(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】複数の原料油の処理方法
(51)【国際特許分類】
C10G 45/38 20060101AFI20230629BHJP
C10G 45/08 20060101ALI20230629BHJP
B01J 23/883 20060101ALI20230629BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230629BHJP
【FI】
C10G45/38
C10G45/08 Z
B01J23/883 M
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2019157790
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】弁理士法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千代田 範人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 実治
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-231887(JP,A)
【文献】特開平6-041548(JP,A)
【文献】特開2001-064655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)コバルト及びニッケルから選ばれる1種以上の金属と、モリブデン及びタングステンから選ばれる1種以上の金属と、を含有する水素化脱硫触媒が充填されている触媒塔に、オレフィン性不飽和結合を有する化合物を含有し、窒素含有量が5.0質量ppm以下、臭素価が1.0~142.0g-Br
2/100g、硫黄含有量が100.0質量ppm未満である第一原料油と、水素ガスと、を供給して、該第一原料油の水素化処理を行い、該第一原料油のオレフィン部水素化処理油を得るオレフィン部水素化工程と、
b)該触媒塔に、硫黄含有量が0.010~2.000質量%である第二原料油と、水素ガスと、を供給して、該第二原料油の脱硫処理を行い、該第二原料油の脱硫処理油を得る脱硫工程と、
を、同一の該水素化脱硫触媒を用いて、交互に繰り返すことを特徴とする複数の原料油の処理方法。
【請求項2】
前記第一原料油のトリイソブチレン含有量が1.0~100.0容量%であり、かつ、沸点が40~220℃であることを特徴とする請求項1記載の複数の原料油の処理方法。
【請求項3】
前記水素化脱硫触媒が、0~60.0質量%のイオン交換したゼオライトと、40.0~95.0質量%のアルミナ又はアルミナ含有物と、を含有する担体に、該水素化脱硫触媒全質量に対し、酸化物換算で0.5~15.0質量%のコバルト及びニッケルから選ばれる1種以上の金属と、該水素化脱硫触媒全質量に対し、酸化物換算で2.0~30.0質量%のモリブデン及びタングステンから選ばれる1種以上の金属と、が担持されている触媒であることを特徴とする請求項1又は2記載の複数の原料油の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン性不飽和結合を有する化合物を含有する原料油の水素化処理と、硫黄原子を有する化合物を含有する原料油の脱硫処理とを、工業的に効率的に行う複数の原料油の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石油精製プロセスにおける1-ブテン、2-ブテンを主成分とするC4留分は、アルコールケトン製造の原料として用いられ、水添反応、脱硫反応を経て生成される留分中には、ジイソブチレン及びトリイソブチレンが多く含まれている。これらは、蒸留にて分離され、ジイソブチレンは、イソノナン原料や樹脂原料に、トリイソブチレンは、水素化された後、溶剤として使用される。
【0003】
トリイソブチレン等のオレフィン性不飽和結合を有する化合物の水素化には、通常、白金、ニッケル、パラジウム、ルテニウム、コバルト、モリブデン等の金属担持触媒が用いられる。
【0004】
例えば、特許文献1には、ニッケル、パラジウム、白金といった水素化触媒の存在下でジイソブチレンを水素化してイソオクタンを生成させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1等の白金、ニッケル、パラジウム等の金属担持触媒を用いる、オレフィン性不飽和結合を有する化合物の水素化には、高価な触媒を用いなければならないことや、オレフィン性不飽和結合を有する化合物を含有する原料油の水素化用の触媒が充填されたオレフィン部の水素化専用の反応塔を設ける必要があること等のため、これらがオレフィン性不飽和結合を有する化合物の水素化のコストアップに繋がるという問題があった。
【0007】
従って、本発明の目的は、安価にオレフィン性不飽和結合を有する化合物の水素化を行うことができる処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、以下の本発明により解決される。
すなわち、本発明(1)は、a)コバルト及びニッケルから選ばれる1種以上の金属と、モリブデン及びタングステンから選ばれる1種以上の金属とを含有する水素化脱硫触媒が充填されている触媒塔に、オレフィン性不飽和結合を有する化合物を含有し、窒素分が5.0質量ppm以下、臭素価が1.0~142.0g-Br2/100g、硫黄含有量が100.0質量ppm未満である第一原料油と、水素ガスと、を供給して、該第一原料油の水素化処理を行い、該第一原料油のオレフィン部水素化処理油を得るオレフィン部水素化工程と、b)該触媒塔に、硫黄含有量が0.010~2.000質量%である第二原料油と、水素ガスと、を供給して、該第二原料油の脱硫処理を行い、該第二原料油の脱硫処理油を得る脱硫工程と、を、同一の該水素化脱硫触媒を用いて、交互に繰り返すことを特徴とする複数の原料油の処理方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明(2)は、前記第一原料油のトリイソブチレン含有量が1.0~100.0容量%であり、沸点が40~220℃であることを特徴とする(1)の複数の原料油の処理方法を提供するものである。
【0010】
また、本発明(3)は、前記水素化脱硫触媒が、0~60.0質量%のイオン交換したゼオライトと、40.0~95.0質量%のアルミナ又はアルミナ含有物と、を含有する担体に、該水素化脱硫触媒全質量に対し、酸化物換算で0.5~15.0質量%のコバルト及びニッケルから選ばれる1種以上の金属と、該水素化脱硫触媒全質量に対し、酸化物換算で2.0~30.0質量%のモリブデン及びタングステンから選ばれる1種以上の金属と、が担持されている触媒であることを特徴とする(1)又は(2)の複数の原料油の処理方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水素化脱硫触媒を有効に活用することができる原料油の処理方法を提供することで、触媒活性の低下が抑制され、触媒の交換時期を延長することができるので、安価にオレフィン性不飽和結合を有する化合物の水素化を行うことができる処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例及び比較例における第一原料油の水素化処理油の臭素指数の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の複数の原料油の処理方法は、コバルト及びニッケルから選ばれる1種以上の金属と、モリブデン及びタングステンから選ばれる1種以上の金属とを含有する水素化脱硫触媒が充填されている触媒塔に、オレフィン性不飽和結合を有する化合物を含有し、窒素分が5.0質量ppm以下、臭素価が1.0~142.0g-Br2/100g、硫黄含有量が100.0質量ppm未満である第一原料油と、水素ガスと、を供給して、該第一原料油の水素化処理を行い、該第一原料油のオレフィン部水素化処理油を得るオレフィン部水素化工程と、該触媒塔に、硫黄含有量が0.010~2.000質量%である第二原料油と、水素ガスと、を供給して、該第二原料油の脱硫処理を行い、該第二原料油の脱硫処理油を得る脱硫工程と、を、同一の該水素化脱硫触媒を用いて、交互に繰り返すことを特徴とする複数の原料油の処理方法である。
【0014】
本発明の複数の原料油の処理方法は、オレフィン性不飽和結合を有する化合物を含有する第一原料油の処理と、硫黄含有量が0.010~2.000質量%である第二原料油の処理と、を、同じ水素化脱硫触媒を用いて、交互に繰り返して行う処理方法である。
つまり、本発明の複数の原料油の処理方法では、本発明の複数の原料油の処理方法に係る水素化脱硫触媒を用いて、所定量、所定時間又は所定回数の第一原料油のオレフィン部の水素化処理を行い、第一原料油のオレフィン部水素化処理油を得るオレフィン部水素化工程を行い、次いで、同一の水素化脱硫触媒を用いて、所定量、所定時間又は所定回数の第二原料油の脱硫処理を行い、第二原料油の脱硫処理油を得る脱硫工程を行い、次いで、同一の水素化脱硫触媒を用いて、所定量、所定時間又は所定回数の第一原料油のオレフィン部の水素化処理を行い、第一原料油のオレフィン部水素化処理油を得るオレフィン部水素化工程を行い、次いで、同一の水素化脱硫触媒を用いて、所定量、所定時間又は所定回数の第二原料油の脱硫処理を行い、第二原料油の脱硫処理油を得る脱硫工程を行うというように、同一の水素化脱硫触媒を用いて、オレフィン部水素化工程と脱硫工程とを交互に繰り返す。
【0015】
本発明の複数の原料油の処理方法に係る水素化脱硫触媒、すなわち、オレフィン部水素化工程においてオレフィン部の水素化処理に用いられ、且つ、脱硫工程において脱硫処理に用いられる触媒は、コバルト及びニッケルから選ばれる1種以上の金属と、モリブデン及びタングステンから選ばれる1種以上の金属と、を含有する水素化脱硫触媒であり、好ましくはニッケルとモリブデンを含有する水素化脱硫触媒である。本発明の複数の原料油の処理方法に係る水素化脱硫触媒としては、石油精製プロセスにおいて、原油を常圧蒸留して得られるナフサ留分や灯油留分、軽油留分の脱硫に用いられる水素化脱硫触媒や、常圧蒸留残渣油又は減圧蒸留残渣油の直接脱硫に用いられる水素化脱硫触媒が挙げられる。
【0016】
本発明の複数の原料油の処理方法に係る水素化脱硫触媒におけるコバルト及びニッケルから選ばれる1種以上の金属の担持量は、水素化脱硫触媒全質量に対して、酸化物換算で0.5~15.0質量%であり、好ましくは1.0~12.0質量%である。なお、水素化脱硫触媒にコバルト及びニッケルの両方が担持されている場合には、上記担持量は、コバルト及びニッケルの合計の担持量を指す。また、本発明の複数の原料油の処理方法に係る水素化脱硫触媒におけるモリブデン及びタングステンから選ばれる1種以上の金属の担持量は、水素化脱硫触媒全質量に対して、酸化物換算で2.0~30.0質量%であり、好ましくは7.0~25.0質量%である。なお、水素化脱硫触媒にモリブデン及びタングステンの両方が担持されている場合には、上記担持量は、モリブデン及びタングステンの合計の担持量を指す。
【0017】
本発明の複数の原料油の処理方法に係る水素化脱硫触媒における担体は、イオン交換したゼオライトを0~60.0質量%含有し、アルミナ又はアルミナ含有物を40.0~95.0質量%含有するものである。
【0018】
本発明の複数の原料油の処理方法に係るオレフィン部水素化工程は、本発明の複数の原料油の処理方法に係る水素化脱硫触媒が充填されている触媒塔に、オレフィン性不飽和結合を有する化合物を含有する第一原料油と、水素ガスと、を供給して、第一原料油の水素化処理を行い、第一原料油中のオレフィン性不飽和結合を水素化して、第一原料油のオレフィン部水素化処理油を得る工程である。
【0019】
本発明の複数の原料油の処理方法に係る第一原料油の臭素価は、1.0~142.0g-Br2/100g、好ましくは9.0~95.0g-Br2/100gである。なお、本出願書類における臭素価とは、JIS K 2605に準拠して測定される値を意味する。
【0020】
本発明の複数の原料油の処理方法に係る第一原料油の窒素含有量は、5.0質量ppm以下である。なお、本出願書類における窒素含有量とは、JIS K 2609に準拠して測定される値を意味する。
【0021】
本発明の複数の原料油の処理方法に係る第一原料油の硫黄含有量は、100.0質量ppm未満、好ましくは50.0質量ppm未満である。第一原料油は硫黄含有量が少ないので、本発明の複数の原料油の処理方法に係る水素化脱硫触媒を用いて、第一原料油のオレフィン部の水素化処理を行うと、オレフィン部水素化工程での水素化処理中に、水素化脱硫触媒から硫黄原子が失われていく。そして、水素化脱硫触媒から硫黄原子が失われることにより、第一原料油のオレフィン部の水素化処理における触媒のオレフィン部水素化活性が低下する。
【0022】
本発明の複数の原料油の処理方法に係る第一原料油は、オレフィン性不飽和結合を有する化合物を含有し、且つ、臭素価、窒素含有量及び硫黄含有量が上記範囲の原料油であれば特に制限されないが、例えば、エチレン製造装置、流動接触分解装置、水素化分解装置等にて生成する留分を沸点範囲40~220 ℃で蒸留して得られる留分が挙げられる。
【0023】
本発明の複数の原料油の処理方法に係る第一原料油に含有されるオレフィン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、イソブチレン、ジイソブチレン、トリイソブチレン等が挙げられる。
【0024】
本発明の複数の原料油の処理方法に係る第一原料油のトリイソブチレンの含有量が1.0~100.0容量%であり、好ましくは10.0~20.0容量%である。また本発明の複数の原料油の処理方法に係る第一原料油の沸点は40~220℃であり、好ましくは170~195℃である。
【0025】
本発明の複数の原料油の処理方法に係るオレフィン部水素化工程において、水素化処理時の水素分圧は、0.10~10.00MPa、好ましくは2.00~4.00MPa、特に好ましくは2.40~2.80MPaである。
【0026】
本発明の複数の原料油の処理方法に係るオレフィン部水素化工程において、水素化処理時の温度は、100~350℃、好ましくは180~320℃、特に好ましくは210~310℃である。
【0027】
本発明の複数の原料油の処理方法に係るオレフィン部水素化工程において、水素化処理時のLHSV(液空間速度)は、好ましくは2.0~9.0hr-1、より好ましくは4.0~6.0hr-1、特に好ましくは4.5~5.8hr-1である。
【0028】
本発明の複数の原料油の処理方法に係るオレフィン部水素化工程において、水素化処理時の水素/油比は、好ましくは90~760NL/L、より好ましくは100~130NL/L、特に好ましくは100~110NL/Lである。
【0029】
本発明の複数の原料油の処理方法に係る脱硫工程は、本発明の複数の原料油の処理方法に係る水素化脱硫触媒が充填されている触媒塔に、硫黄含有量が0.010~2.000質量%の第二原料油と、水素ガスと、を供給して、第二原料油の脱硫処理を行い、第二原料油の脱硫処理油を得る工程である。
【0030】
脱硫工程で脱硫処理される第二原料油の硫黄含有量は、0.010~2.000質量%、好ましくは0.010~0.050質量%である。第二原料油は、硫黄含有量が多いので、オレフィン部水素化工程を行った後の本発明の複数の原料油の処理方法に係る水素化脱硫触媒を用いて、第二原料油の脱硫処理を行うと、脱硫工程での脱硫処理中に、オレフィン部水素化工程を行うことで硫黄分が失われた水素化脱硫触媒に、硫黄原子が導入される。そして、硫黄原子が失われた水素化脱硫触媒に、硫黄原子が導入されることにより、オレフィン部水素化工程を行うことにより失われた、本発明の複数の原料油の処理方法に係る水素化脱硫触媒のオレフィン部水素化活性が回復する。
【0031】
本発明の複数の原料油の処理方法に係る脱硫工程における第二原料油は、硫黄含有量が上記範囲の原料油であれば、特に制限されない。
【0032】
本発明の複数の原料油の処理方法に係る脱硫工程における第二原料油としては、例えば、原油を常圧蒸留して得られるナフサ留分、灯油留分、軽油留分、常圧蒸留残渣油や、減圧蒸留装置から得られる減圧蒸留軽油留分、減圧蒸留残渣油等が挙げられる。
【0033】
本発明の複数の原料油の処理方法に係る脱硫工程において、脱硫処理時の水素分圧は、0.50~25.0MPa、好ましくは1.00~4.00MPa、特に好ましくは1.50~2.50MPaである。
【0034】
本発明の複数の原料油の処理方法に係る脱硫工程において、脱硫処理時の温度は、250~430℃、好ましくは250~400℃、特に好ましくは250~350℃である。
【0035】
本発明の複数の原料油の処理方法に係る脱硫工程において、脱硫処理時のLHSV(液空間速度)は、好ましくは3.0~7.0hr-1、より好ましくは4.0~6.0hr-1である。
【0036】
本発明の複数の原料油の処理方法に係る脱硫工程において、脱硫処理時の水素/油比は、好ましくは5~250NL/L、より好ましくは100~120NL/L、特に好ましくは100~110NL/Lである。
【0037】
本発明の複数の原料油の処理方法では、同一の水素化脱硫触媒及び該水素化脱硫触媒が充填されている触媒塔を用いて、オレフィン部水素化工程と脱硫工程とを行う。つまり、本発明の複数の原料油の処理方法では、オレフィン部水素化工程を行った後の本発明の複数の原料油の処理方法に係る水素化脱硫触媒を用いて、脱硫工程を行い、且つ、脱硫工程を行った後の本発明の複数の原料油の処理方法に係る水素化脱硫触媒を用いて、オレフィン部水素化工程を行う。具体的には、本発明の複数の原料油の処理方法に係る水素化脱硫触媒が充填されている触媒塔に、第一原料油を供給して、オレフィン部水素化工程を行い、次いで、該触媒塔に供給する原料油を第二原料油に切り替えて、脱硫工程を行い、次いで、該触媒塔に供給する原料油を再び第一原料油に切り替えて、オレフィン部水素化工程を行い、次いで、該触媒塔に供給する原料油を第二原料油に切り替えて、脱硫工程を行うとのように、複数回、オレフィン部水素化工程及び脱硫工程を繰り返す。
【0038】
本発明の複数の原料油の処理方法において、1回当たりのオレフィン部水素化工程での第一原料油の処理量、処理時間又は処理回数は、第一原料油中のオレフィン部の量、硫黄含有量、水素化活性の低下度合、触媒中の金属種又はその含有量等により、適宜選択される。また、本発明の複数の原料油の処理方法において、1回当たりの脱硫工程での第二原料油の処理量、処理時間又は処理回数は、第二原料油の油種、硫黄含有量、触媒中の金属種又はその含有量等により、適宜選択される。
【0039】
本発明の複数の原料油の処理方法では、オレフィン部水素化工程を行うことによって、水素化脱硫触媒中の硫黄原子が失われて、触媒のオレフィン部水素化活性が低下しても、その後に、その水素化脱硫触媒を用いて脱硫工程を行うことにより、触媒に硫黄原子が導入されるので、触媒のオレフィン部水素化活性を回復させることができる。そのため、本発明の複数の原料油の処理方法では、同一の水素化脱硫触媒を用いて、オレフィン部水素化工程と脱硫工程とを交互に繰り返すことにより、同一の水素化脱硫触媒を用いて、第一原料油のオレフィン部の水素化と、第二原料油の脱硫とを、長期に亘って継続することができる。
【0040】
そして、本発明の複数の原料油の処理方法では、石油精製プロセスにおける原油を常圧蒸留して得られるナフサ留分や灯油留分、軽油留分、常圧蒸留残渣油又は減圧蒸留残渣油を直接脱硫するための直接脱硫触媒及び触媒塔を用いて、オレフィン性不飽和結合を有する化合物を含有する第一原料油のオレフィン部の水素化を行うことができるので、水素化脱硫触媒を有効に活用することができ、安価にオレフィン性不飽和結合を有する化合物の水素化を行うことができる。
【0041】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例】
【0042】
(触媒の前処理)
流通式反応管にモリブデンとニッケルを酸化物換算でそれぞれ10.4質量%担持した水素化脱硫触媒を15cm3充填し、水素分圧が2.5MPa、LHSVが5.0hr-1、水素/油が106NL/Lの条件下、100℃で2時間、250℃で2時間、320℃で2時間、ジメチルジスルフィドを2%含有したイソドデカンを通液し、前処理済み水素化脱硫触媒を得た。
【0043】
(実施例1)
臭素価が66.0g-Br
2/100g、窒素含有量が2.3質量ppm、硫黄含有量が1.3質量ppmの炭化水素油とイソドデカンを1:9で混合した混合油を第一原料油として、上記前処理済み水素化脱硫触媒を用いて、温度270℃、水素分圧が2.49MPa、LHSVが5.4hr
-1、水素/油が106NL/Lの条件下、4日間、水素化反応を行った。
その後、硫黄含有量が190質量ppmのヘビーナフサを第二原料油として、上記前処理済み水素化脱硫触媒を用いて、温度270℃、水素分圧が2.08MPa、LHSVが5.4hr
-1、水素/油が106NL/Lの条件下、3日間、脱硫反応を行った。
上記第一原料油を用いた反応と上記第二原料油を用いた反応の2反応を1サイクルとして、31サイクルを行い、各サイクルにおける第一原料油の水素化処理油の臭素指数を測定した。その結果を
図1に示す。
【0044】
(比較例1)
上記第一原料油を用いた反応を1サイクルとして17サイクルを行う以外は、実施例と同様の条件で実施し、各サイクルにおける第一原料油の水素化処理油の臭素指数を測定した。
【0045】
実施例1は、全31サイクルにおいて臭素指数が20mg-Br2/100g以下で推移していることから、水素化脱硫触媒のオレフィン部水素化活性は長期間に渡って維持されていることがわかる。一方、比較例1は、反応サイクルが増えるに従い、臭素指数が69mg-Br2/100gまで単調に増加していることから、水素化脱硫触媒のオレフィン部水素化活性は徐々に低下していることがわかる。
このことから、本発明の方法を用いることにより、触媒の活性を維持したまま原料油の水素化処理を行うことができることがわかる。