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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】抜止めテープ
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/52 20060101AFI20230629BHJP
   D04B 21/00 20060101ALI20230629BHJP
   E06B 9/54 20060101ALN20230629BHJP
   E06B 9/58 20060101ALN20230629BHJP
【FI】
E06B9/52 E
D04B21/00 A
E06B9/54
E06B9/58 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019143832
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021025301
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】池口 祥人
(72)【発明者】
【氏名】明和 正樹
(72)【発明者】
【氏名】岩村 隼人
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-131097(JP,U)
【文献】特開昭63-147404(JP,A)
【文献】特開平08-299034(JP,A)
【文献】特開2010-077796(JP,A)
【文献】特開2012-057344(JP,A)
【文献】特開2010-270487(JP,A)
【文献】実開昭62-135799(JP,U)
【文献】特開昭57-075605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00-9/92
D04B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠材(17)に取り付けられる被取付材(20)を抜け止めする抜止めテープ(10)であって、
前記被取付材(20)の縁部(20A)に挟着可能な第一テープ部(30A)および第二テープ部(30B)と、
前記第一テープ部(30A)の長手方向に沿って設けられた第一線状重ね部(40A)と、
前記第二テープ部(30B)の長手方向に沿って設けられた第二線状重ね部(40B)と、
前記第一線状重ね部(40A)および前記第二線状重ね部(40B)の間に設けられた折返し部(50)とを有し、
前記第一線状重ね部(40A)および前記第二線状重ね部(40B)は、前記折返し部(50)の折返し状態で互いに重なって抜止め部(40)を構成する線材(60,70)を有する
ことを特徴とする抜止めテープ。
【請求項2】
前記線材(60,70)はモノフィラメント糸によって形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の抜止めテープ。
【請求項3】
前記線材(60,70)の径寸法は均一であり、
前記抜止め部(40)には、前記抜止めテープ(10)の長手方向およびこの長手方向に直交する幅方向に沿ったフラットな仮想外面(65)が前記線材(60,70)によって構成される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の抜止めテープ。
【請求項4】
前記第一テープ部(30A)および前記第二テープ部(30B)は、編糸が編み込まれた編組織によって構成され、
前記第一線状重ね部(40A)および前記第二線状重ね部(40B)は、前記編糸よりも径寸法が大きい編糸が編み込まれた編組織によって構成される
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の抜止めテープ。
【請求項5】
前記第一テープ部(30A)および前記第二テープ部(30B)は、複数種類の編糸が編み込まれた編組織によって構成され、
前記第一線状重ね部(40A)および前記第二線状重ね部(40B)は、前記第一テープ部(30A)および前記第二テープ部(30B)を構成する前記編糸の種類よりも多い種類の編糸が編み込まれた編組織によって構成される
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の抜止めテープ。
【請求項6】
前記線材(60)は、前記抜止めテープ(10)の長手方向に直交する幅方向に延びた複数の重ね線部(61)と、前記複数の重ね線部(61)を連続させた複数の連続線部(62,63)とをそれぞれ有し、
前記第一線状重ね部(40A)における前記重ね線部(61)と前記第二線状重ね部(40B)における前記重ね線部(61)とは、前記折返し状態において互いに重なって配置可能になるよう幅方向に対向する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の抜止めテープ。
【請求項7】
前記複数の連続線部(62,63)には、前記抜止めテープ(10)の長手方向において前記複数の重ね線部(61)のうち互いに隣り合う重ね線部(61)の一方の端部同士を連続させる一方の連続線部(62)と、前記抜止めテープ(10)の長手方向において
前記複数の重ね線部(61)のうち互いに隣り合う重ね線部(61)の他方の端部同士を連続させる他方の連続線部(63)とがあり、
前記一方の連続線部(62)および前記他方の連続線部(63)は、前記抜止めテープ(10)の長手方向に沿って交互に配置される
ことを特徴とする請求項6に記載の抜止めテープ。
【請求項8】
前記第一線状重ね部(40A)における前記一方の連続線部(62)と前記第二線状重ね部(40B)における前記一方の連続線部(62)とは、前記折返し部(50)側にそれぞれ配置されていると共に、前記抜止めテープ(10)の長手方向において異なる位置に配置される
ことを特徴とする請求項7に記載の抜止めテープ。
【請求項9】
前記線材(70)は、前記抜止めテープ(10)の長手方向に間隔を隔てて複数並設され、
前記複数の線材(70)は、前記抜止めテープ(10)の長手方向に直交する幅方向に延びた一対の重ね線部(61)と、前記一対の重ね線部(61)を連続させた連続線部(62,63)とをそれぞれ有し、
前記第一線状重ね部(40A)における前記重ね線部(61)と前記第二線状重ね部(40B)における前記重ね線部(61)とは、前記折返し状態において互いに重なって配置可能となるよう幅方向に対向する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の抜止めテープ。
【請求項10】
前記連続線部(63)は、前記折返し部(50)とは反対側における前記一対の重ね線部(61)の端部を連続させる
ことを特徴とする請求項9に記載の抜止めテープ。
【請求項11】
前記第一線状重ね部(40A)における前記連続線部(62)と前記第二線状重ね部(40B)における前記連続線部(62)とは、前記抜止めテープ(10)の長手方向において異なる位置に配置される
ことを特徴とする請求項10に記載の抜止めテープ。
【請求項12】
前記折返し部(50)の長手方向に直交する幅方向における幅寸法(W3)は、前記第一線状重ね部(40A)および前記第二線状重ね部(40B)の前記幅方向における幅寸法(W1)よりも小さい
ことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の抜止めテープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の被取付材の抜止めに用いられる抜止めテープ、例えば、ロール網戸の繰出しおよび巻取り可能な網材の枠材からの抜止めに用いられる抜止めテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、巻取軸に対して防虫ネット(被取付材)を繰出しおよび巻取自在に構成された巻取式の防虫網戸が知られている(特許文献1参照)。
この防虫網戸は、前記巻取軸を内蔵した巻取りボックスと、巻取ボックスの両端部から延びた一対のスクリーンガイド(枠材)と、防虫ネットの左右の側縁部に取り付けられた係合用小突起(抜止め部)とを備えており、係合用小突起は、スクリーンガイドに沿って移動可能であるとともに、スクリーンガイドに設けられたスリットの内縁に抜止状態に係合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-80535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の防虫網戸では、係合用小突起はコイル状に形成されたコイルエレメントによって構成されている。この係合用小突起は丸みを帯びた形状となるので、防虫ネットの面外方向に沿った係合用小突起の寸法(厚さ寸法)を小さくするには製造上の限界がある。このため、係合用小突起を内部に収めるスクリーンガイドの寸法を小さくすることが困難である。
【0005】
本発明は、抜止め部の厚さ寸法を小さくできて枠材の小型化を図り得る抜止めテープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の抜止めテープは、枠材に取り付けられる被取付材を抜け止めする抜止めテープであって、前記被取付材の縁部に挟着可能な第一テープ部および第二テープ部と、前記第一テープ部の長手方向に沿って設けられた第一線状重ね部と、前記第二テープ部の長手方向に沿って設けられた第二線状重ね部と、前記第一線状重ね部および前記第二線状重ね部の間に設けられた折返し部とを有し、前記第一線状重ね部および前記第二線状重ね部は、前記折返し部の折返し状態で互いに重なって抜止め部を構成する線材を有することを特徴とする。
本発明の抜止めテープによれば、折返し部を折り返して第一、第二線状重ね部の線材を重ねて配置するので、線材をスクリーンの両面にコイル状に巻き回して配置する必要がない。このため、例えばテープ部に固定されたコイル状に連続したコイルエレメントによって抜止め部を構成する場合と比べて、抜止めとして機能する範囲内で厚さ寸法(抜止めテープの長手方向および幅方向に直交する厚さ方向における寸法)を小さくでき、このような抜止め部が係合する枠材の見込み寸法を小さくできる。
また、第一、第二線状重ね部の間に折返し部を設けているので、折返し部を折り返すことによって第一、第二線状重ね部同士を容易に位置合わせできる。
このように構成された抜止めテープは、各種の被取付材の抜止めとして利用できる。
【0007】
本発明の抜止めテープでは、前記線材はモノフィラメント糸によって形成されていてもよい。
このような構成によれば、モノフィラメント糸を採用することで剛性および成形性の双方を兼ね備えた線材を形成できる。例えば金属ワイヤーでは、剛性はあるが成形性が低く、径寸法を大きくすれば固くなり過ぎてしまって曲げ性が低下する。また例えば、マルチフィラメント糸では、成形性はあるが剛性が低く、これを用いて抜止め部を構成しても、マルチフィラメント糸が潰れて抜止めテープが抜けてしまうおそれがある。これらに対して、本発明のようにモノフィラメント糸によって線材を形成することで、成形しやすく、抜止め部を構成しても潰れ難いので抜止めテープが抜けてしまうおそれを低減でき、また、径寸法を大きくしても金属ワイヤーほど固くなることはなく適度な曲げ性を維持できる。
【0008】
本発明の抜止めテープでは、前記線材の径寸法は均一であり、前記抜止め部には、前記抜止めテープの長手方向およびこの長手方向に直交する幅方向に沿ったフラットな仮想外面が前記線材によって構成されていてもよい。
このような構成によれば、被取付材が巻回されるものである場合、巻回状態では前述したフラットな仮想外面を構成する線材同士が重ね合わされるので、例えば丸みのあるコイルエレメントを抜止め部として採用した場合と比べて、抜止めテープの長手方向に直交する方向の巻きズレの発生を抑制できる。
【0009】
本発明の抜止めテープでは、前記第一テープ部および前記第二テープ部は、編糸が編み込まれた編組織によって構成され、前記第一線状重ね部および前記第二線状重ね部は、前記編糸よりも径寸法が大きい編糸が編み込まれた編組織によって構成されていてもよい。
このような構成によれば、第一テープ部および第二テープ部の編組織に対して、第一線状重ね部および第二線状重ね部の編組織の厚さ寸法を大きくできて、抜止め部を大きく構成できる。
【0010】
本発明の抜止めテープでは、前記第一テープ部および前記第二テープ部は、複数種類の編糸が編み込まれた編組織によって構成され、前記第一線状重ね部および前記第二線状重ね部は、前記第一テープ部および前記第二テープ部を構成する前記編糸の種類よりも多い種類の編糸が編み込まれた編組織によって構成されていてもよい。
このような構成によれば、第一テープ部および第二テープ部の編組織に対して、第一線状重ね部および第二線状重ね部の編組織の厚さ寸法を大きくできて、抜止め部を大きく構成できる。
【0011】
本発明の抜止めテープでは、前記線材は、前記抜止めテープの長手方向に直交する幅方向に延びた複数の重ね線部と、前記複数の重ね線部を連続させた複数の連続線部とをそれぞれ有し、前記第一線状重ね部における前記重ね線部と前記第二線状重ね部における前記重ね線部とは、互いに重なって配置可能に幅方向に対向していてもよい。
このような構成によれば、折返し部を折り返し、幅方向に対向する重ね線部同士を重ねて配置することで抜止め部を構成できる。また、例えば抜止めテープの長手方向に沿って間隔を隔てて複数並設された線材を有する第一、第二線状重ね部と比べて、線材を容易に設置できると共に、抜止めテープの長手方向における重ね線部同士の間隔を保つ間隔保持性を向上できる。
また、連続した線材を用いるので、複数の線材を配置する場合と比べて、製造容易であり、且つ、第一線状重ね部および第二線状重ね部から外れにくい構成にできる。
【0012】
本発明の抜止めテープでは、前記複数の連続線部には、前記抜止めテープの長手方向において前記複数の重ね線部のうち互いに隣り合う重ね線部の一方の端部同士を連続させる一方の連続線部と、前記抜止めテープの長手方向において前記複数の重ね線部のうち互いに隣り合う重ね線部の他方の端部同士を連続させる他方の連続線部とがあり、前記一方の連続線部および前記他方の連続線部は、前記抜止めテープの長手方向に沿って交互に配置されていてもよい。
このような構成によれば、抜止めテープの長手方向に沿って直線状に長く連続する直線部のない蛇行形状の線材を形成でき、前述したように長く連続する直線部を有する線材と比べて、抜止めテープを曲げ易く構成できる。
【0013】
本発明の抜止めテープでは、前記第一線状重ね部における前記一方の連続線部と前記第二線状重ね部における前記一方の連続線部とは、前記折返し部側にそれぞれ配置されていると共に、前記抜止めテープの長手方向において異なる位置に配置されていてもよい。
このような構成によれば、第一線状重ね部における一方の連続線部と第二線状重ね部における一方の連続線部とが抜止めテープの長手方向において異なる位置に配置されているので、これら連続線部同士が干渉することを抑制できる。このため、例えば第一線状重ね部における一方の連続線部と第二線状重ね部における一方の連続線部とが幅方向に対向する位置にある場合と比べて、折返し部の幅寸法をより小さくでき、抜止めテープを固定する被取付材の厚さ寸法に幅広く対応可能な寸法設定にできる。
【0014】
本発明の抜止めテープでは、前記線材は、前記抜止めテープの長手方向に間隔を隔てて複数並設され、前記複数の線材は、前記抜止めテープの長手方向に直交する幅方向に延びた一対の重ね線部と、前記一対の重ね線部を連続させた連続線部とをそれぞれ有し、前記第一線状重ね部における前記重ね線部と前記第二線状重ね部における前記重ね線部とは、互いに重なって配置可能に前記幅方向に対向していてもよい。
このような構成によれば、折返し部を折り返し、幅方向に対向する重ね線部同士を重ねて配置することで抜止め部を構成できる。また、例えば抜止めテープの長手方向に沿って連続した線材を有する第一、第二線状重ね部と比べて、複数の線材同士が連続していない分、抜止めテープを曲げ易く構成できる。このため、例えば線材の径寸法を大きくして抜止め部を大きく形成しても、抜止めテープの曲げ性を維持可能な構成にできる。
【0015】
本発明の抜止めテープでは、前記連続線部は、前記折返し部とは反対側における前記一対の重ね線部の端部を連続させていてもよい。
このような構成によれば、折返し部側の連続線部がないので、複数の線材を折返し部側に突出しない位置に固定でき、その分、第一線状重ね部および第二線状重ね部の幅寸法を小さくできる。これにより、抜止めテープ全体の小型化を図り得る。
【0016】
本発明の抜止めテープでは、前記第一線状重ね部における前記連続線部と前記第二線状重ね部における前記連続線部とは、前記抜止めテープの長手方向において異なる位置に配置されていてもよい。
このような構成によれば、第一線状重ね部における連続線部と第二線状重ね部における連続線部とが抜止めテープの長手方向において異なる位置に配置されているので、これら連続線部同士が干渉することを抑制できる。このため、例えば第一線状重ね部における連続線部と第二線状重ね部における連続線部とが幅方向に対向する位置にある場合と比べて、折返し部の幅寸法をより小さくでき、抜止めテープを固定する被取付材の厚さ寸法に幅広く対応可能な寸法設定にできる。
【0017】
本発明の抜止めテープでは、前記折返し部の長手方向に直交する幅方向における幅寸法は、前記第一線状重ね部および前記第二線状重ね部の前記幅方向における幅寸法よりも小さくてもよい。
このような構成によれば、折返し部を折り返すことで第一、第二線状重ね部同士が重ねて配置されることとなるので、これらを容易に位置合わせできる。また、折返し状態で第一、第二線状重ね部が重ねて配置されても、折返し部が第一、第二線状重ね部から突出する寸法を小さくでき、これにより、抜止めテープの折返し状態における幅寸法を小さくできて、枠材の見付け寸法を小さくできる。更に、このように枠材の見付け寸法を小さくした場合であっても、折返し部と当該枠材との間にクリアランスを設けることができて、抜止めテープと枠材との干渉を抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、抜止め部の厚さ寸法を小さくできて枠材の小型化を図り得る抜止めテープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る抜止めテープの使用状態を示す断面図。
図2】前記実施形態に係る抜止めテープを示す表面図。
図3】前記実施形態に係る抜止めテープを示す説明図。
図4】前記実施形態に係る抜止めテープの変形例を示す表面図。
図5】前記実施形態に係る抜止めテープの他の変形例を示す表面図。
図6】前記実施形態に係る抜止めテープを用いたロール網戸を示す横断面図。
図7図6に示すVII-VII線に沿った断面図。
図8図6に示すロール網戸のネットおよびガイドレールを示す斜視図。
図9図6に示すロール網戸の巻取状態における要部を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から図3において、本実施形態に係る抜止めテープ10は、図1に示す被取付材としてのネット20(網材)に固定され、枠材としてのガイドレール17にスライド移動可能に配設されることで、ネット20を抜け止めするものである。本実施形態では、ネット20は抜止めテープ10によってガイドレール17にスライド移動可能に取り付けられている。
以下の説明において、抜止めテープ10の長手方向をX軸方向とし、抜止めテープ10の幅方向をY軸方向とし、抜止めテープ10の厚さ方向をZ軸方向とする。X,Y,Z軸方向は互いに直交する。
【0021】
抜止めテープ10は、図2に示すように、ネット20のX軸方向に沿った側縁部20A(縁部)に沿って挟着可能な第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bと、第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bの長手方向(X軸方向)に沿ってそれぞれ設けられた第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bと、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bの間に設けられた折返し部50とを有している。第一テープ部30Aおよび第一線状重ね部40Aと第二テープ部30Bおよび第二線状重ね部40BはY軸方向において互いに対向して配置されており、折返し部50は、抜止めテープ10のY軸方向における中央位置に配置されている。
【0022】
第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bは、図3(A)および図3(B)に示すように、X軸方向に蛇行形状に延びた複数列の経挿入糸31と、複数列の経挿入糸31を連結してX軸方向に鎖状に延びた複数列の鎖編糸32と、第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bに伸縮性を持たせるトリコット編糸33とが編み込まれた編組織によってそれぞれ構成されている。第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bは、ネット20の側縁部20Aを挟んだ状態で当該側縁部20Aに縫製接合されることでテープ部30を構成している。
【0023】
第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bは、図3(A)および図3(B)に示すように、X軸方向に蛇行形状に延びた複数列の経挿入糸41と、経挿入糸41とは逆向きの蛇行形状でX軸方向に延びた複数列の逆経挿入糸42と、複数列の経挿入糸41および複数列の逆経挿入糸42を連結してX軸方向に鎖状に延びた複数列の鎖編糸43とが編み込まれた編組織によってそれぞれ構成されている。この第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bの表面側には、樹脂製(本実施形態ではポリエチレンテレフタラート(PET))のモノフィラメント糸によって形成された断面円形状の線材60が複数列の鎖編糸43によって編み込まれている。線材60の径寸法はその線方向に沿って均一に形成されている。
第一線状重ね部40Aの複数列の鎖編糸43のうち第一テープ部30A側に位置する鎖編糸43は、第一テープ部30Aの複数列の経挿入糸31のうち第一線状重ね部40A側に位置する経挿入糸31と連結されており、これにより、第一線状重ね部40Aは第一テープ部30Aと連続している。第二線状重ね部40Bの複数列の鎖編糸43のうち第二テープ部30B側に位置する鎖編糸43は、第二テープ部30Bの複数の経挿入糸31のうち第二線状重ね部40B側に位置する経挿入糸31に連結されており、これにより、第二線状重ね部40Bは第二テープ部30Bに連続している。
【0024】
線材60は、図3(A)および図3(B)に示すように、Y軸方向に直線状に延びた複数の重ね線部61と、複数の重ね線部61を連続させたX軸方向に延びた複数の連続線部62,63とをそれぞれ有している。
第一線状重ね部40Aにおいては、連続線部62(一方の連続線部)は、複数の重ね線部61の折返し部50側における一方の端部同士を連続させており、連続線部63(他方の連続線部)は、複数の重ね線部61の第一テープ部30A側における他方の端部同士を連続させている。連続線部62と連続線部63とはX軸方向に沿って交互に配置されており、これにより、線材60の全体は蛇行形状となってX軸方向に延びている。連続線部62および互いに隣り合う二つの重ね線部61によってU字形部が構成されており、連続線部63および互いに隣り合う二つの重ね線部61によって逆U字形部が構成されている。なお、重ね線部61と連続線部62,63との連続部分は湾曲形状とされている。
第二線状重ね部40Bは、第一線状重ね部40Aと概略同様に構成されており、複数の重ね線部61の折返し部50側における一方の端部同士が連続線部62によって連続されており、複数の重ね線部61の第二テープ部30B側における他方の端部同士が連続線部63によって連続されており、連続線部62と連続線部63とはX軸方向に沿って交互に配置されることで、線材60の全体は蛇行形状となってX軸方向に延びている。
第一線状重ね部40Aにおける重ね線部61と第二線状重ね部40Bにおける重ね線部61とは、折返し部50の折返し状態で互いに重なって配置可能にY軸方向に対向して配置されている。
第一線状重ね部40Aにおける連続線部62と第二線状重ね部40Bにおける連続線部62とは、X軸方向において異なる位置であって、第一線状重ね部40Aにおける連続線部62は、第二線状重ね部40Bにおける二つの連続線部62間の位置に配置されている。このため、第一線状重ね部40Aにおける連続線部62と第二線状重ね部40Bにおける連続線部63とがY軸方向に対向して配置され、且つ、第一線状重ね部40Aにおける連続線部63と第二線状重ね部40Bにおける連続線部62とがY軸方向に対向して配置されている。
【0025】
第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bは、折返し部50の折返し状態でこれらの線材60同士が互いに重なって配置される。本実施形態では、折返し部50が織り返されることで重なり配置された第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bと、これらの間に挟み込まれたネット20とによって抜止め部40が構成されている。
抜止め部40の両面側には蛇行形状の線材60が露出している。各線材60はX軸方向およびY軸方向に規定される仮想面に沿っている。このため、各線材60によってX軸方向およびY軸方向に沿ったフラットな仮想外面65が構成される。
【0026】
折返し部50は、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bにおける複数列の鎖編糸43のうち折返し部50側に位置する各鎖編糸43に連結された一本の経挿入糸51を有して構成されている。経挿入糸51は、経挿入糸31,41と同様にX軸方向に蛇行形状に延びている。ここで、第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bは三種類の編糸を複数編み込んで構成され、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bは三種類の編糸を複数編み込んで構成され且つ線材60を取り付けているのに対して、折返し部50は一種類であって一本の経挿入糸51によって構成されているので、第一テープ部30Aおよび第二テープ部30B並びに第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bよりも厚さ寸法が小さくて折返し易くなっている。
【0027】
なお、第一テープ部30Aおよび第二テープ部30B、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40B並びに折返し部50は、前述したように編み込まれているが、抜止めテープ10に求められる製品特性に応じて使用する編糸及び種類数、編み方等を適宜変更して編み込まれていてもよい。例えば、第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bは逆経挿入糸を用いずに三種類の編糸を編み込んで構成されているが、逆経挿入糸を用いて四種類の編糸を編み込んで構成されていてもよい。また、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bはトリコット編糸33を用いずに三種類の編糸を編み込んで構成されているが、トリコット編糸33を用いて四種類の編糸を編み込んで構成されていてもよい。
ここで、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bが、第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bの編糸(例えば鎖編糸32)よりも径寸法が大きい編糸(例えば鎖編糸43など)を編み込んで構成されることで、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bの編組織の厚さ寸法を第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bの編組織の厚さ寸法よりも大きい寸法にできる。また、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bを構成する編糸の種類を、第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bを構成する編糸の種類よりも多くすることで、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bの編組織の厚さ寸法を第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bの編組織の厚さ寸法よりも大きい寸法にできる。このようにすることで、ネット20が引き抜かれようとした際におけるガイドレール17と抜止め部40との係合代を更に大きくできて抜止め性を向上できる。
【0028】
抜止めテープ10の各寸法関係は次の通りである。
第一線状重ね部40AのZ軸方向における厚さ寸法は第一テープ部30AのZ軸方向における厚さ寸法よりも大きい寸法とされており、第二線状重ね部40Bおよび第二テープ部30BのZ軸方向における各厚さ寸法は第一線状重ね部40Aおよび第一テープ部30Aの各厚さ寸法と等しい寸法とされている。抜止め部40のZ軸方向における厚さ寸法T1は第一線状重ね部40A、第二線状重ね部40Bおよびこれらの間に位置するネット20を合わせたZ軸方向における厚さ寸法である。この抜止め部40の厚さ寸法T1は、第一テープ部30A、第二テープ部30Bおよびネット20を合わせたテープ部30のZ軸方向における厚さ寸法T2よりも大きい寸法とされている。
第一線状重ね部40AのY軸方向における幅寸法W1は第一テープ部30AのY軸方向における幅寸法W2と同じ寸法とされており、第二線状重ね部40Bおよび第二テープ部30BのY軸方向における各幅寸法W1,W2は第一線状重ね部40Aおよび第一テープ部30AのY軸方向における各幅寸法W1,W2と等しい寸法である。抜止め部40のY軸方向における幅寸法W1は、テープ部30のY軸方向における幅寸法W2と同じ寸法とされている。
折返し部50のY軸方向における幅寸法W3は、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bの幅寸法W1よりも小さい。
【0029】
以下、抜止めテープ10の各構成の寸法設定の一例を説明するが、これに限らず、ネット20などの被取付材の厚さ寸法やガイドレール17などの枠材の各寸法に応じて適宜設定される。なお、ここではネット20の厚さ寸法は0.15mmとする。
各線材60の径寸法(線径)は0.3mmであり、線材60に構成されたU字形部同士のピッチおよび逆U字形部同士のピッチは0.9mm(線材60の径寸法の3倍程度)である。第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bの厚さ寸法は0.3mmであり、線材60を有する第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bは0.6mmである。第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bの幅寸法W1、すなわち、抜止め部40の幅寸法W1は2mmであり、第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bの幅寸法W2、すなわちテープ部30の幅寸法W2は2mmであり、このため、折返し状態の抜止めテープ10の幅寸法Wは4mmである。抜止め部40の厚さ寸法T1は1.35mm(第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bの各厚さ寸法とネット20の厚さ寸法との合計)であり、テープ部30の厚さ寸法T2は0.75mm(第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bの各厚さ寸法とネット20の厚さ寸法との合計)である。厚さ寸法T1,T2の寸法差は0.6mmである。折返し部50の幅寸法W3は1mm(好ましくは1mm以下)である。
なお、線材60の径寸法は製造上可能であれば0.3mm以下の寸法であってもよく、線材60のU字形部同士、逆U字形部同士のピッチは0.9mm以下の寸法(線材60の径寸法の3倍以下の寸法)であってもよく、抜止め部40の厚さ寸法T1は1.35mm以下の寸法であってもよく、テープ部30の厚さ寸法T2は0.75mm以下の寸法であってもよい。
また、ガイドレール17の各寸法は後述するロール網戸1におけるガイドレール17の各寸法と同様なので、ここでの説明を省略する。
【0030】
[抜止めテープの使用例]
以上の抜止めテープ10の使用例としては、図6から図9に示すロール網戸1が挙げられる。以下、ロール網戸1について説明する。なお、ロール網戸1の左右方向はX軸方向に沿っており、ロール網戸1の上下方向はY軸方向に沿っており、ロール網戸1の見込み方向(屋内外方向、面外方向)はZ軸方向に沿っている。
【0031】
ロール網戸1は、建物の外壁開口部に固定される窓の窓枠に取り付けられるものである。ロール網戸1は、窓枠に固定される網戸枠11(枠体)と、網戸枠11の内部にて左右に開閉自在に設けられる前述したネット20(網材)とを備えている。
【0032】
網戸枠11は、収納ケース13と、当接枠14と、上レール枠15と、下レール枠16とを備えている。収納ケース13の内部には、ネット20の端部が固定されて当該ネット20を巻き取るY軸方向に沿った巻取軸13Aが設けられ、図示しないバネによって巻取軸13Aが巻取方向に付勢されることで、ネット20が収納ケース13内に収納されるようになっている。
【0033】
ネット20は、図8に示すように、経糸21と緯糸22とが格子状に交差され、これらの交差部(交点)が融着されて構成されている。ネット20のX軸方向に沿った上下の側縁部20Aには、前述した抜止めテープ10がそれぞれ縫製によって挟着されている。ネット20の閉鎖方向側の先端縁にはY軸方向に沿った可動框24が取り付けられている。抜止めテープ10は、ネット20と共に巻取軸13Aに巻取り可能な程度の可撓性を有している。
経糸21および緯糸22の線径は、例えば0.05mm~0.30mmの範囲で設定されてもよく、ネット20の各編目の開口幅は0.5mm~1.5mmの範囲で設定されてもよい。このようなネット20では、経糸21および緯糸22の線径が細くなるほど、捩れた場合に皺が生じやすい特性となる。
このネット20は、可動框24をX軸方向に操作することで、ロール網戸1を開放状態および閉鎖状態に切り替える。具体的には、X軸方向における開放側である図6の左側に向かって可動框24を操作し、巻取軸13Aにネット20および抜止めテープ10を巻き取らせると共に、可動框24を収納ケース13に当接させることでロール網戸1を開放状態とする。一方、X軸方向における閉鎖側である図6の右側に向かって可動框24を操作し、収納ケース13からネット20を繰り出すと共に、可動框24を当接枠14に当接させることでロール網戸1を閉鎖状態とする。
【0034】
上レール枠15および下レール枠16のそれぞれには、抜止めテープ10をX軸方向(ネット20の繰出し方向)に沿ってスライド案内する樹脂製の前述したガイドレール17が設けられている。
上レール枠15側のガイドレール17は、図7に示すように、上レール枠15に係合した底壁部171と、底壁部171から垂下した一対の側壁部172と、一対の側壁部172の下端からZ軸方向において互いに近接する方向に延出した一対の開口形成片部173とを有しており、底壁部171、一対の側壁部172および一対の開口形成片部173によってX軸方向に延びたガイド溝17Aが形成されている。一対の開口形成片部173の間にはガイド溝17AのX軸方向に沿った開口17Bが形成されている。
下レール枠16側のガイドレール17は、上レール枠15側のガイドレール17と同様に形成されて上下逆向きに配置されている。このため、一対の側壁部172は底壁部171から立ち上げられ、一対の開口形成片部173は底壁部171よりも下方に配置されている。
【0035】
ガイドレール17の各寸法関係について図1などを参照して説明する。ガイド溝17AのY軸方向における溝深さ寸法GDは、抜止めテープ10の幅寸法W以上の寸法とされており、ガイド溝17AのZ軸方向における溝幅寸法GWは、抜止め部40の厚さ寸法T1以上の寸法とされており、ガイド溝17Aの開口17BのZ軸方向における開口幅寸法OWは、抜止め部40の厚さ寸法T1よりも小さい寸法であって且つテープ部30の厚さ寸法T2よりも小さい寸法とされている。このように寸法設定されたガイド溝17Aには、抜止めテープ10の全体が収められており、開口17Bにはネット20が挿通されている。
【0036】
ガイドレール17の各寸法は、抜止めテープ10の前述した各寸法設定の一例に応じて次の通り設定される。ガイド溝17Aの溝深さ寸法GDは4mm以上であり、好ましくは抜止めテープ10に干渉しない程度に4mmよりも若干大きい寸法とされる。ガイド溝17Aの溝幅寸法GWは1.35mm以上であり、好ましくは抜止めテープ10に干渉しない程度に1.35mmよりも若干大きい寸法とされる。ガイド溝17Aの開口幅寸法OWは0.75mmよりも小さい寸法とされており、このため、ガイドレール17は、テープ部30が開口17Bから引き抜かれにくい構成となっている。なお、開口幅寸法OWは、抜止め部40を抜止め可能に厚さ寸法T1よりも小さい寸法(本実施形態では1.35mmよりも小さい寸法)であればよい。このため、テープ部30が開口17Bから引き抜かれて露出しても外観上問題なければ、開口幅寸法OWはテープ部30の厚さ寸法T2以上の寸法であってもよい。
【0037】
以下、本実施形態に係る抜止めテープ10を用いたロール網戸1の動作について説明する。
図6に示す閉鎖状態では、ネット20が風圧等の影響を受けてガイド溝17AからY軸方向に引き抜かれようとしても、抜止め部40が開口形成片部173に当たることでネット20を抜止めする。また、ネット20の巻取りや繰出しの際に抜止め部40が開口形成片部173に当たっても、実際に開口形成片部173に当たる線材60が樹脂製(本実施形態ではポリエチレンテレフタラート(PET))のモノフィラメント糸によって形成されているので、抜止め部40のガイドレール17に対する摺動抵抗を小さく抑えることができ、ネット20を円滑にスライド移動させることができる。更に、本実施形態ではガイドレール17も樹脂製であるので前述した摺動抵抗を更に小さく抑え得る。
また、閉鎖状態から開口状態にするために可動框24を左側に操作すると、巻取軸13Aが軸心を中心として巻取方向に回転し、ネット20および抜止めテープ10が巻取軸13Aによって巻き取られて収納ケース13内に収納される。ネット20が巻取軸13Aに断面渦巻き状に巻き取られた巻取状態では、抜止めテープ10の仮想外面65は、図9に示すように、軸方向Aに直交する直交方向Bにおいて隣接する仮想外面65と重なり、これにより、抜止め部40は直交方向Bに重ね合わされる。ここで、仮想外面65は線材60によってフラットに形成されているので、抜止め部40同士が重ね合わされても軸方向Aへの位置ズレの発生を抑えることができる。このため、当該位置ズレに起因してネット20に皺などが発生するおそれをなくし得る。
【0038】
[本実施形態の効果]
(1)本実施形態では、抜止めテープ10は、図2において左側に示す第一テープ部30Aおよび第一線状重ね部40Aと、右側に示す第二テープ部30Bおよび第二線状重ね部40Bと、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bの間に設けられた折返し部50を有しており、図1に示すように折返し部50を折り返した状態では、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bの線材60同士がZ軸方向に重なって配置され、これにより抜止め部40を構成することを特徴とする。
この抜止めテープ10によれば、例えば抜止め部40にコイルエレメントを採用する場合と比べて、抜止めとして機能する範囲内で厚さ寸法T1を小さくできる。このため、抜止めテープ10がガイド溝17Aに収められるガイドレール17の見込み寸法も厚さ寸法T1を小さくできるのに応じて小さくすることができ、ガイドレール17の小型化を図り得る。
また、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bの間に折返し部50を設けることで、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bが当該折返し部50の幅寸法W3を超えて相互に位置ズレすることをなくすことができ、このため、抜止め部40を構成する際に第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40B同士を容易に位置合わせできる。
【0039】
(2)線材60はモノフィラメント糸によって形成されている。このため、モノフィラメント糸を採用することで剛性および成形性の双方を兼ね備えた線材60を形成できる。例えば金属ワイヤーでは、剛性はあるが成形性が低く、径寸法を大きくすれば固くなり過ぎてしまって曲げ性が低下する。また例えば、マルチフィラメント糸では、成形性はあるが剛性が低く、これを用いて抜止め部40を構成しても、マルチフィラメント糸が潰れて抜止めテープ10がガイドレール17から抜けてしまうおそれがある。これらに対して、モノフィラメント糸によって線材60を形成することで、成形しやすく、抜止め部40を構成しても潰れ難いので抜止めテープ10がガイドレール17から抜けてしまうおそれを低減でき、また、径寸法を大きくしても金属ワイヤーほど固くなることはなく適度な曲げ性を維持できる。
(3)線材60の径寸法はその線方向に沿って均一であり、抜止め部40には、X軸方向およびY軸方向に沿ったフラットな仮想外面65が線材60によって構成されている。このため、ロール網戸1におけるネット20の巻取状態(巻回状態)では、フラットな仮想外面65同士が重ね合わされるので、Y軸方向の巻きズレの発生を抑制できる。
【0040】
(4)第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bは、編糸が編み込まれた編組織によって構成され、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bは、前記編糸よりも径寸法が大きい編糸が編み込まれた編組織によって構成されてもよい。この場合、第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bの編組織に対して、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bの編組織の厚さ寸法を大きくできて、抜止め部40を大きく構成できる。
(5)第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bは、複数種類の編糸が編み込まれた編組織によって構成され、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bは、第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bを構成する編糸の種類よりも多い種類の編糸が編み込まれた編組織によって構成されていてもよい。この場合、第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bの編組織に対して、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bの編組織の厚さ寸法を大きくできて、抜止め部40を大きく構成できる。
【0041】
(6)第一線状重ね部40Aにおける重ね線部61と第二線状重ね部40Bにおける重ね線部61とは、互いに重なって配置可能にY軸方向に対向している。このため、折返し部50を折り返した際に、Y軸方向に対向する重ね線部61同士を重ねて配置されるので、Z軸方向に潰されにくい抜止め部40を構成できる。また、線材60がX軸方向に長く連続しているので、容易に設置できると共に重ね線部61同士のX軸方向における間隔を保つ間隔保持性を向上できる。
また、連続した線材60を用いるので、後述するように複数の線材70を配置する場合と比べて、製造容易であり、且つ、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bの編組織から外れにくい構成にできる。
(7)連続線部62はX軸方向において互いに隣り合う重ね線部61の折返し部50側の端部(一方の端部)同士を連続させており、連続線部63はX軸方向において互いに隣り合う重ね線部61同士の前記一方の端部とは反対側における他方の端部同士を連続させており、これら連続線部62,63はX軸方向に沿って交互に配置されている。このため、X軸方向に沿って直線状に長く連続する直線部のない蛇行形状の線材60を形成でき、例えばX軸方向に一直線状に延びた線材を設置する場合と比べて、抜止めテープ10を曲げ易く構成できる。
(8)第一線状重ね部40Aにおける連続線部62と第二線状重ね部40Bにおける連続線部62とは、折返し部50側にそれぞれ配置されていると共に、X軸方向において異なる位置に配置されている。このため、折返し部50の幅寸法W3を小さく設定しても、連続線部62同士が干渉することを抑制できる。また、折返し部50の折返し状態では、Z軸方向からみて、第一線状重ね部40Aの連続線部62が第二線状重ね部40Bの重ね線部61の折返し部50側の端部(一方の端部)間に配置され、第一線状重ね部40Aの連続線部63が第二線状重ね部40Bの重ね線部61の他方の端部間に配置され、第二線状重ね部40Bの連続線部62が第一線状重ね部40Aの重ね線部61の折返し部50側の端部(一方の端部)間に配置され、第二線状重ね部40Bの連続線部63が第一線状重ね部40Aの重ね線部61の他方の端部間に配置されて、梯子形状を構成する。これにより、安定した曲げ特性を得ることができる。
(9)折返し部50の幅寸法W3は、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bの幅寸法W1よりも小さい。このため、折返し部50を折り返すことで第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40B同士がY軸方向に外れることなくZ軸方向に重なることとなって位置合わせを更に容易に行い得る。また、折返し部50の幅寸法W3を小さくしていくことで、折返し部50が折返し状態で第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40BからY軸方向外側に突出する寸法を小さくできる。これにより、抜止めテープ10自体の幅寸法Wを小さくでき、これに応じてガイドレール17の見付け寸法をも小さくできる。更に、このようにガイドレール17の見付け寸法を小さくした場合であっても、折返し部50と当該ガイドレール17との間にクリアランスを設けることができて、抜止めテープ10とガイドレール17との干渉を抑えることができる。
【0042】
(10)前述したように抜止めテープ10の幅寸法Wを小さくできるので、抜止めテープ10の全体をガイド溝17Aに収めても、ガイドレール17の見付け寸法の大型化を抑えることが容易となり、ガイドレール17が目立たないロール網戸1を構成できて外観の向上を図り得る。
(11)前述したように抜止め部40の厚さ寸法T1を小さくできるので、ネット20および抜止めテープ10を巻取軸13Aに巻き取った際の巻き径を小さくできる。
(12)線材60を蛇行形状として幅寸法W1をある程度大きくしているので、Y軸方向の巻きズレをより効果的に抑制できる。
(13)第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bをネット20に縫製接合しているので、熱溶着工程が不要であり、製造工程の簡略化によるコスト削減を図れると共に、熱溶着による熱収縮が生じてガイドレール17と抜止めテープ10とが干渉するおそれをなくすことができ、抜止めテープ10をガイドレール17に沿って円滑にスライド移動できる。
(14)例えばネット20の側縁部20Aに固定したテープ部30に対してゴムシートを設置することで抜止め部40を構成することが挙げられるが、この場合、ゴムシートとガイドレール17との摺動抵抗が大きくなってしまい、ネット20を円滑に開閉移動させることが困難となるおそれがある。また、ゴムシートを熱溶着する場合には前述したように熱収縮が生じてガイドレール17と干渉しやすくなるおそれがあり、ゴムシートをテープ部30およびネット20とともに縫製接合する場合には、縫製時に縫い縮み(パッカリング)が生じるおそれがある。
これに対して、本実施形態では、ゴムシートを採用せずに前述したように樹脂製のモノフィラメント糸によって形成された線材60を有して抜止め部40を構成するので、抜止め部40およびガイドレール17の摺動抵抗を小さく抑えることができてネット20を円滑に開閉移動できる。また、第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bをネット20に縫製接合するだけなので、熱溶着によって熱収縮が生じるおそれがなく、ゴムシートがないのでパッカリングが生じるおそれも低減できる。
【0043】
[変形例]
前記実施形態では、X軸方向に蛇行形状に延びた線材60を説明したが、これに限らず、例えば図4に示すように、X軸方向に間隔を隔てて複数並設された線材70を備えていてもよい。複数の線材70は、Y軸方向に延びた一対の重ね線部61と、一対の重ね線部61を連続させた連続線部62とをそれぞれ有してU字形に形成されており、連続線部62は、折返し部50側における一対の重ね線部61の端部(一方の端部)を連続させている。第一線状重ね部40Aにおける重ね線部61と第二線状重ね部40Bにおける重ね線部61とは、互いに重なって配置可能にY軸方向に対向している。第一線状重ね部40Aにおける連続線部62と第二線状重ね部40Bにおける連続線部62とは、X軸方向において異なる位置に配置されている。
このような構成によれば、Y軸方向に対向する重ね線部61同士を、折返し部50を折り返して重ねることで抜止め部40を構成できる。複数の線材70が連続せずにX軸方向に間隔を隔てて配置されているので、X軸方向に長く連続した線材を有する場合と比べて、例えば線材70の径寸法を大きくして抜止め部を大きく形成しても、抜止めテープ10の曲げ性を維持可能な構成にできる。
更に、第一線状重ね部40Aにおける連続線部62と第二線状重ね部40Bにおける連続線部62とがX軸方向において異なる位置に配置されることで、折返し部50の幅寸法W3をより小さくしても、連続線部62同士が干渉することを抑制できる。
【0044】
また、図5に示すように、折返し部50側の連続線部62ではなく、これとは反対側における重ね線部61の端部を連続させる連続線部63を有した線材70を、X軸方向に間隔を隔てて複数並設してもよい。
この場合、折返し部50側の連続線部62がないので、複数の線材70を折返し部50側に突出しない位置に縫い止めることができ、その分、第一線状重ね部40Aおよび第二線状重ね部40Bの幅寸法W1を小さくできる。これにより、抜止めテープ10全体の小型化を図り得る。
【0045】
前記実施形態では、第一テープ部30Aおよび第二テープ部30Bはネット20に縫製接合されるが、これに限らず、例えば接着剤によって接着されてもよく、また、熱収縮が生じるおそれが低い場合には熱溶着してもよい。
前記実施形態では、折返し部50に対して左側に一列の第一線状重ね部40Aを設置し、且つ、折返し部50に対して右側に一列の第二線状重ね部40Bを設置しているが、これに限らない。例えば、折返し部50に対して左側に二列以上の第一線状重ね部40Aを設置し、且つ、折返し部50に対して右側に二列以上の第二線状重ね部40Bを設置して、幅寸法W1の大きい抜止め部40を構成可能としてもよい。
前記実施形態では、線材60にはU字形部および逆U字形部が複数構成されているが、これに限らず、例えば、重ね線部61を直線状ではなく略S字形状に湾曲させ、且つ連続線部62,63を円弧形状に湾曲させることで、S字形部および逆S字形部が複数構成されていてもよい。
前記実施形態では、線材60,70は、PETのモノフィラメント糸によって形成されているが、これに限らず、PP、ポリアミド、PVC、PBT、ポリエチレン等緯のモノフィラメント糸によって形成されていてもよい。また、線材60,70は、金属ワイヤーやマルチフィラメント糸などのモノフィラメント糸以外のものによって形成されていてもよく、金属繊維、炭素繊維、合成繊維等が採用されていてもよい。
抜止めテープ10が用いられるものとして、可動框24を左右方向に操作可能な横スライド式のロール網戸1を説明したが、このほか、可動框24を上下方向に操作可能な上下スライド式のロール網戸であってもよく、また、ネット20ではなく日射を遮るスクリーンを巻取りおよび繰出し可能なロールスクリーン装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の抜止めテープは、スクリーン装置におけるスクリーンの抜止めとして利用可能であり、例えば前述したようにロール網戸1におけるスクリーンである防虫等用のネット(網材)20の抜止めや、ロールスクリーン装置における遮光等用のスクリーンの抜止めとして利用されるが、このほか、各種の被取付材を枠材に抜止めする汎用資材として利用可能である。例えば、バス、電車内などで枠材に吊り下げられる中吊幕(被取付材)を抜止めするもの、枠材に側縁部などが取り付けられる広告幕(被取付材)を抜止めするものや、互いに枠材を介して連結されるシート(被取付材)を抜止めするものとして利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…ロール網戸、10…抜止めテープ、11…網戸枠、13…収納ケース、13A…巻取軸、14…当接枠、15…上レール枠、16…下レール枠、17…ガイドレール(枠材)、171…底壁部、172…側壁部、173…開口形成片部、17A…ガイド溝、17B…開口、20…ネット(被取付材)、20A…側縁部、21…経糸、22…緯糸、24…可動框、30…テープ部、30A…第一テープ部、30B…第二テープ部、31,41,51…経挿入糸、32,43…鎖編糸、33…トリコット編糸、40…抜止め部、40A…第一線状重ね部、40B…第二線状重ね部、42…逆経挿入糸、50…折返し部、60,70…線材、61…重ね線部、62,63…連続線部、65…仮想外面、A…軸方向、B…直交方向、GD…溝深さ寸法、GW…溝幅寸法、OW…開口幅寸法、T1,T2…厚さ寸法、W,W1~W3…幅寸法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9