(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】廃棄物処理システム
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20230629BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20230629BHJP
【FI】
B09B5/00 M ZAB
B09B3/40
(21)【出願番号】P 2018200953
(22)【出願日】2018-10-25
【審査請求日】2021-08-26
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000163095
【氏名又は名称】極東開発工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】山根 哲
(72)【発明者】
【氏名】千葉 信之
(72)【発明者】
【氏名】植村 晟也
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-269399(JP,A)
【文献】特開2017-039066(JP,A)
【文献】特開2018-065063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を破砕する破砕装置と、焼却装置と、搬送手段を有し、破砕装置で破砕された破砕物を搬送手段によって焼却装置に搬送し、廃棄物を焼却処理する廃棄物処理システムにおいて、
前記搬送手段には、焼却装置に破砕物を搬入するルートとして、通常搬送ルートと、遅延搬送ルートがあり、
水銀蒸気を検出する水銀検出手段と、破砕物の搬送先を変更する振り分け手段を有し、 水銀検出手段は、前記破砕装置内から前記焼却装置に至る前の区間の内の少なくとも一か所における水銀蒸気を検知可能であり、前記水銀検出手段が基準以上の水銀蒸気を検出した場合に振り分け手段によって破砕物の搬送先が変更され、
破砕物を一時的に貯留する一時貯留部を有し、振り分け手段によって搬送先が変更された破砕物が、前記一時貯留部に搬送され、
前記水銀検出手段によって検出される水銀量が少ない状態のときに、
前記搬送手段の遅延搬送ルートを経由して前記一時貯留部に貯留された破砕物を通常時よりも少量ずつ焼却装置に搬入して焼却処理することを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項2】
廃棄物を破砕する破砕装置と、焼却装置と
、搬送手段とを有し、破砕装置で破砕された破砕物を
搬送手段によって焼却装置に搬送し、廃棄物を焼却処理する廃棄物処理システムにおいて、
水銀蒸気を検出する水銀検出手段と、破砕物の搬送先を変更する振り分け手段を有し、 前記水銀検出手段が基準以上の水銀蒸気を検出した場合に所定の動作が実行され、自動的に及び/又は手動操作によって振り分け手段を切り換えて破砕物の搬送先を変更することが可能であり、
前記搬送手段には、焼却装置に破砕物を搬入するルートとして、通常搬送ルートと、遅延搬送ルートがあり、
破砕物を一時的に貯留する一時貯留部を有し、振り分け手段によって搬送先が変更された破砕物が、前記一時貯留部に搬送され、
前記水銀検出手段によって検出される水銀量が少ない状態のときに、
前記搬送手段の遅延搬送ルートを経由して前記一時貯留部に貯留された破砕物を通常時よりも少量ずつ焼却装置に搬入して焼却処理することを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項3】
水銀処理手段を備え、
水銀検出手段は廃棄物の搬送経路近傍の水銀蒸気濃度を検知するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の廃棄物処理システム。
【請求項4】
水銀処理手段を備え、水銀処理手段の能力を超えない範囲で、一時貯留部に貯留された破砕物を焼却装置に搬入して焼却処理することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の廃棄物処理システム。
【請求項5】
前記一時貯留部に貯留された破砕物を他の破砕物に混ぜて焼却装置に搬入して焼却処理することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の廃棄物処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ゴミや粗大ゴミ等の一般家庭や商店から出る廃棄物(以下、単にゴミと称する場合がある)、解体した家屋や工場から出る産業廃棄物を処理する廃棄物処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
資源をリサイクルする目的や、地方自治体のゴミ処理量を軽減する目的から、ゴミの分別が提唱され、一般家庭にも周知されている。
そのため各家庭から排出されるゴミや、商店から排出されるゴミは、家庭内や商店側で、資源として再利用されるゴミ、燃えるゴミ、燃えないゴミに分別され、地方自治体の職員等によって回収される。さらに回収されたゴミの多くは、地方自治体の職員等の手によっても分別される。
【0003】
一般家庭等から排出された燃えないゴミ等は、破砕・選別装置によってさらに破砕・選別され、選別された可燃物が焼却装置に送られて焼却処理される。
ところで、前記した様にゴミは家庭内や地方自治体の職員等によって分別されるが、ゴミは大量、且つ雑多であるため、ゴミの中に、水銀を含んだゴミが紛れ込んでしまう場合がある。
近年では水銀の毒性が広く認識され、水銀を使用する製品は少ないが、過去には水銀の有害性が十分に認識されていなかった時代があり、その時代に生産された物の中には水銀を含む物もある。
例えば、古い時代に作られた蛍光灯や水銀灯等の様な照明器具、体温計や血圧計等の様な計器類、電池、鏡等には水銀を含むものがある。
【0004】
水銀を含むゴミが誤って焼却装置に投入されてしまい、それが加熱されると水銀が気化し、環境を汚染する懸念がある。
そこで、水銀を含むゴミが誤って焼却装置に混入した場合に備え、水銀処理装置を配備した都市ごみ焼却施設が特許文献1に開示されている。
特許文献1は、焼却炉の排ガス中の水銀を除去する水銀処理手段の一例を開示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水銀処理手段を備えた廃棄物処理システムでは、水銀を含むゴミが混入しても、当該水銀は無害化されたり、大気に拡散する前に捕捉される。そのため水銀処理手段を備えた廃棄物処理システムを利用すれば、環境汚染を引き起こす懸念は低い。
しかしながら、一般に、水銀処理手段の処理能力には限りがある。
【0007】
そのため従来技術においては、ゴミの中に水銀処理能力を超えた水銀が含まれる場合には、廃棄物処理システムの全体を一旦休止させ、ゴミの投入量を減らすという様な処置を行う必要があった。そのためゴミ処理作業が中断し、作業効率が低下してしまうという問題があった。
ここで水銀処理手段の処理能力自体を増大させれば、ゴミ処理作業を中断させる必要は無いが、設備投資が嵩むこととなり、実用的な解決手段ではない。
また大気汚染を防ぐ目的から、外部に放出される燃焼ガス中の水銀濃度を監視し、その値が一定値を超えると、焼却装置等を自動停止させる様なシステム構成のものもある。
【0008】
本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、水銀を含有するゴミが導入されても、外部に水銀を排出してしまう懸念が低く、且つゴミ処理作業を中断させることも少ない廃棄物処理システムを開発することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するための態様は、廃棄物を破砕する破砕装置と、焼却装置と、搬送手段を有し、破砕装置で破砕された破砕物を搬送手段によって焼却装置に搬送し、廃棄物を焼却処理する廃棄物処理システムにおいて、水銀蒸気を検出する水銀検出手段と、破砕物の搬送先を変更する振り分け手段を有し、水銀検出手段は、前記破砕装置内から前記焼却装置に至る前の区間の内の少なくとも一か所における水銀蒸気を検知可能であり、前記水銀検出手段が基準以上の水銀蒸気を検出した場合に振り分け手段によって破砕物の搬送先が変更されることを特徴とする廃棄物処理システムである。
上記した課題を解決するための具体的態様は、廃棄物を破砕する破砕装置と、焼却装置と、搬送手段を有し、破砕装置で破砕された破砕物を搬送手段によって焼却装置に搬送し、廃棄物を焼却処理する廃棄物処理システムにおいて、水銀蒸気を検出する水銀検出手段と、破砕物の搬送先を変更する振り分け手段を有し、水銀検出手段は、前記破砕装置内から前記焼却装置に至る前の区間の内の少なくとも一か所における水銀蒸気を検知可能であり、前記水銀検出手段が基準以上の水銀蒸気を検出した場合に振り分け手段によって破砕物の搬送先が変更され、破砕物を一時的に貯留する一時貯留部を有し、振り分け手段によって搬送先が変更された破砕物が、前記一時貯留部に搬送され、前記水銀検出手段によって検出される水銀量が少ない状態のときに、前記一時貯留部に貯留された破砕物を通常時よりも少量ずつ焼却装置に搬入して焼却処理することを特徴とする廃棄物処理システムである。
【0010】
本態様の廃棄物処理システムは、破砕装置を有し、当該破砕装置でゴミを破砕した後、焼却装置で焼却する。
ここで例えば体温計であれば、内部に金属水銀が内蔵されているが、破砕装置で破砕されることによってガラス部分が割れ、内部の金属水銀が漏れ出る。その結果、周囲に水銀の蒸気が拡散することとなる。
本態様の廃棄物処理システムは、水銀検出手段を備え、破砕装置内から焼却装置に至る前の区間の少なくとも一か所における水銀蒸気を検知可能である。例えば破砕装置内、破砕装置の排出口周辺、搬送手段等のいずれかの部位に水銀検出手段が設けられている。
仮に破砕装置内に水銀検出手段が設けられている場合であれば、割れた直後の体温計から漏出した水銀蒸気が検知される。破砕装置の排出口周辺や搬送手段等に水銀検出手段が設けられている場合であれば、拡散中の水銀蒸気が検知される。
いずれにしても、焼却装置に至る前に水銀が漏出したことを検知することができる。水銀検出手段が基準以上の水銀蒸気を検出した場合には、水銀の漏出量が多いと予想される。
そこで、本態様の廃棄物処理システムでは、水銀検出手段が基準以上の水銀蒸気を検出した場合に振り分け手段によって破砕物の搬送先が変更し、焼却装置に導入される水銀を含有するゴミを減らすこととした。
【0011】
同様の課題を解決するもう一つの態様は、廃棄物を破砕する破砕装置と、焼却装置を有し、破砕装置で破砕された破砕物を焼却装置に搬送し、廃棄物を焼却処理する廃棄物処理システムにおいて、水銀蒸気を検出する水銀検出手段と、破砕物の搬送先を変更する振り分け手段を有し、前記水銀検出手段が基準以上の水銀蒸気を検出した場合に所定の動作が実行され、自動的に及び/又は手動操作によって振り分け手段を切り換えて破砕物の搬送先を変更することが可能であることを特徴とする廃棄物処理システムである。
上記した課題を解決するための具体的態様は、廃棄物を破砕する破砕装置と、焼却装置を有し、破砕装置で破砕された破砕物を焼却装置に搬送し、廃棄物を焼却処理する廃棄物処理システムにおいて、水銀蒸気を検出する水銀検出手段と、破砕物の搬送先を変更する振り分け手段を有し、前記水銀検出手段が基準以上の水銀蒸気を検出した場合に所定の動作が実行され、自動的に及び/又は手動操作によって振り分け手段を切り換えて破砕物の搬送先を変更することが可能であり、破砕物を一時的に貯留する一時貯留部を有し、振り分け手段によって搬送先が変更された破砕物が、前記一時貯留部に搬送され、前記水銀検出手段によって検出される水銀量が少ない状態のときに、前記一時貯留部に貯留された破砕物を通常時よりも少量ずつ焼却装置に搬入して焼却処理することを特徴とする廃棄物処理システムである。
【0012】
上記した各態様において、水銀処理手段を備え、水銀検出手段は廃棄物の搬送経路近傍の水銀蒸気濃度を検知するものであることが望ましい。
【0013】
上記した各態様において、破砕物を一時的に貯留する一時貯留部を有し、振り分け手段によって搬送先が変更された破砕物が、前記一時貯留部に搬送されることが望ましい。
【0014】
上記した各態様において、水銀処理手段を備え、前記水銀検出手段によって検出される水銀量が少ない状態のときに、前記一時貯留部に貯留された破砕物を通常時よりも少量ずつ焼却装置に搬入して焼却処理することが望ましい。
【0015】
本態様によると、水銀処理手段の能力を超えない範囲で、一時貯留部に貯留された破砕物を燃やすことができる。
上記した各態様において、水銀処理手段を備え、水銀処理手段の能力を超えない範囲で、一時貯留部に貯留された破砕物を焼却装置に搬入して焼却処理することが望ましい。
上記した各態様において、前記一時貯留部に貯留された破砕物を他の破砕物に混ぜて焼却装置に搬入して焼却処理することが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の廃棄物処理システムは、水銀を含有するゴミが導入されても、外部に水銀を排出してしまう懸念が低く、且つゴミ処理作業を中断させることも少ない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の廃棄物処理システムの構成図である。
【
図2】
図1の廃棄物処理システムの構成図であって、水銀検出手段の検出値が上限値未満である場合のゴミの流れを示す。
【
図3】
図1の廃棄物処理システムの構成図であって、水銀検出手段の検出値が上限値以上である場合のゴミの流れを示す。
【
図4】
図1の廃棄物処理システムの構成図であって、一時貯留部にゴミ(破砕物)があり、且つ水銀検出手段の検出値が安全値以下である場合のゴミの流れを示す。
【
図5】
図1の廃棄物処理システムの構成図であって、一時貯留部にゴミ(破砕物)があり、当該一時貯留部内のゴミを外部に排出する際のゴミの流れを示す。
【
図6】本発明の他の実施形態の廃棄物処理システムの構成図である。
【
図7】本発明のさらに他の実施形態の廃棄物処理システムの構成図である。
【
図8】本発明のさらに他の実施形態の廃棄物処理システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の廃棄物処理システム1は、機械的構成として
図1の様に、ゴミ投入コンベヤ2、破砕装置3、破砕物搬送コンベヤ5、切り替えシュート(振り分け手段)6、破砕物投入用主コンベヤ7、焼却装置8、一時貯留ホッパ10、切り替えシュート50及び破砕物投入用副コンベヤ11を有している。
【0019】
ゴミ投入コンベヤ2、破砕物投入用主コンベヤ7及び破砕物投入用副コンベヤ11は、公知のベルトコンベヤ又はバケットコンベヤである。
破砕物搬送コンベヤ5も公知のベルトコンベヤ又はバケットコンベヤであるが、後記する様に水銀検出手段15が設けられている。
【0020】
破砕装置3は、破砕ホッパ20内に破砕刃21が設けられたものである。破砕ホッパ20は、上部に投入口22があり、下部に排出口23が設けられている。
ゴミは、投入口22から破砕ホッパ20内に投入され、破砕刃21で破砕される。そしてゴミの破砕物(以下、単にゴミと称する場合がある)が排出口23から排出される。
【0021】
切り替えシュート(振り分け手段)6は、空洞状の本体部25を有し、その上部に1つの投入口30がある。本体部25の下部は二股に分かれていて2個の排出シュート32、33に繋がっている。説明を容易にするために、一方の排出シュートを一時貯留側排出シュート32と称し、他方を焼却向け排出シュート33と称する。
本体部25の内部には、切り替えダンパー35が内蔵されている。切り替えダンパー35は、回動軸36を中心として揺動する可倒式の切替板37を有している。切り替えダンパー35は、シリンダーやモータ等の駆動源(図示せず)によって駆動され、破砕物の通過ルートを一時貯留側排出シュート32側と、焼却向け排出シュート33側に切り換えることができる。
【0022】
図2の様に切替板37を一時貯留側排出シュート32側に倒すと、切替板37が一時貯留側排出シュート32の入り口部分を封鎖すると共に焼却向け排出シュート33の入り口部分を開く。また切替板37の傾斜角度が、焼却向け排出シュート33の傾斜角度に近いものとなり、本体部25から排出シュート33の出口に至る一連の傾斜シュートを構成する。
【0023】
一方、
図3の様に切替板37を焼却向け排出シュート33側に倒すと、切替板37が焼却向け排出シュート33の入り口部分を封鎖すると共に一時貯留側排出シュート32の入り口部分を開く。また切替板37の傾斜角度が、一時貯留側排出シュート32の傾斜角度に近いものとなり、本体部25から一時貯留側排出シュート32 の出口に至る一連の傾斜シュートを構成する。
【0024】
焼却装置8は、燃焼部40と、排気装置41を有している。燃焼部40は上部に投入口46がある。また燃焼部40の内部には焼却室42が有り、図示しないバーナが設けられている。
排気装置41は、燃焼ガスを外部に排出するダクトであり、内部に水銀処理手段43が設けられている。
水銀処理手段43は、燃焼ガス中の水銀を捕捉するものであり、捕捉用のフィルター47を有している。
水銀処理手段43は、前記した特許文献1に開示された物の様に、金属水銀を他の元素と結合させて水銀を含む固体とし、これを捕捉するものであってもよい。また水銀の蒸気を活性炭等に吸着させるものであってもよい。また水銀処理手段は、排水処理装置に内蔵され、排水中に含まれる金属水銀を捕捉するものであってもよい。
【0025】
一時貯留ホッパ10は、内部が空洞であり、内部にゴミ(破砕物)を溜め置くことができる。一時貯留ホッパ10の内部には開閉ダンパー45があり、開閉ダンパー45を開くことによって内部に溜められたゴミを外部に落下させることができる。
一時貯留ホッパ10の下方には、切り替えシュート50が配置されている。切り替えシュート50は、下部が埋め立て用排出シュート51と、遅延焼却向け排出シュート52に分かれている。
切り替えシュート50には、前記した切り替えシュート6と同様構造の切り替えダンパー55が内蔵されており、排出先を埋め立て用排出シュート51と、遅延焼却向け排出シュート52のいずれかに切り換えることができる。
【0026】
本実施形態の廃棄物処理システム1では、上記した各機器が、
図1乃至5に示す様なレイアウトで配置されている。
本実施形態の廃棄物処理システム1では、
図1乃至5の様に始端にゴミ投入コンベヤ2がある。ゴミ投入コンベヤ2は傾斜姿勢となっていて、その末端が破砕装置3の破砕ホッパ20の投入口22の上の位置となっている。
破砕装置3の排出口23の直下には破砕物搬送コンベヤ5 の始端部がある。また破砕物搬送コンベヤ5 の末端は、切り替えシュート(振り分け手段)6の投入口30に繋がっている。
【0027】
切り替えシュート6の下部は、前記した様に一時貯留側排出シュート32と焼却向け排出シュート33に分かれている。
焼却向け排出シュート33の直下の位置には、破砕物投入用主コンベヤ7の始端部がある。破砕物投入用主コンベヤ7は傾斜姿勢であり、その末端は、焼却装置8の投入口46に繋がっている。
【0028】
一方、切り替えシュート6の一時貯留側排出シュート32は、一時貯留ホッパ10の上部に開いている。
一時貯留ホッパ10の遅延焼却向け排出シュート52の直下には、破砕物投入用副コンベヤ11があり、当該破砕物投入用副コンベヤ11は、前記した破砕物投入用主コンベヤ7に繋がっている。
また一時貯留ホッパ10の埋め立て用排出シュート51の下部には、駐車エリア53がある。
【0029】
本実施形態では、破砕装置3の排出口23から、破砕物搬送コンベヤ5及び切り替えシュート6の投入口30までの間が、ドーム状の飛散防止カバー60で被われている。飛散防止カバー60は、破砕物の搬送経路からゴミが飛散することを防止する目的で設けられている。
また本実施形態は、水銀検出手段15を有している。水銀検出手段15は、公知の検知装置16と、水銀蒸気を導入する導入管17によって構成されている。そして水銀検出手段15への気体取り入れ口が飛散防止カバー60の一部に設けられており、当該気体取り入れ口に導入管17が接続されている。具体的には、破砕物搬送コンベヤ5の長手方向の前半部分であって、その上部に水銀検出手段15の気体取り入れ口が設けられており、破砕物搬送コンベヤ5上の空気がサンプリングされ、水銀検出手段15で水銀蒸気の濃度が検知される。即ち水銀検出手段15によって水銀蒸気の量が間接的に検知される。その結果、搬送中のゴミに水銀が含まれているか否かを把握できる。
【0030】
本実施形態の廃棄物処理システム1では、焼却装置8にゴミを搬入するルートとして、通常搬送ルート100と、遅延搬送ルート200が作られている。
通常搬送ルート100は、
図2の様に、破砕装置3の排出口23から排出されたゴミが破砕物搬送コンベヤ5によって切り替えシュート(振り分け手段)6に搬送され、焼却向け排出シュート33から排出されて破砕物投入用主コンベヤ7に乗り、焼却装置8の投入口46から焼却室42に送られるルートである。
【0031】
遅延搬送ルート200は、
図4の様に、一時貯留ホッパ10に溜めおかれたゴミの搬送ルートである。即ち本実施形態では、所定の条件下においてはゴミの破砕物が一時貯留ホッパ10に溜められる。
遅延搬送ルート200は、一時貯留ホッパ10の遅延焼却向け排出シュート52から排出されたごみが破砕物投入用副コンベヤ11に乗り、破砕物投入用主コンベヤ7を経由して焼却装置8の投入口46から焼却室42に送られるルートである。
【0032】
また別のルートとして、ゴミを埋め立てるために排出する排出ルート300も設定されている。
排出ルート300は、
図5の様に一時貯留ホッパ10に溜めおかれたごみを、埋め立て用排出シュート51から排出するルートである。
【0033】
本実施形態の廃棄物処理システム1は、各図の様に制御装置62を有している。制御装置62は、図示しないCPUを有している。また制御装置62には、ディスプレイ等の表示手段63と、入力手段66が設けられている。入力手段66は操作スイッチを含んでいる。
また制御装置62の信号によって、ゴミ投入コンベヤ2、破砕装置3、破砕物搬送コンベヤ5、破砕物投入用主コンベヤ7、破砕物投入用副コンベヤ11等が起動・停止される。
さらに制御装置62の信号によって、切り替えシュート6の切り替えダンパー35が制御され、破砕物の通過ルートを一時貯留側排出シュート32側と、焼却向け排出シュート33側に切り換える。
同様に、一時貯留ホッパ10の下の切り替えシュート50も制御装置62によって制御される。
なお、焼却装置8は制御装置62とは別に設置された制御装置(図示せず)により起動・停止されるが、前記制御装置の信号によって起動・停止されるようにしてもよい。
【0034】
制御装置62には、水銀検出手段15の信号が入力される。
本実施形態では、制御装置62によって水銀検出手段15が検知した水銀濃度を監視する。そして水銀濃度が上限の閾値(基準)を超えると、切り替えシュート(振り分け手段)6の切り替えダンパー35が、
図3の様に一時貯留側排出シュート32を開く方向に切り換えられる。
水銀濃度が上限の閾値(基準)は、焼却装置8に設けられ水銀処理手段43の処理能力を参考にして定められる。
即ち水銀処理手段43の処理能力の上限に相当する水銀濃度を参考にし、ある程度の安全率を見越した水銀濃度を上限の閾値(基準)としている。
また水銀濃度が一旦上昇した後、低下傾向となり、安定値に戻った場合には、切り替えシュート6の切り替えダンパー35が、元の状態に戻される。
ここで安定値は、前記した上限の閾値(基準)よりも低い数値である。
【0035】
次に本実施形態の廃棄物処理システム1の動作について説明する。
本実施形態の廃棄物処理システム1では、通常時においては、ゴミの破砕物を前記した通常搬送ルート100で搬送し、焼却処理する。即ち、
図2の様に切替板37を一時貯留側排出シュート32側に倒し、切替板37が一時貯留側排出シュート32の入り口部分を封鎖すると共に焼却向け排出シュート33の入り口部分を開く。
その結果、通常搬送ルート100が開通する。
ゴミは、ゴミ投入コンベヤ2によって破砕装置3に投入され、破砕装置3で破砕される。破砕物は、破砕装置3の排出口23から破砕物搬送コンベヤ5に乗せられ、切り替えシュート6に搬送される。
切り替えシュート6では、切替板37によって一時貯留側排出シュート32の入り口部分が封鎖され、その一方で焼却向け排出シュート33の入り口部分は開かれている。そのため破砕物は、
図2の様に切り替えシュート6の焼却向け排出シュート33から排出されて破砕物投入用主コンベヤ7に乗り、焼却装置8の投入口46から焼却室42に送られ、焼却される。
【0036】
ゴミの中に、例えば体温計の様に水銀が含まれるものが混じっているならば、破砕装置3によってガラス部分が割れ、水銀が漏れ出す。そして水銀は、他の破砕物と共に破砕装置3の排出口23から排出されて破砕物搬送コンベヤ5に乗せられる。周知の様に、水銀は、常温で気化する。
本実施形態では、破砕物搬送コンベヤ5の周囲がドーム状の飛散防止カバー60で被われている。そのため水銀の蒸気は、飛散防止カバー60内に溜まる。
ここで本実施形態の廃棄物処理システム1では、水銀検出手段15が設けられており、破砕物搬送コンベヤ5周辺の水銀蒸気濃度を監視している。
【0037】
そして水銀蒸気が上限の閾値(基準)以上となった場合には、表示手段63に所定の警告表示が表示される。また音や光によって、異常があったことが報知される。即ち水銀検出手段15が基準以上の水銀蒸気を検出した場合には、所定の異常を知らせる動作が実行される。
さらに本実施形態では、
図3の様に切り替えシュート6が自動的に切替えられ、切替板37が焼却向け排出シュート33の入り口部分を封鎖すると共に一時貯留側排出シュート32の入り口が開放される。
その結果、破砕物は、
図3の様に一時貯留側排出シュート32から排出されて一時貯留ホッパ10に貯留される。
【0038】
そのため焼却装置8に対する水銀を含んだゴミの投入が停止される。この様に、本実施形態によると、多くの水銀を含むゴミが焼却装置8に導入されることを未然に防ぐことができる。そのため焼却装置8でゴミが燃やされても、水銀処理手段43の処理能力を超えることはなく、外部に水銀が放出される危険は小さい。また廃棄物処理システム1が停止することもない。
【0039】
本実施形態では、水銀蒸気の濃度が上限の閾値(基準)以上となっても、ゴミは、ゴミ投入コンベヤ2によって破砕装置3に投入され続ける。そしてゴミは引き続き破砕装置3で破砕され、破砕装置3の排出口23から破砕物搬送コンベヤ5に乗せられる。
本実施形態の廃棄物処理システム1では、水銀蒸気が上限の閾値(基準)以上となった後も、破砕物搬送コンベヤ5周辺の水銀蒸気の濃度を監視している。
【0040】
そして水銀濃度が低下し、安定値に戻ると、切り替えシュート6の切り替えダンパー35が、
図2に示す様な元の状態に戻される。
即ち切替板37が回動して、一時貯留側排出シュート32の入り口部分を封鎖すると共に焼却向け排出シュート33の入り口部分を開く。
その結果、破砕物は、
図2の様に通常搬送ルート100を流れ、焼却装置8に投入されて燃やされる。
【0041】
次に、一時貯留ホッパ10に残ったゴミの処理方法について説明する。一時貯留ホッパ10に貯留されているゴミ(破砕物)は、水銀を含んでいる。
本実施形態では、一時貯留ホッパ10に残ったゴミの処理方法として、二通りの方法が選択できる。
一つの方法は、少しずつ焼却装置8に投入し、焼却する方法である。
もう一つの方法は、一時貯留ホッパ10に残ったゴミを、水銀対応可能な処分場に運搬して埋め立てる方法である。
【0042】
前者の方法を採用する場合には、
図4に示す遅延搬送ルート200を経由して、一時貯留ホッパ10に残ったゴミを焼却装置8に少しずつ投入する。
なお図示していないが、平行して
図2の通常搬送ルート100にもごみを流し、一時貯留ホッパ10に残ったゴミを通常搬送ルート100を経由するゴミに混ぜて燃やしてもよい。
遅延搬送ルート200のゴミと通常搬送ルート100のごみを混ぜて燃やす方策は、水銀濃度が低下し、安定値よりもさらに低下し、安全値となった場合に実施される。
即ち水銀濃度が低下し、濃度が安全値に至ると、一時貯留ホッパ10の遅延焼却向け排出シュート52が開かれ、一時貯留ホッパ10内のゴミが破砕物投入用副コンベヤ11に乗せられる。
【0043】
そして破砕物投入用主コンベヤ7をゆっくりと駆動し、通常搬送ルート100を流れるゴミに一時貯留ホッパ10内のゴミを少しだけ混入させる。そして一時貯留ホッパ10内のゴミを少しずつ焼却装置8に投入し、燃やす。
一時貯留ホッパ10を経由するゴミは、水銀を含むが、焼却装置8への投入量が少ないので、水銀処理手段43の処理能力を超えることはなく、外部に水銀が放出される懸念は低い。また廃棄物処理システム1が停止することもない。
逆に言えば、一時貯留ホッパ10を経由して燃やすゴミは、水銀処理手段43の処理能力を超えることはない様に抑える必要がある。本実施形態では、一時貯留ホッパ10から焼却装置8に投入するゴミの量は、通常の場合の、数分の1から数十分の1に抑えられている。
【0044】
前記した様に、一時貯留ホッパ10に残ったゴミを、水銀対応可能な処分場に運搬して埋め立てる方法も可能である。例えば、水銀が漏れない様に処理された埋め立て地に搬送し、廃棄する。
この場合は、
図5の様に一時貯留ホッパ10に溜め置かれたごみを、埋め立て用排出シュート51から排出し、トラック67に搭載して搬送する。
【0045】
以上説明した実施形態では、切り替えシュート(振り分け手段)6を切り換える際のきっかけとなる水銀蒸気濃度として、次の3点を例示した。
(1)上限の閾値(基準)
(2)安定値
(3)安全値
前記した3点は、上限の閾値(基準)、安定値、安全値の順に小さく設定することが望ましいが、安定値と安全値が同じであってもよい。また上限の閾値(基準)と安定値が同じであってもよい。さらには3点がいずれも同じであってもよい。
各水銀濃度を検知した後、切り替えシュート6を切り換えるタイミングは検知後すぐであっても良いが、ゴミの移動距離や移動時間を考慮して、少しタイムラグを設けてもよい。
【0046】
以上説明した実施形態では、破砕物搬送コンベヤ5の前半部分の上に、水銀検出手段15のサンプリング部を設けた。
当該位置は、破砕装置3で破砕され、漏れ出した水銀が気化し始める領域であり、サンプリング部として好適である。
しかしながら本発明はこの構成に限定されるものではなく、破砕装置3の内部の空気をサンプリングしてもよい。即ち破砕装置3で破砕され、破砕装置3内で水銀が気化する場合があるので、破砕装置3の内部の空気をサンプリングすることも考えられる。
破砕装置3の排出口23や、破砕物搬送コンベヤ5の後半部分の上に、水銀蒸気のサンプリング部を設けてもよい。切り替えシュート6の上や、中、さらには破砕物投入用主コンベヤ7の領域にサンプリング部を設けてもよい。
【0047】
破砕装置3をゴミの出発点とし、焼却装置8をゴミの終着点とすると、この間の装置は、いずれもごみを搬送する一連の搬送手段である。即ち、破砕物搬送コンベヤ5、切り替えシュート(振り分け手段)6、破砕物投入用主コンベヤ7は、いずれも搬送手段である。サンプリング部は、破砕装置内や搬送手段のいずれかの部位に設けられる。言い換えると、破砕装置内から焼却装置に至る前の区間に設けられる。
ただし、サンプリング部は、切り替えシュート(振り分け手段)6(具体的には切替板7)以前にあることが好ましい。
また複数の位置にサンプリング部を設けてもよい。また水銀検出手段15を複数設けてもよい。
【0048】
上記した実施形態は、搬送手段としてコンベヤを多用しているが、コンベヤに代わって重力落下を多用してもよい。
図6に示す廃棄物処理システム70は、ホッパのみを搬送手段としてゴミを破砕装置3から焼却装置8に搬送するものである。本実施形態の廃棄物処理システム70については、先の実施形態と共通する部材に共通する番号を付して説明を省略する。
【0049】
以上説明した実施形態では、水銀を含むゴミを一時的に溜める手段として、一時貯留ホッパ10を採用したが、
図7に示す廃棄物処理システム71の様に、待機コンベヤ72を採用してもよい。
待機コンベヤ72は、ベルトコンベヤであり、両方向に搬送物を移動させることができる。
図7に示す廃棄物処理システム71では、切り替えシュート6から排出された水銀を含有するゴミを待機コンベヤ72に仮置きする。
ごみを焼却する場合には、待機コンベヤ72を破砕物投入用主コンベヤ7側に駆動する。ゴミを埋め立て処理する場合には、待機コンベヤ72を駐車エリア53側に駆動する。
【0050】
以上説明した実施形態では、一時貯留ホッパ10に残ったゴミの処理方法として、少しずつ焼却装置8に投入する方法と、水銀対応可能な処分場に運搬して埋め立てる方法を選択できるが、いずれか一方だけに限られるものであってもよい。
【0051】
図8に示す廃棄物処理システム81は、遅延搬送ルート200を持たず、水銀対応可能な処分場に運搬して埋め立てる方法だけを実施することができるものである。
本実施形態の廃棄物処理システム81についても、先の実施形態と共通する部材に共通する番号を付して説明を省略する。
【0052】
以上説明した実施形態では、水銀蒸気が上限の閾値(基準)以上となると、切り替えシュート6が自動的に切替えられるが、切替えを手動で行ったり、作業者の操作を経て切り替えシュート6が切り替わってもよい。例えば水銀蒸気が上限の閾値(基準)以上となると、音声による警告という様な所定の動作が実行され、それを聞いた作業者が入力手段66等は操作スイッチを手動操作をして切り替えシュート6を切り換え、破砕物の搬送先を変更することが可能である。
なお、所定の動作として、視覚的な警告(パイロットランプや文字情報の表示)を代用や併用してもよい。
【0053】
以上説明した実施形態では、破砕物の搬送先を変更する振り分け手段として切り替えシュート6を例示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
例えば、分岐コンベヤを振り分け手段として採用し、分岐コンベヤによって破砕物の搬送先を平面的に変更してもよい。
【0054】
以上説明した実施形態では、破砕装置3で破砕したゴミをコンベヤ等によって連続的に焼却装置8に投入して焼却処理しているが、破砕物の搬送中に、分別を行ってもよい。また破砕装置3で破砕したゴミを一時的に溜め置いた後に、焼却処理を行う焼却装置8の投入口前に一時貯留ピットを備えた焼却施設であってもよい。また、破砕装置3、水銀検出手段および切り替えシュート6(振分け手段)、焼却装置8(焼却施設)はそれぞれ別の敷地に建設され車両により搬送するものであってもよい。
【0055】
以上説明した実施形態では振り分け手段は、破砕装置3で破砕したゴミの搬送先を2方向に振り分けるものであるが、3方向に以上に搬送先を振り分けてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 廃棄物処理システム
2 ゴミ投入コンベヤ
3 破砕装置
5 破砕物搬送コンベヤ
6 切り替えシュート(振り分け手段)
7 破砕物投入用主コンベヤ
8 焼却装置
10 一時貯留ホッパ
15 水銀検出手段
43 水銀処理手段
62 制御装置
71 廃棄物処理システム
80 廃棄物処理システム
100 通常搬送ルート
200 遅延搬送ルート
300 排出ルート