には、前記湿度検知手段の検知湿度とその検知湿度の変化率に基づいて前記換気ファンによる換気能力を調整することを特徴とする浴室暖房乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室内に掛けられた湿った衣類を乾燥させるための衣類乾燥運転を行う浴室暖房乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴室の天井又は壁に設置され、浴室の換気運転や暖房運転、衣類乾燥運転等を行う例えば特許文献1のような浴室暖房乾燥機が利用されている。この浴室暖房乾燥機の換気運転は、換気ファンを駆動して浴室の空気を屋外に排気する。暖房運転は、循環ファンを駆動して導入した浴室の空気を、熱交換器で温水との熱交換により加熱して浴室内に送風する。衣類乾燥運転は、換気ファンと循環ファンの両方を駆動して、換気運転と暖房運転を同時に行う。
【0003】
一方、近年は環境問題について関心が高まっており、様々な機器のエネルギー効率の向上(省エネルギー化)の要求がある。浴室に関連する機器としては、例えば給湯装置の省エネルギー化技術も開発が盛んに行われており、浴室暖房乾燥機についても同様に省エネルギー化が求められている。例えば特許文献2には、運転待機中の浴室暖房乾燥機の待機電力を低減することによって省エネルギー化を図る技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-202010号公報
【文献】特開2002-61907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような浴室暖房乾燥機は、衣類乾燥運転において、暖房運転によって浴室内を所定の温度に上昇させると同時に、換気運転によって湿度が高い空気を排出して湿度が低い空気を供給している。このとき、湿度を低くするために最大換気能力で換気運転を行い、換気運転により温度が下がらないように暖房運転を行う。これにより浴室内に掛けられた衣類からの水分の蒸発を促し、最大の乾燥能力を発揮させている。
【0006】
しかし、この衣類乾燥運転開始後、浴室の温度がある程度高くなるまでは、浴室内に掛けられた衣類からの水分の蒸発量が少ないので、浴室内の湿度は高くならない。この温度上昇途中の浴室内の空気を換気により屋外に排出するので、浴室内に供給した熱の一部が乾燥に利用されずに捨てられることになり、エネルギー消費の無駄があった。一方、特許文献2は運転待機時の省エネルギー化を図るものなので、暖房運転と換気運転を同時に行う衣類乾燥運転に適用することはできない。
【0007】
本発明の目的は、衣類乾燥運転を省エネルギー化することができる浴室暖房乾燥機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明の浴室暖房乾燥機は、浴室に設置されたケース本体と、前記浴室内の空気を循環させる循環ファンと、前記循環ファンによって前記ケース本体内に導入された前記浴室内の空気を加熱する熱交換器と、前記浴室内の空気を屋外へ排出する換気ファンと、前記ケース本体内に導入されて前記熱交換器で加熱される前の空気の温度を検知するための温度検知手段と、これらを制御する制御手段を備えた浴室暖房乾燥機において、前記制御手段は、前記浴室内に掛けられた衣類を乾燥させる衣類乾燥運転の開始時には、前記循環ファンを駆動して前記熱交換器によって加熱された空気を前記浴室内に送風し、前記温度検知手段の検知温度が予め設定された基準値以上になったときに前記換気ファンの駆動を開始し、前記ケース本体内に導入された空気の湿度を検知するための湿度検知手段をさらに備え、前記制御手段は、前記換気ファンの駆動を開始する際に、前記湿度検知手段の検知湿度に基づいて前記換気ファンによる換気能力を調整すると共に、前記換気ファンの駆動開始後には、前記湿度検知手段の検知湿度とその検知湿度の変化率に基づいて前記換気ファンによる換気能力を調整することを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、衣類乾燥運転の開始時には、制御手段は、循環ファンを駆動して熱交換器によって加熱された空気を浴室内に送風して浴室内の温度を上昇させる。そして、温度検知手段の検知温度が予め設定された基準値以上になったときに、換気ファンの駆動を開始する。従って、衣類乾燥運転の開始時には、基準値以上の温度を検知するまで浴室内の加熱された空気を浴室外に排出しないので、浴室内の温度を早く上昇させることができ、熱交換器で空気を加熱するためのエネルギーを無駄にしないので、衣類乾燥運転を省エネルギー化することができる。
【0010】
そして、制御手段は、検知温度が基準値以上になって換気ファンの駆動を開始する際に、ケース本体内に導入された空気の湿度を検知する湿度センサの検知湿度に基づいて換気ファンによる換気能力を調整する。従って、浴室内が基準値以上に温まったときの検知湿度に基づいて換気能力を調整して浴室内の加熱された空気の排出を調整し、熱交換器で空気を加熱するためのエネルギー消費と換気ファンのエネルギー消費を抑えるので、衣類乾燥運転を省エネルギー化することができる。
【0011】
そして、制御手段は、換気ファンの駆動開始後には、検知湿度とその検知湿度の変化率に基づいて換気能力を調整する。従って、検知湿度とその変化率からわかる衣類の乾燥状況に応じた換気能力に調整して、乾燥能力を維持しながら衣類乾燥運転を省エネルギー化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の浴室暖房乾燥機によれば、衣類乾燥運転を省エネルギー化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例に係る浴室暖房乾燥機を有する浴室周辺の模式図である。
図2】実施例に係る浴室暖房乾燥機の外観を示す斜視図である。
図3】実施例に係る浴室暖房乾燥機内の要部を示す縦断面図である。
図4】温度と空気1m3当りの飽和水蒸気量の関係を示すグラフである。
図5】実施例に係る浴室暖房乾燥機の衣類乾燥運転の実行制御フローチャートである。
図6】実施例に係る浴室暖房乾燥機の衣類乾燥運転時の挙動を示す図である。
図7】従来の浴室暖房乾燥機の衣類乾燥運転の挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例
【0015】
図1は、住宅における浴室Bとその周辺を示している。浴室Bの天井Baには、例えば天井カセット式の浴室暖房乾燥機1が設置されている。また、浴室暖房乾燥機1の下側の浴室B内の天井Baに近い位置には、例えば洗濯後の湿った衣類L等を掛けて乾燥させるためのランドリーパイプ2が配設されている。屋外には、浴室Bのシャワー3や浴槽4、浴室暖房乾燥機1等に温水を供給するために、例えば燃焼式の熱源機5が設置されている。
【0016】
また、浴室Bに隣接させて脱衣室Cが設けられている。この脱衣室Cから図示外のドアを介して浴室Bに出入り可能であり、ドアを閉じた状態でも空気が通ることができる通気路がそのドアに設けられている。脱衣室Cには、外気を取り入れるための自然通気口6が配設されている。
【0017】
浴室暖房乾燥機1は、浴室Bに設置されたケース本体10内に、循環ファン11と熱交換器12と換気ファン13とこれらを制御するための制御部14(制御手段)等を備えている。循環ファン11は、ケース本体10内に浴室B内の空気を導入して浴室B内に送風することにより、浴室B内に矢印A0で示すような循環する空気の流れを生成する。
【0018】
熱交換器12は、熱源機5との間で温水が循環するように構成され、熱源機5から供給される温水と循環ファン11によりケース本体10内に導入された浴室B内の空気との間の熱交換によって空気を加熱する。熱交換器12で加熱された空気は、浴室B内に送風される。熱交換器12で空気の加熱に利用された温水は、熱源機5に戻って再加熱される。
【0019】
換気ファン13は、排気ダクト7を介して浴室B内の空気を浴室Bの外(屋外)に排出する。空気が排出されて負圧になる浴室Bには、矢印A1~A3で示すように、図示外のドアが閉じられていても通気路から脱衣室Cの空気が供給され、脱衣室Cには自然通気口6等から外気が供給される。制御部14には、浴室暖房乾燥機1の操作リモコン16が通信可能に接続され、熱源機5との通信用配線も接続されている。操作リモコン16は、脱衣室Cの壁に固定されている。
【0020】
図2は浴室暖房乾燥機1の外観を示している。図3はその浴室暖房乾燥機1内の要部を示し、空気の流れが複数の白抜き矢印により表されている。ケース本体10の内部には、循環ファン11等が収容されると共に空気の通路が形成されている。循環ファン11は、例えば回転数制御により送風量を調整して広い範囲(幅)に送風可能なクロスフローファンである。
【0021】
熱交換器12は、温水が流通する複数の屈曲させた伝熱管12aに複数のフィン12bが接続されて構成され、これらの間を通過する空気を加熱する。換気ファン13は回転数制御により換気能力を調整可能な遠心ファンであり、回転軸方向から吸気して外周側に設けられた排気口13aから排気する。排気口13aには、屋外に連通する排気ダクト7が接続される。
【0022】
循環ファン11を駆動すると、図示外のフィルタが装着される吸気口10aから浴室B内の空気がケース本体10内に導入されて熱交換器12と循環ファン11を通過し、可動ルーバ10bを備えた送風口10cから浴室B内に送風される。可動ルーバ10bは、送風方向を調整可能なように、図示外の駆動機構によって駆動される。
【0023】
吸気口10aと熱交換器12の間には、ケース本体10内に導入され熱交換器12で加熱される前の空気の温度を検知するための温度センサ17(温度検知手段)と、その空気の湿度を検知するための湿度センサ18(湿度検知手段)が配設されている。温度センサ17の検知温度と湿度センサ18の検知湿度は、制御部14に送信される。この湿度センサ18は、絶対湿度(空気1m3当たりに含まれる水蒸気量[g/m3])を検知する。
【0024】
換気ファン13を駆動すると、浴室B内の空気は、吸気口10aからケース本体10内に導入される。この空気は、熱交換器12を通過しない図示外の通路(例えば図3における熱交換器12と循環ファン11の奥側に形成された通路)を通って換気ファン13に流入し、排気口13aに接続された排気ダクト7を介して屋外に排出される。
【0025】
制御部14は、操作リモコン16の操作や例えばタイマー機能を備えていればこれに基づいて、暖房運転、換気運転、衣類乾燥運転等を制御する。暖房運転では、熱源機5に温水要求信号を送信して所定温度(例えば60℃)の温水を供給させ、循環ファン11を駆動して、熱交換器12で浴室B内の空気を加熱する。そして、温度センサ17の検知温度に基づいて、循環ファン11の駆動回転数を制御し、可動ルーバ10bによる送風方向調整等を行う。熱源機5は、熱交換器12から戻る温水の温度に基づいて加熱能力を調整して温水を加熱する。
【0026】
換気運転では、制御部14は換気ファン13の駆動を制御する。衣類乾燥運転では、制御部14は、熱源機5に温水要求信号を送信して所定温度の温水を供給させる。そして、温度センサ17の検知温度と湿度センサ18の検知湿度に基づいて、循環ファン11と換気ファン13の駆動回転数を夫々制御し、可動ルーバ10bによる送風方向調整等を行う。即ち、制御部14は、衣類乾燥運転では、検知温度と検知湿度に基づいて暖房運転と換気運転を同時に実行、制御している。
【0027】
図4は温度と空気1m3当りの飽和水蒸気量の関係を示している。温度が高いほど飽和水蒸気量が大きくなり、空気中に保持可能な水蒸気量が大きくなる。従って、外気の湿度が高い場合でも、浴室B内の空気を加熱して温度を高くすることによって飽和水蒸気量を大きくして、浴室B内のランドリーパイプ2に掛けられた衣類Lから水分を蒸発させることができる。そして、その衣類Lに対して空気の流れがあると、蒸発した水分が速やかに衣類Lから遠ざけられて衣類Lの周りを湿度が低い状態にすることができるので、衣類Lからの水分の蒸発が促進され、水分の蒸発量が多いときに特に効果的である。
【0028】
浴室暖房乾燥機1の衣類乾燥運転は、図1のように、浴室B内のランドリーパイプ2に掛けられた例えば洗濯後の湿った衣類Lを乾燥させる。この衣類乾燥運転では、上記のように、予め設定された乾燥設定温度(例えば45℃)に浴室B内の温度を上昇させると共に空気の流れを生成して、衣類Lからの水分の蒸発を促進させている。そして、蒸発した水分を含んだ高温高湿の空気を屋外に排出しながら浴室B外の空気を浴室B内に導入し、浴室B内の空気に含まれる水蒸気量を減らして衣類Lからの水分の蒸発を促進させている。この浴室暖房乾燥機1の制御部14による衣類乾燥運転の制御について、図5のフローチャートに基づいて説明する。図中のSi(i=1,2,・・・)はステップを表す。
【0029】
操作リモコン16の操作等によって衣類乾燥運転が開始されると、S1において、衣類乾燥運転開始動作を実行してS2に進む。具体的には、熱源機5に温水要求信号を送信して熱交換器12への温水供給を開始させ、循環ファン11を最大回転数で駆動し、温度センサ17と湿度センサ18によるケース本体10内に導入された空気の温度と湿度の検知を開始する。温度と湿度の検知は所定時間毎(例えば1分毎)に行われる。
【0030】
次にS2において、検知温度が予め設定された基準値(例えば30℃)以上になったか否か判定する。判定がYesの場合はS3に進み、判定がNoの場合は基準値以上になるまでS2の判定を繰り返す。この判定は、乾燥設定温度にはなっていないが、水分の蒸発が十分促進される程度に温度が上昇したことを判定するものであり、衣類乾燥運転の開始からの検知温度の上昇幅が基準値(例えば15℃)を超えたか否か判定するようにしてもよい。
【0031】
次にS3において、湿度センサ18の検知湿度に基づいて設定される換気能力となるように換気ファン13を駆動してS4に進む。例えば基準湿度(例えば20[g/m3])を予め設定しておき、検知湿度が基準湿度以上の場合に最大換気能力(High)となるように換気ファン13を最大回転数で駆動する。一方、検知湿度が基準湿度未満の場合に最大換気能力の半分の換気能力(Mid)となるように換気ファン13の回転数を制御して駆動する。
【0032】
このS3では、浴室Bの温度を上昇させる間に衣類Lから蒸発する水分量が、衣類Lの量等によって異なることに対応させて、検知湿度に基づいて換気能力を設定している。これにより、検知湿度に基づいて換気ファン13の回転数を制御して換気ファン13のエネルギー消費を抑える。換気能力を低く設定した場合には、換気ファン13によって浴室B外に排出される加熱された空気が少なくなるので、浴室B内の空気を加熱するために熱交換器12に供給する温水を加熱する熱源機5のエネルギー消費が抑えられる。尚、乾燥させる衣類Lが少ないほど検知湿度の上昇が小さくなることに対応させて、検知湿度に基づいて3段階以上の換気能力を設定してもよく、検知湿度に比例するように換気能力を設定してもよい。
【0033】
次にS4において、湿度センサ18の検知湿度及びその検知湿度の変化率の絶対値に基づいて換気能力を調整してS5に進む。例えばt分毎に湿度を検知する場合に、検知湿度の変化率(変化速度)は、今回の検知湿度と前回の検知湿度(t分前の検知湿度)とを用いて、
(今回の検知湿度-前回の検知湿度)/t[g/m3・min]
のように算出される。これ以外の検知湿度の変化率を定義することもできる。以下では、検知湿度の変化率とは、その絶対値を指すものとする。
【0034】
例えば最大換気能力(High)で換気ファン13を駆動している場合に、検知湿度が基準湿度以上ではその検知湿度の変化率にかかわらず水分が衣類Lに多く残っていると考えられる。また、衣類Lの乾燥が進むと水分の蒸発量が減少して検知湿度が下がるが、検知湿度が基準湿度未満になってもその検知湿度の変化率が大きい場合には、まだ蒸発させるべき水分が衣類Lに残っていると考えられる。このような場合は、最大換気能力(High)での換気ファン13の駆動を継続する。
【0035】
一方、検知湿度が基準湿度未満になり、且つその検知湿度の変化率が基準変化率よりも小さくなった場合には、例えば最大換気能力(High)の半分の換気能力(Mid)となるように換気ファン13の回転数を調整して駆動する。基準変化率は、予め衣類乾燥実験等に基づいて例えば0.3[g/m3・min]のように設定されている。
【0036】
この場合、衣類Lの乾燥が進み、湿度が低くても水分の蒸発量が少なく、換気による蒸発促進効果が小さいので、換気ファン13によって浴室B外に排出される空気の量を減らす。検知湿度に基づいて換気ファン13の回転数を低くするので、換気ファン13のエネルギー消費が抑えられる。また、換気ファン13によって浴室B外に排出される空気が少なくなるので、浴室B内の空気を加熱するために熱交換器12に供給する温水を加熱する熱源機5のエネルギー消費が抑えられる。
【0037】
尚、上記S3と同様に検知湿度に基づいて3段階以上の換気能力を設定してもよく、検知湿度に比例するように換気能力を設定してもよい。また、換気能力を小さくした後は、基本的に換気能力を大きくすることはないが、途中で乾燥させる衣類が追加された場合等において、検知湿度等に基づいて換気能力を大きくすることが可能である。
【0038】
次にS5において、湿度センサ18の検知湿度の変化率が乾燥判定基準以下になったか否か判定する。乾燥判定基準は、例えば0.1[g/m3・min]のように、予め上記の基準変化率よりも小さく設定される。衣類Lからの水分の蒸発量が少なくなるにつれて検知湿度の変化率が小さくなり、この変化率が乾燥判定基準以下になったら、衣類Lが乾燥したと判定する。判定がYesの場合はS6に進み、判定がNoの場合はS4に戻る。
【0039】
次にS6において、衣類乾燥運転停止動作を実行して衣類乾燥運転を終了する。具体的には、熱源機5に温水供給停止信号を送信して温水の供給を停止させ、循環ファン11と換気ファン13の駆動を停止し、温度センサ17と湿度センサ18による温度と湿度の検知を停止する。尚、衣類Lが乾燥したと判定された後は換気運転を一定時間実行してもよく、連続換気運転(24時間換気)等が設定されている場合にはこれに従う。
【0040】
上記実施例における浴室暖房乾燥機1の作用、効果について説明する。
図6は、浴室暖房乾燥機1の衣類乾燥運転時の挙動の一例を示す図であり、図7は、比較例として従来の衣類乾燥運転時の挙動の一例を示す図である。図6図7の衣類乾燥運転の乾燥能力は、同等であるものとする。図6において、時刻t0で浴室暖房乾燥機1の衣類乾燥運転が開始されると、循環ファン11が駆動されて、時間の経過と共に温度センサ17の検知温度が上昇する。また、衣類Lから水分が蒸発するので、湿度センサ18の検知湿度も上昇する。時刻t1で検知温度が基準値以上になったら、換気ファン13を駆動する。
【0041】
衣類乾燥運転の開始時には換気ファン13は駆動していないので、時刻t0~t1までの乾燥初期には、加熱された空気は換気によって浴室B外に排出されない。これにより、時刻t0で衣類乾燥運転の開始により循環ファンと換気ファンの両方を駆動する図7の例よりも早く検知温度、即ち浴室B内の温度を上昇させる。それ故、熱交換器12で空気を加熱するために温水を供給する熱源機5が消費するエネルギーを無駄にせずに衣類乾燥運転に利用して、衣類乾燥運転を省エネルギー化することができる。また、浴室B内の温度上昇に反比例するように熱源機5のエネルギー消費が減少するので、衣類乾燥運転のエネルギー消費が図7の例よりも早く低下する。
【0042】
時刻t1で換気ファン13を駆動する際には、検知湿度に基づいて換気能力を設定し、設定した換気能力となるように換気ファン13を駆動する。例えば検知湿度が、予め設定された基準湿度以上の場合は、最大換気能力(High)を設定する。一方基準湿度未満の場合は、図示を省略するが、最大換気能力の半分の換気能力(Mid)を設定して、設定した換気能力となるように換気ファン13を駆動する。
【0043】
このように、浴室B内が基準値以上に温まったときの検知湿度に基づき換気能力を設定し、浴室B内の加熱された空気の排出を調整することにより、熱交換器12で空気を加熱するために温水を供給する熱源機5のエネルギー消費と換気ファン13のエネルギー消費が抑えられる。それ故、時刻t1以降の乾燥中期では、衣類Lの量等に応じて換気能力を小さく設定した場合に、衣類乾燥運転を省エネルギー化することができる。
【0044】
図6において、時刻t1で設定された最大換気能力(High)の換気によって検知温度の上昇が緩やかになり、その後は検知温度が乾燥設定温度付近で安定する。また、時刻t1で換気を開始して、衣類Lから蒸発する水蒸気量と浴室B外に排出される水蒸気量が略平衡する状態(検知湿度が略一定の状態)では、蒸発を促すため最大換気能力(High)を維持する。
【0045】
時刻t2から、衣類Lからの水分の蒸発が収まり始めて検知湿度が低下してゆく。検知湿度が基準湿度以上の間は、最大換気能力(High)を維持して蒸発を促す。また、検知湿度が基準湿度未満であっても、その検知湿度の変化率が予め設定された基準変化率よりも大きければ、最大換気能力(High)を維持して蒸発を促す。時刻t3において、検知湿度が基準湿度未満になっており、検知湿度の変化率が基準変化率より小さくなった場合、換気能力(Mid)に設定する。時刻t1~t3の乾燥中期では、最大換気能力(High)での衣類乾燥運転のエネルギー消費は、図7の検知温度が乾燥設定温度付近で安定した衣類乾燥運転のエネルギー消費と略同等である。
【0046】
時刻t3で検知湿度が基準湿度未満、且つ検知湿度の変化率が基準変化率より小さくなった場合、衣類Lからの水分の蒸発量が少ないため換気による蒸発促進効果が小さいので、換気能力(Mid)に設定して換気ファン13の回転数を低くする。これにより、時刻t3以降の乾燥後期では、換気ファン13のエネルギー消費が抑えられ、加熱された空気の換気による浴室B外への排出が減少する。これに伴い、熱交換器12で空気を加熱して浴室Bの乾燥設定温度を維持するための熱源機5のエネルギー消費が抑えられる。
【0047】
換気ファン13及び熱源機5のエネルギー消費を抑えても、浴室B内の高い温度と低い湿度を維持できるので、衣類Lからの水分の蒸発は促進され、衣類乾燥運転における乾燥能力が維持される。従って、換気ファン13の駆動開始後において、検知湿度とその変化率からわかる衣類Lの乾燥状況に応じた換気能力に調整した時刻t3以降の乾燥後期では、乾燥能力を維持しながら衣類乾燥運転を省エネルギー化することができる。
【0048】
時刻tfにおいて、検知湿度の変化率が乾燥判定基準未満になって、衣類Lが乾燥したと判定されると、衣類乾燥運転終了動作を実行して衣類乾燥運転を終了する。
【0049】
浴室暖房乾燥機1は、熱交換器12の代わりに例えば電気ヒータ等の加熱手段によって空気を加熱するように構成されていてもよく、換気機能を備えた壁掛式の浴室暖房乾燥機であってもよい。また、検知温度と検知湿度から相対湿度を算出し、この相対湿度に基づいて衣類乾燥運転の制御を行うように構成してもよい。
【0050】
上記各種の温度や湿度、時間、判定の基準値等は例示であってこれに限定されず、浴室暖房乾燥機の仕様等によって適宜設定される。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0051】
1 :浴室暖房乾燥機
2 :ランドリーパイプ
5 :熱源機
6 :自然通気口
7 :排気ダクト
10 :ケース本体
10a :吸気口
10c :送風口
11 :循環ファン
12 :熱交換器
13 :換気ファン
13a :排気口
14 :制御部
17 :温度センサ
18 :湿度センサ
B :浴室
C :脱衣室
L :衣類
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7