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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】鉄道車両用フック装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/10 20060101AFI20230629BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20230629BHJP
   B60N 3/00 20060101ALI20230629BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20230629BHJP
   A47C 7/64 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B60R7/10
B61D37/00 F
B60N3/00 Z
A47C7/62 Z
A47C7/64 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019186070
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021059286
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】521475989
【氏名又は名称】川崎車両株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三木 剛
(72)【発明者】
【氏名】白木 直樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 倫子
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-509326(JP,A)
【文献】特開2000-52848(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094575(WO,A1)
【文献】実開平6-82959(JP,U)
【文献】米国特許第7234672(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/00 - 7/14
B61D 37/00
B60N 3/00
A47C 7/62 ; 7/64
F16B 45/00 - 45/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有するケースと、
前記ケースに収納され、鉛直方向を第1回転軸として前記ケースに対して回動可能な回転部材と、
前記開口内に収納された収納位置と前記開口から露出する展開位置との間で、前記回転部材とともに回動可能なフック部材と、
前記フック部材が前記展開位置から前記収納位置に戻るように前記回転部材を付勢する収納付勢部材と、を備え、
前記フック部材は、
前記展開位置において、水平方向を第2回転軸として前記回転部材に対して回動することで、前記フック部材の先端部が上下方向に移動し、当該先端部が下方に位置したときに前記フック部材の基端部に設けられた係止部と前記ケースに設けられた被係止部が係合して係止位置に保持される、鉄道車両用フック装置。
【請求項2】
前記被係止部は、前記ケースに形成された穴であり、前記係止部は、前記フック部材の基端部に形成された突起である、請求項1に記載の鉄道車両用フック装置。
【請求項3】
前記フック部材が前記係止位置から非係止位置に戻るように前記フック部材を付勢する解除付勢部材を更に備える、請求項1または2に記載の鉄道車両用フック装置。
【請求項4】
前記ケースは、被当接部を有し、
前記回転部材は、前記被当接部に当接して、前記フック部材が前記展開位置を超えて回動することを阻止するストッパ部を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の鉄道車両用フック装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の客室で用いられる鉄道車両用フック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の客室等で用いられているフック装置としては、例えば特許文献1に開示された構成のものがある。特許文献1のフック装置は、使用されないときにはフック部材がケースに収納され、フック装置が使用されるときにはフック部材がケースから引き出される。フック装置が使用されるときには、引き出されたフック部材に衣類等をかけることができる一方で、フック装置が使用されないときには、フック部材が収納されて乗客の邪魔にならない。特許文献1のフック装置は、全体が縦長の部材であり、水平方向の回転軸を有し、使用・収納状態に回動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平08-282385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたフック装置では、フック部材がケースから引き出される際にフック部材の先端部が鉛直平面内で移動するので、鉛直方向に関し、フック部材が移動するのに十分なスペースを確保することが求められる。そのため、フック装置の取り付け箇所には、鉛直方向に大きな領域を要してしまう。
【0005】
そこで、本発明は上記の事情に鑑み、鉛直方向に関し、小型化されたフック装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鉄道車両用フック装置は、開口を有するケースと、前記ケースに収納され、鉛直方向を第1回転軸として前記ケースに対して回動可能な回転部材と、前記開口内に収納された収納位置と前記開口から露出する展開位置との間で、前記回転部材とともに回動可能なフック部材と、前記フック部材が前記展開位置から前記収納位置に戻るように前記回転部材を付勢する収納付勢部材と、を備え、前記フック部材は、前記展開位置において、水平方向を第2回転軸として前記回転部材に対して回動することで、前記フック部材の先端部が上下方向に移動し、当該先端部が下方に位置したときに前記フック部材の基端部に設けられた係止部と前記ケースに設けられた被係止部が係合して係止位置に保持される。
【0007】
上記構成の鉄道車両用フック装置では、回転部材が、鉛直方向を第1回転軸としてケースに対して回動することにより、フック部材が開口内に収納された収納位置と前記開口から露出する展開位置との間で回動することが可能なので、フック部材をケースへ収納する際と、フック部材をケースから引き出しを行う際との、フック部材による鉛直方向への移動量を少なく抑えることができる。従って、鉛直方向に関し、フック部材の移動のためのスペースを縮小することができる。これにより、鉛直方向に関し、フック装置を小型化することができる。また、フック部材がケースから出た展開位置にあるときに、フック部材が水平方向を第2回転軸として回動することにより、非係止位置と係止位置との間で移動するので、展開位置でフック部材に荷重が作用したときに係止位置でフック部材の移動を規制することができる。従って、フック部材が物を支持するときに、安定してその物を支持することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鉛直方向に関し、フック装置を小型化することができるので、フック装置のためのスペースが狭小な場合であっても配置することができる。従って、フック装置を広く適用することができる。また、フック部材が物を支持するときに、安定して物を支持することができるので、例えば振動等がフック装置に作用してもフック部材が支持している物の落下等を抑えることができ、フック部材がより確実に物を支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)及び(b)は、実施形態に係るフック装置の設けられたシートの斜視図である。
図2図1のフック装置について拡大して示した正面図である。
図3】(a)は、図2のフック装置において、ケースからフック部材が引き出された状態の斜視図であり、(b)は、フック部材がケースから引き出されてから先端部が下方に移動するようにフック部材を傾動させた状態の斜視図であり、(c)はフック部材にコートが掛けられたときの斜視図である。
図4図2のフック装置についての分解斜視図である。
図5】(a)は、図2のフック装置において、フック部材がケースに収納された状態の断面図であり、(b)は、フック部材がケースから引き出された状態の断面図である。
図6】(a)は、図2のフック装置において、フック部材がケースから引き出されまだフック部材が傾動を行っていない状態の断面図であり、(b)は、フック部材が下方に向けて傾動を行った状態の断面図である。
図7】(a)は、図2のフック装置において、フック部材が傾動を行ってなく係止部と被係止部とが係止していない状態の断面図であり、(b)は、フック部材が下方に向けて傾動を行い係止部と被係止部とが係止した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、各図を参照して説明する。
【0011】
図1(a)及び(b)は、実施形態に係るフック装置が設けられたシート1の斜視図であり、図1(a)はシート1を斜め前方から見た図であり、図1(b)はシート1を斜め後方から見た図である。本実施形態では、シート1は、鉄道車両の客室の内部に取り付けられ、乗客が座るために設けられたものであり、2つのシート1が横に並べられて1組として用いられている。また、鉄道車両の客室の内部には、2つのシート1が並べられたシート1の列が前後方向に複数配置される。
【0012】
図1(b)に示されるように、シート1のそれぞれには、フック装置2が設けられ、例えば後席の乗客がコート掛けとして使用できるようになっている。本実施形態では、フック装置2は、シート1の背面における上側の縁部付近に設けられている。
【0013】
フック装置2は、ケース3及びフック部材4を備えている。図2には、シート1におけるフック装置2の設けられた部分について拡大し、フック装置2について正面から見た正面図が示されている。図2に示される状態では、フック部材4は、ケース3の内部に収納されている。ケース3は、開口3aを有し、開口3aがシート1の後方に向くようにシート1の後方に面して配置されている。また、ケース3は、シート1の背面に埋め込まれて配置されている。本実施形態では、ケース3の開口3aがシート1の背面と略同一の面となるように、ケース3の略全体がシート1の内部に埋め込まれている。
【0014】
図3(a)~(c)には、フック部材4がケース3から引き出されてフック部材4に物を支持させるときの、シート1におけるフック装置2の設けられている部分について拡大した斜視図が示されている。フック装置2に物を引っ掛けてフック装置2に支持させる際には、フック部材4をケース3から引き出す。図3(a)~(c)には、フック装置2に物を支持させるためにフック部材4をケース3から引き出したときの状態について示されている。
【0015】
図3(a)には、フック部材4がケース3から出た展開位置にあり、フック部材4がまだ下方に向けて移動していない状態のフック装置2について示されている。フック部材4は、フック装置2に物を支持させる際に、物を引っ掛けるための部材である。フック部材4は、物を引っ掛ける際に引っ掛け易いように、先端部4aが屈曲した形状を有している。本実施形態では、フック部材4は、フック部材4がケース3から引き出されたときに、シート1の背面からさらに後方に向かって突出する方向についての先端部4aが、鉛直方向上方に向かって屈曲するように構成されている。フック部材4がケース3から引き出される際には、フック部材4が矢印A1方向に回動することにより、シート1の背面からさらに後方に移動してフック部材4がケース3から引き出される。
【0016】
図3(b)には、フック部材4がケース3から展開位置に出たときに、そこから先端部4aが下方に向かって傾動したときのフック装置2について示されている。先端部4aが下方に向かって傾動する際には、フック部材4は、基端部がケース3の内部で支持され、先端部が矢印A2方向に傾動して係止する。先端部4aが下方に向かって傾動すると、後述するように、フック部材4はその位置で係止される。
【0017】
図3(c)には、フック部材4の先端部4aが下方に傾動し、コートCが掛けられた状態のフック装置2について示されている。図3(c)に示されるように、フック装置2は、ケース3から引き出されたフック部材4に例えばコートCを掛けることが可能に構成されている。本実施形態では、鉄道車両の客室の内部に車両の前後方向に複数の組のシート1が配置され、シート1の後方に配置されたシートに座った乗客が、シート1に設けられたフック装置2に、例えばコートCを引っ掛けておくことができる。これにより、乗客は鉄道車両に乗っている間にコートCを持たずに済み、乗客の煩わしさを少なく抑えることができる。また、本実施形態では、複数設けられたシート1のそれぞれにフック装置2が設けられているので、シート1の後方に配置されたシートに座った乗客の個々に対し、専用のコート掛けを提供することができる。
【0018】
フック装置2の構成についてより詳細に説明する。フック装置2の分解斜視図を図4に示す。
【0019】
ケース3は、第1ケース部材3bと第2ケース部材3cとが互いに接続されることによって組み立てられる。ケース3の内部には、フック部材4と、フック部材4の一端に取り付けられケース3に対して回転移動を行う回転部材5が収納される。フック装置2は、ピン6及びピン7を有している。回転部材5は、ピン6によって軸支されることにより、第1ケース部材3bに対して水平方向に回転可能に取り付けられる。
【0020】
フック部材4は、ピン7を介し、回転部材5に対して枢止され、鉛直方向に回動可能に構成されている。本実施形態では、回転部材5が、フック部材4に向けて延びた2つのフランジ部5a及びフランジ部5bを有している。フランジ部5aには、フランジ部5aを厚さ方向に貫通するように穴5cが設けられている。フランジ部5bには、フランジ部5bを厚さ方向に貫通するように穴5dが設けられている。また、フック部材4には、穴5c及び穴5dに対応した位置に、穴4bが設けられている。フック部材4は、フランジ部5a及びフランジ部5bの間に挟まれた状態で、ピン7が、フランジ部5bの穴5d、フック部材4の穴4b及びフランジ部5aの穴5cを通されることにより、ピン7によって軸支され、回転部材5に対し鉛直方向に回転可能に取り付けられている。
【0021】
ピン6は、鉛直方向に延びるように、第1ケース部材3bと回転部材5とを接続している。これにより、回転部材5は、鉛直方向に延びた第1回転軸S1を中心に、第1ケース部材3bに対して水平方向に回動可能に構成されている。なお、本実施形態では、ピン6が鉛直方向に延びるように配置され、第1回転軸S1が鉛直方向に延びる構成について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。第1回転軸S1は、厳密に鉛直方向に延びるように構成されてなくてもよい。少なくとも、第1回転軸S1が、鉛直方向成分を有する方向に延びるように構成されればよい。
【0022】
ピン7は、水平方向に延びるように、回転部材5とフック部材4との間を接続している。これにより、フック部材4は、水平方向に延びた第2回転軸S2を中心に、鉛直方向に回動可能に構成されている。なお、本実施形態では、ピン7が水平方向に延びるように配置され、第2回転軸S2が水平方向に延びる構成について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。第2回転軸S2は、厳密に水平方向に延びるように構成されてなくてもよい。少なくとも、第2回転軸S2が、水平方向成分を有する方向に延びるように構成されればよい。
【0023】
フック部材4は、先端部4aとは逆側の基端部に、先端部4aとは逆側の方向に向かって突出する係止部4cを有している。本実施形態では、係止部4cは、フック部材4の基端部に形成された爪状の突起である。係止部4cは、フック部材4が第2回転軸S2を中心に先端部4aが下方へ傾動したときに、上方に傾動するように構成されている。従って、フック部材4がケース3から引き出されさらに第2回転軸S2を中心に回動したときに(図3(b))、フック部材4の基端部に設けられた係止部4cがケース3の内部でケース3に向かって突出するように、係止部4cが構成されている。
【0024】
第1ケース部材3bには、フック部材4がケース3から引き出され、さらに第2回転軸S2を中心に回転移動を行ったときに、ケース3に向かって突出する係止部4cと係止するために形成された、被係止部3dが形成されている。本実施形態では、被係止部3dは、ケース3の厚みを減じて形成された凹穴である。本実施形態では、被係止部3dは、係止部4cが上方に向かって突出したときに係止部4cと係止することが可能なように、第1ケース部材3b内における上側の位置に形成されている。
【0025】
フック装置2は、収納付勢部材8を備えている。収納付勢部材8は、ケース3の内部で、回転部材5と第2ケース部材3cとの間の位置に配置されている。収納付勢部材8は、弾性体によって構成され、本実施形態ではバネである。収納付勢部材8は、回転部材5に当接し、フック部材4がケース3の内部へ収納された収納位置へ向かうように、回転部材5を付勢している。つまり、収納付勢部材8は、フック部材4が展開位置から収納位置に戻るように回転部材5を付勢している。
【0026】
図5(a)及び図5(b)に、回転部材5が第1回転軸S1を中心に回転移動を行う際のフック装置2の断面図を示す。図5(a)及び図5(b)は、フック装置2を上方から見たときの、フック装置2の内部の構成を示した断面図である。図5(a)及び図5(b)では、収納付勢部材8の位置での断面図が示されている。図5(a)には、フック部材4がケース3の内部に収納された状態のフック装置2の断面図について示され、図5(b)には、フック部材4がケース3から引き出された状態のフック装置2の断面図について示されている。
【0027】
回転部材5は収納付勢部材8によってフック部材4がケース3の内部に収納される収納位置に向かう方向へ付勢されているので、回転部材5及びフック部材4に対し何ら力が作用していない状態では、図5(a)に示されるように、フック部材4がケース3の内部に収納された収納位置にある状態が維持される。図5(a)に示された状態から、収納付勢部材8による付勢力に抗しながらフック部材4をケース3から引き出す方向への力F1をフック部材4へ作用させると、図5(b)に示されるようにフック部材4がケース3から出た展開位置に回動する。このように、フック部材4は、ケース3に入った収納位置とケース3から出た展開位置との間で、開口3aを介してケース3に出入り可能に構成されている。フック部材4を展開位置へ回動させる際には、回転部材5における、開口3aよりもフック部材4の引き出される側の方向に突出した部分を第2ケース部材3cに向かう方向へ押し込み、フック部材4を引き出される方向へ若干量移動させてから、フック部材4を摘み、そこからフック部材4を大きく移動させればよい。
【0028】
回転部材5は、フック部材4がケース3から十分に引き出され、それ以上の回転部材5による回転を必要としない位置で、即ちフック部材4が鉛直方向に傾動を行う位置で、第2ケース部材3cの被当接部3eに当接するストッパ部5eを有している。ストッパ部5eが被当接部3eに当接することにより、回転部材5によるそれ以上の回転移動を停止させると共に、フック部材4が傾動可能となる位置にフック部材4を保持することができる。
【0029】
また、図4に示されるように、フック装置2は、解除付勢部材9を備えている。解除付勢部材9は、回転部材5とフック部材4との間の位置に配置されている。解除付勢部材9は、弾性体によって構成され、本実施形態ではバネである。解除付勢部材9は、フック部材4の先端部4aが上方へ向かうようにフック部材4を付勢している。つまり、解除付勢部材9は、フック部材4の係止部4cと第1ケース部材3bの被係止部3dとの係止が解除される解除位置へ、フック部材4を付勢している。
【0030】
図6(a)及び図6(b)に、フック部材4が第2回転軸S2を中心に傾動を行う際のフック装置2の断面図を示す。図6(a)及び図6(b)は、フック装置2を側方から見たときの、フック装置2の内部の構成を示した断面図である。図6(a)及び図6(b)では、解除付勢部材9の位置での断面図が示されている。図6(a)には、フック部材4が第2回転軸S2を中心とする回動をまだ行っていない状態のフック装置2の断面図について示され、図6(b)には、フック部材4が第2回転軸S2を中心とする回動を既に行った状態のフック装置2の断面図について示されている。
【0031】
フック部材4は、解除付勢部材9によって、先端部4aが上方へ向かうように付勢されている。従って、フック部材4に対し何ら力が作用していない状態では、図6(a)に示されるように、フック部材4は、係止部4cと第1ケース部材3bの被係止部3dとの係止が解除された解除位置にある状態が維持される。図6(a)に示された状態から、解除付勢部材9による付勢力に抗しながら、第2回転軸S2を中心とした回転方向への力F2をフック部材4へ作用させると、図6(b)に示されるようにフック部材4が第2回転軸S2を中心とした回動することにより、フック部材4の先端部4aが鉛直方向下方に傾動する。
【0032】
フック部材4の先端部4aが下方に移動すると、フック部材4の基端部に設けられた係止部4cが上方に傾動する。その際、係止部4cは、第1ケース部材3bの被係止部3dと係止する。
【0033】
図7(a)及び図7(b)に、フック部材4に係止部4cが設けられた位置での、フック装置2の断面図を示す。図6(a)及び図6(b)と同様に、図7(a)には、フック部材4が第2回転軸S2を中心とする傾動をまだ行っていない状態のフック装置2の断面図について示され、図7(b)には、フック部材4が第2回転軸S2を中心とする回転移動を既に行った状態のフック装置2の断面図について示されている。
【0034】
図7(a)に示されるようにフック部材4が傾動をまだ行っていない状態では、係止部4cは上方に傾動しておらず、係止部4cはケース3の内部に収納されている。図7(b)に示されるように先端部4aが下方に傾動すると、フック部材4が回転移動を行うことにより、係止部4cは上方に向かって傾動する。このとき、係止部4cは、被係止部3dの内部に受け入れられる。このように、係止部4cと被係止部3dとが係合すると、収納付勢部材8の付勢力に抗して、フック部材4が係止位置に保持される。
【0035】
係止部4cが被係止部3dの内部に挿入されて係止部4cと被係止部3dとが係合された係止位置にフック部材4が移動すると、フック部材4が係止位置から水平方向に容易に動かずに、フック部材4による収納位置への移動が規制される。これにより、フック部材4が係止位置に保持される。また、フック部材4に物を掛けたときに、物の荷重による鉛直方向下方への力F2がフック部材4に作用すると、フック部材4の基端部下方に設けられた平坦部4dと回転部材5に設けられた凸部5fとが当接することによっても、フック部材4の係止位置が保持される。このようにフック装置2が構成されるので、フック部材4に物が掛けられたときには、フック部材4が安定した状態で物を支持することができる。
【0036】
また、本実施形態では、解除付勢部材9が回転部材5とフック部材4との間に配置されているので、フック部材4に物が掛けられると、荷重の一部が解除付勢部材9によっても支持される。従って、フック部材4に物を掛けたときに、物の荷重によってフック部材4の係止部4cから第1ケース部材3bに設けられた被係止部3dに作用する応力を小さく抑えることができる。従って、第1ケース部材3bの厚みを減じるだけで被係止部3dを形成することができる。これにより、フック装置2の構成を簡易にすることができる。
【0037】
上記の実施形態によれば、回転部材5が、鉛直方向に延びた第1回転軸S1を中心に、ケース3に対して水平方向に回転移動を行った後にフック部材4の先端部4aが僅かに下方に傾動するだけでフック部材4を係止位置に配置することができるので、フック部材4による鉛直方向への移動量を少なく抑えることができる。従って、鉛直方向に関し、スペースが限られた場所においても、フック装置2を設置することができる。
【0038】
本実施形態では、シート1の背面における鉛直方向への小さなスペースにフック装置2が設けられている。シート1の背面にフック装置2が設けられるので、乗客は周囲に気を遣わずにフック装置2を使用することができる。従って、使い勝手のよいシート1を提供することができる。鉛直方向に関し狭小なスペースにもフック装置2を設けることができるので、様々な場所にフック装置2を設けることができ、より広い範囲でフック装置2を適用することができる。また、本実施形態ではシート1の背面にフック装置2を設けることができるので、例えば、鉄道車両の客室内部に配置されたシート1の全てにおいて、シート1の背面にフック装置2を設けることができる。従って、最前列のシートに座った乗客についてもフック装置2を使用できるように構成されれば、鉄道車両の客室内部の全ての乗客が、フック装置2を各自使用できるように鉄道車両を構成することができる。
【0039】
また、本実施形態では、フック部材4がケース3の内部に収納される収納位置に向かうように回転部材5を付勢する収納付勢部材8が配置されているので、フック部材4に掛けられた物をフック部材4から取り外したときには、回転部材5及びフック部材4が自動的に収納位置へ移動する。つまり、回転部材5及びフック部材4が第1回転軸S1を中心に自動的に戻るための回転移動を行う。そのため、フック装置2を使用した乗客は、使用を終えたときに、回転部材5及びフック部材4を水平方向に戻す動作を行わずに済み、乗客の手間を煩わせずに済む。従って、使用勝手のよいフック装置2を提供することができる。
【0040】
また、本実施形態では、先端部4aが上方へ向かうようにフック部材4を付勢する解除付勢部材9が配置されているので、フック部材4に掛けられた物をフック部材4から取り外したときには、先端部4aが上方に向かって傾動するようにフック部材4が自動的に移動する。従って、フック部材4による収納位置への移動を規制するように係止部4cと被係止部3dとが係合した係止位置から、係止部4cと被係止部3dとの係合が解除される非係止位置へ、フック部材4が自動的に移動する。これにより、フック部材4が、ケース3の収納位置へ自動的に移動する。このように、物がフック部材4から外されると、フック部材4は係止位置から非係止位置に自動的に移動すると共に、展開位置から収納位置へと自動的に移動するので、乗客の手間を煩わせずに済む。
【0041】
また、本実施形態では、回転部材5が、第2ケース部材3cに当接するストッパ部5eを有しているので、ストッパ部5eが回り止めとして機能すると共に、フック部材4の非係止位置から係止位置への移行ができる状態にフック部材4を保持することができる。従って、ストッパ部5eが第2ケース部材3cに当接するまで回転部材5及びフック部材4を回転させれば、その状態でフック部材4を使用できるので、使用勝手のよいフック装置2を提供することができる。
【0042】
なお、上記の実施形態では、回転部材5及びフック部材4が、収納付勢部材8によって、フック部材4がケース3の内部に収納される収納位置に向かう方向に付勢され、フック部材4が、解除付勢部材9によって、先端部4aが上方に向かう方向に付勢された形態について説明したが、フック装置2は上記の実施形態に限定されない。フック装置2は、必ずしも収納付勢部材8及び解除付勢部材9の両方が設けられた構成でなくてもよい。収納付勢部材8による付勢力が大きく、収納付勢部材8による付勢力のみで先端部4aが上方に向かう方向に移動すると共にフック部材4をケース3の内部に向かう方向に移動させることができるのであれば、解除付勢部材9は設けられなくてもよい。
【0043】
また、上記の実施形態では、収納付勢部材8及び解除付勢部材9がバネによって構成される形態について説明したが、収納付勢部材8及び解除付勢部材9は他の材料の弾性体によって構成されてもよい。例えば、ゴムによって構成されてもよい。
【0044】
また、上記の実施形態では、フック装置2は、鉄道車両のシート1に設けられる形態について説明したが、上記の実施形態に限定されない。鉄道車両の客室の内部に設けられるのであれば、フック装置2は、他の位置に設けられてもよい。例えば、客室の壁面に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0045】
2 フック装置
3 ケース
3d 被係止部
3e 被当接部
4 フック部材
4c 係止部
5 回転部材
5e ストッパ部
8 収納付勢部材
9 解除付勢部材
S1 第1回転軸
S2 第2回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7