(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】プリント回路基板上に設置された少なくとも1つの構成部品のための冷却装置及びこのような冷却装置を有する構成部品を装備したプリント回路基板
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20230629BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
H05K7/20 F
H05K7/20 B
H05K7/20 C
H05K1/02 F
(21)【出願番号】P 2019163627
(22)【出願日】2019-09-09
【審査請求日】2020-08-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】10 2018 215 338.8
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】595143159
【氏名又は名称】デュルコップ アドラー アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン プファイファー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ボンガース
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス リーベルム
(72)【発明者】
【氏名】マウリーツェ ハルバウム
【合議体】
【審判長】山澤 宏
【審判官】中野 裕二
【審判官】富澤 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-222934(JP,A)
【文献】特開2004-006791(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102010008074(DE,A1)
【文献】特開2006-269980(JP,A)
【文献】特開2011-023459(JP,A)
【文献】特開2012-069877(JP,A)
【文献】実開昭53-063663(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K7/20
H05K1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント回路基板(2)上に設置された少なくとも1つの構成部品(1)のための冷却装置(5)であって、
-少なくとも1つの熱伝導要素(8)と、
-少なくとも1つの熱伝導要素容器(7)を有するプラスチック熱伝導要素フレーム(6;13;14;15;17)と、
-
プリント回路基板熱伝導層(9)と
、
前記冷却装置(5)を前記プリント回路基板(2)と機械的に結合するために、前記熱伝導要素フレーム(6;13;14;15;17)に一体的に成形された少なくとも1つの結合要素(11)と、を有し、
前記少なくとも1つの熱伝導要素(8)がそれぞれの前記熱伝導要素容器(7)に挿入され、前記冷却装置(5)が前記プリント回路基板(2)に向かって設置されると、前記
プリント回路基板熱伝導層(9)は、前記熱伝導要素フレーム(6;13;14;15;17)を覆い、前記少なくとも1つの熱伝導要素(8)との直接的な熱伝導結合を有
し、
前記プリント回路基板熱伝導層(9)は、前記少なくとも1つの熱伝導要素(8)と前記少なくとも1つの構成部品(1)の間の熱移動をもたらす、冷却装置(5)。
【請求項2】
前記プリント回路基板(2)及び前記冷却装置(5)を収容する少なくとも1つの金属ハウジング(3)を備え、
前記冷却装置(5)が、前記プリント回路基板(2)と前記金属ハウジング(3)のハウジング壁(4)の間に配置される、ことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
金属ハウジング熱伝導層(10)を備え、
前記金属ハウジング熱伝導層(10)は、前記冷却装置(5)が前記金属ハウジング(3)の前記ハウジング壁(4)に向かって設置されると前記冷却体フレーム(6;13;14;15;17)を覆い、前記熱伝導要素(8)との直接的な熱伝導結合を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記結合要素(11)はスナップ嵌合として構成される、ことを特徴とする請求項
1に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記熱伝導要素フレーム(6;13;14;15;17
)に成形された少なくとも2つの位置上分離した結合要素(11)を備える、ことを特徴とする請求項
1又は
4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記
プリント回路基板熱伝導層(9)は、前記プリント回路基板(2)の少なくとも1つのビアによって冷却すべき前記構成部品(1)と熱伝導結合を有する、ことを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の少なくとも1つの冷却装置(5)を有する、構成部品を装備したプリント回路基板(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路基板上に設置された少なくとも1つの構成部品のための冷却装置に関する。さらに、本発明は、このような冷却装置を有する構成部品を装備したプリント回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板の構成部品用の冷却装置は、例えばリブ構造によって拡大された表面を備えた冷却体として知られている。このような冷却体はプリント回路基板のハウジング内に適用される。複数の構成部品が例えばクランプやねじ留めによる付加的な設置・絶縁努力を含む冷却体と接続されている、プリント回路基板用のハウジングの冷却体としての使用もまた知られている。このような冷却技術はしばしば増加した取り付け努力を必要とする。
【0003】
特許文献1は、熱伝導層を有する冷却装置を備えた電子部品を有するプリント回路基板を有する制御装置を開示している。特許文献2は、発熱構成部品からの指示された熱放散のためのプレートを開示しており、それは例えばハウジングを閉じるためのカバーとして構成されてもよく、様々な熱伝導率を有する様々な材料の複数のセクションを有する。特許文献3は、プリント回路基板内の熱平衡用並びにプリント回路基板及びそこに位置する構成部品からの熱を放散するためのアセンブリの構成部品としてのプレートを記述している。
【0004】
特許文献4は、とりわけ、構成部品まで又はプリント回路基板までの接触表面と制御装置のハウジングのハウジング内面の間の熱橋(thermal bridge)として構成された保護素子を開示している。特許文献5は、半導体チップと熱拡散素子及び弾性熱伝導パッドを有する冷却体の間の熱接触のための冷却装置を記載している。特許文献6は、発熱構成部品と、プリント回路基板を組み込むハウジングの内側ハウジング表面の間の熱放散部材を開示している。その熱放散部材は、流動性を有するポリマー材料(高分子物質)でできている。特許文献7は、熱放散インサートを備えた熱放散装置を記載しており、当該インサートは、この目的のために構成された凹所内の電子性能構成部品の高さでプリント回路基板に挿入される。特許文献8は、片側に装備されたプリント回路基板を記載しており、その後ろ側には冷却板が設置されている。特許文献9は、プリント回路基板上に配置されたパワーコンポーネントからの熱を放散する熱伝導要素を記載しており、パワーコンポーネントは別個の熱放散ブロックを有する熱接触部を有する。特許文献10は、電子部品との熱連通をもたらす弾性変形可能部材を備えた電子部品から熱を放散する熱伝導装置を記載している。特許文献11は、ハウジング内面に挿入できる可動ヒートシンク素子を備えたハウジングを含む電子アセンブリを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-006791号公報
【文献】DE102009005067A1
【文献】DE102008047649A1
【文献】DE102008033193A1
【文献】DE102007052397A1
【文献】DE102005040843A1
【文献】DE60315469T2
【文献】DE19532992A1
【文献】DE19506664A1
【文献】US2003/0227750A1
【文献】US2008/0084672A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、冷却すべき構成部品の熱望される熱的要件も満たされるように、前述した種類の冷却装置をさらに発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の特徴を有する冷却装置によって本発明に従い達成される。
【0008】
本発明によれば、一方で冷却装置の搭載性に対する要件と他方でそれらの冷却性能に対する要件が、これら要件を冷却装置の異なる構成部品(コンポーネント)に割り当てることで分離できることが分かった。少なくとも1つの熱伝導体が冷却装置による効果的な冷却に寄与する。プラスチック熱伝導要素フレームは容易に製造され、プリント回路基板に対して熱伝導要素(heat conduction element)を位置決めする。熱伝導要素は金属冷却体であってもよい。プリント回路基板熱伝導層(heat conduction layer)は、熱伝導要素とプリント回路基板に搭載された冷却すべき構成部品の間の良好な熱移動をもたらす。プリント回路基板熱伝導層は、他の構成部品のアセンブリ寸法許容差に適合するためにレベリングの機能を有する。プリント回路基板熱伝導層はフレキシブルに構成されてもよい。プリント回路基板熱伝導層は振動減衰の態様で構成されてもよい。熱伝導要素は銅及び/又はセラミックス及び/又はアルミニウムから作られてもよい。冷却装置は熱望される熱的及び電気的要件を満たす。
【0009】
冷却すべき構成部品の数に依存して、やはりこのような複数の冷却装置がプリント回路基板につき利用されてもよい。
【0010】
冷却装置は自動的に製造されてもよい。
【0011】
冷却装置は特に、全く残留物無く取り外すことができる。
【0012】
プラスチックの冷却体フレームは、特に耐火性、電気絶縁性、耐熱性及び形状維持の材料でできていてもよい。
【0013】
プリント回路基板の伝導層は電気絶縁性として構成されてもよい。
【0014】
請求項2に記載の金属ハウジングは、プリント回路基板の確実な収容と冷却装置の保護をもたらす。金属ハウジングはさらに、周囲への熱解放をもたらす。
【0015】
請求項3に記載の金属ハウジングの熱伝導層は、冷却装置の少なくとも1つの熱伝導要素から金属ハウジングに向かう熱放散をもたらし、それゆえそれが冷却に寄与する。金属ハウジングはこの目的のために、表面拡大のためのリブ構造を有してもよい。金属ハウジングの熱伝導層は、プリント回路基板と金属ハウジングのハウジング壁の間の製造高さ許容差を補償する。金属ハウジングの熱伝導層は、プリント回路基板熱伝導層より厚く構成されてもよい。
【0016】
プリント回路基板熱伝導層は、熱伝導材料の分散として又は薄膜(フィルム)として又はゲルとして構成されてもよい。金属ハウジングの熱伝導層は、熱伝導材料の分散として又は薄膜(フィルム)として又はゲルとして構成されてもよい。
【0017】
請求項1に記載の少なくとも1つの結合要素(linking element)は容易に製造でき、冷却装置及びプリント回路基板の確実な機械的連結をもたらす。プリント回路基板への1又は複数の冷却装置の自動的装着が可能である。結合要素の熱伝導要素フレームへのオーバーモールドの代替案として、結合要素は別な方法で熱伝導要素フレームに取り付けられ又は適用されてもよい。
【0018】
請求項4に記載の少なくとも1つの結合要素の実施形態は一方でコスト効率が良く、他方で堅固である。
【0019】
請求項5に記載の局所的に分離した結合要素は、プリント回路基板に対する熱伝導要素フレームの正確な位置決めを可能にし、その結果冷却すべき構成部品へのそれぞれの金属冷却体の安全な割り当てが保証される。必要に応じて、電気絶縁距離が結合要素によって予め決定される。
【0020】
請求項6に記載のプリント回路基板の利点は、本発明に従う冷却装置に関して既に上で述べた利点に一致する。プリント回路基板熱伝導層と、冷却すべき構成部品とのビアによるこのような熱伝導連結に代えて、プリント回路基板熱伝導層と冷却すべき構成部品の間の熱伝導連結が、アルミニウムコアを介して、銅表面を介して又はヒートパイプを介して行われてもよい。
【0021】
冷却すべき少なくとも1つの構成部品はSMD構成部品であってもよい。
【0022】
本発明の例示の実施形態を図面を参照して以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】構成部品を装備したプリント回路基板と、プリント回路基板を収容する金属ハウジングと、プリント回路基板と金属ハウジングの間に配置された、プリント回路基板に搭載された少なくとも1つの構成部品のための冷却装置の、4つの金属冷却体を意図したプラスチック冷却体フレームとを分解図にて示す図である。冷却体フレームの容器に挿入すべき金属冷却体のうちの1つだけが冷却体フレームとプリント回路基板の間に描かれており、熱伝導層が一方で冷却体フレームとプリント回路基板の間で、他方で冷却体フレームとハウジング壁の間で省略されている。
【
図2】
図1に従う冷却装置のプラスチック冷却体フレームの平面図を示す図である。
【
図3】
図2における線III-IIIに従う断面を示す図である。
【
図4】
図2における線IV-IVに従う断面を示す図である。
【
図5】
図2に似た斜視図において、
図1~4に従う冷却体フレームのタイプに従って2,4又は6の金属冷却体を装備できるプラスチック冷却体フレームの多数のバリエーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、様々なSMD構成部品1を装備したプリント回路基板2と、プリント回路基板2を収容する金属ハウジング3とを分解図にて示す。
図1において、全体を5と指定された冷却装置の構成部品は、プリント回路基板2と金属ハウジング3の底部ハウジング壁4との間に配置されている。冷却装置5は、プリント回路基板2に搭載された構成部品1の少なくとも1つを冷却するよう機能する。熱伝導要素フレームとしての冷却装置5は、熱伝導要素容器(heat conducting element receptacle)として4つの冷却体容器7を有するプラスチック冷却体フレーム6を有する。冷却体フレーム6のプラスチック材料は、特に耐火性、電気絶縁性、耐熱性及び形状維持性(保形性)である。
【0025】
冷却体容器7は立方形の金属冷却体8と相補形に構成されており、そのうちの1つが
図1に描かれている。金属冷却体8は熱伝導要素として機能する。金属冷却体8はアルミニウムでできていてもよい。冷却装置5は、プリント回路基板2とハウジング壁4の間に載置されている。金属冷却体8を冷却体フレーム6のそれぞれの冷却体容器7に挿入した後、
図4に概略的に示される、電気絶縁性の
プリント回路基板熱伝導層9が、冷却体フレーム6に適用される。冷却装置5がプリント回路基板2に向かって設置されると、
プリント回路基板熱伝導層9は冷却体フレーム6を覆う。
プリント回路基板熱伝導層9は、一方で金属冷却体8との、他方でプリント回路基板2との直接的な熱伝導結合(direct heat conductive link)を有する。
プリント回路基板熱伝導層9は弾性材料でできている。
プリント回路基板熱伝導層9は、プリント回路基板2の少なくとも1つのビアの上で冷却すべき構成部品1との熱伝導結合を有する。
【0026】
さらに、フルに搭載された冷却装置5は、冷却装置5が金属ハウジング3のハウジング壁4に向かって設置されたときに冷却体フレーム6を覆う金属ハウジング熱伝導層10を有する。金属ハウジング熱伝導層10は、一方で金属冷却体8との、他方でハウジング壁4との直接的な熱伝導結合を有する。金属ハウジング熱伝導層10は、プリント回路基板熱伝導層9よりも厚く、例えば2倍厚い。金属ハウジング熱伝導層10は薄膜又はゲル状コーティングである。金属ハウジング熱伝導層10は高さ許容差を補償するように構成できる。
【0027】
金属冷却体8は銅又はアルミニウムから作られてもよい。
【0028】
2つの結合要素11が、冷却装置5をプリント回路基板2に機械的に結合するために冷却体フレーム6に一体的に成形されている。結合要素11はそれぞれ、プリント回路基板2の対応するスナップインソケットにパチンと嵌るスナップ嵌合(スナップフィット)として構成されている。冷却体フレーム6の2つの結合要素は互いから位置上分離しており、すなわち冷却体フレーム6の斜め反対側の角に成形されている。
【0029】
冷却体フレーム6は、2×2格子のタイプに対応する4つの金属冷却体8を収容するように構成されており、格子の基本構造を有する。
【0030】
それぞれの冷却体容器7は、金属ハウジング熱伝導層10に向かって底部周囲突起12を有する。それは、挿入された金属冷却体8が冷却体容器7から落下するのを予防する。
【0031】
結合要素11は、取り付け時に冷却装置5をガイドし、正確に位置決めするように構成されている。冷却装置5の不正確な設置は、一方で結合要素11の対応する相補的配置により、他方でプリント回路基板2における対応するソケットによって回避される。
【0032】
冷却装置5は以下のように設置される。まず、金属冷却体8が冷却体フレーム6に、関連する冷却体容器7に挿入される。金属冷却体8は冷却体容器7にオーバーモールドされてもよい。その後、2つの熱伝導層9,10が適用される。このようにして完成した冷却装置5は次に、所定の位置でプリント回路基板2と結合要素11でスナップ嵌合される。次いで、金属ハウジング3はプリント回路基板2にねじ留めされる。このねじ留めはプリテンションのもとで行われてもよい。しかしながら、これは義務的ではない。
【0033】
冷却装置5のこの取り付けは、部分的に又は全体的に自動的方法で行われてもよい。
【0034】
冷却装置5は、全く残留物無しでプリント回路基板2から取り外すことができる。
【0035】
金属冷却体8を備えた冷却装置5と熱伝導層9,10は、別個に自動的方法で予め設置されてもよい。
【0036】
図5は、冷却装置5のタイプに従う冷却装置の異なる実施形態を示す。
【0037】
冷却フレームバリエーション13,14が、それぞれ2×1格子のタイプに従って、2つの金属冷却体8を収容するように構成されている。冷却装置13によって、冷却体容器7は長方形の細い側面を介して互いに隣接し、冷却装置14によって、それらは長方形の広い側面を介して互いに隣接する。
【0038】
冷却フレームバリエーション15は全部で6つの金属冷却体8を収容する機能を有する。対応する冷却体容器7は、フレームバリエーション6,13,14の冷却体容器の約6倍大きい。それらの広い側面を介して互いにそれぞれ隣接する、フレームバリエーション15の冷却体容器7は、冷却体フレーム15の支柱構造16を介して互いに隣接する。冷却体フレーム15は全部で4つの結合要素11を有する。
【0039】
冷却フレームバリエーション17は冷却フレームバリエーション14と同様にセットアップされるが、4×1格子配列で全部で4つの金属冷却体8を収容する機能を有する。
【符号の説明】
【0040】
1 構成部品
2 プリント回路基板
5 冷却装置
6;13;14;15;17 熱伝導要素フレーム
7 熱伝導要素容器
8 熱伝導要素
9 プリント回路基板熱伝導層