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特許7304226産業用ロボットおよび産業用ロボットの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】産業用ロボットおよび産業用ロボットの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20230629BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B25J19/06
H01L21/68 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019128094
(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公開番号】P2021013961
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 陽介
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-201556(JP,A)
【文献】特開2015-054386(JP,A)
【文献】特開2010-052055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 19/06
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平多関節型の産業用ロボットにおいて、
ハンドと、相対回動可能に連結される少なくとも2個のアーム部を有するとともに前記ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、前記アームの基端側が回動可能に連結される本体部と、前記本体部に対して前記アームを水平方向に伸縮させるアーム駆動機構と、前記産業用ロボットを制御する制御部とを備え、
前記アーム駆動機構は、前記アームを伸縮させるための複数のモータと、複数の前記モータの回転位置を検知するための複数のエンコーダと、複数の前記モータを停止させるための複数の機械ブレーキとを備え、
前記機械ブレーキは、電磁ブレーキであり、
複数の前記エンコーダのそれぞれは、複数の前記モータのそれぞれに取り付けられ、
複数の前記機械ブレーキのそれぞれは、複数の前記モータのそれぞれに取り付けられ、
前記機械ブレーキのブレーキ力は、調整可能となっており、
複数の前記機械ブレーキのそれぞれのブレーキ力は、前記アームの伸縮動作中に駆動している複数の前記モータに対して取り付けられた複数の前記機械ブレーキを前記アームの伸縮動作中に同時に作動させたときに駆動中の複数の前記モータが略同時に停止するように調整されており、
前記制御部は、前記エンコーダの検知結果に基づいて前記モータを制御するとともに、前記アームの伸縮動作中に駆動している複数の前記モータのうちの少なくとも1個の前記モータにおいて前記エンコーダの検知結果に基づく前記モータの制御が不能となる場合をエンコーダエラーとすると、前記アームの伸縮動作中に前記エンコーダエラーが発生して駆動中の複数の前記モータを非常停止させるときに、駆動中の複数の前記モータに対して取り付けられた複数の前記機械ブレーキを作動させることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記制御部は、前記アームの伸縮動作中に前記エンコーダエラーが発生して駆動中の複数の前記モータを非常停止させるときのみに、駆動中の複数の前記モータに対して取り付けられた複数の前記機械ブレーキを作動させることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記制御部は、前記アームの伸縮動作中に前記エンコーダエラーが発生して駆動中の複数の前記モータを非常停止させるときに、駆動中の複数の前記モータにダイナミックブレーキをかけることを特徴とする請求項1または2記載の産業用ロボット。
【請求項4】
2個の前記ハンドを備え、
前記アームは、前記アーム部として、2個の前記ハンドのそれぞれが先端側に回動可能に連結される2個の先端側アーム部と、2個の前記先端側アーム部の基端側が回動可能に連結されるとともに前記本体部に回動可能に連結される共通アーム部とを備え、
前記アーム駆動機構は、前記モータとして、前記本体部に対して前記共通アーム部を回動させるための第1モータと、前記共通アーム部に対して2個の前記先端側アーム部を個別に回動させるための2個の第2モータとを備え、
前記アームの伸縮動作時には、2個の前記第2モータのうちのいずれか1個の前記第2モータと前記第1モータとが駆動することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記アームに対して前記ハンドを回動させるためのハンド回動用モータと、前記ハンド回動用モータの回転位置を検知するためのハンド用エンコーダと、前記ハンド回動用モータを停止させるためのハンド用機械ブレーキとを備え、
前記ハンド用機械ブレーキは、電磁ブレーキであり、
前記ハンド用機械ブレーキのブレーキ力は、調整可能となっており、
前記ハンド用機械ブレーキのブレーキ力は、前記アームの伸縮動作中に駆動している複数の前記モータに対して取り付けられた複数の前記機械ブレーキおよび前記ハンド用機械ブレーキを前記アームの伸縮動作中に同時に作動させたときに駆動中の複数の前記モータおよび前記ハンド回動用モータが略同時に停止するように調整されており、
前記制御部は、前記ハンド用エンコーダの検知結果に基づいて前記ハンド回動用モータを制御するとともに、前記アームの伸縮動作中に前記ハンド用エンコーダの検知結果に基づく前記ハンド回動用モータの制御が不能となる場合を第2エンコーダエラーとすると、前記アームの伸縮動作中に前記エンコーダエラーまたは前記第2エンコーダエラーが発生して駆動中の複数の前記モータおよび前記ハンド回動用モータを非常停止させるときに、駆動中の複数の前記モータに対して取り付けられた複数の前記機械ブレーキおよび前記ハンド用機械ブレーキを作動させることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項6】
前記制御部は、前記アームの伸縮動作中に前記エンコーダエラーまたは前記第2エンコーダエラーが発生して駆動中の複数の前記モータおよび前記ハンド回動用モータを非常停止させるときのみに、駆動中の複数の前記モータに対して取り付けられた複数の前記機械ブレーキおよび前記ハンド用機械ブレーキを作動させることを特徴とする請求項5記載の産業用ロボット。
【請求項7】
ハンドと、相対回動可能に連結される少なくとも2個のアーム部を有するとともに前記ハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、前記アームの基端側が回動可能に連結される本体部と、前記本体部に対して前記アームを水平方向に伸縮させるアーム駆動機構とを備え、
前記アーム駆動機構は、前記アームを伸縮させるための複数のモータと、複数の前記モータの回転位置を検知するための複数のエンコーダと、複数の前記モータを停止させるための複数の機械ブレーキとを備え、
前記機械ブレーキは、電磁ブレーキであり、
複数の前記エンコーダのそれぞれは、複数の前記モータのそれぞれに取り付けられ、
複数の前記機械ブレーキのそれぞれは、複数の前記モータのそれぞれに取り付けられ、
前記機械ブレーキのブレーキ力は、調整可能となっており、
複数の前記機械ブレーキのそれぞれのブレーキ力は、前記アームの伸縮動作中に駆動している複数の前記モータに対して取り付けられた複数の前記機械ブレーキを前記アームの伸縮動作中に同時に作動させたときに、駆動中の複数の前記モータが略同時に停止するように調整されている水平多関節型の産業用ロボットの制御方法であって、
前記エンコーダの検知結果に基づいて前記モータを制御するとともに、前記アームの伸縮動作中に駆動している複数の前記モータのうちの少なくとも1個の前記モータにおいて前記エンコーダの検知結果に基づく前記モータの制御が不能となる場合をエンコーダエラーとすると、前記アームの伸縮動作中に前記エンコーダエラーが発生して駆動中の複数の前記モータを非常停止させるときに、駆動中の複数の前記モータに対して取り付けられた複数の前記機械ブレーキを作動させることを特徴とする産業用ロボットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平多関節型の産業用ロボットに関する。また、本発明は、水平多関節型の産業用ロボットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空中で、液晶ディスプレイ用のガラス基板を搬送する産業用ロボットが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の産業用ロボットは、ガラス基板が搭載される2個のハンドと、2個のハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部とを備えている。アームは、2個のハンドのそれぞれが先端側に回動可能に連結される2個のアーム部と、2個のアーム部の基端側が回動可能に連結されるとともに本体部に回動可能に連結される共通アーム部とから構成されている。また、この産業用ロボットは、本体部に対して共通アーム部を回動させるためのモータを有する回動機構と、アーム部に対してハンドを回動させるとともに共通アーム部に対してアーム部を回動させるためのモータを有する駆動機構とを備えている。
【0003】
特許文献1に記載の産業用ロボットでは、回動機構のモータを第1モータとし、駆動機構のモータを第2モータとすると、アームが伸縮して、ガラス基板の製造装置等に対してガラス基板を搬送する際に、第1モータと、一方のアーム部を回動させるための第2モータとが駆動している。このときには、他方のアーム部を回動させるための第2モータは停止している。また、このときには、一方のアーム部に連結されるハンドが一定方向を向いた状態で直線的に移動するように、第1モータと、一方のアーム部を回動させるための第2モータとが制御されている。具体的には、第1モータおよび第2モータは、モータの回転位置を検知するためのエンコーダを備えており、一方のアーム部に連結されるハンドが一定方向を向いた状態で直線的に移動するように、エンコーダの検知結果に基づいて第1モータおよび第2モータが制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-15839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の産業用ロボットでは、アームの伸縮動作時に、エンコーダの検知結果に基づく第1モータおよび第2モータの制御が可能な状態で所定のエラーが発生して産業用ロボットを非常停止させる場合(すなわち、第1モータおよび第2モータを非常停止させる場合)には、一般に、エンコーダの検知結果に基づいて第1モータおよび第2モータを制御しながら非常停止させる。そのため、この場合には、アームが停止するまでの間、ハンドを設計上の軌跡に沿って移動させた後(すなわち、ハンドを直線的に移動させた後)、ハンドを停止させることが可能になる。
【0006】
一方で、たとえば、エンコーダの検知結果に基づく第1モータの制御は可能であるが、エンコーダの検知結果に基づく第2モータの制御が不能となるエンコーダエラーがアームの伸縮動作時に発生して産業用ロボットを非常停止させる場合(すなわち、第1モータおよび第2モータを非常停止させる場合)には、エンコーダの検知結果に基づいて第2モータを制御しながら非常停止させることはできない。そのため、本願発明者は、アームの伸縮動作中に上記のエンコーダエラーが発生したときに、エンコーダの検知結果に基づいて第1モータを制御しながら非常停止させ、ダイナミックブレーキをかけることで第2モータを非常停止させることを試みた。
【0007】
しかしながら、ダイナミックブレーキは、モータが低速になるとほとんど効かなくなるため、この場合には、アームが停止するまでの間に移動するハンドの軌跡が設計上の軌跡(すなわち、直線状の軌跡)から大きく乖離して、ハンドの停止位置が設計上の軌跡から大きくずれることが明らかになった。そこで、本願発明者は、アームの伸縮動作中に上記のエンコーダエラーが発生したときに、ダイナミックブレーキをかけることで第1モータおよび第2モータを非常停止させることを試みた。この場合、アームが停止するまでの間に移動するハンドの軌跡の、設計上の軌跡からの乖離が小さくなって、ハンドの停止位置の、設計上の軌跡からのずれは小さくなるものの、許容範囲を超えるハンドの停止位置のずれが発生することが明らかになった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、ハンドと、ハンドが回動可能に連結されるアームとを備える水平多関節型の産業用ロボットにおいて、アームを伸縮させるための複数のモータの中の少なくとも1個のモータにおいてエンコーダの検知結果に基づくモータの制御が不能となるエンコーダエラーがアームの伸縮動作時に発生して複数のモータを非常停止させたときの、ハンドの停止位置の、設計上の軌跡からのずれを抑制することが可能な産業用ロボットを提供することにある。
【0009】
また、本発明の課題は、ハンドと、ハンドが回動可能に連結されるアームとを備える水平多関節型の産業用ロボットにおいて、アームを伸縮させるための複数のモータの中の少なくとも1個のモータにおいてエンコーダの検知結果に基づくモータの制御が不能となるエンコーダエラーがアームの伸縮動作時に発生して複数のモータを非常停止させたときの、ハンドの停止位置の、設計上の軌跡からのずれを抑制することが可能となる産業用ロボットの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットは、水平多関節型の産業用ロボットにおいて、ハンドと、相対回動可能に連結される少なくとも2個のアーム部を有するとともにハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部と、本体部に対してアームを水平方向に伸縮させるアーム駆動機構と、産業用ロボットを制御する制御部とを備え、アーム駆動機構は、アームを伸縮させるための複数のモータと、複数のモータの回転位置を検知するための複数のエンコーダと、複数のモータを停止させるための複数の機械ブレーキとを備え、機械ブレーキは、電磁ブレーキであり、複数のエンコーダのそれぞれは、複数のモータのそれぞれに取り付けられ、複数の機械ブレーキのそれぞれは、複数のモータのそれぞれに取り付けられ、機械ブレーキのブレーキ力は、調整可能となっており、複数の機械ブレーキのそれぞれのブレーキ力は、アームの伸縮動作中に駆動している複数のモータに対して取り付けられた複数の機械ブレーキをアームの伸縮動作中に同時に作動させたときに駆動中の複数のモータが略同時に停止するように調整されており、制御部は、エンコーダの検知結果に基づいてモータを制御するとともに、アームの伸縮動作中に駆動している複数のモータのうちの少なくとも1個のモータにおいてエンコーダの検知結果に基づくモータの制御が不能となる場合をエンコーダエラーとすると、アームの伸縮動作中にエンコーダエラーが発生して駆動中の複数のモータを非常停止させるときに、駆動中の複数のモータに対して取り付けられた複数の機械ブレーキを作動させることを特徴とする。
【0011】
また、上記の課題を解決するため、本発明の産業用ロボットの制御方法は、ハンドと、相対回動可能に連結される少なくとも2個のアーム部を有するとともにハンドが先端側に回動可能に連結されるアームと、アームの基端側が回動可能に連結される本体部と、本体部に対してアームを水平方向に伸縮させるアーム駆動機構とを備え、アーム駆動機構は、アームを伸縮させるための複数のモータと、複数のモータの回転位置を検知するための複数のエンコーダと、複数のモータを停止させるための複数の機械ブレーキとを備え、機械ブレーキは、電磁ブレーキであり、複数のエンコーダのそれぞれは、複数のモータのそれぞれに取り付けられ、複数の機械ブレーキのそれぞれは、複数のモータのそれぞれに取り付けられ、機械ブレーキのブレーキ力は、調整可能となっており、複数の機械ブレーキのそれぞれのブレーキ力は、アームの伸縮動作中に駆動している複数のモータに対して取り付けられた複数の機械ブレーキをアームの伸縮動作中に同時に作動させたときに駆動中の複数のモータが略同時に停止するように調整されている水平多関節型の産業用ロボットの制御方法であって、エンコーダの検知結果に基づいてモータを制御するとともに、アームの伸縮動作中に駆動している複数のモータのうちの少なくとも1個のモータにおいてエンコーダの検知結果に基づくモータの制御が不能となる場合をエンコーダエラーとすると、アームの伸縮動作中にエンコーダエラーが発生して駆動中の複数のモータを非常停止させるときに、駆動中の複数のモータに対して取り付けられた複数の機械ブレーキを作動させることを特徴とする。
【0012】
本発明では、産業用ロボットは、複数のモータを停止させるための複数の機械ブレーキを備えており、複数の機械ブレーキのそれぞれは、複数のモータのそれぞれに取り付けられている。また、本発明では、複数の機械ブレーキのそれぞれのブレーキ力は、アームの伸縮動作中に駆動している複数のモータに対して取り付けられた複数の機械ブレーキをアームの伸縮動作中に同時に作動させたときに駆動中の複数のモータが略同時に停止するように調整されている。さらに、本発明では、アームの伸縮動作中にエンコーダエラーが発生して駆動中の複数のモータを非常停止させるときに、駆動中の複数のモータに対して取り付けられた複数の機械ブレーキを作動させている。
【0013】
そのため、本発明では、アームの伸縮動作中にエンコーダエラーが発生して駆動中の複数のモータを非常停止させたときに、駆動中の複数のモータを略同時に停止させることが可能になる。したがって、本発明では、アームの伸縮動作時にエンコーダエラーが発生して複数のモータを非常停止させたときの、ハンドの停止位置の、設計上の軌跡(直線状の軌跡)からのずれを抑制することが可能になる。また、本発明では、アームの伸縮動作中にエンコーダエラーが発生して駆動中の複数のモータを非常停止させたときに駆動中の複数のモータが略同時に停止するように駆動中の複数のモータのそれぞれが減速していくため、アームが停止するまでの間に移動するハンドの軌跡の、設計上の軌跡からのずれを抑制することが可能になる。
【0014】
本発明において、制御部は、アームの伸縮動作中にエンコーダエラーが発生して駆動中の複数のモータを非常停止させるときのみに、駆動中の複数のモータに対して取り付けられた複数の機械ブレーキを作動させることが好ましい。このように構成すると、アームの伸縮動作中にエンコーダエラー以外のエラーが発生して(すなわち、駆動中の複数のモータの全てにおいて、エンコーダの検知結果に基づくモータの制御が可能となっている状態で所定のエラーが発生して)駆動中の複数のモータを非常停止させる場合には、エンコーダの検知結果に基づいて駆動中の複数のモータを制御しながら非常停止させることが可能になる。したがって、エンコーダエラー以外のエラーが発生して駆動中の複数のモータを非常停止させる場合に、アームが停止するまでの間、ハンドを設計上の軌跡に沿って移動させた後、ハンドを停止させることが可能になる。
【0015】
本発明において、制御部は、アームの伸縮動作中にエンコーダエラーが発生して駆動中の複数のモータを非常停止させるときに、駆動中の複数のモータにダイナミックブレーキをかけることが好ましい。このように構成すると、駆動中の複数のモータを短時間で非常停止させることが可能になる。
【0016】
本発明において、産業用ロボットは、たとえば、2個のハンドを備え、アームは、アーム部として、2個のハンドのそれぞれが先端側に回動可能に連結される2個の先端側アーム部と、2個の先端側アーム部の基端側が回動可能に連結されるとともに本体部に回動可能に連結される共通アーム部とを備え、アーム駆動機構は、モータとして、本体部に対して共通アーム部を回動させるための第1モータと、共通アーム部に対して2個の先端側アーム部を個別に回動させるための2個の第2モータとを備え、アームの伸縮動作時には、2個の第2モータのうちのいずれかの1個の第2モータと第1モータとが駆動する。
【0017】
本発明において、産業用ロボットは、アームに対してハンドを回動させるためのハンド回動用モータと、ハンド回動用モータの回転位置を検知するためのハンド用エンコーダと、ハンド回動用モータを停止させるためのハンド用機械ブレーキとを備え、ハンド用機械ブレーキは、電磁ブレーキであり、ハンド用機械ブレーキのブレーキ力は、調整可能となっており、ハンド用機械ブレーキのブレーキ力は、アームの伸縮動作中に駆動している複数のモータに対して取り付けられた複数の機械ブレーキおよびハンド用機械ブレーキをアームの伸縮動作中に同時に作動させたときに駆動中の複数のモータおよびハンド回動用モータが略同時に停止するように調整されており、制御部は、ハンド用エンコーダの検知結果に基づいてハンド回動用モータを制御するとともに、アームの伸縮動作中にハンド用エンコーダの検知結果に基づくハンド回動用モータの制御が不能となる場合を第2エンコーダエラーとすると、アームの伸縮動作中にエンコーダエラーまたは第2エンコーダエラーが発生して駆動中の複数のモータおよびハンド回動用モータを非常停止させるときに、駆動中の複数のモータに対して取り付けられた複数の機械ブレーキおよびハンド用機械ブレーキを作動させることが好ましい。
【0018】
このように構成すると、アームの伸縮動作中にエンコーダエラーまたは第2エンコーダエラーが発生して複数のモータおよびハンド回動用モータを非常停止させたときに、駆動中の複数のモータおよびハンド回動用モータを略同時に停止させることが可能になる。したがって、アームの伸縮動作時にエンコーダエラーまたは第2エンコーダエラーが発生して複数のモータを非常停止させたときの、ハンドの向きの、設計上の向きからのずれを抑制することが可能になる。また、アームの伸縮動作中にエンコーダエラーまたは第2エンコーダエラーが発生して複数のモータおよびハンド回動用モータを非常停止させたときに駆動中の複数のモータおよびハンド回動用モータが略同時に停止するように駆動中の複数のモータおよびハンド回動用モータのそれぞれが減速していくため、アームが停止するまでの間に移動するハンドの向きの、設計上の向きからのずれを抑制することが可能になる。
【0019】
本発明において、制御部は、アームの伸縮動作中にエンコーダエラーまたは第2エンコーダエラーが発生して駆動中の複数のモータおよびハンド回動用モータを非常停止させるときのみに、駆動中の複数のモータに対して取り付けられた複数の機械ブレーキおよびハンド用機械ブレーキを作動させることが好ましい。このように構成すると、アームの伸縮動作中に、エンコーダエラーおよび第2エンコーダエラー以外のエラーが発生して駆動中の複数のモータおよびハンド回動用モータを非常停止させる場合には、エンコーダの検知結果に基づいて駆動中の複数のモータを制御しながら非常停止させ、かつ、ハンド用エンコーダの検知結果に基づいてハンド回動用モータを制御しながら非常停止させることが可能になる。したがって、エンコーダエラーおよび第2エンコーダエラー以外のエラーが発生して駆動中の複数のモータおよびハンド回動用モータを非常停止させる場合に、アームが停止するまでの間、ハンドの向きを設計上の向きに向けた状態でハンドを設計上の軌跡に沿って移動させた後、ハンドを停止させることが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明では、ハンドと、ハンドが回動可能に連結されるアームとを備える水平多関節型の産業用ロボットにおいて、アームを伸縮させるための複数のモータの中の少なくとも1個のモータにおいてエンコーダの検知結果に基づくモータの制御が不能となるエンコーダエラーがアームの伸縮動作時に発生して複数のモータを非常停止させたときの、ハンドの停止位置の、設計上の軌跡からのずれを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態にかかる産業用ロボットの平面図である。
図2図1に示す産業用ロボットの側面図である。
図3図1に示す産業用ロボットの構成を説明するためのブロック図である。
図4図2のE部の構成を説明するための断面図である。
図5図4に示す電磁ブレーキの構成を説明するための断面図である。
図6】(A)は、本発明の他の実施の形態にかかる産業用ロボットの平面図であり、(B)は、(A)に示す産業用ロボットの側面図である。
図7図6に示す産業用ロボットの構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
(産業用ロボットの全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる産業用ロボット1の平面図である。図2は、図1に示す産業用ロボット1の側面図である。図3は、図1に示すロボット1の構成を説明するためのブロック図である。
【0024】
本形態の産業用ロボット1(以下、「ロボット1」とする。)は、液晶ディスプレイ用のガラス基板2(以下、「基板2」とする。)を搬送するための水平多関節型のロボットである。ロボット1は、真空中で基板2を搬送する。ロボット1は、基板2が搭載される2個のハンド4、5と、ハンド4、5が先端側に回動可能に連結されるアーム6と、アーム6の基端側が回動可能に連結される本体部7と、ロボット1を制御する制御部8とを備えている。また、ロボット1は、本体部7に対してアーム6を水平方向に伸縮させるアーム駆動機構9と、本体部7に対してハンド4、5およびアーム6を昇降させる昇降機構(図示省略)とを備えている。
【0025】
アーム6は、2個のハンド4、5のそれぞれが先端側に回動可能に連結される2個の先端側アーム部10、11と、2個の先端側アーム部10、11が回動可能に連結される共通アーム部12とを備えている。すなわち、アーム6は、相対回動可能に連結される3個のアーム部10~12(先端側アーム部10、先端側アーム部11および共通アーム部12)を備えている。本形態のアーム6は、2個の先端側アーム部10、11と共通アーム部12とによって構成されている。
【0026】
ハンド4は、先端側アーム部10の先端側に回動可能に連結されている。ハンド5は、先端側アーム部11の先端側に回動可能に連結されている。共通アーム部12は、本体部7に回動可能に連結されている。ハンド4は、ハンド5よりも上側に配置されている。先端側アーム部10は、ハンド4よりも上側に配置されている。先端側アーム部11は、ハンド5よりも下側に配置されている。共通アーム部12は、先端側アーム部11よりも下側に配置されている。すなわち、先端側アーム部10、11は、共通アーム部12よりも上側に配置されている。また、共通アーム部12は、本体部7よりも上側に配置されている。
【0027】
本体部7は、アーム6を昇降させる昇降機構および後述のモータ36等が収容される有底円筒状のケース体16と、ケース体16の上端の開口を覆う蓋体17とを備えている。蓋体17には、ケース体16の径方向の外側に広がる鍔部17aが形成されている。上述のように、ロボット1は、真空中で基板2を搬送する。図2に示すように、ロボット1の、鍔部17aの下面よりも上側の部分は、真空チャンバー18の中に配置されている。すなわち、ロボット1の、鍔部17aの下面よりも上側の部分は、真空領域VRの中(真空中)に配置されている。一方、ロボット1の、鍔部17aの下面よりも下側の部分は、大気領域ARの中(大気中)に配置されている。
【0028】
ハンド4、5は、基板2が搭載される複数のフォーク部19を備えている。先端側アーム部10、11は、上下方向から見たときの形状が細長い長円形状となるとともに上下方向の厚さが薄いブロック状に形成されている。先端側アーム部10の長さと先端側アーム部11の長さとは等しくなっている。先端側アーム部10、11は、中空状に形成されている。中空状に形成される先端側アーム部10、11の内部は真空となっている。
【0029】
共通アーム部12は、略V形状に形成されている。また、共通アーム部12は、中空状に形成されている。共通アーム部12の内部は、大気圧となっている。略V形状に形成される共通アーム部12の中心部分は、本体部7に回動可能に連結されている。また、略V形状に形成される共通アーム部12の一方の先端側に先端側アーム部10の基端側が回動可能に連結され、共通アーム部12の他方の先端側に先端側アーム部11の基端側が回動可能に連結されている。先端側アーム部10と共通アーム部12との連結部は、関節部20となっている。先端側アーム部11と共通アーム部12との連結部は、関節部21となっている。
【0030】
共通アーム部12は、本体部7に連結される基端部22と、先端側アーム部10、11の基端側のそれぞれが連結される2個の先端部23、24と、2個の先端部23、24のそれぞれと基端部22とを繋ぐ細長い円筒状の2個の連結部25、26とによって構成されている。先端部23には、先端側アーム部10の基端側が連結され、先端部24には、先端側アーム部11の基端側が連結されている。連結部25は、基端部22と先端部23とを繋ぎ、連結部26は、基端部22と先端部24とを繋いでいる。
【0031】
(アーム駆動機構および制御部の構成)
図4は、図2のE部の構成を説明するための断面図である。図5は、図4に示す機械ブレーキ40の構成を説明するための断面図である。
【0032】
アーム駆動機構9は、共通アーム部12に対して先端側アーム部10を回動させるとともに先端側アーム部10に対してハンド4を回動させる先端側アーム部駆動機構30と、共通アーム部12に対して先端側アーム部11を回動させるとともに先端側アーム部11に対してハンド5を回動させる先端側アーム部駆動機構31と、本体部7に対して共通アーム部12を回動させる共通アーム部駆動機構32とから構成されている。
【0033】
先端側アーム部駆動機構30は、モータ34と、モータ34の回転位置を検知するためのエンコーダ37と、モータ34を停止させるための機械ブレーキ40とを備えている。エンコーダ37および機械ブレーキ40は、モータ34に取り付けられている。先端側アーム部駆動機構31は、モータ35と、モータ35の回転位置を検知するためのエンコーダ38と、モータ35を停止させるための機械ブレーキ41とを備えている。エンコーダ38および機械ブレーキ41は、モータ35に取り付けられている。共通アーム部駆動機構32は、モータ36と、モータ36の回転位置を検知するためのエンコーダ39と、モータ36を停止させるための機械ブレーキ42とを備えている。エンコーダ39および機械ブレーキ42は、モータ36に取り付けられている。
【0034】
すなわち、アーム駆動機構9は、アーム6を伸縮させるための複数のモータ34~36と、複数のモータ34~36の回転位置を検知するための複数のエンコーダ37~39と、複数のモータ34~36を停止させるための複数の機械ブレーキ(メカブレーキ)40~42とを備えている。具体的には、アーム駆動機構9は、3個のモータ34~36と、3個のエンコーダ37~39と、3個の機械ブレーキ40~42とを備えている。
【0035】
また、3個のエンコーダ37~39のそれぞれは、3個のモータ34~36のそれぞれに取り付けられ、3個の機械ブレーキ40~42のそれぞれは、3個のモータ34~36のそれぞれに取り付けられている。本形態のモータ36は、本体部7に対して共通アーム部12を回動させるための第1モータであり、モータ34、35は、共通アーム部12に対して2個の先端側アーム部10、11を個別に回動させるための第2モータである。
【0036】
モータ34~36、エンコーダ37~39および機械ブレーキ40~42は、制御部8に電気的に接続されている。エンコーダ37~39は、ロータリーエンコーダである。エンコーダ37~39は、たとえば、モータ34~36の出力軸43(図5参照)に固定されるスリット板と、透過型の光学式センサとを備えている。光学式センサは、スリット板を挟んだ状態で対向配置される発光素子と受光素子とを備えている。また、本形態の機械ブレーキ40~42は、無励磁作動型の電磁ブレーキである。したがって、以下では、機械ブレーキ40~42を「電磁ブレーキ40~42」とする。
【0037】
先端側アーム部駆動機構30は、モータ34、エンコーダ37および電磁ブレーキ40に加えて、モータ34に連結される減速機44を備えている。減速機44は、中空波動歯車装置であり、関節部20に配置されている。減速機44は、減速機44の出力軸となる回動軸45、回動軸45を回動可能に支持する軸受および回動軸45の外周側に配置される磁性流体シール等を備えている。減速機44のケース体は、先端部23に固定されている。
【0038】
また、先端側アーム部駆動機構30は、減速機44の入力軸46に固定されるプーリ48と、先端側アーム部10の基端側の内部に配置されるプーリ49と、先端側アーム部10の先端側の内部に配置されるプーリ50とを備えている。本形態では、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように、プーリ49のピッチ円径とプーリ50のピッチ円径との比が1:2に設定されている。
【0039】
回動軸45は、中空状に形成されている。回動軸45は、中空状に形成される回動軸52を介して先端側アーム部10の基端側の下面部に固定されている。モータ34は、先端部23に固定されている。また、モータ34は、先端部23の内部に配置されている。モータ34の出力軸43には、プーリ53が固定されている。プーリ48とプーリ53とにベルト54が架け渡されている。プーリ48、53およびベルト54は、先端部23の内部に配置されている。
【0040】
先端側アーム部10の基端側の内部には、プーリ49を回動可能に支持する支持軸55が固定されている。支持軸55の軸心は、回動軸45の軸心と一致している。プーリ49は、軸受を介して支持軸55に回動可能に支持されている。また、プーリ49は、固定部材56を介して先端部23に固定されている。固定部材56は、関節部20の外部に配置されている。先端側アーム部10の先端側の内部には、プーリ50を回動可能に支持する支持軸部10bが形成されている。プーリ50は、軸受を介して支持軸部10bに回動可能に支持されている。また、プーリ50の下端には、ハンド4の基端側が固定されている。プーリ49とプーリ50とには、ベルト57が架け渡されている。
【0041】
電磁ブレーキ40は、プーリ53の下側に配置されている。電磁ブレーキ40は、モータ34の出力軸43に固定される回転部材60と、先端部23に固定される固定板61と、固定板61に固定されるステータ62と、軟磁性材料で形成される可動板63と、可動板63を固定板61に向かって付勢する圧縮コイルバネ64、65と、圧縮コイルバネ64の付勢力を調整するための調整部材66とを備えている。
【0042】
ステータ62は、厚肉の円筒状に形成されている。ステータ62は、軟磁性材料で形成されるステータコア67と、ステータコア67に巻回されるコイル68とを備えている。コイル68は、制御部8に電気的に接続されており、コイル68には、制御部8から電力が供給可能となっている。回転部材60は、鍔付きの円筒状に形成されており、回転部材60の鍔部は、固定板61とステータコア67との間に配置される回転板60aとなっている。可動板63は、回転板60aとステータコア67との間に配置されている。
【0043】
圧縮コイルバネ64、65は、ステータコア67に形成されるバネ配置穴の中に配置されている。圧縮コイルバネ64、65は、円筒状に形成されるステータ62の軸方向の一方側に可動板63を付勢している。電磁ブレーキ40では、コイル68に電力が供給されていない状態では、図5(B)に示すように、圧縮コイルバネ64、65の付勢力によって、固定板61および可動板63に回転板60aが接触して、ブレーキが効く状態となる。すなわち、コイル68に電力が供給されていないときには、電磁ブレーキ40は、作動状態になっている。
【0044】
一方、コイル68に電力が供給されると、図5(A)に示すように、可動板63がステータ62に磁気的に吸引されて、固定板61および可動板63と回転板60aとの間に隙間が形成される。固定板61および可動板63と回転板60aとの間に隙間が形成されると、ブレーキが効かない状態となる。すなわち、コイル68に電力が供給されると、電磁ブレーキ40は、非作動状態になる。モータ34が駆動するときには、コイル68に電力が供給されており、固定板61および可動板63と回転板60aとの間に隙間が形成されている。
【0045】
調整部材66は、鍔付きの円筒状に形成されている。調整部材66の鍔部に形成または固定される突起の先端面には、圧縮コイルバネ64の一端が接触している。調整部材66は、ステータコア67に固定されている。ステータ62の軸方向において、ステータコア67への調整部材66の固定位置は、調整可能となっている。電磁ブレーキ40では、ステータコア67への調整部材66の固定位置を調整することで、圧縮コイルバネ64の付勢力が調整される。また、圧縮コイルバネ64の付勢力を調整することで、電磁ブレーキ40のブレーキ力が調整される。すなわち、電磁ブレーキ40のブレーキ力は、調整可能となっている。なお、調整部材66は、鍔付きの円筒状以外の形状に形成されていても良い。
【0046】
先端側アーム部駆動機構31は、先端側アーム部駆動機構30とほぼ同様に構成されている。そのため、以下では、先端側アーム部駆動機構30との相違点を中心に、先端側アーム部駆動機構31の構成を説明する。先端側アーム部駆動機構31は、モータ35、エンコーダ38および電磁ブレーキ41に加えて、先端側アーム部駆動機構30と同様に、モータ35に連結される減速機44を備えている。先端側アーム部駆動機構31の減速機44は、関節部21に配置されている。先端側アーム部駆動機構31の減速機44のケース体は、先端部24に固定されている。
【0047】
また、先端側アーム部駆動機構31は、先端側アーム部駆動機構30と同様に、先端側アーム部駆動機構31の減速機44の入力軸46に固定されるプーリ48と、先端側アーム部11の基端側の内部に配置されるプーリ49と、先端側アーム部11の先端側の内部に配置されるプーリ50とを備えている。先端側アーム部駆動機構31の減速機44の回動軸45は、先端側アーム部11の基端側の下面部に固定されている。モータ35は、先端部24に固定されている。また、モータ35は、先端部24の内部に配置されている。モータ35の出力軸43には、プーリ53が固定されている。
【0048】
先端側アーム部11の基端側の内部には、プーリ49を回動可能に支持する支持軸55が固定されている。プーリ49は、固定部材56を介して先端部24に固定されている。先端側アーム部11の先端側の内部には、プーリ50を回動可能に支持する支持軸が形成されている。プーリ50は、軸受を介して支持軸に回動可能に支持されている。また、プーリ50の上端には、ハンド5の基端側が固定されている。電磁ブレーキ41は、電磁ブレーキ40と同様に構成されている。電磁ブレーキ41の回転部材60は、モータ35の出力軸43に固定されている。電磁ブレーキ41の固定板61は、先端部24に固定されている。
【0049】
共通アーム部駆動機構32は、モータ36、エンコーダ39および電磁ブレーキ42に加えて、モータ36に連結される減速機を備えている。この減速機、モータ36、エンコーダ39および電磁ブレーキ42は、ケース体16の内部に配置されている。減速機のケース体は、ケース体16に固定されている。減速機の出力軸となる回動軸は、中空状に形成される所定の回動軸を介して共通アーム部12の下面(具体的には、基端部22の下面)に固定されている。減速機の入力軸に固定されるプーリと、モータ36の出力軸43に固定されるプーリとには、ベルトが掛け渡されている。電磁ブレーキ42は、電磁ブレーキ40と同様に構成されている。電磁ブレーキ42の回転部材60は、モータ36の出力軸43に固定されている。電磁ブレーキ42の固定板61は、ケース体16に固定されている。
【0050】
上述のように、モータ34~36、エンコーダ37~39および電磁ブレーキ40~42は、制御部8に電気的に接続されている。制御部8は、モータ34~36のそれぞれを個別に駆動するモータ駆動回路と、エンコーダ37~39の検知結果に基づいて、モータ34~36のそれぞれの回転位置を個別に検知する位置検出回路を備えている。制御部8は、エンコーダ37~39の検知結果に基づいてモータ34~36を制御する。すなわち、制御部8は、エンコーダ37の検知結果に基づいてモータ34を制御し、エンコーダ38の検知結果に基づいてモータ35を制御し、エンコーダ39の検知結果に基づいてモータ36を制御する。
【0051】
また、制御部8は、電磁ブレーキ40~42のそれぞれを個別に駆動するブレーキ駆動回路を備えている。ブレーキ駆動回路には、電磁ブレーキ40~42のコイル68が電気的に接続されている。さらに、制御部8は、モータ34~36のそれぞれに個別にダイナミックブレーキを作動させるダイナミックブレーキ制御回路を備えている。
【0052】
制御部8は、アーム6の伸縮動作時に、2個のモータ34、35のうちのいずれか1個のモータ34、35と、モータ36とを駆動する。すなわち、制御部8は、アーム6の伸縮動作時に、モータ35を停止させた状態でモータ34とモータ36とを駆動するか、あるいは、モータ34を停止させた状態でモータ35とモータ36とを駆動する。また、アーム部駆動機構9は、ハンド4またはハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように水平方向にアーム6を伸縮させる。
【0053】
本形態では、電磁ブレーキ40~42のそれぞれのブレーキ力は、アーム6の伸縮動作中に駆動している複数のモータ34~36に対して取り付けられた複数の電磁ブレーキ40~42をアーム6の伸縮動作中に同時に作動させたときに駆動中の複数のモータ34~36が略同時に停止するように調整されている。すなわち、電磁ブレーキ40のブレーキ力および電磁ブレーキ42のブレーキ力は、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中に電磁ブレーキ40、42を同時に作動させたときにモータ34、36が略同時に停止するように調整されている。
【0054】
また、電磁ブレーキ41のブレーキ力および電磁ブレーキ42のブレーキ力は、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中に電磁ブレーキ41、42を同時に作動させたときにモータ35、36が略同時に停止するように調整されている。電磁ブレーキ40~42のブレーキ力は、ステータコア67への調整部材66の固定位置を調整して、圧縮コイルバネ64の付勢力を調整することで調整される。
【0055】
なお、本形態では、後述のように、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ34、36を非常停止させるときに、モータ34、36にダイナミックブレーキをかけるため、電磁ブレーキ40のブレーキ力および電磁ブレーキ42のブレーキ力は、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中に、モータ34、36にダイナミックブレーキを同時にかけるとともに電磁ブレーキ40、42を同時に作動させたときにモータ34、36が略同時に停止するように調整されている。
【0056】
同様に、本形態では、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ35、36を非常停止させるときに、モータ35、36にダイナミックブレーキをかけるため、電磁ブレーキ41のブレーキ力および電磁ブレーキ42のブレーキ力は、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中に、モータ35、36にダイナミックブレーキを同時にかけるとともに電磁ブレーキ41、42を同時に作動させたときにモータ35、36が略同時に停止するように調整されている。
【0057】
(産業用ロボットの制御方法)
アーム6の伸縮動作中に駆動している複数のモータ34~36のうちの少なくとも1個のモータ34~36においてエンコーダ37~39の検知結果に基づくモータ34~36の制御が不能となる場合をエンコーダエラーとすると、制御部8は、アーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生して駆動中の複数のモータ34~36を非常停止させるときに、駆動中の複数のモータ34~36に対して取り付けられた複数の電磁ブレーキ40~42を作動させる。
【0058】
すなわち、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中に、モータ34、36のうちの少なくとも1個のモータ34、36においてエンコーダ37、39の検知結果に基づくモータ34、36の制御が不能となるエンコーダエラーが発生して、モータ34、36を非常停止させるときに、制御部8は、電磁ブレーキ40、42を作動させる。すなわち、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ34、36を非常停止させるときに、制御部8は、電磁ブレーキ40、42のコイル68への電力の供給を停止する。
【0059】
また、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中に、モータ35、36のうちの少なくとも1個のモータ35、36においてエンコーダ38、39の検知結果に基づくモータ35、36の制御が不能となるエンコーダエラーが発生して、モータ35、36を非常停止させるときに、制御部8は、電磁ブレーキ41、42を作動させる。すなわち、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ35、36を非常停止させるときに、制御部8は、電磁ブレーキ41、42のコイル68への電力の供給を停止する。
【0060】
本形態では、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中においては、エンコーダエラーが発生してモータ34、36を非常停止させるときのみに、制御部8は、電磁ブレーキ40、42を作動させる。すなわち、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラー以外のエラーが発生して(すなわち、エンコーダ37、39の検知結果に基づくモータ34、36の制御が可能となっている状態でエラーが発生して)モータ34、36を非常停止させる場合には、制御部8は、電磁ブレーキ40、42を作動させない。この場合には、制御部8は、エンコーダ37、39の検知結果に基づいてモータ34、36を制御しながらモータ34、36にサーボブレーキをかけてモータ34、36を非常停止させる。
【0061】
同様に、本形態では、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中においては、エンコーダエラーが発生してモータ35、36を非常停止させるときのみに、制御部8は、電磁ブレーキ41、42を作動させる。すなわち、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラー以外のエラーが発生して(すなわち、エンコーダ38、39の検知結果に基づくモータ35、36の制御が可能となっている状態でエラーが発生して)モータ35、36を非常停止させる場合には、制御部8は、電磁ブレーキ41、42を作動させない。この場合には、制御部8は、エンコーダ38、39の検知結果に基づいてモータ35、36を制御しながらモータ35、36にサーボブレーキをかけてモータ35、36を非常停止させる。
【0062】
また、本形態では、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ34、36を非常停止させるときに、制御部8は、モータ34、36にダイナミックブレーキをかける。同様に、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ35、36を非常停止させるときに、制御部8は、モータ35、36にダイナミックブレーキをかける。
【0063】
なお、本形態では、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中に、電磁ブレーキ41のコイル68には電力が供給されておらず、電磁ブレーキ41は作動状態となっている。また、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中に、電磁ブレーキ40のコイル68には電力が供給されておらず、電磁ブレーキ40は作動状態となっている。
【0064】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、電磁ブレーキ40、42のブレーキ力は、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中に電磁ブレーキ40、42を同時に作動させたときにモータ34、36が略同時に停止するように調整されている。また、本形態では、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ34、36を非常停止させるときに、制御部8は、電磁ブレーキ40、42を作動させている。
【0065】
そのため、本形態では、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ34、36を非常停止させたときに、モータ34、36を略同時に停止させることが可能になる。したがって、本形態では、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ34、36を非常停止させたときの、ハンド4の停止位置の、設計上の軌跡からのずれ(具体的には、ハンド4の移動方向に直交する方向におけるずれ)を抑制することが可能になる。
【0066】
また、本形態では、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ34、36を非常停止させたときにモータ34、36が略同時に停止するようにモータ34、36が減速していくため、アーム6が停止するまでの間に移動するハンド4の軌跡の、設計上の軌跡(直線状の軌跡)からのずれを抑制することが可能になる。
【0067】
同様に、本形態では、電磁ブレーキ41、42のブレーキ力は、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中に電磁ブレーキ41、42を同時に作動させたときにモータ35、36が略同時に停止するように調整されており、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ35、36を非常停止させるときに、制御部8は、電磁ブレーキ41、42を作動させている。
【0068】
そのため、本形態では、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ35、36を非常停止させたときに、モータ35、36を略同時に停止させることが可能になり、その結果、エンコーダエラーが発生してモータ35、36を非常停止させたときの、ハンド5の停止位置の、設計上の軌跡からのずれを抑制することが可能になる。また、アーム6が停止するまでの間に移動するハンド5の軌跡の、設計上の軌跡からのずれを抑制することが可能になる。
【0069】
本形態では、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラー以外のエラーが発生してモータ34、36を非常停止させる場合に、制御部8は、電磁ブレーキ40、42を作動させずに、エンコーダ37、39の検知結果に基づいてモータ34、36を制御しながら非常停止させている。そのため、本形態では、エンコーダエラー以外のエラーが発生してモータ34、36を非常停止させる場合に、アーム6が停止するまでの間、ハンド4を設計上の軌跡に沿って移動させた後、ハンド4を停止させることが可能になる。
【0070】
同様に、本形態では、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラー以外のエラーが発生してモータ35、36を非常停止させる場合に、制御部8は、電磁ブレーキ41、42を作動させずに、エンコーダ38、39の検知結果に基づいてモータ35、36を制御しながら非常停止させているため、エンコーダエラー以外のエラーが発生してモータ35、36を非常停止させる場合に、アーム6が停止するまでの間、ハンド5を設計上の軌跡に沿って移動させた後、ハンド5を停止させることが可能になる。
【0071】
本形態では、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ34、36を非常停止させるときに、制御部8は、モータ34、36にダイナミックブレーキをかけている。そのため、本形態では、モータ34、36を短時間で非常停止させることが可能になる。同様に、本形態では、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ35、36を非常停止させるときに、制御部8は、モータ35、36にダイナミックブレーキをかけているため、モータ35、36を短時間で非常停止させることが可能になる。
【0072】
(産業用ロボットの変形例)
図6(A)は、本発明の他の実施の形態にかかるロボット1の平面図であり、図6(B)は、図6(A)に示すロボット1の側面図である。図7は、図6に示すロボット1の構成を説明するためのブロック図である。
【0073】
図6に示すように、ロボット1は、基板2が搭載される1個のハンド4と、ハンド4が先端側に回動可能に連結されるアーム6と、アーム6の基端側が回動可能に連結される本体部7とを備えていても良い。この場合には、アーム6は、ハンド4が先端側に回動可能に連結されるアーム部71と、アーム部71の基端側が先端側に回動可能に連結されるアーム部72とから構成されている。アーム部72の基端側は、本体部7に回動可能に連結されている。なお、図6図7では、上述した形態と同様の構成には、同一の符号を付している。
【0074】
また、この場合には、ロボット1は、たとえば、本体部7に対してアーム6を水平方向に伸縮させるアーム駆動機構9と、アーム6に対してハンド4を回動させるハンド駆動機構73とを備えている。アーム駆動機構9は、アーム部72に対してアーム部71を回動させる第1アーム部駆動機構75と、本体部7に対してアーム部72を回動させる第2アーム部駆動機構76とを備えている。
【0075】
第1アーム部駆動機構75は、モータ78と、モータ78の回転位置を検知するためのエンコーダ81と、モータ78を停止させるための電磁ブレーキ84とを備えている。エンコーダ81および電磁ブレーキ84は、モータ78に取り付けられている。第2アーム部駆動機構76は、モータ79と、モータ79の回転位置を検知するためのエンコーダ82と、モータ79を停止させるための電磁ブレーキ85とを備えている。エンコーダ82および電磁ブレーキ85は、モータ79に取り付けられている。
【0076】
ハンド駆動機構73は、モータ80と、モータ80の回転位置を検知するためのエンコーダ83と、モータ80を停止させるための電磁ブレーキ86とを備えている。エンコーダ83および電磁ブレーキ86は、モータ80に取り付けられている。この変形例では、モータ80は、アーム6に対してハンド4を回動させるためのハンド回動用モータである。また、エンコーダ83は、ハンド用エンコーダであり、電磁ブレーキ86は、ハンド用機械ブレーキである。
【0077】
モータ78~80、エンコーダ81~83および電磁ブレーキ84~86は、制御部8に電気的に接続されている。エンコーダ81~83は、エンコーダ37~39と同様に構成されるロータリーエンコーダである。電磁ブレーキ84~86は、電磁ブレーキ40~42と同様に構成される無励磁作動型の電磁ブレーキであり、電磁ブレーキ84~86のブレーキ力は、調整可能となっている。
【0078】
第1アーム部駆動機構75は、モータ78、エンコーダ81および電磁ブレーキ84に加えて、たとえば、モータ78に連結される減速機を備えている。この減速機の出力軸となる回動軸は、アーム部71の基端側の下面に固定されている。また、この減速機の入力軸に固定されるプーリと、モータ78の出力軸に固定されるプーリとには、ベルトが掛け渡されている。電磁ブレーキ84の回転部材60は、モータ78の出力軸に固定されている。電磁ブレーキ84の固定板61は、たとえば、アーム部72に固定されている。
【0079】
第2アーム部駆動機構76は、モータ79、エンコーダ82および電磁ブレーキ85に加えて、たとえば、モータ79に連結される減速機を備えている。この減速機の出力軸となる回動軸は、アーム部72の基端側の下面に固定されている。また、この減速機の入力軸に固定されるプーリと、モータ79の出力軸に固定されるプーリとには、ベルトが掛け渡されている。電磁ブレーキ85の回転部材60は、モータ79の出力軸に固定されている。電磁ブレーキ85の固定板61は、ケース体16に固定されている。
【0080】
ハンド駆動機構73は、モータ80、エンコーダ83および電磁ブレーキ86に加えて、たとえば、モータ80に連結される減速機を備えている。この減速機の出力軸となる回動軸は、ハンド4の下面に固定されている。また、この減速機の入力軸に固定されるプーリと、モータ80の出力軸に固定されるプーリとには、ベルトが掛け渡されている。電磁ブレーキ86の回転部材60は、モータ80の出力軸に固定されている。電磁ブレーキ86の固定板61は、たとえば、アーム部71に固定されている。
【0081】
上述した形態と同様に、制御部8は、エンコーダ81~83の検知結果に基づいてモータ78~80を制御する。また、制御部8は、アーム6の伸縮動作時に、モータ78~80を駆動する。また、アーム部駆動機構9およびハンド駆動機構73は、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように水平方向にアーム6を伸縮させる。この変形例では、電磁ブレーキ84~86のそれぞれのブレーキ力は、アーム6の伸縮動作中に電磁ブレーキ84~86を同時に作動させたときにモータ78~80が略同時に停止するように調整されている。
【0082】
なお、この変形例においても、後述のように、アーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ78~80を非常停止させるときに、モータ78~80にダイナミックブレーキをかけるため、電磁ブレーキ84~86のブレーキ力は、アーム6の伸縮動作中に、モータ78~80にダイナミックブレーキを同時にかけるとともに電磁ブレーキ84~86を同時に作動させたときにモータ78~80が略同時に停止するように調整されている。
【0083】
アーム6の伸縮動作中にモータ78、79のうちの少なくとも1個のモータ78、79においてエンコーダ81、82の検知結果に基づくモータ78、79の制御が不能となる場合をエンコーダエラーとし、アーム6の伸縮動作中にエンコーダ83の検知結果に基づくモータ80の制御が不能となる場合を第2エンコーダエラーとすると、この変形例では、制御部8は、アーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーまたは第2エンコーダエラーが発生してモータ78~80を非常停止させるときに、電磁ブレーキ84~86を作動させる。
【0084】
また、この変形例では、アーム6の伸縮動作中においては、エンコーダエラーまたは第2エンコーダエラーが発生してモータ78~80を非常停止させるときのみに、制御部8は、電磁ブレーキ84~86を作動させる。すなわち、アーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーおよび第2エンコーダエラー以外のエラーが発生してモータ78~80を非常停止させる場合には、制御部8は、電磁ブレーキ84~86を作動させずに、エンコーダ81~83の検知結果に基づいてモータ78~80を制御しながら非常停止させる。また、この変形例では、アーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーまたは第2エンコーダエラーが発生してモータ78~80を非常停止させるときに、制御部8は、モータ78~80にダイナミックブレーキをかける。
【0085】
この変形例では、アーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーまたは第2エンコーダエラーが発生してモータ78~80を非常停止させたときに、モータ78~80を略同時に停止させることが可能になる。したがって、アーム6の伸縮動作時にエンコーダエラーまたは第2エンコーダエラーが発生してモータ78~80を非常停止させたときの、ハンド4の停止位置の、設計上の軌跡からのずれを抑制することが可能になるとともに、ハンド4の向きの、設計上の向きからのずれを抑制することが可能になる。
【0086】
また、この変形例では、アーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーまたは第2エンコーダエラーが発生してモータ78~80を非常停止させたときにモータ78~80が略同時に停止するようにモータ78~80のそれぞれが減速していくため、アーム6が停止するまでの間に移動するハンド4の軌跡の、設計上の軌跡からのずれを抑制することが可能になるとともに、アーム6が停止するまでの間に移動するハンド4の向きの、設計上の向きからのずれを抑制することが可能になる。
【0087】
また、この変形例では、アーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーおよび第2エンコーダエラー以外のエラーが発生してモータ78~80を非常停止させる場合に、制御部8は、電磁ブレーキ84~86を作動させずに、エンコーダ81~83の検知結果に基づいてモータ78~80を制御しながら非常停止させているため、エンコーダエラーおよび第2エンコーダエラー以外のエラーが発生してモータ78~80を非常停止させる場合に、アーム6が停止するまでの間、ハンド4の向きを設計上の向きに向けた状態でハンド4を設計上の軌跡に沿って移動させた後、ハンド4を停止させることが可能になる。
【0088】
なお、図6に示すロボット1において、ロボット1は、ハンド駆動機構73を備えていなくても良い。この場合には、第1アーム部駆動機構75が、アーム部72に対してアーム部71を回動させるとともにアーム部71に対してハンド4を回動させる。また、図6に示すロボット1において、ロボット1は、2個のハンド4と、2個のハンド4のそれぞれが先端側に回動可能に連結される2個のアーム6とを備えていても良い。すなわち、図6に示すロボット1において、ロボット1は、ダブルアーム型のロボットであっても良い。また、図6に示すロボット1において、アーム6は、互いに相対回動可能に連結される3個以上のアーム部によって構成されていても良い。この場合であっても、ロボット1は、アーム6を伸縮させるための複数のモータを備えている。
【0089】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0090】
上述した形態において、アーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ34、36を非常停止させるときに、制御部8は、モータ34、36にダイナミックブレーキをかけなくても良い。この場合には、電磁ブレーキ40、42のブレーキ力は、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中に、モータ34、36にダイナミックブレーキをかけずに電磁ブレーキ40、42を同時に作動させたときにモータ34、36が略同時に停止するように調整される。
【0091】
同様に、上述した形態において、アーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーが発生してモータ35、36を非常停止させるときに、制御部8は、モータ35、36にダイナミックブレーキをかけなくても良い。この場合には、電磁ブレーキ41、42のブレーキ力は、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中に、モータ35、36にダイナミックブレーキをかけずに電磁ブレーキ41、42を同時に作動させたときにモータ35、36が略同時に停止するように調整される。
【0092】
また、上述した変形例において、アーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーまたは第2エンコーダエラーが発生してモータ78~80を非常停止させるときに、制御部8は、モータ78~80にダイナミックブレーキをかけなくても良い。この場合には、電磁ブレーキ84~86のブレーキ力は、アーム6の伸縮動作中に、モータ78~80にダイナミックブレーキをかけることなく電磁ブレーキ84~86を同時に作動させたときにモータ78~80が略同時に停止するように調整される。
【0093】
上述した形態において、ハンド4が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラー以外のエラーが発生してモータ34、36を非常停止させる場合に、制御部8は、電磁ブレーキ40、42を作動させても良い。また、上述した形態において、ハンド5が一定方向を向いた状態で直線的に移動するように伸縮するアーム6の伸縮動作中にエンコーダエラー以外のエラーが発生してモータ35、36を非常停止させる場合に、制御部8は、電磁ブレーキ41、42を作動させても良い。さらに、上述した変形例において、アーム6の伸縮動作中にエンコーダエラーおよび第2エンコーダエラー以外のエラーが発生してモータ78~80を非常停止させる場合に、制御部8は、電磁ブレーキ84~86を作動させても良い。
【0094】
上述した形態において、ハンド4と共通アーム部12との間に、互いに相対回動可能に連結される2個以上の先端側アーム部が配置されていても良い。また、上述した形態において、ハンド5と共通アーム部12との間に、互いに相対回動可能に連結される2個以上の先端側アーム部が配置されていても良い。さらに、上述した形態において、共通アーム部12は、直線状に形成されていても良い。また、上述した形態において、ロボット1は、液晶ディスプレイ用のガラス基板2以外の搬送対象物を搬送しても良い。たとえば、ロボット1は、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ用のガラス基板を搬送しても良いし、半導体ウエハを搬送しても良い。
【符号の説明】
【0095】
1 ロボット(産業用ロボット)
4、5 ハンド
6 アーム
7 本体部
8 制御部
9 アーム駆動機構
10、11 先端側アーム部(アーム部)
12 共通アーム部(アーム部)
34、35 モータ(第2モータ)
36 モータ(第1モータ)
37~39、81、82 エンコーダ
40~42、84、85 電磁ブレーキ(機械ブレーキ)
71、72 アーム部
78、79 モータ
80 モータ(ハンド回動用モータ)
83 エンコーダ(ハンド用エンコーダ)
86 電磁ブレーキ(ハンド用機械ブレーキ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7