(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】カードエッジコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/72 20110101AFI20230629BHJP
【FI】
H01R12/72
(21)【出願番号】P 2019217845
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮村 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大亮
(72)【発明者】
【氏名】守安 聖典
(72)【発明者】
【氏名】田中 真二
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-018795(JP,A)
【文献】実開平03-086581(JP,U)
【文献】実開昭57-127490(JP,U)
【文献】特開2014-182901(JP,A)
【文献】特開昭61-077289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00-12/91
H01R 13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板が挿入される基板収容空間を有するハウジングと、
前記基板収容空間に挿入された
前記回路基板に接触する弾性接触片を有し、前記ハウジングに取り付けられた接続端子とを備え、
前記ハウジングに取り付けられた前記接続端子は、前記基板収容空間内に挿入された前記回路基板の表面に前記弾性接触片を接触させる接続位置と、前記弾性接触片を前記回路基板から離隔させた退避位置との間で移動可能であり、
前記弾性接触片は、前記回路基板に接触する接触部を有し、
前記弾性接触片の移動経路と前記基板収容空間との間には干渉防止部が形成され、
前記干渉防止部は、前記接続端子が移動する過程で、前記弾性接触片が前記基板収容空間に挿入された前記回路基板の挿入端部と干渉することを規制
し、
前記接続端子が前記退避位置にあり、前記回路基板の挿入端部が前記基板収容空間に挿入された状態では、前記接触部のうち前記回路基板に接触する接点部が、前記回路基板の板厚方向において前記回路基板の厚さ範囲内に位置するカードエッジコネクタ。
【請求項2】
前記干渉防止部は、前記退避位置における前記弾性接触片の弾性変形量を、前記接続位置における前記弾性接触片の弾性変形量よりも低減させるように屈曲した形状である請求項1に記載のカードエッジコネクタ。
【請求項3】
前記干渉防止部は、前記接続端子の移動方向に対して傾斜したガイド面を有し、
前記接続端子が前記退避位置から前記接続位置へ移動する過程では、前記弾性接触片が前記ガイド面に摺接するようになっている請求項2に記載のカードエッジコネクタ。
【請求項4】
前記干渉防止部は、前記弾性接触片を接触させることによって、前記接続端子を前記接続位置へ移動しない状態に保持する形態である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のカードエッジコネクタ。
【請求項5】
回路基板が挿入される基板収容空間を有するハウジングと、
前記基板収容空間に挿入された前記回路基板に接触する弾性接触片を有し、前記ハウジングに取り付けられた接続端子と、
前記ハウジングに対して着脱可能であり、
前記接続端子とは別体の部品であって、前記接続端子に取り付けられた筒状部材
とを備えており、
前記ハウジングに取り付けられた前記接続端子は、前記基板収容空間内に挿入された前記回路基板の表面に前記弾性接触片を接触させる接続位置と、前記弾性接触片を前記回路基板から離隔させた退避位置との間で移動可能であり、
前記弾性接触片の移動経路と前記基板収容空間との間には干渉防止部が形成され、
前記干渉防止部は、前記接続端子が移動する過程で、前記弾性接触片が前記基板収容空間に挿入された前記回路基板の挿入端部と干渉することを規制し、
前記接続端子は、前記筒状部材に対して、前記弾性接触片を前記筒状部材内に収容する位置と、前記弾性接触片を前記筒状部材の外部へ露出させる位置との間で相対的に移動可能であり、
前記干渉防止部が前記筒状部材に形成されてい
るカードエッジコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カードエッジコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、端子を端子収容部材に収容した基板接続コネクタが開示されている。端子収容部材には、基板を収容するためのスリット状の基板挿入部が形成されている。端子は、端子の外面から突出する接触部を有しており、この接触部が、基板挿入部内に挿入された基板に対して弾性的に接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板を基板挿入部に挿入するときには、端子の接触部が、基板挿入部内へ突出した状態で待機している。そのため、基板を基板挿入部に挿入過程で、接触部が、基板の挿入端部によって塑性変形したり損傷したりするおそれがある。接触部が塑性変形や損傷を来すと、基板との接続信頼性が低下する。
【0005】
本開示のカードエッジコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、接続信頼性の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のカードエッジコネクタは、
回路基板が挿入される基板収容空間を有するハウジングと、
前記基板収容空間に挿入された回路基板に接触する弾性接触片を有し、前記ハウジングに取り付けられた接続端子とを備え、
前記ハウジングに取り付けられた前記接続端子は、前記基板収容空間内に挿入された前記回路基板の表面に前記弾性接触片を接触させる接続位置と、前記弾性接触片を前記回路基板から離隔させた退避位置との間で移動可能であり、
前記弾性接触片の移動経路と前記基板収容空間との間には干渉防止部が形成され、前記干渉防止部は、前記接続端子が移動する過程で、前記弾性接触片が前記基板収容空間に挿入された前記回路基板の挿入端部と干渉することを規制する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、接続信頼性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、カードエッジコネクタの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、カードエッジコネクタが基板側コネクタに嵌合され、接続端子が接続位置に保持されている状態をあらわす側断面図である。
【
図3】
図3は、カードエッジコネクタが基板側コネクタに嵌合され、接続端子が保護位置に保持されている状態をあらわす部分拡大側断面図である。
【
図4】
図4は、カードエッジコネクタが基板側コネクタに嵌合され、接続端子が
接続位置に保持されている状態をあらわす部分拡大側断面図である。
【
図5】
図5は、接続端子が接続位置に保持されている状態の端子金具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のカードエッジコネクタは、
(1)回路基板が挿入される基板収容空間を有するハウジングと、前記基板収容空間に挿入された回路基板に接触する弾性接触片を有し、前記ハウジングに取り付けられた接続端子とを備え、前記ハウジングに取り付けられた前記接続端子は、前記基板収容空間内に挿入された前記回路基板の表面に前記弾性接触片を接触させる接続位置と、前記弾性接触片を前記回路基板から離隔させた退避位置との間で移動可能であり、前記弾性接触片の移動経路と前記基板収容空間との間には干渉防止部が形成され、前記干渉防止部は、前記接続端子が移動する過程で、前記弾性接触片が前記基板収容空間に挿入された前記回路基板の挿入端部と干渉することを規制する。本開示の構成によれば、接続端子が退避位置から接続位置へ移動する過程では、弾性接触片が回路基板の挿入端部と干渉しない。これにより、回路基板の挿入端部と干渉することに起因して弾性接触片が塑性変形や損傷を生じることがないので、回路基板と弾性接触片との接続信頼性が低下することを防止できる。
【0010】
(2)前記干渉防止部は、前記退避位置における前記弾性接触片の弾性変形量を、前記接続位置における前記弾性接触片の弾性変形量よりも低減させるように屈曲した形状であることが好ましい。この構成によれば、接続端子を退避位置に移動させた状態が長期間継続しても、弾性接触片のヘタリを回避することができる。
【0011】
(3)(2)において、前記干渉防止部は、前記接続端子の移動方向に対して傾斜したガイド面を有し、前記接続端子が前記退避位置から前記接続位置へ移動する過程では、前記弾性接触片が前記ガイド面に摺接するようになっていることが好ましい。接続端子が退避位置から接続位置へ移動するのにともなって、弾性接触片の弾性変形量が増大する。この間、弾性接触片は、接続端子の移動方向に対して傾斜したガイド面に摺接するので、弾性接触片の弾性変形が円滑に行われる。
【0012】
(4)前記干渉防止部は、前記弾性接触片を接触させることによって、前記接続端子を前記接続位置へ移動しない状態に保持する形態であることが好ましい。この構成によれば、干渉防止部が、弾性接触片と回路基板との干渉を防止する機能と、接続端子を保護位置に保持する機能とを兼ね備えるので、接続端子を退避位置に保持するための専用の部位や部材が不要である。
【0013】
(5)前記ハウジングに対して着脱可能であり、前記接続端子に取り付けられた筒状部材を備えており、前記接続端子は、前記筒状部材に対して、前記弾性接触片を前記筒状部材内に収容する位置と、前記弾性接触片を前記筒状部材の外部へ露出させる位置との間で相対的に移動可能であり、前記干渉防止部が前記筒状部材に形成されていることが好ましい。この構成によれば、接続端子と筒状部材をハウジングから取り外した状態でも、弾性接触片を筒状部材によって異物の干渉から保護することができる。
【0014】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示のカードエッジコネクタC及び端子金具Tを具体化した実施例1を、
図1~
図7を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施例1において、前後の方向については、
図1,5~7における斜め左下前方方、及び
図2~4における左方を前方と定義する。上下の方向については、
図1~7にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。
【0015】
カードエッジコネクタCは、基板側コネクタPに嵌合される。基板側コネクタPは、例えばECU等の機器(図示省略)に設けられたフード部70(
図2を参照)と、板厚方向を上下方向に向けて前記機器に取り付けられた回路基板71とを有する。回路基板71の先端部は、後述する基板収容空間20内に挿入される挿入端部72として機能し、フード部70で包囲されている。回路基板71の挿入端部72の表面、つまり上面と下面は、プリント回路(図示省略)が形成された接続面73となっている。
【0016】
図1に示すように、カードエッジコネクタCは、ハウジング10と、複数の端子金具Tとを組み付けて構成されている。なお、
図1に示す端子金具Tの数は、1つだけとしている。ハウジング10は、ハウジング本体11と、一括ゴム栓24と、リヤホルダ26とを組み付けて構成されている。ハウジング本体11は、アウタハウジング12とインナハウジング19とリテーナ18とを組み付けて構成されている。
【0017】
図2に示すように、アウタハウジング12は、端子収容部13と筒状嵌合部14とを有する単一部材である。筒状嵌合部14は、端子収容部13の外周後端部から、端子収容部13を包囲するように前方へ突出している。カードエッジコネクタCを基板側コネクタPに接続すると、フード部70が端子収容部13の外周と筒状嵌合部14の内周との隙間の嵌合空間内に嵌入される。フード部70の内周面と端子収容部13の外周面との隙間は、シールリング16によって液密状にシールされる。
【0018】
端子収容部13内には、端子収容部13の前面を凹ませた形態の組付部17が形成されている。組付部17内には、リテーナ18とインナハウジング19が収容されている。リテーナ18は、組付部17の奥端面を覆うように取り付けられている。インナハウジング19は、リテーナ18の前面を覆うとともに組付部17の外周を包囲するように配置されている。端子収容部13の外周にはシールリング16が取り付けられている。ハウジング10の内部には、インナハウジング19の前面を凹ませた形態の1つの基板収容空間20が形成されている。基板収容空間20は、左右方向に延びたスリット状をなしている。カードエッジコネクタCを基板側コネクタPに接続すると、回路基板71の挿入端部72が、ハウジング10の前方から基板収容空間20に挿入される。
【0019】
ハウジング10の内部には、ハウジング本体11を前後方向に貫通した形態の複数のキャビティ21が形成されている。複数のキャビティ21は、基板収容空間20を挟むように上下2段に分かれて配置され、上下対称な形態である。上段側の複数のキャビティ21と、下段側の複数のキャビティ21は、いずれも、左右方向、即ち基板収容空間20の長手方向と平行な方向に一列に並ぶように配置されている。各キャビティ21の前端部は、基板収容空間20と連通している。キャビティ21のうち上下方向において基板収容空間20と反対側の壁面には、弾性変形可能なランス22が形成されている。
【0020】
インナハウジング19は、上段のキャビティ21と下段のキャビティ21とを区画する隔壁部23を有している。基板収容空間20に対する回路基板71の挿入方向と平行な前後方向において、隔壁部23は基板収容空間20より後方に配されている。隔壁部23の前端面23Fは、基板収容空間20の奥端面を構成し、キャビティ21の前端よりも後方に位置している。上下方向において隔壁部23の上下方向の寸法は、基板収容空間20の上下方向に寸法よりも小さい。基板収容空間20に回路基板71の挿入端部72が挿入された状態では、回路基板71の上下両接続面73と、隔壁部23のうちキャビティ21に臨む前端部の上下両面とが、段差状をなして前後方向に並ぶ。換言すると、隔壁部23の上下両面が回路基板71の接続面73に対して凹んだ位置関係となる。
【0021】
ハウジング本体11の後端部には、一括ゴム栓24と、一括ゴム栓24がハウジング本体11から離脱するの防止するためのリヤホルダ26とが取り付けられている。一括ゴム栓24には、一括ゴム栓24を前後方向に貫通した形態の複数のシール孔25が、複数のキャビティ21と対応するように形成されている。リヤホルダ26には、各シール孔25と対応する複数の貫通孔27が形成されている。
【0022】
端子金具Tは、単一部品である金属製の接続端子30と、接続端子30とは別体であって単一部品である金属製の保護端子50とを組み付けて構成されている。組付け状態では、保護端子50内には接続端子30の少なくとも一部が収容されている。接続端子30は、保護端子50に対し、保護位置(
図3を参照)と、保護位置よりも前方の接続位置(
図2,4を参照)との間で前後方向に相対移動し得るようになっている。
【0023】
接続端子30は、金属板材に曲げ加工を施して成形され、
図6に示すように、全体として前後方向に細長い形状である。接続端子30は、前後方向に細長い基部31と、基部31の前端から前方へ片持ち状に延出した形態の弾性接触片36と、基部31の後端から後方に延出したオープンバレル状の圧着部41とを有する。
【0024】
基部31は、板厚方向を上下方向に向けた基板部32と、基板部32の左右両側縁から基板部32の内面側へ直角に突出した左右一対の側板部33とを有する。基板部32の外面、即ち側板部33の突出方向と反対側の面には、前後方向に細長いガイド溝34が形成されている。側板部33の前端部には、基板部32とは反対側へ突出した形態の抜止め部35が形成されている。
【0025】
弾性接触片36は、基板部32の前端から斜め前方へ延出したアーム部37と、アーム部37の前端から前方へ突出した接触部38と、接触部38の前端から後方へ折り返し状に延出した補強部40とを有する。アーム部37は、基板部32の内面側へ斜め方向に延出している。接触部38は、基板部32の内面側へ膨らむように湾曲した形状である。接触部38のうち最も突出した部位は、回路基板71に接触する接点部39として機能する。
【0026】
補強部40は、接触部38の前端から後方へ折り返されて接触部38の前端部と後端部とに重ねられている。補強部40により、接触部38の変形が抑制されている。弾性接触片36は、アーム部37が弾性変形することによって、接触部38及び接点部39が、基板部32の板厚方向、即ち、回路基板71の接続面73と直角な方向へ変位するようになっている。
【0027】
圧着部41は、側板部33の突出方向と同じ方向へ突出したバレル部を有している。圧着部41には、電線42の前端部が導通可能な状態で固着されている。圧着部41の前端部の左右両側縁部には、バレル部の突出方向とは反対側へ突出した形態のスタビライザ43が形成されている。
【0028】
保護端子50は、金属板材を曲げ加工して成形されたものであり、
図7に示すように、全体として前後方向に細長い角筒状をなしている。保護端子50は、接続端子30の弾性接触片36を包囲する筒状部材として機能する。保護端子50は、厚さ方向を前後方向に向けた前壁部51と、厚さ方向を上下方向に向けた支持壁部52と、厚さ方向を左右方向に向けた左右一対の側壁部53と、厚さ方向を上下方向に向けて支持壁部52と対向する底壁部54とを有する。保護端子50の内部は、接続端子30の弾性接触片36を収容する保護空間55として機能する。保護空間55の前端は、前壁部51によって閉塞されている。保護空間55の後端は、保護端子50の外部へ開放されている。
【0029】
支持壁部52のうち前後方向中央よりも前方の位置には、ランス22と係止可能な抜止孔56が形成されている。支持壁部52の後端部には、叩き出しによって支持壁部52の内面側、即ち底壁部54側へ突出した形態のガイド突起57が形成されている。左右両側壁部53の後端部には、側壁部53の一部を切り起した形態の突起部58が形成されている。突起部58は、保護端子50の内部へ突出している。前後方向において、突起部58は、ガイド突起57よりも少し前方の位置に配置されている。
【0030】
底壁部54は、前端側領域54Fと、後端側領域54Rと、前端側領域54Fの後端と後端側領域54Rの前端とを繋ぐ傾斜領域54Sとを有する。前端側領域54Fと支持壁部52の上下の間隔は、後端側領域54Rと支持壁部52の上下間隔よりも狭い。傾斜領域54Sは、前後方向、即ち保護端子50に対する接続端子30の相対移動方向に対して傾斜している。前端側領域54Fの後端部と傾斜領域54Sの前端部は鈍角をなして連なり、傾斜領域54Sの後端部と後端側領域54Rの前端部も鈍角をなして連なっている。
【0031】
前端側領域54Fには、弾性接触片36を保護端子50の外部へ突出させるための接続孔59が形成されている。後端側領域54Rのうち前端に近い位置から前後方向中央位置に至る領域には、前端側領域54F、傾斜領域54S及び後端側領域54Rの後端部よりも厚さ寸法の大きい厚肉部60が形成されている。
【0032】
底壁部54のうち接続孔59の後端から厚肉部60の後端に至る領域は、保護部61として機能する。保護部61は、端子金具Tの外部の異物が弾性接触片36に対して干渉することを防止する。保護部61は、第1干渉防止部62と、第2干渉防止部63と、厚肉部60とを備えて構成されている。第1干渉防止部62は、傾斜領域54Sの全体を構成するものであり、弾性接触片36が回路基板71の挿入端部72のエッジ部74と接触することを防止する。第2干渉防止部63は、前端側領域54Fのうち接続孔59よりも後方の領域であり、第1干渉防止部62と同様、弾性接触片36が回路基板71の挿入端部72のエッジ部74と接触することを防止する。
【0033】
保護部61の内面には、第1ガイド面64と第2ガイド面65が形成されている。第1ガイド面64は、第1干渉防止部62の内面全体で構成されている。第2ガイド面65は、第2干渉防止部63の内面全体で構成され、第1ガイド面64の前端に対して鈍角をなして連なっている。保護部61の内面には、凹部66が形成されている。凹部66は、保護部61の内面のうち第1ガイド面64の後端部と厚肉部60の前端部との間を凹ませた形態である。凹部66は、保護端子50の外面には開口していない。
【0034】
接続端子30が保護位置にある状態では、
図3に示すように、基部31の外面が支持壁部52の内面に重なり、ガイド突起57がガイド溝34に嵌合し、側板部33の突出端縁が突起部58に接触する。側板部33が支持壁部52と突起部58との間で挟まれることにより、接続端子30が保護端子50に対し上下方向に位置決めされる。接続端子30の抜止め部35が突起部58に対して前方から係止することにより、接続端子30が保護端子50に対して後方へ離脱することを規制される。弾性接触片36の接触部38の前面が、保護部61の第1ガイド面64に対して面当たり状態で後方から接触することにより、接続端子30が、第1干渉防止部62によって前止まりされた状態となり、接続位置側への移動を規制される。以上により、接続端子30が保護端子50に対し保護位置に保持される。
【0035】
接続端子30が保護位置に保持された状態では、弾性接触片36の全体が保護端子50内の保護空間55内に収容される。接触部38は、保護端子50の外面側から保護部61によって覆われるので、保護端子50の外部の異物(図示省略)が接触部38と干渉することはない。接触部38のうち接点部39は、前後方向において凹部66に臨むように位置するので、接点部39が保護端子50に対して直接的に接触することはない。
【0036】
保護位置にある接続端子30を前方へ押すと、接続端子30が接続位置に向かって移動を開始する。接続端子30が保護位置から接続位置へ移動する過程では、基板部32が支持壁部52の内面に摺接するとともに、側板部33の突出端縁が突起部58に摺接することにより、接続端子30が保護端子50に対して移動方向と交差する方向への相対変位と傾きを規制される。
【0037】
接続端子30が前方へ移動するのに伴い、接触部38が、接続端子30を押す方向に対して傾斜した第1ガイド面64にガイドされて斜め前方へ変位し、これに伴ってアーム部37が弾性変形する。接続端子30の前進が進むと、接触部38が第1ガイド面64を通過して第2ガイド面65にガイドされる。接続端子30が接続位置に到達すると、接触部38が、接続孔59において端子金具Tの外部へ露出する位置に到達する。
【0038】
次に、カードエッジコネクタCの組付け手順と、カードエッジコネクタCを基板側コネクタPに嵌合する手順を説明する。カードエッジコネクタCの組付けに際しては、接続端子30を保護位置に保持した状態の端子金具Tが、ハウジング10の後方から貫通孔27とシール孔25を貫通し、キャビティ21内に挿入される。キャビティ21に挿入された端子金具Tは、ランス22が抜止孔56に係止することによって、抜止め状態に保持される。キャビティ21に対する端子金具Tの挿入方向は、基板収容空間20に対する回路基板71の挿入方向と平行な方向である。
【0039】
端子金具Tがキャビティ21に挿入された状態では、保護端子50の底壁部54のうち前端側領域54Fが、基板収容空間20に臨むように位置する。接続孔59も基板収容空間20に臨むので、保護端子50の保護空間55は接続孔59を介して基板収容空間20と連通する。端子金具Tをハウジング10に取り付けた後、基板収容空間20内に回路基板71の挿入端部72を挿入する。このとき、基板収容空間20内には、端子金具Tの弾性接触片36が進出していないので、回路基板71の挿入端部72が弾性接触片36と干渉することはない。回路基板71の挿入端部72が基板収容空間20に挿入された状態では、挿入端部72の接続面73が接続孔59を塞ぐように位置する。上下方向、即ち回路基板71の板厚方向において、接点部39は、回路基板71の厚さ範囲内に位置する。
【0040】
回路基板71を基板収容空間20に挿入した後は、保護位置にある接続端子30を接続位置へ押し込む。接続端子30を接続位置へ移動させるのに伴って、弾性接触片36の接触部38が、第1ガイド面64と第2ガイド面65とに順に接触しながら接続孔59まで移動する。接続端子30が接続位置に到達する直前は、接触部38の接点部39が第2ガイド面65の前端から回路基板71の接続面73へ乗り移る。第2ガイド面65と接続面73との高低差は、少なくとも第2干渉防止部63の板厚分を含む寸法である。接続端子30が接続位置に到達すると、接点部39が接続面73に対して弾性的に接触する。
【0041】
接続端子30が接続位置への移動を開始してから、接点部39が接続面73に接触するまでの間、接点部39の高さは、回路基板71の厚さ範囲内の高さから、回路基板71の接続面73と同じ高さまで変位する。接触部38の接続孔59に至る移動経路の全領域と、基板収容空間20内に挿入されている回路基板71の挿入端部72との間には、第1干渉防止部62と第2干渉防止部63が介在する。これにより、接触部38が、回路基板71の挿入端部72のエッジ部74に接触することはない。
【0042】
端子金具Tをハウジング10から離脱させる際には、まず、カードエッジコネクタCを基板側コネクタPから離脱させ、回路基板71を基板収容空間20の外部へ移動させる。このとき、回路基板71の挿入端部72のエッジ部74が、アーム部37の弾性復元力に抗して接触部38を押すのではなく、ハウジング10の前方へ退避するエッジ部74に対して接触部38がアーム部37の弾性復元力にしたがって摺接するだけである。したがって、接触部38が塑性変形や損傷を来すことはない。
【0043】
回路基板71が基板収容空間20から抜き取られた後は、ハウジング10の前方から治具(図示省略)によりランス22を抜止孔56から解離させ、端子金具Tを後方へ引き抜けばよい。端子金具Tをハウジング10から抜き取った後は、接続端子30を接続位置から保護位置へ移動させ、弾性接触片36を保護端子50内に収容する。
【0044】
本実施例1の端子金具Tは、基板収容空間20を有するハウジング10に取り付けられる。端子金具Tは、基板収容空間20に挿入された回路基板71に接触する弾性接触片36を有する接続端子30と、接続端子30とは別体であって、接続端子30に取り付けられた保護端子50とを有する。接続端子30は、保護端子50に対し、弾性接触片36を保護端子50内に収容する保護位置と、弾性接触片36を保護端子50の外部へ露出させて回路基板71と接触可能な状態にする接続位置との間で移動可能である。
【0045】
この端子金具Tによれば、ハウジング10から外した状態では、接続端子30を保護位置へ移動させることによって、弾性接触片36を異物の干渉から保護できるので、弾性接触片36が異物との干渉によって塑性変形したり損傷したりすることを回避できる。これにより、弾性接触片36と回路基板71との接続信頼性が低下することを防止できる。
【0046】
保護端子50には、接続端子30が前記保護位置にあるときに弾性接触片36を保護端子50の内側から接触させる保護部61が形成されている。保護部61は、弾性接触片36を第1干渉防止部62に接触させることによって、接続端子30を接続位置へ移動しない状態に保持する形態である。この構成によれば、保護部61が、弾性接触片36を保護する機能と、接続端子30を保護位置に保持する機能とを兼ね備えるので、接続端子30の形状が簡素化される。
【0047】
保護端子50には、接続端子30が保護位置にあるときに、弾性接触片36の接点部39が保護端子50と接触することを防止する凹部66が形成されている。この構成によれば、接続端子30が保護位置にあるときに、弾性接触片36の接点部39が損傷することを防止できる。保護部61は、弾性接触片36の接触部38を面接触状態で接触させる第1ガイド面64を有している。保護部61と接触部38を面接触させることにより、保護部61によって弾性接触片36が傷付けられることを防止できる。
【0048】
保護部61は、弾性接触片36の接触部38を摺接させる第1ガイド面64と第2ガイド面65とを有している。接続端子30が保護位置から接続位置へ移動する過程では、弾性接触片36が第1ガイド面64と第2ガイド面65に摺接するので、弾性接触片36は、基板収容空間20内に挿入された回路基板71の挿入端部72と干渉しない経路で移動することができる。接続端子30が保護位置から接続位置へ移動する過程では、弾性接触片36は、回路基板71の挿入端部72との干渉によって塑性変形したり損傷したりするおそれがない。
【0049】
接続端子30には、接続端子30の移動方向と平行なガイド溝34が形成され、保護端子50には、接続端子30が移動する過程でガイド溝34に摺動するガイド突起57が形成されている。ガイド溝34とガイド突起57とが摺動することによって、接続位置と保護位置との間で接続端子30を円滑に移動させることができる。
【0050】
本実施例1のカードエッジコネクタCは、ハウジング10と、ハウジング10に取り付けられる複数の接続端子30とを備えている。ハウジング10は、回路基板71が挿入される基板収容空間20を有する。接続端子30は、基板収容空間20に挿入された回路基板71に接触する弾性接触片36を有している。ハウジング10に取り付けられた接続端子30は、ハウジング10に対し接続位置と退避位置との間で前後方向に移動可能である。接続端子30が接続位置にある状態では、弾性接触片36の接点部39が、基板収容空間20内に挿入された回路基板71の表面(接続面73)に接触する。退避位置は、接続端子30と保護端子50との位置関係において保護位置に相当する位置である。接続端子30が退避位置にある状態では、弾性接触片36の接触部38が、回路基板71の挿入端部72から後方へ離隔した位置へ退避する。
【0051】
接触部38の移動経路と基板収容空間20との間には、第1干渉防止部62と第2干渉防止部63とが形成されている。第1干渉防止部62と第2干渉防止部63は、接続端子30が移動する過程で、接触部38が基板収容空間20に挿入された回路基板71の挿入端部72と干渉することを規制する。したがって、接触部38と回路基板71との干渉に起因して、接触部38が塑性変形や損傷を生じることがない。これにより、回路基板71と弾性接触片36との接続信頼性が低下することを防止できる。
【0052】
第1干渉防止部62と第2干渉防止部63は、退避位置における弾性接触片36のアーム部37の弾性変形量を、接続位置における弾性接触片36のアーム部37の弾性変形量よりも低減させるように屈曲した形状である。この構成によれば、接続端子30を退避位置にさせた状態が長期間継続しても、アーム部37のヘタリを回避することができる。
【0053】
第1干渉防止部62は、接続端子30の移動方向に対して傾斜した第1ガイド面64を有する。接続端子30が退避位置から保護位置へ移動する過程では、弾性接触片36の接触部38が第1ガイド面64に摺接する。接続端子30が退避位置から接続位置へ移動するのにともなって弾性接触片36のアーム部37の弾性変形量が増大する。この間、接触部38は、接続端子30の移動方向に対して傾斜した第1ガイド面64に摺接するので、アーム部37の弾性変形と接触部38の移動が円滑に行われる。
【0054】
第1干渉防止部62は、弾性接触片36の接触部38を接触させることによって、接続端子30を接続位置へ移動しない状態に保持する形態である。この構成によれば、第1干渉防止部62が、弾性接触片36と回路基板71との干渉を防止する機能と、接続端子30を保護位置に保持する機能とを兼ね備えるので、接続端子30を保護位置に保持するための専用の部位や部材が不要である。
【0055】
カードエッジコネクタCは、ハウジング10に対して着脱可能であり、接続端子30に取り付けられた保護端子50を備えている。接続端子30は、保護端子50に対して、弾性接触片36を保護端子50内に収容する位置と、弾性接触片36の接触部38を保護端子50の外部へ露出させる位置との間で相対的に移動可能である。第1干渉防止部62と第2干渉防止部63は、保護端子50に形成されている。この構成によれば、接続端子30と保護端子50をハウジング10から取り外した状態でも、弾性接触片36を保護端子50によって異物の干渉から保護することができる。
【0056】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例では、干渉防止部が筒状部材に形成されているが、干渉防止部はハウジングに形成されていてもよい。
上記実施例では、筒状部材を介して接続端子をハウジングに取り付けたが、接続端子をハウジングに直接取り付けてもよい。
上記実施例では、干渉防止部が、接続端子を保護位置に保持する機能を兼ね備えているが、干渉防止部とは別に、接続端子が接続位置へ移動しないように保持する専用の部位や部材を設けてもよい。
上記実施例では、ハウジングがインナハウジングとアウタハウジングを合体させた形態であるが、ハウジングは、単一の部品であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
C…カードエッジコネクタ
P…基板側コネクタ
T…端子金具
10…ハウジング
11…ハウジング本体
12…アウタハウジング
13…端子収容部
14…筒状嵌合部
16…シールリング
17…組付部
18…リテーナ
19…インナハウジング
20…基板収容空間
21…キャビティ
22…ランス
23…隔壁部
23F…隔壁部の前端面
24…一括ゴム栓
25…シール孔
26…リヤホルダ
27…貫通孔
30…接続端子
31…基部
32…基板部
33…側板部
34…ガイド溝
35…抜止め部
36…弾性接触片
37…アーム部
38…接触部
39…接点部
40…補強部
41…圧着部
42…電線
43…スタビライザ
50…保護端子(筒状部材)
51…前壁部
52…支持壁部
53…側壁部
54…底壁部
54F…前端側領域
54R…後端側領域
54S…傾斜領域
55…保護空間
56…抜止孔
57…ガイド突起
58…突起部
59…接続孔
60…厚肉部
61…保護部
62…第1干渉防止部(干渉防止部)
63…第2干渉防止部(干渉防止部)
64…第1ガイド面(ガイド面)
65…第2ガイド面
66…凹部
70…フード部
71…回路基板
72…挿入端部
73…接続面
74…エッジ部