(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】焼灼及び切除のための手術器具
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
A61B18/14
(21)【出願番号】P 2019556312
(86)(22)【出願日】2018-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2018064466
(87)【国際公開番号】W WO2018220178
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-05-19
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,マルコム
(72)【発明者】
【氏名】バーン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】クレッグ,ピーター
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02531434(GB,A)
【文献】国際公開第2015/072529(WO,A1)
【文献】特表2014-511190(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0077626(US,A1)
【文献】再公表特許第2013/005484(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00 - 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の切除及び焼灼のための高周波(RF)電磁(EM)エネルギー及びマイクロ波EMエネルギーを送達する電気外科器具であって、
エネルギー伝送ケーブル構造であって、
マイクロ波エネルギーを伝送する同軸伝送線であって、内部導電性層、外部導電性層、及び前記内部導電性層を前記外部導電性層から分離する誘電体層を含み、前記内部導電性層が、前記ケーブル構造に沿った中空の縦通路の周りに形成されている、前記同軸伝送線と、
前記中空の縦通路に沿って高周波エネルギーを伝送する伝送線と
を含む、前記エネルギー伝送ケーブル構造と、
前記エネルギー伝送ケーブル構造の遠位端にある器具の先端であって、
前記外部導電性層の遠位端を越えて縦方向に延びる誘電体先端素子であって、前記内部導電性層が、前記誘電体先端素子内で前記外部導電性層の前記遠位端を越えて縦方向に延びてマイクロ波放射器を形成する、前記誘電体先端素子と、
前記誘電体先端素子の遠位端
面に取り付けられたアクティブ電極及びリターン電極であって、前記アクティブ電極及び前記リターン電極が、前記伝送線に接続されて前記誘電体先端素子の前記遠位端
面でそれらの間のRF場を支持する、前記アクティブ電極及び前記リターン電極と
を含む、前記器具の先端と
を備える、前記電気外科器具。
【請求項2】
前記マイクロ波エネルギーを伝送する前記同軸伝送線が、第1の同軸伝送線であり、前記高周波エネルギーを伝送する前記伝送線が、前記第1の同軸伝送線の内側の第2の同軸伝送線であり、
前記第2の同軸伝送線が、前記縦通路を通って延びる最も内部の導電性素子、前記内部導電性層、及び前記内部導電性層を前記最も内部の導電性素子から分離する最も内部の誘電体層を含み、
前記アクティブ電極が、前記内部導電性層に電気的に接続され、前記リターン電極が、前記最も内部の導電性素子に電気的に接続され、
前記最も内部の導電性素子及び前記外部導電性層が、電気的に接地される、請求項1に記載の電気外科器具。
【請求項3】
前記最も内部の導電性素子が導電性ワイヤである、請求項2に記載の電気外科器具。
【請求項4】
前記最も内部の導電性素子が、前記器具先端を操作する制御ワイヤを含む、請求項2または3に記載の電気外科器具。
【請求項5】
前記高周波エネルギーを伝送する前記伝送線が、前記中空の縦通路を通って延びる一対のワイヤである、請求項1に記載の電気外科器具。
【請求項6】
前記一対のワイヤが、電気絶縁シースに収容されている、請求項5に記載の電気外科器具。
【請求項7】
前記エネルギー伝送ケーブル構造が、外科用スコープデバイスの柔軟な挿入チューブを通って前記外科用スコープデバイスの近位端から遠位端に挿入可能である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電気外科器具。
【請求項8】
前記エネルギー伝送ケーブル構造が、3mm以下の外径を有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の電気外科器具。
【請求項9】
前記縦通路が、前記誘電体先端素子を通って延び、前記器具を通る流体流路を提供する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の電気外科器具。
【請求項10】
前記誘電体先端素子が、セラミックである、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電気外科器具。
【請求項11】
前記エネルギー伝送ケーブル構造の近位端に接続されたダイプレクサを有する、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の電気外科器具。
【請求項12】
電気外科装置であって、
高周波エネルギー及びマイクロ波エネルギーを供給するように配置された電気外科発電機と、
前記電気外科発電機に接続された、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の電気外科器具とを備え、
前記エネルギー伝送ケーブル構造が、マイクロ波エネルギーを伝送する前記同軸伝送線を介して前記マイクロ波エネルギーを伝送し、高周波エネルギーを伝送する前記伝送線を介して前記高周波エネルギーを伝送するように配置される、前記電気外科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼灼及び切除の組み合わせ器具、ならびに器具による焼灼及び切除を可能にするエネルギー送達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
外科的切除とは、肝臓または脾臓、または腸など、ヒトまたは動物の体内の臓器に関連する不要な組織の一部を除去する手段である。組織が切断(分割または離断)されると、細動脈と呼ばれる小さな血管が損傷または破裂する。最初の出血の後に、出血点を塞ごうとして血液が血餅に変わる凝固カスケードが続く。手術中、患者にとっては、出血はできるだけ少ないことが望ましいため、無血切断の提供を試みる様々なデバイスが開発されている。
【0003】
例えば、Hemostatix(登録商標)Thermal Scalpel Systemは、鋭い刃と止血システムとを組み合わせている。刃はプラスチック材料でコーティングされ、刃の温度を正確に制御する加熱ユニットに接続される。その意図は、加熱された刃により、組織の切断時に組織を焼灼することである。
【0004】
切断及び止血を同時に行う他の既知のデバイスは、刃を使用しない。一部のデバイスでは、組織を切断及び/または凝固させるために、高周波(RF)エネルギーを使用する。(超音波メスとして知られている)他のデバイスは、急速に振動する先端を使用して組織を切断する。
【0005】
RFエネルギーを使用して切断する方法は、電流が(細胞のイオン成分によって支援されて)組織基質を通過するとき、組織を横切る電子の流れに対するインピーダンスが熱を生成するという原理を使用して動作する。純粋な正弦波が組織基質に加えられると、組織内の水分を蒸発させるのに十分な熱が細胞内で生成される。したがって、細胞膜によって制御できない細胞の内圧の大きな上昇があり、その結果、細胞の破裂が生じる。これが広い範囲にわたって発生すると、組織が切断されていることがわかる。
【0006】
RF凝固は、効率の低い波形を組織に加えることにより動作し、それによって、細胞の内容物は蒸発する代わりに約65℃に加熱される。これにより、組織を乾燥によって完全に乾かすとともに、血管壁のタンパク質及び細胞壁を構成するコラーゲンを変性させる。タンパク質の変性は凝固カスケードに対する刺激として作用するため、凝固が促進される。同時に、壁のコラーゲンは棒状の分子からコイル状に変性する。これにより、血管が収縮してサイズが小さくなり、血餅にアンカーポイントを与え、より小さな領域が塞がれる。
【0007】
生体組織への熱エネルギーの適用は、細胞を殺傷する効果的な方法でもある。例えば、マイクロ波の適用は、生体組織を加熱し、したがって、生体組織を焼灼(破壊)することができる。癌組織をこのようにして焼灼できるため、この方法は特に癌の治療に使用され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
最も一般的には、本発明は、組織の領域をマイクロ波エネルギーで焼灼し、RFエネルギーで同時に切除を行うことができる電気外科器具を提供する。具体的には、本発明は、正確で制御可能な切除を実行できるように、焼灼に適した方法で、(例えば、実質的に球状の場として)マイクロ波エネルギーを放出するように、及び、より焦点を絞った方法で、RFエネルギーを放出するように構成される器具先端にRF及びマイクロ波エネルギーの両方を伝送するための構造に関する。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、生体組織の切除及び焼灼のための高周波(RF)電磁(EM)エネルギー及びマイクロ波EMエネルギーを送達するための電気外科器具が提供され、マイクロ波エネルギーを伝送するための同軸伝送線であって、同軸伝送線が、内部導電性層、外部導電性層、及び内部導電性層を外部導電性層から分離する誘電体層を含み、内部導電性層が、ケーブル構造に沿った中空の縦通路の周りに形成されている、同軸伝送線と、中空の縦通路に沿って高周波エネルギーを伝送するための伝送線とを含む、エネルギー伝送ケーブル構造と、エネルギー伝送ケーブル構造の遠位端にある器具の先端であって、外部導体の遠位端を越えて縦方向に延びる誘電体先端素子であって、内部導体が、誘電体先端素子内で外部導体の遠位端を越えて縦方向に延びてマイクロ波放射器を形成する、誘電体先端素子と、誘電体の先端の遠位端に取り付けられたアクティブ電極及びリターン電極であって、アクティブ電極及びリターン電極が、伝送線に接続されて誘電体先端素子の遠位端でそれらの間のRF場を支持する、アクティブ電極及びターン電極とを含む、器具の先端とを含む。本発明のこの態様では、RFエネルギー及びマイクロ波エネルギーのための2つの伝送線構造があり、それぞれ所望の効果を提供する異なるエネルギー送達構造で終端する。
【0010】
マイクロ波エネルギーを伝送するための同軸伝送線は、第1の同軸伝送線であり得て、高周波エネルギーを伝送するための伝送線は、第2の同軸伝送線であり得る。第2の同軸伝送線は、縦通路を通って延びる最も内部の導電性素子、内部導電性層、及び内部導電性層を最も内部の導電性素子から分離する最も内部の誘電体層を含み得る。この構成では、アクティブ電極は内部導電性層に電気的に接続され得て、リターン電極は最も内部の導電性素子に電気的に接続され得る。最も内部の導電性素子と外部の導電性層は電気的に接地され得る。したがって、エネルギー伝送構造の遠位端では、内部導電性層及び外部導電性層によって送達されるマイクロ波エネルギーによって焼灼を実施し得る。RF切断/切除は、最も内部の導電性素子と内部導電性層との間で送達されるエネルギーを使用して実行され得る。
【0011】
伝送線は、誘電体層によって分離された3つの導電性素子を含む三軸構造によって提供され得る。最も内部の導電性層と最も外部の導電性層は接地されており、中間(内部)導電性層は各伝送線の信号導体である。
【0012】
別の例では、RFを伝送するための伝送線は、中空の縦通路内に完全に含まれ得る。例えば、高周波エネルギーを伝送するための伝送線は、中空の縦通路を通って延びる一対のワイヤであり得る。一対のワイヤは、例えば、内部導体からの絶縁を確保するために、電気絶縁シースに収容され得る。
【0013】
エネルギー伝送ケーブル構造は、外科用スコープデバイス(例えば、内視鏡、気管支鏡、胃鏡、腹腔鏡など)の柔軟な挿入チューブを通って挿入可能であり得る。具体的には、三軸積層構造は、そのようなスコープデバイスの器具チャネルに挿入可能であり得る。したがって、エネルギー伝送ケーブル構造は、器具チャネルに適合するように寸法を作成し得る。例えば、それは、3mm以下の外径を有し得る。
【0014】
第1の同軸伝送線は、マイクロ波エネルギーを伝送するように配置され得る。損失を最小限に抑えるために、より大きな直径を有する同軸伝送線によりマイクロ波エネルギーを伝送させることが望ましい。
【0015】
第2の同軸伝送線は、RFエネルギーを伝送するように配置され得る。したがって、内部導体は、RF伝送バイポーラ伝送線の第1(アクティブ)極を形成し、最も内部の導電性素子は、RF伝送バイポーラ伝送線の第2(リターン)極を形成する。
【0016】
最も内部の導電性素子は、導電性ワイヤまたはロッドであり得る。代替的または追加的に、最も内部の導電性素子は、器具チャネルを通過する別の構成素子と統合され得る。例えば、エネルギー伝送構造の遠位端に液体または気体を供給するために使用されるチューブ、または、例えば、ガイドワイヤまたはプルワイヤの制御ワイヤのハウジングは、導電性材料で形成またはコーティングされ得て、最も内部の導電性素子として機能し得る。
【0017】
本発明では、より高い電圧の高周波信号が外部の導電性層に沿って戻るのを防ぐため、及び/またはマイクロ波信号が最も内部の導電性素子に沿って戻るのを防ぐために、エネルギー伝送構造の遠位端にダイプレクサなどの構成を提供する必要があり得る。追加的または代替的に、RF及びマイクロ波エネルギーが、RF及びマイクロ波チャネルに確実に分割されるように、エネルギー伝送構造の近位端にダイプレクサを設け得る。
【0018】
内部誘電体層及び/または外部誘電体層はそれぞれ、誘電体材料の固体チューブまたは多孔質構造を有する誘電体材料のチューブを含み得る。誘電体の固体チューブであることは、誘電体が実質的に均質であることを意味し得る。多孔質構造を有するということは、誘電体材料が実質的に不均一であり、かなりの数または量の空洞部分または隙間を有することを意味し得る。例えば、多孔質構造は、ハニカム構造、メッシュ構造、または発泡構造を意味し得る。誘電体材料は、PTFE、または別の低損失マイクロ波誘電体を含み得る。誘電体材料は、少なくとも0.2mm、好ましくは少なくとも0.3mm、より好ましくは少なくとも0.4mm、例えば、0.3~0.6mmの間の壁厚を有するチューブを含み得る。
【0019】
内部導電性層及び/または外部導電性層は、材料のチューブの内側または外側の金属コーティング、材料のチューブの内側または外側に対して配置された金属の固体チューブ、または、材料のチューブに埋め込まれた編組導電性材料の層を含み得る。内部導電性層及び/または外部導電性層は、銀コーティングを含み得る。内部導電性層及び/または外部導電性層は、約0.01mmの厚さを有し得る。
【0020】
一構成では、エネルギー伝送構造は、複数の層、例えば、中空の内部管状層(内部誘電体層)、中空の内部管状層の外部表面上の導電性材料の層(内部導電性層)、導電性材料の外部表面上の誘電体材料のチューブ(誘電体層)、及び、誘電体材料のチューブの外部表面上の導電材料の層(外部導電性層)として製造され得る。最も内部の導電性素子は、中空の内部管状層を通過するロッドまたはワイヤまたは導電性材料であり得る。いくつかの実施形態では、内部誘電体層は、最も内部の導電性素子の上に形成され得る。構造は、これらの層の一部またはすべての間に空隙を含んでも含まなくてもよい。空隙を回避する利点は、ケーブルの損失を最小限に抑え得ることである。一例では、この構造は、先行する(内部の)層の上に後続の各層を順次コーティングすることにより製造することができる。あるいは、この構造は、1つまたは複数の層を第1の部分として、1つまたは複数の層を第2の部分として形成し、一方の部分を他方の内側にスライドさせることによって作成できる。中空の内部管状層は、好ましくはポリイミドを含むが、PTFEまたは他の適切な絶縁材料であり得る。中空の内部管状層は、0.1mmの厚さを有し得る。
【0021】
本明細書では、「内部」という用語は、層状構造の中心(例えば、軸)に半径方向により近いことを意味する。「外部」という用語は、層状構造の中心(軸)から半径方向に遠いことを意味する。
【0022】
本明細書では、「導電性」という用語は、文脈がそれ以外を指示しない限り、電気的に伝導性であることを意味するために使用される。
【0023】
本明細書では、「近位」及び「遠位」という用語は、それぞれ治療部位から遠い、及び治療部位により近いエネルギー伝送構造の端部を指す。したがって、使用中、近位端はRF及び/またはマイクロ波エネルギーを提供するための発生器により近く、一方、遠位端は治療部位、すなわち、患者により近い。
【0024】
エネルギー伝送構造の遠位端では、器具のチャネルが放射体先端を通って延びるように、器具の先端を外部誘電体層に同一直線上に固定し得る。言い換えれば、縦通路は、誘電体先端素子を通って延び、器具を通る流体流路を提供する。
【0025】
好ましくは、放射体先端は、外部誘電体層と同じ内部及び外部寸法を有し得る。誘電体先端素子は、セラミック材料で作製され得る。最も内部の導電性素子、内部誘電体層、及び内部導電性層は、放射体先端を通って延在し得る。このようにして、放射体先端は、エネルギー伝送構造の遠位端にマイクロ波放射体を提供し得る。RF切断は、最も内部の導電性素子と内部導電性層との間の領域の放射体先端の端部でも行われ得る。放射体先端は、例えば、球状の焼灼領域を生成するために、球状パターンでマイクロ波エネルギーを放射するように構成され得る。いくつかの実施形態では、放射体先端の弓状部分は、器具チャネルに露出している。例えば、内部誘電体及び内部導体は、放射体先端を完全に貫通し得ない。好ましくは、最も内部の導電性素子の最遠位端は、放射体先端の露出したセクターと接触するように互い違いに配置される。このようにして、RFエネルギーがエネルギー伝送構造を通って伝送されると、最も内部の導電性素子と内部導体との間の領域でRF切断または切除が行われ得る。
【0026】
器具は、RF EMエネルギー及びマイクロ波EMエネルギーを供給するように配置された電気外科発電機を含む電気外科装置の一部を形成し得る。この装置では、機器は、エネルギー伝送ケーブル構造がマイクロ波EMエネルギーを第1の同軸伝送線を介して、RFエネルギーを第2の同軸伝送線を介して伝送するように配置される方法で発電機に接続される。
【0027】
本発明の第2の態様によれば、生体組織の切除及び焼灼のためにRF EMエネルギー及びマイクロ波EMエネルギーを送達するための電気外科器具が提供され、RF EMエネルギー及びマイクロ波EMエネルギーを伝送する同軸伝送線であって、同軸伝送線が、内部導電性層、外部導電性層、及び内部導電性層を外部導電性層から分離する誘電体層を含む、同軸伝送線と、エネルギー伝送ケーブル構造の遠位端にある球状の器具の先端であって、内部導電性層に電気的に接続された第1の導電性半球と、外部導電性層に電気的に接続された第2の導電性半球と、第1の導電性半球と第2の導電性半球との間の物理的分離間隙に位置する平面誘電体層と、を備える器具の先端と、を備え、第1の導電性半球及び第2の導電性半球が、マイクロ波EMエネルギーを実質的に球状の場として放射し、RF EMエネルギーを送達するために分離間隙の両側にそれぞれアクティブ電極及びリターン電極を提供するように構成される。本発明のこの態様は、球状の器具の先端が、マイクロ波エネルギーとRFエネルギーとでは異なるように「現れる」方法を利用する。マイクロ波エネルギーの場合は、放射された球状の場の連続した導電性球のように現れる。RFエネルギーの場合、平行平板コンデンサのように現れて、半球間の間隙のエッジの周りに放射される電界を使用して、生体組織を切除できる。したがって、切断及び切除は、例えば、器具の先端に取り付けられたプルワイヤまたはガイドワイヤによって、ユーザーが制御でき得る。
【0028】
この態様では、器具の先端は球状であるが、先端は、結果として生じる所望の場の形状に応じて異なる形状をとることができる。
【0029】
器具は、外科用スコープデバイスの器具チャネルを通って挿入可能であり得る。例えば、球状の器具先端は、3mm以下の直径を有し得る。
【0030】
第1の導電性半球及び第2の導電性半球は、平面誘電体層に対称的に取り付けられ得る。これらは、中間コネクタを介して同軸伝送線に接続し得る。例えば、器具は、平面誘電体層の第1の表面に取り付けられた第1の電気コネクタを含み得て、第1の電気コネクタは、内部導電性層を第1の導電性半球に電気的に接続する。器具は、第1の表面の反対側の平面誘電体層の第2の表面に取り付けられた第2の電気コネクタをさらに含み、第2の電気コネクタは外部導電性層を第2の導電性半球に電気的に接続する。
【0031】
同軸伝送線は、流体を器具先端に運ぶための流体流路を含み得る。器具の先端は、流体流路に接続された流体流出口を含み得る。流体流路は、平面誘電体層を通って延在し得る。
【0032】
次に、本発明の実施形態を、添付図面を参照して例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施形態である、マイクロ波焼灼及びRF切除を組み合わせた電気外科器具のためのエネルギー伝送構造の概略断面図である。
【
図2】本発明の実施形態である、マイクロ焼灼及びRF切除を組み合わせた電気外科器具のための代替の先端構造の概略図である。
【
図3A】本発明の別の実施形態である、マイクロ波焼灼及びRF切除を組み合わせた電気外科器具の先端構造の側面図、正面図及び軸方向断面を含む図である。
【
図3B】本発明の別の実施形態である、マイクロ波焼灼及びRF切除を組み合わせた電気外科器具の先端構造の側面図、正面図及び軸方向断面を含む図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本発明による、エネルギー伝送構造100の概略断面図を示す。エネルギー伝送構造100は、侵襲的な電気外科手術のための外科用スコープデバイスの柔軟な挿入チューブに挿入可能である。エネルギー伝送構造100は、挿入管に沿って延びる器具の縦軸に対して同軸に配置された複数層の三軸層構造を含む。
【0035】
多層同軸構造は、スコープデバイスの器具チャネル102を形成するために中空である最も内部の誘電体層(明確にするために
図1からは省略)を含み得る。内部導電性層104は、最も内部の誘電体層上に形成される。外部導電性層106は、内部導電性層104と同軸に形成され、中間誘電体層108は、内部導電性層104と外部導電性層106を分離する。内部導電性層104、中間誘電体層108及び外部導電性層106は、第1の同軸伝送線を形成する。本発明の一実施形態によれば、器具チャネル102内に、この実施形態では、薄い金属ワイヤまたはフィラメントである、最も内部の導電性素子110がある。内部導電性層104、最も内部の誘電体層及び最も内部の導電性素子110は、第2の同軸伝送線を形成する。
【0036】
エネルギー伝送構造100の近位端には、構造100を発電機(図示せず)に接続するためのコネクタ112がある。コネクタと発電機の間に中間同軸ケーブルが存在し得る。発電機は、多層構造体によってエネルギー伝送構造体100の遠位端に伝送される高周波(RF)及び/またはマイクロ波エネルギーを生成するように構成され得る。
【0037】
(例えば、内部導電性層104、外部導電性層106及び外部誘電体層108によって形成される)第1の同軸伝送線は、マイクロ波エネルギー114を伝送するように配置され得る。(内部導電性層104、最も内部の導電性素子110及び最も内部の誘電体層によって形成される)第2の同軸伝送線は、伝送RFエネルギーを伝送するように配置され得る。外部導電性層106及び最も内部の導電性層110は接地され、それによって、内部導電性層は、第1及び第2の伝送線の両方の信号導体である。したがって、第2の伝送線は、接地された導体が通常最も外部にある従来の同軸構造から反転される。
【0038】
エネルギー伝送構造100の近位端には、発生器からのRF及びマイクロ波エネルギーをそれぞれの伝送線に接続すると共に、伝送線間の信号の漏れを防ぐように作用するダイプレクサ116がある。
【0039】
セラミック材料で作られた放射体先端118は、エネルギー伝送構造100の最遠位端に配置される。放射体先端118は、外部誘電体層108と同一直線上に位置する中空円筒であり、外部誘電体層108と同じ内部及び外部寸法を有する。それによって、最も内部の導電性素子110、内部導電性層104、及び内部誘電体層は、放射体先端118を通って延びることができるが、外部導電性層106は、外部誘電体層108の端部または端部の周りで終端する。この構成により、マイクロ波エネルギーが構造100に沿って伝送されると、マイクロ波エネルギーは先端118から概して球状のパターンで放射される。これにより、組織の概して球状の領域にマイクロ波焼灼が生じ得る。
【0040】
最も内部の導電性素子110は、放射体先端118の中空内部を通って延び、放射体先端118の遠位端で露出されるリターン電極124で終端する。リターン電極は、デバイスの縦軸から半径方向に変位させ得て、それによって、最も内部の導電性素子110に必要な電気接続を行うための段差がある。一例では、リターン電極は、放射体先端118を通る通路の内面に取り付けられている。内部導電性層104は、放射体先端118の中空内部を通って延在する遠位延長部を含み、放射体先端の遠位端でリターン電極124に対向するアクティブ電極126を形成し得る。RFエネルギーが構造体100を介して伝送されると、アクティブ電極126とリターン電極124との間にRF電界が設定され、放射体先端の遠位端の領域122で切断または切除を行うことができる。
【0041】
図2は、本発明の実施形態である、マイクロ焼灼及びRF切除を組み合わせた電気外科器具のための代替の先端構造200の概略図である。先端構造200は、第1の半球202及び第2の半球204を有する実質的に球状の放射体を含み、第1の半球202及び第2の半球204はそれぞれ導電性材料でできている。例えば、各半球は金属材料またはシェルから作られ得る。第1の半球202及び第2の半球204は、第1の半球202、第2の半球204及び誘電体材料206が実質的に球状の構造を形成するように、誘電体材料206によって分離される。誘電体材料206の層は、厚さが0.5mm未満であり得る。第1の電極208は、第1の半球202の内面に接続され、第2の電極210は、第2の半球204の内面に接続される。このようにして、第1の電極208及び第2の電極210は、誘電体材料206の層を挟んで対向する。第1の電極208及び第2の電極210は、それぞれの各半球の底部の少なくとも一部を覆う。いくつかの実施形態では、第1の電極208及び第2の電極210は、それぞれの半球の底部の実質的にすべてを覆い得る。
【0042】
電極208、210は、同軸給電ケーブル(図示せず)の内部導体と外部導体にそれぞれ接続されている。他の実施形態では、電極208、210は省略され得て、各半球は、内部導体及び外部導体のそれぞれに接続されて方向付けられ得る。同軸給電ケーブルは、上記の方法で発生器からRF及びマイクロ波エネルギーを伝送するように配置されている。
図2に示される球状先端構造は、外科用スコープデバイスの器具チャネル内に適合するように寸法を作成し得る。
【0043】
先端構造200は、異なる方法で同軸ケーブルからRF及びマイクロ波エネルギーを送達するような寸法に作成し得る。マイクロ波周波数では、別々の半球は電気的に単一の球のように現れる。したがって、先端構造200に送達されるマイクロ波エネルギーは、第1の半球202及び第2の半球204によって実質的に球状のパターンで放射され得る。このようにして、先端構造200は、組織の概して球状の領域を焼灼することができる。
【0044】
しかし、高周波では、先端構造200は電気的に平行平板コンデンサのように現れる。この場合、半球に供給されるRFエネルギーは、切断または切除を実行することができる誘電体層206によって形成された間隙にRF場を設定する。したがって、先端構造200は、RF切断及び切除を実行することができ、切除は誘電体層206の平面内で実行されるため、器具の動きによって制御することができる。例えば、器具は、切断が異なる平面で実行されるように回転可能であり得る。
【0045】
先端構造200はまた、流体(例えば、治療用のプラズマを形成するための、例えば、生理食塩水または気体)を送達するように配置され得る。流体流出口212は、治療部位に流体を導入するために平面誘電体層206に形成され得る。流体流出口212は、同軸供給ケーブル内の流体通路と流体連通し得る。いくつかの例では、同軸給電ケーブルは、中空の同軸伝送線、すなわち、中空の内部導体を含む同軸伝送線を含み得る。流体通路は、中空の内部導体内であり得る。
【0046】
図3Aは、本発明の別の実施形態である電気外科器具先端300の側面図及び正面図を示す。
図3Bは、その概略断面図である。器具は、電気絶縁性の誘電体材料304によって外部導体308から分離された中空の内部導体310を含む同軸伝送線として構成される。先端の遠位部分では、内部導体310及び誘電体材料304は、外部導体の遠位端及び保護スリーブ302を越えて突出し、マイクロ波アンテナを形成する。したがって、同軸ケーブルの近位端にある発電機(図示せず)から送達されるマイクロ波エネルギーは、先端の遠位部分で放出され得る。
【0047】
中空の内部導体31は、一対の導電性ワイヤ314が延びるチャネル312を提供する。ワイヤ314は、誘電体材料304の遠位端面に形成された一対の電極306の遠位端で終端する。ワイヤ314は、伝送される高周波(RF)エネルギー、例えば、ツイストペアなどのための任意の適切な伝送線構造を形成し得る。ワイヤは、チャネル312を通って伝送される電気絶縁シース316に埋め込まれるか、または収容され得る。一対の電極306は、それぞれのワイヤ314にそれぞれ接続されて、RFエネルギーを送達するためのアクティブ電極及びリターン電極を形成する。電極306は、器具が組織を通って挿入される際のRF切除を促進するために、器具先端の遠位面を横切るRFエネルギーの優先電流経路を促進する。