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  • 特許-地盤改良方法および地盤改良材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】地盤改良方法および地盤改良材
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20230629BHJP
   C09K 17/00 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
E02D3/12 102
C09K17/00 P
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022103345
(22)【出願日】2022-06-28
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506149380
【氏名又は名称】株式会社東洋スタビ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 優治
(72)【発明者】
【氏名】前田 敏也
(72)【発明者】
【氏名】長澤 正明
(72)【発明者】
【氏名】宗宮 郷
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 泰司
(72)【発明者】
【氏名】衣川 剛央
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-080207(JP,A)
【文献】登録実用新案第3156151(JP,U)
【文献】特開2017-014350(JP,A)
【文献】特開2007-154528(JP,A)
【文献】特開2014-051852(JP,A)
【文献】特開2012-012565(JP,A)
【文献】特開平08-199558(JP,A)
【文献】特開2010-119992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
C09K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土に、コンクリートクラッシュ材および固化材を添加して混合することを含み、
前記土と前記コンクリートクラッシュ材との合計を100体積%としたとき、前記コンクリートクラッシュ材は、10体積%以上添加され、
前記固化材は、前記土と前記コンクリートクラッシュ材との混合物1m 当たり、30kg以上200kg以下である、
地盤改良方法。
【請求項2】
前記コンクリートクラッシュ材の粒子径は、100mm以下である、
請求項1に記載の地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素排出量の削減に寄与する地盤改良方法および地盤改良材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤を改良するために、固化材を使用した地盤改良が知られている。例えば、改良対象地盤にセメント系固化材を散布または注入しながら、セメント系固化材と改良対象地盤とを攪拌する注入攪拌工程を1回または複数回行うことにより地盤改良体を形成する地盤改良工法が存在する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-026661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、産業界において、二酸化炭素の排出量の削減が求められている。固化材は、その製造時に、多くの二酸化炭素を排出するため、地盤改良において、固化材の使用量を減らすことが望ましいと考えられる。
【0005】
本発明は、二酸化炭素の排出量を減らすことができる地盤改良方法および地盤改良材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らは、改良の対象とする土に、コンクリート廃棄物の破砕物または粉砕物であるコンクリートクラッシュ材を添加することにより、固化材の使用量を減らしたとしても、地盤に十分な支持力および強度をもたらすことができることを見出し、本発明に至った。
【0007】
本発明は、以下に掲げる態様の発明を提供する。
(項目1)
土に、コンクリートクラッシュ材および固化材を添加して混合することを含む、
地盤改良方法。
【0008】
(項目2)
前記コンクリートクラッシュ材の粒子径は、100mm以下である、
項目1に記載の地盤改良方法。
【0009】
(項目3)
前記土と前記コンクリートクラッシュ材との合計を100体積%としたとき、前記コンクリートクラッシュ材は、10体積%以上添加される、
項目1または2に記載の地盤改良方法。
【0010】
(項目4)
前記固化材は、前記土と前記コンクリートクラッシュ材との混合物1m当たり、30kg以上200kg以下である、
項目1から3のいずれか1項に記載の地盤改良方法。
【0011】
(項目5)
コンクリートクラッシュ材と、
固化材と、
を含む地盤改良材。
【0012】
(項目6)
前記コンクリートクラッシュ材の粒子径は、100mm以下である、
項目5に記載の地盤改良材。
【発明の効果】
【0013】
地盤改良の際に、土にコンクリートクラッシュ材を添加することにより、固化材の使用量を減らして二酸化炭素の排出量を低下させることができると共に、十分な支持力および強度を有する地盤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例および比較例の試験体の、固化材の添加量に対する一軸圧縮強度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の地盤改良方法および地盤改良材について説明する。
【0016】
本発明の地盤改良方法は、改良すべき地盤の土に、コンクリート廃棄物の破砕物または粉砕物であるコンクリートクラッシュ材(以下、「CC材」と表記することがある。)および固化材を添加して混合することを含む。地盤は、例えば、路盤、路床、建築物の基礎、盛土地盤または築堤である。
【0017】
CC材と固化材は、あらかじめ混合されており、CC材と固化材との混合物が土に添加されるようにしてもよい。あるいは、CC材と固化材は、事前に混合されずに、土に別々に添加されてもよい。
【0018】
本発明は、地盤改良材にも関する。本発明の地盤改良材は、CC材と、固化材と、を含む。
【0019】
CC材は、コンクリート廃棄物を破砕または粉砕して粒子状または粉末状にしたものである。コンクリート廃棄物としては、例えば、建設現場で余剰となった戻りコンクリートや、コンクリート製の建造物などを取り壊した際に発生する廃棄物が挙げられる。CC材を篩にかけることにより、CC材の粒子径を制御してもよい。CC材の粒子径は、例えば、100mm以下、好ましくは40mm以下である。
【0020】
土に対するCC材の添加割合(体積割合)が大きいほど、地盤の支持力および強度を向上させることができるため好ましい。CC材は、土とCC材との合計を100体積%としたとき、10体積%以上が好ましく、20体積%以上がより好ましく、30体積%以上がさらに好ましい。
【0021】
固化材としては、例えば、セメント、セメントを主成分としたセメント系固化材、石灰または石灰を主成分とした石灰系固化材が挙げられるが、これらに限定されない。二種以上の固化材を混合して使用することもできる。固化材は、粉末などの固体状の固化材であってもよく、粉末の固化材が水などの液体と混合されたスラリー状の固化材であってもよい。
【0022】
固化材の添加量が多いほど地盤の支持力および強度を向上させることができると考えられるが、一方で、固化材は、その製造時に、多くの二酸化炭素を排出するため、固化材の使用量を抑えることが好ましい。このような観点から、一実施形態において、固化材は、土とCC材との混合物1m当たり、30kg以上で200kg以下となるように、添加されることが好ましい。
【実施例
【0023】
以下では、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0024】
実施例および比較例の試験体を以下で説明する方法により作製し、試験体の一軸圧縮強度を比較した。
【0025】
<試験体の作製方法>
実施例1(1-1~1-3)、実施例2(2-1~2-3)および実施例3(3-1~3-3)では、関東ローム土、セメント系固化材であるジオセット200(太平洋セメント株式会社)およびCC材を混合して試験体を作製した。
【0026】
比較例1(1-1~1-3)では、CC材を配合せず、関東ローム土およびジオセット200を混合して試験体を作製した。
【0027】
各原料の配合割合は、表1に示されている。セメント系固化材の添加量は、関東ローム土とCC材との混合物1m当たりの質量である。CC材は、篩かけを行うことにより、10mm以下となるように調整された。
【0028】
試験体は、「セメント協会標準試験方法JCAS L-01:2006 セメント系固化材による改良体の強さ試験方法」にしたがって作製された。以下に、作製手順を簡単に示す。
(1)各原料を所定の配合割合で混合した混合物を作製した。モールド、1.5kgランマーおよびカラーを用いて混合物を突固めた。
(2)突固め方法は、質量1.5kgのハンマーを20cmの高さから自由落下させ、3層で突固めた。突固め回数は各層12回とした。
(3)1層当たりに突固める混合物の量は、突固め後の試験体高さのほぼ1/3程度となるようにした。各層の突き終わり面には、へらで刻みを付し、その上の層との密着をはかった。
(4)3層突固め後は、カラーを取り外してモールド上部の余分の土をストレートエッジで注意深く削り取った。砂粒などのために表面にできた穴は混合物の細粒分で埋め、上面がモールド上面と同じ高さになるように平滑に仕上げた。
(5)水分が蒸発しないように試験体を密閉し、7日間養生した。作製された試験体のサイズは、直径5cm、高さ10cmの円柱状であった。
【0029】
<一軸圧縮試験>
養生後の試験体の一軸圧縮強度を調べるために、一軸圧縮試験を行った。一軸圧縮試験は、JIS A 1216:1998「土の一軸圧縮試験方法」にしたがって行った。表1に、一軸圧縮試験の結果を示す。図1は、実施例1、実施例2、実施例3および比較例1の、固化材の添加量に対する一軸圧縮強度の変化を示すグラフである。
【0030】
【表1】
【0031】
図1に示すように、同じ一軸圧縮強度(例えば、250kN/m)を得ようとした場合、比較例よりも、実施例の方が、固化材の添加量が少なくて済むことが分かる。詳細に説明すると、CC材を添加していない比較例1の試験体の場合、250kN/mの一軸圧縮強度を得るためには、図1から、119kg/mの固化材を添加する必要があると推定される。一方で、実施例1の試験体(CC材を10体積%添加)では、250kN/mの一軸圧縮強度を得るために、固化材を92kg/m添加すればよいと推定され、固化材の添加量を比較例1と比べて22.7%削減できる。同様に、実施例2の試験体(CC材を20体積%添加)では、固化材を79kg/m添加すればよいと推定され、固化材の添加量を比較例1と比べて33.6%削減できる。実施例3の試験体(CC材を30体積%添加)では、固化材を69kg/mを添加すればよいと推定され、固化材の添加量を比較例1と比べて42.0%削減できる。この結果から、所望の支持力および強度を得るために、CC材を添加することで、固化材の添加量を減らすことができることが分かる。例えば、セメント系固化材の主成分であるポルトランドセメントを1kg製造する場合、二酸化炭素の排出量は、約763gである。セメント系固化材は約60質量%のポルトランドセメントを含むため、セメント系固化材を1kg製造する場合、二酸化炭素の排出量は、約458gと推定できる。一方、コンクリート廃棄物を粉砕して、CC材を製造する際に発生する二酸化炭素は、セメント系固化材の製造時に排出される二酸化炭素量に比べれば、ごくわずかである。したがって、固化材の一部をCC材で置き換えることにより、固化材の使用量を低減させて二酸化炭素の排出量を低減させつつ、地盤の支持力および強度を向上させることができる。
【0032】
図1から分かるように、同じ固化材の添加量(100kg/m,150kg/m)で比較した場合、実施例1から実施例3の試験体の一軸圧縮強度は、比較例1の試験体の一軸圧縮強度よりも高かった。また、固化材の添加量が50kg/mの場合、実施例2-1および実施例3-1の試験体の一軸圧縮強度は、比較例1-1の試験体の一軸圧縮強度よりも高かった。このことから、CC材を配合することにより、一軸圧縮強度を向上させることができることが分かる。したがって、地盤に、固化材だけでなくCC材も添加することにより、地盤の支持力および強度を向上させることができる。なお、実施例1-1の試験体(固化材の添加量が50kg/m)の一軸圧縮強度は、比較例1-1の試験体の一軸圧縮強度よりもわずかに低くなった。しかしながら、実施例1-1の試験体の一軸圧縮強度は、実用上問題のない値である。したがって、実施例1-1の配合割合であっても、実用に耐える支持力および強度を有した地盤を得ることができる上、二酸化炭素排出量も抑制できる。
【0033】
また、同じ固化材の添加量で比較した場合、実施例1の試験体よりも、実施例2および実施例3の試験体の方が、一軸圧縮強度が高かった。このことから、土に対するCC材の配合割合を大きくすることにより、地盤の支持力および強度を向上させることができると言える。
【0034】
CC材に含まれる水酸化カルシウムは、空気中および土中で二酸化炭素と反応し、炭酸カルシウムを生成する。したがって、CC材を土に添加することにより、CC材によって二酸化炭素を吸収することができる。
【要約】
【課題】二酸化炭素の排出量を低下させることができる地盤改良方法を提供する。
【解決手段】本発明の地盤改良方法は、土に、コンクリートクラッシュ材および固化材を添加して混合することを含む。
【選択図】図1
図1