(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】被覆部材、及び被覆部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 22/78 20060101AFI20230629BHJP
C23C 22/48 20060101ALI20230629BHJP
C23C 28/04 20060101ALI20230629BHJP
C25D 11/34 20060101ALI20230629BHJP
C25F 1/00 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C23C22/78
C23C22/48
C23C28/04
C25D11/34 D
C25F1/00 A
(21)【出願番号】P 2019118226
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2021-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】大西 崇之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健吾
(72)【発明者】
【氏名】細江 晃久
(72)【発明者】
【氏名】暮石 有佑
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-278843(JP,A)
【文献】特開2008-144235(JP,A)
【文献】特開平10-265966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/78
C23C 22/48
C23C 28/04
C25D 11/34
C25F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と化成皮膜とを備え、
前記基材は、
Ni又はNi合金によって構成される表層と、
前記表層の外方に形成されるNi酸化被膜とを有し、
前記化成皮膜は、前記Ni酸化被膜の直上に設けられ、
前記Ni酸化被膜において、HAXPESにより測定されるNi(OH)
2の原子濃度とNiOの原子濃度との比率であるNi(OH)
2/NiOが0.25以上である、
被覆部材。
【請求項2】
前記Ni酸化被膜の表面側において、XPSにより測定されるNiOの原子濃度とNiの原子濃度との比率であるNiO/Niが0.20以上である請求項1に記載の被覆部材。
【請求項3】
前記基材全体が、Ni又はNi合金である請求項1又は請求項2に記載の被覆部材。
【請求項4】
前記表層は、Ni又はNi合金のメッキである請求項1又は請求項2に記載の被覆部材。
【請求項5】
前記化成皮膜は、3価Cr又はZrを含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の被覆部材。
【請求項6】
Ni又はNi合金によって構成される表層、及び前記表層の外方に形成されるNi酸化被膜を有する基材を用意する工程と、
前記Ni酸化被膜に対して陽極電解脱脂を行う工程と、
前記陽極電解脱脂の後に水洗する工程と、
前記陽極電解脱脂を経た前記Ni酸化被膜に対して
、酸洗を行うことなく化成処理を行う工程とを備え、
前記陽極電解脱脂は、0.5A/dm
2以上8.0A/dm
2以下の電流密度で実施する、
被覆部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被覆部材、及び被覆部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の基材の表面にニッケル(Ni)をメッキすることで、基材の耐食性、溶接性(weldability)、及びはんだ付性(solderability)を向上させることが行われている。ニッケルは、その表面に不働態(Ni酸化被膜)が形成されるため、特に基材の耐食性を向上させることに用いられることが多い。例えば、アルミニウム(Al)を含む導体と、銅(Cu)を含む端子とを接続する端子付き電線において、ガルバニック腐食を抑制するため端子側にニッケルメッキが施される。また、ニッケルの耐食性に鑑み、Ni又はNi合金によって基材が形成されることもある。例えば、リチウムイオン電池のタブリードなどがNi又はNi合金によって構成される場合がある。
【0003】
特許文献1には、ニッケルメッキ鋼板上に、樹脂からなる塗膜を形成する技術が開示されている。この塗膜は、ニッケルメッキ鋼板を深絞り加工する際、ニッケルメッキ層によって金型が摩耗することを抑制するものである。このように金属表面に何らかの被膜を形成する場合、脱脂によって金属表面の油分などの付着物を除去することが好ましい。特許文献1では、ニッケルメッキ鋼板に電解脱脂を施し、メッキ表面の炭素含有化合物を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基材の用途によっては、基材の耐食性を更に向上させることが求められる場合がある。しかし、Ni酸化被膜を有するニッケルがそもそも耐食性に優れるため、Ni酸化被膜の表面に更に耐食性を向上させる被膜を形成する技術は殆ど検討されていない。
【0006】
本開示は、Ni酸化被膜を有する基材を備え、耐食性に優れる被覆部材を提供することを目的の一つとする。また、本開示は、Ni酸化被膜を有する基材の耐食性を向上させる被覆部材の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の被覆部材は、
基材と化成皮膜とを備え、
前記基材は、
Ni又はNi合金によって構成される表層と、
前記表層の外方に形成されるNi酸化被膜とを有し、
前記化成皮膜は、前記Ni酸化被膜の直上に設けられ、
前記Ni酸化被膜において、HAXPESにより測定されるNi(OH)2の原子濃度とNiOの原子濃度との比率であるNi(OH)2/NiOが0.25以上である。
【0008】
本開示の被覆部材の製造方法は、
Ni又はNi合金によって構成される表層、及び前記表層の外方に形成されるNi酸化被膜を有する基材を用意する工程と、
前記Ni酸化被膜に対して陽極電解脱脂を行う工程と、
前記陽極電解脱脂を経た前記Ni酸化被膜に対して化成処理を行う工程とを備え、
前記陽極電解脱脂は、0.5A/dm2以上8.0A/dm2以下の電流密度で実施する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の被覆部材は、耐食性に優れる。また、本開示の被覆部材の製造方法は、耐食性に優れる被覆部材を作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に例示される被覆部材の概略断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態2に例示される端子の概略構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態3に例示される放熱部材の概略構成図である。
【
図4】
図4は、実施形態4に例示されるタブリードの概略構成図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る条件で陽極電解脱脂を行った被覆部材における表面からの深さと、各深さにおける元素含有量との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、
図5に示される被覆部材における表面からの深さと、各深さにおけるNiO/Niとの関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、陰極電解脱脂を行った被覆部材における表面からの深さと、各深さにおける元素含有量との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、
図7に示される被覆部材における表面からの深さと、各深さにおけるNiO/Niとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、基材におけるNi酸化被膜に対して化成皮膜を形成することを検討した。その際、本発明者らは、Ni酸化被膜に対してどのような前処理を行うことが最適であるかを検討した。その結果、Ni酸化被膜に対して所定の条件で陽極電解脱脂を施すことで、Ni酸化被膜が自然酸化膜よりも厚く成長すること、そのNi酸化被膜上に形成される化成皮膜がNi酸化被膜に強固に密着することが明らかになった。また、そのNi酸化被膜に含まれるNi化合物の割合が特徴的な数値を示すことが明らかになった。これらの知見に基づいて、本開示の被覆部材を以下に規定する。
【0012】
[本開示の実施形態の説明]
以下、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0013】
<1>実施形態に係る被覆部材は、
基材と化成皮膜とを備え、
前記基材は、
Ni又はNi合金によって構成される表層と、
前記表層の外方に形成されるNi酸化被膜とを有し、
前記化成皮膜は、前記Ni酸化被膜の直上に設けられ、
前記Ni酸化被膜において、HAXPESにより測定されるNi(OH)2の原子濃度とNiOの原子濃度との比率であるNi(OH)2/NiOが0.25以上である。
【0014】
実施形態に係る被覆部材は、例えば、Niめっき層のみを備える従来の被覆部材に比べて、優れた耐食性を有する。実施形態に係る被覆部材が優れた耐食性を発揮するのは、Ni酸化被膜の更に直上に化成皮膜が形成されており、その化成皮膜がNi酸化被膜に強固に密着しているからである。ここで、化成皮膜とは、化成処理によって得られた皮膜のことである。化成処理は、化学的処理によって金属表面に安定な化合物を生成させる表面処理方法のことである(JIS Z 0103:防せい防食用語より)
【0015】
上記化成皮膜が基材のNi酸化被膜に強固に密着するのは、所定の電流密度の陽極電解脱脂によって、Ni酸化被膜が自然酸化膜よりも厚く成長し、Ni酸化被膜が化成皮膜の形成に好適な状態となっているからであると推察される。通常、Niの自然酸化膜は1nm程度であるが、実施形態に係る被覆部材のNi酸化被膜は2nmから3nm程度となっている。
【0016】
また、上記Ni酸化被膜が陽極電解脱脂を経て得られたものであることは、HAXPES(Hard X-ray Photoelectron Spectroscopy:硬X線光電子分光法)によって確認することできる。基材を陽極とする陽極電解脱脂が行われると、Ni酸化被膜に多くのNi(OH)2が形成される。従って、HAXPESによって、Ni(OH)2/NiOが0.25以上であれば、Ni酸化被膜が陽極電解脱脂を経て得られた物であることが分かる。
【0017】
ここで、HAXPESは、高エネルギーのX線である硬X線を用いて、非破壊にて試料の元素分析を行うことができる。HAXPESの検出深さは一般に試料の表面から10nm以上あるため、被覆部材のNi酸化被膜の厚みと比較して十分に大きい。従って、HAXPESによって得られるNi(OH)2/NiOの情報は、Ni酸化被膜の厚み方向の全域における情報と考えて良い。
【0018】
<2>実施形態に係る被覆部材の一形態として、
前記Ni酸化被膜の表面側において、XPSにより測定されるNiOの原子濃度とNiの原子濃度との比率であるNiO/Niが0.20以上である形態が挙げられる。
【0019】
上記Ni酸化被膜が陽極電解脱脂を経て得られたものであることは、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy:X線光電子分光法)によって確認することもできる。具体的には、Ni酸化被膜の表面側におけるNiO/Niが0.20以上であれば、Ni酸化被膜が陽極電解脱脂を経て得られたものであることが分かる。XPSは、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)と呼ばれることもある。
【0020】
ここで、XPSは、硬X線よりも低エネルギーの軟X線を用いて試料の分析を行う。従って、実施形態の被覆部材を分析するときは、スパッタなどで被覆部材の表面に凹部を形成し、その凹部における情報を取得する。
【0021】
<3>実施形態に係る被覆部材の一形態として、
前記基材全体が、Ni又はNi合金である形態が挙げられる。
【0022】
Ni又はNi合金からなる基材は、高い耐食性を備える。そのような基材に対して更に化成皮膜を形成した実施形態の被覆部材は、より優れた耐食性を備える。
【0023】
<4>実施形態に係る被覆部材の一形態として、
前記表層は、Ni又はNi合金のメッキである形態が挙げられる。
【0024】
上記構成によれば、用途に応じて基材の材質を選択できる。例えば、被覆部材として導電性が求められる場合、基材は銅又は銅合金などで構成される。その場合、基材の耐食性を高めるために、基材の表面にNiのメッキ又はNi合金のメッキからなる表層が形成される。
【0025】
<5>実施形態に係る被覆部材の一形態として、
前記化成皮膜は、3価Cr又はZrを含む形態が挙げられる。
【0026】
化成処理としては、6価クロムを用いたクロメート処理が一般的である。しかし、近年では環境問題に配慮しノンクロメート処理が主流となっている。そのようなノンクロメート処理として、3価クロム化成処理、又はジルコニウム化成処理などが挙げられる。これらの化成処理によれば、化成皮膜に3価クロム(Cr)又はジルコニウム(Zr)が含まれる。
【0027】
<6>実施形態に係る被覆部材の製造方法は、
Ni又はNi合金によって構成される表層、及び前記表層の外方に形成されるNi酸化被膜を有する基材を用意する工程と、
前記Ni酸化被膜に対して陽極電解脱脂を行う工程と、
前記陽極電解脱脂を経た前記Ni酸化被膜に対して化成処理を行う工程とを備え、
前記陽極電解脱脂は、0.5A/dm2以上8.0A/dm2以下の電流密度で実施する。
【0028】
電解脱脂としては、脱脂対象を陰極とする陰極電解脱脂と、脱脂対象を陽極とする陽極電解脱脂とが挙げられる。陰極電解脱脂では、脱脂対象の近傍に水素ガスが発生し、その水素ガスによって脱脂対象の表面の付着物が除去される。一方、陽極電解脱脂では、脱脂対象の近傍に酸素ガスが発生し、その酸素ガスによって脱脂対象の表面の付着物が除去される。脱脂対象の近傍ではH2Oが酸素(O2)とプロトン(H+)に分解されることで酸素ガスが発生する。陽極電解脱脂では脱脂対象の表面に酸化被膜が生成するため、陽極電解脱脂を経た脱脂対象では通常、酸洗によってその表面から酸化被膜を除去する。
【0029】
発明者らは、耐食性に優れるNi酸化被膜に対して更に化成皮膜を形成するための最適な電解脱脂を検討した。その結果、Ni酸化被膜を陽極電解脱脂するに当たり、陽極電解脱脂の電流密度を0.5A/dm2以上8.0A/dm2以下とすることで、Ni酸化被膜の表面が化成皮膜の形成に好適な状態となることを見出した。陽極電解脱脂を行ったNi酸化被膜の表面では、下記化学反応式に示されるように、NiO、Ni(OH)2、NiOOHなどが形成される。これらのNi化合物が、Ni酸化被膜に対する化成皮膜の密着性を向上させていると推察される。
化学反応式:Ni+2OH-→NiO+H2O+2e-
Ni+2OH-→Ni(OH)2+2e-
Ni(OH)2+OH-→NiOOH+H2O+e-
【0030】
Ni酸化被膜が上記電流密度の陽極電解脱脂によって処理されることで、Ni酸化被膜が厚く成長すると共に、Ni酸化被膜の表面が化成皮膜の形成に適した状態に改質される。陽極電解脱脂の電流密度が0.5A/dm2未満であると、Ni酸化被膜が殆ど成長せず、Ni酸化被膜の表面が化成皮膜の形成に好適な状態とならない。一方、陽極電解脱脂の電流密度が8.0A/dm2超であると、Ni酸化被膜の近傍でプロトンが大量に発生し、pHが極端に低下するため、成長したNi酸化被膜が溶解してしまう。その結果、Ni酸化被膜の厚さが厚くならず、Ni酸化被膜の表面が化成皮膜の形成に好適な状態とならない。
【0031】
<7>実施形態に係る被覆部材の製造方法の一形態として、
前記陽極電解脱脂の後に水洗する工程を備え、
酸洗を行うことなく前記化成処理を行う形態が挙げられる。
【0032】
既に述べたように、通常、陽極電解脱脂を経た脱脂対象は酸洗される。しかし、実施形態に係る被覆部材の製造方法では、陽極電解脱脂によって、Ni酸化被膜の成長と、Ni酸化被膜の改質を行っている。そのため、Ni酸化被膜が酸洗されると、改質されたNi酸化被膜が除去される恐れがある。従って、陽極電解脱脂の後に酸洗を行うことなく化成処理を行うことで、Ni酸化被膜に対する化成皮膜の密着性を向上させることができる。
【0033】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る被覆部材、及び被覆部材の製造方法の具体例を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一又は相当部分を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0034】
<実施形態1>
≪被覆部材≫
図1は、実施形態に係る被覆部材1の断面を模式的に示している。
図1に示されるように、実施形態に係る被覆部材1は、基材10とNi被覆(表層)11とNi酸化被膜12と化成皮膜13とを備える。
図1は模式図であり、
図1における各層の厚みの比率は、実際とは異なる。以下、被覆部材1の各構成を詳細に説明する。
【0035】
[基材]
基材10は金属製である。基材10の材質は特に限定されない。例えば、基材10の材質として、Al、Al合金、Mg(マグネシウム)、Mg合金、Cu、Cu合金などが挙げられる。基材10は、Ni又はNi合金であっても良い。基材10がNi又はNi合金である場合、Ni被覆11は存在しない。その場合、基材10の表面側の部分が表層である。
【0036】
ここで、X合金(Xは金属元素)とは、X合金を構成する元素のうち、Xが最も多く含まれる合金のことである。例えば、Ni合金は、Niの含有量が最も多い合金のことである。
【0037】
[Ni被覆]
Ni被覆11は、Ni又はNi合金によって構成される。Ni被覆11は、例えばメッキによって形成される。
図1に示される例では、基材10の一面にのみNi被覆11が形成されているが、基材10の全面にNi被覆11が形成されていても良い。
【0038】
Ni被覆11の厚さは特に限定されない。基材10の耐食性を高めるには、Ni被覆11は厚くすることが好ましい。Ni被覆11を形成する手間を考慮すれば、Ni被覆11は薄くすることが好ましい。耐食性と生産性のバランスを考慮し、Ni被覆11の厚さは、例えば0.5μm以上10μm以下とすることが好ましい。より好ましいNi被覆11の厚さは、例えば1μm以上6μm以下である。
【0039】
[Ni酸化被膜]
Ni酸化被膜12は、Ni被覆11の外方に形成される不働態である。Ni酸化被膜12は、Ni被覆11に含まれるNiが酸化することで形成される。
【0040】
本例のNi酸化被膜12は、Niの自然酸化膜に対して後述する陽極電解脱脂を施すことで得られる。Niの自然酸化膜は1nm程度である。これに対して、本例のNi酸化被膜12は、2nmから3nm程度である。Ni酸化被膜12の厚さがNiの自然酸化膜よりも厚いのは、Ni酸化被膜12が所定の電流密度の陽極電解脱脂を経て得られるからである。
【0041】
Ni酸化被膜12が陽極電解脱脂を経て得られたものであることは、HAXPESによって確認することできる。基材10を陽極とする陽極電解脱脂が行われると、Ni酸化被膜12にNi(OH)2が多く形成される。従って、HAXPESによって、Ni(OH)2の原子濃度とNiOの原子濃度との比率であるNi(OH)2/NiOが0.25以上であれば、Ni酸化被膜12が陽極電解脱脂を経て得られた物であることが分かる。HAXPESの測定条件は、後述する試験例1に示す。
【0042】
ここで、HAXPESは、高エネルギーのX線である硬X線を用いて、非破壊にて試料の元素分析を行うことができる。HAXPESの検出深さは一般に試料の表面から10nm以上あるため、被覆部材のNi酸化被膜の厚みと比較して十分に大きい。従って、HAXPESによって得られるNi(OH)2/NiOの情報は、Ni酸化被膜の厚み方向の全域における情報と考えて良い。
【0043】
Ni酸化被膜12が陽極電解脱脂を経て得られたものであることは、XPSによっても確認することできる。具体的には、Ni酸化被膜12の表面側におけるNiOの原子濃度とNiの原子濃度との比率であるNiO/Niが0.20以上であれば、Ni酸化被膜12が陽極電解脱脂を経て得られたものであることが分かる。XPSの測定条件は、後述する試験例2に示す。
【0044】
ここで、XPSは、硬X線よりも低エネルギーの軟X線を用いて試料の分析を行う。従って、実施形態の被覆部材1を分析するときは、スパッタなどで被覆部材1の表面に凹部を形成し、その凹部の底における測定データを取得する。実際には、徐々に凹部を深くしていき、その都度測定データを取得する。本実施形態では、XPSによって検出される化成皮膜の主要元素の原子濃度(原子%)と、Niの原子濃度とが等しくなったとき、凹部がNi酸化被膜の表面に到達したとみなす。例えば、Zr系の化成皮膜であれば、XPSによって検出したZrの原子濃度とNiの原子濃度とが等しくなったとき、凹部がNi酸化被膜の表面に到達したとみなす。従って、本実施形態におけるNiO/Niは、主要元素とNiの原子濃度が等しい測定データから得られたものである。
【0045】
[化成皮膜]
化成皮膜13は、化学的処理によって金属表面に形成される安定な化合物である。化成皮膜13としては、例えば3価クロムのクロム酸塩を含む化成皮膜13、又はジルコニウム塩を含む化成皮膜13などが挙げられる。その他、リン酸塩を含む化成皮膜13などが挙げられる。
【0046】
化成皮膜13の厚さは特に限定されない。例えば、化成皮膜の厚さは1nm以上100nm以下である。化成皮膜13の好ましい厚さは、5nm以上50nm以下である。
【0047】
以上説明した被覆部材1は耐食性に優れる。Ni酸化被膜12の更に直上に化成皮膜13が形成されているからである。また、Ni酸化被膜12の表面が化成皮膜13の形成に適した状態に改質されているので、Ni酸化被膜12に対する化成皮膜13の密着性が高い。この化成皮膜13の密着性も、被覆部材1の耐食性の向上に寄与する。
【0048】
≪被覆部材の製造方法≫
図1に示される実施形態の被覆部材1は、以下の工程を備える製造方法によって得られる。
・準備工程…Ni酸化被膜12を有する基材10を準備する。
・脱脂工程…Ni酸化被膜12に対して陽極電解脱脂を行って、Ni酸化被膜12の成長を促す。
・水洗工程…基材10を純水で洗う。
・化成処理工程…Ni酸化被膜12に対して化成処理を行って、Ni酸化被膜12の直上に化成皮膜13を形成する。
【0049】
[準備工程]
基材10は、Ni又はNi合金によって構成される表層を有するものであれば特に限定されない。例えば、Ni又はNi合金によって構成される基材10が挙げられる。また、Ni又はNi合金によって構成されるNi被覆11を有する基材10が挙げられる。この場合、Ni被覆11を除く部分は、Ni又はNi合金以外の金属元素又は合金によって構成される。
【0050】
[脱脂工程]
陽極電解脱脂は、脱脂処理液に基材10を浸漬し、基材10を陽極として通電を行う電解脱脂である。この陽極電解脱脂によって、Ni酸化被膜12が厚く成長し、Ni酸化被膜12の表面が化成皮膜13の形成に適した状態になる。
【0051】
脱脂処理液は、アルカリ性の溶液である。脱脂処理液としては、例えばNaOH(水酸化ナトリウム)溶液などが挙げられる。アルカリ溶液のpHは、11以上13以下であることが好ましい。
【0052】
陽極電解脱脂は、0.5A/dm2以上8.0A/dm2以下の電流密度で実施される。電流密度が0.5A/dm2以上8.0A/dm2以下であれば、Ni酸化被膜12が厚く成長すると共に、Ni酸化被膜12の表面が化成皮膜13の形成に適した状態に改質される。一方、電流密度が0.5A/dm2未満である場合、Ni酸化被膜12が厚く成長しない。また、電流密度が8.0A/dm2超の場合も、Ni酸化被膜12が厚く成長しない。電流密度が高すぎると、成長したNi酸化被膜12が溶解してしまうと推察される。好ましい電流密度は、0.5A/dm2以上5.0A/dm2以下である。より好ましい電流密度は、1.0A/dm2以上3.0A/dm2以下である。
【0053】
脱脂時間は、適宜選択可能である。例えば、脱脂時間は1秒以上60秒以下とすることが挙げられる。脱脂時間が短いと、Ni酸化被膜12が厚く成長し難い。Ni酸化被膜12の厚さがある程度厚くなると、Ni酸化被膜12はほとんど厚くならない。従って、脱脂時間が長過ぎても、時間が無駄になるだけである。より好ましい脱脂時間は3秒以上10秒以下である。
【0054】
[水洗工程]
基材10の表面から脱脂処理液を除去するために、基材10は水洗される。例えば、純水のシャワーによって基材10の表面から脱脂処理液を除去することが挙げられる。
【0055】
ここで、通常、陽極電解脱脂を行った脱脂対象は、酸洗された後に水洗される。陽極電解脱脂によって脱脂対象の表面に形成される酸化被膜を除去するためである。しかし、本実施形態では、陽極電解脱脂によってNi酸化被膜12を成長させている。従って、本実施形態では、Ni酸化被膜12の表面が除去される可能性がある酸洗は行わない。
【0056】
[化成処理]
化成処理は、例えば陽極電解脱脂を実施したNi酸化被膜12の表面に化成処理液を塗布することで行う。化成処理液は、市販品を用いることができる。環境に対する配慮から、化成処理液はノンクロメート系の化成処理液であることが好ましい。例えば、3価クロムの化成処理液、又はZr系の化成処理液が好適である。
【0057】
化成処理液の塗布後は、化成処理液の乾燥を行うことが好ましい。この乾燥時間は、化成処理液の仕様書に従った時間とすることが好ましい。
【0058】
<実施形態2>
実施形態1の被覆部材1は、
図2に示されるように、電線5の導体50に電気的に接続される端子2に利用できる。
【0059】
本例の端子2は、導体50にかしめられるワイヤバレル20を備える。軽量化の観点から、導体50はAl合金であることが好ましい。また、導電性の観点から、端子2はCu合金であることが好ましい。例えば導体50がAl合金、端子2がCu合金である組合せにおいて、端子2に実施形態1の被覆部材1の構成を適用することで、ガルバニック腐食を抑制できる。
【0060】
<実施形態3>
実施形態1の被覆部材1は、
図3に示されるように、発熱体6に取り付けられる放熱部材3に利用できる。
【0061】
本例の放熱部材3は、発熱体6に接触される本体部30と、本体部30における発熱体6の反対側に設けられるフィン31とを備える。放熱部材3の基材の材質としては、例えばAlとSiC(炭化ケイ素)とを組み合わせたAlSiC、又はMgとSiCとを組み合わせたMgSiCなどが好適である。放熱部材3が発熱体6に溶接される場合、放熱部材3における発熱体6に接触する面にはNi被覆が形成されていることが好ましい。このような構成において、Ni被覆の表面に形成されるNi酸化被膜に化成皮膜を形成することで、放熱部材3の耐食性を向上させることができる。
【0062】
<実施形態4>
実施形態1の被覆部材1は、
図4に示されるように、リチウムイオン電池7に備わるタブリード4に利用できる。
【0063】
本例のリチウムイオン電池7は、電解液を封止する封入体70を備える。タブリード4の一部は、封入体70の内部に配置される電極板(図示せず)に接続されている。つまり、タブリード4の一部が電解液中に浸積される。このような構成において、タブリード4に実施形態1の被覆部材1の構成を適用することで、タブリード4の耐食性を向上させることができる。
【0064】
<試験例1>
試験例1では、基材上に化成処理を施した複数の被覆部材(試料1-1から試料1-38)を作製した。そして、各試料のNi酸化被膜におけるNi(OH)2/NiOを測定すると共に、種々の耐食試験を行った。
【0065】
[準備工程]
基材は、Ni板、Niメッキを有するMgSiC板、Niメッキを有するCu板、又はNiメッキを有するAl(JIS規格のA1050)板のいずれかであった。基材の寸法はいずれも、長さ60mm、幅30mm、厚さ1mmであった。
【0066】
[脱脂工程]
基材は、陽極電解脱脂、陰極電解脱脂、又は浸漬脱脂のいずれかによって脱脂処理された。各脱脂の条件は以下の通りである。
【0067】
陽極電解脱脂は、2.5質量%のNaOH水溶液中に基材を浸漬して行った。陽極電解脱脂の電流密度は、0.3A/dm2、0.5A/dm2、2.0A/dm2、又は9.0A/dm2のいずれかであった。処理時間はいずれも5秒であった。
【0068】
陰極電解脱脂は、2.5質量%のNaOH水溶液中に基材を浸漬して行った。陰極電解脱脂の電流密度は2A/dm2、処理時間は5秒であった。
【0069】
浸漬脱脂は、2.5質量%のNaOH水溶液中に基材を浸漬して行った。浸漬時にバブリングを行った。浸漬時間は5秒であった。
【0070】
[化成処理工程]
脱脂処理された基材は、水洗され、化成処理に供された。化成処理では、基材に化成処理液を塗布し、100℃×5分の乾燥を行った。化成処理液は、トップトライパッシブ(奥野製薬工業製)、又はサーフコートEC1000(日本ペイント製)であった。トップトライパッシブは、3価のクロム酸塩を有する化成皮膜を形成する化成処理液である。一方、サーフコートEC1000は、Zr塩を有する化成皮膜を形成する化成処理液である。
【0071】
[Ni酸化状態の測定]
各試料について、Ni酸化被膜におけるNiの酸化状態をHAXPESによって評価した。HAXPESの条件は以下の通りである。
・Spring-8のBL16XUラインで測定
・X線のエネルギー…8keV
・エネルギー校正…Ni2pのNi金属
・光電子取出し角…50°
・BL条件…Si(111)二結晶分光器と、Si(111)チャンネルカット結晶分光器
・前置ミラーRh…3.5mrad
・後置ミラー…無し
・検出器…光電子分析器(Scienta Omicron製 R4000)
【0072】
HAXPESによって得られたデータの解析は、アルバック・ファイ株式会社製の解析ソフト(商品名:multi pack)によって行った。解析ソフトによって、Ni(OH)2の原子濃度(%)とNiOの原子濃度(%)を求め、計算によってNi(OH)2/NiOを求めた。その結果を表1,2に示す。
【0073】
[耐食性試験]
各試料に対して、塩水噴霧試験、高温高湿試験、及び電解液浸漬試験を行った。塩水噴霧試験は、35℃、5質量%NaCl水を96時間噴霧する試験である(JIS Z 2371:2015)。高温高湿試験は、湿度85%、85℃の雰囲気下で1000時間の載置を行う試験である(JIS C 60068-2-78:2015)。また、リチウムイオン電池(LiB)の電解液に対する耐食性を調べる電解液浸漬試験は、試料を60℃、1000質量ppmの水を含むリチウムイオン電池用電解液に2週間浸漬することで行った。これら耐食試験の結果を表1,2に示す。塩水噴霧試験では、孔食が無い試料を『Good』、孔食が有る試料を『Bad』とした。高温高湿試験では、変色が無い試料を『Good』、変色が有る試料を『Bad』とした。電解液浸積試験(表中では、LiB電解液耐性)では、孔食が無い試料を『Good』、孔食が有る試料を『Bad』とした。
【0074】
【0075】
【0076】
表1に示されるように、陽極電解脱脂の電流密度が0.5A/dm2以上8.0A/dm2以下である試料No.1から試料No.18では、Ni(OH)2/NiOが0.25以上であった。また、陽極電解脱脂の電流密度が高いほど、Ni(OH)2/NiOが高くなることが分かった。これら試料No.1から試料No.18では、いずれの耐食性試験においても腐食が認められなかった。
【0077】
表2に示されるように、陰極電解脱脂を行った試料No.19から試料No.26、及び浸積脱脂を行った試料No.27から試料No.34では、Ni(OH)2/NiOが0.25未満であった。また、これら試料No.19から試料No.34では、少なくとも一つの耐食性試験において腐食が認められた。
【0078】
一方、表2に示されるように、陽極電解脱脂であっても、その電流密度が0.5A/dm2未満、又は8.0A/dm2超である試料No.35から試料No.38では、Ni(OH)2/NiOが0.25未満であった。また、試料No.35から試料No.38では、高温高湿試験以外の耐食性試験において腐食が認められた。
【0079】
[Ni酸化被膜の厚みの確認]
各試料をその厚み方向に沿った方向に切断し、断面観察を行った。断面観察は走査型透過電子顕微鏡によって行った。その結果、試料No.1から試料No.18のNi酸化被膜の厚さは、試料No.19から試料No.38のNi酸化被膜の厚さよりも明らかに大きかった。試料No.19から試料No.38のNi酸化被膜の厚さは、自然酸化膜と同程度と考えられる。
【0080】
[まとめ]
以上の結果から、電流密度が0.5A/dm2以上8.0A/dm2以下の陽極電解脱脂によって、Ni酸化被膜の厚さが厚くなることが明らかになった。また、上記陽極電解脱脂によって、Ni酸化被膜に含まれるNi(OH)2の濃度が増加することが明らかになった。その結果、Ni酸化被膜の表面が、化成皮膜と密着し易い状態に改質されていると考えられる。
【0081】
一方、陰極電解脱脂、浸積脱脂、及び電流密度が0.5A/dm2未満の陽極電解脱脂では、Ni酸化被膜が成長せず、Ni酸化被膜に含まれるNi(OH)2の濃度も増加しなかった。そのため、Ni酸化被膜の表面が、化成皮膜と密着し易い状態に改善されなかったと考えられる。
【0082】
ここで、電流密度が8.0A/dm2超の陽極電解脱脂において、Ni酸化被膜が成長しなかったのは、陽極近傍に大量のプロトンが発生したためと推察される。プロトンによって陽極近傍のpHが低下するので、Ni酸化被膜が溶解すると考えられる。
【0083】
<試験例2>
試験例2では、試験例1の試料No.1からNo.34のNi酸化被膜におけるNiの酸化状態をXPSによって測定した。
【0084】
XPSによる測定にあたって、スパッタリングによって試料の表面に窪みを形成し、その窪みをXPSによって測定することを繰り返した。スパッタリングの条件は以下の通りである。
・1kVの加速電圧で加速したAr(アルゴン)ビーム
・スパッタ速度…5.59nm/min
【0085】
XPSの条件は以下の通りである。
・測定装置…Quantera SXM(アルバック・ファイ株式会社製)
・X線条件…ビームサイズ;100μm、AlKα
・入射角…90°
・光電子取出し角…45°
XPSの測定結果の解析は、アルバック・ファイ株式会社製の解析ソフト(商品名:multi pack)によって行った。解析ソフトによって、NiOの原子濃度(%)とNiの原子濃度(%)を求め、計算によってNiO/Niを求めた。
【0086】
ここで、本試験例2では、XPSによって測定したNiの原子濃度(原子%)と、Zr又はCrの原子濃度(原子%)とが等しくなる深さを、Ni酸化被膜と化成皮膜との境界とみなし、NiO/Niを求めた。例えば、陽極電解脱脂を行った試料No.16における被覆部材の表面からの深さと、Ni及びZrの原子濃度との関係を
図5のグラフに、各深さにおけるNiO/Niを
図6のグラフに示す。また、陰極電解脱脂を行った試料No.23における被覆部材の表面からの深さと、Ni及びZrの原子濃度との関係を
図7のグラフに、各深さにおけるNiO/Niを
図8のグラフに示す。
【0087】
図5、
図7の横軸は被覆部材の表面からの深さ(nm)、縦軸はNi及びZrの原子濃度(原子%)である。
図6、
図8の横軸は被覆部材の表面からの深さ(nm)、縦軸はNiO/Niの比率である。NiO/Niの結果を表3,4に示す。表3,4には、試験例1で行った耐食性試験の結果も合わせて示す。
【0088】
【0089】
【0090】
表3に示されるように、陽極電解脱脂の電流密度が0.5A/dm2以上8.0A/dm2以下である試料No.1から試料No.18では、NiO/Niが0.20以上であった。また、陽極電解脱脂の電流密度が高いほど、NiO/Niが高くなることが分かった。
【0091】
表4に示されるように、陰極電解脱脂を行った試料No.19から試料No.26、及び浸積脱脂を行った試料No.27から試料No.34では、NiO/Niが0.20未満であった。
【0092】
以上の結果から明らかなように、XPSによってNiO/Niを測定することによっても、Ni酸化被膜が陽極電解脱脂を経て得られたものであることが分かる。
【0093】
また、
図6の結果から、Ni酸化被膜を所定条件の陽極電解脱脂で処理することで、Ni酸化被膜の表面付近においてNiO/Niがピークを示すことが分かった。一方、
図8の結果から、Ni酸化被膜を陰極電解脱脂で処理しても、NiO/Niがピークを示すことは無かった。
【0094】
<付記>
試験例2の結果に鑑み、耐食性に優れる被覆部材として、以下の構成が挙げられる。
≪付記1≫
基材と化成皮膜とを備え、
前記基材は、
Ni又はNi合金によって構成される表層と、
前記表層の外方に形成されるNi酸化被膜とを有し、
前記化成皮膜は、前記Ni酸化被膜の直上に設けられ、
前記Ni酸化被膜において、XPSにより測定されるNiOの原子濃度とNiの原子濃度との比率であるNiO/Niが0.20以上である被覆部材。
【0095】
XPSによるNi酸化被膜の測定によっても、Ni酸化被膜が陽極電解脱脂を経て得られたものであることを確認できる。従って、付記1の被覆部材は、化成皮膜がNi酸化被膜に強固に密着した耐食性に優れる被覆部材である。
【符号の説明】
【0096】
1 被覆部材
10 基材、11 Ni被覆、12 Ni酸化被膜、13 化成皮膜
2 端子
20 ワイヤバレル
3 放熱部材
30 本体部、31 フィン
4 タブリード
5 電線
50 導体
6 発熱体
7 リチウムイオン電池
70 封入体