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特許7303976食用カンナ粉を含有する穀粉加工食品用生地
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】食用カンナ粉を含有する穀粉加工食品用生地
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/36 20060101AFI20230629BHJP
   A21D 10/02 20060101ALI20230629BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20230629BHJP
【FI】
A21D2/36
A21D10/02
A21D13/80
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022186916
(22)【出願日】2022-11-07
【審査請求日】2022-11-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522455250
【氏名又は名称】岩津 良秋
(72)【発明者】
【氏名】岩津 良秋
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107212277(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104068324(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105053849(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107874095(CN,A)
【文献】食品科学,Vol.36, No.09,2015年,pp.33-38
【文献】河野俊夫ほか,食用カンナ澱粉を用いた製パンの品質評価に関する研究,第70回農業機械学会年次大会 講演要旨,2011年09月20日,Vol.70,pp.456-457
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
A23L 7/
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉100質量部に対して、食用カンナの根茎部を皮付きのまま粉にした食用カンナ粉0.001~質量部を含有するパンまたは焼き菓子用生地を、焼成してなるパンまたは焼き菓子
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粉加工食品用生地、穀粉加工食品用生地を加熱処理してなる穀粉加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
パン、パスタ、ケーキ、ビスケット、お好み焼き、饅頭など、穀粉を捏ねた生地を加熱処理することで製造する穀粉加工食品は、主食や嗜好食品として、大量に生産、消費されており、生産性向上と共に、製品の風味や保存安定性向上、健康機能の訴求の点から、多種多彩な製造方法や製品の開発が行われている。
例えば、特許文献1には、糖類等の原料を特定条件で処理して得た材料を、生地に配合し加熱することで、製造効率が高く、低価格で外観、食感、風味が良好な穀粉加熱加工食品を製造することが記載されている。また、特許文献2には、穀粉、ベーキングパウダーに加えて、小麦全粒粉と強力粉を用いてパン生地を調製することで、ふくらみが十分で食感及び風味が良好なパンを簡便に製造することができるパンの製造方法が記載されている。
一方、非特許文献1には、食用カンナを食品に配合する研究が行われていることが報告されている。
【0003】
穀粉加工食品の生産性と製品の品質に対しては、穀粉を含む材料を混捏した生地の物性が重要な因子となっている。しかしながら、特許文献1~2に記載された技術では、生地物性と、製品品質の双方を十分に向上することができなかった。
また、非特許文献1には、小麦粉を食用カンナデンプンに置き換えた食品は、高い熱安定性等からパン製品等の製造に有効であること、20%食用カンナデンプンを含む麺は、調理品質と食感が良好であったことが記載されているが、デンプン源として食品に大量配合することを前提としており、穀粉加熱加工食品の生地物性や製品品質を向上するために、少量の食用カンナを含有させることは念頭に置かれていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許4258784号公報
【文献】特開2022-124506号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】恋田ら「食用カンナの食品・栄養学的価値と利用実態」生物機能開発研究所紀要 21:64-71 2020年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、生地物性において、軟らかく弾力があり、製品評価において、食感と風味が良好な、穀粉加工食品用生地、及び、穀粉加工食品用生地を加熱処理してなる穀粉加工食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、穀粉に対して、特定量の食用カンナ粉を含有することで、生地物性と製品評価の双方において、良好な穀粉加工食品用生地を製造できることを見出した。すなわち、本発明は以下の事項を含んでいる。
〔1〕穀粉100質量部に対して、食用カンナ粉0.001~8質量部を含有する穀粉加工食品用生地。
〔2〕前記〔1〕に記載の穀粉加工食品用生地を、加熱処理してなる穀粉加工食品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、生地物性において、軟らかく弾力があり、製品評価において、食感と風味が良好な、穀粉加工食品用生地、及び、穀粉加工食品用生地を加熱処理してなる穀粉加工食品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の穀粉加工食品用生地は、穀粉100質量部に対して、食用カンナ粉0.001~8質量部を含有するものであり、穀粉と食用カンナ粉を含む材料を、水分の存在下で混捏することで製造することができる。
穀粉に食用カンナ粉0.001~8質量部を含むことで、軟らかく弾力がある生地が得られ、その生地を加熱処理することで、食感と風味が良好な穀粉加工食品を得ることができる。
【0010】
穀粉は、所望の穀粉加工食品に応じて、適宜に選択し組み合わせて用いることができる。
穀粉は、小麦粉、そば粉、米粉、コーンフラワー、大麦粉、ライ麦粉、はとむぎ粉、ひえ粉、あわ粉、トウモロコシ粉、きな粉が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。小麦粉は、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、全粒粉、グラハム粉、セモリナ粉が挙げられる。
穀粉加工食品用生地における穀粉の含有量は、生地物性と製品評価の点から、10~90質量%が好ましく、製品に応じて、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、80質量%以下、70質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、40質量%以下とすることもできる。
【0011】
食用カンナ粉は、食用カンナの根茎部を粉にしたものである。
食用カンナは、ショウガ目カンナ科に属する中南米原産の大型多年草で、デンプンを蓄積する根茎が食用として利用されている。食用カンナ粉は、例えば、食用カンナの根茎部を乾燥、粉砕することで得ることができる。
食用カンナを粉にする際には、根茎部の皮を剥いてもよいが、生地物性と製品評価の点から、皮付きのまま用いることが好ましい。食用カンナの根茎部の処理としては、洗浄、小さな根っこの除去、汚れの除去、切断、スライス、乾燥、粉砕、篩分け等が挙げられ、所望の品質に応じて適宜に処理条件を選択して行うことができる。乾燥は、乾燥機を用いた乾燥、自然乾燥、天日乾燥等が挙げられる。
【0012】
穀粉加工食品用生地に含む食用カンナ粉の量は、穀粉100質量部に対して、0.001~8質量部であり、生地物性と製品評価の点から、0.005~6質量部が好ましく、製品に応じて、0.01質量部以上、0.02質量部以上、0.05質量部以上、0.1質量部以上、5質量部以下、3質量部以下、1質量部以下、0.5質量部以下、0.1質量部以下とすることもできる。
【0013】
穀粉と食用カンナ粉を含む材料を混捏する際の水分は、生地物性と製品評価の点から、穀粉100質量部に対して、10~100質量部が好ましく、製品に応じて、20質量部以上、40質量部以上、60質量部以上、70質量部以上、80質量部以上、90質量部以下、80質量部以下、70質量部以下、60質量部以下、50質量部以下とすることもできる。
【0014】
穀粉加工食品用生地には、穀粉、食用カンナ粉以外に、一般に配合される各種の材料を含むことができる。例えば、糖類、鶏卵、粉乳、牛乳、食塩、油脂、イースト、ベーキングパウダー、澱粉、野菜、果物、合成甘味料、調味料、増粘剤、膨張剤、pH調整剤、酸化防止剤、香料等が挙げられる。
穀粉加工食品用生地は、冷蔵生地、冷凍生地として、冷蔵、冷凍保存することができる。
【0015】
穀粉加工食品用生地を、加熱処理して穀粉加工食品を得る。
穀粉加工食品は、穀粉とその他の材料を、水分の存在下での混捏、成形、加熱等の加工をして製造する食品である。穀粉加工食品は、パン、パスタ、中華麺類(餃子、ワンタン等を含む)、うどん、お好み焼き、たこ焼き、天ぷら、ドーナツ、マドレーヌ、ケーキ、焼き菓子、油揚げ菓子、洋菓子等の小麦粉加工食品、そば、フォー、ビーフン、春雨、くずきり、スナック菓子、生菓子、和菓子等を挙げることができる。
パンは、食パン、バターロール、バケット、ドイツパン、大麦パン、ライムギパン、クロワッサン、メロンパン、菓子パン、調理パン等が挙げられる。
これらの穀粉加工食品の中でも、パン、小麦粉加工食品は、本発明の効果を好適に発揮できる。
【0016】
加熱処理は、製品に対応して、焼成、茹で、揚げ、蒸し、炒め、煎り、燻し、マイクロ波加熱等を選択できる。
加熱処理の前に、成形をすることが好ましい。
【0017】
穀粉加工食品用生地と、穀粉加工食品の製造方法は、従来の穀粉加工食品の製造方法を採用することができる。本発明によれば、生地物性が改善され、生地の取り扱い性が良好となり、製造工程を効率化することが可能となる。
パンの場合、穀粉として小麦粉(強力粉)を用いて、中種法、直捏法(ストレート法)、液種法、中麺法、湯種法等の製造方法で製造することができる。
【実施例
【0018】
[食用カンナ粉の製造]
食用カンナの根茎部を、皮付きのまま洗浄し、小さな根っこを除去した後にスライスして、3日間天日乾燥し、ミキサーで粉砕して、食用カンナ粉を製造した。
【0019】
[実施例1~3、比較例1~2](食パンでの評価)
食パンをストレート法で製造した。穀粉として小麦粉(強力粉)を用い、表1に示す材料をミキサーで混捏(ミキシング)して生地を得て、フロアタイム(90分)をとった後、分割し、ベンチタイム(20分)、ホイロ発酵(38℃、70%、60分)し、焼成(230℃、21分)して、食パンを製造した。
生地物性と製品の評価結果を表1に示す。
製品の評価は、11名のパネラーにより、下記の評価基準で、5段階の点数をつけ、11名のパネラーの合計点とした(実施例4~5も同じ)。
【0020】
<評価基準>
2点=良好
1点=やや良好
0点=普通
-1点=やや劣る
-2点=劣る
【0021】
【表1】
【0022】
食用カンナ粉0.001~8質量部を含有する場合(実施例1~3)は、軟らかく弾力がある生地が得られ、その生地を加熱処理することで、口どけ、歯切れ、ソフト感、しっとり感、弾力、風味が良好な穀粉加工食品(食パン)を得ることができた。
【実施例4】
【0023】
(バターロールでの評価)
バターロールをストレート法で製造した。穀粉として小麦粉(強力粉)を用い、表2に示す材料をミキサーで混捏(ミキシング)して生地を得て、フロアタイム(90分)をとった後、分割し、ベンチタイム(15分)、ホイロ発酵(28℃、70%、45分)し、焼成(220℃、15分)して、バターロールを製造した。
生地物性と製品の評価結果を表2に示す。
【0024】
【表2】
【0025】
食用カンナ粉0.02質量部を含有する場合(実施例4)は、軟らかく弾力がある生地が得られ、その生地を加熱処理することで、食感と風味が良好な穀粉加工食品(バターロール)を得ることができた。
【実施例5】
【0026】
(バケットでの評価)
バケットをストレート法で製造した。穀粉として小麦粉(フランスパン用粉)を用い、表3に示す材料をミキサーで混捏(ミキシング)して生地を得て、フロアタイム(180分)をとった後、分割し、ベンチタイム(20分)、ホイロ発酵(28℃、70%、65分)し、焼成(240℃、10分,220℃、15分)して、バケットを製造した。
生地物性と製品の評価結果を表3に示す。
【0027】
【表3】
【0028】
食用カンナ粉0.1質量部を含有する場合(実施例5)は、ややベタつきのある生地であったものの、その生地を加熱処理することで、食感と風味が良好な穀粉加工食品(バケット)を得ることができた。
【0029】
[実施例6、比較例3](マドレーヌでの評価)
マドレーヌを別立て法で製造した。穀粉として小麦粉(薄力粉)を用い、表4に示す材料を別立て法で混捏して生地を得て、焼成(240℃、12分)して、マドレーヌを製造した。
生地物性と製品の評価結果を表4に示す。
【0030】
【表4】
【0031】
食用カンナ粉0.02質量部を含有する場合(実施例6)は、トロっとしていて作業性良好の生地が得られ、その生地を加熱処理することで、食感と風味が良好な穀粉加工食品(マドレーヌ)を得ることができた。
【0032】
[実施例7、比較例4](お好み焼きでの評価)
お好み焼きを製造した。穀粉として小麦粉(薄力粉)を用い、表5に示す材料のうち、キャベツ以外の材料をフードプロセッサで混捏(ミキシング)し、そこへキャベツを混合して生地を得て、鉄板で焼いて、お好み焼きを製造した。
生地物性と製品の評価結果を表5に示す。
【0033】
【表5】
【0034】
食用カンナ粉1質量部を含有する場合(実施例7)は、弾力性のある生地が得られ、その生地を加熱処理することで、食感と風味が良好な穀粉加工食品(お好み焼き)を得ることができた。
【要約】
【課題】生地物性において、軟らかく弾力があり、製品評価において、食感と風味が良好な、穀粉加工食品用生地、及び、穀粉加工食品用生地を加熱処理してなる穀粉加工食品を提供すること。
【解決手段】穀粉加工食品用生地は、穀粉100質量部に対して、食用カンナ粉0.001~8質量部を含有する。穀粉加工食品用生地を、加熱処理して穀粉加工食品を得る。
【選択図】なし