(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置とその制御回路及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
H02M3/28 P
(21)【出願番号】P 2019104976
(22)【出願日】2019-06-05
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【氏名又は名称】柿本 恭成
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 輝男
(72)【発明者】
【氏名】小林 貴之
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-130997(JP,A)
【文献】特開2015-162919(JP,A)
【文献】国際公開第2016/038967(WO,A1)
【文献】特開2016-012969(JP,A)
【文献】特開2020-102933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の高レベル側及び低レベル側のスイッチがフルブリッジ接続され、直流の1次側電圧及び1次側電流をスイッチングして交流電圧及び交流電流に変換して出力する1次側インバータと、
1次巻線及び2次巻線を有し、前記1次側インバータの出力電圧及び出力電流を前記1次巻線に入力し、誘起された交流電圧及び交流電流を前記2次巻線から出力する変圧器と、
複数の高レベル側及び低レベル側のスイッチがフルブリッジ接続され、前記2次巻線の出力電圧及び出力電流を整流し、直流の2次側電圧及び2次側電流を出力する2次側インバータと、
複数の1次側駆動パルスを出力して前記1次側インバータにおける前記複数の高レベル側及び低レベル側のスイッチをそれぞれオン/オフ動作させ、且つ、複数の2次側駆動パルスを出力して前記2次側インバータにおける前記複数の高レベル側及び低レベル側のスイッチをそれぞれオン/オフ動作させ、前記1次側インバータの出力値と前記2次側インバータの入力値との間の位相差を変えて前記2次側インバータの出力電力を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記複数の1次側駆動パルス中及び/又は前記複数の2次側駆動パルス中に、前記高レベル側のスイッチのすべて及び/又は前記低レベル側のスイッチのすべてを同時にオンするパルスパターンを付加する際に、前記パルスパターンのデューティ比を、前記位相差の指令値と、前記1次側電圧及び前記2次側電圧の1次側/2次側電圧比と、に応じて可変する構成にしたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、
2次側電流指令値と前記2次側電流との誤差を求める誤差部と、
前記変圧器に流れる変圧器電流の変圧器電流実効値を算出する実効値算出部と、
前記誤差に基づき、出力電力指令値となる前記位相差と前記パルスパターンの1次側の前記デューティ比及び/又は2次側の前記デューティ比とを算出し、前記1次側/2次側電圧比と前記位相差と前記変圧器電流実効値と、に応じて前記1次側デューティ比及び/又は前記2次側デューティ比を変化させる出力電力指令値算出部と、
前記1次側デューティ比のパルスパターンが付加された前記複数の1次側駆動パルスを生成して、前記1次側インバータにおける前記複数の高レベル側及び低レベル側のスイッチをそれぞれオン/オフ動作させる1次側パルス駆動部と、
前記2次側デューティ比のパルスパターンが付加された前記複数の2次側駆動パルスを生成して、前記2次側インバータにおける前記複数の高レベル側及び低レベル側のスイッチをそれぞれオン/オフ動作させる2次側パルス駆動部と、
を有することを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
請求項2記載のスイッチング電源装置において、
前記誤差の値に対して、フィードバック制御の遅れ要素を補正する補正部を設けた、
ことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記出力電力指令値算出部は、
前記1次側/2次側電圧比が閾値以内か否かを判定して閾値判定結果を求める閾値判定部と、
前記閾値判定結果が閾値以内でない場合には、前記位相差が限界値に達しているか否かを判定して限界値判定結果を求める限界値判定部と、
前記閾値判定結果が閾値以内の場合又は前記限界値判定結果が限界値に達している場合には、高電圧側の前記1次側デューティ比又は前記2次側デューティ比を設定値分増大して増大デューティ比を求め、前記増大デューティ比を前記閾値判定部へ入力するデューティ比増大部と、
前記限界値判定結果が限界値に達していない場合には、今回測定時の前記変圧器電流実効値が前回測定時の前記変圧器電流実効値よりも減少又は増加しているか否かの電流比較結果を求める変圧器電流比較部と、
前記電流比較結果が減少の場合には、前記1次側デューティ比及び/又は前記2次側デューティ比にデューティ比変化値を加えた加算値を求め、前記加算値を前記閾値判定部へ入力するデューティ比加算部と、
前記電流比較結果が増加の場合には、前記デューティ比加算部における前記デューティ比変化値の極性を反転する極性反転部と、
を有することを特徴とする請求項2又は3記載のスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記制御部は、
2次側電流指令値と前記2次側電流との誤差を求める誤差部と、
前記誤差に基づき、出力電力指令値となる前記位相差を算出する出力電力指令値算出部と、
前記位相差に基づき、前記複数の1次側駆動パルス及び前記複数の2次側駆動パルスを生成する駆動パルス生成部と、
前記1次側/2次側電圧比と前記位相差とに基づき、前記高レベル側のスイッチのすべて及び/又は前記低レベル側のスイッチのすべてを同時にオンする前記パルスパターンの1次側の前記デューティ比及び/又は2次側の前記デューティ比を生成するデューティ比生成部と、
前記複数の1次側駆動パルス中に前記1次側デューティ比のパルスパターンを付加し、及び/又は、前記複数の2次側駆動パルス中に前記2次側デューティ比のパルスパターンを付加するパルスパターン付加部と、
前記1次側デューティ比のパルスパターンが付加された前記複数の1次側駆動パルスにより、前記1次側インバータにおける前記複数の高レベル側及び低レベル側のスイッチをそれぞれオン/オフ動作させる1次側パルス駆動部と、
前記2次側デューティ比のパルスパターンが付加された前記複数の2次側駆動パルスにより、前記2次側インバータにおける前記複数の高レベル側及び低レベル側のスイッチをそれぞれオン/オフ動作させる2次側パルス駆動部と、
を有することを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項6】
請求項5記載のスイッチング電源装置において、
前記誤差の値に対して、フィードバック制御の遅れ要素を補正する補正部を設けた、
ことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項7】
前記1次側インバータ、前記2次側インバータ、及び前記変圧器は、単相、3相又は4相以上の電力変換を行う構成になっている、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項記載のスイッチング電源装置。
【請求項8】
前記1次側デューティ比及び前記2次側デューティ比は、
0~1の範囲の値であることを特徴とする請求項2~7のいずれか1項記載のスイッチング電源装置。
【請求項9】
複数の高レベル側及び低レベル側のスイッチがフルブリッジ接続され、直流の1次側電圧及び1次側電流をスイッチングして交流電圧及び交流電流に変換して出力する1次側インバータと、
1次巻線及び2次巻線を有し、前記1次側インバータの出力電圧及び出力電流を前記1次巻線に入力し、誘起された交流電圧及び交流電流を前記2次巻線から出力する変圧器と、
複数の高レベル側及び低レベル側のスイッチがフルブリッジ接続され、前記2次巻線の出力電圧及び出力電流を整流し、直流の2次側電圧及び2次側電流を出力する2次側インバータと、
を備えるスイッチング電源装置の制御回路であって、
複数の1次側駆動パルス及び複数の2次側
駆動パルスを生成し、
前記複数の1次側駆動パルス中及び/又は前記複数の2次側駆動パルス中に、前記高レベル側のスイッチのすべて及び/又は前記低レベル側のスイッチのすべてを同時にオンするパルスパターンを付加する際に、
前記パルスパターンのデューティ比を、前記1次側インバータの出力値と前記2次側インバータの入力値との間の位相差の指令値と、前記1次側電圧及び前記2次側電圧の1次側/2次側電圧比と、に応じて可変し、
前記複数の1次側駆動パルス又は前記パルスパターンが付加された前記複数の1次側駆動パルスにより、前記1次側インバータにおける前記複数の高レベル側及び低レベル側のスイッチをそれぞれオン/オフ動作させ、且つ、前記複数の2次側駆動パルス又は前記パルスパターンが付加された前記複数の2次側駆動パルスにより、前記2次側インバータにおける前記複数の高レベル側及び低レベル側のスイッチをそれぞれオン/オフ動作させ、
前記位相差と前記パルスパターンのデューティ比とを変えて前記2次側インバータの出力電力を制御する、
構成になっていることを特徴とするスイッチング電源装置の制御回路。
【請求項10】
複数の高レベル側及び低レベル側のスイッチがフルブリッジ接続され、直流の1次側電圧及び1次側電流をスイッチングして交流電圧及び交流電流に変換して出力する1次側インバータと、
1次巻線及び2次巻線を有し、前記1次側インバータの出力電圧及び出力電流を前記1次巻線に入力し、誘起された交流電圧及び交流電流を前記2次巻線から出力する変圧器と、
複数の高レベル側及び低レベル側のスイッチがフルブリッジ接続され、前記2次巻線の出力電圧及び出力電流を整流し、直流の2次側電圧及び2次側電流を出力する2次側インバータと、
を備えるスイッチング電源装置の制御方法であって、
複数の1次側駆動パルス及び複数の2次側
駆動パルスを生成し、
前記複数の1次側駆動パルス中及び/又は前記複数の2次側駆動パルス中に、前記高レベル側のスイッチのすべて及び/又は前記低レベル側のスイッチのすべてを同時にオンするパルスパターンを付加する際に、
前記パルスパターンのデューティ比を、前記1次側インバータの出力値と前記2次側インバータの入力値との間の位相差の指令値と、前記1次側電圧及び前記2次側電圧の1次側/2次側電圧比と、に応じて可変し、
前記複数の1次側駆動パルス又は前記パルスパターンが付加された前記複数の1次側駆動パルスにより、前記1次側インバータにおける前記複数の高レベル側及び低レベル側のスイッチをそれぞれオン/オフ動作させ、且つ、前記複数の2次側駆動パルス又は前記パルスパターンが付加された前記複数の2次側駆動パルスにより、前記2次側インバータにおける前記複数の高レベル側及び低レベル側のスイッチをそれぞれオン/オフ動作させ、
前記位相差と前記パルスパターンのデューティ比とを変えて前記2次側インバータの出力電力を制御する、
ことを特徴とするスイッチング電源装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デュアル・アクティブ・ブリッジ(以下「DAB」という。)型DC/DCコンバータといったスイッチング電源装置とその制御回路及び制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチング電源装置に一つであるDAB型DC/DCコンバータは、例えば、特許文献1-3に記載されているように、変圧器の1次側と2次側のフルブリッジインバータを位相シフト制御することにより、双方向の電力伝送が可能な直流/直流変換器である。
【0003】
図4は、例えば、特許文献1に記載された従来の3相DAB型DC/DCコンバータ(以下「従来型DAB」という。)の構成図である。
この従来型DABは、直流の1次側電圧E1及び1次側電流Idc1を平滑する1次側平滑コンデンサ1に対して並列に、1次側インバータ10が接続されている。1次側インバータ10は、平滑された1次側電圧E1及び1次側電流Idc1をスイッチングして3相交流電圧及び3相交流電流に変換する回路であり、U相の高レベル(以下「H」という。)側スイッチ11、U相の低レベル(以下「L」という。)側スイッチ12、V相のH側スイッチ13、V相のL側スイッチ14、W相のH側スイッチ15、及びW相のL側スイッチ16のフルブリッジ回路により構成されている。スイッチ11,12間の接続点、スイッチ13,14間の接続点、及びスイッチ15,16間の接続点には、3相リアクトル17,18,19を介して、3相変圧器20の1次巻線が接続されている。
3相変圧器20の2次巻線には、2次側インバータ30が接続されている。なお、3相変圧器20の1次巻線及び2次巻線の上端付近に付された黒丸は、巻線の巻き初めを表している。2次側インバータ30は、変圧器20の2次巻線から出力される3相交流電圧及び3相交流電流を整流する回路であり、U相のH側スイッチ31、U相のL側スイッチ32、V相のH側スイッチ33、V相のL側スイッチ34、W相のH側スイッチ35、及びW相のL側スイッチ36のフルブリッジ回路により構成されている。
2次側インバータ30で整流された直流電圧及び直流電流は、2次側平滑コンデンサ37にて平滑され、平滑された直流の2次側電圧E2及び2次側電流Idc2が出力されるようになっている。
1次側インバータ10及び2次側インバータ30を構成するスイッチ11~16,31~36は、制御回路としての制御部40から供給される駆動パルスS11~S16,S31~S36によってそれぞれオン/オフ動作する素子であり、メタル・オキサイド・セミコンダクタ型電界効果トランジスタ(以下「MOSFET」という。)や、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(以下「IGBT」という。)等のパワー半導体素子により構成されている。各スイッチ11~16,31~36には、回生用のダイオードがそれぞれ逆並列に接続されている。
【0004】
図5は、
図4の従来型DABにおける定常状態デッドタイム無し(H側スイッチとL側スイッチとが交互にオン/オフする状態)の1次側駆動パルスS11~S16のパターン図である。図示しないが、2次側駆動パルスS31~S36のパターンも、
図5と同様である。
図4の従来型DABの電力変換部を駆動する駆動パルスS11~S16,S31~S36は、周波数ωが一定であり、デューティ比Dが0.5の固定、各U,V,W相が120°ずつの位相差βを持っている。
1次側インバータ10は、制御部40から供給される1次側駆動パルスS11~S16により、スイッチ11~16がオン/オフ動作し、直流の1次側電圧E1及び1次側電流Icd1を3相交流電圧vp(以下「出力電圧vp」という。)及び3相交流電流に変換する。2次側インバータ30は、制御部40から供給される2次側駆動パルスS31~S36により、スイッチ31~36がオン/オフ動作し、変圧器20の2次巻線に誘起された3相交流電圧vs(以下「入力電圧vs」という。)及び3相交流電流を直流の2次側電圧E2及び2次側電流Idc2に変換する。
1次側インバータ10の出力電圧vp(又は出力電流)と2次側インバータ30の入力電圧vs(又は入力電流)との間の位相差φにより、入力電圧(又は入力電流)、出力電圧(又は出力電流)、及び電力の流れを制御できる。変圧器20の1次巻線及び2次巻線間の電圧vl(=vp-vs)がリアクトル17~19を通ることにより、変圧器20に電流(変圧器電流it)が流れる。この電流(変圧器電流it)から出力電力Poを次式(1)のように計算できる。
【0005】
Po=Nps(E12/ωL)dφ[1-(φ/π)]
=Nps(E12/ωL)dφ[φ-(φ2/π)]
=Nps(E1・IT)(E2/E1)φ[φ-(φ2/π)]
=Nps・IT・E2・φ[φ-(φ2/π)] (1)
但し、L;リアクトル17~19のインダクタンス
ω;周波数
Nps;変圧器20の1次巻線と2次巻線との巻線比(又は変圧比)
E1;1次側電圧
E2;2次側電圧
d=E2/E1
φ;1次側インバータ10の出力電圧vp(又は出力電流)と2次
側インバータ30の入力電圧vs(又は入力電流)との間の位
相差
IT;変圧器電流itの変圧器電流実効値
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許5,027,264号公報
【文献】特開2016-12969号公報
【文献】特開2016-12970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、特許文献1に記載された従来型DABでは、1次側インバータ10の出力電圧vpと2次側インバータ30の入力電圧vsとの間の位相差φを変えることにより、容易に昇降圧動作、及び双方向電力変換が可能である。
しかし、入出力間の電圧差が大きい場合、回路内に循環する電流が増大するため、主に導通損失が増大し、電力変換効率が低下し易いという問題がある。
この問題を解決するために、本願出願人は、先に、特願2018-239182(出願日;平成30年12月21日、この出願を以下「先の提案」という。)において、1次側インバータ10を構成する複数のスイッチ11~16、及び/又は、2次側インバータ30を構成する複数のスイッチ31~36を駆動するための駆動パルスS11~S16及び/又はS31~S36中に、すべてのスイッチ11~16及び/又は31~36を同時にオンするパルスパターンを付加し、特に高電圧比時の回路内に循環する電流増大を低減する提案を行った。
ところが、先の提案のDAB型DC/DCコンバータにおいては、1次側インバータ10及び2次側インバータ30間の位相差φを制御することにより、入出力間の電流(電力)を双方向に制御することが可能であるが、上記のパルスパターンを付加する制御を行った場合、回路内を循環する電流が低減されると同時に、特許文献1に記載された従来型DABより出力されていたはずの電流(電力)も同時に低減されてしまう。そのため、従来型DABと同様の制御を行うことができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスイッチング電源装置は、複数のH側及びL側のスイッチがフルブリッジ接続され、直流の1次側電圧及び1次側電流をスイッチングして交流電圧及び交流電流に変換して出力する1次側インバータと、1次巻線及び2次巻線を有し、前記1次側インバータの出力電圧及び出力電流を前記1次巻線に入力し、誘起された交流電圧及び交流電流を前記2次巻線から出力する変圧器と、複数のH側及びL側のスイッチがフルブリッジ接続され、前記2次巻線の出力電圧及び出力電流を整流し、直流の2次側電圧及び2次側電流を出力する2次側インバータと、複数の1次側駆動パルスを出力して前記1次側インバータにおける前記複数のH側及びL側のスイッチをそれぞれオン/オフ動作させ、且つ、複数の2次側駆動パルスを出力して前記2次側インバータにおける前記複数のH側及びL側のスイッチをそれぞれオン/オフ動作させ、前記1次側インバータの出力値と前記2次側インバータの入力値との間の位相差を変えて前記2次側インバータの出力電力を制御する制御部と、を備えている。
そして、前記制御部は、前記複数の1次側駆動パルス中及び/又は前記複数の2次側駆動パルス中に、前記H側のスイッチのすべて及び/又は前記L側のスイッチのすべてを同時にオンするパルスパターンを付加する際に、前記パルスパターンのデューティ比を、前記位相差の指令値と、前記1次側電圧及び前記2次側電圧の1次側/2次側電圧比と、に応じて可変する構成にしている。
【0009】
本発明のスイッチング電源装置の制御回路は、複数のH側及びL側のスイッチがフルブリッジ接続され、直流の1次側電圧及び1次側電流をスイッチングして交流電圧及び交流電流に変換して出力する1次側インバータと、1次巻線及び2次巻線を有し、前記1次側インバータの出力電圧及び出力電流を前記1次巻線に入力し、誘起された交流電圧及び交流電流を前記2次巻線から出力する変圧器と、複数のH側及びL側のスイッチがフルブリッジ接続され、前記2次巻線の出力電圧及び出力電流を整流し、直流の2次側電圧及び2次側電流を出力する2次側インバータと、を備えるスイッチング電源装置の制御回路である。
そして、前記制御回路は、複数の1次側駆動パルス及び複数の2次側駆動パルスを生成し、前記複数の1次側駆動パルス中及び/又は前記複数の2次側駆動パルス中に、前記H側のスイッチのすべて及び/又は前記L側のスイッチのすべてを同時にオンするパルスパターンを付加する際に、前記パルスパターンのデューティ比を、前記1次側インバータの出力値と前記2次側インバータの入力値との間の位相差の指令値と、前記1次側電圧及び前記2次側電圧の1次側/2次側電圧比と、に応じて可変し、前記複数の1次側駆動パルス又は前記パルスパターンが付加された前記複数の1次側駆動パルスにより、前記1次側インバータにおける前記複数のH側及びL側のスイッチをそれぞれオン/オフ動作させ、且つ、前記複数の2次側駆動パルス又は前記パルスパターンが付加された前記複数の2次側駆動パルスにより、前記2次側インバータにおける前記複数のH側及びL側のスイッチをそれぞれオン/オフ動作させ、前記位相差と前記パルスパターンのデューティ比とを変えて前記2次側インバータの出力電力を制御する、構成になっている。
【0010】
更に、本発明のスイッチング電源装置の制御方法は、複数のH側及びL側のスイッチがフルブリッジ接続され、直流の1次側電圧及び1次側電流をスイッチングして交流電圧及び交流電流に変換して出力する1次側インバータと、1次巻線及び2次巻線を有し、前記1次側インバータの出力電圧及び出力電流を前記1次巻線に入力し、誘起された交流電圧及び交流電流を前記2次巻線から出力する変圧器と、複数のH側及びL側のスイッチがフルブリッジ接続され、前記2次巻線の出力電圧及び出力電流を整流し、直流の2次側電圧及び2次側電流を出力する2次側インバータと、を備えるスイッチング電源装置の制御方法である。
そして、前記制御方法は、複数の1次側駆動パルス及び複数の2次側駆動パルスを生成し、前記複数の1次側駆動パルス中及び/又は前記複数の2次側駆動パルス中に、前記H側のスイッチのすべて及び/又は前記L側のスイッチのすべてを同時にオンするパルスパターンを付加する際に、前記パルスパターンのデューティ比を、前記1次側インバータの出力値と前記2次側インバータの入力値との間の位相差の指令値と、前記1次側電圧及び前記2次側電圧の1次側/2次側電圧比と、に応じて可変し、前記複数の1次側駆動パルス又は前記パルスパターンが付加された前記複数の1次側駆動パルスにより、前記1次側インバータにおける前記複数のH側及びL側のスイッチをそれぞれオン/オフ動作させ、且つ、前記複数の2次側駆動パルス又は前記パルスパターンが付加された前記複数の2次側駆動パルスにより、前記2次側インバータにおける前記複数のH側及びL側のスイッチをそれぞれオン/オフ動作させ、前記位相差と前記パルスパターンのデューティ比とを変えて前記2次側インバータの出力電力を制御している。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスイッチング電源装置とその制御回路及び制御方法によれば、複数の1次側駆動パルス中及び/又は複数の2次側駆動パルス中に、H側スイッチのすべて及び/又はL側スイッチのすべてを同時にオンするパルスパターンを付加する際に、そのパルスパターンのデューティ比を、位相差の指令値と1次側/2次側電圧比とに応じて可変している。そのため、軽負荷時に回路内を循環する電流を低減しつつ、出力電流(出力電力)の低減を抑制できる。これにより、制御性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例1における3相DAB型DC/DCコンバータの構成図
【
図2】
図1の制御部40A内の出力電力指令値算出部44の構成及び制御方法を示すフローチャート
【
図3】
図1及び
図2の定常状態デッドタイム無しの1次側駆動パルスのパターン図
【
図4】従来の3相DAB型DC/DCコンバータ(従来型DAB)の構成図
【
図5】
図4の従来型DABにおける定常状態デッドタイム無しの1次側駆動パルスのパターン図
【
図6】実施例1の3相DAB型DC/DCコンバータにおける1次側デューティ比D1=1.0及び2次側デューティ比D2=1.0の制御方法を示す動作波形図
【
図7-1】
図6の回路モード(1)~(4)を示す動作図
【
図7-2】
図6の回路モード(5)~(6)を示す動作図
【
図8】実施例1の3相DAB型DC/DCコンバータにおける1次側デューティ比D1=0.8及び2次側デューティ比D2=1.0の制御方法を示す動作波形図
【
図9-1】
図8の回路モード(1)~(2)を示す動作図
【
図9-2】
図8の回路モード(B)~(C)を示す動作図
【
図9-3】
図8の回路モード(3)~(4)を示す動作図
【
図9-4】
図8の回路モード(5)~(6)を示す動作図
【
図9-5】
図8の回路モード(F)~(6)を示す動作図
【
図10】実施例1の3相DAB型DC/DCコンバータにおける1次側デューティ比D1=0.66及び2次側デューティ比D2=1.0の制御方法を示す動作波形図
【
図12】付加デューティ比変更時の回路内循環電流を示す特性図
【
図14】本発明の実施例2における制御部40Bの構成を示す機能ブロック図
【
図15】実施例2の付加デューティ比の変更例を示す特性図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0014】
(実施例1の構成)
図1は、本発明の実施例1における3相DAB型DC/DCコンバータの構成図である。
本実施例1の3相DAB型DC/DCコンバータは、従来型DABと同様の1次側平滑コンデンサ1、1次側インバータ10、3相変圧器20、2次側インバータ30、及び2次側平滑コンデンサ37を有する電力変換部と、従来とは異なる制御回路としての制御部40Aと、により構成されている。
従来型DABと同様に、1次側インバータ10及び2次側インバータ30を構成するスイッチ11~16,31~36は、制御部40Aから供給される駆動パルスS11~S16、S31~S36によってそれぞれオン/オフ動作する素子であり、MOSFETやIGBT等のパワー半導体素子により構成されている。各スイッチ11~16,31~36には、回生用のダイオードがそれぞれ逆並列に接続されている。各スイッチ11~16,31~36をMOSFETで構成する場合には、例えば、そのMOSFETの寄生容量を使用しても良い。
又、3相変圧器20の1次巻線と2次巻線とには、それぞれリアクトルが直列に接続される。それらのリアクトルは、変圧器20の漏れインダクタンスで代用しても良い。
図1では、図示を簡略化するために、変圧器20の1次巻線側に、リアクトル17,18,19がそれぞれ直列に接続されている。
【0015】
制御回路としての制御部40Aは、複数の1次側駆動パルスS11~S16を出力して1次側インバータ10における複数のH側スイッチ11,13,15及びL側スイッチ12,14,16をそれぞれオン/オフ動作させ、且つ、複数の2次側駆動パルスS31~S36を出力して2次側インバータ30における複数のH側スイッチ31,33,35及びL側スイッチ32,34,36をそれぞれオン/オフ動作させ、1次側インバータ10の出力値(例えば、出力電圧vp又は出力電流)と2次側インバータ30の入力値(例えば、入力電圧vs又は入力電流)との間の位相差φを変えて2次側インバータ30の出力電力Poを制御するものである。
特に、本実施例1の制御部40Aでは、複数の1次側駆動パルスS11~S16中及び/又は複数の2次側駆動パルスS31~S36中に、H側スイッチ11,13,15,31,33,35のすべて及び/又はL側スイッチ12,14,16,32,34,36のすべてを同時にオンするパルスパターンを付加する際に、そのパルスパターンのデューティ比Dを、位相差φの指令値と、1次側電圧E1及び2次側電圧E2の1次側/2次側電圧比E1/E2と、に応じて可変する構成になっている。
【0016】
制御部40Aは、2次側電流指令値I2と2次側電流Idc2との誤差eを求める誤差部41を有し、この誤差部41に、補正部42が接続されている。補正部42は、誤差eの値に対して、フィードバック制御の遅れ要素を補正するものであり、比例積分(以下「PI」という。)制御部等で構成されている。なお、補正部42は、制御精度を向上させるものであるが、制御部40Aの構成を簡略化するために、省略しても良い。制御部40Aには、実効値算出部43が設けられている。実効値算出部43は、変圧器20に流れる変圧器電流itの変圧器電流実効値ITを算出するものであり、この出力側に、出力電力指令値算出部44が接続されている。
出力電力指令値算出部44は、補正部42にて補正された誤差eに基づき、出力電力指令値となる位相差φとパルスパターンの1次側デューティ比D1及び/又は2次側デューティ比D2とを算出し、1次側/2次側電圧比E1/E2と位相差φと変圧器電流実効値ITと、に応じて1次側デューティ比D1及び/又は2次側デューティ比D2を変化させるものである。1次側デューティ比D1及び2次側デューティ比D2は、0~1の範囲の所望の値である。
出力電力指令値算出部44の出力側には、1次側パルス駆動部45及び2次側パルス駆動部46が接続されている。1次側パルス駆動部45は、1次側デューティ比D1のパルスパターンが付加された複数の1次側駆動パルスS11~S16を生成して、1次側インバータ10における複数のH側スイッチ11,13,15及びL側スイッチ12,14,16をそれぞれオン/オフ動作させるものである。2次側パルス駆動部46は、2次側デューティ比D2のパルスパターンが付加された複数の2次側駆動パルスS31~S36を生成して、2次側インバータ30における複数のH側スイッチ31,33,35及びL側スイッチ32,34,36をそれぞれオン/オフ動作させるものである。
制御部40Aにおいて、誤差部41、補正部42、実効値算出部43、及び出力電力指令値算出部44は、例えば、中央処理装置(以下「CPU」という。)や、半導体素子等の個別回路により構成されている。1次側パルス駆動部45及び2次側パルス駆動部46は、トランジスタ等の個別回路により構成されている。
【0017】
図2は、
図1の制御部40A内の出力電力指令値算出部44の構成及び制御方法を示すフローチャートである。
出力電力指令値算出部44は、1次側/2次側電圧比E1/E2が閾値以内か否かを判定して閾値判定結果を求める閾値判定部44aを有し、この出力側に、限界値判定部44b及びデューティ比増大部44cが接続されている。限界値判定部44bは、閾値判定部44aの閾値判定結果が閾値以内でない場合には、位相差φが限界値に達しているか否かを判定して限界値判定結果を求めるものであり、この出力側に、デューティ比増大部44c及び変圧器電流比較部44dが接続されている。
デューティ比増大部44cは、閾値判定部44aの閾値判定結果が閾値以内の場合、又は限界値判定部44bの限界値判定結果が限界値に達している場合には、高電圧側のデューティ比D(例えば、1次側デューティ比D1又は2次側デューティ比D2)を設定値分増大して変更後のデューティ比D10を求め、この変更後のデューティ比D10を閾値判定部44aへ入力するものである。
変圧器電流比較部44dは、限界値判定部44bの限界値判定結果が限界値に達していない場合には、今回測定時の変圧器電流実効値IT(t)が前回測定時の変圧器電流実効値IT(t-1)よりも減少又は増加しているか否かの電流比較結果を求めるものであり、この出力側に、デューティ比加算部44e及び極性判定部44fが接続されている。
デューティ比加算部44eは、変圧器電流比較部44dの電流比較結果が減少の場合には、高圧側のデューティ比D(例えば、1次側デューティ比D1又は2次側デューティ比D2)にデューティ比変化値ΔDを加算し、この変更後のデューティ比D+ΔDを閾値判定部44aへ入力するものである。極性反転部44fは、変圧器電流比較部44dの電流比較結果が増加の場合には、デューティ比変化値ΔDの極性を反転し、デューティ比加算部44eから、変更後のデューティ比D-ΔDを出力させて閾値判定部44aへ入力させるものである。
【0018】
(実施例1の制御方法)
図3は、
図1及び
図2の定常状態におけるデッドタイム無しの1次側駆動パルスS11~S16のパターン図である。
1次側駆動パルスS11~S16のHによってスイッチ11~16がオンし、1次側駆動パルスS11~S16のLによってスイッチ11~16がオフする。1次側駆動パルスS11~S16の周波数ωは一定、各スイッチ11~16のオン/オフのデューティ比は0.5である。1周期の回路モード(1)~(6)に示すように、各U,V,W相は120°ずつの位相差βを持っている。各回路モード(1)~(6)において、全L側スイッチ12,14,16がオンになる1次側デューティ比D1のパルスパターンと、全H側スイッチ11,13,15がオンになる1次側デューティ比D1のパルスパターンと、が付加されている。
なお、
図3では、1次側デューティ比D1のパルスパターンが、1次側駆動パルスS11~S16の半周期の中央に配置されているが、中央以外の箇所に配置しても良い。
図示しないが、2次側駆動パルスS31~S36のパターン図は、
図3と同様に、全L側スイッチ32,34,36がオンになる2次側デューティ比D2のパルスパターンと、全H側スイッチ31,33,35がオンになる2次側デューティ比D2のパルスパターンと、が付加された図、或いは、
図3と異なり、2次側デューティ比D2のパルスパターンが付加されていない図になっている。1次側駆動パルスS11~S16と2次側駆動パルスS31~S36との間には、位相差φが設けられる。
【0019】
次に、1次側電圧E1と2次側電圧E2とが近い場合の通常の定電流制御動作(A1)と、無負荷時(φ=0deg)の2次側短絡の場合の定電流制御動作(A2)と、を説明する。
【0020】
(A1) 1次側電圧E1と2次側電圧E2とが近い場合の通常の定電流制御動作
例えば、
図1の3相DAB型DC/DCコンバータにおいて、直流1次側電流Idc1を入力し、2次側平滑コンデンサ37の出力側に接続された図示しない負荷へ、一定の直流2次側電流Idc2を供給する場合、1次側電圧E1と2次側電圧E2とが近い時の通常の定電流制御動作について説明する。この通常の定電流制御動作では、
図3の回路モード(1)~(6)中にデューティ比D1,D2のパルスパターンが付加されていない。
図1の制御部40Aにおいて、2次側電流指令値I2に対して測定された2次側電流Idc2が変動すると、誤差部41により、2次側電流指令値I2と2次側電流Idc2との誤差eが求められ、その誤差eが補正部42によってPI制御等で補正され、出力電力指令値算出部44に入力される。更に、実効値算出部43において、測定された変圧器電流itから変圧器電流実効値ITが算出され、出力電力指令値算出部44に入力される。
出力電力指令値算出部44は、補正部42で補正された誤差eを0にするような、1次側インバータ10の出力電圧vp(又は出力電流)と2次側インバータ30の入力電圧vp(又は入力電流)との位相差φを算出すると共に、1次側/2次側電圧比E1/E2が略1の場合、1次側デューティ比D1=2次側デューティ比D2=0を算出し、これらの算出結果を1次側パルス駆動部45及び2次側パルス駆動部46へ入力する。
1次側パルス駆動部45は、1次側駆動パルスS11~S16を生成して1次側インバータ10内のスイッチ11~16をオン/オフ動作させる。同様に、2次側パルス駆動部46は、2次側駆動パルスS31~S36を生成して2次側インバータ30内のスイッチ31~36をオン/オフ動作させる。
【0021】
1次側デューティ比D1のパルスパターンが付加されていない
図3の回路モード(1)の時、
図1の1次側インバータ10内のU相のH側スイッチ11がオフ、L側スイッチ12がオン、V相のH側スイッチ13がオン、L側スイッチ14がオフ、W相のH側スイッチ15がオフ、及びL側スイッチ16がオンする。同様に、位相差φを持って、
図1の2次側インバータ30内のU相のH側スイッチ31がオフ、L側スイッチ32がオン、V相のH側スイッチ33がオン、L側スイッチ34がオフ、W相のH側スイッチ35がオフ、及びL側スイッチ36がオンする。
すると、
図1において、1次側電圧E1源の+側→H側スイッチ13→リアクトル18→変圧器20の1次巻線→リアクトル17→L側スイッチ12→1次側電圧E1源の-側の経路と、1次側電圧E1源の+側→H側スイッチ13→リアクトル18→変圧器20の1次巻線→リアクトル19→L側スイッチ16→1次側電圧E1源の-側の経路と、に1次側電流Idc1が流れる。これに対応して、変圧器20の2次巻線に誘導起電力が発生し、変圧器20の2次巻線→H側スイッチ33のダイオード→負荷→L側スイッチ32のダイオード→2次巻線の経路と、変圧器20の2次巻線→H側スイッチ33のダイオード→負荷→L側スイッチ36のダイオード→2次巻線の経路と、に2次側電流Idc2が流れる。
更に、1次側デューティ比D1のパルスパターンが付加されていない
図3の他の回路モード(2)~(6)が実行され、1周期のスイッチング動作が終了する。
【0022】
ここで、変圧器20の1次巻線及び2次巻線間の電圧vl(=vp-vs)がリアクトル17~19を通ることによって、その変圧器20に電流(変圧器電流it)が流れる。この電流(変圧器電流it)から出力電力Poを前記式(1)と同様に計算できる。
Po=Nps・IT・E2・φ[φ-(φ2/π)]
但し、L;リアクトル17~19のインダクタンス
ω;周波数
Nps;変圧器20の1次巻線と2次巻線との巻線比(又は変圧比)
E1;1次側電圧
E2;2次側電圧
d=E2/E1
φ;1次側インバータ10の出力電圧vp(又は出力電流)と2
次側インバータ30の入力電圧vs(又は入力電流)との間
の位相差
IT;変圧器電流itの変圧器電流実効値
そのため、1次側インバータ10の出力電圧vp(又は出力電流)と2次側インバータ30の入力電圧vs(又は入力電流)との間の位相差φにより、2次側電流指令値I2と一致するように、2次側電流Idc2が定電流制御される。
【0023】
(A2) 無負荷時(φ=0deg)の2次側短絡の場合の定電流制御動作
例えば、負荷の変動によって2次側電圧E2が0V(短絡状態)になった場合の定電流制御動作を説明する。この動作では、
図3の回路モード(1)~(6)中に、1次側デューティ比D1のパルスパターンが付加される。
図1の制御部40Aにおいて、2次側電圧E2が0Vになると、平滑コンデンサ37に蓄積された電荷が放電され、瞬時的にパルス状の大電流が発生するが、その後、2次側電流Idc2が一定値に維持される。この時、出力電力指令値算出部44では、位相差φ=0degを算出し、1次側/2次側電圧比E1/E2が最大値のE1であるので、例えば、1次側デューティ比D1=2次側デューティ比D2=0.66を算出する。そのため、1次側パルス駆動部45は、1次側デューティ比D1が付加された1次側駆動パルスS11~S16を生成し、1次側インバータ10内のスイッチ11~16をオン/オフ動作させる。更に、2次側パルス駆動部46は、2次側デューティ比D2が付加された2次側駆動パルスS31~S36を生成し、2次側インバータ30内のスイッチ31~36をオン/オフ動作させる。
すると、付加された1次側デューティ比D1のパルスパターンにより、
図3の回路モード(1)において、V相のH側スイッチ13がオンからオフ、L側スイッチ14がオフからオンへ遷移し、全L側スイッチ12,14,16がオンする。更に、付加された1次側デューティ比D1のパルスパターンにより、回路モード(2)において、全H側スイッチ11,13,15がオン、回路モード(3)において、全L側スイッチ12,14,16がオン、回路モード(4)において、全H側スイッチ11,13,15がオン、回路モード(5)において、全L側スイッチ12,14,16がオン、及び、回路モード(6)において、全H側スイッチ11,13,15がオンする。
同様に、付加された2次側デューティ比D2のパルスパターンにより、図示しない回路モード(1)~(6)において、全L側スイッチ32,34,36がオン、又は全H側スイッチ31,33,35がオンする。
【0024】
従来型DABの制御方法では、U,V,W相のすべての相のH側スイッチ又はL側スイッチがすべてオンになるモードは存在しない。これに対し、本実施例1では、1次側インバータ10及び2次側インバータ30のうちのいずれか一方又は両方のインバータ10,30の駆動パルスS11~S16,S31~S36に、H側スイッチ11,13,15,31,33,35のすべてが同時にオンするパルスパターン、又はL側スイッチ12,14,16,32,34,36のすべてがオンするパルスパターンが付加される。
そのため、付加されたパルスパターンの1次側、2次側デューティ比D1,D2が例えば0.66の場合、回路モード(1)~(6)に、従来型DABの制御方法のパルスパターンが全く発生しなくなり、回路内を循環する電流が理論上0Aとなる。従って、特に入出力間の電圧差が大きい場合に顕著となる回路内を循環する無効電流を抑制することができる。
ところが、パルスパターンを付加する制御を行った場合、回路内を循環する電流が低減されると同時に、従来型DABより出力されていたはずの電流(電力)も同時に低減されてしまうため、従来型DABと同様の制御を行うことができない。そこで、そのような不都合を解消するために、
図1の制御部40A内の出力電力指令値算出部44では、
図2のフローチャートに示すような制御を行う。
【0025】
図2のフローチャートにおいて、制御が開始されてステップST1へ進むと、閾値判定部44aは、1次側/2次側電圧比E1/E2が閾値以内か否かを判定する。上述したように、負荷の変動によって2次側電圧E2が0V(短絡状態)になった場合は、1次側/2次側電圧比E1/E2が閾値を超えて最大値のE1になるので(No)、ステップST2へ進む。なお、1次側/2次側電圧比E1/E2が閾値以内の場合は(Yes)、ステップST3へ進む。
ステップST2において、限界値判定部44bは、位相差φが制御可能な限界値に達しているか否かを判定する。上述したように、算出された位相差φが0degであり、限界値に達していないので(No)、ステップST4へ進む。なお、限界値に達している場合には(Yes)、ステップST3へ進む。
ステップST4において、変圧器電流比較部44dは、実効値算出部43で今回算出された時刻(t)の変圧器電流実効値IT(t)が、実効値算出部43で前回算出された時刻(t-1)の変圧器電流実効値IT(t-1)よりも小さいか否かを判定する。小さい場合には(Yes)、ステップST5へ進み、大きい場合には(No)、ステップST6へ進む。
ステップST5において、デューティ比加算部44eは、高圧側のデューティ比D(例えば、1次側デューティ比D1)にデューティ比変化値ΔDを加算し、この変更後のデューティ比D+ΔD(例えば、D1+ΔD)をステップST1へ入力する。一方、ステップST6へ進んだ場合、極性反転部44fは、デューティ比変化値ΔDの極性を反転し、デューティ比加算部44eから、変更後のデューティ比D-ΔD(例えば、D1-ΔD)を出力させてステップST1へ入力させる。
ステップST1,ST2,ST4,ST5,ST6の制御を繰り返し、ステップST1において、1次側/2次側電圧比E1/E2が閾値以内の場合(Yes)、或いは、ステップST2において、位相差φが限界値に達している場合(Yes)、ステップST3へ進む。ステップST3において、デューティ比増大部44cは、高圧側のデューティ比D(例えば、1次側デューティ比D1)を設定値分増大し、この変更後のデューティ比D10を出力して、ステップST1へ入力する。
【0026】
このように、
図2の制御では、位相差φが増大する重負荷領域に動作領域が移行するに従って、付加されるデューティ比Dが減少し、従来型DABの動作パターンに近づいて行く。即ち、位相差φ=0degより、その位相差φの絶対値の増大に従って、付加されるデューティ比Dが1.0に近づいて行く。これにより、従来型DABと同様の最大出力電力値と、デューティ比付加による軽負荷時の循環電流低減を兼ねることができる。
【0027】
(実施例1の詳細な制御方法)
付加された1次側デューティ比D1のみが異なる第1、第2、第3態様(B1)~(B3)のシミュレーション結果を示す
図6~
図11-2を参照しつつ、本実施例1の詳細な制御方法を説明する。
【0028】
(B1) 第1態様の制御方法
図6は、本実施例1の3相DAB型DC/DCコンバータにおける従来型DABと同様(1次側、2次側デューティ比D1,D2=1.0)の制御方法を示す動作波形図である。この
図6では、
図1の定常状態デッドタイム無しの駆動パルスS11~S16,S31~S36のパターン及び回路各部の電流波形のシミュレーション結果が示されている。
図6の設定条件は、1次側インバータ10に直流の1次側電圧E1が供給され、2次側平滑コンデンサ37の出力側に接続された図示しない負荷が短絡状態(直流の2次側電圧E2=0V)であって、1次側インバータ10の出力電圧vp(又は出力電流)と2次側インバータ30の入力電圧vs(又は入力電流)との間の位相差φが0deg(即ち、出力電力指令値が0W)、且つ、付加されるパルスパターンの1次側デューティ比D1及び2次側デューティ比D2が従来と同様の1.0である。
【0029】
図7-1及び
図7-2は、
図6の1周期の回路モード(1)~(6)を示す動作図である。なお、説明を簡単にするために、
図1中のリアクトル17~19等の図示が省略されている。
スイッチ11~16,31~36において、実線で示されているスイッチはオン状態、破線で示されているスイッチはオフ状態である。
【0030】
図7-1の回路モード(1)において、1次側インバータ10内のU相H側スイッチ11はオフ、U相L側スイッチ12はオン、V相H側スイッチ13はオン、V相L側スイッチ14はオフ、W相H側スイッチ15はオフ、及びW相L側スイッチ16はオンする。同様に、2次側インバータ30内のU相H側スイッチ31はオフ、U相L側スイッチ32はオン、V相H側スイッチ33はオン、V相L側スイッチ34はオフ、W相H側スイッチ35はオフ、及びW相L側スイッチ36はオンする。
そのため、1次側電圧E1源の+側→H側スイッチ13→変圧器20の1次巻線→L側スイッチ12→1次側電圧E1源の-側の経路と、1次側電圧E1源の+側→H側スイッチ13→変圧器20の1次巻線→L側スイッチ16→1次側電圧E1源の-側の経路と、に1次側電流Idc1が流れる。その結果、変圧器20の1次巻線U相に流れる+側電流(変圧器電流it)が減少し、1次側U相H側スイッチ11に電流が流れず、1次側U相L側スイッチ12に流れる-側電流が増加していく。
これに対応して、変圧器20の2次巻線に誘導起電力が発生し、変圧器20の2次巻線→H側スイッチ33のダイオード→負荷→L側スイッチ32のダイオード→2次巻線の経路と、変圧器20の2次巻線→H側スイッチ33のダイオード→負荷→L側スイッチ36のダイオード→2次巻線の経路と、に2次側電流Idc2が流れる。その結果、2次側U相H側スイッチ31に電流が流れず、2次側U相L側スイッチ32に流れる+側電流が減少していく。従って、出力される2次側電流Idc2は、-側から+側へ増加した後、-側へ減少する。
【0031】
図7-1の回路モード(2)において、1次側インバータ10内のU相H側スイッチ11はオフ、U相L側スイッチ12はオン、V相H側スイッチ13はオン、V相L側スイッチ14はオフ、W相H側スイッチ15はオン、及びW相L側スイッチ16はオフする。同様に、2次側インバータ30内のU相H側スイッチ31はオフ、U相L側スイッチ32はオン、V相H側スイッチ33はオン、V相L側スイッチ34はオフ、W相H側スイッチ35はオン、及びW相L側スイッチ36はオフする。
そのため、変圧器20の1次巻線U相に流れる+側電流(変圧器電流it)が-側へ減少し、1次側U相H側スイッチ11に電流が流れず、1次側U相L側スイッチ12に流れる-側電流が+側へ増加していく。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31に電流が流れず、2次側U相L側スイッチ32に流れる+側電流が-側へ減少していく。従って、出力される2次側電流Idc2は、-側から+側へ増加した後、-側へ減少する。
【0032】
図7-1の回路モード(3)において、1次側インバータ10内のU相H側スイッチ11はオフ、U相L側スイッチ12はオン、V相H側スイッチ13はオフ、V相L側スイッチ14はオン、W相H側スイッチ15はオン、及びW相L側スイッチ16はオフする。同様に、2次側インバータ30内のU相H側スイッチ31はオフ、U相L側スイッチ32はオン、V相H側スイッチ33はオフ、V相L側スイッチ34はオン、W相H側スイッチ35はオン、及びW相L側スイッチ36はオフする。
そのため、変圧器20の1次巻線U相に流れる-側電流(変圧器電流it)が-側へ減少し、1次側U相H側スイッチ11に電流が流れず、1次側U相L側スイッチ12に流れる+側電流が+側へ増加していく。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31に電流が流れず、2次側U相L側スイッチ32に流れる-側電流が-側へ減少していく。従って、出力される2次側電流Idc2は、-側から+側へ増加した後、-側へ減少する。
【0033】
図7-1の回路モード(4)において、1次側インバータ10内のU相H側スイッチ11はオン、U相L側スイッチ12はオフ、V相H側スイッチ13はオフ、V相L側スイッチ14はオン、W相H側スイッチ15はオン、及びW相L側スイッチ16はオフする。同様に、2次側インバータ30内のU相H側スイッチ31はオン、U相L側スイッチ32はオフ、V相H側スイッチ33はオフ、V相L側スイッチ34はオン、W相H側スイッチ35はオン、及びW相L側スイッチ36はオフする。
そのため、変圧器20の1次巻線U相に流れる-側電流(変圧器電流it)が-側へ増加し、1次側U相H側スイッチ11に流れる-側電流が-側へ増加し、1次側U相L側スイッチ12に電流が流れない。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31に流れる+側電流が+側へ減少し、2次側U相L側スイッチ32に電流が流れない。従って、出力される2次側電流Idc2は、-側から+側へ増加した後、-側へ減少する。
【0034】
図7-2の回路モード(5)において、1次側インバータ10内のU相H側スイッチ11はオン、U相L側スイッチ12はオフ、V相H側スイッチ13はオフ、V相L側スイッチ14はオン、W相H側スイッチ15はオフ、及びW相L側スイッチ16はオンする。同様に、2次側インバータ30内のU相H側スイッチ31はオン、U相L側スイッチ32はオフ、V相H側スイッチ33はオフ、V相L側スイッチ34はオン、W相H側スイッチ35はオフ、及びW相L側スイッチ36はオンする。
そのため、変圧器20の1次巻線U相に流れる-側電流(変圧器電流it)が+側へ増加し、1次側U相H側スイッチ11に流れる―側電流が+側へ増加し、1次側U相L側スイッチ12に電流が流れない。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31に流れる+側電流が-側へ減少し、2次側U相L側スイッチ32に電流が流れない。従って、出力される2次側電流Idc2は、-側から+側へ増加した後、-側へ減少する。
【0035】
更に、
図7-2の回路モード(6)において、1次側インバータ10内のU相H側スイッチ11はオン、U相L側スイッチ12はオフ、V相H側スイッチ13はオン、V相L側スイッチ14はオフ、W相H側スイッチ15はオフ、及びW相L側スイッチ16はオンする。同様に、2次側インバータ30内のU相H側スイッチ31はオン、U相L側スイッチ32はオフ、V相H側スイッチ33はオン、V相L側スイッチ34はオフ、W相H側スイッチ35はオフ、及びW相L側スイッチ36はオンする。
そのため、変圧器20の1次巻線U相に流れる+側電流(変圧器電流it)が+側へ増加し、1次側U相H側スイッチ11に流れる+側電流が+側へ増加し、1次側U相L側スイッチ12に電流が流れない。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31に流れる-側電流が-側へ減少し、2次側U相L側スイッチ32に電流が流れない。従って、出力される2次側電流Idc2は、-側から+側へ増加した後、-側へ減少する。2次側電流Idc2は、回路モード(1)~(6)において鋸波状の電流波形になる。
【0036】
(B2) 第2態様の制御方法
図8は、本実施例1の3相DAB型DC/DCコンバータにおける従来型DABと異なる制御方法を示す動作波形図である。この
図8では、
図1の定常状態デッドタイム無しの駆動パルスS11~S16,S31~S36(1次側デューティ比D1=0.8、2次側デューティ比D2=1.0)のパターン及び回路各部の電流波形のシミュレーション結果が示されている。
図8の設定条件は、
図6と同様に、1次側インバータ10に直流の1次側電圧E1が供給され、2次側平滑コンデンサ37の出力側に接続された図示しない負荷が短絡状態(直流の2次側電圧E2=0V)であって、1次側インバータ10の出力電圧vp(又は出力電流)と2次側インバータ30の入力電圧vs(又は入力電流)との間の位相差φが0deg(即ち、出力電力指令値が0W)となっているが、
図6とは異なり、付加されるパルスパターンの1次側デューティ比D1=0.8及び2次側デューティ比D2=1.0となっている。
【0037】
図9-1~
図9-5は、
図8の1周期の回路モード(1)~(6)及びその中に付加された回路モード(A)~(F)を示す動作図である。なお、
図7-1及び
図7-2と同様に、
図1中のリアクトル17~19等の図示が省略されている。スイッチ11~16,31~36において、実線で示されているスイッチはオン状態、破線で示されているスイッチはオフ状態である。
【0038】
図9-1の前半及び後半の回路モード(1)は、
図7-1の回路モード(1)と同様である。従って、
図9-1の回路モード(1)において、前半では、2次側電流Idc2が、-側から0Aへ増加する。後半では、2次側電流Idc2が、0Aから+側へ増加する。
図9-1の前半の回路モード(1)と後半の回路モード(1)との間の回路モード(A)では、1次側駆動パルスS11~S16に、デューティ比D1=0.8のパルスパターンが付加されるので、1次側インバータ10内の全L側スイッチ12,14,16がオンする。そのため、変圧器20の1次巻線U相に一定の+側電流(変圧器電流it)が流れ、1次側U相H側スイッチ11に電流が流れず、1次側U相L側スイッチ12に一定の-側電流が流れる。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31に電流が流れず、2次側U相L側スイッチ32に一定の+側電流が流れる。従って、出力される2次側電流Idc2は、0Aとなる。
【0039】
図9-1の前半の回路モード(2)と
図9-2の後半の回路モード(2)とは、
図7-1の回路モード(2)と同様である。従って、
図9-1及び
図9-2の回路モード(2)において、前半では、2次側電流Idc2が、-側から0Aへ増加する。後半では、2次側電流Idc2が、0Aから+側へ増加する。
図9-1の前半の回路モード(2)と
図9-2の後半の回路モード(2)との間の回路モード(B)では、1次側駆動パルスS11~S16に、1次側デューティ比D1=0.8のパルスパターンが付加されるので、1次側インバータ10内の全H側スイッチ11,13,15がオンする。そのため、変圧器20の1次巻線U相、1次側U相H側スイッチ11、及び1次側U相L側スイッチ12に、電流が流れない。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31、及び2次側U相L側スイッチ32に、電流が流れない。従って、2次側電流Idc2は、0Aとなる。
【0040】
図9-2の前半の回路モード(3)と
図9-3の後半の回路モード(3)とは、
図7-1の回路モード(3)と同様である。従って、
図9-2及び
図9-3の回路モード(3)において、前半では、2次側電流Idc2が、-側から0Aへ増加し、後半では、2次側電流Idc2が、0Aから+側へ増加する。
図9-2の前半の回路モード(3)と
図9-3の後半の回路モード(3)との間の回路モード(C)では、1次側駆動パルスS11~S16に、1次側デューティ比D1=0.8のパルスパターンが付加されるので、1次側インバータ10内の全L側スイッチ12,14,16がオンする。そのため、変圧器20の1次巻線U相に一定の-側電流(変圧器電流it)が流れ、1次側U相H側スイッチ11に電流が流れず、1次側U相L側スイッチ12に一定の+側電流が流れる。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31に電流が流れず、2次側U相L側スイッチ32に一定の-側電流が流れる。従って、2次側電流Idc2は、0Aとなる。
【0041】
図9-3の前半の回路モード(4)と後半の回路モード(4)とは、
図7-1の回路モード(4)と同様である。従って、
図9-3の回路モード(4)において、前半では、2次側電流Idc2が、-側から0Aへ増加し、後半では、2次側電流Idc2が、0Aから+側へ増加する。
図9-3の前半の回路モード(4)と後半の回路モード(4)との間の回路モード(D)では、1次側駆動パルスS11~S16に、1次側デューティ比D1=0.8のパルスパターンが付加されるので、1次側インバータ10内の全H側スイッチ11,13,15がオンする。そのため、変圧器20の1次巻線U相に一定の-側電流(変圧器電流it)が流れ、1次側U相H側スイッチ11に一定の-側電流が流れ、1次側U相L側スイッチ12に電流が流れない。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31に一定の+側電流が流れ、2次側U相L側スイッチ32に電流が流れない。従って、2次側電流Idc2は、0Aとなる。
【0042】
図9-4の前半の回路モード(5)と後半の回路モード(5)とは、
図7-2の回路モード(5)と同様である。従って、
図9-4の回路モード(5)において、前半では、2次側電流Idc2が、-側から0Aへ増加し、後半では、2次側電流Idc2が、0Aから+側へ増加する。
図9-4の前半の回路モード(5)と後半の回路モード(5)との間の回路モード(E)では、1次側駆動パルスS11~S16に、1次側デューティ比D1=0.8のパルスパターンが付加されるので、1次側インバータ10内の全L側スイッチ12,14,16がオンする。そのため、変圧器20の1次巻線U相、1次側U相H側スイッチ11、及び1次側U相L側スイッチ12に電流が流れない。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31、及び2次側U相L側スイッチ32に電流が流れない。従って、2次側電流Idc2は、0Aとなる。
【0043】
図9-4の前半の回路モード(6)と
図9-5の後半の回路モード(6)とは、
図7-2の回路モード(6)と同様である。従って、
図9-4及び
図9-5の回路モード(6)において、前半では、2次側電流Idc2が、-側から0Aへ増加し、後半では、2次側電流Idc2が、0Aから+側へ増加する。
図9-4の前半の回路モード(6)と
図9-5の後半の回路モード(6)との間の回路モード(F)では、1次側駆動パルスS11~S16に、1次側デューティ比D1=0.8のパルスパターンが付加されるので、1次側インバータ10内の全H側スイッチ11,13,15がオンする。そのため、変圧器20の1次巻線U相、及び1次側U相H側スイッチ11に一定の+側電流が流れ、1次側U相L側スイッチ12に電流が流れない。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31に一定の-側電流が流れ、2次側U相L側スイッチ32に電流が流れない。従って、2次側電流Idc2は、0Aとなる。
【0044】
(B3) 第3態様の制御方法
図10は、本実施例1の3相DAB型DC/DCコンバータにおける従来型DABと異なる制御方法を示す動作波形図である。この
図10では、
図1の定常状態デッドタイム無しの駆動パルスS11~S16,S31~S36(1次側デューティ比D1=0.66、2次側デューティ比D2=1.0)のパターン及び回路各部の電流波形のシミュレーション結果が示されている。
図10の設定条件は、
図8と同様に、1次側インバータ10に直流の1次側電圧E1が供給され、2次側平滑コンデンサ37の出力側に接続された図示しない負荷が短絡状態(直流の2次側電圧E2=0V)であって、1次側インバータ10の出力電圧vp(又は出力電流)と2次側インバータ30の入力電圧vs(又は入力電流)との間の位相差φが0deg(即ち、出力電力指令値が0W)となっているが、
図8とは異なり、付加されるパルスパターンの1次側デューティ比D1=0.66及び2次側デューティ比D2=1.0となっている。
【0045】
図11-1及び
図11-2は、
図10の1周期の回路モード(A)~(F)を示す動作図である。なお、
図9-1~
図9-5と同様に、
図1中のリアクトル17~19等の図示が省略されている。スイッチ11~16,31~36において、実線で示されているスイッチはオン状態、破線で示されているスイッチはオフ状態である。
【0046】
図11-1の回路モード(A)では、1次側駆動パルスS11~S16が、1次側デューティ比D1=0.66であり、1次側インバータ10内の全L側スイッチ12,14,16がオンする。そのため、変圧器20の1次巻線U相、1次側U相H側スイッチ11、及び1次側U相L側スイッチ12に、電流が流れない。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31及び2次側U相L側スイッチ32に、電流が流れない。従って、2次側電流Idc2は、0Aとなる。
図11-1の回路モード(B)では、1次側駆動パルスS11~S16が、1次側デューティ比D1=0.66であり、1次側インバータ10内の全H側スイッチ11,13,15がオンする。そのため、変圧器20の1次巻線U相、1次側U相H側スイッチ11、及び1次側U相L側スイッチ12に、電流が流れない。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31及び2次側U相L側スイッチ32に、電流が流れない。従って、2次側電流Idc2は、0Aとなる。
図11-1の回路モード(C)では、1次側駆動パルスS11~S16が、1次側デューティ比D1=0.66であり、1次側インバータ10内の全L側スイッチ12,14,16がオンする。そのため、変圧器20の1次巻線U相、1次側U相H側スイッチ11、及び1次側U相L側スイッチ12に、電流が流れない。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31及び2次側U相L側スイッチ32に、電流が流れない。従って、2次側電流Idc2は、0Aとなる。
図11-1の回路モード(D)では、1次側駆動パルスS11~S16が、1次側デューティ比D1=0.66であり、1次側インバータ10内の全H側スイッチ11,13,15がオンする。そのため、変圧器20の1次巻線U相、1次側U相H側スイッチ11、及び1次側U相L側スイッチ12に、電流が流れない。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31及び2次側U相L側スイッチ32に、電流が流れない。従って、2次側電流Idc2は、0Aとなる。
図11-2の回路モード(E)では、1次側駆動パルスS11~S16が、1次側デューティ比D1=0.66であり、1次側インバータ10内の全L側スイッチ12,14,16がオンする。そのため、変圧器20の1次巻線U相、1次側U相H側スイッチ11、及び1次側U相L側スイッチ12に、電流が流れない。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31及び2次側U相L側スイッチ32に、電流が流れない。従って、2次側電流Idc2は、0Aとなる。
更に、
図11-2の回路モード(F)では、1次側駆動パルスS11~S16が、1次側デューティ比D1=0.66であり、1次側インバータ10内の全H側スイッチ11,13,15がオンする。そのため、変圧器20の1次巻線U相、1次側U相H側スイッチ11、及び1次側U相L側スイッチ12に、電流が流れない。これに対応して、2次側U相H側スイッチ31及び2次側U相L側スイッチ32に、電流が流れない。従って、2次側電流Idc2は、0Aとなる。
以上の第1態様から第3態様の制御方法(B1)~(B3)において、出力電力指令値である位相差φは0degであるので、回路に流れている電流はすべて回路を循環するのみの無効電流成分となる。そのため、回路各部に流れる電流は少ない方が好ましい。
【0047】
本実施例1では、1周期の回路遷移において、従来型DABと同様の回路モード(1)~(6)に、1次側デューティ比D1の回路モード(A)~(F)を付加するか、或いは、回路モード(1)~(6)に代えて、1次側デューティ比D1の回路モード(A)~(F)を設けている。シミュレーション結果より、付加する1次側デューティ比D1が0.66の時には、回路モード(A)~(F)に従来型DABの制御方法のパターンが全く発生しなくなり、回路内を循環する電流が理論上0Aとなることが分かる。
このように、付加する1次側デューティ比D1を変更することにより、回路内を循環する電流値を、従来型DAB(デューティ比D=1.0)よりも低減できる。しかし、出力指令値である位相差φを最大まで増大しても、従来型DABと同等の出力電力値を得ることができない。
そこで、本実施例1では、制御部40A内の出力電力指令値算出部44により、付加する1次側デューティ比D1(及び/又は2次側デューティ比D2)を、位相差φの指令値と1次側/2次側電圧比E1/E2とに応じて可変し、従来型DABと同様の最大出力電力値を得ると共に、デューティ比付加による軽負荷時の循環電流の低減を図っている。以下、その制御方法の特徴を説明する。
【0048】
(実施例1の制御方法の特徴)
図12は、付加する1次側デューティ比D1を変更する時の回路内循環電流を示す特性図である。
この
図12において、横軸は1次側デューティ比D1、及び、縦軸は無負荷時の回路内を循環する変圧器電流実効値IT[Arms](位相差φ=0deg固定)であり、一定の1次側電圧E1に対して2次側電圧E2が異なる電圧E2(1)~E2(6)の時の曲線が示されている。E2(1)は、E2>E1の時の2次側電圧、E2(2)は、E2=E1の時の2次側電圧、E2(3)は、E2<E1の時の2次側電圧、E2(4)は、E2<E2(3)の時の2次側電圧、E2(5)は、E2<E2(4)の時の2次側電圧、及び、E2(6)は、E2=0Vの時の2次側電圧である。
【0049】
図13は、位相差φ[deg]に対する出力電力Po[IW]の特性図である。
この
図13では、1次側/2次側電圧比E1/E2=2の場合の無負荷時に、回路内を循環する変圧器電流実効値ITが最小となる付加デューティ比D1を0.84に固定した際の位相差φ変更時の出力電力Poの曲線と、従来型DABにおける出力電力Poの曲線と、実施例1における出力電力Poの曲線と、が示されている。
図12において、従来型DABでは、破線領域47で示すように、付加デューティ比Dが1.0で動作している。これに対して、本実施例1では、回路内を循環する変圧器電流実効値ITが、付加する1次側デューティ比D1を変更することにより、従来型DABよりも低減されている。しかし、本実施例1の破線領域48で示すように、変圧器電流実効値ITが最小となる1次側デューティ比D1は、1次側/2次側電圧比E1/E2で異なるので、サーチする必要がある。
図13の破線符号49に示すように、無負荷時に変圧器電流実効値ITが最小となる1次側デューティ比D1=0.84で固定した場合、出力電力Poが低下してしまう。そのため、出力電力指令値である位相差φを最大まで増大しても、従来型DABと同等の出力電力Poが得られない。
そこで、本実施例1では、
図1の制御部40Aにおいて、制御ループを2重にして、誤差部41及び補正部42を有する定電流制御と、実効値算出部43及び出力電力指令値算出部44を有する付加デューティ比制御と、の2重ループを形成することにより、位相差φが増大する重負荷領域に動作領域が移行するに従って、付加する1次側デューティ比D1を低減し、従来型DAB制御に動作パターンを近づけている。これにより、従来型DABと同様の最大出力電力値と、1次側デューティ比D1の付加による軽負荷時の回路内を循環する変圧器電流実効値ITを低減している。
【0050】
(実施例1の変形例)
図3、
図8及び
図10では、1次側駆動パルスS11~S16に、1次側デューティ比D1のパルスパターンを付加した制御方法を説明したが、2次側駆動パルスS31~S36にのみ、2次側デューティ比D2のパルスパターンを付加する制御方法、或いは、1次側デューティ比D1及び2次側デューティ比D2のパルスパターンを共に付加する制御方法に変更しても良い。このような制御方法を採用しても、上記実施例1と略同様の作用を奏することができる。
【0051】
(実施例1の効果)
本実施例1のDAB型DC/DCコンバータとその制御部40A及び制御方法によれば、複数の1次側駆動パルスS11~S16中及び/又は複数の2次側駆動パルスS31~S36中に、H側スイッチ11,13,15,31,33,35のすべて及び/又はL側スイッチ12,14,16,32,34,36のすべてを同時にオンするパルスパターンを付加する際に、そのパルスパターンの1次側、2次側デューティ比D1,D2を、位相差φの指令値と、1次側/2次側電圧比E1/E2と、に応じて可変している。そのため、従来型DABと基本的な双方向制御(即ち、位相差φを用いた制御)から大きな制御構成を変更することなく、先の提案の1次側、2次側デューティ比D1,D2を付加する動作が可能になる。従って、軽負荷時に回路内を循環する電流を低減しつつ、出力電流(出力電力)の低減を抑制できる。これにより、制御性を向上できる。
【実施例2】
【0052】
(実施例2の構成)
図14は、本発明の実施例2における制御部40Bの構成を示す機能ブロック図であり、実施例1の制御部40A内の要素と共通の要素には、共通の符号が付されている。
本実施例2の3相DAB型DC/DCコンバータは、実施例1と同様の電力変換部を有し、この電力変換部を制御するための制御部40Bの構成が、実施例1の制御部40Aと異なっている。
本実施例2の制御部40Bは、2次側電流指令値I2と2次側電流Id2との誤差eを求める実施例1と同様の誤差部41を有し、この出力側に、出力電力指令値算出部50が接続されている。出力電力指令値算出部50は、誤差部41で求められた誤差eに基づき、出力電力指令値となる位相差φを算出するものであり、この出力側に、駆動パルス生成部51及びデューティ比生成部52が接続されている。駆動パルス生成部51は、出力電力指令値算出部50で算出された位相差φに基づき、複数の1次側駆動パルスS11~S16及び複数の2次側駆動パルスS31~S36を生成するものであり、この出力側に、パルスパターン付加部53が接続されている。
デューティ比生成部52は、1次側/2次側電圧比E1/E2と、出力電力指令値算出部50で算出された位相差φと、に基づき、演算により、又はテーブルデータ等を用いて、H側スイッチ11,13,15,31,33,35のすべて及び/又はL側スイッチ12,14,16,32,34,36のすべてを同時にオンするパルスパターンの1次側デューティ比D1及び/又は2次側デューティ比D2を生成するものであり、この出力側に、パルスパターン付加部53が接続されている。パルスパターン付加部53は、複数の1次側駆動パルス11~16中に1次側デューティ比D1のパルスパターンを付加し、及び/又は、複数の2次側駆動パルス31~36中に2次側デューティ比D2のパルスパターンを付加するものであり、この出力側に、実施例1と同様の1次側パルス駆動部45及び2次側パルス駆動部46が接続されている。
1次側パルス駆動部45は、1次側デューティ比D1のパルスパターンが付加された複数の1次側駆動パルスS11~S16により、1次側インバータ10における複数のH側スイッチ11,13,15及びL側スイッチ12,14,16をそれぞれオン/オフ動作させるものである。更に、2次側パルス駆動部46は、2次側デューティ比D2のパルスパターンが付加された複数の2次側駆動パルスS31~S36により、2次側インバータ30における複数のH側スイッチ31,33,35及びL側スイッチ32,34,36をそれぞれオン/オフ動作させるものである。
制御部40Bにおいて、誤差部41、出力電力指令値算出部50、駆動パルス生成部51、デューティ比生成部52、及びパルスパターン付加部53は、例えば、CPUや、半導体素子等の個別回路により構成されている。1次側パルス駆動部45及び2次側パルス駆動部46は、トランジスタ等の個別回路により構成されている。
【0053】
(実施例2の制御方法)
1次側電圧E1と2次側電圧E2とが近い場合の通常の定電流制御動作(C1)と、無負荷時(φ=0deg)の2次側短絡の場合の定電流制御動作(C2)と、を説明する。
【0054】
(C1) 1次側電圧E1と2次側電圧E2とが近い場合の通常の定電流制御動作
制御部40Bにおいて、2次側電流指令値I2に対して測定された2次側電流Idc2が変動すると、誤差部41により、2次側電流指令値I2と2次側電流Idc2との誤差eが求められ、その誤差eが出力電力指令値算出部50に入力される。出力電力指令値算出部50は、入力された誤差eを0にするような、1次側インバータ10の出力電圧vp(又は出力電流)と2次側インバータ30の入力電圧vp(又は入力電流)との位相差φを算出し、この位相差φを駆動パルス生成部51及びデューティ比生成部52へ入力する。
駆動パルス生成部51は、入力された位相差φに基づき、複数の1次側駆動パルスS11~S16及び複数の2次側駆動パルスS31~S36を生成して、パルスパターン付加部53へ入力する。デューティ比生成部52は、入力された位相差φと、計測された1次側/2次側電圧比E1/E2と、に基づき、H側スイッチ11,13,15,31,33,35のすべて及び/又はL側スイッチ12,14,16,32,34,36のすべてを同時にオンするパルスパターンの1次側デューティ比D1及び/又は2次側デューティ比D2を生成して、パルスパターン付加部53へ与える。
パルスパターン付加部53は、複数の1次側駆動パルス11~16中に1次側デューティ比D1のパルスパターンを付加し、及び/又は、複数の2次側駆動パルス31~36中に2次側デューティ比D2のパルスパターンを付加する。すると、1次側パルス駆動部45では、1次側デューティ比D1のパルスパターンが付加された複数の1次側駆動パルスS11~S16により、1次側インバータ10における複数のH側スイッチ11,13,15及びL側スイッチ12,14,16をそれぞれオン/オフ動作させる。更に、2次側パルス駆動部46では、2次側デューティ比D2のパルスパターンが付加された複数の2次側駆動パルスS31~S36により、2次側インバータ30における複数のH側スイッチ31,33,35及びL側スイッチ32,34,36をそれぞれオン/オフ動作させる。これにより、2次側電流Idc2が変化し、この2次側電流Idc2が2次側電流指令値I2に一致するような定電流動作が行われる。
【0055】
(C2) 無負荷時(φ=0deg)の2次側短絡の場合の定電流制御動作
例えば、負荷の変動によって2次側電圧E2が0V(短絡状態)になった場合の定電流制御動作を説明する。
図14の制御部40Bにおいて、2次側電圧E2が0Vになると、平滑コンデンサ37に蓄積された電荷が放電され、瞬時的にパルス状の大電流が発生するが、その後、2次側電流Idc2が一定値に維持される。この時、出力電力指令値算出部50は、入力された誤差eを減少するような、1次側インバータ10の出力電圧vp(又は出力電流)と2次側インバータ30の入力電圧vp(又は入力電流)との位相差φを算出し、この位相差φを駆動パルス生成部51及びデューティ比生成部52へ入力する。駆動パルス生成部51は、入力された位相差φに基づき、複数の1次側駆動パルスS11~S16及び複数の2次側駆動パルスS31~S36を生成して、パルスパターン付加部53へ入力する。
デューティ比生成部52は、入力された位相差φと、計測された1次側/2次側電圧比E1/E2と、に基づき、H側スイッチ11,13,15,31,33,35のすべて及び/又はL側スイッチ12,14,16,32,34,36のすべてを同時にオンするパルスパターンの1次側デューティ比D1及び/又は2次側デューティ比D2を生成する。この際、デューティ比生成部52では、入力される位相差φの絶対値の増大に従って、1次側デューティ比D1及び/又は2次側デューティ比D2を1.0に近づける制御、即ち、位相差φが増大する重負荷領域に動作領域が移行するに従って、1次側デューティ比D1及び/又は2次側デューティ比D2を低減する制御を行う。
パルスパターン付加部53は、デューティ比生成部52で生成された1次側デューティ比D1及び/又は2次側デューティ比D2に基づき、複数の1次側駆動パルス11~16中に1次側デューティ比D1のパルスパターンを付加し、及び/又は、複数の2次側駆動パルス31~36中に2次側デューティ比D2のパルスパターンを付加する。
すると、1次側パルス駆動部45では、1次側デューティ比D1のパルスパターンが付加された複数の1次側駆動パルスS11~S16により、1次側インバータ10における複数のH側スイッチ11,13,15及びL側スイッチ12,14,16をそれぞれオン/オフ動作させる。更に、2次側パルス駆動部46では、2次側デューティ比D2のパルスパターンが付加された複数の2次側駆動パルスS31~S36により、2次側インバータ30における複数のH側スイッチ31,33,35及びL側スイッチ32,34,36をそれぞれオン/オフ動作させる。これにより、2次側電流Idc2が変化し、この2次側電流Idc2が2次側電流指令値I2に一致するような定電流動作が行われる。
【0056】
(実施例2の制御方法の特徴)
図15は、本実施例2において付加する1次側デューティ比D1の変更例を示す特性図である。この
図15において、横軸は位相差φ[deg]、及び、縦軸は付加する1次側デューティ比D1である。
実施例1の
図12の場合、1次側デューティ比D1(及び2次側デューティ比D2)は、変圧器電流実効値ITをサーチした結果の値になる。これに対して、本実施例2では、サーチせずに1次側デューティ比D1(及び2次側デューティ比D2)を決定しなければならないので、
図15のような特性を予め決定しておく必要がある。そのための一例として、
図15の特性図が示されている。
図15の破線領域54に示すように、位相差φ[deg]=0において、無負荷時に変圧器電流実効値ITが1次側デューティ比D1=0.84で最小になり、+側位相差φ[deg]と-側位相差φ[deg]へ一定の勾配で立ち上がっている。破線領域55に示すように、本実施例2では、1次側デューティ比D1を負荷(即ち、位相差指令値)に応じて可変している。これに対して、従来型DABでは、位相差φ[deg]の変更に関わらず、1次側デューティ比Dは一定の1である。
本実施例2では、
図15に示すように、制御部40Bにより、位相差φ=0[deg]より、この位相差φの絶対値の増大に従って、付加する1次側デューティ比D1を1.0に近づける制御を行っている。これにより、従来型DABと同様の最大出力電力値と、1次側デューティ比D1の付加による軽負荷時の回路内を循環する変圧器電流実効値ITを低減している。
【0057】
(実施例2の変形例)
図15では、1次側駆動パルスS11~S16に、1次側デューティ比D1のパルスパターンを付加した制御方法を説明したが、2次側駆動パルスS31~S36にのみ、2次側デューティ比D2のパルスパターンを付加する制御方法、或いは、1次側デューティ比D1及び2次側デューティ比D2のパルスパターンを共に付加する制御方法に変更しても良い。このような制御方法を採用しても、上記実施例2と略同様の作用を奏することができる。
又、
図14において、誤差部41と出力電力指令値算出部50との間に、
図1と同様に、フィードバック制御の遅れ要素を補正するためのPI制御等の補正部42を設ければ、制御精度をより向上できる。
【0058】
(実施例2の効果)
本実施例2のDAB型DC/DCコンバータとその制御部40B及び制御方法によれば、複数の1次側駆動パルスS11~S16中及び/又は複数の2次側駆動パルスS31~S36中に、H側スイッチ11,13,15,31,33,35のすべて及び/又はL側スイッチ12,14,16,32,34,36のすべてを同時にオンするパルスパターンを付加する際に、1次側/2次側電圧比E1/E2と動作時点での位相差φを用い、その付加するパルスパターンの1次側、2次側デューティ比D1,D2を可変している。そのため、実施例1と同様に、従来型DABと基本的な双方向制御(即ち、位相差φを用いた制御)から大きな制御構成を変更することなく、先の提案の1次側、2次側デューティ比D1,D2を付加する動作が可能になる。従って、軽負荷時に回路内を循環する電流を低減しつつ、出力電流(出力電力)の低減を抑制できる。これにより、制御性を向上できる。
【0059】
(実施例1、2の他の変形例)
本発明は、上記実施例1、2及びその変形例に限定されず、その他の利用形態や変形が可能である。この変形例としては、例えば、次のようなものがある。
図1に示すDAB型DC/DCコンバータにおける電力変換部の構成、或いは、
図1、
図2及び
図14に示す制御部40A,40Bの構成は、図示以外の構成に変更しても良い。又、1次側インバータ10、2次側インバータ30、及び変圧器20は、3相以外に、単相、或いは4相以上に変更しても、本発明の制御方法を適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1 1次側平滑コンデンサ
10 1次側インバータ
11~16,31~36 スイッチ
17~19 リアクトル
20 変圧器
30 2次側インバータ
37 2次側平滑コンデンサ
40A,40B 制御部
41 誤差部
42 補正部
43 実効値算出部
44,50 出力電力指令値算出部
45 1次側パルス駆動部
46 2次側パルス駆動部
51 駆動パルス生成部
52 デューティ比生成部
53 パルスパターン付加部