(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】設備点検装置、設備点検システムおよび設備点検方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
G05B23/02 T
(21)【出願番号】P 2019177887
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390003665
【氏名又は名称】株式会社日進製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】奥村 大
(72)【発明者】
【氏名】山岡 洋斗
(72)【発明者】
【氏名】前田 大作
(72)【発明者】
【氏名】嵯峨根 実
【審査官】藤崎 詔夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-159868(JP,A)
【文献】特開平11-173909(JP,A)
【文献】特開平09-016255(JP,A)
【文献】特開2009-070052(JP,A)
【文献】特開2009-107082(JP,A)
【文献】特開2006-205350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の動作に連動して変化する複数種類の物理量に基づいて前記設備の異常有無を点検する設備点検装置であって、
予め設定された複数種類の特徴量情報の中から前記設備の異常有無の判定に用いる少なくとも1つの特徴量情報の種類を選択する特徴量選択部と、
前記特徴量選択部により選択された前記少なくとも1つの特徴量情報の種類のうちの少なくとも1種類に対応する前記設備の異常有無の判定に用いる判定基準を設定する判定基準設定部と、
前記設備から出力される前記設備の制御に関する制御情報に基づいて、予め設定された抽出期間内に前記設備に設けられたセンサにより計測される複数種類の物理量それぞれを示す複数の物理量情報を抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された複数の物理量情報に基づいて、複数の物理量情報それぞれに対応
し且つ前記特徴量選択部により選択されうる前記複数種類の特徴量情報に対応する特徴量の全てを算出する特徴量算出部と、
算出された複数の物理量情報それぞれに対応する特徴量それぞれを示す前記複数種類の特徴量情報の中から、前記特徴量選択部により選択された
少なくとも1種類の特徴量情報が示す特徴量について、前記判定基準を用いて異常有無を判定する判定部と、を備える、
設備点検装置。
【請求項2】
前記設備は、繰り返し動作を実行し、
前記抽出部は、前記制御情報に基づいて、前記設備の繰り返し動作に同期して、予め設定された抽出期間内に前記センサにより計測される物理量を示す物理量情報を抽出する、
請求項
1に記載の設備点検装置。
【請求項3】
前記少なくとも1種類の特徴量情報それぞれの履歴を記憶する特徴量記憶部と、
前記特徴量情報の履歴に基づいて、前記少なくとも1種類の特徴量情報についての異常有無の判定基準を生成する判定基準生成部と、を更に備える、
請求項1
または2に記載の設備点検装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記複数種類の特徴量情報のうち、前記特徴量選択部により選択された少なくとも1種類の特徴量情報以外の特徴量情報について、前記判定基準生成部により生成された前記判定基準に基づいて、異常有無を判定する、
請求項
3に記載の設備点検装置。
【請求項5】
表示部と、
前記少なくとも1種類の特徴量情報それぞれの履歴と、前記少なくとも1種類の特徴量情報それぞれについての異常有無の判定結果を示す判定結果情報の履歴と、を示す履歴情報を生成する履歴情報生成部と、
前記履歴情報を前記表示部に表示させる表示制御部と、を更に備える、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の設備点検装置。
【請求項6】
設備の動作に連動して変化する複数種類の物理量に基づいて前記設備の異常有無を点検する設備点検システムであって、
前記設備に設けられ前記設備の動作に連動して変化する複数種類の物理量を計測するセンサと、
予め設定された複数種類の特徴量情報の中から前記設備の異常有無の判定に用いる少なくとも1つの特徴量情報の種類を選択する特徴量選択部と、
前記特徴量選択部により選択された前記少なくとも1つの特徴量情報の種類のうちの少なくとも1種類に対応する前記設備の異常有無の判定に用いる判定基準を設定する判定基準設定部と、
前記設備から出力される前記設備の制御に関する制御情報に基づいて、予め設定された抽出期間内に前記センサにより計測される複数種類の物理量それぞれを示す複数の物理量情報を抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された複数の物理量情報に基づいて、複数の物理量情報それぞれに対応
し且つ前記特徴量選択部により選択されうる前記複数種類の特徴量情報に対応する特徴量の全てを算出する特徴量算出部と、
算出された複数の物理量情報それぞれに対応する特徴量それぞれを示す前記複数種類の特徴量情報の中から、前記特徴量選択部により選択された
少なくとも1種類の特徴量情報が示す特徴量について、前記判定基準を用いて異常有無を判定する判定部と、を備える、
設備点検システム。
【請求項7】
設備の動作に連動して変化する複数種類の物理量に基づいて前記設備の異常有無を点検する設備点検方法であって、
予め設定された複数種類の特徴量情報の中から前記設備の異常有無の判定に用いる少なくとも1つの特徴量情報の種類を選択するステップと、
選択された前記少なくとも1つの特徴量情報の種類のうちの少なくとも1種類に対応する前記設備の異常有無の判定に用いる判定基準を設定するステップと、
前記設備から出力される前記設備の制御に関する制御情報に基づいて、予め設定された抽出期間内に前記設備に設けられたセンサにより計測される複数種類の物理量それぞれを示す複数の物理量情報を抽出するステップと、
抽出された複数の物理量情報に基づいて、複数の物理量情報それぞれに対応
し且つ選択されうる前記複数種類の特徴量情報に対応する特徴量の全てを算出するステップと、
算出された複数の物理量情報それぞれに対応する特徴量それぞれを示す前記複数種類の特徴量情報の中から、選択された
少なくとも1種類の特徴量情報が示す特徴量について、前記判定基準を用いて異常有無を判定するステップと、を含む、
設備点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備点検装置、設備点検システムおよび設備点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生産設備に設けられた検出器により検出された生産設備の状態に関するデータを取得し、統計的手法を用いて、取得したデータについての統計量を算出し、算出した統計量に基づいて生産設備の状態を判定する生産設備の解析装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生産設備の点検では、生産設備の動作に連動して変化する物理量の挙動について異常有無を判定することが求められる場合がある。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、設備の動作に連動して変化する物理量に基づいて適切に設備の点検を行うことができる設備点検装置、設備点検システムおよび設備点検方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る設備点検装置は、
設備の動作に連動して変化する複数種類の物理量に基づいて前記設備の異常有無を点検する設備点検装置であって、
予め設定された複数種類の特徴量情報の中から前記設備の異常有無の判定に用いる少なくとも1つの特徴量情報の種類を選択する特徴量選択部と、
前記特徴量選択部により選択された前記少なくとも1つの特徴量情報の種類のうちの少なくとも1種類に対応する前記設備の異常有無の判定に用いる判定基準を設定する判定基準設定部と、
前記設備から出力される前記設備の制御に関する制御情報に基づいて、予め設定された抽出期間内に前記設備に設けられたセンサにより計測される複数種類の物理量それぞれを示す複数の物理量情報を抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された複数の物理量情報に基づいて、複数の物理量情報それぞれに対応し且つ前記特徴量選択部により選択されうる前記複数種類の特徴量情報に対応する特徴量の全てを算出する特徴量算出部と、
算出された複数の物理量情報それぞれに対応する特徴量それぞれを示す前記複数種類の特徴量情報の中から、前記特徴量選択部により選択された少なくとも1種類の特徴量情報が示す特徴量について、前記判定基準を用いて異常有無を判定する判定部と、を備える。
【0008】
他の観点から見た本発明に係る設備点検システムは、
設備の動作に連動して変化する複数種類の物理量に基づいて前記設備の異常有無を点検する設備点検システムであって、
前記設備に設けられ前記設備の動作に連動して変化する複数種類の物理量を計測するセンサと、
予め設定された複数種類の特徴量情報の中から前記設備の異常有無の判定に用いる少なくとも1つの特徴量情報の種類を選択する特徴量選択部と、
前記特徴量選択部により選択された前記少なくとも1つの特徴量情報の種類のうちの少なくとも1種類に対応する前記設備の異常有無の判定に用いる判定基準を設定する判定基準設定部と、
前記設備から出力される前記設備の制御に関する制御情報に基づいて、予め設定された抽出期間内に前記センサにより計測される複数種類の物理量それぞれを示す複数の物理量情報を抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された複数の物理量情報に基づいて、複数の物理量情報それぞれに対応し且つ前記特徴量選択部により選択されうる前記複数種類の特徴量情報に対応する特徴量の全てを算出する特徴量算出部と、
算出された複数の物理量情報それぞれに対応する特徴量それぞれを示す前記複数種類の特徴量情報の中から、前記特徴量選択部により選択された少なくとも1種類の特徴量情報が示す特徴量について、前記判定基準を用いて異常有無を判定する判定部と、を備える。
【0010】
他の観点から見た本発明に係る設備点検方法は、
設備の動作に連動して変化する複数種類の物理量に基づいて前記設備の異常有無を点検する設備点検方法であって、
予め設定された複数種類の特徴量情報の中から前記設備の異常有無の判定に用いる少なくとも1つの特徴量情報の種類を選択するステップと、
選択された前記少なくとも1つの特徴量情報の種類のうちの少なくとも1種類に対応する前記設備の異常有無の判定に用いる判定基準を設定するステップと、
前記設備から出力される前記設備の制御に関する制御情報に基づいて、予め設定された抽出期間内に前記設備に設けられたセンサにより計測される複数種類の物理量それぞれを示す複数の物理量情報を抽出するステップと、
抽出された複数の物理量情報に基づいて、複数の物理量情報それぞれに対応し且つ前記特徴量選択部により選択されうる前記複数種類の特徴量情報に対応する特徴量の全てを算出するステップと、
算出された複数の物理量情報それぞれに対応する特徴量それぞれを示す前記複数種類の特徴量情報の中から、選択された少なくとも1種類の特徴量情報が示す特徴量について、前記判定基準を用いて異常有無を判定するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、抽出部が、設備から出力される設備の制御に関する制御情報に基づいて、予め設定された抽出期間内に設備に設けられたセンサにより計測される複数種類の物理量それぞれを示す複数の物理量情報を抽出する。また、特徴量算出部は、抽出部により抽出された複数の物理量情報に基づいて、複数の物理量情報それぞれに対応し且つ特徴量選択部により選択されうる複数種類の特徴量情報に対応する特徴量の全てを算出する。そして、判定部は、算出された複数の物理量情報それぞれに対応する特徴量それぞれを示す複数種類の特徴量情報の中から、特徴量選択部により選択された少なくとも1種類の特徴量情報が示す特徴量について、判定基準を用いて異常有無を判定する。これにより、設備の動作に連動して変化する物理量の特徴を示す特徴量に基づいて設備の異常有無を判定することができる。従って、設備の動作に連動して変化する物理量に基づいて適切に設備の点検を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る設備点検システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る設備点検装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1に係る設備点検装置の動作説明図である。
【
図4】実施の形態1に係る表示部に表示される画像の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態1に係る設備点検装置が実行する設備点検処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】実施の形態1に係る計測情報が示す計測値の挙動の一例を示す図である。
【
図7】実施の形態2に係る設備点検装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図8】実施の形態2に係る設備点検装置が実行する設備点検処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】実施の形態2に係る異常通知画面画像の一例を示す図である。
【
図10】実施の形態2に係る設備点検装置が実行する判定基準生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図11】変形例に係る設備点検装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図12】変形例に係る設備点検装置が実行する設備点検処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態に係る異常診断システムについて、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る設備点検装置は、設備の動作に連動して変化する物理量に基づいて設備の異常有無を点検する。この設備点検装置は、予め設定された複数種類の特徴量の中から設備の異常有無の判定に用いる少なくとも1つの特徴量の種類を選択する特徴量選択部と、特徴量選択部により選択された特徴量の種類に対応する設備の異常有無の判定に用いる判定基準を設定する判定基準設定部と、を備える。また、設備点検装置は、設備を制御するための制御情報に基づいて、設備に設けられたセンサにより予め設定された抽出期間内に計測される物理量を示す物理量情報を抽出する抽出部と、を備える。更に、設備点検装置は、抽出部により抽出された物理量情報に基づいて、複数種類の特徴量の全てを算出する特徴量算出部と、複数種類の特徴量の中から、特徴量選択部により選択された少なくとも1つの特徴量について、異常有無を判定する判定部と、を備える。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態に係る設備点検装置1は、設備2とネットワーク(図示せず)を介して接続されている。ここで、ネットワークは、例えばインターネットのような広域ネットワークおよび設備2が設置される工場に敷設されたLAN(Local Area Network)を含む。設備2は、例えば回転主軸(図示せず)の先端部に装着されたドリルでワークを穿孔加工するボール盤であり、プログラマブルロジックコントローラ(以下、「PLC」と称する。)21と、センサ22と、を備える。
【0016】
PLC21は、CPU(Central Processing Unit)ユニットと、入出力制御ユニットと、を有し、CPUユニットが入出力制御ユニットを介して設備2に設けられた各種アクチュエータへ制御信号を出力することにより設備2の動作を制御する。また、CPUユニットは、設備2の制御状態を通知するための制御情報を設備点検装置1へ出力する。制御情報には、例えば設備2が繰り返し動作を実行する場合における1サイクルの動作を開始したことを通知する開始情報と、1サイクルの動作が終了したことを通知する終了情報と、が含まれる。
【0017】
センサ22には、例えば設備2がボール盤である場合、振動計22A、電流計22B、油温度計22C、3つの空気圧力計22D、空気流量計22E、油圧計22F、油量計22Gおよび油流量計22Hが含まれる。なお、センサ22の種類はこれらに限定されない。また、
図1では、便宜上、空気圧力計22Dを1つだけ図示しているが実際には3つの空気圧力計22Dを含んでいる。振動計22Aは、例えばボール盤の回転主軸(図示せず)の振動振幅を計測する。電流計22Bは、回転主軸を駆動するモータ(図示せず)へ供給される電流の電流値を計測する。油温度計22Cは、ボール盤へ投入されるワークの加工孔へ供給される切削油の温度を計測する。3つの空気圧力計22Dのうちの1つは、空気圧を利用してワークをクランプするクランプ機構に供給される空気の空気圧を検出する。他の1つの空気圧力計22Dは、ワークのドリルに対向する側に配置された吐出機構から空気を吐出したときにおけるワークのドリル側とは反対側に加わる空気圧を検出する。また、他の1つの空気圧力計22Dは、ワークを保持するエアチャックへ供給される空気圧を検出する。空気流量計22Eは、ワークへ吐出する空気の流量を計測する。油圧計22Fは、油圧を利用してワークをクランプするクランプ機構に供給する油の油圧と、ワークへ切削油を供給する供給経路中に介在するフィルタの前後における油圧と、を計測する。油量計22Gは、ワークへ供給した切削油の量を計測する。油流量計22Hは、ワークへ供給する切削油の単位時間当たりの量を計測する。これらの各センサ22は、設備2の動作中において、計測値を示す計測情報を継続的に設備点検装置1へ出力し続けている。
【0018】
設備点検装置1は、例えばパーソナルコンピュータであり、CPU101と、主記憶部102と、補助記憶部103と、表示部104と、入力部105と、PLCインタフェース106と、センサインタフェース107と、各部を接続するバス109と、を有する。
主記憶部102は、例えばRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリであり、CPU101の作業領域として使用される。補助記憶部103は、磁気ディスク、半導体メモリ等の不揮発性メモリであり、設備点検装置1の各種機能を実現するためのプログラムを記憶する。表示部104は、液晶ディスプレイ、有機ELパネル等を有し、CPU101から入力される情報を表示する。入力部105は、キーボード、タッチパネル等とバス109に接続するためのインタフェースとを有する。入力部105は、ユーザがキーボードまたはタッチパネルを操作することにより入力した各種操作情報を受け付けると、受け付けた各種操作情報をCPU101へ出力する。PLCインタフェース106は、設備2のPLC21にネットワークを介して接続され、PLC21から入力される制御情報をCPU101へ転送する。センサインタフェース107は、センサ22に信号線(図示せず)を介して接続されており、センサ22から入力される計測情報をCPU101へ転送する。
【0019】
CPU101は、補助記憶部103が記憶する前述のプログラムを主記憶部102に読み出して実行することにより、
図2に示すように、抽出部111、特徴量算出部112、判定部113、抽出期間決定部114、特徴量選択部115、判定基準設定部116、表示制御部117および履歴情報生成部118として機能する。また、
図1に示す補助記憶部103は、
図2に示すように、センサ22により計測して得られる計測値を示す計測情報を記憶する計測情報記憶部131と、抽出期間記憶部132と、特徴量算出情報記憶部133と、を有する。また、補助記憶部103は、更に、特徴量を示す特徴量情報を記憶する特徴量記憶部134と、特徴量に対する異常有無の判定基準を示す判定基準情報を記憶する判定基準記憶部135と、異常有無の判定結果を示す判定結果情報を記憶する判定結果記憶部136と、を有する。
【0020】
抽出期間記憶部132は、センサ22から入力される計測情報についての予め設定された抽出期間を示す抽出期間情報を記憶する。特徴量算出情報記憶部133は、計測情報から特徴量を算出する方法を示す特徴量算出情報を記憶する。特徴量算出情報としては、例えば抽出期間内に取得された計測情報が示す計測値の最大値または最小値を特徴量として算出することを指定する情報が含まれる。特徴量記憶部134は、計測情報から算出された特徴量を示す特徴量情報を、特徴量情報の種類を識別する特徴量種類識別情報に対応づけて時系列で記憶する。
【0021】
特徴量選択部115は、ユーザが入力部105を介して入力した特徴量を選択するための入力情報に基づいて、予め設定された複数種類の特徴量情報の中から設備2の異常有無の判定に用いる少なくとも1つの特徴量情報の種類を選択する。特徴量選択部115は、選択した少なくとも1つの特徴量情報の種類を示す特徴量種類情報を判定部113に通知する。
【0022】
判定基準設定部116は、特徴量選択部115により選択された特徴量の種類に対応する設備2の異常有無の判定に用いる判定基準を設定する。判定基準設定部116は、ユーザが入力部105を介して入力した選択した特徴量に対する判定基準を設定するための入力情報に基づいて、ユーザが設定した判定基準を示す判定基準情報を判定基準記憶部2135に記憶させる。
【0023】
抽出部111は、設備2を制御するための制御情報に基づいて、予め設定された抽出期間内に設備2に設けられた各種センサ22により計測される計測情報を抽出する。この計測情報は、各種センサ22により抽出期間内に計測される物理量を示す物理量情報に相当する。ここで、抽出部111は、PLC21から入力される制御情報に基づいて、設備2の繰り返し動作に同期して、前述の抽出期間内にセンサ22により計測される計測値を示す計測情報を抽出する。PLC21から入力される制御情報には、例えば、設備2が繰り返し動作の1サイクルを開始することを通知する開始情報と、繰り返し動作の1サイクルが終了したことを通知する終了情報と、が含まれる。
【0024】
ここで、抽出部111は、例えば
図3に示すように、前述の抽出期間内に、振動計22Aにより計測された振動波形、電流計22Bにより計測された電流値、油温度計22Cにより計測された切削油の温度のそれぞれを示す計測情報を、計測情報記憶部131を介して特徴量算出部112へ渡す。また、抽出部111は、前述の抽出期間内に、空気圧力計22Dにより計測されたワークをクランプする際のクランプ空気圧、ワークのドリル側とは反対側のワーク空気圧、ワークへ吐出する空気の空気流量のそれぞれを示す計測情報を、計測情報記憶部131を介して特徴量算出部112へ渡す。更に、抽出部111は、前述の抽出期間内に、空気圧力計22Dにより計測されたワークをチャックする際のチャック空気圧、油圧計22Fにより計測されたワークをクランプする際のクランプ油圧、油量計22Gにより計測された切削油量のそれぞれを示す計測情報を、計測情報記憶部131を介して特徴量算出部112へ渡す。また、抽出部111は、前述の抽出期間内に、油流量計22Hにより計測された切削油流量、油圧計22Fにより計測されたフィルタ前後の油圧のそれぞれを示す計測情報を、計測情報記憶部131を介して特徴量算出部112へ渡す。
【0025】
図2に戻って、特徴量算出部112は、抽出部111により抽出された計測情報に基づいて、複数種類の特徴量の全てを算出する。特徴量算出部112は、算出した特徴量を示す特徴量情報を、特徴量情報の種類を識別する特徴量種類識別情報に対応づけて時系列で特徴量記憶部134に記憶させる。
【0026】
特徴量算出部112は、例えば
図3に示すように、21種類の特徴量を算出する。ここで、特徴量算出部112は、抽出部111により抽出された振動波形の計測情報から振動波形の最大値、振動波形の最小値それぞれを特徴量として算出する。ここで、振動波形の最大値は、ボール盤の回転主軸の偏心揺動または破損の有無を確認する指標となり、振動波形の最小値は、ワークの2度加工の有無を確認する指標となる。また、特徴量算出部112は、抽出部111により抽出された電流値の計測情報から電流最大値、電流最小値を特徴量として算出する。ここで、電流最大値は、ドリルの欠損の有無、回転主軸を装置本体に連結するための軸受の摩耗または潤滑油の不足有無を確認する指標となり、電流最小値は、ワークの2度加工の有無を確認する指標となる。更に、特徴量算出部112は、抽出部111により抽出された切削油の温度の計測情報から切削油の最高温度、最低温度を特徴量として算出する。ここで、切削油の最高温度は、切削油の温度上昇によるドリルの溶着を防止できる温度を管理するための指標となり、切削油の最低温度は、切削油の温度低下に伴う切削油の粘性増大による動作不良を防止できる温度を管理するための指標となる。
【0027】
また、特徴量算出部112は、抽出部111により抽出されたワークをクランプする際のクランプ空気圧を示す計測情報からクランプ空気圧の最大値、最小値を特徴量として算出する。ここで、クランプ空気圧の最大値は、ワークの面がクランプ機構に密着しているか否かを確認する指標となり、クランプ空気圧の最小値は、クランプ機構に設けられた吸着孔の目詰まりの有無を確認する指標となる。更に、特徴量算出部112は、ワークのドリル側とは反対側のワーク空気圧を示す計測情報からワーク空気圧の最大値、最小値を特徴量として算出する。ここで、ワーク空気圧の最大値は、未加工のワークに貫通孔を形成する際にワークが未加工であるか否かを確認する指標となり、ワーク空気圧の最小値は、貫通孔が形成されたワークについて貫通孔が規定通りに形成されているか否かを確認する指標となる。また、ワーク空気圧の最小値は、ワークの入れ替え中の場合、前述の吐出機構に設けられた吐出孔の目詰まりの有無を確認する指標となる。また、特徴量算出部112は、抽出部111により抽出されたワークへ吐出する空気の空気流量を示す計測情報から空気流量の最大値を特徴量として算出する。ここで、空気流量の最大値は、ドリルの先端部が規定の位置まで到達しているか否かを確認する指標となる。
【0028】
更に、特徴量算出部112は、抽出部111により抽出されたワークをチャックする際のチャック空気圧を示す計測情報からチャック空気圧の最大値、最小値を特徴量として算出する。ここで、チャック空気圧の最大値は、ワークが予め設定された圧力で正常にチャックされているか否かを確認する指標となり、チャック空気圧の最小値は、チャックの吸着孔の目詰まりの有無を確認する指標となる。また、特徴量算出部112は、抽出部111により抽出されたワークをクランプする際のクランプ油圧を示す計測情報からクランプ油圧の最大値、最小値を特徴量として算出する。ここで、クランプ油圧の最大値は、ワークが予め設定された圧力で正常にクランプされているか否かを確認する指標となり、クランプ油圧の最小値は、クランプ機構が正常にワークを開放できているか否かを確認する指標となる。更に、特徴量算出部112は、抽出部111により抽出された切削油量を示す計測情報から切削油量の最大値、最小値を特徴量として算出する。ここで、ワーク加工中における切削油量の最小値は、切削油が適量ワークへ供給されているか否かを確認する指標となり、ワーク加工を停止しているときの切削油量の最大値は、切削油が過度にワークへ供給されていないか否かを確認する指標となる。また、特徴量算出部112は、抽出部111により抽出された切削油流量の最大値、最小値を特徴量として算出する。ここで、切削油流量の最大値、最小値は、切削油を供給する供給路の目詰まりの有無を確認する指標となる。更に、特徴量算出部112は、抽出部111により抽出された切削油を供給する供給路中に介在するフィルタの前後の油圧を示す計測情報からフィルタ前後の油圧の油圧差の最大値、最小値を特徴量として算出する。ここで、フィルタ前後の油圧差の最大値、最小値は、フィルタの目詰まりの有無或いはフィルタをフラッシングした後のフィルタの状態を確認する指標となる。
【0029】
図2に戻って、判定部113は、複数種類の特徴量情報の中から、特徴量選択部115により選択された少なくとも1つの特徴量情報について、異常有無を判定する。判定部2113は、異常有無を判定した判定結果を示す判定結果情報を判定結果記憶部136に記憶させる。特徴量選択部115が、例えば、特徴量情報として、クランプ空気圧の最大値、最小値、ワーク空気圧の最大値、最小値、空気流量の最大値、最小値、空気流量最大値、チャック空気圧最大値、最小値、クランプ油圧最大値、最小値およびフィルタ前後油圧差最大値、最小値を示す11種類の特徴量情報を選択したとする。この場合、
図3に示すように、特徴量記憶部134から前述の11種類の特徴量情報を取得し、これらについてのみ異常有無の判定を実行する。
【0030】
図2に戻って、履歴情報生成部118は、複数種類の特徴量情報それぞれが示す特徴量の履歴と、複数種類の特徴量情報それぞれについての異常有無の判定結果を示す判定結果情報の履歴と、を示す履歴情報を生成する。履歴情報生成部118は、生成した履歴情報を表示制御部117へ出力する。判定結果出力部119は、判定結果記憶部136が記憶する特徴量選択部115により選択された種類の特徴量情報についての判定結果情報を表示制御部117へ出力する。
【0031】
表示制御部117は、判定結果出力部119から入力される判定結果情報に基づいて、異常有無の判定結果を示す操作画面画像を表示部104に表示させる。表示制御部117は、履歴情報生成部118により生成された履歴情報を表示部に表示させる。ここで、表示制御部117は、例えば
図4に示すような、特徴量の履歴と判定結果の履歴とを表す履歴通知画像GA1を表示部104に表示させる。
【0032】
次に、本実施の形態に係る設備点検装置1が実行する設備点検処理について
図5および
図6を参照しながら説明する。この設備点検処理は、設備点検装置1へ電源が投入された後、設備点検装置1において設備2を点検するための操作が行われたことを契機として開始される。また、設備2は、繰り返し動作を実行するものとし、PLC21が、繰り返し動作の開始時に開始情報を設備点検装置1へ出力するものする。また、PLC21は、繰り返し動作の1サイクルが完了した時に終了情報を設備点検装置1へ出力するものとする。更に、抽出期間記憶部132は、センサ22から入力される計測情報の抽出期間を示す抽出期間情報として、PLC21から開始情報が入力された後、PLC21から終了情報が入力されるまでの期間を示す抽出期間情報を記憶しているものとする。
【0033】
まず、
図5に示すように、抽出部111は、抽出期間記憶部132が記憶する抽出期間情報に基づいて、PLC21から開始情報が入力されたか否かを判定する(ステップS101)。抽出部111は、開始情報が入力されない限り(ステップS101:No)、待機状態を維持する。一方、抽出部111は、開始情報が入力されると(ステップS101:Yes)、センサ22から継続的に設備点検装置1へ入力される計測情報を取得する(ステップS102)。ここで、抽出部111は、取得した計測情報を時系列で計測情報記憶部131に記憶させていく。次に、抽出部111は、PLC21から終了情報が入力されたか否かを判定する(ステップS103)。抽出部111は、終了情報が未だ入力されていないと判定すると(ステップS103:No)、再びステップS102の処理を実行する。即ち、抽出部111は、PLC21から設備点検装置1へ開始情報が入力された後、PLC21から終了情報が入力されない限り、センサ22から継続的に入力される計測情報を繰り返し取得し続ける。
【0034】
一方、抽出部111は、終了情報が入力されたと判定すると(ステップS103:Yes)、計測情報の取得を停止する。このようにして、抽出部111は、センサ22から継続的に入力される計測情報の中から、PLC21から開始情報が入力された後、終了情報が入力されるまでの間の抽出期間内に設備点検装置1へ入力される計測情報を抽出する。例えば
図6に示すように、センサ22が空気圧力計22Dである場合、抽出部111は、PLC21から開始情報が入力された時刻Tsから終了情報が入力された時刻Teまでの間の抽出期間△T内に空気圧力計22Dにより計測された圧力値Pの推移を示す計測情報を抽出する。
【0035】
図5に戻って、続いて、特徴量算出部112は、特徴量算出情報記憶部133が記憶する特徴量算出情報に基づいて、計測情報記憶部131が記憶する抽出期間内に取得された計測情報から特徴量を算出する(ステップS104)。例えば特徴量算出情報が、抽出期間内に取得された計測情報が示す計測値の最大値または最小値を特徴量として算出することを示しているとする。この場合、特徴量算出部112は、例えば
図6に示すように、抽出期間△T内に空気圧力計22Dにより計測された圧力値Pの最大値Pmaxまたは最小値Pminを特徴量として算出する。また、特徴量算出部112は、算出した特徴量を示す特徴量情報を特徴量記憶部134に記憶させる。
【0036】
図5に戻って、その後、判定部113は、特徴量選択部115から通知される特徴量種類情報に基づいて、異常有無判定対象の特徴量情報の種類を特定する(ステップS105)。次に、判定部113は、特定した特徴量の種類に基づいて、判定基準記憶部135から判定基準情報を取得するとともに、特徴量記憶部134から特徴量情報を取得する。そして、判定部113は、取得した特徴量情報が示す特徴量と、取得した判定基準情報が示す判定基準と、を比較して、設備2における異常有無を判定する(ステップS106)。判定部113は、判定結果を示す判定結果情報を判定結果記憶部136に記憶させる。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態に係る設備点検装置1では、抽出部111が、設備2を制御するための制御情報に基づいて、予め設定された抽出期間内にセンサ22により計測される計測値を示す計測情報を抽出する。また、特徴量算出部112は、抽出部111により抽出された計測情報に基づいて、複数種類の特徴量の全てを算出する。そして、判定部113は、複数種類の特徴量の中から、特徴量選択部115により選択された特徴量について、異常有無を判定する。これにより、設備2の動作に連動して変化するセンサ22による計測値の特徴を示す特徴量に基づいて設備2の異常有無を判定することができる。従って、設備2の動作に連動して変化する計測値に基づいて適切に設備2の点検を行うことができる。
【0038】
また、本実施の形態に係る特徴量算出部112は、抽出部111により抽出された計測情報に基づいて、予め設定された複数種類の特徴量の全てを算出する。これにより、特徴量選択部115が選択する特徴量情報の種類を変更した場合、判定部113は、既に算出され特徴量記憶部134に記憶されている複数種類の特徴量情報の中から、変更後の種類の特徴量情報を取得できる。従って、特徴量選択部115が選択する特徴量情報の種類を変更した場合において、変更後の特徴量情報を算出する処理を実行する必要がないので、その分、変更後の特徴量情報について迅速に異常有無の判定を実行できる。
【0039】
更に、本実施の形態に係る履歴情報生成部118は、複数種類の特徴量情報それぞれが示す特徴量の履歴と、複数種類の特徴量情報それぞれについての異常有無の判定結果を示す判定結果情報の履歴と、を示す履歴情報を生成する。そして、表示制御部117が、履歴情報生成部118により生成された履歴情報を表示部104に表示させる。これにより、複数種類の特徴量の挙動と異常判定の有無との相関関係を把握し易くなるので、その分、設備2の異常原因を究明し易くなるという利点がある。
【0040】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る設備点検装置は、複数種類の特徴量情報それぞれの履歴に基づいて、複数種類の特徴量情報それぞれについての異常有無の判定基準を生成する判定基準生成部を備える点で実施の形態1に係る設備点検装置と相違する。そして、判定部は、複数種類の特徴量情報のうち、特徴量選択部により選択された少なくとも1つの特徴量情報以外の特徴量情報についても、判定基準生成部により生成された判定基準に基づいて、異常有無を判定する。
【0041】
図7に示す本実施の形態に係る設備点検装置2001は、実施の形態1に係る設備点検装置1と同様に、例えばパーソナルコンピュータであり、CPUと主記憶部と補助記憶部と表示部と入力部とPLCインタフェースとセンサインタフェースとバスとを有する。そして、CPUが、補助記憶部が記憶するプログラムを主記憶部に読み出して実行することにより、
図7に示すように、抽出部111、特徴量算出部112、判定部2113、抽出期間決定部114、特徴量選択部115、判定基準設定部116、表示制御部117、履歴情報生成部118、判定結果出力部2119、判定基準生成部2120および異常通知部2121として機能する。また、補助記憶部は、計測情報記憶部131と抽出期間記憶部132と特徴量算出情報記憶部133と特徴量記憶部134と判定基準記憶部2135と判定結果記憶部2136と、を有する。なお、
図7において、実施の形態1と同様の構成については
図2と同一の符号を付している。
【0042】
判定基準記憶部2135は、予め設定された複数種類の特徴量情報の全てについての判定基準情報を記憶する。判定結果記憶部2136は、複数種類の特徴量情報の全てについての異常有無の判定結果を示す判定結果情報を記憶する。
【0043】
判定部2113は、複数種類の特徴量情報の全てについて、異常有無を判定する。判定部2113は、異常有無を判定した判定結果を示す判定結果情報を判定結果記憶部2136に記憶させる。
【0044】
次に、本実施の形態に係る設備点検装置2001が実行する設備点検処理について
図8および
図9を参照しながら説明する。この設備点検処理は、設備点検装置2001へ電源が投入された後、設備点検装置2001において設備2を点検するための操作が行われたことを契機として開始される。また、PLC21は、実施の形態1と同様に開始情報および終了情報を設備点検装置2001へ出力するものとする。更に、抽出期間記憶部132は、実施の形態1と同様の抽出期間情報を記憶しているものとする。
【0045】
まず、ステップS2101からS2104までの一連の処理が実行される。このステップS2101からS2104までの一連の処理は、実施の形態1で説明したステップS101からS104までの一連の処理と同様である。次に、判定部2113は、特徴量算出部112により算出された特徴量情報の全てについて、異常有無判定対象の特徴量情報の種類を特定する(ステップS2105)。続いて、判定結果出力部2119および異常通知部2121は、特徴量選択部115から通知される特徴量種類情報に基づいて、異常有無判定対象に設定された特徴量情報の種類を特定する(ステップS2106)。
【0046】
その後、判定結果出力部2119および異常通知部2121は、判定結果記憶部2136を参照して、特定した種類以外の特徴量情報について異常有りと判定されているか否かを判定する(ステップS2107)。判定結果出力部2119が、特定した種類以外の特徴量情報について異常有りと判定されていないと判定したとする(ステップS2107:No)。この場合、判定結果出力部2119は、特定した種類の特徴量情報についての判定結果情報を判定結果記憶部2136から取得して表示制御部117へ出力する(ステップS2108)。一方、異常通知部2121は、特定した種類以外の特徴量情報について異常有りと判定されたと判定すると(ステップS2107:No)、異常有りと判定された特徴量情報をユーザに通知する異常通知情報を生成して表示制御部117へ出力する(ステップS2109)。
【0047】
このとき、表示制御部117は、異常通知情報が入力されると、例えば
図9に示すような異常通知画像GA2を表示部104に表示させる。ここで、ユーザが、表示部104に表示された異常通知画像GA2を見ながら、入力部105を介して「Yes」を選択したとする。この場合、ユーザが異常と看做すと判断したことを示すユーザ判断情報が、判定基準生成部2120へ入力される。一方、ユーザが、表示部104に表示された異常通知画像GA2を見ながら、入力部105を介して「No」を選択したとする。この場合、ユーザが正常と看做すと判断したことを示すユーザ判断情報が、判定基準生成部2120へ入力される。
図8に戻って、ステップS2109の処理が実行された後、ステップS2108の処理が実行される。
【0048】
次に、本実施の形態に係る設備点検装置2001が実行する判定基準生成処理について
図10を参照しながら説明する。この判定基準生成処理は、前述の設備点検処理と並行して実行される。また、判定基準記憶部2135は、ユーザにより判定基準が設定された特徴量情報の種類以外の種類の特徴量情報について予め判定基準の初期値を示す判定基準情報を記憶しているものとする。
【0049】
まず、判定基準生成部2120は、特徴量記憶部134が記憶する特徴量情報が新たに生成されたか否かを判定する(ステップS201)。判定基準生成部2120は、特徴量情報が新たに生成されない限り(ステップS201:No)、待機状態を維持する。一方、判定基準生成部2120は、特徴量情報が新たに生成されたと判定すると(ステップS201:Yes)、判定基準記憶部2135から判定基準情報を取得する(ステップS202)。次に、判定基準生成部2120は、新たに生成された特徴量が取得した判定基準情報が示す判定基準を満たすか否かを判定する(ステップS203)。ここで、判定基準生成部2120が、新たに生成された特徴量が取得した判定基準情報が示す判定基準を満たすと判定すると(ステップS203:Yes)、後述のステップS205の処理が実行される。
【0050】
一方、判定基準生成部2120が、新たに生成された特徴量が取得した判定基準情報が示す判定基準を満たさないと判定したとする(ステップS203:No)。この場合、判定基準生成部2120は、ユーザが入力部105を介して入力したユーザ判断情報を取得する(ステップS204)。続いて、判定基準生成部2120は、取得したユーザ判断情報が異常と看做すと判断したことを示しているか否かを判定する(ステップS205)。ここで、判定基準生成部2120が、ユーザ判断情報が異常と看做すと判断したことを示していると判定すると(ステップS205:Yes)、再びステップS201の処理が実行される。
【0051】
一方、判定基準生成部2120が、ユーザ判断情報が正常と看做すと判断したことを示していると判定すると(ステップS205:No)、新たに生成された特徴量情報を含む過去の特徴量情報それぞれが示す特徴量の標準偏差を算出する(ステップS206)。その後、判定基準生成部2120は、算出した標準偏差に基づいて判定基準を算出する(ステップS207)。次に、判定基準生成部2120は、算出した判定基準を示す判定基準情報で判定基準記憶部2135が記憶する判定基準情報を更新する(ステップS208)。続いて、再びステップS201の処理が実行される。
【0052】
以上説明したように、本実施の形態に係る設備点検装置2001では、判定基準生成部2120が、複数種類の特徴量情報それぞれの履歴に基づいて、複数種類の特徴量情報それぞれについての異常有無の判定基準を生成する。そして、判定部2113は、複数種類の特徴量情報のうち、特徴量選択部115により選択された特徴量情報以外の特徴量情報について、判定基準生成部2120により生成された判定基準に基づいて、異常有無を判定する。これにより、特徴量選択部115により選択された特徴量情報では異常が発生していないが、特徴量選択部115により選択された特徴量情報の種類以外の種類の特徴量情報について異常が発生している場合にその異常を検知することができる。従って、特徴量選択部115により選択された特徴量情報の種類以外の種類の特徴量情報について異常が発生している状態が放置されることによる設備2の不具合の発生を抑制できる。
【0053】
また、本実施の形態に係る設備点検装置2001では、判定基準生成部2120が、過去に取得した複数の特徴量情報それぞれの履歴に基づいて、複数の特徴量情報それぞれについての異常有無の判定基準を更新していく。これにより、設備2の状態が経時変化する場合においても判定基準を適正に維持することができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、
図11に示す設備点検装置3001のように、特徴量算出部3112が、特徴量設定部3115により設定された特徴量情報の種類に対応する特徴量のみを算出するものであってもよい。ここで、特徴量設定部3115は、設定された特徴量情報の種類を示す特徴量種類情報を特徴量算出部3112へ通知する。この場合、特徴量記憶部3134は、特徴量設定部3115により設定された種類の特徴量情報のみを記憶する。そして、判定部3113は、特徴量記憶部3134が記憶する、特徴量設定部3115により設定された種類の特徴量情報についてのみ異常有無の判定を実行する。
【0055】
次に、本変形例に係る設備点検装置3001が実行する設備点検処理について
図12を参照しながら説明する。この設備点検処理は、設備点検装置2001へ電源が投入された後、設備点検装置2001において設備2を点検するための操作が行われたことを契機として開始される。また、PLC21は、実施の形態1と同様に開始情報および終了情報を設備点検装置2001へ出力するものとする。更に、抽出期間記憶部132は、実施の形態1と同様の抽出期間情報を記憶しているものとする。
【0056】
まず、ステップS3101からS3103までの一連の処理が実行される。このステップS3101からS3103までの一連の処理は、実施の形態1で説明したステップS101からS103までの一連の処理と同様である。次に、特徴量算出部3112は、特徴量選択部3115から通知される特徴量種類情報に基づいて、異常有無判定対象に設定された特徴量情報の種類を特定する(ステップS3104)。続いて、特徴量算出部3112は、特徴量算出情報記憶部133が記憶する特徴量算出情報に基づいて、計測情報記憶部131が記憶する計測情報から、特定された種類の特徴量情報に対応する特徴量を算出する(ステップS3105)。その後、判定部3113は、特徴量算出部3112により算出された特徴量情報について、異常有無の判定を実行する(ステップS3106)。次に、判定結果出力部119は、判定部3113により異常有無が判定された結果を示す判定結果情報を表示制御部117へ出力する(ステップS3107)。
【0057】
本構成によれば、特徴量算出部3112が算出する特徴量を低減することができるので、その分、設備点検装置3001における処理負荷を軽減することができる。
【0058】
実施の形態2に係る設備点検装置2001において、判定基準設定部116および特徴量選択部115を備えない構成であってもよい。この場合、判定部2113は、判定基準生成部2120により生成された判定基準のみと特徴量情報が示す特徴量とを比較することにより、異常有無を判定するようにすればよい。本構成によれば、ユーザが設備2の異常有無の判定に採用する特徴量を選択したり、選択した特徴量に対する判定基準を設定したりする手間を省略することができるという利点がある。
【0059】
各実施の形態では、特徴量選択部115が、予め設定された複数種類の特徴量情報の中から設備2の異常有無の判定に用いる少なくとも1つの特徴量情報の種類を選択し、判定基準設定部116が、特徴量選択部115により選択された特徴量の種類に対応する設備2の異常有無の判定に用いる判定基準を設定する例について説明した。但し、これに限らず、例えば、判定基準設定部116が、特徴量選択部115により選択された少なくとも1つの特徴量情報の種類のうちの少なくとも1種類に対応する設備の異常有無の判定に用いる判定基準を設定するものであってもよい。即ち、特徴量選択部115が、予め設定された複数種類の特徴量情報の中からN(Nは2以上の整数)種類の特徴量情報の種類を選択し、判定基準設定部116が、特徴量選択部115により選択されたN種類の中から選択される(N-1)種類以下の特徴量に対応する判定基準を設定するものであってもよい。
【0060】
各実施の形態では、ボール盤の設備点検を行うための設備点検装置1、2001の例について説明したが、点検対象はボール盤に限定されるものではなく、ホーニング加工装置並びにその他の設備の点検を行うためのものであってもよい。
【0061】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、設備の定期点検に用いる設備点検装置として好適である。
【符号の説明】
【0063】
1,2001,3001:設備点検装置、2:設備、21:PLC、22:センサ、22A:振動計、22B:電流計、22C:油温度計、22D:空気圧力計、22E:空気流量計、22F:油圧計、22G:油量計、22H:油流量計、101:CPU、102:主記憶部、103:補助記憶部、104:表示部、105:入力部、106:PLCインタフェース、107:センサインタフェース、109:バス、111:抽出部、112,3112:特徴量算出部、113,2113,3113:判定部、114:抽出期間設定部、115,3115:特徴量選択部、116:判定基準設定部、117:表示制御部、118:履歴情報生成部、119,2119:判定結果出力部、131:計測情報記憶部、132:抽出期間記憶部、133:特徴量算出情報記憶部、134,3134:特徴量記憶部、135,2135:判定基準記憶部、136,2136:判定結果記憶部、2120:判定基準生成部、2121:異常通知部、GA1:履歴通知画像、GA2:異常通知画像