(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】表皮材の溶着装置及び溶着方法
(51)【国際特許分類】
B29C 53/04 20060101AFI20230629BHJP
B29C 65/08 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B29C53/04
B29C65/08
(21)【出願番号】P 2023521957
(86)(22)【出願日】2023-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2023006308
【審査請求日】2023-04-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000195649
【氏名又は名称】精電舎電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003937
【氏名又は名称】弁理士法人前川知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】河本 将総
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-193831(JP,A)
【文献】特開2022-159503(JP,A)
【文献】特開平07-205301(JP,A)
【文献】特開平10-102783(JP,A)
【文献】特開2002-234074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00 - 65/82
B29C 53/00 - 53/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮材で基材の端縁部を巻き込んで、前記基材の裏側表面に前記表皮材を溶着する溶着装置において、
ベース部と、
前記ベース部を移動するベース部移動手段と、
前記ベース部に接続し、溶着する前記基材に接しない前記表皮材の第1の面に密着する第1の平面と、前記表皮材の前記第1の面と対向し前記基材に接する第2の面に密着する第2の平面とで前記表皮材を把持する把持部と、
前記ベース部に接続し、前記把持部に対して第1の方向に位置する第1の移動手段と、
前記第1の移動手段に接続し、超音波振動により前記表皮材を前記基材に溶着する工具ホーンと、を有し
前記工具ホーンは、
前記ベース部移動手段が、前記把持部が前記表皮材を把持した状態で前記表皮材を、前記第1の方向から離れる第2の方向に前記第2の面が前記基材の前記端縁部を巻き込み、前記把持部の前記第1の平面で前記第2の面を前記基材の裏側表面に密着させながら前記端縁部から離れる方向に引っ張った状態になるように前記ベース部を移動したあとに、前記第1の移動手段により移動して前記表皮材の前記第1の面を押圧し、超音波振動により前記基材を前記表皮材に溶着することを特徴とする溶着装置。
【請求項2】
前記表皮材を前記基材の前記端縁部から離れる方向に引っ張る引っ張り力を検知するセンサを備える請求項1に記載の溶着装置。
【請求項3】
前記センサは、前記表皮材を前記基材の前記端縁部から離れる方向に引っ張る複数の引っ張り力を検知する請求項2に記載の溶着装置。
【請求項4】
前記把持部の前記第1の平面には第1の空間部が形成され、前記第2の平面には第2の空間部が形成され、前記第1の平面と前記第2の平面とが密着した際に、前記第1の空間部と前記第2の空間部は、前記第1の平面と前記第2の平面とを貫通する空間を形成するように配置された請求項1に記載の溶着装置。
【請求項5】
表皮材で基材の端縁部を巻き込んで、前記基材の裏側表面に前記表皮材を溶着する溶着
方法であって、
ベース部と、
前記ベース部を移動するベース部移動手段と、
前記ベース部に接続し、溶着する前記基材に接しない前記表皮材の第1の面に密着する第1の平面と、前記表皮材の前記第1の面と対向し前記基材に接する第2の面に密着する第2の平面とで前記表皮材を把持する把持部と、
前記ベース部に接続し、前記把持部に対して第1の方向に位置する第1の移動手段と、
前記第1の移動手段に接続し、超音波振動により前記表皮材を前記基材に溶着する工具ホーンと、を有
する溶着装置を用い、
前記把持部が、前記表皮材を把持する工程と、
前記ベース部が、前記表皮材を、前記第1の方向から離れる第2の方向に前記第2の面が前記基材の前記端縁部を巻き込み、前記把持部の前記第1の平面で前記第2の面を前記基材の裏側表面に密着させながら前記端縁部から離れる方向に引っ張った状態になるように移動
する工程と、
前記工具ホーンが、前記第1の移動手段により移動して前記表皮材の前記第1の面を押圧し、超音波振動により前記基材を前記表皮材に溶着する
工程とを備える
ことを特徴とする溶着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基材の表面を覆う表皮材を、基材の裏側に巻き込んで溶着する溶着装置及び溶着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装品のように、剛性を有する基材の表側に、例えばシート状の柔軟性を有する表皮材が装着された表皮装着部材が多数存在している。この表皮装着部材は、剛性を有する基材と柔軟性を有する表皮材とを別々の工程で製造し、その後の工程で両者を接着して一体化しているものである。
【0003】
表皮材は柔軟性があることから、基材に接着して一体化する際には、表皮材に皺がよらないように基材に対して引っ張りテンションを与えた状態で接着する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-209582
【文献】特開2017-80948
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表皮材を基材に対して引っ張る方法は、表皮材を基材に接着して一体化した後の接着品質に大きく影響するため、表皮材の引っ張り方、表皮材の引っ張り力の維持の仕方が重要となる。また、表皮材の引っ張り方、引っ張り力の維持の精度をあげることで、製造品質の向上、接着の歩留まりの改善が求められている。
【0006】
本開示は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、基材の表面を覆う表皮材を、基材の裏側に巻き込んで一体化するために溶着する溶着装置において、超音波振動を用いて表皮材を基材に溶着して一体化する際の、表皮材の引っ張り方、表皮材の引っ張り力の維持の仕方を制御することで、表皮材を基材に良好に溶着する溶着装置及び溶着方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の溶着装置は、
表皮材で基材の端縁部を巻き込んで、前記基材の裏側表面に前記表皮材を溶着する溶着装置において、
ベース部と、
前記ベース部を移動するベース部移動手段と、
前記ベース部に接続し、溶着する前記基材に接しない前記表皮材の第1の面に密着する第1の平面と、前記表皮材の前記第1の面と対向し前記基材に接する第2の面に密着する第2の平面とで前記表皮材を把持する把持部と、
前記ベース部に接続し、前記把持部に対して第1の方向に位置する第1の移動手段と、
前記第1の移動手段に接続し、超音波振動により前記表皮材を前記基材に溶着する工具ホーンと、を有し
前記工具ホーンは、
前記ベース部移動手段が、前記把持部が前記表皮材を把持した状態で前記表皮材を、前記第1の方向から離れる第2の方向に前記第2の面が前記基材の前記端縁部を巻き込み、前記把持部の前記第1の平面で前記第2の面を前記基材の裏側表面に密着させながら前記端縁部から離れる方向に引っ張った状態になるように前記ベース部を移動したあとに、前記第1の移動手段により移動して前記表皮材の前記第1の面を押圧し、超音波振動により前記基材を前記表皮材に溶着することを特徴とする溶着装置である。
【発明の効果】
【0008】
基材の表面を覆う表皮材を、基材の裏側に巻き込んで一体化するために溶着する溶着装置において、超音波振動を用いて表皮材を基材に溶着して一体化する際の、表皮材の引っ張り方、表皮材の引っ張り力を維持の仕方を制御することで、表皮材を基材に良好に溶着する溶着装置及び溶着方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置の全体構成の一例を示す図である。
【
図2】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置の把持部の形状の一例を示す図である。
【
図3】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置を用いて表皮材を把持する動作の一例を示す図である。
【
図4】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置を用いて表皮材を把持する動作の他の例を示す図である。
【
図5】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置を用いて表皮材を把持する動作の他の例を示す図である。
【
図6】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置が、表皮材を把持した状態で溶着する位置まで移動する様子の一例を示す図である。
【
図7】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置が、表皮材の端末部分を把持する動作の処理フローの一例を示す図である。
【
図8】本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置が、表皮材を基材に溶着する動作の処理フローの一例を示す図である。
【
図9】本開示の第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置の把持部の形状の一例を示す図である。
【
図10】本開示の第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置の把持部に棒状の突起を貫通させた様子の一例を示す図である。
【
図11】本開示の第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置を用いて表皮材を把持する動作の一例を示す図である。
【
図12】本開示の第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置を用いて表皮材を把持する動作の他の例を示す図である。
【
図13】本開示の第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置を用いて表皮材を把持する動作の他の例を示す図である。
【
図14】本開示の第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置が、表皮材を把持した状態で溶着する位置まで移動する様子の一例を示す図である。
【
図15】本開示の第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置が、表皮材を把持する動作の処理フローの一例を示す図である。
【
図16】本開示の第2の実施形態に係る超音波溶着装置の全体構成の一例を示す図である。
【
図17】本開示の第2の実施形態に係る超音波溶着装置のベース部、バネ及びセンサ部を拡大して示す図である。
【
図18】本開示の第2の実施形態に係る超音波溶着装置のセンサの詳細を示す図である。
【
図19】本開示の第2の実施形態に係る超音波溶着装置を用いて表皮材を引っ張る際の、把持部が表皮材を引っ張る力、それによる超音波溶着装置21に加わる外力の様子を示す図である。
【
図20】本開示の第2の実施形態に係る超音波溶着装置が、表皮材を把持する動作の処理フローの一例を示す図である。
【
図21】本開示の第2の実施形態に係る超音波溶着装置のセンサプレートの形状の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る溶着装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、説明の便宜上、ベース部2の延在方向を上下方向(Z軸の±方向)として説明するが、溶着装置の向きは6軸ロボットのロボットアーム7により自在に変化するものである。
【0011】
(本開示の第1の実施形態)
図1に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1の全体構成の一例を示す。
【0012】
本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、ベース部2、ベース部2に接続し溶着ユニット4及び把持部5を上下方向(Z軸の±方向)に移動が可能な移動手段3、超音波振動により基材に表皮材を溶着する溶着ユニット4、表皮材を把持する把持部5、ベース部2の上端に接続し6軸ロボットのロボットアーム7を取り付ける取付け部6、取付け部6を介してベース部2を自由自在に移動する6軸ロボットのロボットアーム7を備える。ベース部2、移動手段3、溶着ユニット4及び把持部5を合わせて装置本体と呼ぶ。
【0013】
ベース部2は、垂直方向に立設した角柱状の垂直部2a、垂直部2aの側面から水平方向一側に延設した接続部2bから成る。
垂直部2aは、延設された接続部2bを介して第1の移動手段3aを保持する。また垂直部2aは、把持部5の保持部5cと接続し、把持部5全体を保持する。
【0014】
移動手段3は、第1の移動手段3a、第1の接続部3a1、第2の移動手段3b及び第2の接続部3b1から成る。
第1の移動手段3aは、接続部2bを介してベース部2の垂直部2aと接続し、内部にあるアクチュエータにより上下方向(Z軸の±方向)に移動するエアーシリンダに接続した第1の接続部3a1を、上下方向(Z軸の±方向)に移動可能である。
第2の移動手段3bは、把持部5の保持部5cと接続し、内部にあるアクチュエータにより上下方向(Z軸の±方向)に移動するエアーシリンダに接続した第2の接続部3b1を、上下方向(Z軸の±方向)に移動可能である。
【0015】
第1の接続部3a1は、第1の移動手段3aのエアーシリンダと溶着ユニット4とを接続する接続部である。第1の接続部3a1は、第1の移動手段3aの動作により上下方向(Z軸の±方向)に移動することで、溶着ユニット4をベース部2に対して上下方向(Z軸の±方向)に移動可能である。
第2の接続部3b1は、第2の移動手段3bのエアーシリンダと第2の把持部5bとを接続する接続部である。第2の接続部3b1は、第2の移動手段3bの動作により上下方向(Z軸の±方向)に移動することで、第2の把持部5bを上下方向(Z軸の±方向)に移動可能である。
【0016】
溶着ユニット4は、超音波振動を発振する振動部4aと振動部4aの発振により超音波振動する工具ホーン4bから成る。
振動部4aは、第1の接続部3a1を介して第1の移動手段3aと接続し、第1の移動手段3aが第1の接続部3a1を上下方向(Z軸の±方向)に移動することで、上下方向(Z軸の±方向)に移動可能である。
工具ホーン4bは、振動部4aと接続しており、振動部4aの発振により超音波振動を行う。これにより溶着ユニット4は、ベース部2に対して上下方向(Z軸の±方向)に移動可能である。
【0017】
把持部5は、第1の把持部5a、第2の把持部5b及び保持部5cから成る。
第1の把持部5aは、ベース部2の垂直部2aの下端から延出した保持部5cとその先端で接続し、下方に板状に延びる。
第2の把持部5bは、第2の移動手段3bの第2の接続部3b1を介して保持部5cと接続する。第2の把持部5bは、第2の移動手段3bが第2の接続部3b1を上下方向(Z軸の±方向)に移動することで、保持部5cに対して上下方向(Z軸の±方向)に移動可能である。
保持部5cは、ベース部2の垂直部2aとその下端で接続し、接続部2bが垂直部2aの側面から延設した方向に水平に板状に延出した一端で第1の把持部5aと接続する。また保持部5cは、接続部2bが垂直部2aの側面から延設した方向と逆の方向に水平に板状に延出した一端で第2の移動手段3bと接続する。これにより把持部5の第2の把持部5bは、保持部5cが接続するベース部2に対して上下方向(Z軸の±方向)に移動可能である。
【0018】
このように保持部5cは、その一端で第1の把持部5aと接続し、その他端で第2の移動手段3bの第2の接続部3b1を介して第2の把持部5bと接続することで、把持部5全体を保持する。
【0019】
第1の把持部5aは、水平部5a1と垂直部5a2から成り、第2の把持部5bは、水平部5b1と垂直部5b2から成る。第1の把持部5a、第2の把持部5bの構造については、
図2を用いて詳細に説明する。
【0020】
取付け部6は、下面がベース部2の垂直部2aの上端と接続し、上面が6軸ロボットのロボットアーム7と接続可能な構造になっている。
【0021】
ロボットアーム7(ベース部移動手段とも呼ぶ)は、その先端が取付け部6の上面に取り付け可能な構造になっており、任意の方向に移動可能である。ロボットアーム7は、取付け部6を介してベース部2を自由自在に移動することで装置本体を自由自在に移動可能としている。
また、移動手段3、溶着ユニット4及び6軸ロボットのロボットアーム7は、6軸ロボット内にある制御手段10により制御される。
【0022】
制御手段10は、第1の移動手段3a、第2の移動手段3b、溶着ユニット4を、各々独立して動作させることが可能である。例えば、制御手段10は、第2の移動手段3bを動作させて第2の把持部5bを下動し、第1の把持部5aとで表皮材を把持した後に、第1の移動手段3aを動作させて溶着ユニット4を下動し、工具ホーン4bの先端で表皮材を押圧して超音波振動を加えることで表皮材を基材に超音波溶着をすることが可能である。また制御手段10は、工具ホーン4bを超音波振動することで表皮材を基材に溶着をしている間に、第2の移動手段3bを動作させて第2の把持部5bを上動し、第1の把持部5aと第2の把持部5bとで表皮材を把持している状態を解放してもよい。
【0023】
図2に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1の把持部5の形状の一例を示す。
【0024】
第1の把持部5aは、水平方向に広がる矩形状平面である水平部5a1と垂直方向に広がる矩形状平面である垂直部5a2から成りL字型を形成している。また第2の把持部5bも同様に、水平方向に広がる矩形状平面である水平部5b1と垂直方向に広がる矩形状平面である垂直部5b2から成りL字型を形成している。
【0025】
第1の把持部5aの水平部5a1は、第2の把持部5bの水平部5b1の移動方向上に配置されているため、第2の移動手段3bの動作に伴い第2の把持部5bの水平部5b1が移動することで、互いに対向する第1の把持部5aの水平部5a1の上面と第2の把持部5bの水平部5b1の下面とが密着する。
【0026】
把持部5は、このように第1の把持部5aの水平部5a1と第2の把持部5bの水平部5b1とが互いに並行して対向する位置関係にあるため、第2の把持部5bが第1の把持部5aに向けて相対的に移動することで、第1の把持部5aの水平部5a1の上面と第2の把持部5bの水平部5b1の下面の間に配置された表皮材を確実に把持することができる。
【0027】
なお
図2に示す第1の把持部5aの形状及び第2の把持部5bの形状は、表皮材を確実に把持するための形状の一例であり、その先端がL字型の形状であることに限定されない。第1の把持部5aの形状及び第2の把持部5bの形状は、第1の把持部5aの水平部5a1の上面と第2の把持部5bの水平部5b1の下面の間に配置された表皮材を確実に把持することができればいずれの形状であってもよい。
【0028】
図3に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1を用いて表皮材100を把持する動作の一例を示す。
【0029】
図3(A)は、超音波溶着装置1が、表皮材100を把持する処理を開始する前の、表皮材100と基材101が所定の場所に置かれた状態を示している。
表皮材100は、基材101の表側表面の形状に対して一回り大きい形状をなし、その一部は把持部5に把持される個所である端末部分100aとして突出した形状をなしている。
表皮材100は、基材101の端縁部101aから外側に延出するように余した状態となるように基材101の表側表面を覆った状態で、図中に示すように覆われた基材101の表側表面を下側(Z軸-方向)に向けた状態にして所定の場所に置かれる(表皮材100の裏面(基材101と接する面)が上側(Z軸+方向)に向けて置かれる)。表皮材100の端末部分100aは、把持部5で把持されやすいように全体が弛まないように張られた状態となっていることが望ましい。表皮材100の端末部分100a全体を弛まないように張られた状態とするために、例えば
図3(A)に矢印で示す方向に引っ張るような治具を表皮材100の端末部分100aの端縁に取り付けても良い。
【0030】
図3(B)は、超音波溶着装置1が、表皮材100の端末部分100aを第1の把持部5aの水平部5a1の上面に載置するように移動した状態を示している。
超音波溶着装置1は、ロボットアーム7の動作により、第1の把持部5aの水平部5a1と第2の把持部5bの水平部5b1との間隔を保ったまま、表皮材100の端末部分100aの表面(基材101と接しない面)を第1の把持部5aの水平部5a1の上面に載置するように移動する。
【0031】
図4に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1を用いて表皮材100を把持する動作の他の例を示す。
【0032】
図4(A)は、
図3(B)に続けて超音波溶着装置1が、表皮材100の端末部分100aを把持部5により把持した状態を示している。
第2の把持部5bは、第2の移動手段3bの動作により第1の把持部5aの方向に下動を開始し、第1の把持部5aの水平部5a1の上面と第2の把持部5bの水平部5b1の下面で表皮材100の端末部分100aを把持する。これにより表皮材100の表面(基材101と接しない面)は第1の把持部5aの水平部5a1の上面と密着し、表皮材100の裏面(基材101と接する面)は第2の把持部5bの水平部5b1の下面と密着する。
【0033】
なお表皮材100の端末部分100aを把持部5により把持した以降は、
図3(A)を用いて説明した治具を、表皮材100の端末部分100aの端縁から切り離してよい。
【0034】
図4(B)は、超音波溶着装置1が、表皮材100の端末部分100aを把持して移動している状態を示している。
超音波溶着装置1は、基材101に表皮材100を溶着する位置に工具ホーンの4bの先端を合わせるためにロボットアーム7の動作により、表皮材100の端末部分100aを把持した状態のまま表皮材100の裏面(基材101と接する面)が基材101の端縁部101aを巻き込むように移動する。
【0035】
図5に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1を用いて表皮材100を把持する動作の他の例を示す。
【0036】
図5(A)は、
図4(B)に続けて超音波溶着装置1が、基材101に表皮材100を溶着する位置の上方に工具ホーン4bの先端を合わせた状態を示している。
把持部5は、第1の把持部5aの水平部5a1の下面で表皮材100の裏面(基材101と接する面)を基材101の裏側表面に密着させながら、表皮材100の端末部分100aを把持した状態で基材101の端縁部101aから離れる方向に引っ張っている。
超音波溶着装置1は、
図5(A)の状態に続けて、第1の移動手段3aの動作により工具ホーン4bを下動し振動部4aを超音波発振して工具ホーン4bを超音波振動することで、基材101に表皮材100を溶着することができる。
【0037】
図5(B)は、
図5(A)に示す状態における、基材101に表皮材100を溶着する位置の例を詳細に示している。
図5(B)では、表皮材100とその端末部分100aとを点線部分に沿って分離した状態で表現している。基材101に表皮材100を溶着する位置は、
図5(B)に示す工具ホーン4bの先端が表皮材100の表面(基材101と接しない面)に密着している位置である、表皮材100のうち端末部分100aを除いた部分で端末部分100aを延出する部分に近い位置であることが望ましいが、これに限定されない。
また第1の把持部5aの水平部5a1の下面が、表皮材100の裏面(基材101と接する面)を基材101の裏側表面に密着させる位置は、表皮材100のうち端末部分100aを除いた部分で端末部分100aを延出する部分に近い位置が含まれていることが望ましいが、これに限定されない。
【0038】
図6に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1が、表皮材100を把持した状態で溶着する位置まで移動する様子の一例を示す。
【0039】
図6(A)は、第1の把持部5aの水平部5a1の上面に表皮材100の端末部分100aの表面(基材101と接しない面)を載置した状態を示しており、
図3(B)に示す状態に相当する。
表皮材100は、基材101の端縁部101aから外側に延出するように余した状態となるように基材101の表側表面の下(Z軸-方向)に敷かれ、端末部分100aの表面(基材101と接しない面)が第1の把持部5aの水平部5a1の上面に載置されている。
【0040】
図6(B)は、表皮材100の端末部分100aを把持した状態で、溶着する位置に超音波溶着装置1を移動している状態を示しており、
図4(B)に示す状態に相当する。
超音波溶着装置1は、ロボットアーム7の動作により、表皮材100の端末部分100aを把持した状態のまま表皮材100の裏面(基材101と接する面)が基材101の端縁部101aを巻き込むように移動する。
【0041】
図6(C)は、基材101に表皮材100を溶着する位置の上方に工具ホーン4bの先端を合わせた状態を示しており、
図5(A)に示す状態に相当する。
超音波溶着装置1は、表皮材100の裏面(基材101と接する面)が基材101の端縁部101aを巻き込み、端縁部101aから離れる方向(図中の矢印の方向)に引っ張られた状態となるように、ロボットアーム7を移動する。
ロボットアーム7の移動により表皮材100の端末部分100aは、
図6(C)に示すように第1の把持部5aの水平部5a1の上面及び下面を巻き込むような状態となり、第1の把持部5aの水平部5a1の上面と第2の把持部5bの水平部5b1の下面により確実に把持されるとともに、第1の把持部5aの水平部5a1の下面により表皮材100とその端末部分100aの裏面(基材101と接する面)が基材101の裏側表面に密着した状態となる。
【0042】
このように基材101に表皮材100を溶着する位置の上方に工具ホーン4bの先端を合わせた状態において、超音波溶着装置1は、表皮材100の端末部分100aを、第1の把持部5aの水平部5a1の上面と第2の把持部5bの水平部5b1の下面により確実に把持するとともに、第1の把持部5aの水平部5a1の下面により、溶着する基材101の裏側表面に表皮材100とその端末部分100aの裏面(基材101と接する面)を密着させ、この状態で基材101の裏側表面に沿って端縁部101aから離れる方向に表皮材100の端末部分100aを引っ張ることが可能となる。つまり、表皮材100の突出した部分の端末部分100aが折り畳まれて第1の把持部5aの水平部5a1を巻き込むことで、単に端末部分100aを上下で把持して引っ張るよりも強く把持し且つ強く引っ張ることができる。
これにより超音波溶着装置1は、溶着を開始する前に、基材101に表皮材100を溶着する位置の近傍において、基材101の裏側表面に沿って表皮材100を引っ張ることができ、かつその引っ張り力を確実に維持することができるため、溶着の品質を向上させ製造品質の向上を図ることができる。
【0043】
図7に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1が、表皮材100の端末部分100aを把持する動作の処理フローの一例を示す。
本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1の制御手段10は、把持処理開始の指示を受けると、把持処理を開始する。把持処理の開始の指示は、ユーザI/Fを介してのユーザによる指示であってもよい、あるいは外部入力I/Fを介しての外部からの指示であってもよい。
【0044】
制御手段10は、
図3(A)で示した状態で所定の位置に置かれている表皮材100の端末部分100aを、第1の把持部5aの水平部5a1の上面に載置するように装置本体を移動するよう、ロボットアーム7に動作を指示(Step1)する。ロボットアーム7は、制御手段10の指示に従い、表皮材100の端末部分100aの表面(基材101と接しない面)を第1の把持部5aの水平部5a1の上面に載置するように装置本体を移動する。第1の把持部5aが所定の位置に配置が完了した状態が、
図3(B)に示す状態に相当する。
【0045】
第1の把持部5aの水平部5a1の上面に表皮材100の端末部分100aの表面(基材101と接しない面)を載置すると、制御手段10は、表皮材100の端末部分100aを把持するために、第2の把持部5bを下動するように第2の移動手段3bに動作を指示(Step2)する。指示を受けた第2の移動手段3bは、内部にあるアクチュエータによりエアーシリンダに接続した第2の接続部3b1を移動させることで第2の把持部5bを、第1の把持部5aの水平部5a1の上面に載置された表皮材100の端末部分100aを把持するまで第1の把持部5aに向かって移動する。把持部5が表皮材100の端末部分100aを把持した状態が、
図4(A)に示す状態に相当する。
【0046】
制御手段10は、把持部5が表皮材100の端末部分100aを把持すると、把持した状態のまま表皮材100の裏面(基材101と接する面)が基材101の端縁部101aを巻き込むようにして、工具ホーン4bが溶着位置上方の所定の位置まで移動するようにロボットアーム7に動作を指示(Step3)する。ロボットアーム7は、制御手段10の指示に従い、表皮材100の裏面(基材101と接する面)が基材101の端縁部101aを巻き込みながら、工具ホーン4bが所定の位置に配置されるように装置本体を移動する。表皮材100の端末部分100aを把持部5で把持した状態のまま溶着位置上方に工具ホーン4bを移動している状態が、
図4(B)に示す状態に相当する。
【0047】
制御手段10は、工具ホーン4bが溶着位置の上方の所定の位置に移動すると、溶着処理(Step4)を開始する。工具ホーン4bが溶着位置の上方の所定の位置に移動した状態が、
図5(A)に示す状態に相当する。溶着処理(Step4)の処理フローは、
図8を用いて説明する。
【0048】
制御手段10は、溶着処理(Step4)を終了すると、把持している表皮材100の端末部分100aを解放するために第2の把持部5bを上動するよう第2の移動手段3bに動作を指示(Step5)する。指示を受けた第2の移動手段3bは、内部にあるアクチュエータによりエアーシリンダに接続した第2の接続部3b1を移動させることで第2の把持部5bを上動する。これにより表皮材100の端末部分100aは、第1の把持部5aの水平部5a1の上面と第2の把持部5bの水平部5b1の下面により把持されている状態から解放される。
【0049】
制御手段10は、さらに超音波溶着装置1を待機状態の位置に移動するように、ロボットアーム7に動作を指示(Step6)する。これにより制御手段10は、把持処理を終了する。
【0050】
図8に、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1が、表皮材100を基材101に溶着する動作の処理フローの一例を示す。
制御手段10は、
図7に示す把持処理のStep3で工具ホーン4bを溶着位置の上方の所定の位置に移動すると、溶着処理(Step4)を開始する。
【0051】
制御手段10は、工具ホーン4bを下動して先端を表皮材100の表面(基材101と接しない面)に密着させるよう第1の移動手段3aに動作を指示(Step41)する。指示を受けた第1の移動手段3aは、内部にあるアクチュエータによりエアーシリンダに接続した第1の接続部3a1を移動させることで工具ホーン4b(溶着ユニット4)を下動する。
【0052】
制御手段10は、工具ホーン4bが下動して先端が表皮材100の表面(基材101と接しない面)に密着して押圧すると、溶着を開始するために振動部4aに超音波発振を開始するように指示(Step42)する。指示を受けた振動部4aは、超音波発振を開始する。これにより工具ホーン4bは、超音波振動を開始し表皮材100の基材101への溶着が行われる。
制御手段10は、振動部4aの超音波発振が一定時間経過すると、振動部4aの超音波発振を停止するように指示(Step43)する。
制御手段10は、振動部4aの超音波発振を停止した後、一定の冷却時間を確保(Step44)した後溶着処理を終了する。
【0053】
なお
図7の(Step1)における装置本体の移動、(Step2)における第2の把持部5bの移動、(Step3)における装置本体の移動及び(Step5)における第2の把持部5bの移動は、予め制御手段10に記憶されている情報に基づいて行われてもよい。また同様に
図8の(Step41)における溶着ユニット4の移動は、予め制御手段10に記憶されている情報に基づいて行われてもよい。
【0054】
以上のように、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、表皮材100の裏面(基材101と接する面)が基材101の端縁部101aを巻き込みながら、基材101の裏側表面に沿って端縁部101aから離れる方向に表皮材100の端末部分100aを引っ張った状態とし、この状態を維持したまま表皮材100を基材101に超音波振動により溶着することができる。このように本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、装置本体としてはロボットアーム7により自在に移動させることが可能である上、溶着ユニット4と把持部5を互いに独立に動作させることで表皮材100を確実に把持し、表皮材100の裏面(基材101と接する面)が基材101の端縁部101aを巻き込みながら基材101の裏側表面に表皮材100とその端末部分100aの裏面(基材101と接する面)を密着させて引っ張り、引っ張った状態を保持したまま表皮材100を基材101に溶着することができる。
【0055】
これにより本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、溶着する際に工具ホーン4bにより表皮材100に押圧されても、表皮材100を引っ張る方向及び引っ張り力の維持の精度をあげることができ、溶着の歩留まりを改善し高品質の溶着を行うことができる。
【0056】
(本開示の第1の実施形態の第1の変形例)
本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、表皮材100の端末部分100aの大きさをより小さくするために把持部5の形状を変えても良い。以下本開示の第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置1として、把持部5の形状を変えた一例を示す。
【0057】
図9に、本開示の第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置1の把持部5の形状の一例を示す。
【0058】
図9に示す第1の把持部5aの水平部5a1は、切欠部5a3を形成し全体としてU字型をしている点が
図1に示す第1の把持部5aの水平部5a1と異なり、第2の把持部5bの水平部5b1は、孔5b3を形成している点が
図1に示す第2の把持部5bの水平部5b1と異なる。
【0059】
第1の把持部5aの切欠部5a3と第2の把持部5bの孔5b3は、第1の把持部5aの水平部5a1の上面と第2の把持部5bの水平部5b1の下面とが接触した状態において、上下方向の貫通した空間を成すように配置される。このため第1の把持部5aの切欠部5a3と第2の把持部5bの孔5b3は、互いが接触した状態において、例えば棒状の突起を第1の把持部5aの水平部5a1の下方から上方に向けて貫通させることが可能な形状となっている。
【0060】
図10に、本開示の第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置1の把持部5に棒状の突起102を貫通させた様子の一例を示す。
棒状の突起102(ピンとも呼ぶ)は、例えば、特定の位置(特定の作業場所)に予め設置されており、その突起の位置に第1の把持部5aの切欠部5a3の位置が合うようにロボットアーム7を用いて装置本体を移動し、第1の把持部5aの切欠部5a3を貫通した状態にしてもよい。
【0061】
図11に、本開示の第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置1を用いて表皮材100を把持する動作の一例を示す。
【0062】
図11(A)は、所定の場所にピン102が設置されている状態を示している。
【0063】
図11(B)は、表皮材100を把持する処理を開始する前の、表皮材100と基材101が所定の場所に置かれた状態を示している。表皮材100の端末部分100aは、孔が設けられており、その孔にピン102が貫通している。このように表皮材100の端末部分100aは、設けられた孔にピン102を貫通させることで、把持部5で把持されやすいように端末部分100a全体が弛まないように張られた状態を保つことができる。
図11(B)に示す状態は、表皮材100の端末部分100aに孔が設けられておりその孔にピン102を貫通させて端末部分100a全体が弛まないように張られた状態を保っている点以外、表皮材100、基材101に関しては、第1の実施形態の
図3(A)に示す状態に相当する。
【0064】
図11(C)は、第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置1が、第1の把持部5aの水平部5a1の切欠部5a3がピン102を貫通する位置に移動し、表皮材100の端末部分100aの表面(基材101と接しない面)を第1の把持部5aの水平部5a1の上面に載置するようにした状態を示しており、第1の実施形態の
図3(B)に示す状態に相当する。
【0065】
図12に、本開示の第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置1を用いて表皮材100を把持する動作の他の例を示す。
【0066】
図12(A)は、
図11(C)に続けて超音波溶着装置1が、表皮材100の端末部分100aを把持部5により把持した状態を示している。
第2の把持部5bは、第2の移動手段3bの動作により第1の把持部5aの方向に下動を開始し、第1の把持部5aの水平部5a1の上面と第2の把持部5bの水平部5b1の下面で表皮材100を把持しており、第1の実施形態の
図4(A)に示す状態に相当する。
第2の把持部5bの水平部5b1の孔5b3は、ピン102が挿入された状態になっている。
【0067】
図12(B)は、ピンと102が、下動して切欠部5a3に挿入された状態から退避した状態を示している。
第1の把持部5aの水平部5a1の上面と第2の把持部5bの水平部5b1の下面とで表皮材100の端末部分100aを確実に把持した後に、ピン102は把持部5に対して相対的に下動する。
【0068】
図13に、本開示の第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置1を用いて表皮材100を把持する動作の他の例を示す。
【0069】
図13(A)は、
図12(B)に続けて第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置1が、表皮材100の端末部分100aを把持して移動している状態を示しており、第1の実施形態の
図4(B)に示す状態に相当する。
【0070】
図13(B)は、第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置1が、表皮材100を基材101に溶着する位置の上方に工具ホーン4bの先端を合わせた状態を示しており、第1の実施形態の
図5(A)に示す状態に相当する。
【0071】
図14に、本開示の第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置1が、表皮材100を把持した状態で溶着する位置まで移動する様子の一例を示す。
【0072】
図14(A)は、所定の位置に配置されたピン102を表皮材100の端末部分100aに設けられた孔を貫通させることで、端末部分100a全体が弛まないように張られた状態を示している。
【0073】
図14(B)は、
図14(A)の状態において、超音波溶着装置1が、第1の把持部5aの水平部5a1の切欠部5a3がピン102を貫通するように位置し、表皮材100の端末部分100aの表面(基材101と接しない面)を第1の把持部5aの水平部5a1の上面に載置した状態を示しており、第1の実施形態の
図6(A)に示す状態に相当する。
以降、第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置1が、表皮材100の端末部分100aを把持した状態で溶着する位置まで移動する様子の詳細は、第1の実施形態の
図6(B)、
図6(C)と同じである。
【0074】
図15に、本開示の第1の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置1が、表皮材100を把持する動作の処理フローの一例を示す。
図15に示す処理フローは、超音波溶着装置1が動作する処理フローとしては
図7に示す処理フローと同一であり、
図7に示す処理フローに対してピン102が、超音波溶着装置1(把持部5)が移動することで、相対的に下動するタイミングを点線で加えてある。
図15の処理フローに示すように、ピン102は、表皮材100の端末部分100aを把持する処理(Step2)の後に相対的に下動している。
【0075】
このように把持部5の形状を変えることで、
図14(A)で示したように、表皮材100の端末部分100a全体が弛まないように引っ張る箇所は、第1の実施形態の
図3(A)を用いて説明したように表皮材100の端末部分100aの端縁より内側の把持部5が把持する位置となるため、表皮材100の端末部分100aの大きさをより小さくすることが可能となり基材に溶着するのに必要となる表皮材の量を削減し生産性向上を図ることができる。
【0076】
(本開示の第1の実施形態の第2の変形例)
本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、
図7の把持処理の(Step2)における表皮材100の把持において、第2の把持部5bの下動の状況を検知するために第2の移動手段3bにセンサを備えても良い。これにより超音波溶着装置1は、表皮材100を確実に把持するために第2の把持部5bを下動して適切な位置に停止したことを認識することができる。
【0077】
また本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、
図8の溶着処理の(Step41)における工具ホーン4bによる表皮材100の押圧において、第1の把持部5aの下動の状況を検知するために第1の移動手段3aにセンサを備えても良い。これにより超音波溶着装置1は、表皮材100を適切に押圧するために工具ホーン4bを下動して適切な位置に停止したことを認識することができる。
【0078】
また本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、
図8の溶着処理の(Step44)における冷却時間確保において、溶着部分を冷却するための冷却装置を備えても良い。これにより超音波溶着装置1は、溶着部分を効率的に冷却することができる。
【0079】
また本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1の把持部5は、第2の把持部5bが第2の移動手段3bにより移動可能であり、第2の把持部5bが移動して第1の把持部5aの水平部5a1と第2の把持部5bの水平部5b1とが密着することで表皮材100を把持するが、それに限らない。第1の把持部5aあるいは第2の把持部5bは、相対的に近づくことが可能であればよく、例えば第2の移動手段3bを第1の把持部5aと接続して、第2の把持部5bをベース部2に固定することで、第1の把持部5aが第2の把持部5bに対して移動可能な構成であってもよい。
【0080】
(本開示の第2の実施形態)
本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1は、表皮材100の端末部分100aを引っ張る引っ張り力を検知するために、センサを備えても良い。以下本開示の第2の実施形態に係る超音波溶着装置21として、表皮材100の端末部分100aを引っ張る引っ張り力の大きさを検知するために、バネ及びセンサを備えた一例を示す。
図16に、本開示の第2の実施形態に係る超音波溶着装置21の全体構成の一例を示す。
【0081】
図16に示すように本開示の第2の実施形態に係る超音波溶着装置21は、本開示の第1の実施形態に係る超音波溶着装置1にバネ8、センサ部9及びバネ8を保持するベース部2の水平部2cを追加し、把持部5の保持部5cがベース部2の水平部2cとバネ8を介して接続することで、把持部5全体を移動可能な構成としている。
【0082】
ベース部2の水平部2cは、ベース部2の垂直部2aとその下端で接続し、接続部2bが垂直部2aの側面から延設した方向に水平方向に板状に延出する。ベース部2の水平部2cは、把持部5の保持部5cと平行に位置し、先端部にてバネ8の一端と接続する。
【0083】
把持部5の保持部5cは、ベース部2の水平部2cと平行に位置し、ベース部2側の端部にてバネ8の他端と接続する。これにより把持部5の保持部5cは、バネ8の水平方向(表皮材の端末部分100aの引っ張り方向)の伸長圧縮に伴い把持部5全体をベース部2の水平部2cに対して平行に移動可能である。
【0084】
さらに保持部5cは、センサプレート9bが取り付けられている。センサプレート9bは、把持部5の保持部5cがベース部2の水平部2cに対して移動することに伴い移動することで、その移動位置をセンサ9aで認識することができる。
【0085】
バネ8は、ベース部2の水平部2cの下方かつ把持部5の保持部5cの上方に配置される。バネ8は、その一端をベース部2の水平部2cと接続し、他端を把持部5の保持部5cと接続する。
【0086】
センサ部9は、センサ9aとセンサプレート9bから成る。
【0087】
センサ9aは、下方が開口した逆U字状をなし、2つの突出部分(後述する第1の垂直部9a1と第2の垂直部9a2)の一方から他方に赤外線を発光している。センサ9aは、遮光されたことを検出する遮光式センサであり、制御手段10により制御される。センサ9aは、ベース部2の垂直部2aの面のうち把持部5の保持部5cが移動する方向と平行な面に設置され、且つ2つの突出部分の間にセンサプレート9bが通過可能に配置される。
【0088】
センサプレート9bは、把持部5の保持部5cの側縁に接続し、保持部5cの側縁から垂直方向延びた側面視L字状の板状をなしている。センサプレート9bは、保持部5cの移動とともに移動し、バネ8の長さが自然長L0から特定の長さまで圧縮するとセンサ9aが発光する赤外線を遮光するように配置されている。
【0089】
センサ9aは、発光する赤外線が遮光されると、赤外線が発光されている光軸の位置までセンサプレート9bが移動したことを認識する。これにより制御手段10は、バネ8の長さが自然長L0から特定の長さに変化したことを認識し、圧縮した長さによる弾性力の大きさから、把持部5が適切な力の大きさで表皮材100を引っ張っていることを認識することができる。
【0090】
図17に、本開示の第2の実施形態に係る超音波溶着装置21のベース部2、バネ8及びセンサ部9を拡大して示す。図中の矢印の方向が、把持部5の保持部5cがベース部2の水平部2cに対して移動する方向である。
【0091】
図18に、本開示の第2の実施形態に係る超音波溶着装置21のセンサ9aの詳細を示す。
【0092】
図18(A)は、センサプレート9bの移動方向からセンサ9aを見たセンサ9aの外観正面図を示している。
【0093】
センサ9aは、正面から見ると矩形状の一部に空間9a3を形成した形状を成している。センサ9aは、空間9a3を挟んで対向する第1の垂直部9a1と第2の垂直部9a2の対向する面に、赤外線を発光する発光部と発光部から発せられた赤外線を受光する受光部を設けている。センサ9aは、空間9a3を通過するセンサプレート9bが、発光部から受光部に向けて発光した赤外線の光軸を遮ることで、発光されている赤外線の光軸の位置までセンサプレート9bが移動したことを認識する。
【0094】
図18(B)は、センサ9aを
図18(A)の外観正面に対して右側面から見た場合のセンサ9aとセンサプレート9bの相対的位置関係を示している。
【0095】
本開示の第2の実施形態に係る超音波溶着装置21は、ロボットアーム7の動作により移動して表皮材100の端末部分100aを引っ張ると、その引っ張り力に抗してバネ8が圧縮されることで把持部5の保持部5cがベース部2に対して移動し、これによりに保持部5cに取り付けられたセンサプレート9bが
図18(B)に示す矢印の方向に移動する。センサプレート9bの移動にともないセンサ9aが発光する赤外線の光軸をセンサプレート9bの垂直部9b1が遮光すると、センサ9aは、発光している赤外線の光軸の位置までセンサプレート9bが移動したことを認識する。これにより制御手段10は、把持部5が適切な力の大きさで表皮材100を引っ張っていることを認識することができる。
【0096】
図19に、本開示の第2の実施形態に係る超音波溶着装置21を用いて表皮材100を引っ張る際の、把持部5が表皮材100を引っ張る力、それによる超音波溶着装置21に加わる外力の様子を示す。
【0097】
第1の実施形態に係る超音波溶着装置1において、
図6(C)を用いて表皮材100の端末部分100aを引っ張る様子を用いて説明したのと同様に、第2の実施形態に係る超音波溶着装置21においても、把持部5が表皮材100の端末部分100aを把持した状態のまま表皮材100の裏面(基材101と接する面)が基材101の端縁部101aを巻き込みながら、基材101の端縁部101aから離れる方向に表皮材100の端末部分100aを引っ張った状態となるように、ロボットアーム7を移動する。
この把持部5が端縁部101aから離れる方向に表皮材100を引っ張る力が、図中に示す第1の力F1である。把持部5は、この第1の力F1の反力として、表皮材100から第2の力F2で引っ張られ、この第2の力F2により把持部5の保持部5cは、バネ8を圧縮する方向に移動する。
【0098】
センサプレート9bは、第2の力F2によるバネ8の圧縮による把持部5の保持部5cの移動に伴い移動する。センサプレート9bの移動量は、第2の力F2が適切な大きさの場合にセンサ9aが発光している赤外線の光軸を遮断する位置に達するように調整されている。これにより制御手段10は、把持部5が適切な力の大きさで表皮材100の端末部分100aを引っ張っていることを認識することができる。
【0099】
図20に、本開示の第2の実施形態に係る超音波溶着装置21が、表皮材100を把持する動作の処理フローの一例を示す。
【0100】
図20に示す処理フローは、第1の実施形態の
図7に示す処理フローにセンサ部9による引っ張り力の検知処理を追加したものである。
図20に示す処理フローにおいて、
図7に示す処理フローと同一のStep番号は、同一の処理であることを示している。
【0101】
制御手段10は、(Step3)のロボットアーム7に動作を指示、の前に、センサ9aに引っ張り力の検知を開始するように指示(Step11)する。また制御手段10は、(Step5)の第2の移動手段3bに動作を指示、の後に、センサ9aに引っ張り力の検知を終了するように指示(Step12)する。これによりセンサ9aは、(Step3)においてロボットアーム7の移動により、把持部5が、表皮材100の端末部分100aを適切な大きさの力で引っ張っていることを認識することができる。
【0102】
センサ9aは、把持部5が表皮材100の端末部分100aを適切な大きさの力で引っ張っていないことを認識したら、その結果を制御手段10に通知することで、制御手段10は、端末部分100aを適切な大きさの力で引っ張られていない旨を例えば作業者に通知するように制御してもよい、あるいはロボットアーム7の移動を止めるように制御してもよい。
【0103】
またセンサ9aは、(Step3)においてロボットアーム7の移動により、把持部5が、表皮材100の端末部分100aを適切でない大きさの力で引っ張っていることを認識できるように、センサプレート9bが移動する距離を認識できるようにしてもよい。
【0104】
以上のように本開示の第2の実施形態に係る超音波溶着装置21は、表皮材100の端末部分100aを適切な大きさの力で引っ張っていることが認識できるため、適切な力で引っ張っていない場合でも表皮材100を基材101に溶着してしまうことを防止することが可能となり、さらに製造品質を向上することができる。
【0105】
(本開示の第2の実施形態の変形例)
センサ部9は、センサ9aが発光している赤外線の光軸をセンサプレート9bが遮断することで、把持部5が表皮材100の端末部分100aを予め決められた1の力で適切に引っ張っていることを認識できるが、センサ部9は、把持部5が表皮材100の端末部分100aを引っ張っている力を複数認識できるようにしてもよい。
【0106】
図21に、本開示の第2の実施形態の変形例に係る超音波溶着装置21のセンサプレート9bの形状の他の例を示す。
【0107】
センサプレート9bの形状の他の例は、プレート中の赤外線の光軸と垂直の面に複数のスリットをもつ。
図21に示すセンサプレート9bは、センサプレート9bの垂直部9b1に、第1のスリット9c1、第2のスリット9c2、第3のスリット9c3の3つのスリットを持つ例である。
【0108】
把持部5が表皮材100の端末部分100aを引っ張ることでセンサプレート9bは、保持部5cの移動とともに図中に示す矢印の方向に移動する。センサプレート9bの移動に伴いセンサ9aが発光している赤外線は、センサプレート9bの端縁で遮光された後、第1のスリット9c1の位置が赤外線の光軸の位置に達することで、センサ9aの受光部で再び受光可能となる。これによりセンサ9aは、赤外線が初めて遮光されたタイミングで、センサプレート9bの端縁が赤外線の光軸の位置に達したことを認識し、遮光後に再び赤外線を受光したタイミングで、センサプレート9bの第1のスリット9c1が赤外線の光軸の位置に達したことを認識することができる。
【0109】
さらにセンサプレート9bが矢印の方向に移動すると、センサ9aが発光している赤外線は、再びセンサプレート9bにより遮光された後、第2のスリット9c2の位置が赤外線の光軸の位置に達することで、センサ9aの受光部で再び受光可能となる。これによりセンサ9aは、再度遮光後に、再び赤外線を受光したタイミングで、センサプレート9bの第2のスリット9c2が赤外線の光軸の位置に達したことを認識することができる。
【0110】
このようにセンサ9aは、センサプレート9bに複数のスリットを持たせることで、センサプレート9bの複数の移動距離を認識することが可能となり、その結果把持部5が、表皮材100の端末部分100aを引っ張る引っ張り力を複数認識することができる。
【0111】
これにより超音波溶着装置21は、表皮材100の端末部分100aを引っ張る引っ張り力の変化の状況は認識することができる。また超音波溶着装置21は、複数種類の表皮材100の各々の特性に応じて、センサプレート9bの複数の位置にスリットを設定することで、1つの超音波溶着装置21で、複数種類の表皮材の特性に応じて、その端末部分100aが適切な力で引っ張られていることを認識することができ、さらに製造品質を向上することができる。
【0112】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0113】
1:第1の超音波溶着装置
2:ベース部
2a:垂直部
2b:接続部
2c:水平部
3:移動手段
3a:第1の移動手段
3a1:第1の接続部
3b:第2の移動手段
3b1:第2の接続部
4:溶着ユニット
4a:振動部
4b:工具ホーン
5:把持部
5a:第1の把持部
5a1:水平部
5a2:垂直部
5a3:切欠部
5b:第2の把持部
5b1:水平部
5b2:垂直部
5b3:孔
5c:保持部
6:取付け部
7:ロボットアーム(ベース部移動手段)
8:バネ
9:センサ部
9a:センサ
9a1:第1の垂直部
9a2:第2の垂直部
9a3:空間
9b:センサプレート
9b1:垂直部
9c1:第1のスリット
9c2:第2のスリット
9c3:第3のスリット
10:制御手段
100:表皮材
100a:端末部分
101:基材
101a:端縁部
102:棒状の突起(ピン)
F1:第1の力
F2:第2の力
【要約】
ベース部と、ベース部を移動するベース部移動手段と、ベース部に接続し、表皮材の第1の面に密着する第1の平面と、表皮材の第1の面と対向し前記基材に接する第2の面に密着する第2の平面とで表皮材を把持する把持部と、ベース部に接続し、把持部に対して第1の方向に位置する第1の移動手段と、第1の移動手段に接続し、超音波振動により表皮材を基材に溶着する工具ホーンと、を有し、前記表皮材を、把持部の第1の平面で第2の面を前記基材の裏側表面に密着させながら端縁部から離れる方向に引っ張った状態にしてから溶着することを特徴とする溶着装置。