(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ミシンのための糸調子装置
(51)【国際特許分類】
D05B 47/04 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
D05B47/04 B
D05B47/04 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019090492
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】10 2018 207 426.7
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】595143159
【氏名又は名称】デュルコップ アドラー アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルト ランクレック
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーナス エクスナー
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-136136(JP,A)
【文献】特開昭52-148932(JP,A)
【文献】特開2005-103260(JP,A)
【文献】実開昭55-083074(JP,U)
【文献】特開平04-309399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 47/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシンのための糸調子装置(32)であって、
-張るべき縫い糸(13)が調子シャフト(33)の周りに巻かれるように構成された少なくとも1つの調子シャフト(33)と、
-前記調子シャフト(33)の下流の前記縫い糸(13)の経路で糸調子を生成するために、前記調子シャフト(33)と相互作用する少なくとも
2つの調子ユニット(34,35)と、
-前記縫い糸(13)の糸経路を偏向するための糸経路偏向要素(38)と、を備え、
-前記糸調子装置(32)の糸経路は以下のようである、すなわち、
前記縫い糸(13)が、
--まず、前記調子シャフト(33)の周りに巻かれて、第1糸調子寄与を生成し、
--次いで、前記糸経路偏向要素(38)上に延び、
--次いで、再び前記調子シャフト(33)の周りに巻かれて、第2糸調子寄与を生成
し、
-それぞれの前記調子ユニット(34,35)が、
--少なくとも1組の圧力調子皿(36)と少なくとも1つのアクチュエーター(37)により形成され、張るべき前記縫い糸(13)が前記圧力調子皿(36)の間を通るように、前記圧力調子皿(36)は2つ一組で配置されており、前記圧力調子皿(36)は、前記圧力調子皿(36)の間の圧力を設定するために前記アクチュエーター(37)と相互作用し、又は
--ホイール調子皿(39)、ブレーキ本体(37a)及び少なくとも1つのアクチュエーター(37)によって形成され、これらは、張るべき前記縫い糸(13)が前記ホイール調子皿(39)の皿部分の間を通るように配置され、前記ホイール調子皿(39)は、前記ブレーキ本体によって前記ホイール調子皿(39)に加えられる圧力を設定するために前記アクチュエーター(37)と相互作用し、
-前記少なくとも2つの調子ユニット(34,35)が前記調子シャフト(33)に配置され、前記調子ユニット(34,35)はそれぞれの糸調子寄与を生成するように構成されている、糸調子装置。
【請求項2】
前記糸経路偏向要素(38)がピン軸の周りに回転可能なピンとして構成され、当該ピンは、前記縫い糸(13)が当該ピンの周りに巻かれるように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の糸調子装置。
【請求項3】
それぞれの前記調子ユニットが少なくとも2組の圧力調子皿を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の糸調子装置。
【請求項4】
それぞれの前記調子皿が舌形状の保持部分として構成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の糸調子装置。
【請求項5】
前記アクチュエーター(37)はステッパーモーターとして構成され
ている、ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の糸調子装置。
【請求項6】
異なる糸調子寄与が独立して設定されるように前記調子ユニットが構成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の糸調子装置。
【請求項7】
前記調子ユニットは少なくとも1つのステッパーモーターによって形成され、前記調子シャフト(33)は当該ステッパーモーターにより駆動される、ことを特徴とする請求項1
又は2
及び6に記載の糸調子装置。
【請求項8】
請求項1
又は2に記載の糸調子装置(32)を有するミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンのための糸調子装置(thread tensioning device)及びこのタイプの糸調子装置を備えた機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ミシンのための糸調子装置が特許文献1から知られている。特許文献2が、糸加工機の糸調子用の装置を開示している。特許文献3が、2つの糸調子皿を有する上糸調子装置を開示している。特許文献4が、ミシンのための糸調子装置を開示している。特許文献5が、2針ミシンにおける針糸のための調子装置を開示している。特許文献6がミシン用の糸巻き装置(spool device)を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】DE19633223C2
【文献】DE2157016A
【文献】DE202012100110U1
【文献】DE10344982A1
【文献】DE962568C
【文献】DE202009004845U1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、冒頭で挙げたタイプの糸調子装置を改良して、張るべき糸に対するその影響を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この目的は、請求項1で規定される特徴を備えた糸調子装置によって達成される。
【0006】
本発明によれば、糸調子装置の糸調子効果を2つの糸調子寄与(それらの間で糸経路(糸の延び)の偏向が糸経路偏向要素によって実行される)に分割することが糸調子装置により加えられる力を縫い糸に有利な態様で分配することを助力することが分かった。特に、縫い糸の捩れが回避され、それにより望ましくない捩れ力が縫い糸に加わること、特に糸調子装置の糸経路に沿って積み重なること(いわゆる、望ましくないもつれ(snarling))が防がれる。糸調子装置の効果を、同一の張力調整シャフト(tensioning shaft)の周りに複数のループを形成することでそれぞれ生成される2つの糸調子寄与に分割することで、糸調子装置のコンパクトな配置が得られる。特に異なって作動可能な多数の異なる糸調子寄与を生成することも考えられ、その結果、糸調子範囲全体が有利に増大する。縫い糸はミシンの上糸であってもよい。糸調子装置はまた、2より大きい糸調子寄与を生成することもできる。その際、対応する付加的な糸経路が、糸経路偏向要素によって又は張力調整シャフトの上に別な糸経路を与える別な糸経路偏向要素によって与えられてもよく、当該付加的な糸調子寄与が生成される。糸調子装置は正に1つの調子ユニット(tensioning unit)を有してもよい。それに代えて、糸調子装置は少なくとも2つの調子ユニットを有してもよい。調子ユニットはバイアスばねによって付勢されてもよい。バイアスばねは圧縮ばねであってもよい。圧縮ばねは螺旋ばねとして又は波形ばねとして構成されてもよい。
【0007】
請求項2に記載された回転可能なピン又はコロ(roll)として構成された糸経路偏向要素は、縫い糸に加わる力に関して特にニュートラルである。回転可能なピン又は回転可能なローラは、その上に延びる縫い糸と共に回転できる。
【0008】
単独で考えて、請求項1、3に記載された調子ユニットの実施形態は従来技術、例えば特許文献1から知られている。圧力調子皿は皿ばね(Belleville washers)として構成されてもよい。調子ユニットは2組の圧力調子皿又は3組以上の、例えば3,4,5の又は6以上の圧力調子皿を有してもよい。調子ユニットの引張力を調整するために、電動アクチュエーターに代えて、手動で操作可能な調整要素、例えば調整ねじもまた使用できる。圧力調子皿は、張力調整シャフトに対して回転しないように配置される。
【0009】
請求項1、4に記載の調子ユニットは、有利に大きい引張力範囲(tension range)を有する糸引張力を生成するのに特に適しており、また所定の糸引張力を再現可能に生成するのに特に適していることが判明した。張るべき糸を収容するように構成されたそれぞれのホイール調子皿(wheel tension disk)の皿部分は、互いに固定接続されてもよく、例えば互いに溶接されてもよい。ホイール調子皿の保持効果が、特に舌形状の保持部分として構成される周囲保持部分によって生成される。これらの保持部分は互いに相互に係合でき、それにより再現可能な摩擦接続が保持部分と張るべき糸の間で得られる。ホイール調子皿は張力調整シャフトに回転可能にフィットされる。この場合、糸が張力調整シャフトの周りをガイドされるとき、ホイール調子皿は張るべき糸と共に回転できる。糸調子が、アクチュエーターにより作動されるブレーキ本体によってホイール調子皿に加えられる対応する圧力依存ブレーキ効果によってアクチュエーター圧力により生成される。
【0010】
一組の調子皿に作用するアクチュエーターは、線ばね(wire spring)又は波形ばねを介して当該一組の調子皿に作用してもよい。
【0011】
請求項5に記載のステッパーモーターは、特に微調整の再現可能な糸調子設定を可能にする。ステッパーモーターは、歯車ユニットを介して少なくとも1つの調子ユニットに作用してもよい。該歯車ユニットは、ステッパーモーターの生成される糸調子寄与への影響の感度又はそれぞれの調子ユニットの調整プロセス若しくは開きの速度を改良するのに役立つ。ステッパーモーターに代えて、リニアモーターも使用できる。アクチュエーターは歯車ユニットを有してもよい。多条ねじ(multiple-start screw thread)が、アクチュエーターと糸調子皿の間の力の伝達のために使用できる。ステッパーモーターはトルク制御されてもよい。
【0012】
請求項6に記載の少なくとも2つの調子ユニットによって、異なる糸調子寄与が特に独立して設定され得る。
【0013】
調子ユニットを一組の糸調子皿として設計する代わりに、調子ユニット自体が請求項7に記載のように少なくとも1つのステッパーモーターによって形成されてもよい。張力調整シャフトはステッパーモーターのモーターシャフトを形成してもよいし、又は歯車ユニットを介して当該モーターシャフトに接続してもよい。
【0014】
請求項8に記載されたミシンの利点は、糸調子装置に関して既に上で説明した利点に一致する。主糸調子装置として使用される上で説明した糸調子装置に加えて、糸プリテンション装置が、主糸調子装置の上流において縫い糸の糸経路に配置されてもよい。
【0015】
本発明の例示の実施形態を以下に図面に則してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本縫いミシン(double lockstitch sewing machine)の幾つかの内側の詳細を示す概略正面図である。上糸経路は
図1に示されていない糸調子構成部品の領域で中断されている、言い換えればそれは示されていない。
【
図2】ミシンのハウジング部分の、付加的な詳細を示す正面図であり、糸調子装置の構成部品はセクションI/IIに示されている。それは
図1のセクションI/IIに対応する。
【
図3】
図2における線III-IIIに沿う断面図である。
【
図4】
図2における目視方向IVから見た、ハウジング部分のサイドを示す図である。
【
図5】
図2に示されるようにハウジング部分の斜視正面図を示す図である。
【
図6】一組の圧力糸調子皿に代えて糸調子装置の主糸調子装置の調子ユニットを形成する、2つの皿部分を備えたホイール糸調子皿を示す図である。
【
図7】糸経路偏向要素と共に二組の圧力調子皿を有する調子ユニットの実施形態の側面図である。当該図は糸調子装置の領域における糸経路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本縫いミシン1が、ベースプレート2を有するマシンフレーム1aと、そこから上方に延在するスタンド3と、屈曲アーム4を有する。屈曲アームはヘッド5で終端している。アームシャフト6が回転のためにアーム4内に設置されている。ヘッド5では、アームシャフト6は糸レバー8を有するクランクドライブ7を駆動する。クランクドライブ7は、軸方向に変位可能なようにヘッド5内に設置された針棒9と駆動接続している。当該針棒9はその下側端部に針10を有する。クランクドライブ7によって、針10が垂直軸11に沿って上下に移動可能である。
【0018】
以下では、位置関係の図解を容易化するためにデカルトxyz座標系を使用する。垂直軸11はこの座標系のz方向に沿って延びる。x方向は
図1の描画面と垂直であってその内部に延び、ミシン1の縫い方向と平行に延びる。y方向は
図1において左に延びる。
【0019】
針10は針糸13をアイレットに案内する。当該針糸13は、糸調子装置を介して糸巻き(リール)12として構成された上糸供給部及び糸レバー8によって供給され、上糸とも称される。糸調子装置は
図2以下に関連してより詳細に説明する。針糸13は固定していない(自由な)上糸開始セグメント13aを有する。
【0020】
ベースプレート2は、織物片15が載る支持板14を担持し、当該支持板14はネジにより固定されている。ステッチ板16として構成された支持板14の部分は、ドロップフィードとも称される下側送り歯17を通過させることができる凹所を具備している。送り歯17は、針10を通過させるステッチ穴18を有する。送り歯17は公知の態様で摺動・昇降歯車ユニットと駆動接続している。当該摺動・昇降歯車ユニットはベースプレート2の下に配置されている。
【0021】
支持板14の下には、ルーパー先端21を有するルーパー本体20を有するルーパー19が配置されている。ルーパー本体20には、カップ型ボビンケースが設置されており、糸巻き22又は糸スプールの態様でルーパー糸供給部を収容する。糸巻き22は下糸供給部である。ルーパー糸は下糸とも称される。
【0022】
ルーパー19は、針10と共にステッチ形成工具を形成する。針10は上糸を案内するために使用される。ルーパー19は、上糸と下糸を織り交ぜる(絡み合わせる)ために使用される。
【0023】
ルーパー19は、z方向に延びる垂直ルーパー軸23の周りを回転可能である。ルーパー本体20は、ルーパー軸23と同軸に延びるシャフト25に固定接続している。シャフト25は、ベースプレート2にねじ留めされたベアリングブロック26内に回転するように設置されている。このベアリングブロック26には、ベアリングブロック26内部に配置された歯車ユニット(toothed gear unit)に接続した駆動シャフト27が設置されている。歯車ユニットは1:2の速度伝達比を有し、それは、シャフト25に配置されたルーパー本体20が駆動シャフト27の一回転の間に二度回転することを意味する。駆動シャフト27は、ベルト駆動部28を介してアームシャフト6と駆動接続している。
【0024】
図1及び2のセクションI/IIにおいてアーム4のハウジング部分30に配置された糸調子装置29は、上糸13の糸経路において前後に配置された多数の糸調子構成部品を有する。上糸13の糸経路に沿って見ると、糸巻き12はまず、より詳細には示していない糸プリテンション装置より前に位置する。当該糸プリテンション装置は次に、主糸調子装置32より前に位置する。ミシン1の設計に依存して、糸プリテンション装置は省かれてもよい。
【0025】
主糸調子装置32は調子シャフト33(
図3参照)を有し、その周りに張るべき上糸13が巻かれる。糸調子寄与を生成するようにそれぞれ構成された2つの調子ユニット34,35が調子シャフト33と相互作用する。調子ユニット34,35のそれぞれは、調子シャフト33に後続する上糸13の経路において上糸13の糸調子寄与又は糸調子を生成するよう機能する。主糸調子装置32の設計に依存して、糸調子を生成するために使用される正に1つの調子ユニット、例えば調子ユニット34を備えることも考えられる。
【0026】
調子ユニット34,35のそれぞれは、一組の圧力調子皿36とアクチュエーターにより形成されている。それぞれの組の調子皿の圧力調子皿36は、テンションを掛けるべき上糸13がこの組の調子皿36の間を通るように配置される。それぞれの組の調子皿36はアクチュエーター37と相互作用し、調子皿36の間で圧力を設定する。一組の圧力調子皿36とアクチュエーター37のこの効果は従来技術から知られており、例えば特許文献1に特に
図4に関連して記載されている。
【0027】
アクチュエーター37は電磁石であってもよい。アクチュエーター37はまたステッパーモーターであってもよい。
【0028】
2つの調子ユニット34,35は同じアクチュエーター37と相互作用する。2つの調子ユニット34,35は、互いに軸方向にすぐに隣接して調子シャフト33に配置されている。2つの調子ユニット34,35の間には、軸受ディスク37aが配置され、この軸受ディスク37aに軸方向にすぐに隣接して配置された2つの調子ユニット34,35のそれら調子皿36がそれに当接する。調子皿36のように、軸受ディスク37aは調子シャフト33にフィット(嵌合)され、軸受ディスク37aに面する調子皿36を半径方向に支持する機能を有する。この目的のために、軸受ディスク37aは、それに面するそれぞれの調子皿36の縁部分と係合する側面に周方向軸受溝(circumferential bearing groove)を有する。
【0029】
2つの調子ユニット34,35に加えて、主糸調子装置は、上糸13の糸経路を偏向するための糸経路偏向要素38を有する。主糸調子装置32における上糸13のこの糸経路は、上糸13が、まず2つの調子ユニット34,35の最初の領域において調子シャフト33の周りに巻かれて調子シャフト33の第1糸調子寄与を生成し、次に2つの調子ユニット34,35の第二の領域において再び調子シャフト33の周りに巻かれる前に糸経路偏向要素38の上に延びて、第2糸調子寄与を生成する、ものである。主糸調子装置32におけるこの糸経路は、3以上の糸調子寄与が生成されるものであってもよい。この場合、次の糸調子寄与を生成するために、同じ糸経路偏向要素38の上に又は別な糸経路偏向要素(図示せず)の上に、再び調子シャフト33の周りに追加の糸経路があってもよい。この目的のために、調子シャフト33は、図面には示されない、調子ユニット34,35のように構成された別な調子ユニットを担持してもよい。
【0030】
糸経路偏向要素38は偏向ピンとして構成される。このタイプの偏向ピンがハウジング部分30にしっかり設置されてもよく、又はこれに代えてそのピン軸周りに回転可能なように構成されてもよい。この場合、ピンはラジアル軸受を介してコロ(roll)のようにハウジング部分30に設置される。
【0031】
それに代えて、ホイール調子皿の皿部分のそれぞれの組として調子ユニット34,35を設計することが考えられる。例えば調子ユニット34又は35のうちの1つを形成する、ホイール調子皿39のこのタイプの一組の皿部分が
図6に示される。
【0032】
ホイール調子皿39の2つの皿部分39aは、例えば溶接により互いに固く接続している。ホイール調子皿39の皿部分39aの組の外周は、略U形又は略V形の溝プロフィールを有し、そこに上糸13が、当該外周の角度範囲で、例えば360°の範囲で調子シャフト33の周りにそれを巻き付けることで案内される。
【0033】
ホイール調子皿39の皿部分39aの組の外側プロフィールは2つのウェブリング40によって形成され、ウェブリングはそれぞれ、±x方向に軸方向外側に曲がった多数のウェブ41を有する。周方向における2つのウェブリング40のウェブ41の配置は、ウェブ41が交互に2つのウェブリング40のうちの一方に関連し、次に2つのウェブリング40のうちの他方に関連する、ものである。溝プロフィールのプロフィールベースが、x方向に互いに重なる複数のウェブ41の複数の保持部分42によって形成される。これにより、調子皿39の皿部分39aの組の周りに巻かれたときに、上糸13が調子シャフト33の軸中心線に対して正確に定められた半径を置いて延びることが保証される。
【0034】
保持部分42は舌部分として構成されてもよい。
【0035】
調子ユニット34,35が圧力調子皿36の組又はホイール調子皿39の皿部分39aの組として構成されるかどうかにかかわらず、主糸調子装置32の少なくとも1つの調子ユニットが、調子シャフト33の回転を駆動する少なくとも1つのステッパーモーターによって形成されてもよい。調子シャフト33はその際このタイプのステッパーモーターのモーターシャフトとして直接構成されてもよいし、又は調子シャフトは歯車ユニットを介してステッパーモーターのモーターシャフトに接続されてもよい。1又は複数の調子ユニットがステッパーモーターとして構成されるとき、上糸13は特に二度以上調子シャフト33の周りに全体的に巻かれてもよい。
【0036】
図2~5から分かるように、ハウジング部分30は、上で述べた主糸調子装置32のように2つの主糸調子装置を対応的に上糸13を案内することで形成することができる複数の構成部品を装備してもよい。言い換えれば、これらの図面に示されているように、ハウジング部分30は、関連する調子シャフト、関連するアクチュエーター、関連する調子ユニット及び関連する糸経路偏向要素を備えた2つの主糸調子装置を担持してもよい。
【0037】
アクチュエーター37は、圧縮ばね34を介して調子ユニット34,35の調子皿36又は39にそれぞれ作用する。圧縮ばね34は螺旋ばね、特に螺旋線ばねであってもよい。トルク制御されたサーボモーター又はステッパーモーターとして構成されたアクチュエーター37を使用するとき、このタイプの調子ばね(tensioning spring)は省略されてもよい。
【0038】
圧力調子皿36を備えた調子ユニット34,35の実施形態では、糸調子は、それぞれの調子皿36の間のアクチュエーター37によってその間に配置された糸に加えられる圧力により生成される。調子皿36は調子シャフト33に回転しないように配置できる。それぞれのホイール調子皿39の皿部分39aを有する実施形態では、当該調子はブレーキ効果によって生成される。当該ブレーキ効果は、その糸経路内でそこに巻かれた糸と共に回転するそれぞれのホイール調子皿39と、調子シャフト33に対して回転しないように配置され得るブレーキ本体との間で、アクチュエーター37の圧力によって生成される。ブレーキ本体は例えば軸受ディスク37aである。
【0039】
主糸調子装置32の下流の糸経路では、上糸13が糸締付装置44(
図1も参照)を通過し、その後糸レバー8を介して針10のアイレットに延びる。
【0040】
図7は、糸調子装置32の糸経路を示す。この図は、
図1~5に示される実施形態の2つの糸調子装置32のうちの1つを示す。よって、他の糸調子装置32における糸経路もそれに相当する。
【0041】
針糸13はまず、
図7に示していない糸プリテンション装置から、圧力調子皿36(第1調子ユニット)の第1ペア45の上に延びる。その際、針糸は180°以上調子シャフト33の周りに巻かれるが、全体的に二度以上調子シャフト33の周りに巻かれてもよい。図示の実施形態では、針糸は、圧力調子皿36の第1ペア45の領域で約270°の角度範囲で調子シャフト33の周りに巻かれる。針糸が第1ペア45の周りに巻かれると、第1糸調子寄与が縫い糸13のために生成される。
【0042】
針糸13は、約180°の接触角で糸経路偏向要素38の周りに巻かれ、次いで糸調子装置32の圧力調子皿36(第2調子ユニット)の第2ペア46に延び、そこで第1ペア45におけるのと同様に調子シャフト33の周りに巻かれる。針糸が第2ペア46の周りに巻かれると、第2糸調子寄与が縫い糸13のために生成される。
【0043】
次いで、針糸13は、
図7に示されない糸締付ばねに延びる。
【0044】
圧力調子皿36の第1ペア45はハウジングに配置されるのに対し、第2ペア46は調子シャフト33の自由端に向かって配置される。
【0045】
図7に示される実施形態では、圧縮ばね43は波形ばねとして構成される。波形ばねブロックがここでも使用できる。
【0046】
縫い糸13は、同じ回転方向に又は逆回転方向に、それぞれの調子ユニット45,46の領域で調子シャフト33の周りに巻かれてもよい。糸のタイプと操作条件に依存して、2つの向き「同じ回転方向」と「逆回転方向」のうちの1つが、もつれを避けるためにより望ましい。
【符号の説明】
【0047】
13 縫い糸
32 糸調子装置
33 調子シャフト
34,35 調子ユニット
38 糸経路偏向要素