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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】液体洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 17/08 20060101AFI20230629BHJP
   C11D 1/14 20060101ALI20230629BHJP
   C11D 1/28 20060101ALI20230629BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20230629BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20230629BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20230629BHJP
   C11D 1/92 20060101ALI20230629BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20230629BHJP
   A47L 15/42 20060101ALN20230629BHJP
【FI】
C11D17/08
C11D1/14
C11D1/28
C11D1/68
C11D1/72
C11D1/75
C11D1/92
C11D3/43
A47L15/42 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019103692
(22)【出願日】2019-06-03
(65)【公開番号】P2020196810
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】青野 恵太
(72)【発明者】
【氏名】岡村 諭
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-150499(JP,A)
【文献】特開2009-132823(JP,A)
【文献】特開2009-155611(JP,A)
【文献】特開2009-185252(JP,A)
【文献】特開平11-241097(JP,A)
【文献】特開2001-019993(JP,A)
【文献】特開2013-082847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)陰イオン界面活性剤[以下(a)成分という]を5質量%以上20質量%以下、
(b)両性界面活性剤[以下(b)成分という]を5質量%以上20質量%以下、
(c)水溶性溶剤[以下(c)成分という]を1質量%以上20質量%以下、
(d)プロピレンオキシド単位を分子中に80mol%以上含有する分子量500以上2000以下のポリアルキレンオキシド[以下(d)成分という]を0.1質量%以上5質量%以下、及び
水を含有し、
(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比である(a)/(b)が1以上2以下である、液体洗浄剤組成物であって、
(a)成分として、スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤を含有し、
(c)成分として、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上を含有する、
液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
(a)成分として、アルキル基の炭素数が8以上18以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、及びアルキル基の炭素数が8以上18以下のアルキル硫酸エステル塩から選ばれる一種以上を含有する、請求項1記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
(b)成分が、炭素数8以上18以下の炭化水素基を一つ有するアミンオキシド型界面活性剤、及びスルホベタイン型両性界面活性剤から選ばれる一種以上である、請求項1又は2記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
(a)成分の含有量と(b)成分の含有量の合計と(c)成分の含有量との質量比である[(a)+(b)]/(c)が1以上10以下である、請求項1~の何れか1項記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
硬質物品用である、請求項1~の何れか1項記載の液体洗浄剤組成物。
【請求項6】
食器及び/又は台所周りの硬質物品用である、請求項1~の何れか1項記載の液体洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄剤組成物、例えば、食器、台所周りの硬質物品などの洗浄に適した液体洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食器や調理器具の洗浄には、液体油や固形油などの洗浄負荷が大きい汚れをスポンジなどの可撓性物品などを用いて擦り洗いすることで簡単に洗浄除去できる高い洗浄力と、洗浄力の目安となる豊富な泡立ちと泡の持続性が求められる。この観点で、台所や調理場などで用いられる洗浄剤において、陰イオン界面活性剤や両性界面活性剤を併用することがある。
【0003】
特許文献1には、アミンオキシド、所定の陰イオン界面活性剤、オキシカルボン酸、及び水を所定条件で含有する液体洗浄剤が開示されている。特許文献2には、所定の低分子有機ジアミン、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、並びに、所定のジオール、所定の重合グリコール及びこれらの混合物からなる群から選択される溶媒を、所定条件で含有する液体皿洗い用洗剤組成物が開示されている。特許文献3には、界面活性剤、乳白化剤、及び平均分子量300~4000の多価アルコールのポリアルキレンオキシドをそれぞれ所定範囲の量で含有する液体洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-78091号公報
【文献】特表2002-536497号公報
【文献】特開平6-17095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
食器などの洗浄に用いられる洗浄剤には油汚れに対する洗浄力が求められ、そのために、複数の界面活性剤を組み合わせて用いる、例えば、陰イオン界面活性剤と両性界面活性剤とを組み合わせて用いることが考えられる。しかしながら、陰イオン界面活性剤と両性界面活性剤を併用して水系の洗浄剤を調製すると、界面活性剤相互のイオンコンプレックスを形成するため、貯蔵中に析出するなど、保存安定性が低下する傾向を示す。保存安定性の向上には、例えば、有機溶剤の配合が有効であるが、陰イオン界面活性剤と両性界面活性剤とを組み合わせた組成で有機溶剤を用いると、洗浄時の泡立ちが損なわれることが判明した。
【0006】
本発明は、油汚れに対する洗浄力、及び洗浄時の泡立ち性に優れた液体洗浄剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、陰イオン界面活性剤と両性界面活性剤とを併用した組成で、両者の質量比を所定範囲とし、且つ、水溶性溶剤とプロピレンオキシド単位を含むポリアルキレンオキシドを配合することにより、油汚れに対する洗浄力の増強と、洗浄時の好ましい泡立ち性を両立できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明は、(a)陰イオン界面活性剤[以下(a)成分という]を5質量%以上20質量%以下、(b)両性界面活性剤[以下(b)成分という]を5質量%以上20質量%以下、(c)水溶性溶剤[以下(c)成分という]を1質量%以上20質量%以下、(d)プロピレンオキシド単位を分子中に80mol%以上含有する分子量500以上2000以下のポリアルキレンオキシド[以下(d)成分という]を0.1質量%以上5質量%以下、及び水を含有し、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比である(a)/(b)が1以上2以下である、液体洗浄剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、油汚れに対する洗浄力と洗浄時の泡立ち性に優れた液体洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<液体洗浄剤組成物>
(a)成分の陰イオン界面活性剤としては、アルキルアリールスルホン酸型界面活性剤、硫酸エステル型界面活性剤、アルカンスルホン酸型界面活性剤、オレフィンスルホン酸型界面活性剤、スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤、及びスルホ脂肪酸エステル型界面活性剤から選ばれる1種以上の陰イオン界面活性剤が好ましい。
【0011】
アルキルアリールスルホン酸型界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。具体的には、炭素数6以上、好ましくは8以上、そして、18以下、好ましくは15以下のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。
【0012】
硫酸エステル型界面活性剤としては、炭素数8以上20以下の炭化水素基と、硫酸エステル基とを有する陰イオン界面活性剤が挙げられる。炭化水素基は、洗浄力の観点から、炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。炭化水素基は、アルキル基が好ましい。
硫酸エステル型界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が挙げられる。
アルキル硫酸エステル塩としては、炭素数が8以上、好ましくは10以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下のアルキル基、更に直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩が好適である。
【0013】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩としては、炭素数8以上、好ましくは10以上、そして、20以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下のアルキル基、更に直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有し、炭素数2以上3以下のオキシアルキレン基の平均付加モル数が、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.4以上、そして、好ましくは6以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは1.5以下である、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩が好適である。オキシアルキレン基は炭素数2が好ましい。
【0014】
アルカンスルホン酸型界面活性剤としては、アルカン部分の炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは14以上、そして、20以下、好ましくは18以下のアルカンスルホン酸塩が挙げられる。
【0015】
オレフィンスルホン酸型界面活性剤としては、α-オレフィンスルホン酸塩、内部オレフィンスルホン酸塩が挙げられる。α-オレフィンスルホン酸塩は、オレフィン部分の炭素数が8以上、好ましくは10以上、より好ましくは14以上、そして、22以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。また内部オレフィンスルホン酸塩は、オレフィン部分の炭素数が8以上、好ましくは12以上、より好ましくは16以上、そして、24以下、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。
【0016】
スルホコハク酸アルキルエステル型界面活性剤としては炭素数5以上、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、そして、18以下、好ましくは14以下、より好ましくは10以下の脂肪アルコールとスルホコハク酸とのモノエステル及び/又はジエステル、好ましくはジエステルが好ましい。また、脂肪アルコールは分岐アルコールが洗浄力の点から好適である。
【0017】
スルホ脂肪酸エステル型界面活性剤としては、脂肪酸部分の炭素数が10以上18以下のα-スルホ脂肪酸塩、脂肪酸部分の炭素数が10以上18以下であり、エステル部分の炭素数が1以上5以下であるα-スルホ脂肪酸低級アルキルエステル塩(低級アルキルは好ましくは炭素数1以上3以下)が挙げられる。
【0018】
(a)成分としては、アルキル基の炭素数が8以上18以下のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキル基の炭素数が8以上18以下のアルキル硫酸エステル塩、及び炭素数5以上18以下の脂肪アルコールとスルホコハク酸とのモノ又はジエステルの塩から選ばれる一種以上の陰イオン界面活性剤が好ましい。
【0019】
本発明の液体洗浄剤組成物は、洗浄時の起泡性や泡持続性の観点から、(a)成分を5質量%以上、好ましくは7質量%以上、より好ましくは9質量%以上、そして、20質量%以下、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有する。
【0020】
(b)成分の両性界面活性剤としては、アミンオキシド型界面活性剤、及びベタイン型界面活性剤から選ばれる1種以上の両性界面活性剤が挙げられる。更に、炭素数8以上18以下の炭化水素基を一つ有するアミンオキシド型界面活性剤、及びスルホベタイン型両性界面活性剤から選ばれる1種以上の両性界面活性剤が挙げられる。より詳細には、(b)成分としては、3級アミンオキシド型界面活性剤、スルホベタイン型界面活性剤及びカルボベタイン型界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤が挙げられる。
【0021】
3級アミンオキシド型界面活性剤としては、窒素原子に結合する基のうち1つがアミド基又はエステル基で分断されていてもよい炭素数8以上18以下のアルキル基、好ましくは炭素数8以上16以下のアルキル基、更に好ましくは炭素数8以上14以下のアルキル基であり、残りが炭素数1以上3以下のアルキル基、好ましくはメチル基である3級アミンオキシド型界面活性剤が挙げられる。
【0022】
スルホベタイン型界面活性剤としては、炭素数10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下のアルキル基を1つと、炭素数1以上3以下のアルキル基、好ましくはメチル基を2つと、3-スルホプロピル基又は2-ヒドロキシ-3-スルホプロピル基とを有する化合物が好適である。
【0023】
また、カルボベタイン型界面活性剤としては、アミド基又はエステル基で分断されていてもよい炭素数10以上、そして、18以下、好ましくは16以下、より好ましくは14以下のアルキル基を1つと、炭素数1以上3以下のアルキル基、好ましくはメチル基を2つと、カルボキシアルキル基、好ましくはカルボキシメチル基を1つ有するカルボベタイン型界面活性剤が好ましい。
【0024】
(b)成分は、洗浄力の増強の観点から、ベタイン型界面活性剤が好ましく、スルホベタイン型界面活性剤及びカルボベタイン型界面活性剤から選ばれる1種以上の界面活性剤がより好ましく、スルホベタイン型両性界面活性剤が更に好ましい。
【0025】
本発明の液体洗浄剤組成物は、洗浄力の増強の観点から、(b)成分を5質量%以上、好ましくは7質量%以上、より好ましくは9質量%以上、そして、20質量%以下、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有する。
【0026】
本発明の液体洗浄剤組成物は、洗浄力及び保存安定性の観点から、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量との質量比である(a)/(b)が1以上、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.2以上、そして、2以下、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.8以下、更に好ましくは1.6以下である。
【0027】
(c)成分は、水溶性溶剤である。(c)成分の溶剤について、水溶性とは、25℃の水100gに5g以上溶解することをいう。(c)成分は、分子量500未満の水溶性溶剤が好ましい。
【0028】
(c)成分としては、炭素数2以上、更に炭素数3以上、そして、炭素数10以下、更に炭素数8以下の水溶性有機溶剤が好ましい。また、(c)成分としては、一価アルコール、多価アルコール(グリコールなど)、及びグリコールエーテルから選ばれる水溶性有機溶剤が好ましい。
【0029】
(c)成分としては、洗浄力及び貯蔵安定性の観点から、LogPowが、好ましくは-3.0以上、より好ましくは-2.0以上、更に好ましくは-1.5以上、そして、同様の観点から、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下の水溶性有機溶剤が挙げられる。
【0030】
本発明において、logPow値とは、水と1-オクタノールに対する有機化合物の親和性を示す係数である。1-オクタノール/水分配係数Pは、1-オクタノールと水の2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPowの形で示すのが一般的である。多くの化合物のlogPow値が報告されており、Daylight Chemical Information Systems, Inc. (Daylight CIS)等から入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。実測のlogPow値がない場合には、Daylight CISから入手できるプログラム「CLOGP」等で計算することができる。このプログラムは、実測のlogPow値がある場合にはそれと共に、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される「計算logPow(ClogPow)」の値を出力する。
【0031】
フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(cf. A. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch,P.G.Sammens, J.B. Taylor and C.A. Ramsden, Eds., p.295, Pergamon Press, 1990)。このClogPow値を、化合物の選択に際して実測のlogPow値の代わりに用いることができる。本発明では、logPowの実測値があればそれを、無い場合はプログラムCLOGP v4.01により計算したClogPow値を用いる。
【0032】
(c)成分としては、(c-1)炭素数1以上3以下の1価アルコール、(c-2)炭素数2以上4以下の多価アルコール、(c-3)アルキレングリコール単位の炭素数が2ないし4のジ又はトリアルキレングリコール、(c-4)アルキレングリコール単位の炭素数が2ないし4のモノ、ジ、トリ又はテトラアルキレングリコールの、モノアルキル(メチル、エチル、プロピル又はブチル)、モノフェニル又はモノベンジルエーテルを挙げることができる。
【0033】
具体的には(c-1)として、エタノール、イソプロピルアルコール、(c-2)として、イソプレングリコール、プロピレングリコール、(c-4)として、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコールなどとも称される)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルトリグリコールなどとも称される)、フェノキシエタノール、フェノキシトリエチレングリコール、フェノキシイソプロパノールが挙げられる。(c)成分としては、エタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、フェノキシエタノール、及びフェノキシイソプロパノールから選ばれる有機溶剤が好ましい。
【0034】
食品などに由来する液体油汚れの洗浄作用をより高める観点から、(c)成分は、アルコキシ基を有するものが好ましく、更に上記(c-4)から選ばれる一種以上を含むことが好ましく、(c)成分としてジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びジプロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる一種以上を含有することがより好ましく、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを含有することがより好ましい。
【0035】
本発明の液体洗浄剤組成物は、保存安定性の観点から、(c)成分を1質量%以上、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2質量%以上、そして、洗浄時の起泡性の観点から、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下含有する。
【0036】
本発明の液体洗浄剤組成物は、洗浄時の起泡性及び保存安定性の観点から、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量の合計と(c)成分の含有量との質量比である[(a)+(b)]/(c)が、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。
【0037】
(d)成分は、プロピレンオキシド単位を分子中に80mol%以上含有する分子量500以上2000以下のポリアルキレンオキシドである。
【0038】
(d)成分は、プロピレンオキシド単位を分子中に、好ましくは85mol%以上、より好ましくは90mol%以上、更に好ましくは95mol%以上含有する。
【0039】
(d)成分の分子量は、洗浄時の起泡性の観点から、好ましくは700以上、より好ましくは1000以上、そして、好ましくは1800以下、より好ましくは1500以下である。(d)成分の分子量はポリエチレングリコールを標準としたときのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められた重量平均分子量である。また、ポリアルキレンオキシド中のプロピレンオキシド単位の含有量はNMR(核磁気共鳴スペクトル)で求めることができる。
【0040】
(d)成分は、分子量500以上2000以下のポリプロピレンオキシドが好ましい。
【0041】
本発明の液体洗浄剤組成物は、洗浄時の起泡性及び粘度の観点から、(d)成分を0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、そして、5質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下含有する。
【0042】
本発明の液体洗浄剤組成物は、洗浄時の起泡性及び粘度の観点から、(a)成分の含有量と(b)成分の含有量の合計と(d)成分の含有量との質量比である[(a)+(b)]/(d)が、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、そして、好ましくは170以下、より好ましくは100以下、更に好ましくは50以下である。
【0043】
本発明では(a)成分と(b)成分の前記質量比を2以下にすることで混合ミセルを形成しミセルが疎水性になることから油汚れに高い洗浄性を付与することができる。一方、泡立ち性に関しては、界面活性剤が泡膜に配列することで泡が安定化するが、(a)成分と(b)成分のイオン性が相殺されることで泡膜の安定性も損なわれ、希釈した時の泡立ち性が損なわれる。すなわち洗浄力と起泡力を両立することが難しい。本発明では特定の分子量を有する(c)成分が(a)成分と(b)成分の疎水化した混合ミセルに作用し、イオン性が弱められた泡膜の膜強度を改善することで、洗浄力を損なうことなく泡立ちが良好になるものと考えられる。
【0044】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(e)成分として、(a)成分、(b)成分以外の界面活性剤を含有することができる。(e)成分としては、非イオン界面活性剤が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、アルキルエーテル型非イオン界面活性剤、及びアルキルグリセリルエーテル型界面活性剤から選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、アルキルグリセリルエーテル型界面活性剤から選ばれる1種以上の非イオン界面活性剤が好ましい。アルキルグリセリルエーテル型界面活性剤としては、炭素数8以上18以下、好ましくは炭素数8以上14以下、より好ましくは炭素数8以上12以下のアルキル基を1つ有するアルキルグリセリルエーテル型界面活性剤が挙げられる。前記アルキル基は炭素数8以上12以下の分岐鎖アルキル基が好適である。本発明の液体洗浄剤組成物が(e)成分を含有する場合、該組成物は(e)成分を、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは6質量%以下含有する。
【0045】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(f)成分として、クメンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、m-キシレンスルホン酸より選ばれる1種類以上の可溶化剤を含有することが好ましい。本発明の液体洗浄剤組成物が(f)成分を含有する場合、該組成物は(f)成分を、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1.0質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下含有する。
【0046】
本発明の液体洗浄剤組成物は、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、更に任意の(e)成分、(f)成分以外に、ゲル化防止剤、ポリアクリル酸等の増粘剤、ヒドロキシカルボン酸や網のポリカルボン酸及びこれらの塩から選ばれる一種以上の金属封鎖剤、香料、染料、顔料、殺菌剤、防腐剤、pH調整剤などの成分を、本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0047】
本発明の液体洗浄剤組成物は、水を含有する。すなわち、前記(a)~(d)成分及び任意成分以外の残部が水である。本発明の液体洗浄剤組成物は、好適な粘度に調整し、本発明の効果を十分に発揮できる観点から、水を、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、そして、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下含有する。水は、イオン交換水、滅菌イオン交換水、蒸留水、或いは次亜塩素酸を0.5~10ppm程度溶解させた次亜塩素酸滅菌水などを使用することができる。本発明の液体洗浄剤組成物は、上記成分を、水に溶解及び/又は分散及び/又は乳化させた液体組成物の形態であってよい。例えば、本発明の液体洗浄剤組成物は、水溶液の形態であってよい。
【0048】
本発明の液体洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、そして、好ましくは9以下、より好ましくは8以下である。このようなpHへの調整は、硫酸、塩酸、リン酸から選ばれる無機酸、クエン酸、りんご酸、マレイン酸、フマール酸、コハク酸から選ばれる有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機アルカリ剤を用いて行われる。本発明では、組成物に緩衝能を持たせることが起泡性/泡持続性の点から好ましく、上記有機酸、好ましくはクエン酸と、無機アルカリ剤とを併用することが好適である。有機酸はナトリウム塩やカリウム塩の形態で組成物に配合しても差し支えない。
【0049】
本発明の液体洗浄剤組成物、更に食器用液体洗浄剤組成物の20℃における粘度は、好ましくは5mPa・s以上、より好ましくは10mPa・s以上、そして、好ましくは500mPa・s以下、より好ましくは300mPa・s以下である。粘度は例えば(f)成分などで調整することができる。
【0050】
本発明の液体洗浄剤組成物は、好ましくは硬質物品用、より好ましくは食器及び/又は台所周りの硬質物品用である。更に好ましくは、食器用である。
【0051】
台所周りの硬質物品は、台所の周辺で使用される物品であり、具体的には、
(1)冷蔵庫、食器棚などの食品、食器、調理器具の保存場所、
(2)排水溝、調理台、レンジフード、シンク、ガスレンジ、電子レンジなどの食品の調理場所、及び
(3)前記保存場所や前記調理場所の周辺の床や壁等
である。本発明では、これらを便宜上「台所周りの硬質物品」とする。
また、食器としては、具体的には、
(i)皿、椀等のいわゆる食器、
(ii)タッパー、瓶等の保存容器、
(iii)包丁やまな板、鍋、フライパン、魚焼きグリル等の調理器具、
(iv)フードプロセッサー、ミキサー等の調理家電等
の食材が接触する部材や器具が挙げられる。本発明では、これらを便宜上「食器」とする。
また、本発明は、食器、保存容器、調理器具、及び調理家電から選ばれる物品を対象とすることが好ましく、更に皿、椀、タッパー、ビン、包丁、まな板、鍋、フライパン、魚焼きグリル、フードプロセッサー、及びミキサーから選ばれる物品を対象とすることがより好ましい。
【0052】
本発明の対象とする硬質物品の材質は、プラスチック(シリコーン樹脂などを含む)、金属、陶器、木、及びそれらの組み合わせが挙げられる。そして、本発明の液体洗浄剤組成物は、これら硬質物品に付着した液体油を含有する汚れを効果的に洗浄することができる。
【0053】
前述の通り、プラスチックなどの疎水性材料に付着した液体油は落とし難い汚れであるが、本発明では、プラスチック製の硬質物品に付着した液体油に対しても、優れた洗浄効果を示す。本発明は、プラスチック製の硬質物品の洗浄方法にも好適である。プラスチックは、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタラートなどが挙げられる。
【0054】
本発明の液体洗浄剤組成物は、前述の通り、食器の洗浄、更に食器の手洗い洗浄に好適に用いられる。手洗い洗浄に用いられる洗浄液は、本発明の液体洗浄剤組成物を用いて得られたものであり、組成物の原液又は水を含む希釈液が用いられる。具体的な手洗い洗浄方法としては、例えば、水を含んだスポンジなどの可撓性材料に本発明の組成物を付着させ洗浄液を保持させて、手で数回揉みながら泡立てて、食器をこすり洗いする。可撓性材料が保持する洗浄液中の(a)成分、(b)成分、(c)成分及び(d)成分の合計濃度は、高い起泡性と泡持続性の点から、例えば、1,000ppm以上、更に2,000ppm以上、そして、30,000ppm以下、更に20,000ppm以下、更に10,000ppm以下であってよい。通常、洗浄終了後には水を加えてすすぎを行うが、例えば、本発明では、使用した組成物1質量部に対してすすぎ水3.3~133質量部で十分泡が消え、すすぎを速やかに完了することができる。このすすぎ水の量は、従来の手洗い用洗浄剤組成物を用いた場合の2/3~1/10程度である。
【実施例
【0055】
下記配合成分を用いて表1の液体洗浄剤組成物を調製し、以下の方法で洗浄力、及び起泡力を評価した。結果を表1に示す。
また、下記配合成分を用いて表2の配合例の液体洗浄剤組成物を調製した。
表中の配合成分は以下のものである。
【0056】
<配合成分>
〔(a)成分〕
・a-1:スルホコハク酸ジ-2-エチルヘキシルナトリウム、製品名「エアロールCT-1L」、東邦化学工業(株)製
・a-2:アルキル鎖が炭素数12の天然アルコール1モルに、プロピレンオキシドを0.6モル付加したのち、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウムで中和した(水で10%希釈したもののpHが11になるまで中和した)もの。
【0057】
〔(b)成分〕
・b-1:・ラウリルジメチルヒドロキシスルホベタイン、製品名「アンヒトール20HD」、花王株式会社製
・b-2:ラウリルジメチルアミンオキサイド、製品名「アンヒトール20N」、花王株式会社製
【0058】
〔(c)成分〕
・c-1:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(logPow 0.66)、日本乳化剤株式会社製
・c-2;エタノール(logPow 0.07)
・c-3:プロピレングリコール(logPow -1.4)
【0059】
〔(d)成分〕
・PPG1000:重量平均分子量1000のポリプロピレンオキシド
・PPG2000:重量平均分子量2000のポリプロピレンオキシド
【0060】
〔(d’)成分((d)成分の比較成分)〕
・PPG400:重量平均分子量400のポリプロピレンオキシド
・PPG3000:重量平均分子量3000のポリプロピレンオキシド
・PEG1000:重量平均分子量1000のポリエチレンオキシド
・PEG2000:重量平均分子量2000のポリエチレンオキシド
【0061】
〔(e)成分〕
・e-1:2-エチルヘキシルモノグリセリルエーテル、花王株式会社製
〔(f)成分〕
・f-1:パラトルエンスルホン酸、明友産業株式会社製
【0062】
<評価方法>
(1)洗浄力の評価
30mm(横)×80mm(縦)×1mm(厚み)のポリプロピレン試験片の質量を4桁天秤で測定した(x)。前記ポリプロピレン試験片の両面に、牛脂(シグマアルドリッチジャパン株式会社)と菜種油(キシダ化学株式会社)を9:1の質量比で混合したものを、下端から50mmの高さまで、両面合わせて0.02~0.04gとなるように均一に塗布したものを作製し、汚れピースとした。同汚れピースの質量を4桁天秤で測定した(y)。各洗浄剤組成物の水による30倍希釈液50gを50mL容器(内径35mm×高さ68mmの円柱状)に入れ、次いで汚れピース1枚を同容器内に立て掛けて前記組成物の30倍希釈液に接触させた。この時、汚れピースの汚れを付着させた部分は、容器内の前記希釈液中に全て浸漬した。汚れピースを前記容器内の前記希釈液に1分間浸漬後、前記汚れピースを取り出し、1分間水道水で流水すすぎをした。この時、流水すすぎの条件は、水道水の温度は25℃、流速は約4L/min、蛇口の開口部の直径は約15mmであった。開口部から5cm垂直下に位置する汚れピースに落下してくる水道水に対して汚れピースを45°になるように持ち、その角度を固定したまま汚れピースの汚れを付着させていない上端部分で流水を受け、汚れピース上を流れる水道水で洗浄部分片面全体をすすいだ。このとき、10秒毎に表裏を変えて交互にすすいだ。
すすぎ終了後、汚れピースを乾燥させた後、4桁天秤で質量を測定した(z)。以下の式で洗浄率を求めた。洗浄率の数値は大きい方が好ましい。
洗浄率(%)={(y)-(z)}/{(y)-(x)}×100
【0063】
(2)起泡力の評価
比色管(内径25mm×高さ250mmの円柱状)に前記組成物を30倍希釈した水溶液10gと牛脂(シグマアルドリッチジャパン株式会社)と菜種油(キシダ化学株式会社)を1:1の質量比で混合したものを、0.5g入れて蓋をした。比色管内部の水溶液と油脂混合物と混和させながら泡立たせるために、比色管内部の上面と底面に内容物を打ち付けるように、上下に20回振盪し、振盪後の泡の高さを読み取り、起泡力を求めた。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】