(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】庇屋根構造及び建築物
(51)【国際特許分類】
E04B 7/02 20060101AFI20230629BHJP
E04H 3/02 20060101ALI20230629BHJP
E04D 13/072 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
E04B7/02 501D
E04H3/02 A
E04D13/072 B
(21)【出願番号】P 2019197340
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】北垣 秀典
(72)【発明者】
【氏名】名塚 彰
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-332726(JP,A)
【文献】特開2010-001710(JP,A)
【文献】実開昭64-002923(JP,U)
【文献】特開2015-140527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 7/00-7/24
E04H 3/02
E04D 1/00-3/40,
13/00-15/07
E04B 1/00-1/36
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物に形成された陸屋根の外側面に、前記建築物の梁材に支持される取付け庇を設置する庇屋根構造であって、
前記陸屋根は、前記取付け庇側に位置する縁端部
と、前記縁端部を除く略平坦な平坦部とを有し、且つ、前記縁端部の屋根面を前記取付け庇側が下方となるよう傾斜させて傾斜屋根面を形成するとともに、前記縁端部の先端部を下方へ延出させており、
前記取付け庇は、
前記傾斜屋根面よりも低い位置に設置され、前記傾斜屋根面上及び前記取付け庇の屋根面である庇屋根面上を伝う雨水を排水するための軒樋を有
し、
前記外側面と前記庇屋根面との境界部分に水切りを設けることを特徴とする庇屋根構造。
【請求項2】
前記陸屋根は、当該陸屋根の下方に位置する外壁体から屋外側へせり出してオーバーハングしており、
前記陸屋根の下方に形成される陸屋根裏天井の天井面と、前記取付け庇の下方に形成される庇裏天井の天井面とは、面一であることを特徴とする請求項1に記載の庇屋根構造。
【請求項3】
前記陸屋根は、
防水シートによって前記傾斜屋根面及び平坦部の屋根面である陸屋根面を形成しており、
前記防水シートの下地となる屋根下地材は、前記縁端部と前記平坦部との境界で分かれていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の庇屋根構造。
【請求項4】
前記縁端部は、前記外側面よりも前記取付け庇側へ突き出して形成されており、
前記傾斜屋根面を形成する防水シートは、先端部を下方へ延出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の庇屋根構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の庇屋根構造を備えた建築物であって、
前記取付け庇は、建築物の正面玄関出入口の上方に設置されることを特徴とする建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に形成された陸屋根の外側面に、建築物の梁材に支持される取付け庇を設置する庇屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物の正面玄関出入口や車寄せスペースの上方には、雨除けとして奥行きの深い庇を設置することがある。その場合、建築物に後付けの取付け庇を付帯物として設置するのではなく、当該建築物に形成された陸屋根を外壁面から屋外側へオーバーハングさせることにより水平ラインを強調した外観意匠性に優れる庇を構築することがある。しかしながら、重量のある陸屋根を外壁面から大きくせり出させて庇の水平ラインを強調するには、オーバーハングした陸屋根を支持するための片持ち梁を、外壁面から屋外側へ突き出して設置しなければならず、部材費や施工費が嵩むという問題点があった。また
図7に示すように、陸屋根Xの外側面Xaに付帯物である取付け庇Yを設置したとしても、正面側から庇を見上げた際に、陸屋根Xの縁端部に形成されるパラペットXbや、陸屋根X上の雨水を排水する排水管Xcが目立ってしまい庇廻りの外観意匠性が低下する可能性が高い。
【0003】
一方、特許文献1に記載の発明では、陸屋根部と傾斜屋根部とが隣接配置された屋根構造において、陸屋根部と傾斜屋根部とに連続する水勾配を形成する旨が記載されている。この発明では、陸屋根部と傾斜屋根部との間の接続部分にパラペットを設けないため、屋根を見上げた際に屋根の外観意匠性を好ましいものとすることができる。
【0004】
また、特許文献2に記載の発明には、コンクリートで形成された平坦な構造物の上部に、被覆金属材を敷設することによって形成される陸屋根について記載されている。この発明では、陸屋根の縁端部にパラペットのような立ち上がりを設けず、また、当該縁端部に位置する被覆金属材を下方へ延出することにより、外観意匠性に優れた陸屋根を構築する旨が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-1710
【文献】特開昭62-86260
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の発明は、建築物本体の陸屋根と傾斜屋根との接合部における構造であったり、陸屋根自体についての構造であり、外観意匠性に優れた庇を形成するためのものではない。また、建築物に形成される陸屋根の外側面に取付け庇を設置する場合において、陸屋根と取付け庇との一体感を増すことにより外観意匠性に優れた庇を構築する効果的な発明は今まで提案されてこなかった。
【0007】
そこで、本発明は上述した課題を鑑みてなされたものであって、建築物に形成される陸屋根の外側面に取付け庇を設置する場合において、陸屋根と取付け庇との一体感を向上させて外観意匠性に優れた庇を構築する庇屋根構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の庇屋根構造は、建築物に形成された陸屋根の外側面に、前記建築物の梁材に支持される取付け庇を設置する庇屋根構造であって、前記陸屋根は、前記取付け庇側に位置する縁端部と、前記縁端部を除く略平坦な平坦部とを有し、且つ、前記縁端部の屋根面を前記取付け庇側が下方となるよう傾斜させて傾斜屋根面を形成するとともに、前記縁端部の先端部を下方へ延出させており、前記取付け庇は、前記傾斜屋根面よりも低い位置に設置され、前記傾斜屋根面上及び前記取付け庇の屋根面である庇屋根面上を伝う雨水を排水するための軒樋を有し、前記外側面と前記庇屋根面との境界部分に水切りを設けることを特徴としている。
【0009】
本発明の第2の庇屋根構造は、前記陸屋根が、当該陸屋根の下方に位置する外壁体から屋外側へせり出してオーバーハングしており、前記陸屋根の下方に形成される陸屋根裏天井の天井面と、前記取付け庇の下方に形成される庇裏天井の天井面とは、面一であることを特徴としている。
【0010】
本発明の第3の庇屋根構造は、前記陸屋根が、防水シートによって前記傾斜屋根面及び平坦部の屋根面である陸屋根面を形成しており、前記防水シートの下地となる屋根下地材は、前記縁端部と前記平坦部との境界で分かれていることを特徴としている。
【0011】
本発明の第4の庇屋根構造は、前記縁端部が、前記外側面よりも前記取付け庇側へ突き出して形成されており、前記傾斜屋根面を形成する防水シートは、先端部を下方へ延出することを特徴としている。
【0012】
本発明の第1の建築物は、第1から第4のいずれかに記載の庇屋根構造を備えた建築物であって、前記取付け庇は、建築物の正面玄関出入口の上方に設置されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の庇屋根構造によると、陸屋根は、取付け庇側に位置する縁端部の屋根面を、取付け庇側が下方となるよう傾斜させて傾斜屋根面を形成するとともに、前記縁端部の先端部を下方へ延出させる。したがって、陸屋根の縁端部には通常配置されるパラペットが形成されないため、取付け庇の水平ラインを強調して建築物の外観意匠性を向上させることができる。また取付け庇は、縁端部の傾斜屋根面から流れ落ちてくる雨水と、取付け庇の庇屋根面に伝う雨水とを排水するための軒樋を有しているので、陸屋根の外側面廻りに、陸屋根上の雨水を排水する排水管を設置する必要がなく、取付け庇廻りの外観をよりすっきりとさせて美観を向上させることができる。
【0014】
本発明の第2の庇屋根構造によると、陸屋根は、当該陸屋根の下方に位置する外壁体から屋外側へせり出してオーバーハングしているため、陸屋根と取付け庇とを組み合わせることにより奥行きの深い庇を構築することができる。また、陸屋根の下方に形成される陸屋根裏天井の天井面と、取付け庇の下方に形成される庇屋根裏天井の天井面とが面一であるため、陸屋根及び取付け庇の一体感を高めて庇の水平ラインを強調し、外観意匠性を好ましいものとすることができる。
【0015】
本発明の第3の庇屋根構造によると、陸屋根は、縁端部及び、縁端部を除く平坦部を有するとともに、防水シートによって傾斜屋根面及び平坦部の屋根面である陸屋根面を形成しており、また、防水シートの下地となる屋根下地材は、縁端部と平坦部との境界で分かれるとされる。したがって、雨水が集中する縁端部の屋根下地材が磨耗した場合に、平坦部の屋根下地材を傷付けることなく縁端部の屋根下地材のみを取り替えることができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0016】
本発明の第3の庇屋根構造によると、縁端部は、外側面よりも取付け庇側へ突き出して形成されており、傾斜屋根面を形成する防水シートは、先端部を下方へ延出するとされる。したがって、陸屋根の縁端部を流れる雨水が、陸屋根の外側面や防水シートの下地である屋根下地材の側面から建築物内部へ侵入する可能性を低減し、防水性に優れた庇屋根構造とすることができる。
【0017】
本発明の第1の建築物によると、建築物は第1から第4のいずれかに記載の庇屋根構造を備え、また取付け庇は、建築物の正面玄関出入口の上方に設置されるので、人目につきやすい玄関廻りの外観意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)建築物を示す概略平面図、(b)建築物を示す概略東立面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る庇屋根構造の実施形態について各図を参照しつつ説明する。本願の庇屋根構造は、主に、雨除けとして奥行きの深い庇を必要とする建築物の正面玄関出入口や車寄せスペース廻りに用いられる構造であり、特にホテルや旅館など来館者に好ましい外観を印象づけたい建築物に好適に使用されるが、これら以外の建物用途の建築物や場所に用いてもよい。ここでは、建築物が宿泊施設である場合について説明する。なお、本願において「東」「西」「南」「北」とは、
図1における「右」「左」「下」「上」を指し、また「主要構造部」とは、建築基準法第2条1項5号に示す主要構造部を指し、建築物の構造上重要でない部分は除くものとする。
【0020】
図1及び
図2に示すように、庇屋根構造1は、建築物2に形成された陸屋根3の外側面3aに、建築物2の主要構造部である梁材4に支持される取付け庇5を設置するための構造である。
図1(a)は建築物2の一例を示す概略平面図であり、
図1(b)は建築物2の概略東立面図を示している。建築物2はホテルや旅館など特定多数の来館者Nが往来する宿泊施設であり、複数階からなる第1棟21と、第1棟21の南側に配置され、第1棟21よりも高さが低い第2棟22と、から構成される。来館者Nは、第2棟22の南側に形成されたアプローチや第2棟22の西側に配置される車寄せスペースに徒歩または車両で接近し、
図2に示す第2棟22の南面側に形成された正面玄関出入口Eを通じて建築物2内へ入館することができる。また
図1及び
図2に示すように、第2棟22の屋根はパラペットを有しない陸屋根3となっており、この陸屋根3の外周部を囲うように設置された取付け庇5は正面玄関出入口Eや車寄せスペースにおける雨除けとすることができる。
【0021】
図3及び
図4に示すように、陸屋根3は、取付け庇5側に位置する縁端部31と、縁端部31を除く平坦な平坦部32と、を有している。縁端部31は、屋根面を取付け庇5側が下方となるように傾斜させて傾斜屋根面31aを形成されている。
図4に示すように、縁端部31は、傾斜屋根面31aの傾斜を形成する支持部33、支持部33の上部に載置固定される野地板34、野地板34の先端部に図外のビスで固定される水切り35、野地板34及び水切り35の上端面に貼着され、傾斜屋根面31aを形成する防水シート36と、から構成される。
【0022】
支持部33は、
図4及び
図5に示すように、陸屋根3を支持する梁材4の上側のフランジ41にボルト固定される板状の固定部33aと、固定部33aの上端面に溶接固定されるとともに、固定部33aよりも取付け庇5側へ延びる略台形状のプレート材33bと、プレート材33bの平坦部32側の角部に係止する側面視L型の基端側アングル材33cと、プレート材33bよりも取付け庇5側に位置し、隅部を取付け庇5側へ向けた状態でプレート材33bの先端側の端面に溶接固定される同じく側面視L型の先端側アングル材33d、とからなり、プレート材33b、基端側アングル材33c、先端側アングル材33d、の上端面は、それぞれ取付け庇5側が下方となるように傾斜している。
【0023】
図4及び
図5に示すように、野地板34は、先端部をプレート材33bよりも取付け庇5側へ突き出しており、この突出した先端部の上方の角部に側面視略L型の水切り35が係止される。また水切り35は、野地板34の先端から下方へ延びて野地板34の側面を被覆するとともに先端部を上方へ折り返して返し片35aを形成しており、防水シート36は、水切り35に沿って下方へ延びている。そして返し片35aには、側面視略L型状の鼻隠し材37が係止している。鼻隠し材37は、返し片35aに係止する係止部37a、及び係止部37aの平坦部32側の端部から下方へ延びる下垂部37bを具備しており、下垂部37bを先端側アングル材33dに不図示のビスで固定することによって陸屋根3の外側面3aを形成している。このように、陸屋根3の縁端部31の先端が、外側面3aよりも屋外側へ突出し、且つ、防水シート36を水切り35に沿って貼り延ばしているので、傾斜屋根面31aを流れる雨水が、外側面3aや野地板34の側面から浸入する可能性を効果的に低減することができる。なお、外側面3aを形成する部材は特に限定されることはなく、一般的な外壁材、例えば、厚みのあるコンクリート系の壁体や窯業系サイディング材、ガルバリウム鋼板(登録商標)などの板金材などでもよい。
【0024】
平坦部32は、梁材4に支持される押出成型セメント版や軽量気泡コンクリート版など厚みのある床版38と、床版38の上端面に載置される断熱材39と、断熱材39の上端面に貼着され、平坦な陸屋根面32aを形成する防水シート36と、から構成されている。陸屋根3は、梁材4の梁芯部分を境界に縁端部31及び平坦部32に分かれており、梁芯~縁端部31の先端までの距離L1は、200mm~300mm程度で形成される。また傾斜屋根面31a及び陸屋根面32aを形成する防水シート36は、縁端部31と平坦部32との境界部分で継ぎ目を形成せず連続しており、一方、防水シート36の下地材となる野地板34及び断熱材39は、縁端部31と陸屋根部32との境界部分で分かれている。したがって、平坦部32からの雨水も集中する縁端部31の野地板34が磨耗した場合に、平坦部32の断熱材39を傷付けることなく野地板34のみを取り替えることができ、メンテナンス性を向上させることができる。
【0025】
このように、陸屋根3の取付け庇5側に形成される縁端部31は、パラペットを設置せずに傾斜屋根面31aを形成しているので、梁材4から立ち上がる陸屋根3の外側面3aの高さを抑えることができ、取付け庇5の水平ラインを強調して取付け庇5廻りの外観意匠性を向上させることができる。また、
図2に示す梁材4の上端面から陸屋根3の陸屋根面32aまでの高さL2は、100mm~350mmで形成される。なお、陸屋根3の傾斜屋根面31a上を伝う雨水は、そのまま取付け庇5へ流れ落ちて取付け庇5上を流れる雨水とともに排水される。したがって、陸屋根3に降り注ぐ雨水を排水するために、縁端部31廻りに排水管を設置することを省略することができ、外側面3a廻りの美観を向上させることができる。
【0026】
図2及び
図3に示す梁材4は、建築物2の構造上主要な部分となる主要構造部である。また梁材4は、上下のフランジ41及びウェブ42からなるH形鋼であり、上下のフランジ41間にはリブプレート43が溶接固定され、このリブプレート43に後述する取付け庇5の腕木51をボルト固定することができる。
【0027】
図3に示す取付け庇5は、梁材4に支持固定される付帯物としての庇であり、構造上の片持ち梁材を必要としない庇である。取付け庇5は、梁材4に溶接されたリブプレート43にボルト固定され、陸屋根3の外側面3aよりも屋外側へ突き出す板状の腕木51、腕木51に直交し、互いに間隔を開けて配置される複数の鋼製母屋材52、各鋼製母屋材52の上部に設置される野地板53、野地板53の上端面に載置固定され、庇屋根面5aを形成する庇屋根仕上材54、庇屋根仕上材54よりも屋外側に配置される軒樋55、軒樋55よりもさらに屋外側に配置され、軒樋55の側面を隠蔽する見付化粧材56、によって構成される。また、陸屋根3の外側面3aと、庇屋根面5aとの境界部分には、水切り57が設置されており、外側面3aを伝う雨水が建築物2内へ浸入することを防止する。
【0028】
溝形鋼である複数の鋼製母屋材52は、鋼板で形成された腕木51にそれぞれ溶接固定されており、陸屋根3から軒樋55へ向けて漸次高さを低くすることによって野地板53を軒樋55側が下方となるように傾斜させる。そして軒樋55は、庇屋根面5a上を伝う雨水だけでなく、傾斜屋根面31aから庇屋根面に5aへ流れ落ちる雨水をも排水処理可能な能力を有している。なお、軒樋55は長手方向へ水勾配を形成しており、軒樋55を流れる雨水は、軒樋55の長手方向の両端部もしくは一端部に設置される不図示の竪樋へ流れ落ちて地中の排水管へ排水される。
【0029】
図3に示すように、陸屋根3の下方には陸屋根裏天井40が形成され、一方、取付け庇5の下方には庇裏天井58が形成される。両天井40、58は、梁材4や鋼製母屋材52に支持される長尺な野縁受け61の下端面に、当該野縁受け61と直交する方向へ延びる野縁62を設置し、また野縁62の下端面に天井仕上材63を固定することによって形成される。
【0030】
なお取付け庇5は、
図3に示す梁材4の梁芯~見付化粧材56までの距離L3が750mm~1300mm程度となるように形成され、また、
図2に示す庇裏天井58の天井面58a~梁材4の上端面までの距離L4は、400mm~600mm程度で形成される。
【0031】
このように形成される本願の庇屋根構造1は、陸屋根3の縁端部31にパラペットを設置しないので、
図2に示す庇裏天井58の天井面58a~陸屋根3の上端面である陸屋根面32aまでの高さL5を抑えることができ、取付け庇5の水平ラインを強調するとともに、構造の異なる陸屋根3と取付け庇5との一体感を向上させて建築物2の外観意匠性を好ましいものとすることができる。
【0032】
なお本実施形態では、正面玄関出入口Eを形成する外壁体7の壁芯と梁材4の梁芯とを同一とした場合について説明したが、
図6に示すように外壁体7をセットバックさせ、陸屋根3を片持ち梁材9で支持してオーバーハングさせてもよい。例えば、陸屋根3の先端部を支持する梁材43の梁芯~外壁体7の壁芯までの距離を2000mm程度とした場合、外壁体7の壁芯から取付け庇5の見付化粧材56先端までの距離L6を2750mm~3300mm程度とすることができ、奥行きが深く水平ラインが強調された庇を構築することができる。またこのとき、陸屋根裏天井40の天井面40aと、庇裏天井58の天井面58aとを面一に形成すれば、陸屋根3及び取付け庇5の一体感をより高めて水平ラインを強調することができ、美観に優れた庇屋根を構築することができる。つまり、建築物2の構造上の制約や、構造材の部材費の増大を考慮して陸屋根3を大きくオーバーハングさせれない場合であっても、本願の庇屋根構造1を用いることにより、外観意匠性に優れた庇屋根を構築することが可能となる。
【0033】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る庇屋根構造は、建築物の正面玄関廻りや車寄せスペース廻りに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 庇屋根構造
2 建築物
3 陸屋根
3a 外側面
31 縁端部
31a 傾斜屋根面
32 平坦部
32a 陸屋根面
34 野地板(縁端部の屋根下地材)
35 水切り
35a 返し片
36 防水シート
39 断熱材(平坦部の屋根下地材)
40 陸屋根裏天井
40a 陸屋根裏天井の天井面
4 梁材
5 取付け庇
5a 庇屋根面
55 軒樋
58 庇裏天井
58a 庇裏天井の天井面
7 外壁体
E 正面出入口