(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】プレキャスト基版及びこれを用いたコンクリートブロックの敷設方法
(51)【国際特許分類】
E03F 3/06 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
E03F3/06
(21)【出願番号】P 2019157284
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000224215
【氏名又は名称】藤村クレスト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】吉本 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】原 和宏
(72)【発明者】
【氏名】吉本 正浩
(72)【発明者】
【氏名】足立 倫海
(72)【発明者】
【氏名】寺田 祐二
(72)【発明者】
【氏名】諏訪田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】中村 新次郎
(72)【発明者】
【氏名】菊池 奈保美
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-259169(JP,A)
【文献】特開昭64-075742(JP,A)
【文献】特開平05-263458(JP,A)
【文献】特開2003-206563(JP,A)
【文献】特開平05-071159(JP,A)
【文献】特開2005-041636(JP,A)
【文献】特開平07-054389(JP,A)
【文献】特開平04-005337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートブロック(B)が移動する移動路(R)を有するプレキャスト基版(1)であって、
前記プレキャスト基版(1)は、少なくとも前記コンクリートブロック(B)の移動方向に沿って、前記移動方向と交差する幅方向の片側に横ズレ防止ガイド(2)が形成され、前記移動路(R)にはその上面(S)よりも上方に突出するコンクリートブロック移動用の移動用レール(3)が複数設けられていることを特徴とする、プレキャスト基版。
【請求項2】
前記移動用レール(3)が、幅方向の両側(SR、SL)に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載されたプレキャスト基版。
【請求項3】
前記移動用レール(3)は前記移動路(R)の上面(S)に凹部(4)を設け、該凹部(4)内にフラットバー(F)を載置したものであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載されたプレキャスト基版。
【請求項4】
前記フラットバー(F)の少なくとも移動方向の一方の端部にストッパー(31)が設けられていることを特徴とする、請求項3に記載されたプレキャスト基版。
【請求項5】
前記移動用レール(3)は、前記移動路(R)の上面(S)に凸条部(T)を一体に形成したものであることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載されたプレキャスト基版。
【請求項6】
移動方向に沿って連続して敷設された複数のプレキャスト基版のうち、先に敷設されたプレキャスト基版(1)の凸条部(T)とこれに続く次位のプレキャスト基版(1)の凸条部(T)との間に連結部材(32)が設けられていることを特徴とする、請求項5に記載されたプレキャスト基版。
【請求項7】
前記横ズレ防止ガイド(2)が幅方向の片側のみに形成された場合において、前記横ズレ防止ガイド(2)の反対側に設けられた前記移動用レール(3)の外側に位置する移動路(R)の上面(S)に、コンクリートブロック調整用の調整溝(5)が設けられていることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載されたプレキャスト基版。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載されたプレキャスト基版(1)を用いたコンクリートブロックの敷設方法であって、
移動用レール(3)が形成された複数のプレキャスト基版(1)をコンクリートブロック(B)の移動方向に沿って連続して敷設する工程と、
先に敷設されたプレキャスト基版(1)とこれに続く次位のプレキャスト基版(1)とを連設させることにより、移動方向に沿って連続する移動路(R)及び移動用レール(3)を形成する工程と、
前記プレキャスト基版(1)の移動用レール(3)上にコンクリートブロック(B)を載せた状態で牽引する工程と、を有することを特徴とする、コンクリートブロックの敷設方法。
【請求項9】
請求項3又は4に記載されたプレキャスト基版(1)を用いたコンクリートブロックの敷設方法であって、
複数のプレキャスト基版(1)をコンクリートブロック(B)の移動方向に沿って連続して敷設する工程と、
先に敷設されたプレキャスト基版(1)の凹部(4)とこれに続く次位のプレキャスト基版(1)の凹部(4)内にフラットバー(F)を移動方向に沿って渡設する工程と、
前記プレキャスト基版(1)のフラットバー(F)上にコンクリートブロック(B)を載せて牽引する工程と、を有することを特徴とする、コンクリートブロックの敷設方法。
【請求項10】
請求項5又は6のいずれか1項に記載されたプレキャスト基版(1)を用いたコンクリートブロックの敷設方法であって、
プレキャスト基版(1)をコンクリートブロック(B)の移動方向に沿って連続して敷設する工程と、
先に敷設されたプレキャスト基版(1)の凸条部(T)の端部とこれに続く次位のプレキャスト基版(1)の凸条部(T)の端部との間に前記両端部同士を繋ぐ連結部材(32)を設ける工程と、
前記プレキャスト基版(1)の凸条部(T)上にコンクリートブロック(B)
を載せて牽引する工程と、を有することを特徴とする、コンクリートブロックの敷設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバート、水路ブロック等のコンクリートブロックを敷設するためのプレキャスト基版およびこれを用いたコンクリートブロックの敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートブロックを敷設する方法として、コンクリートブロックの移動路に基礎コンクリートを構築して、移動路の上面両側に断面直角状のガイド部材を予め据え付け高さと幅に設定して対抗配置し、コンクリートブロックの両下端部をガイド部材間に配置して、牽引装置によりワイヤーロープ及び滑車を介してコンクリートブロックを牽引して、荷卸し位置から据え付け位置に移動させ据え付ける敷設方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたコンクリートブロックの敷設方法は、コンクリートブロックを敷設する溝内に生コンクリートを打設し、コンクリートブッロックを移動、設置するための移動路が形成された基礎コンクリートを構築し、当該基礎コンクリートの移動路の上面両側に断面直角状のガイド部材を所定の高さ、幅、勾配に設定し配置するものである。
【0005】
しかし、特許文献1に記載されたコンクリートブロックの敷設方法では、掘削した溝内に打設した生コンクリートが所定の強度に達するまで時間がかかり、この場合基礎コンクリートを構築するのは現場の作業員であり、作業員がコテにより仕上げ作業を行うため仕上がりに凹凸が生じて、仕上げ精度の良い基礎コンクリートを構築するのが難しい。すなわち仕上げ精度が良くないという問題がある。
【0006】
また、基礎コンクリート上に設定し配置した、ガイド部材によってコンクリートブロックの据え付け位置が決まるため、コンクリートブロックの敷設を良好に行うためには、ガイド部材の設定、配置において高低差(高さ、勾配)の管理が重要であることから、熟練した作業員と時間を必要とし、ガイド部材も基礎コンクリートの移動路の上面の両側に設けるため、施工コストもかかっていた。
【0007】
更に、特許文献1に記載されたコンクリートブロックの敷設方法では、コンクリートブロックと基礎コンクリートを固着して一体化させるために、コンクリートブロックと基礎コンクリートの移動路上面との隙間には予めモルタルを敷き詰めておくか、又はコンクリートブロック設置完了後にブロックの底版部に設けた注入孔からグラウト材を注入している。
この際、現場打設の基礎コンクリートの場合、上述したように仕上げ精度が良くないため、コンクリートブロック底面と基礎コンクリートの仕上げ作業の際生じた凸部分とが接触しないようにするため、コンクリートブロックと基礎コンクリートの移動路上面との隙間を高くする必要があり、必然的にモルタル、あるいはグラウト材の使用量が増えるという問題がある。
【0008】
そこで本発明はこの様な問題に鑑みなされたものであり、その目的は、コンクリートブロックを敷設する際において、ガイド部材の設定や配置を容易にしてコンクリートブロック敷設作業が省力化可能な、プレキャスト基版及びこれを用いたコンクリートブロックの敷設方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るプレキャスト基版は、コンクリートブロックが移動する移動路を有するプレキャスト基版であって、前記プレキャスト基版は、少なくとも前記コンクリートブロックの移動方向に沿って、前記移動方向と交差する幅方向の片側に横ズレ防止ガイドが形成され、前記移動路にはその上面よりも上方に突出するコンクリートブロック移動用の移動用レールが複数設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第2の態様に係るプレキャスト基版は、前記移動用レールが、幅方向の両側に設けられていることを特徴とする。
【0011】
ここで、「プレキャスト基版」とは、現場ではなく工場で生産するコンクリート製品のことで、現場で打設して構築される基礎コンクリートとは異なり、工場で生産されているため、均一な品質のコンクリートブロックが生産できることに加え現場に搬送し、直ぐに施工できることから利便性にもすぐれているコンクリート製品である。
【0012】
第1及び第2の態様によれば、コンクリートブロックを移動させる移動路が形成された基版が、従来の現場で生コンクリートを打設して構築する基礎コンクリートではなく、工場で生産されるプレキャスト基版(「プレキャストコンクリート」ともいう)なので、仕上げ精度が良く、そのためプレキャストコンクリートを仕上げる作業員の手間や時間を省力化することができる。
【0013】
また、本態様のプレキャスト基版の移動路には、当該移動路の上面より突出するコンクリートブロック移動用の移動用レールが複数設けられているので、コンクリートブロックを牽引して移動させて敷設する際に、コンクリートブロックの底面とプレキャスト基版の移動路の上面との摩擦が小さくなり、コンクリートブロックを移動しやすいという効果を有している。
【0014】
更に、本態様のプレキャスト基版において、移動方向に対して横方向のズレを防止する横ズレ防止ガイドを移動方向に沿って片側に形成した場合には、横ズレ防止ガイドが片側にしか形成されていないので、コンクリートブロックの幅方向の長さが変化しても、すなわち幅方向の長さが短くなったり長くなったりしても、対応することができるため、同一のプレキャスト基版が使用可能となり、製造効率が上がりコストを削減することができる。
なお、横ズレ防止ガイドはコンクリートブロックの移動方向に沿って両側に形成する構成としても良い。
【0015】
本発明の第3の態様に係るプレキャスト基版は、第1又は第2の態様において、前記移動用レールは前記移動路の上面に凹部を設け、該凹部内にフラットバーを載置したものであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の第4の態様に係るプレキャスト基版は、第3の態様において、前記フラットバーの少なくとも移動方向の一方の端部にストッパーが設けられていることを特徴とする。
【0017】
第3及び第4の態様によれば、プレキャスト基版の移動路上面に設けられた凹部に、フラットバーを載置するだけで簡単に、移動路の上面より突出したコンクリートブロック移動用の移動用レールが設けることができる。本態様のフラットバーは、その厚さが凹部の深さよりも厚いため、移動路の上面より突出する構造となっている。
【0018】
また、本態様では、凹部に載置したフラットバーには、少なくとも一方の端部にストッパーが設けられている構成となっているので、コンクリートブロックを移動(牽引)したときに、フラットバーがコンクリートブロックと一緒に移動するのを防止することができる。
【0019】
本発明の第5の態様に係るプレキャスト基版は、第1または第2の態様において、前記移動用レールは、前記移動路の上面に凸条部を一体に形成したものであることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、凸条部はプレキャスト基版と一体(同一の型枠)で生産することが可能なので、プレキャスト基版別に移動用レールを載置する必要がなく、施工コストを削減することができる。
【0021】
本発明の第6の態様に係るプレキャスト基版は、第5の態様において、移動方向に沿って連続して敷設された複数のプレキャスト基版のうち、先に敷設されたプレキャスト基版の凸条部とこれに続く次位のプレキャスト基版の凸条部との間に連結部材が設けられていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、プレキャスト基版を連設した際に、先のプレキャスト基版と次位のプレキャスト基版の連設部分に多少高低差があっても、凸条部同士が連結部材で連結されているのでコンクリートブロックは連結部材の上を移動できるため、問題なくコンクリートブロックを敷設することができる。
【0023】
本発明の第7の態様に係るプレキャスト基版は、第1の態様から第6のいずれか一の態様において、前記横ズレ防止ガイドが幅方向の片側のみに形成された場合において、前記横ズレ防止ガイドの反対側に設けられた前記移動用レールの外側に位置する移動路の上面に、コンクリートブロック調整用の調整溝が設けられていることを特徴とする、
【0024】
本態様によれば、横ズレ防止ガイドの反対側に設けられた前記移動用レールの外側に位置する移動路の上面に、コンクリートブロック調整用の調整溝が設けられているので、コンクリートブロックが移動中に横ズレ防止ガイドが形成されている側と反対方向へ横ズレを起こした際には、当該調整用溝にバール等を差し込んでコンクリートブロックに作用させることにより、コンクリートブロックを元の位置に戻すことができる。
【0025】
本発明に係るコンクリートブロックの敷設方法の態様は、第1の態様から第7の態様のいずれか一のプレキャスト基版を用いたコンクリートブロックの敷設方法であって、移動用レールが形成された複数のプレキャスト基版をコンクリートブロックの移動方向に沿って連続して敷設する工程と、先に敷設されたプレキャスト基版とこれに続く次位のプレキャスト基版とを連設させることにより、移動方向に沿って連続する移動路及び移動用レールを形成する工程と、前記プレキャスト基版の移動用レール上にコンクリートブロックを載せた状態で牽引する工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明に係るコンクリートブロックの敷設方法の態様は、第3の態様又は第4の態様の一のプレキャスト基版を用いたコンクリートブロックの敷設方法であって、複数のプレキャスト基版をコンクリートブロックの移動方向に沿って連続して敷設する工程と、先に敷設されたプレキャスト基版の凹部とこれに続く次位のプレキャスト基版の凹部内にフラットバーを移動方向に沿って渡設する工程と、前記プレキャスト基版のフラットバー上にコンクリートブロックを載せて牽引する工程と、を有することを特徴とする。
更に、本発明に係るコンクリートブロックの敷設方法の態様は、第5の態様又は第6の態様の一のプレキャスト基版を用いたコンクリートブロックの敷設方法であって、プレキャスト基版をコンクリートブロックの移動方向に沿って連続して敷設する工程と、先に敷設されたプレキャスト基版の凸条部の端部とこれに続く次位のプレキャスト基版の凸条部の端部との間に前記両端部同士を繋ぐ連結部材を設ける工程と、前記プレキャスト基版の凸条部上にコンクリートブロックを載せて牽引する工程と、を有することを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、第1の態様から第7の態様のいずれか一のプレキャスト基版を用いることができるので、コンクリートブロックの敷設作業が省力化可能なコンクリートブロックの敷設方法を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、コンクリートブロックを敷設する際において、ガイド部材の設定や配置を容易にしてコンクリートブロック敷設作業が省力化可能な、プレキャスト基版及びこれを用いたコンクリートブロックの敷設方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】は、本発明に係るプレキャスト基版の第1の実施形態の斜視図。
【
図2】は、本発明に係るプレキャスト基版の第1の実施形態においてフラットバーを取り外した状態の斜視図。
【
図3】は、第1の実施形態のプレキャスト基版を連設した際においてフラットバーの一方を取り外した状態の斜視図。
【
図4】は、第1の実施形態のプレキャスト基版を連設しコンクリートブロックを移動し敷設する際の概略図。
【
図5】(a)は、本発明に係るプレキャスト基版の第1の実施形態の部分正面図、(b)は第1の実施形態のプレキャスト基版の移動用レール部分の拡大図。
【
図6】(a)は、本発明に係るプレキャスト基版の第2の実施形態の部分正面図、(b)は第2の実施形態のプレキャスト基版の移動用レール部分の拡大図。
【
図7】(a)は、本発明に係るプレキャスト基版の第3の実施形態の部分平面図、(b)は(a)のI-I線の断面図。
【
図8】は、本発明に係るプレキャスト基版の第4の実施形態の部分正面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら本発明に係るプレキャスト基版及びこれを用いたコンクリートブロックの敷設方法について説明する、なお、本発明は当該実施形態に限定されるものではない。また、各図において同一の構成については同一の符号を付し、重複する構成についてはその説明を省略する。各図は本発明をわかり易く説明するために記載された概略図であり、特に図面において寸法や比率が限定されるものではない。また以下の説明において、コンクリートブロックBが移動する方向を移動方向と規定し、これと交差する一方を幅方向、他方を高さ方向と規定する。
【0030】
図1に示すように、本発明に係る第1の実施形態のプレキャスト基版1は、コンクリートブロックB(
図4参照)が移動する移動路Rと、移動路Rの上面Sの幅方向の両側SR、SLに形成された一対の凹部4と、当該凹部4に載置されたコンクリートブロック移動用の移動用レール3の一態様を構成するフラットバーFと、コンクリートブロックBが移動する際(牽引される際)に横ズレを防止するためにコンクリートブロックBの移動方向に沿って、幅方向の片側(
図1では右側SR)に形成された横ズレ防止ガイド2と、を有して構成されている。前記横ズレ防止ガイド2は左側SLに形成しても良い。
【0031】
図2には、フラットバーFを凹部4から取り外した状態が記載されている。フラットバーFは鉄製の平板形状をしており、その一端にはコンクリートブロックBが移動(牽引)したときに、フラットバーF自身がコンクリートブロックBと一緒に移動方向にずれるのを防止すべく、移動路Rの上面Sに形成された凹部4の移動方向手前側の端部に引っ掛かるストッパー31が垂下設されている。フラットバーFの敷設方法は、ストッパー31が凹部4の端部に引っ掛かるようにして凹部4に載置する。
フラットバーFは単純な形状で一般的に流通している汎用品なので、コンクリートブロックBを移動させるガイド部材として凹部4に載置するだけで、固定する必要がないため、従来のガイド部材より施工コストが削減できる
【0032】
プレキャスト基版1は、工場において型枠を作成しその中に生コンクリートを流し込んで生産する。このため、均一な品質のプレキャスト基版1を使用量に応じて生産することができ、生産されたプレキャスト基版1を、現場であるコンクリートブロックBを敷設する溝内に搬送して設置するだけで、コンクリートブロックBの移動路Rを形成することができる。本発明のプレキャスト基版1を使用すれば、コンクリートブロックBを敷設する溝内に生コンクリートを打設し基礎コンクリートを構築し、その後にガイド部材の設置・固定を行う従来の方法よりも、作業員の手間や時間を省力化することができる。
【0033】
なお、本態様では、横ズレ防止ガイド2は、
図1等においてコンクリートブロックBの移動方向に沿って右側SRの片側にしか形成されていないが、左側SLの片側に形成しても良いし左右両側SR、SLに形成しても良い。
【0034】
そして、本態様のプレキャスト基版1を移動方向に沿って連設することによりコンクリートブロックBの移動路Rを所定の距離形成することができる。
図3及び
図4では、本態様の各プレキャスト基版(1a、1b、1c)を3枚連設してコンクリートブロックBの移動路R(Ra、Rb、Rc)を所定の距離(本態様では8~10m)形成している。
ここで、本願明細書中の「連設」という文言については、プレキャスト基版1を連続して敷設すること、すなわち、プレキャスト基版1を敷設して連なった状態にすることのみならず、プレキャスト基版1同士を部材等で接続して連なった状態にすることも含む意で用いることとする。
図3及び
図4においては、フラットバーFは各プレキャスト基版(1a、1b、1c)上に個別に載置されずに、連設された各プレキャスト基版(1a、1b、1c)によって移動方向に連続して形成される凹部4内に一本のフラットバーFが渡設される構造となっている(特に
図3参照)。このような構造であれば、各プレキャスト基版(1a、1b、1c)の連設部分(繋ぎ目部分)において、多少の高低差があっても、一本のフラットバーFが各プレキャスト基版(1a、1b、1c)の各凹部4に渡って設けられているので、問題なくコンクリートブロックBが、各プレキャスト基版(1a、1b、1c)の連設部分(繋ぎ目部分)を移動することができる。
【0035】
なお、
図3及び
図4の様に複数のプレキャスト基版1を移動方向に沿って連設した場合においては、一番手前のプレキャスト基版(1a)の前端部(紙面手前)に引っ掛かるようにフラットバーFの一端にストッパー31が垂下設されている。また本態様ではフラットバーFの一端にストッパー31が設けられているが、両端に設ける構造としても良い。
【0036】
また、ストッパー31の目的は、コンクリートブロックを移動(牽引)したときに、フラットバーFがコンクリートブロックBと一緒に移動するのを防止することにある。そこで、連設したプレキャスト基版(1a、1b、1c)のうち、移動方向の最下流側となる最後のプレキャスト基版1cの凹部4の終端を所定の範囲埋め、凹部4の終端に壁を設けることにより、埋めた部分又は壁をストッパーとして利用する構成とすることもできる。この構成では、フラットバーFの最下流側の端部が、埋めた部分又は壁に当接してフラットバーFの移動方向のズレを防止することができる。ストッパーがこのような構成であれば、フラットバーFは手前側の端部にストッパー31を設ける必要がなくなり、フラットバーFを平板状からなる簡単に構成とすることができる。この構成は、移動路Rが長く、複数のフラットバーFが必要な場合に有効である。
【0037】
図4には、実際に3枚のプレキャスト基版1a、1b、1cを移動方向に沿って連設し、コンクリートブロックBの移動路R(個別に移動路Ra、Rb、Rcとする)を連続的に形成して、コンクリートブロックBが敷設される状態が示されている。
なお、
図4において、コンクリートブロクBを移動する装置や移動方法、すなわち牽引する装置、牽引方法については、公知の牽引装置を使用してコンクリートブロックBを牽引することが可能である(例えば特許文献1に記載された牽引装置、牽引方法)。そのため、牽引装置や牽引方法の記載は
図4のおいては省略している。
【0038】
図4に示すように、先ず、コンクリートブロックBを敷設する溝内に、工場より搬送された複数のプレキャスト基版1を敷設する。すなわち、第1のプレキャスト基版1aの次に、第2のプレキャスト基版1bを敷設し、そのまた次に第3のプレキャスト基版1cを順に敷設すると共に、3枚のプレキャスト基版1a、1b、1cを移動方向に連設させて連続する移動路Rを形成する。この際、3枚のプレキャスト基版1a、1b、1cにおいては、各凹部4が移動方向に沿って直線状に配置されるようにすることが好ましい。
次に、3枚のプレキャスト基版1a、1b、1cの各凹部4内に移動レール3を構成するフラットバーFを載置する。この際、フラットバーFに形成されたストッパー31を一番手前のプレキャスト基版1aの前端部(紙面手前)に引っ掛ける。
次に、荷卸し位置として決められた一番手前のプレキャスト基版1aの移動レールであるフラットバーF上に、コンクリートブロックBを載置する。
その後、図示しない牽引装置により、ワイヤーロープ及び滑車を介してコンクリートブロックBを牽引して荷卸し位置から据え付け位置(図奥側)に移動させる。
同様の作業を他のコンクリートブロックBに対しても行い、所定の数のコンクリートブロックBを3枚のプレキャスト基版1a、1b、1cに並べた状態で連結させる。
連結後、コンクリートブロックBの底面B2に形成された孔B1からモルタル又はグラウト材を注入し、移動路Rの上面SとコンクリートブロックBの底面B2の下面との間の隙間dを埋めることにより、コンクリートブロックBの溝内への敷設がプレキャスト基版1と一体化された状態で完了する。
【0039】
尚、コンクリートブロックBがフラットバーF上を支持されてスライド移動する(牽引される)際、フラットバーFの上面に、コンクリートブロックBの底面B2(
図5等参考)とフラットバーFとの間の摩擦抵抗を小さくしてコンクリートブロックBが滑りやすくするための滑材を塗布することが好ましい。
滑材としては、摩擦を低減し、滑りやすくするものであれば種類は問わない。
【0040】
図5には第1の実施態様における、本発明に係るプレキャスト基版の部分断面図(a)と移動用レール部分の拡大図(b)が示されている。
フラットバーFは凹部4に載置されているが、凹部4の深さよりもフラットバーFの厚さの方が厚く、フラットバーFは移動路Rの上面Sよりも上方に突出する状態に設定されており、コンクリートブロックBの底面2はフラットバーFのみに接触し、移動路Rの上面Sには接触しないようになっている。
【0041】
本態様では、凹部4の深さは3mmでフラットバーFの厚さは12mmである。従ってフラットバーFはプレキャスト基版1の移動路の上面Sより9mm突出している。この突出している部分が、プレキャスト基版1の移動路の上面SとコンクリートブロックBの底面B2の下面との間の隙間dを形成する。
【0042】
次に
図6~
図8を参照にしながら本発明に係るプレキャスト基版1の他の実施態様について説明する。
図6には、本発明に係るプレキャスト基版1の第2の実施形態の部分断面図(a)及び第2の実施形態のプレキャスト基版1の移動用レール部分の拡大図(b)が示されている。
【0043】
第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、移動用レール3の態様がフラットバーFに代えて移動路の上面Sを部分的に凸条部Tとして形成した点にある。
本態様であれば、凸条部Tをプレキャスト基版1の一部として工場でプレキャスト基版1と一体として生産できるので、フラットバーFを採用する場会に比較して施工コストを削減することができる。
なお、コンクリートブロックBを移動する(牽引する)際に、凸条部Tの上面に滑材を塗布する点については、第1の実施態様と同様である。
【0044】
図7には、本発明に係るプレキャスト基版1の第3の実施形態の部分平面図(a)及び(a)のI-I線の断面図(b)が記載されている。
本発明に係るプレキャスト基版1の第3の実施形態は、第2の実施形態における凸条部Tが、プレキャスト基版1a、1bの端部まで設けられていない場合において、プレキャスト基版1a、1bを連設した際に、一方のプレキャスト基版1a側の凸条部Tの端部と他方のプレキャスト基版1b側の凸条部Tの端部との間に連結部材32を配置し、各プレキャスト基版1a、1bに設けられた凸条部Tの端部同士を連結することにより、コンクリートブロックBをスムーズに移動させる(牽引させる)ことができる。
【0045】
本態様によれば、コンクリートブロックBがスムーズにプレキャスト基版1a、1bを通過できるようにするため、
図7(b)に示すようにプレキャスト基版1a、1bに設けられた各凸条部Tの上面と連結部32の上面とをほぼ面一とすることができる。
よって、例えばプレキャスト基版1a、1bを連設した際に、先のプレキャスト基版1aと次位のプレキャスト基版1bと連設部分Aに多少高低差があっても、凸条部T同士が連結部材32を介して連結されているのでコンクリートブロックBは連結部材32の上をスムーズに移動できるようになり、結果としてコンクリートブロックBの敷設を容易とすることが可能となる。
なお、連結部材32の素材としては、第1の実施例と同様のフラットバー等が挙げられる。第1の実施例のフラットバーFを用いる場合は、
図7(a)に示したようにプレキャスト基版1a、1bの各凸条部T(3)の間にフラットバーFを嵌め込む様にして載置する。
【0046】
図8には、本発明に係るプレキャスト基版1の第4の実施形態の部分断面図が記載されている。横ズレ防止ガイド2がプレキャスト基版1の幅方向の片側(
図8では右側)に形成された場合において、コンクリートブロックBが移動中(牽引中)に幅方向の逆側(
図8では左方向)に横ズレする場合がある。
そこで、本態様では、横ズレした コンクリートブロックBを元の位置に復帰させるための調整溝5が、移動路Rの上面S上で且つ横ズレ防止ガイド2とは幅方向において反対側に設けられたフラットバーF(移動用レール3)の外側の位置に設けられている。調整溝5にバール等を挿入し、梃の原理を利用してコンクリートブロックBを横ズレ防止ガイド2の方向(図示右方向)に横ズレさせることにより、コンクリートブロックBを元の位置に復帰させることが可能となる。
【0047】
このように、調整溝5を設けることで、コンクリートブロックBが移動中に横ズレを起こしても、調整溝5にバール等の道具を使用すれば、コンクリートブロックBを元の位置に容易に戻すことが可能となる。
なお、調整溝5は本発明に係る第1の態様から第3の態様のいずれの態様にも設けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、ガイド部材の設定や配置を容易にしてコンクリートブロック敷設作業が省力化可能な、プレキャスト基版及びこれを用いたコンクリートブロックの敷設方法を提供することが可能となるとなるので、コンクリートブロック敷設作業分野に用途展開が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 :プレキャスト基版
2 :横ズレ防止ガイド
3 :移動用レール
4 :凹部
5 :調整溝
31 :ストッパー
32 :連結部材
1a、1b、1c:プレキャスト基版
A :プレキャスト基版連設部分
B :コンクリートブロック
F :フラットバー(移動用レール)
R :移動路
S :移動路の上面
T :凸条部(移動用レール)
d :隙間
B1 :孔
B2 :コンクリートブロック底面
Ra、Rb、Rc:移動路