(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】ドアラッチ装置
(51)【国際特許分類】
E05B 77/40 20140101AFI20230629BHJP
E05B 85/26 20140101ALI20230629BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
E05B77/40
E05B85/26
B60J5/00 M
(21)【出願番号】P 2019120259
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】芥川 勝利
(72)【発明者】
【氏名】宇田 崇志
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-17172(JP,A)
【文献】実開平10-66(JP,U)
【文献】特開2008-248660(JP,A)
【文献】実開平6-59570(JP,U)
【文献】実開平4-59277(JP,U)
【文献】特開昭63-289185(JP,A)
【文献】実開昭63-127575(JP,U)
【文献】特開2008-57324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストライカを離脱不可能な保持位置と、前記ストライカを離脱可能な開放位置とに回転可能なフォークと、
前記保持位置の前記フォークに係止する係止位置と、前記フォークとの係止が解除された係止解除位置とに回転可能なクローと、
前記クローを回転可能に支持する支持軸と
を備え、
前記クローは、金属製のクロー本体と、このクロー本体の少なくとも一部を覆う樹脂製のカバーとを有し、
前記カバーには、前記支持軸が挿通された軸孔が設けられ、
前記支持軸は、金属製の軸本体と、前記軸本体の外周面に設けられた弾性を有する円筒状の緩衝層とを有
し、
前記軸孔を画定する孔壁には、前記緩衝層に当接する凸部が設けられている、ドアラッチ装置。
【請求項2】
前記緩衝層は熱可塑性エラストマからなる、請求項1に記載のドアラッチ装置。
【請求項3】
前記凸部は、円環状であり、前記緩衝層の外径よりも小さい内径を有する、請求項
1又は2に記載のドアラッチ装置。
【請求項4】
前記緩衝層の硬度は、前記カバーの硬度よりも低い、請求項1から
3のいずれか1項に記載のドアラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のドアに配置されるドアロック装置が開示されている。このドアロック装置は、車体に配置されたストライカを離脱可能に係止するラッチ機構を備える。ラッチ機構は、ストライカを離脱不可能な保持位置と離脱可能な開放位置とに回転可能なフォークと、保持位置のフォークに係止するクローとを備える。
【0003】
開状態のドアを閉じると、ストライカによって押圧されたフォークは、開放位置から保持位置に回転し、クローによって係止される(閉作動)。クローと支持軸の間には、支持軸に対するクローの組付性と回転に必要な不可避の隙間が存在する。そのため、ドアを閉じる際の衝撃によって支持軸に対してクローが振動し、この振動によって作動音が生じる。このラッチ機構の閉作動時の作動音を低減するために、特許文献1のクローは金属製の本体と樹脂製のカバーとで構成され、カバーに形成された軸孔に金属製の支持軸が挿通されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のラッチ機構では、樹脂製のカバーの軸孔内に金属製の支持軸が挿通されているが、カバーとして使用可能な樹脂は比較的高硬度であるため、作動音の低減について改良の余地がある。
【0006】
本発明は、ドアラッチ装置の閉作動時の振動による作動音を効果的に抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、ストライカを離脱不可能な保持位置と、前記ストライカを離脱可能な開放位置とに回転可能なフォークと、前記保持位置の前記フォークに係止する係止位置と、前記フォークとの係止が解除された係止解除位置とに回転可能なクローと、前記クローを回転可能に支持する支持軸とを備え、前記クローは、金属製のクロー本体と、このクロー本体の少なくとも一部を覆う樹脂製のカバーとを有し、前記カバーには、前記支持軸が挿通された軸孔が設けられ、前記支持軸は、金属製の軸本体と、前記軸本体の外周面に設けられた弾性を有する円筒状の緩衝層とを有し、前記軸孔を画定する孔壁には、前記緩衝層に当接する凸部が設けられている、ドアラッチ装置を提供する。
【0008】
閉作動時の衝撃によってクローが振動すると、樹脂製のカバーにおいて軸孔を画定する孔壁が支持軸の緩衝層に干渉する。緩衝層は弾性を有するため、干渉したクローの振動を吸収できる。そのため、金属製の支持軸と樹脂製のカバーとが干渉する場合と比較して、振動による作動音の発生を効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドアラッチ装置では、閉作動時の振動による作動音を効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るドアラッチ装置の一部を分解した斜視図。
【
図2】ドアを開状態としたドアラッチ装置の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0012】
図1から
図3は、本発明の実施形態に係るドアラッチ装置10を示す。このドアラッチ装置10は、図示しない車両において、ドア及び車体のうちの一方に取り付けられ、ドア及び車体のうちの他方に取り付けられたストライカ1(
図2参照)を離脱可能に係止する。ストライカ1の係止によってドアラッチ装置10は、車体に対してドアを閉状態に保持する。
【0013】
図1及び
図2に示すように、ドアラッチ装置10は、フェンスブロック15、カバー16、フォーク20、及びクロー25を備える。
【0014】
フェンスブロック15は、ドア又は車体に組み付けるための筐体である。このフェンスブロック15は、ドアの開閉方向(X方向)へ延び、ストライカ1が挿通可能な挿通溝15aを備える。フォーク20とクロー25が配置されたフェンスブロック15の一面は、金属製のカバー16によって覆われている。カバー16には、挿通溝15aに対応する挿通溝16aが形成されている。カバー16は、後述する支持軸23,30の一端が嵌合孔16cの縁に加締められることで、フェンスブロック15に固定されている。なお、支持軸23,30の他端は、フェンスブロック15を貫通し、後述するバックプレート17に加締めて固定される。また、カバー16は、ドアのヒンジ軸とは反対側の端面の内側に配置され、ドア端面のネジ孔(図示せず)に挿通されたネジ(図示せず)をネジ孔16bに螺合することで、ドアに固定されている。
【0015】
フォーク20は、挿通溝15aの一側(
図2においてZ方向上側)に配置され、フェンスブロック15に固定された支持軸23に回転可能に取り付けられている。クロー25は、挿通溝15aの他側(
図2においてZ方向下側)に配置され、フェンスブロック15に固定された支持軸30に回転可能に取り付けられている。
【0016】
開状態のドアを閉じると、挿通溝15a,16aを通してストライカ1がフォーク20の係止溝20a内に進入する。ストライカ1の押圧によってフォーク20は、
図2に示す開放位置から
図1に示す保持位置へ反時計回りに回転し、係止位置のクロー25に係止されて保持位置に保持される。保持位置のフォーク20はストライカ1を離脱不可能に係止し、車体に対してドアが閉状態に保持される。
【0017】
図示しないドアハンドルを操作すると、ワイヤ等によってドアハンドルに機械的に接続されたクロー25が、
図1に示す係止位置から
図2に示す係止解除位置へ時計回りに回転する。これにより、クロー25によるフォーク20の係止が解除され、図示しない付勢部材(キックバネ)の付勢力によって保持位置のフォーク20が開放位置に回転する。その結果、フォーク20からストライカ1が離脱可能になり、車体に対するドアの開放が可能になる。
【0018】
図3を参照すると、本実施形態のドアラッチ装置10は、フォーク20の回転に連動するスイッチレバー40を備える。
図1及び
図2を参照すると、スイッチレバー40は、フェンスブロック15の貫通孔15bをY方向に貫通し、フォーク20の外周部に位置する係止突起40aを備える。スイッチレバー40は、係止突起40aがフォーク20に押し付けられる向きに付勢されている。係止突起40aは、フォーク20の回転に応じて
図1に示すフルラッチ検出位置と
図2に示すオープン検出位置との間をZ方向に移動する。スイッチレバー40は、係止突起40aの動きに連動して回転し、図示しないフォーク位置検出スイッチを操作する。
【0019】
ドアを閉じる際のドアラッチ装置10の閉作動は、次の通りである。ストライカ1の押圧によって開放位置のフォーク20が保持位置の方へ反時計回りに回転し、フォーク20の押圧によって係止位置のクロー25が係止解除位置の方へ時計回りに回転する。フォーク20が保持位置まで回転すると、フォーク20による押圧が解除されたクロー25は、
図4に示す付勢部材(キックバネ)35の付勢によって反時計回りに回転し、ストッパ36への当接によって係止位置で停止する。
【0020】
走行時の振動は勿論、衝突等による外力が車両に加わっても、係止位置のクロー25が係止解除位置の方へ回転することを防ぎ、ドアの開放を防止できるように、付勢部材35の付勢力は強く設定されている。そのため、フォーク20の押圧によって回転したクロー25が付勢部材35によって係止位置へ回転した後、クロー25がストッパ36に当接した際には強い衝撃が作用する。クロー25と支持軸30の間には不可避の隙間があるため、閉作動時の衝撃によって支持軸30に対してクロー25が振動して作動音が生じる。この振動による作動音を抑制するために、クロー25と支持軸30は以下のようにしている。
【0021】
図4に示すように、クロー25は、支持軸30に回転自在に支持され、付勢部材35によって係止位置に向けて付勢されている。
図1及び
図3を参照すると、支持軸30は、フェンスブロック15において、背面側に位置する金属製のバックプレート17と、正面側に位置する金属製のカバー16とに、両持ち支持されている。
【0022】
図4から
図6に示すように、クロー25は、金属製のクロー本体26と樹脂製のカバー27とで構成され、支持軸30は、金属製の軸本体31と弾性を有する緩衝層32とで構成されている。なお、
図1を参照すると、フォーク20も金属製のフォーク本体21と樹脂製のカバー22とで構成されている。
【0023】
図5から
図7はクロー25の構成を示している。クロー25はインサート成形によって製造されている。
図8では、クロー本体26とカバー27を別々に現している。
図8に示すクロー本体26を金型内に配置し、カバー27を構成する樹脂を金型内に射出することで、クロー25が成形される。
【0024】
図8に最も明瞭に示すように、クロー本体26は、基部26a、係止部26b、当接部26c、及び腕部26dを備える。
【0025】
基部26aは、支持軸30の軸方向から見てC字形状に形成されている。つまり、基部26aは、円筒の一部を軸線に沿って切り欠いた形状である。基部26aの内径は、支持軸30の外径よりも大きい。
【0026】
係止部26bは、基部26aから外向き膨出している。この係止部26bは、カバー27から露出し、フォーク本体21によって構成されるフォーク20の係止段部20c(
図1参照)に係止する。
【0027】
当接部26cは、係止部26bに対して基部26aの周方向に隣接し、基部26aから外向きに突出している。この当接部26cは、カバー27から突出し、フェンスブロック15に配置されたストッパ36(
図1参照)に当接する。
【0028】
腕部26dは、基部26aにおいて係止部26bの対向部分から外向きに突出している。この腕部26dは、後述する連結部27fの基部を構成する。
【0029】
カバー27は、クロー本体26において係止部26bと当接部26cを除く部分を覆うカバー本体27aを備える。カバー本体27aには、係止部26bを露出させる露出孔27b、当接部26cを露出させる露出孔27c、基部26aの軸線に沿って円筒状に突出する筒部27d、及び腕部26dから突出する連結部27fが設けられている。
【0030】
図1及び
図5を参照すると、筒部27dは、カバー16側に位置するカバー本体27aの一面(
図5において右側の面)を基端とし、基部26aの内周部を経由してカバー本体27aの他面(
図5において左側の面)から突出している。突出した筒部27dの先端から筒部27dの基端までが、支持軸30の外周を取り囲む孔壁である。この孔壁(筒部27d)によって、支持軸30を挿通する軸孔27eが画定されている。
【0031】
連結部27fは、カバー本体27aから筒部27dと同じ向きへ突出している。連結部27fは、フェンスブロック15に形成された扇形状の貫通孔15c(
図2参照)を貫通し、フェンスブロック15の背面側へ突出している。この連結部27fの先端に、ドアラッチ装置10を開作動させるためのドアハンドルが連結される。
【0032】
図5及び
図6に示すように、軸本体31は円柱状の軸部31aを備える。軸部31aの外径は筒部27dの内径よりも小さい。
図4を参照すると、フェンスブロック15は付勢部材35を配置するための円形状の凹部15dを備え、軸本体31は凹部15dの底に配置される円板状のフランジ部31bを備える。フランジ部31bの直径は、キックバネからなる付勢部材35の巻回部の内径よりも小さい。
【0033】
図1、
図3及び
図5を参照すると、軸本体31は、フェンスブロック15の背面に配置された金属製のバックプレート17とカバー16に架設されている。具体的には、軸本体31は、バックプレート17に固定される円柱状の固定部31cと、カバー16に嵌合される円柱状の嵌合部31dとを備える。これらの直径は軸部31aの直径よりも小さい。
【0034】
固定部31cは、軸部31aにおけるフランジ部31b側の端から、軸部31aの軸線に沿って突出している。固定部31cは、凹部15cを貫通してフェンスブロック15の背面側へ突出し、バックプレート17の固定孔の縁に加締めによって固定されている。
【0035】
嵌合部31dは、軸部31aにおける固定部31cとは反対側の端から、軸部31aの軸線に沿って突出している。嵌合部31dは、クロー25から前方へ突出し、カバー16の嵌合孔16cの縁に加締めによって固定されている。
【0036】
図5及び
図6を参照すると、緩衝層32は、筒部27dの内周面と対向する軸部31aの外周面に設けられている。この緩衝層32は、軸部31aにおいて、フランジ部31bから嵌合部31dが設けられた方の端近傍まで、円筒状に形成されている。本実施形態では、緩衝層32の第1端(一端)32aは、フランジ部31bの一面に接している。緩衝層32の第2端(他端)32bは、軸部31aの端に対して間隔をあけて位置している。但し、緩衝層32の第1端32aは、フランジ部31bと間隔をあけて位置していてもよいし、緩衝層32の第2端32bは、嵌合部31d側に位置する軸部31aの端に位置していてもよい。
【0037】
緩衝層32は、ゴムの特徴である弾性と、樹脂の特長である高機能性及び良加工性とを備える熱可塑性エラストマ(エンジニアリングプラスチック)を、アウトサート成形することで形成されている。より具体的には、本実施形態の緩衝層32は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)とポリエーテルのブロック共重合体であるポリエステル系熱可塑性エラストマ(例えばデュポン社製のハイトレル(登録商標))によって形成される。
【0038】
緩衝層32の硬度は、ポリアセタール製のカバー27の硬度よりも低く、緩衝材として広く用いられるゴム(例えば合成ゴム)の硬度よりも高い。言い換えると、緩衝層32の弾性率は、カバー27の弾性率よりも高く、ゴムの弾性率よりも低い。また、カバー27と緩衝層32との間に生じる摩擦抵抗は、ゴム製の緩衝層との間に生じる摩擦抵抗よりも低い。
図5に最も明瞭に示すように、緩衝層32の外径は筒部27dの内径よりも小さく、これらの間には隙間Sが形成されている。この隙間Sは、支持軸30に対するクロー25の組付性と回転性を確保できる範囲で、可能な限り小さい寸法に設定されている。
【0039】
緩衝層32の硬度(JIS K 7215準拠のタイプDデュロメータ)は、40ポイント以上50ポイント以下に設定される。また、緩衝層32の弾性率は、85MPa以上110MPa以下に設定される。硬度を40ポイント未満(110MPaよりも高弾性率)にすると、緩衝層32が過度に柔らかくなるため、支持軸30によってクロー25を安定して支持できず、ドアラッチ装置10の誤作動の原因になる。50ポイントよりも高硬度(弾性率を85MPa未満)にすると、緩衝層32が過度に硬くなるため、緩衝層32によってクロー25の振動を十分に吸収できず、作動音の抑制が不十分になる。よって、緩衝層32の硬度(又は弾性率)は、上記範囲内に設定することが好ましい。
【0040】
緩衝層32と筒部27dの隙間Sは、0.01mm以上2mm以下に設定される。隙間Sを0.01mm未満にすると、支持軸30とクロー25との間の遊びが過度に小さくなるため、支持軸30とクロー25の間の摩擦抵抗が増える。この場合、クロー25の作動(回転)に悪影響を与えるため、ドアラッチ装置10の誤作動の原因になる。隙間Sを2mmよりも大きくすると、支持軸30とクロー25との間の遊びが過度に大きくなるため、支持軸30によってクロー25を安定して支持できず、やはりドアラッチ装置10の誤作動の原因になる。よって、緩衝層32と筒部27dの隙間Sは、上記範囲内に設定することが好ましい。
【0041】
図5及び
図7を参照すると、筒部27dの内周には、軸孔27e内へ突出して緩衝層32に当接する凸部27gが設けられている。この凸部27gは、筒部27dの内面に沿って周方向に円環状に形成されている。凸部27gの形状は、本実施形態では概ね断面半円形状であるが、緩衝層32を支持できる構成であれば必要に応じて変更可能である。凸部27gの内径R1は緩衝層32の外径R2よりも小さい。筒部27dの内周面から凸部27gの頂部までの突出量Pは、隙間Sよりも大きく、緩衝層32の径方向の厚みTよりも小さい。
【0042】
緩衝層32の厚みTは、0.4mm以上0.5mm以下に設定される。厚みTを0.4mm未満にすると、緩衝層32が過度に薄くなるため、緩衝層32によってクロー25の振動を十分に吸収できないだけでなく、クロー25の回転によって緩衝層32が破損する虞がある。厚みTを0.5mmよりも厚くすると、支持軸30及びクロー25が大型になる。よって、緩衝層32の厚みTは、上記範囲内に設定することが好ましい。
【0043】
凸部27gの突出量Pは、0.05mm以上0.2mm以下に設定される。突出量Pを0.05mm未満にすると、筒部27dの内面に対して面一に近くなるため、凸部27gを含む筒部27dの内面と緩衝層32が面接触する。この場合、これらの間の摩擦抵抗が増えるため、クロー25の作動に悪影響を与え、ドアラッチ装置10の誤作動の原因になる。突出量Pを0.2mmよりも大きくすると、緩衝層32に対する凸部27gの圧入量が過度に大きくなるため、やはりクロー25の作動に悪影響を与え、ドアラッチ装置10の誤作動の原因になる。よって、凸部27gの突出量Pは、上記範囲内に設定することが好ましい。
【0044】
支持軸30の軸線に沿った方向において、凸部27gの一側から他側までの凸部27gの幅Wは、0.3mm以上2.0mm以下に設定される。幅Wを0.3mm未満にすると、凸部27gが過度に薄くなるため、凸部27gが破損する虞がある。幅Wを2.0mmよりも大きくすると、凸部27gが過度に厚くなるため、緩衝層32との接触面積が過度に増える。この場合、これらの間の摩擦抵抗が増えるため、クロー25の作動に悪影響を与え、ドアラッチ装置10の誤作動の原因になる。よって、凸部27gの幅Wは、上記範囲内に設定することが好ましい。
【0045】
このように構成したドアラッチ装置10は、以下の特徴を有する。
【0046】
支持軸30に形成された緩衝層32は弾性を有する。よって、閉作動時の衝撃によってクロー25が振動し、樹脂製のカバーの筒部27dが支持軸30に干渉した際、緩衝層32によってクロー25の振動を吸収できる。そのため、金属製の支持軸と樹脂製のカバー27とが干渉する場合と比較して、振動による作動音の発生を効果的に抑制できる。そして、このドアラッチ装置10を用いた車両では、ドアを閉める時の音を低減でき、静音性を向上できるため、高級感を高めることができる。
【0047】
緩衝層32は熱可塑性エラストマからなる。よって、緩衝材として広く用いられるゴムからなる緩衝層と比較して、クロー25の筒部27dとの間に生じる摩擦抵抗は小さい。その結果、支持軸30に対するクロー25の作動(回転)に悪影響を及ぼすことを防止できる。より具体的には、緩衝層32の硬度は、カバー27の硬度よりも低い。よって、フォーク20に対するクロー25の機械的強度を確保しつつ、緩衝層32の弾性によってクロー25の振動を効果的に抑制できる。
【0048】
筒部27dには軸孔27e内へ突出して緩衝層32に当接(圧接)する凸部27gが設けられている。また、凸部27gは円環状であり、その内径は緩衝層32の外径よりも小さい。よって、凸部27gの部分では緩衝層32と筒部27dとの隙間Sをなくすことができ、クロー25の振動を効果的に抑制できる。また、凸部27g以外の部分では緩衝層32と筒部27dとの隙間Sをある程度設けることで、支持軸30への緩衝層32の形成に伴って、クロー25との間に摩擦抵抗が増え、クロー25の作動に悪影響を与えることを防止できる。具体的には、弾性を有する緩衝層32と筒部27dの内面との面接触を防止できるため、これらの間での摩擦抵抗を低減できる。その結果、支持軸30に対するクロー25の組付性及び作動性を確保できるとともに、クロー25の振動による作動音を効果的に抑制できる。
【0049】
なお、本発明のドアラッチ装置10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、支持軸30に形成する緩衝層32は、カバー27よりも硬度が低く、所定の弾性(弾性率)を有する構成であれば、その材料は必要に応じて変更が可能である。
【0051】
凸部27gは、周方向に間隔をあけて断続的に設けてもよし、支持軸30の軸線に沿って間隔をあけて2以上(複数)設けてもよい。また、凸部を緩衝層32に設け、筒部27dの内面に圧接させてもよい。
【0052】
支持軸30の軸方向において、緩衝層32は断続的に設けられてもよい。緩衝層32とクロー25の間の摩擦抵抗を低減するために、緩衝層32には、支持軸30の軸方向に間隔をあけて周方向に延びる環状溝を設けてもよい。
【0053】
前記実施形態のドアラッチ装置10は、ドアを開放不可能にロック及び開放可能にアンロックするドアロック装置に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 ストライカ
10 ドアラッチ装置
15 フェンスブロック
15a 挿通溝
15b 貫通孔
15c 貫通孔
15d 凹部
16 カバー
16a 挿通溝
16b ネジ孔
16c 嵌合孔
17 バックプレート
20 フォーク
20a 係止溝
20b 係止段部
20c 係止段部
21 フォーク本体
22 カバー
23 支持軸
25 クロー
26 クロー本体
26a 基部
26b 係止部
26c 当接部
26d 腕部
27 カバー
27a カバー本体
27b 露出孔
27c 露出孔
27d 筒部(孔壁)
27e 軸孔
27f 連結部
27g 凸部
30 支持軸
31 軸本体
31a 軸部
31b フランジ部
31c 固定部
31d 嵌合部
32 緩衝層
32a 第1端
32b 第2端
35 付勢部材
36 ストッパ
40 スイッチレバー
40a 係止突起