(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
F16B 2/10 20060101AFI20230629BHJP
F16L 23/04 20060101ALI20230629BHJP
F16B 21/04 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
F16B2/10 Z
F16L23/04
F16B21/04 H
(21)【出願番号】P 2019182914
(22)【出願日】2019-10-03
【審査請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000138037
【氏名又は名称】株式会社メテク
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中川 正樹
(72)【発明者】
【氏名】石橋 和敏
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-295822(JP,A)
【文献】特開2016-046898(JP,A)
【文献】実開昭58-111420(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0089688(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 2/00- 2/26
21/00-43/02
F16L 23/00-25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体が環状で、一か所を除いて互いに回動自在に連結された円弧状の複数の開閉部を有し、前記一か所の非連結部分から前記開閉部を開閉してクランプ対象物を把持可能な把持部材と、
環状で、前記把持部材に対し軸方向から嵌め込んで前記把持部材の把持状態を保持する保持部材と、
前記把持部材と前記保持部材を互いに固定する固定機構と、を備え、
前記把持部材は、環状外周面に複数の第1の突条部が周方向に沿って断続的に形成されたボルト構造を有し、
前記保持部材は、環状内周面に複数の第2の突条部が周方向に沿って断続的に形成されたナット構造を有し、
前記第1の突条部と前記第2の突条部は、軸方向から見て周方向に互いに干渉しない非干渉位置に配置可能に形成され、
前記保持部材が前記把持部材に前記非干渉位置で軸方向に嵌め込まれ、その状態から周方向に回転することにより、前記第1の突条部と前記第2の突条部が互いに螺合し、前記保持部材が前記把持部材の把持状態を保持し、前記固定機構により前記保持部材と前記把持部材が互いに固定される、クランプ装置。
【請求項2】
前記固定機構は、前記非干渉位置からの前記保持部材の周方向の60°以下の回転により、前記保持部材と前記把持部材が互いに固定されるように構成されている、請求項1に記載のクランプ装置。
【請求項3】
前記第1の突条部と前記第2の突条部は、周方向の数が等しく、周方向に一定の間隔をおいて等間隔に設けられている、請求項1又は2に記載のクランプ装置。
【請求項4】
前記第1の突条部同士の隙間の幅は、前記第2の突条部の周方向の長さよりも大きく、前記第2の突条部同士の隙間の幅は、前記第1の突条部の周方向の長さよりも大きい、請求項3に記載のクランプ装置。
【請求項5】
前記第1の突条部と前記第2の突条部は、各々が軸方向に複数形成されている、請求項1~4のいずれかに記載のクランプ装置。
【請求項6】
前記固定機構は、前記保持部材の外周面に周方向に沿って設けられた複数の突起と、前記把持部材に設けられ、前記保持部材の周方向の回転により前記突起が入り係止される係止部とを有する、請求項1~5のいずれかに記載のクランプ装置。
【請求項7】
前記突起は、前記保持部材の外周面の周方向に沿って前記第2の突条部に対応する位置に設けられている、請求項6に記載のクランプ装置。
【請求項8】
前記係止部は、前記把持部材の周方向の対向する少なくとも2か所に設けられている、請求項6又は7に記載のクランプ装置。
【請求項9】
全体が環状で、一か所を除いて互いに回動自在に連結された円弧状の複数の開閉部を有し、前記一か所の非連結部分から前記開閉部を開閉してクランプ対象物を把持可能な把持部材と、
環状で、前記把持部材に対し軸方向から嵌め込んで前記把持部材の把持状態を保持する保持部材と、
前記把持部材と前記保持部材を互いに固定する固定機構と、を備え、
前記把持部材は、環状外周面に複数の第1の突条部が周方向に沿って断続的に形成されたボルト構造を有し、
前記保持部材は、環状内周面に複数の第2の突条部が周方向に沿って断続的に形成されたナット構造を有し、
前記把持部材と前記保持部材は、前記保持部材が前記把持部材に軸方向に嵌め込まれ、その状態から周方向に回転することにより、前記第1の突条部と前記第2の突条部が互いに螺合し、前記保持部材が前記把持部材の把持状態を保持するように構成され、
前記固定機構は、前記保持部材に対し周方向に回転できないように固定され、軸方向に移動自在に設けられたロック部材を有し、前記ロック部材が軸方向の前記把持部材に近づく方向に移動したときに前記把持部材に嵌合して前記保持部材が前記把持部材に対して固定され、前記ロック部材が前記把持部材から離れる方向に移動したときに前記把持部材から外れて前記把持部材に対する前記保持部材の固定が解除されるように構成されている、クランプ装置。
【請求項10】
前記固定機構は、前記把持部材において前記把持部材の軸方向に延在し、前記把持部材の周方向に並べて設けられた溝部を有し、
前記ロック部材は、前記溝部に嵌合可能な凸部を有し、軸方向の前記把持部材に近づく方向に移動したときに前記凸部が前記把持部材の溝部に嵌合して前記把持部材に対する前記保持部材の回転を止め、前記把持部材から離れる方向に移動したときに前記凸部が前記把持部材の溝部から外れて前記把持部材に対する前記保持部材の回転を許容するように構成されている、請求項9に記載のクランプ装置。
【請求項11】
前記固定機構は、前記ロック部材の前記把持部材から離れる方向への移動を規制及び規制解除する規制部材を、さらに有する、請求項9又は10に記載のクランプ装置。
【請求項12】
前記規制部材は、前記ロック部材と軸方向に一体的に移動可能であり、なおかつ前記ロック部材に対し径方向に弾性変形可能な係止部を有し、
前記固定機構は、前記把持部材に設けられ、前記規制部材の係止部が係止される被係止部を有し、前記ロック部材が軸方向の前記把持部材に近づく方向に移動したときに、前記規制部材の係止部が前記被係止部に係止されることで前記ロック部材の前記把持部材から軸方向に離れる方向への移動を止め、前記規制部材の係止部が前記ロック部材の径方向に弾性変形して前記被係止部に対する係止が外れることで前記ロック部材の前記把持部材から軸方向に離れる方向への移動を許容するように構成されている、請求項11に記載のクランプ装置。
【請求項13】
前記第1の突条部と前記第2の突条部は、軸方向から見て周方向に互いに干渉しない非干渉位置に配置可能に形成され、
前記保持部材が前記把持部材に前記非干渉位置で軸方向に嵌め込まれ、その状態から周方向に回転することにより、前記第1の突条部と前記第2の突条部が互いに螺合し、前記保持部材が前記把持部材の把持状態を保持するように構成された、請求項9~12のいずれかに記載のクランプ装置。
【請求項14】
前記把持部材と前記保持部材の間に介在される弾性リングを、さらに備えた、請求項1~13のいずれかに記載のクランプ装置。
【請求項15】
前記弾性リングは、前記把持部材の軸方向の前記保持部材側の端面に取り付け可能であり、
前記把持部材は、その内周面に軸方向に延びる溝部を有し、
前記弾性リングは、前記把持部材の内周面の前記溝部に挿入自在は脚部を有する、請求項14に記載のクランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液製剤や血液などの液体の浄化処理等に用いられる中空糸膜モジュールは、複数の通液部を備えている。通液部は、一般的に、径の広がったフランジ形状の先端(フェルール部)を備えている。この種の中空糸膜モジュールは、通常は出荷前に滅菌処理が行われるが、この際、通液部の先端は、キャップにより閉鎖され、通液部の先端とキャップは、クランプ装置により把持され封止される。
【0003】
従来のクランプ装置には、例えば2つの円弧状のクランプ部を閉じて、そのクランプ部の一方から他方に亘ってレバーを下し、そのレバーに設けられたねじを締めて把持するものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようなクランプ装置は、高温下で行われる滅菌処理時のクランプ部等の熱膨張により、ねじの締め付け力が低下することがある。この場合、例えば出荷時の輸送の際に継続的な振動や大きな衝撃が加わると、クランプ部がクランプ対象物から外れる恐れがある。このため、滅菌処理後には、滅菌袋の上からクランプ部のねじを締めなおす作業が必要であった。
【0006】
本出願はかかる点に鑑みてなされたものであり、締め付け後の締め付け力の低下を防止することができるクランプ装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、クランプ装置が、把持部材と、環状で把持部材に対し軸方向から嵌め込んで把持部材の把持状態を保持する保持部材と、把持部材と保持部材を互いに固定する固定機構とを備えることにより、上記問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の態様を含む。
(1)全体が環状で、一か所を除いて互いに回動自在に連結された円弧状の複数の開閉部を有し、前記一か所の非連結部分から前記開閉部を開閉してクランプ対象物を把持可能な把持部材と、環状で、前記把持部材に対し軸方向から嵌め込んで前記把持部材の把持状態を保持する保持部材と、前記把持部材と前記保持部材を互いに固定する固定機構と、を備え、前記把持部材は、環状外周面に複数の第1の突条部が周方向に沿って断続的に形成されたボルト構造を有し、前記保持部材は、環状内周面に複数の第2の突条部が周方向に沿って断続的に形成されたナット構造を有し、前記第1の突条部と前記第2の突条部は、軸方向から見て周方向に互いに干渉しない非干渉位置に配置可能なように形成され、前記保持部材が前記把持部材に前記非干渉位置で軸方向に嵌め込まれ、その状態から周方向に回転することにより、前記第1の突条部と前記第2の突条部が互いに螺合し、前記保持部材が前記把持部材の把持状態を保持し、前記固定機構により前記保持部材と前記把持部材が互いに固定される、クランプ装置。
(2)前記固定機構は、前記非干渉位置からの前記保持部材の周方向の60°以下の回転により、前記保持部材と前記把持部材が互いに固定されるように構成されている、(1)に記載のクランプ装置。
(3)前記第1の突条部と前記第2の突条部は、周方向の数が等しく、周方向に一定の間隔をおいて等間隔に設けられている、(1)又は(2)に記載のクランプ装置。
(4)前記第1の突条部同士の隙間の幅は、前記第2の突条部の周方向の長さよりも大きく、前記第2の突条部同士の隙間の幅は、前記第1の突条部の周方向の長さよりも大きい、(3)に記載のクランプ装置。
(5)前記第1の突条部と前記第2の突条部は、各々が軸方向に複数形成されている、(1)~(4)のいずれかに記載のクランプ装置。
(6)前記固定機構は、前記保持部材の外周面に周方向に沿って設けられた複数の突起と、前記把持部材に設けられ、前記保持部材の周方向の回転により前記突起が入り係止される係止部とを有する、(1)~(5)のいずれかに記載のクランプ装置。
(7)前記突起は、前記保持部材の外周面の周方向に沿って前記第2の突条部に対応する位置に設けられている、(6)に記載のクランプ装置。
(8)前記係止部は、前記把持部材の周方向の対向する2か所に設けられている、(6)又は(7)に記載のクランプ装置。
(9)全体が環状で、一か所を除いて互いに回動自在に連結された円弧状の複数の開閉部を有し、前記一か所の非連結部分から前記開閉部を開閉してクランプ対象物を把持可能な把持部材と、環状で、前記把持部材に対し軸方向から嵌め込んで前記把持部材の把持状態を保持する保持部材と、前記把持部材と前記保持部材を互いに固定する固定機構と、を備え、前記把持部材は、環状外周面に複数の第1の突条部が周方向に沿って断続的に形成されたボルト構造を有し、前記保持部材は、環状内周面に複数の第2の突条部が周方向に沿って断続的に形成されたナット構造を有し、前記把持部材と前記保持部材は、前記保持部材が前記把持部材に軸方向に嵌め込まれ、その状態から周方向に回転することにより、前記第1の突条部と前記第2の突条部が互いに螺合し、前記保持部材が前記把持部材の把持状態を保持するように構成され、前記固定機構は、前記保持部材に対し周方向に回転できないように固定され、軸方向に移動自在に設けられたロック部材を有し、前記ロック部材が軸方向の前記把持部材に近づく方向に移動したときに前記把持部材に嵌合して前記保持部材が前記把持部材に対して固定され、前記ロック部材が前記把持部材から離れる方向に移動したときに前記把持部材から外れて前記把持部材に対する前記保持部材の固定が解除されるように構成されている、クランプ装置。
(10)前記固定機構は、前記把持部材において前記把持部材の軸方向に延在し、前記把持部材の周方向に並べて設けられた溝部を有し、前記ロック部材は、前記溝部に嵌合可能な凸部を有し、軸方向の前記把持部材に近づく方向に移動したときに前記凸部が前記把持部材の溝部に嵌合して前記把持部材に対する前記保持部材の回転を止め、前記把持部材から離れる方向に移動したときに前記凸部が前記把持部材の溝部から外れて前記把持部材に対する前記保持部材の回転を許容するように構成されている、(9)に記載のクランプ装置。
(11)前記固定機構は、前記ロック部材の前記把持部材から離れる方向への移動を規制及び規制解除する規制部材を、さらに有する、(9)又は(10)に記載のクランプ装置。
(12)前記規制部材は、前記ロック部材と軸方向に一体的に移動可能であり、なおかつ前記ロック部材に対し径方向に弾性変形可能な係止部を有し、前記固定機構は、前記把持部材に設けられ、前記規制部材の係止部が係止される被係止部を有し、前記ロック部材が軸方向の前記把持部材に近づく方向に移動したときに、前記規制部材の係止部が前記被係止部に係止されることで前記ロック部材の前記把持部材から軸方向に離れる方向への移動を止め、前記規制部材の係止部が前記ロック部材の径方向に弾性変形して前記被係止部に対する係止が外れることで前記ロック部材の前記把持部材から軸方向に離れる方向への移動を許容するように構成されている、(11)に記載のクランプ装置。
(13)前記第1の突条部と前記第2の突条部は、軸方向から見て周方向に互いに干渉しない非干渉位置に配置可能に形成され、前記保持部材が前記把持部材に前記非干渉位置で軸方向に嵌め込まれ、その状態から周方向に回転することにより、前記第1の突条部と前記第2の突条部が互いに螺合し、前記保持部材が前記把持部材の把持状態を保持するように構成された、(9)~(12)のいずれかに記載のクランプ装置。
(14)前記把持部材と前記保持部材の間に介在される弾性リングを、さらに備えた、(1)~(13)のいずれかに記載のクランプ装置。
(15)前記弾性リングは、前記把持部材の軸方向の前記保持部材側の端面に取り付け可能であり、前記把持部材は、その内周面に軸方向に延びる溝部を有し、前記弾性リングは、前記把持部材の内周面の前記溝部に挿入自在は脚部を有する、(15)に記載のクランプ装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クランプ後のクランプ力の低下を防止できるクランプ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態におけるクランプ装置の全体の構成を示す斜視図である。
【
図2】クランプ装置の把持部材と保持部材を示す斜視図である。
【
図5】把持部材の第1の突条部と保持部材の第2の突条部の非干渉位置を示す、軸方向の上面から見た説明図である。
【
図6】クランプ装置が使用される中空糸膜モジュールの構成を示す説明図である。
【
図7】把持部材の開閉部を開いた状態のクランプ装置を示す説明図である。
【
図8】把持部材の開閉部を閉じた状態のクランプ装置を示す説明図である。
【
図9】保持部材を把持部材に嵌め込んだ状態のクランプ装置を示す説明図である。
【
図10】保持部材を回して把持部材を固定した状態のクランプ装置を示す説明図である。
【
図11】第1の突条部と第2の突条部が螺合した状態のクランプ装置の断面図である。
【
図12】弾性リングを有するクランプ装置の斜視図である。
【
図13】弾性リングを介在して保持部材を把持部材に嵌め込んだ状態を示すクランプ装置の断面図である。
【
図14】第2の実施の形態におけるクランプ装置の全体の構成を示す斜視図である。
【
図16】開閉部が開いた状態の把持部材を示す斜視図である。
【
図17】把持部材を軸方向の上面から見た図である。
【
図18】保持部材、ロック部材及び規制部材を軸方向の下面から見た図である。
【
図22】把持部材、保持部材、ロック部材及び規制部材の嵌め合い構造を示す説明図である。
【
図23】保持部材を把持部材に取り付けた状態のクランプ装置の縦断面図である。
【
図24】弾性リングの把持部材への取り付け構造を示す説明図である。
【
図25】把持部材をクランプ対象物に取り付けるときのクランプ装置を示す説明図である。
【
図26】保持部材を把持部材に嵌め込んだ状態のクランプ装置を示す説明図である。
【
図27】保持部材を把持部材に固定した状態のクランプ装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0012】
<第1の実施の形態>
図1は、本実施の形態にかかるクランプ装置1の一例を示す斜視図である。
図2は、クランプ装置1の部品を示す斜視図である。クランプ装置1は、例えばクランプ対象物を把持する把持部材10と、把持部材10の把持状態を保持する保持部材11と、把持部材10と保持部材11を固定する固定機構12を備えている。なお、本実施の形態におけるクランプ装置1に関する上下左右は、
図2に示すクランプ装置1の姿勢を基準とする。
【0013】
図2及び
図3に示すように把持部材10は、全体が環状で、一か所を除いて互いに回動自在に連結された円弧状の複数、例えば2つの開閉部20、21を備えている。第1の開閉部20と第2の開閉部21の一の端部同士は、回動軸30により互いに回動自在に連結され、他の端部同士は、互いに連結されておらず、非連結部分Aとなっている。把持部材10は、一か所の非連結部分Aから開閉部20、21を開閉し、クランプ対象物を外側から把持することができる。把持部材10は、例えば樹脂により成型されている。
【0014】
図2に示すように把持部材10は、略円筒状に形成され、例えば環状の基部40と、基部40の同軸上にあり、基部40から軸方向Xの一方向(
図2の上方向)に延びる円筒状のボルト部41を有している。ボルト部41の環状外周面41aには、複数の第1の突条部50が周方向Rに沿って断続的に形成されている。各第1の突条部50は、軸方向Xに対して垂直の垂直面内の周方向Rに対しわずかに傾斜しており、ねじ機構のボルト機能を有する。各第1の突条部50は、側面視で左側が低くなるように傾斜している。
図3に示すように第1の突条部50は、軸方向Xの上面視で円弧状に形成され、周方向Rに一定の間隔をおいて等間隔に設けられている。例えば第1の突条部50は、全周に亘り例えば8つ、すなわち45°間隔で形成されている。各第1の突条部50は、周方向Rに一定の長さ(周方向の最大長さ)L1を有している。周方向Rに隣り合う第1の突条部50同士の間には、一定幅(周方向の最小幅)D1の隙間が形成されている。
【0015】
図2に示すように第1の突条部50は、例えばボルト部41の軸方向Xに複数、例えば2列に形成されている。軸方向Xに並ぶ2列の第1の突条部50同士は、軸方向Xから見て同じ位置に重なるように形成されている。
【0016】
図2に示すように保持部材11は、略円筒状に形成され、上面と下面のそれぞれ開口部60、61を備えている。上面の開口部60は下面の開口部61よりも小さい。保持部材11は、例えば樹脂により成型されている。保持部材11の環状内周面には、複数の第2の突条部70が周方向Rに沿って断続的に形成されている。各第2の突条部70は、軸方向Xに対して垂直の垂直面内の周方向Rに対しわずかに傾斜しており、ねじ機構のナット機能を有する。各第2の突条部70は、保持部材11の中心軸側から見て右側が低くなるように傾斜している。第1の突条部50と第2の突条部70は、ねじ機構を構成し、互いに嵌り合い螺合可能である。
【0017】
図4に示すように第2の突条部70は、軸方向Xの下面視で円弧状に形成され、周方向Rに一定の間隔をおいて等間隔に設けられている。例えば第2の突条部70は、第1の突条部50と同じ、全周に亘り例えば8つ、すなわち45°間隔で形成されている。周方向Rの第2の突条部70同士の間には、例えば第1の突条部50と同じ一定幅(周方向の最小幅)D2の隙間が形成される。第2の突条部70は、周方向Rに一定の長さ(周方向の最大長さ)L2を有している。第1の突条部50同士の間の隙間の幅D1は、第2の突条部70の長さL2よりも大きく、第2の突条部70同士の間の幅D2は、第1の突条部50の長さL1よりも大きい。
【0018】
図2に示すように第2の突条部70は、例えばボルト部41の軸方向Xに複数、例えば3重に形成されている。軸方向Xに並ぶ3重の第2の突条部70同士は、軸方向Xから見て同じ位置に重なるように形成されている。
【0019】
かかる構成により、例えば
図5に示すように第1の突条部50と第2の突条部70は、軸方向Xから見て周方向Rに互いに干渉しない非干渉位置に配置可能である。
【0020】
固定機構12は、非干渉位置からの保持部材11の周方向の60°以下5°以上、好ましくは45°以下10°以上の回転により、保持部材11と把持部材10が互いに固定されるように構成されている。
図2に示すように固定機構12は、保持部材11の外周面に設けられた複数の突起90と、把持部材10の外周面に設けられた係止部100を有している。
【0021】
突起90は、保持部材11の外周面の最下部に周方向Rに沿って等間隔で形成されている。突起90は、保持部材11の径方向の外側に突出する直方体形状を有し、例えば
図4に示すように第2の突条部70と同じ数設けられている。突起90は、軸方向Xから見て第2の突条部70に対し周方向Rにわずかにずれた位置に設けられている。例えば軸方向Xから見て保持部材11の中心と突起90の中心を通る線と保持部材11の中心と第2の突条部70の中心を通る線とのなす角をαとした場合に、突起90は、ねじの締め付け方向R1の後方側に角α(5°~15°程度)ずれた位置に設けられている。
【0022】
図2に示すように係止部100は、略方形板状に形成され、側面から見て右側方向(ネジの締め付け方向R1の後方側)に向いて開口した溝101を有している。係止部100は、
図3に示すように把持部材10の基部40の2か所に設けられている。係止部100は、周方向Rに互いに対向する位置に設けられている。かかる構成により、保持部材11を把持部材10に対しネジの締め付け方向R1に45°程度回転させると、複数の突起90のうちの2つが係止部100の溝101に入り係止される。
【0023】
次に、以上のように構成されたクランプ装置1の使用例について説明する。本実施の形態では、例えば
図6に示す中空糸膜モジュール150の通液部を封止する際のクランプ装置1の使用例につい説明する。
【0024】
例えば中空糸膜モジュール150は、中空糸膜151が長手方向に収容された円筒状のモジュール本体152と、モジュール本体152の長手方向の両端部を覆うヘッダー153とを有している。各ヘッダー153には、中空糸膜151の一次側に通じる一次通液部154が設けられている。モジュール本体152の外周側面には、中空糸膜151の二次側に通じる2つの二次通液部155が形成されている。
【0025】
中空糸膜151の両端部は、ポッティング剤160によりモジュール本体152の内壁面に固定されている。このポッティング剤160により、モジュール本体152の内部に、中空糸膜151の外周に位置する外周空間C1と、中空糸膜151の両端であって中空糸膜151の開口端が通じる端部空間C2が形成されている。この中空糸膜151の外周空間C1に、二次通液部155が連通し、中空糸膜151の端部空間C2に、一次通液部154が連通している。
【0026】
一次通液部154及び二次通液部155は、管状に形成され、先端が、径が大きいフランジ状のフェルール部になっている。
【0027】
例えば出荷前の滅菌処理時には、一次通液部154及び二次通液部155がキャップ170により閉鎖され、その一次通液部154とキャップ170、及び二次通液部155とキャップ170がクランプ装置1により把持、固定される。
【0028】
中空糸膜モジュール150の通液部155(154)を封止する際には、
図7に示すように先ずクランプ装置1の把持部材10の開閉部20、21を非連結部分Aから大きく開き、その状態で、把持部材10をクランプ対象物である通液部155とキャップ170の周りに配置する。次に、
図8に示すように把持部材10の開閉部20、21を閉じて、通液部155とキャップ170を把持する。次に、
図9に示すように保持部材11を把持部材10に嵌め込む。このとき、
図5に示したように第1の突条部50と第2の突条部70が、軸方向Xから見て周方向Rに互いに干渉しない非干渉位置に配置され、その状態で、保持部材11を把持部材10の奥(下部)まで嵌め込む。
【0029】
次に、
図10に示すように保持部材11を締め付け方向R1に45°程度回転させる。これにより、
図11に示すように第1の突条部50と第2の突条部70が螺合し、互いに締め付けられる。そして、
図10に示すように保持部材11の突起90が把持部材10の係止部100の溝101に入り、保持部材11と把持部材10が互いに固定される。また、保持部材11を締め付け方向と逆方向に回転させることにより、保持部材11の突起90が把持部材10の係止部100から外れ、保持部材11と把持部材10の固定が解除される。
【0030】
本実施の形態によれば、クランプ装置1が、把持部材10と、保持部材11と、固定機構12を有し、把持部材10は、環状外周面に複数の第1の突条部50が周方向Rに沿って断続的に形成されたボルト構造を有し、保持部材11は、環状内周面に複数の第2の突条部70が周方向Rに沿って断続的に形成されたナット構造を有し、第1の突条部50と第2の突条部70は、軸方向Xから見て周方向Rに互いに干渉しない非干渉位置に配置可能に形成され、保持部材11が把持部材10に非干渉位置で軸方向Xに嵌め込まれ、その状態から周方向Rに回転することにより、第1の突条部50と第2の突条部70が互いに螺合し、保持部材11が把持部材10の把持状態を保持し、固定機構12により保持部材11と把持部材10が互いに固定される。これにより、クランプ装置1のクランプ後のクランプ力の低下を防止することができる。この結果、例えば中空糸膜モジュール150の滅菌処理を行っても、クランプ装置1のクランプ力が弱まることがなく、その後の輸送時にクランプ装置1が外れることを防止することができる。また滅菌処理後に、滅菌袋の上からクランプ部のねじを締めなおす作業が無くなり作業効率が向上し、衛生面も改善する。
【0031】
固定機構12は、非干渉位置からの保持部材11の周方向Rの60°以下の回転により、保持部材11と把持部材10が互いに固定されるように構成されているので、クランプ装置1によるクランプ作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0032】
第1の突条部50と第2の突条部70は、周方向Rの数が等しく、周方向Rに一定の間隔をおいて等間隔に設けられている。これにより、第1の突条部50と第2の突条部70の非干渉位置を簡単に形成することができ、作業者は迷うこと無く嵌合でき作業効率が向上する。
【0033】
第1の突条部50同士の隙間の幅D1は、第2の突条部70の周方向Rの長さL2よりも大きく、第2の突条部70同士の隙間の幅D2は、第1の突条部50の周方向Rの長さL1よりも大きいので、第1の突条部50と第2の突条部70の非干渉位置を適切に形成することができ、作業者は迷うこと無く嵌合でき作業効率が向上する。
【0034】
第1の突条部50と第2の突条部70は、軸方向Xに複数形成されているので、第1の突条部50と第2の突条部70の螺合を小さな突起形状で形成でき、クランプ装置を小型化することができる。
【0035】
固定機構12は、保持部材11の外周面に周方向Rに沿って設けられた複数の突起90と、把持部材10に設けられ、周方向Rの回転により突起90が入り係止される係止部100とを有するので、保持部材11と把持部材10の締付け力の低下を防止できる固定を簡易な構成でなおかつ簡単な操作で実現することができる。
【0036】
突起90は、保持部材11の外周面の周方向Rに沿って第2の突条部70に対応する位置に設けられている。これにより、第1の突条部50と第2の突条部70が螺合する位置の近くで固定できるので、保持部材11と把持部材10の固定を作業者は突起の位置関係を気にすることなく、迷わず確実に行うことができ、締め付け力の低下を防止することができる。
【0037】
係止部100は、少なくとも把持部材10の周方向Rの対向する2か所に設けられているので、保持部材11と把持部材10の均等に固定でき、確実に行うことができ、締め付け力の低下を防止することができる。
【0038】
上記実施の形態において、クランプ装置1は、
図12に示すように把持部材10と保持部材11の間に介在される弾性リング180を、さらに備えていてもよい。かかる場合、弾性リング180は、例えば円弧状の2つの部分に分離可能に構成されている。
図13に示すように例えば中空糸膜モジュール150の通液部155(154)をクランプする際に、把持部材10のボルト部41の上端と保持部材11の天井面11bとの間に介在される。こうすることにより、例えば締め付け過ぎによる把持部材10と保持部材11の破損等を防止することができる。
【0039】
<第2の実施の形態>
図14は、本実施の形態にかかるクランプ装置200の一例を示す斜視図である。
図15は、クランプ装置200の部品を示す斜視図である。クランプ装置200は、例えばクランプ対象物を把持する把持部材210と、把持部材210の把持状態を保持する保持部材211と、把持部材210と保持部材211を互いに固定する固定機構212と、弾性リング213を備えている。なお、本実施の形態におけるクランプ装置200に関する上下左右は、
図15に示すクランプ装置200の姿勢を基準とする。
【0040】
図15及び
図16に示すように把持部材210は、全体が環状で、一か所を除いて互いに回動自在に連結された円弧状の複数、例えば2つの開閉部220、221を備えている。第1の開閉部220と第2の開閉部221の一の端部同士は、回動軸230により互いに回動自在に連結され、他の端部同士は、互いに連結されておらず、非連結部分Aとなっている。把持部材210は、一か所の非連結部分Aから開閉部220、221を開閉し、クランプ対象物を外側から把持することができる。把持部材210は、例えば樹脂により成型されている。
図16に示すように開閉部220、221の互いに当接する端面には、凸部231と凹部232が設けられており、開閉部220、221が閉まるときに凸部231と凹部232が嵌り合う。
【0041】
図15に示すように把持部材210は、略円筒状に形成され、例えば環状の基部240と、基部240の同軸上にあり、基部240から軸方向Xの一方向(
図15の上方)に延びる円筒状のボルト部241を有している。ボルト部241の環状外周面241aには、複数の第1の突条部250が周方向Rに沿って断続的に形成されている。各第1の突条部250は、側面視で、軸方向Xに対し垂直の垂直面内の周方向Rに対しわずかに傾斜しており、ねじ機構のボルト機能を備えている。
図17に示すように第1の突条部250は、軸方向Xの上面視で円弧状に形成され、周方向Rに一定の間隔をおいて等間隔に設けられている。第1の突条部250は、例えば2つ形成されている。例えば各第1の突条部250は、周方向Rに一定の長さ(周方向の最大長さ)L3、例えば内角が90°程度の長さを有している。周方向Rに隣り合う第1の突条部250同士の間には、一定幅(周方向の最小幅)D3の間隙が形成されている。
【0042】
図15に示すように第1の突条部250は、例えばボルト部241の軸方向Xに複数、例えば2列に形成されている。軸方向Xに並ぶ2列の第1の突条部250同士は、軸方向Xから見て同じ位置に重なるように形成されている。
【0043】
図15及び
図18に示すように保持部材211は、後述のロック部材300及び規制部材301の内側に設けられている。
図19に示すように保持部材211は、略円筒状に形成されている。保持部材211は、例えば樹脂により成形されている。
図20に示すように保持部材211は、上部と下部にそれぞれ開口部260、261を備えている。保持部材211の内周面211aの上部には、内側に突出し、周方向Rに沿って突条に設けられた縮径部262が設けられている。保持部材211の内周面211aには、複数の第2の突条部270が周方向Rに沿って断続的に形成されている。各第2の突条部270は、軸方向Xに対し垂直の垂直面内の周方向Rに対しわずかに傾斜しており、ねじ機構のナット機能を備えている。第1の突条部250と第2の突条部270は、ねじ機構を構成し、互いに嵌り合い螺合可能である。
【0044】
図18に示すように第2の突条部270は、下面視で中心軸を中心とする円弧状に形成され、周方向に一定の間隔をおいて等間隔に設けられている。例えば第2の突条部270は、第1の突条部250と同じ、例えば互いに対向するように2つ形成されている。周方向Rの第2の突条部270同士の間には、一定幅(周方向Rの最小幅)D4の間隙が形成される。第2の突条部270は、周方向Rに一定の長さ(周方向の最大長さ)L4を有している。第1の突条部250同士の間の隙間の幅D3は、第2の突条部270の長さL4よりも大きく、第2の突条部270同士の間の幅D4は、第1の突条部250の長さL3よりも大きい。かかる構成により、第1の突条部50と第2の突条部70は、軸方向Xから見て周方向Rに互いに干渉しない非干渉位置に配置可能である。
【0045】
図15に示すように第2の突条部270は、例えばボルト部241の軸方向Xに複数、例えば3列に形成されている。軸方向に並ぶ3列の第2の突条部270同士は、軸方向Xから見て同じ位置に重なるように形成されている。
【0046】
図19に示すように保持部材211の外周面211bには、後述のロック部材300の凸条部310と嵌合する、軸方向Xに延在し周方向Rに並べられた溝部263が形成されている。溝部263は、例えば保持部材211の外周面211bのほぼ全周に亘り形成されている。
【0047】
固定機構212は、非干渉位置からの保持部材211の周方向Rの60°以下5°以上、好ましくは45°以下10°以上の回転により、保持部材11と把持部材10が互いに嵌合されるように構成されている。
【0048】
図15に示すように固定機構212は、例えば保持部材211に対し軸方向Xに移動して保持部材211と把持部材210を固定及び固定解除するロック部材300と、ロック部材300の軸方向Xの移動を規制及び規制解除する規制部材301等を備えている。
図21にロック部材300と規制部材301の斜視図を示す。
【0049】
図15に示すようにロック部材300は、円筒形状を有し、保持部材211の外周面を覆うように設けられている。ロック部材300の外周面300aには、ユーザが持ちやすいように45°ピッチの凹凸が設けられている。
図21に示すようにロック部材300の内周面300bには、軸方向Xに延在し、周方向Rに並べられた凸条部310が形成されている。凸条部310は、ロック部材300の内周面300bのほぼ全周にわたり形成されている。
図22に示すように凸条部310は、保持部材211の外周面の溝部263に嵌合している。これによって、ロック部材300は、保持部材211に対し周方向Rに回転できないように固定され、なおかつ軸方向Xに移動自在である。
【0050】
図15に示すように把持部材210の基部240上には、ボルト部241の周りを囲む円環の板状の環状部311が設けられている。
図22に示すように環状部311は、保持部材211の外周面211bと同じ外径を有している。環状部311の外周面には、軸方向Xに延在し、周方向Rに並べられた溝部312が形成されている。把持部材210に保持部材211が取り付けられた際には、保持部材211の外周面211bの溝部263と把持部材210の溝部312は互いに軸方向Xの直線上に配置される。これにより、ロック部材300を保持部材211に対し軸方向Xの把持部材210に近づく方向に移動させると、ロック部材300の凸条部310が保持部材211の溝部263から把持部材210の溝部312に移り、把持部材210の溝部312に嵌合し、把持部材210に対する保持部材211の回転を止めることができる。また、ロック部材300を保持部材211に対し軸方向Xの把持部材210から離れる方向に移動させると、ロック部材300の凸条部310が把持部材210の溝部312から外れ、保持部材211の溝部263に戻り、把持部材210に対する保持部材211の回転を許容することができる。
【0051】
図15及び
図21に示すように規制部材301は、例えば略円環状に形成されており、ロック部材300に取り付けられている。
図21に示すように規制部材301は、例えば円環状の環状部320と、環状部320から軸方向Xの一方向(下方向)に延伸する複数の脚部321と、環状部320から軸方向Xの一方向(下方向)に延伸し、規制部材301をロック部材300に固定するための複数の固定用脚部322を有している。脚部321は、例えば互いに対向する2か所に設けられている。脚部321の下端部の径方向Eの外側面には、径方向Eの外側に突出した係止部323が設けられている。また、脚部321の外側面には、外側に突出した押し部324が設けられている。押し部324は、脚部321の環状部320側の基端と係止部323との間に設けられている。脚部321は、ユーザが押し部324を押すことによって内側に撓んで弾性変形する。
【0052】
例えばロック部材300には、規制部材301の環状部320、脚部321及び固定用脚部322を挿入するための溝330、穴331、溝332がそれぞれ設けられている。溝330は、ロック部材300の内周面300bの上部に周方向Rに沿って環状に形成されている。穴331は、ロック部材300の側壁の内部に軸方向Xに貫通するように形成されている。溝332は、ロック部材300の内周面300bに軸方向Xに沿って形成されている。規制部材301は、例えばロック部材300に対し軸方向Xの一方側から挿入されて固定されている。
【0053】
図15に示すようにロック部材300の側壁には、脚部321の押し部324を露出させるための開口部333が形成されている。
図22に示すように脚部321は、ロック部材300の下方に突出し、係止部323は、ロック部材300の下方に位置する。
【0054】
図15、
図22及び
図23に示すように把持部材210には、係止部323が係止される被係止部340が設けられている。被係止部340は、例えば基部240の表面に、把持部材210の中心を円心とした円弧状に設けられた溝部350と、溝部350の外側面の上部から径方向の内側に向けて突出した突条部351により構成されている。ロック部材300が保持部材211に対し軸方向Xの把持部材210に近づく方向(下方向)に移動したときに、係止部323は、被係止部340の溝350に入り突条部351に引っ掛かる。これにより、ロック部材300が保持部材211に対して軸方向Xの把持部材210から離れる方向(上方向)に移動することが規制される。
【0055】
また、ユーザがロック部材300の開口部333に露出した規制部材301の押し部324を押すことによって、脚部321の係止部323を内側に弾性変形させ、係止部323を被係止部340から外すことができる。これによりロック部材300の把持部材210から離れる方向(上方向)への移動の規制を解除することができる。
【0056】
図15に示すように弾性リング213は、把持部材210と保持部材211の間に介在されるものであり、例えば把持部材210のボルト部241の先端面241bに取り付け可能である。弾性リング213は、円環状に形成され、例えば円弧状の2つの部分に分離可能に構成されている。
図23に示すように例えば保持部材211を把持部材210に取り付ける際に、把持部材210のボルト部241の先端面241bと保持部材211の縮径部262との間に介在される。
図24に示すように弾性リング213は、例えば軸方向Xの一方向(下方向)に延びる複数の脚部370を有する。脚部370は、把持部材210のボルト部241の内周面に軸方向Xに向けて形成された溝部371に挿入することができる。
【0057】
次に、以上のように構成されたクランプ装置200の使用例について説明する。例えば中空糸膜モジュール150の通液部155(154)を封止する際には、
図25に示すように先ずクランプ装置200の把持部材210の開閉部220、221を非連結部分Aから大きく開き、その状態で、把持部材210をクランプ対象物である通液部155とキャップ170の周りに配置する。このとき、弾性リング213は、把持部材210のボルト部241の先端面241b上に取り付けられている。次に、
図26に示すように把持部材210の開閉部220、221を閉じて、通液部155とキャップ170を把持し、保持部材211を把持部材210に差し込む。このとき、第1の突条部250と第2の突条部270が、軸方向Xから見て周方向Rに互いに干渉しない非干渉位置に配置され、その状態で、保持部材211を把持部材210の奥(下部)まで差し込む。
【0058】
次に、保持部材211を締め付け方向に45°程度回転させる。これにより、第1の突条部250と第2の突条部270が螺合し、互いに締め付けられる。
【0059】
次に、
図27に示すようにロック部材300を保持部材211に対し軸方向Xの把持部材210に近づく方向(下方向)に移動させる。このとき、
図22に示すロック部材300の凸条部310が保持部材211の溝部263から把持部材210の溝部312に入り込み、ロック部材300と把持部材210が嵌合する。これにより、保持部材211の把持部材210に対する回転が止められ、保持部材211と把持部材210が互いに固定される。
【0060】
さらに、このとき規制部材301の脚部321の係止部323が把持部材210の溝部350に入り込み、被係止部340に係止される。これにより、ロック部材300の軸方向Xの把持部材210から離れる方向(上方向)への移動が規制される。
【0061】
次に、クランプ装置200を通液部155から取り外す際には、脚部321の押し部324を押し、脚部321の係止部323を内側に弾性変形させる。これにより、ロック部材300の軸方向Xの移動の制限が解除される。この状態でロック部材300を軸方向Xの把持部材210から離れる方向(上方向)に移動させる。このとき、
図22に示すロック部材300の凸条部310が把持部材210の溝部312から保持部材211の溝部263に移動し、ロック部材300が把持部材210から外れる。これにより、保持部材211の把持部材210に対する回転が許容され、保持部材211と把持部材210の固定が解除される。そして、保持部材211を把持部材210に対し回転させ、保持部材211を把持部材210から取り外す。
【0062】
本実施の形態によれば、クランプ装置200が、把持部材210と、保持部材211と、固定機構212を有し、把持部材210は、環状外周面241aに複数の第1の突条部250が周方向Rに沿って断続的に形成されたボルト構造を有し、保持部材211は、環状内周面211aに複数の第2の突条部270が周方向Rに沿って断続的に形成されたナット構造を有し、保持部材211が把持部材210に軸方向Xに嵌め込まれ、その状態から周方向Rに回転することにより、第1の突条部250と第2の突条部270が互いに螺合し、保持部材211が把持部材210の把持状態を保持するように構成されている。そして、固定機構212は、保持部材211に対し周方向Rに回転できないように固定され、軸方向Xに移動自在に設けられたロック部材300を有し、ロック部材300が軸方向Xの把持部材210に近づく方向に移動したときに把持部材210に嵌合して保持部材211が把持部材210に対して固定され、ロック部材300が把持部材210から離れる方向に移動したときに把持部材210から外れて把持部材210に対する保持部材211の固定が解除されるように構成されている。これにより、クランプ装置200のクランプ後のクランプ力の低下を防止することができる。この結果、例えば中空糸膜モジュール150の滅菌処理を行っても、クランプ装置200のクランプ力が弱まることがなく、その後の輸送時にクランプ装置200が外れることを防止することができる。
【0063】
固定機構212は、把持部材210において把持部材210の軸方向Xに延在し、把持部材210の周方向Rに並べて設けられた溝部312を有し、ロック部材300は、溝部312に嵌合する凸条部310を有し、軸方向Xの把持部材210に近づく方向に移動したときに凸条部310が把持部材210の溝部312に嵌合して把持部材210に対する保持部材211の回転を止め、把持部材210から離れる方向に移動したときに凸条部310が把持部材210の溝部312から外れて把持部材210に対する保持部材211の回転が許容されるように構成されている。これにより、固定機構212による把持部材210と保持部材211の固定と固定解除を簡単な構成で好適に行うことができる。
【0064】
固定機構212は、ロック部材300の把持部材210から離れる方向への移動を規制及び規制解除する規制部材301を有している。これにより、ロック部材300による把持部材210と保持部材211の固定を解除するために2回の操作が必要になるので、把持部材210と保持部材211の固定が誤って解除されることを抑制することができる。
【0065】
規制部材301は、ロック部材300と軸方向Xに一体的に移動可能であり、なおかつロック部材300に対し径方向Eに弾性変形可能な係止部323を有し、固定機構212は、把持部材210に設けられ、規制部材301の係止部323が係止される被係止部340を有し、ロック部材300が軸方向Xの把持部材210に近づく方向に移動したときに、規制部材301の係止部323が被係止部340に係止されることでロック部材300の把持部材210から軸方向Xに離れる方向への移動を止め、規制部材301の係止部323がロック部材300の径方向Eに弾性変形して被係止部340に対する係止が外れることでロック部材300の把持部材210から軸方向Xに離れる方向への移動を許容するように構成されている。これにより、ロック部材300の移動の規制と規制の解除を簡単な構成で好適に行うことができる。
【0066】
第1の突条部250と第2の突条部270は、軸方向Xから見て周方向Rに互いに干渉しない非干渉位置に配置可能に形成され、クランプ装置200は、保持部材211が把持部材210に非干渉位置で軸方向Xに嵌め込まれ、その状態から周方向Rに回転することにより、第1の突条部250と第2の突条部270が互いに螺合し、保持部材211が把持部材210の把持状態を保持するように構成されている。これにより、締め付け時の保持部材211の回転量を減らすことができるので、クランプ装置200によるクランプ作業を簡単かつ迅速に行うことができる。
【0067】
クランプ装置200が、把持部材210と保持部材211の間に介在される弾性リング213を備えているので、例えば締め付け過ぎによる把持部材210と保持部材211の破損等を防止することができる。
【0068】
弾性リング213は、把持部材210の内周面の溝部371に挿入自在は脚部370を有するので、作業中に弾性リング213が把持部材210から外れにくくなり、クランプ装置200を用いたクランプ作業の作業性を向上することができる。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0070】
例えば以上の実施の形態における把持部材10、210、保持部材11、211、固定機構12、212などの構成はこれに限られない。また、クランプ装置1、200が使用できるクランプ対象物は、中空糸膜モジュールの通液部に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、クランプ後のクランプ力の低下を防止できるクランプ装置を提供する際に有用である。
【符号の説明】
【0072】
1 クランプ装置
10 把持部材
11 保持部材
12 固定機構
50 第1の突条部
70 第2の突条部
90 突起
100 係止部