(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/42 20060101AFI20230629BHJP
B29C 49/72 20060101ALI20230629BHJP
B29C 49/50 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B29C49/42
B29C49/72
B29C49/50
(21)【出願番号】P 2019237561
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126398
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】島田 憲吾
(72)【発明者】
【氏名】丹治 忠敏
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-18108(JP,A)
【文献】特開2005-68843(JP,A)
【文献】国際公開第2009/128440(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/42
B29C 49/72
B29C 49/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割金型を突き合わせて開口部となる部分を有する成形体の成形を行うとともに、前記成形体の周囲に形成されるバリを前記成形体から分断する成形体の製造方法であって、
成形体の成形後、突き合わされた分割金型内において、成形体の周囲に形成されるバリに対して一方の分割金型側から突き出し部材を突き出し、前記バリを成形体から分断するに際し、
各分割金型の成形体の外周部分をピンチするピンチ部の外側にバリを収容する空間が形成されるように各分割金型に凹部を設け、
前記突き出し部材が突き出される分割金型において、成形体の開口部と対応する位置の凹部の深さを、突き出し部材が設けられるバリ取り領域の凹部の深さよりも深くすることを特徴とする成形体の製造方法。
【請求項2】
成形体の肉厚tが3mm~8mmであることを特徴とする請求項1記載の成形体の製造方法。
【請求項3】
前記突き出し部材が設けられていない側の分割金型の凹部の深さが10mm~50mmであることを特徴とする請求項1または2記載の成形体の製造方法。
【請求項4】
前記突き出し部材が突き出される分割金型において、前記バリ取り領域の凹部の深さを0.5mm~3mmとすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の成形体の製造方法。
【請求項5】
前記成形体の開口部となる位置の凹部の深さd2を前記肉厚t以上とすることを特徴とする請求項2記載の成形体の製造方法。
【請求項6】
前記突き出し部材が設けられていない分割金型側からエアーブローを行い、バリを冷却することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の成形体の製造方法。
【請求項7】
前記エアブローによりバリを前記突き出し部材側に押し付けた後、突き出し部材の突き出しにより、前記バリを突き出し部材と対向する金型面側に押圧することで成形体から分断することを特徴とする請求項6記載の成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の製造方法に関するものであり、特に、金型内でバリ取りを行うようにした新規な成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料を成形した成形品として、例えば自動車のインストルメントパネル内に取り付けられる各種空調ダクトが知られている。これら空調ダクトは、押出機のダイから押し出されるパリソンをブロー成形することにより容易に製造することができる。
【0003】
ブロー成形を行った成形品(ダクト)においては、型締めされた金型の周囲にバリが形成され、これを除去することが必須の工程となる。一般に、ブロー成形後のバリ取りは、プレス機を用いて行うことが多く、成形品の外形形状に対応した型を用いてバリを打ち抜くことにより、金型周囲のバリが一括して除去される。
【0004】
例えば特許文献1には、金型内でブロー成形を行うブロー成形方法及びブロー成形装置が開示されており、バリを積極的に金型と接触させることで冷却効率を向上し、バリの冷却効率を向上することが記載されている。ブロー成形においては、バリが十分に冷却するまで待ってからプレス機によるバリ打ち抜きを行っており、時間的な損失が大きく、生産性を損なう要因となっている。特許文献1記載の技術によれば、ブロー成形からバリ取りまでの一連の工程に要する時間が短時間で済み、生産性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ブロー成形に限らず、成形体の周囲にバリが形成される成形においては、バリ取り作業は、成形体を金型から取り出した後に、プレス機や手作業等で行うというのが基本的な考えであり、例えば特許文献1記載の発明も例外ではない。しかしながら、プレス機を用いてバリ取りを行う場合、成形品のサイズが大きいと、プレス機もこれに対応して大型化せざるを得ず、多大な設備投資が必要となるという問題がある。また、成形品の大きさや形状が異なると、プレス機の型もこれに対応して大きさや形状を変更する必要があり、さらに設備投資が増大することになる。
【0007】
このような状況から、特に大型の成形品の成形においては、成形品の周囲に形成されるバリを、手作業で切除しているのが実情である。具体的には、製品である成型体を金型からバリが付いたまま取り出し、その後、ナイフ処理等を人の手で実施する方法が基本である。手作業により大型の成形品のバリを一つ一つ切除する方法では、金型から取り出した後にバリ除去作業を行うことになり、工数も多く、成形品1個当たりのバリ取りに要する時間も長くなり、生産性を大きく損なう要因となっている。
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、大掛かりな装置を必要とすることなく効率的なバリ取りが可能な成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するために、本発明の成形体の製造方法は、分割金型を突き合わせて開口部となる部分を有する成形体の成形を行うとともに、前記成形体の周囲に形成されるバリを前記成形体から分断する成形体の製造方法であって、成形体の成形後、突き合わされた分割金型内において、成形体の周囲に形成されるバリに対して一方の分割金型側から突き出し部材を突き出し、前記バリを成形体から分断するに際し、各分割金型の成形体の外周部分をピンチするピンチ部の外側にバリを収容する空間が形成されるように各分割金型に凹部を設け、前記突き出し部材が突き出される分割金型において、成形体の開口部となる位置の凹部の深さを、突き出し部材が設けられるバリ取り領域の凹部の深さよりも深くすることを特徴とする。
【0010】
本発明は、金型内でバリ取りを行うことを基本的な考えとするもので、突き出し部材によるバリの分断により、成形サイクルの低下を抑えながら、効率的なバリ取りを実現するものである。
【0011】
ここで、本発明においては、開口部となる部分を有する成形体の成形を行うものであり、それに伴う特有の課題を解決することも目的としている。具体的には、一方の分割金型側から突き出し部材を突き出し、バリを成形体から分断する場合、突き出し部材が突き出される分割金型においては、バリを収容する空間を形成するための凹部はできるだけ浅くすることが好ましい。凹部を浅くすることで、突き出し部材の先端とバリを切断する成形体のパーティングラインまでの距離が小さくなり、バリの切断性を高めることができる。当該凹部の深さが深くなると、突き出し部材の力がバリに効果的に伝わらない。
【0012】
ただし、凹部の深さを浅くすると、バリを収容する空間(バリ逃がし空間)の容積が小さくなり、溶融した樹脂をバリ逃がし空間に収容しきれなくなって、成形体に厚肉部分(いわゆる駄肉部分)が形成されてしまう傾向にある。厚肉部分の形成は、寸法精度を低下させる要因となり、特に成形体の開口部において大きな問題となる。例えばダクトのような成形体の開口部を他の部材に嵌合させる場合、前記寸法精度の低下は嵌合の障害となる。
【0013】
そこで、本発明においては、前記突き出し部材が突き出される分割金型において、成形体の開口部となる位置の凹部の深さを、それ以外の部分の凹部の深さよりも深くし、前記突き出し部材を前記それ以外の部分に設けることことで、これらの課題を解決するようにしている。
【0014】
成形体の開口部となる位置の凹部の深さをそれ以外の部分の凹部の深さよりも深くして、バリを収容する空間(バリ逃がし空間)の容積を大きくすることで、厚肉部分の形成が抑制され、寸法精度が確保される。一方、それ以外の部分の凹部の深さよを浅くして、前記突き出し部材をこの部分に設けることことで、突き出し部材の先端とバリ(パーティングライン)の距離が小さなものとなり、円滑なバリ切断が行われる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大掛かりな装置を必要とすることなく効率的なバリ取りが可能である。特に、本発明によれば、成形完了後の成形体の取り出し時には、バリ処理が完結されていることになり、成形工程の大幅な合理化を実現することができる。
また、成形体が開口部を有する成形体である場合にも、駄肉の発生を抑えて開口部の寸法精度を確保しながら、バリを効率的に切断除去することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】成形体をブロー成形する際の態様を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】バリを除去する前の成形体の一例を示す概略平面図である。
【
図3】成形体の捨て袋部分及び成形体の開口部を示す図であり、(A)は捨て袋の切断前の状態、(B)は切断後の状態を示す。
【
図4】成形からバリ取りまでの動作を説明する図であり、成形体の成形工程を示す概略断面図である。
【
図5】エアブローによるバリ冷却工程を示す概略断面図である。
【
図6】突き出し部材の突き出し工程を示す概略断面図である。
【
図7】成形された成形体(ダクト)の形成される厚肉部分(駄肉部分)を説明するための図である。
【
図8】突き出し部材が設けられる側の分割金型において、成形体の開口部形成位置及び突き出し部材の配列を示す概略平面図である。
【
図9】突き出し部が設置される位置の分割金型の凹部を模式的に示す図である。
【
図10】成形体の開口部に対応する位置の分割金型の凹部を模式的に示す図である。
【
図11】突き出し部材が設けられる分割金型の凹部を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した成形体の製造方法の実施形態を、ダクトのブロー成形を例に図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、成形体であるダクトをブロー成形する際のブロー成形方法を説明するための図である。 ブロー成形に際しては、先ず、押出機内で成形に用いる樹脂材料を溶融混練して成形用樹脂を調製する。例えばバージン樹脂のみを用いて成形する場合であれば、各種樹脂材料のバージン樹脂に、必要に応じて改質材を加えて溶融混練し、成形用樹脂を作製する。回収樹脂材料を用いる場合には、粉砕された回収樹脂材料にバージン樹脂を所定割合加え、混練して成形用樹脂を作製する。
【0019】
成形に用いる樹脂材料は任意であり、例えばポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂のような熱可塑性樹脂が用いられる。成形体(ダクト1)が発泡成形体である場合には、成形用樹脂に発泡剤を添加する。
【0020】
こうして準備した成形用樹脂を押出機内で溶融混練した後、ダイ内アキュムレータに貯留し、続いて、所定の樹脂量が貯留された後にリング状ピストンを水平方向に対して直交する方向(垂直方向)に押し下げる。そして、
図1に示す環状ダイ11のダイスリットより、所定の押出速度で円筒状のパリソンPを押し出し、分割金型12,13の間に押し出す。その後、分割金型12,13を型締してパリソンPを挟み込み、さらにパリソンP内に所定の圧力範囲でエアーを吹き込み、ダクト1を成形する。
【0021】
図2は、成形されたダクト1の形状例を示すものであり、ブロー成形後のダクト1を分割金型12,13から取り出した状態を示す図である。本例のダクトは、2本の平行に配置されたダクト部2,3と、これらダクト部2,3を繋ぐ形で形成されるダクト部4とから構成されている。成形体であるダクト1の肉厚は、ブロー比等によって場所により異なるが、例えば平均で3mm以上(3mm~8mm)であり、特に後述の開口部K近傍においては、3mm以上(3mm~8mm)である。また、成形体であるダクト1の周囲には、余分なパリソンPがバリBとして残存している。
【0022】
図3は、成形体であるダクト1の各ダクト部2,3,4への分割過程を示す図であり、
図3(A)に示すように、各ダクト部2,3,4の間やダクト部2,3の端部には、いわゆる捨て袋部分SBが形成された形となっており、ダクト1を
図3(A)の破線位置で切断することで、
図3(B)に示すように、各ダクト部2,3,4へと分割され、捨て袋部分SBは廃棄される。切断後の各ダクト部2,3,4は、それぞれ両端に開口部Kを有する形となる。
【0023】
本実施形態のブロー成形では、前ダクト1の成形からバリBの分断までを型閉じされた分割金型12,13内で行う。以下、分割金型12,13の構成、及びこれを用いた成形方法について
図4~
図6を参照して説明する。なお、
図4~
図6は、
図2に示すダクト1のx-x線に対応する位置での断面を示すものである。
【0024】
ダクト1の成形に用いられる分割金型12,13には、ダクト1の形状に対応した凹部が形成されており、
図3に示すように、分割金型12,13には、ダクト部2に対応する凹部31,32、及びダクト部3に対応する凹部33,34が形成されている。ここで、凹部31,32により突き合わせた分割金型12,13間にダクト部2に対応するキャビティ(空間)c1が形成され、凹部33,34により分割金型12,13間にダクト部3に対応するキャビティ(空間)c2が形成される。
【0025】
分割金型12,13の材質は特に限定されない。例えば、アルミニウムやスチールを用いることができる。熱伝導率が高く、打ち抜くバリを効率的に冷却できることから、アルミニウムを用いるのが好ましい。
【0026】
分割金型12,13間に供給されたパリソンPは、型締め後に内部にエアブローすることにより分割金型12,13の凹部31,32、あるいは凹部33,34に沿った形に賦形され、分割金型12,13の凹部31,32、あるいは凹部33,34によって形成されるキャビティc1,c2の形状に賦形される。
【0027】
また、各キャビティc1,c2(すなわち成形体であるダクト1)の外周部分においては、各分割金型12,13は、互いに突き当てられるピンチ部を有する。ダクト部2に対応するキャビティの周囲にはピンチ部35を有し、ダクト部3に対応するキャビティの周囲にはピンチ部36を有する。これらピンチ部35,36において、パリソンPが押し潰され、この部分が成形体のパーティングライン(PL)となる。
【0028】
ここで、前記ピンチ部35,36の外側に残存するパリソンPがバリBとなるが、本実施形態においては、このバリBを成形体であるダクト1から分断する機構が分割金型12,13に設けられている。
【0029】
先ず、分割金型12,13のピンチ部35,36の外側においては、分割金型12の金型面が後退されてバリBを収容する空間37,38が形成されている。
図3において、ダクト部2に対応するキャビティc1の左側のピンチ部35の外側に空間37が形成され、ダクト部3に対応するキャビティc2の右側のピンチ部36の外側に空間38が形成されている。これら空間37や空間38内に、ピンチ部c1,c2近傍のバリBが収容される形になる。
【0030】
また、前記空間37,38は、前記ピンチ部35,36から所定の距離をもって形成されるピンチ部39,40によって反対側の端部が塞がれる形となっている。すなわち、前記空間37,38は、ピンチ部35,36を第1のピンチ部、ピンチ部39,40を第2のピンチ部とし、これらピンチ部間の空間として形成されている。このように空間37,38を閉鎖空間とすることで、後述のエアー吹き付け機構から吹き付けられるエアー(冷気)が空間37,38から逃げないような構造とされている。なお、エアー吹き付けの際に、これら空間37,38からエアーを逃がすために、空間37,38にエアー逃がし用のピンを挿入するようにしてもよいし、他のエアー逃がし機構を設けるようにしてもよい。
【0031】
各空間37,38には、エアー吹き付け機構及び突き出し部材が設けられ、これを用いてバリBの成形体(ダクト1)からの分断が行われる。具体的には、本実施形態の場合、図中、上側の分割金型12には、前記空間37,38に対応してエアー吹き付け用の吹き出し孔50が形成されている。このエアー吹き出し孔50からエアー(冷気)が吹き出され、バリBに冷気が吹き付けられる。
【0032】
一方、図中、下側の分割金型13には、ピンチ部35,36に近い位置に、またピンチ部35,36に沿って配列する形で突き出し部材である突き出し棒60が設置されている。突き出し棒60は、直径20mm~30mm程度の棒状部材であり、突き出し棒60の先端は金型13の金型面から若干突出するように設置しておく。この突き出し棒60を金型面から突き出すことでバリBを向かい合う分割金型12の金型面に向けてバリBを押し付ける。
【0033】
前記突き出し棒60の形態は任意であり、例えば断面円形の棒状体を用いてもよいし、先端面の中央に凹部を有する円環状の突出部を有する棒状体を用いてもよい。あるいは、先端に若干径の小さな凸部を有する棒状体等も使用可能である。いずれにしても、突き出し棒60の先端は、溶融状態のバリBがエアー吹き付けによって押し付けられた際にその形状が転写され、押し出し時にバリBを係止することでバリBがずれるのを防止し得る形態とすることが好ましい。
【0034】
突き出し棒60は、前記の通り、ピンチ部35,36に沿って配列されるが、その間隔が狭いほど切断性が向上する。したがって、突き出し棒60の配列ピッチ(配列間隔)は170mm以内とすることが好ましい。
【0035】
また、突き出し棒60の稼動手段としては、例えば油圧方式を採用することができ、各突き出し棒60を独立に稼動させる方式としてもよいし、金型背板等を利用して同時に稼動する方式としてもよい。成形体の形状によっては、突き出し棒60が当たるタイミングを可変とすることで、バリ処理が円滑に行われることも考えられるが、その場合には、各突き出し棒60のストロークを調整することで適宜調整可能である。
【0036】
ダクト部2,3の外側にバリBに関しては、前記の通りであるが、ダクト部2,3間のバリBについても同様の構成で対応可能である。ただし、ダクト2,3間のバリBに関しては、第2のピンチ部を形成する必要はなく、ダクト部2のピンチ部35とダクト部3のピンチ部36の間に空間41を形成し、ここにエアー吹き付け用の吹き出し孔50や突き出し棒60を設置すればよい。なお、突き出し棒60に関しては、前記空間37,38においては成形体側(ダクト部2側あるいはダクト部3側)に一箇所(一列)配列したが、空間41においては、ダクト部2側とダクト部3側の2箇所に突き出し棒60を配列する。
【0037】
次に、これら分割金型12,13を用いてブロー成形を行う場合の各工程について説明する。成形体であるダクト1をブロー成形するには、前述の通り、環状ダイ11のダイスリットより供給されるパリソンPを分割金型12,13で挟み込み、パリソンP内にエアブローしてこれを分割金型12,13のキャビティ形状に賦形する。この状態を示すのが
図3である。分割金型12,13間にパリソンPが挟み込まれて賦形され、分割金型12,13のキャビティc1,c2においてダクト部2及びダクト部3が成形される。
【0038】
ダクト部2,3の成形が完了した後、
図4に示すように上側の分割金型12に設けられた吹き出し孔50からエアーを供給し、バリBの表面に対してエアブローを行う。供給するエアーは冷気であることが好ましい。また、ここでのエアブローは、ピンチ部35,36近傍のバリBにエアーが当たるように行うことが好ましい。このエアブローにより、バリBが冷却されて短時間のうちに剛性が増す。
【0039】
なお、前記エアブローは、バリBを冷却する機能を有する他、バリBを突き出し棒60側に押し付けるという役割も有している。バリBを突き出し棒60側に押し付けておくことで、突き出し棒60の突き出しにより大きなストロークでバリBを反対側の金型12に押し付けることができ、バリBを成形体から確実に分断することができる。
【0040】
前記エアブローによるバリBの冷却の後、
図5に示すように、剛性の増したバリBを突き出し棒60により反対側の分割金型12に押し付け、バリBを成形体から引きちぎる形で分断(切断)する。ダクト部2,3の外側のバリBは、空間37,38において、ピンチ部35,36近傍に設けられた突き出し棒60の突き出しにより成形体から分断される。ダクト部2,3間のバリBは、空間41において、ピンチ部35,36近傍にそれぞれ設けられた2本の突き出し棒60の突き出しにより成形体から分断される。
【0041】
以上により、分割金型12,13内においてバリBの成形体からの分断が行われる。すなわち、本実施形態のブロー成形では、成形体(ダクト1)の成形及びバリ処理が金型内で完結し、これまでになく効率的な成形及びバリ処理が可能である。
【0042】
ところで、前述のように一方の分割金型13側から突き出し棒60を突き出し、バリBを成形体(ダクト1)から分断する場合、突き出し棒13が突き出される分割金型13においては、バリBを収容する空間37,38を形成するための凹部はできるだけ浅くすることが好ましい。凹部を浅くすることで、突き出し棒60の先端とバリBを切断する成形体のパーティングラインまでの距離が小さくなり、バリBの切断性を高めることができる。当該凹部の深さが深くなると、突き出し棒60の力がバリBに効果的に伝わらない。
【0043】
ただし、凹部の深さを浅くすると、バリBを収容する空間37,38(バリ逃がし空間)の容積が小さくなり、溶融した樹脂をバリ逃がし空間に収容しきれなくなって、成形体に厚肉部分(いわゆる駄肉部分)が形成されてしまう傾向にある。厚肉部分の形成は寸法精度を低下させる要因となり、特に成形体の開口部において大きな問題となる。
【0044】
例えばダクト1の肉厚tが開口部K近傍において3mm以上(例えば3mm~8mm)である場合に、突き出し棒13が突き出される分割金型13において、凹部の深さがダクト1の肉厚よりも小さいと、ダクト1のない種面に厚肉部分(いわゆる駄肉部分)が形成される。
図7は、このような条件で成形した場合のダクト1の断面を示す図であり、ダクト1のパーティングラインPL近傍において、樹脂の盛り上がり(駄肉部分DN)が形成される。特に、突き出し棒13が突き出される分割金型(下側の分割金型13)において、凹部の深さがダクト1の肉厚よりも小さいと、パーティングラインPLの下方に駄肉部分DNが認められる。この駄肉部分DNの形成は、ダクト1の内径の寸法精度を大きく低下させる要因となり、例えば他のダクトや連結部材と嵌合する際に、大きな障害となる。
【0045】
そこで、本実施形態においては、前記突き出し棒60が突き出される側の分割金型13において、成形体の開口部となる位置の凹部の深さを、それ以外の部分の凹部の深さよりも深くし、前記突き出し棒60を前記それ以外の部分に設けることで、バリBの切断性を高めるとともに、厚肉部分が形成されることを抑制するようにしている。
【0046】
図8は、突き出し棒60を突き出す側の分割金型13の概略平面図であり、突き出し棒60はダクト1を成形するためのキャビティの周囲に沿って配列されている。また、
図8において、破線で示すのは、ダクト1を各ダクト部2,3,4に分割する際の切断位置であり、この切断位置が各ダクト部2,3,4の開口部Kに対応することになる。
【0047】
ここで、バリBを収容する空間37,38を形成するために各分割金型12,13に凹部が形成されるが、
図8の突き出し棒60が配列される領域(バリ取り領域)では、
図9(
図8のX1-X1線における断面図)に示すように、上側の分割金型12の凹部12aの深さはD、下側(突き出し棒60が設置される側)の分割金型13の凹部13a1の深さはd1とする。前記分割金型12の凹部12aの深さDは10mm~50mm程度(例えば30mm)とし、下側の分割金型13の凹部13a1の深さd1は0.5mm~3mm程度(例えば1mm)とする。
【0048】
一方、前記各ダクト部2,3,4の開口部Kに対応する領域(領域KL:切断線を中心に両側数cm程度の領域)においては、
図10(
図8のX2-X2線における断面図)に示すように、上側の分割金型12の凹部12aの深さはD、下側の分割金型13の凹部13a1の深さはd2とする。ここでd2>d1である。具体的には、前記分割金型12の凹部12aの深さDは
図9の場合と同じ10mm~50mm程度(例えば30mm)であり、下側の分割金型13の凹部13a2の深さd2はダクト1の肉厚t以上とする。ダクト1の肉厚tが3mmである場合、凹部13a2の深さd2は3mm以上(例えば4mm)とする。
【0049】
このように分割金型13の凹部13a1と凹部13a2の深さを変えた様子を示すのが
図11である。凹部13a2の深さを深くすることで、この部分(各ダクト部2,3,4の開口部Kに対応する部分)においてバリBを収容する空間37,38が拡大され、厚肉部分の形成(駄肉形成)が抑制される。突き出し棒60が設置される領域では、凹部13a1の深さd1が浅いままであるため、バリBの切断性が維持される。
【0050】
以上、本発明を適用した実施形態について説明してきたが、本発明が前述の実施形態に限られるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 ダクト
2,3 ダクト部
4 連結ダクト部
11 環状ダイ
12,13 分割金型
12a,13a1,13a2 凹部
31,32,33,34 凹部
35,36 ピンチ部(第1のピンチ部)
37,38 空間
39,40 ピンチ部(第2のピンチ部)
41 空間
50 エアー吹き付け孔
60 突き出し棒
DN 駄肉部分