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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20230629BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230629BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20230629BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20230629BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230629BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230629BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20230629BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20230629BHJP
   A61Q 9/02 20060101ALI20230629BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20230629BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/06
A61K8/25
A61K8/31
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/92
A61Q5/00
A61Q9/02
A61Q15/00
A61Q19/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019209059
(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公開番号】P2021080208
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】小出 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】山科 拓也
(72)【発明者】
【氏名】丹波 恵
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-182348(JP,A)
【文献】特開2004-262887(JP,A)
【文献】特開2013-103892(JP,A)
【文献】特開2002-003356(JP,A)
【文献】国際公開第2019/059023(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/203717(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)、下記成分(B)、下記成分(C)、及び下記成分(D)を含有し、前記成分(A)の含有割合が0.01~15.0質量%、前記成分(C)の含有割合が25.0~80.0質量%であり、前記成分(B)と前記成分(A)の質量比[成分(B)/成分(A)]が0.003~0.18である、化粧料組成物。
成分(A):オクテニルコハク酸デンプンエステル金属塩及び/又はタルクである粉体
成分(B):IOB値が0~0.45の油性成分
成分(C):エタノール
成分(D):水
【請求項2】
前記成分(B)の含有割合が1.0質量%以下である請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記化粧料組成物がノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤を含まないか、又は、含み、前記化粧料組成物中のノニオン性界面活性剤の含有割合とアニオン性界面活性剤の含有割合との合計が0.1質量%以下である請求項1又は2に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記化粧料組成物が増粘剤を含まないか、又は、含み、前記化粧料組成物中の増粘剤の含有割合が1.0質量%以下である請求項1又は2に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ボディローション、清涼化粧料、デオドラント剤などの化粧料の中には、粉体が配合されたものが多く存在する。粉体は吸水性や吸油性に優れるため、これらの化粧料に粉体を配合することは、汗や皮脂を吸着する、べたつく肌をさらとした肌触りにすることができるという効果が得られる点で非常に有用である。粉体を配合したデオドラント剤としては、例えば、特許文献1に開示のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-121124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、粉体を配合した従来の化粧料では、粉体が沈降して凝集・固化する、いわゆる「ケーキング」を生じやすいという問題があった。強いケーキングが生じることにより、使用時に振とうしても粉体を分散させること(再分散)が困難となる場合がある。また、このような化粧料を噴霧容器に充填して噴霧する場合には、粉体の凝集物が噴霧機構に詰まり、噴霧不良を生じるおそれがある。また、粉体が容器の底に固まっており振とうしても粉体が再分散しない場合、美観が劣るという問題がある。上記のようなケーキングの問題は、エタノールの含有量が多い化粧料や、粘度の低い化粧料で特に生じやすい傾向にある。
【0005】
従って、本発明の目的は、粉体を含む化粧料組成物でありながら、ケーキングが抑制されており粉体の再分散性が良好であり、なおかつ、美観にも優れる化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、成分(A):オクテニルコハク酸デンプンエステル金属塩及び/又はタルクである粉体、成分(B):IOB値が0~0.45の油性成分、成分(C):エタノール、並びに成分(D):水を含有し、成分(A)の含有割合が0.01~15.0質量%、成分(C)の含有割合が25.0~80.0質量%であり、成分(B)と成分(A)の質量比[成分(B)/成分(A)]が0.003~0.18である化粧料組成物は、ケーキングが抑制されており粉体の再分散性が良好であり、なおかつ、美観にも優れることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、下記成分(A)、下記成分(B)、下記成分(C)、及び下記成分(D)を含有し、上記成分(A)の含有割合が0.01~15.0質量%、上記成分(C)の含有割合が25.0~80.0質量%であり、上記成分(B)と上記成分(A)の質量比[成分(B)/成分(A)]が0.003~0.18である、化粧料組成物を提供する。
成分(A):オクテニルコハク酸デンプンエステル金属塩及び/又はタルクである粉体
成分(B):IOB値が0~0.45の油性成分
成分(C):エタノール
成分(D):水
【0008】
上記化粧料組成物中の上記成分(B)の含有割合は1.0質量%以下であることが好ましい。
【0009】
上記化粧料組成物は、ノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤を含まないか、又は、含み、上記化粧料組成物中のノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤の含有割合は0.1質量%以下であることが好ましい。
【0010】
上記化粧料組成物は、増粘剤を含まないか、又は、含み、上記化粧料組成物中の増粘剤の含有割合は1.0質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の化粧料組成物は、粉体を含む化粧料組成物でありながら、ケーキングが抑制されている。このため、粉体が沈降した状態から振とうすることで粉体が容易に再分散し、噴霧容器に充填して噴霧した際に噴霧機構に詰まりにくい。また、本発明の化粧料組成物は、振とうすることで粉体が容易に再分散するため、美観にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の化粧料組成物は、オクテニルコハク酸デンプンエステル金属塩及び/又はタルクである粉体、IOB値が0~0.45の油性成分、エタノール、並びに水を少なくとも含む。なお、本明細書において、オクテニルコハク酸デンプンエステル金属塩及び/又はタルクである粉体を「成分(A)」、IOB値が0~0.45の油性成分を「成分(B)」、エタノールを「成分(C)」、水を「成分(D)」とそれぞれ称する場合がある。
【0013】
すなわち、本発明の化粧料組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)を少なくとも含む。本発明の化粧料組成物は、上記成分(A)~(D)以外の成分を含んでいてもよい。また、本発明の化粧料組成物に含まれる各成分、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、及び他の成分などの各成分は、それぞれ、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0014】
[成分(A)]
成分(A)は、オクテニルコハク酸デンプンエステル金属塩及びタルクからなる群より選ばれる粉体である。すなわち、成分(A)は、オクテニルコハク酸デンプンエステル金属塩及びタルクの一方又は両方である。成分(A)は、化粧料組成物において一般的に用いられる成分であり、例えば、使用後の肌や毛髪へのサラサラ感の付与、皮脂の吸着、塗布後の肌の色調調整などの効果を奏する目的で用いられる。本発明の化粧料組成物は、成分(A)を成分(B)~(D)と組み合わせて用いることでピッカリングエマルションを形成することにより、成分(A)のケーキングを抑制し、再分散性を向上させることを特徴としている。成分(A)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0015】
上記オクテニルコハク酸デンプンエステル金属塩としては、オクテニルコハク酸デンプンエステルのアルミニウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、鉄塩などが挙げられる。中でも、アルミニウム塩(オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム)が好ましい。上記オクテニルコハク酸デンプンアルミニウムは、オクテニルコハク酸デンプンAl又はオクテニルコハク酸トウモロコシデンプンアルミニウムと表記される場合がある。
【0016】
本発明の化粧料組成物において、成分(A)は粉体である。オクテニルコハク酸デンプンエステル金属塩は、比較的高温(例えば、70℃以上)に加温することで、親水化・ゲル化(所謂、α化や糊化)し粉体状態でなくなり、増粘剤として使用されることがある。本発明の化粧料組成物では、粉体の状態で含まれることが特徴である。このため、本発明の化粧料組成物の製造工程において、オクテニルコハク酸デンプンエステル金属塩は、70℃未満(より好ましくは65℃未満)で用いられることが好ましい。
【0017】
上記タルクとしては、特に限定されず、化粧料組成物に一般的に用いられているタルクを使用することができる。
【0018】
上記タルクの吸油量は、特に限定されないが、18~50ml/100gが好ましい。また、上記タルクの平均粒径D50は、特に限定されないが、0.5~25.0μmが好ましい。
【0019】
なお、本明細書において、タルクの吸油量はJIS K5101に記載の測定方法に準拠して測定される値である。また、本明細書において、タルクの平均粒径D50はレーザー回折法により測定される値である。
【0020】
成分(A)は市販品を用いることもできる。オクテニルコハク酸デンプンエステル金属塩の市販品としては、例えば、商品名「DRY-FLO PURE」、商品名「DRY-FLO PC」(以上、Nouryon社製)、商品名「オクティエ」(日澱化学株式会社製)などが挙げられる。タルクの市販品としては、商品名「タルクMS」(日本タルク株式会社製)などが挙げられる。
【0021】
本発明の化粧料組成物中の成分(A)の含有割合は、本発明の化粧料組成物100質量%に対して、0.01~15.0質量%であり、好ましくは0.1~10.0質量%、より好ましくは0.4~5.0質量%である。上記含有割合が0.01質量%未満では、そもそも強いケーキングを生じないため、本発明による明確なケーキング抑制効果を発揮しない。また、上記含有割合が0.4質量%以上の場合には、成分(A)による、肌への摩擦抵抗を低減して、化粧料組成物使用後の肌にサラサラ感を付与する効果が特に向上する。上記含有割合が15.0質量%を超えると、成分(A)の量が多くなりすぎて分散不良が生じる場合がある。また、ピッカリングエマルションを形成しなかった余剰の成分(A)が凝集し沈降して再分散困難なケーキングを生じる場合がある。上記含有割合を10.0質量%以下とすることにより、成分(A)により塗布後の肌が白く見える、所謂「白浮き」の抑制効果が特に向上し、また、粉体による感触が強くなりすぎず使用感が特に向上する。上記成分(A)の含有割合は、本発明の化粧料組成物中の全ての成分(A)の含有割合の合計である。
【0022】
[成分(B)]
成分(B)は、IOB値が0~0.45である油性成分である。成分(B)はIOB値が低い低極性又は非極性の油性成分であり、成分(C)の存在下で成分(C)に溶解しにくく、成分(A)と成分(D)とでピッカリングエマルションを形成する作用を発揮する。そして、ピッカリングエマルションを形成することにより、成分(A)がエマルションの構成成分となるため、粒子のみで沈降して最密充填し、強くケーキングすることを抑制できる。このため、沈降後は振とうにより容易に再分散させることが可能となる。成分(B)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。
【0023】
成分(B)のIOB値は、0~0.45であり、より好ましくは0~0.35、さらに好ましくは0~0.15である。上記IOB値が0.45以下であることにより、成分(C)の存在下で成分(C)に完全に溶解せず、成分(A)と成分(D)とでピッカリングエマルションを形成する作用を発揮する。なお、上記IOB値は、本発明の化粧料組成物に含まれる油性成分ごとの値であり、成分(B)を二種以上含む場合は各油性成分の値である。IOB(Inorganicity Organicity Balance)値は、無機性値(Inorganicity)を有機性値(Organicity)で除した値である。各成分(B)のIOB値は、例えば甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、三共出版、1984年発行(p11~17)に基づいて求めることができる。
【0024】
成分(B)としては、IOB値が0~0.45である、シリコーン油、炭化水素油、エステル油、植物油などが挙げられる。
【0025】
上記植物油としては、例えば、マカデミアナッツ油、ユーカリ油、シア脂(シアバター)、ホホバ油、ヒマシ油、シュガースクワラン、オリーブスクワランなどが挙げられる。
【0026】
上記エステル油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、イソノナン酸イソノニル、アジピン酸ジイソプロピル、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチルなどが挙げられる。
【0027】
上記シリコーン油としては、例えば、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン等のジメチルシリコーン油;メチルフェニルポリシロキサン等のメチルフェニルシリコーン油などが挙げられる。
【0028】
上記炭化水素油としては、例えば、イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、流動イソパラフィン、流動パラフィン等、水添ポリイソブテン、イソドデカンなどが挙げられる。
【0029】
成分(B)は、25℃で液状であることが好ましい。成分(B)のブルックフィールド型回転粘度計を用いて25℃で測定された粘度ηは、30000mPa・s以下(例えば、0.1~30000mPa・s)が好ましく、より好ましくは1.0~10000mPa・sである。
【0030】
成分(B)としては、中でも、流動パラフィン、スクワラン(シュガースクワラン、オリーブスクワランも含む)、ホホバ油、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、メチルフェニルポリシロキサン、2-エチルヘキサン酸グリセリル、メチルポリシロキサン、ヒマシ油が好ましい。
【0031】
本発明の化粧料組成物中の成分(B)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の化粧料組成物100質量%に対して、1.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。上記含有割合が1.0質量%以下であると、成分(B)のすべてがピッカリングエマルションに取り込まれやすく、より美観に優れるものとすることができる。上記含有割合が1.0質量%を超える場合には、成分(B)の配合量が過剰となって、ピッカリングエマルションに含まれない成分(B)が油滴となったり、表層に浮いたり、容器壁面に付着したりして、美観を損なう場合がある。上記成分(B)の含有割合は、特に限定されないが、例えば、0.002質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上である。上記成分(B)の含有割合は、本発明の化粧料組成物中の全ての成分(B)の含有割合の合計である。
【0032】
本発明の化粧料組成物において、成分(B)と成分(A)の質量比[成分(B)/成分(A)]は、0.003~0.18であり、好ましくは0.01~0.17である。上記質量比が0.003未満であると、成分(A)の量に対して油分である成分(B)の量が不充分となり、ピッカリングエマルションに含まれない成分(A)が多量に存在するため、ケーキングを生じ、再分散性が低下する。上記質量比が0.18を超えると、成分(A)の量に対して成分(B)の量が過剰となり、ピッカリングエマルションに含まれない成分(B)が油滴となったり、表層に浮いたり、容器壁面に付着したりして、美観を損なう。化粧料組成物中に油相が形成されて油浮きが生じ、美観が損なわれるおそれがある。
【0033】
[成分(C)]
成分(C)はエタノールである。成分(C)を用いることにより、ピッカリングエマルションにおける水相の比重が低下し、エマルション粒子が沈降する。これにより、本発明の化粧料組成物の美観が向上する。また、本発明の化粧料組成物に速乾性やさっぱりとした使用感を付与できる。さらに、本発明の化粧料組成物の製造工程において、成分(C)は、疎水性である成分(A)を分散させる分散媒の役割も有する。
【0034】
本発明の化粧料組成物中の成分(C)の含有割合は、本発明の化粧料組成物100質量%に対して、25.0~80.0質量%であり、好ましくは30.0~70.0質量%、より好ましくは40.0~60.0質量%である。上記含有割合が25.0質量%未満であると、化粧料組成物中で、エマルション粒子の一部が浮上し、美観が悪くなる。上記含有割合が80.0質量%を超えると、刺激感や乾燥感が生じやすくなる。
【0035】
[成分(D):水]
成分(D)は水であり、特に限定されないが、精製水が好ましい。本発明の化粧料組成物中の成分(D)の含有割合は、本発明の化粧料組成物100質量%に対して、5.0~74.98質量%が好ましく、より好ましくは15.0~70.0質量%、さらに好ましくは20.0~65.0質量%、特に好ましくは30.0~55.0質量%である。
【0036】
[その他の成分]
本発明の化粧料組成物は、上記成分(A)~(D)以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。上記その他の成分しては、特に限定されず、例えば、化粧品や医薬部外品に通常用いられる成分等が挙げられる。具体的には、例えば、成分(C)以外の低級アルコール;カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤;多価アルコール;グリチルリチン酸及びその塩等の抗炎症剤;メントール等の清涼剤;リン酸及びその塩類、クエン酸及びその塩類、乳酸及びその塩類、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等のpH調整剤;香料;紫外線吸収剤;酸化防止剤;防腐剤;金属イオン封鎖剤;色素;顔料;ビタミン類;アミノ酸類;収斂剤;美白剤;動植物抽出物;中和剤;殺菌剤;制汗剤;消臭剤;酸;アルカリなどが挙げられる。
【0037】
上記制汗剤は、例えば、皮膚を収斂することにより汗の発生を抑制する薬剤である。上記制汗剤としては、例えば、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛などが挙げられる。
【0038】
上記殺菌剤は、例えば、体臭の原因となる物質を生成する皮膚常在菌の増殖を抑制する薬剤である。上記殺菌剤としては、例えば、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロルヘキシジン、フェノール、トリクロロカルバニリド、グルコン酸クロルヘキシジン、トリクロサン、トリクロカルバン、ピロクトンオラミン、ジンクピリチオン、サリチル酸、ソルビン酸、塩化リゾチームなどが挙げられる。
【0039】
上記清涼剤としては、例えば、メントール、メンチルグリセリルエーテル、乳酸メンチル、カンファー、イシリンなどが挙げられる。
【0040】
本発明の化粧料組成物は、ノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤を含まないか、又はノニオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤の含有割合が0.1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.01質量%以下である。本発明の化粧料組成物は、界面活性剤を用いることなくエマルションを形成して粉体を分散することができるため、粉体の分散のための界面活性剤の使用を必須としない。そして、上記含有割合が0.1質量%以下であると、ノニオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤に由来する皮膚への刺激やべたつきを防止することができる。また、成分(A)によるピッカリングエマルションの形成を妨げないため、成分(A)のケーキングをより一層抑止できる。
【0041】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、及びこれらのアルキレンオキシド付加物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンステロール及びその誘導体、ポリオキシエチレンラノリン及びその誘導体、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、シュガーエステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油などが挙げられる。
【0042】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシルメチルタウリン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩、アルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸及びその塩、N-アシルサルコシン及びその塩、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩などが挙げられる。
【0043】
本発明の化粧料組成物は、増粘剤を含まないか、又は増粘剤の含有割合が1.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下である。化粧料組成物に粉体を配合する場合、一般的に、増粘剤を配合して粘度を高くすることで粉体の沈降を防ぐことができる。しかしながら、本発明の化粧料組成物は、増粘剤によらず再分散性が良好であるため、増粘剤を配合して化粧料組成物の粘度を高くする必要がない。また、増粘剤による塗布後のべたつきを防止することができる。なお、成分(A)、成分(B)に相当する成分は増粘剤には含まれないものとする。
【0044】
上記増粘剤としては、水溶性高分子が挙げられる。上記水溶性高分子としては、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガムなどが挙げられる。
【0045】
本発明の化粧料組成物の剤型としては、特に限定されないが、ローション、ミスト、シート、ロールオンなどが挙げられる。本発明の化粧料組成物は、再分散性が良好であり、使用時に噴霧機構に詰まりにくいため、ミスト剤型として好ましく用いられる。本発明の化粧料組成物がミスト剤型である場合、ミスト状に吐出可能な容器(噴霧容器)に充填されてミスト製品として用いられる。上記ミスト製品は、内容物をミスト状に吐出可能な容器と、上記容器内に充填された本発明の化粧料組成物とを備える。上記容器としては、例えば、ポンプ式ディスペンサー、又は、トリガー式ディスペンサーを有する容器が挙げられる。
【0046】
本発明の化粧料組成物としては、体臭抑制剤(デオドラント剤)、清涼化粧料、化粧水、頭髪化粧料、シェービング化粧料、拭き取り化粧料(シート化粧料)などが挙げられる。本発明の化粧料組成物は、粉体を含み且つエタノールが高配合される化粧料組成物に用いることができるため、好ましくは、デオドラント剤(体臭を抑制する目的で用いられる防臭剤)、清涼化粧料である。
【0047】
本発明の化粧料組成物を身体に塗布する場合の塗布部としては、例えば、腋下、腕、足、足裏、首、胸、体幹部、臀部、顔、頭髪などが挙げられる。
【0048】
本発明の化粧料組成物は、特に限定されず、公知乃至慣用の方法により製造することができる。例えば、上記各成分を混合し、ディスパーミキサー、パドルミキサー等の公知の撹拌装置を用いて撹拌する方法などで、各成分を均一化する方法が挙げられる。
【0049】
本発明の化粧料組成物は、水[成分(D)]中に、粉体としてオクテニルコハク酸デンプンエステル金属塩及び/又はタルクである粉体[成分(A)]を特定の割合で配合し、且つIOB値が0~0.45の油性成分[成分(B)]を、これらの質量比が特定の範囲内となるように配合することにより、成分(B)の周りに成分(A)が配向したピッカリングエマルションを形成させる。これにより、成分(A)はエマルション粒子の状態(嵩高い状態)で沈殿するため、粒子のみで沈殿する場合と異なり最密充填されないため、ケーキングしにくくなる。このため、使用時は振とうすることで容易に成分(A)を再分散させることができる。さらに、容器底部にケーキングした粉体が残存して美観を損なうことがないため、本発明の化粧料組成物は美観にも優れる。
また、成分(A)に対する成分(B)の割合が高すぎると余剰の成分(B)が油滴となったり、液面に浮いたり、壁面に付着したりして、美観が低下する。また、成分(A)に対する成分(B)の割合が低すぎるとピッカリングエマルションを形成しない成分(A)が存在し、ケーキングを生じる場合がある。
さらに、エタノール[成分(C)]を特定の割合で配合することにより、ピッカリングエマルションにおける水相の比重を低下させ、これにより、エマルション粒子を沈降させ、美観を優れたものとできる。また、速乾性を付与することができる。
これらにより、本発明の化粧料組成物は、粉体のケーキング抑止性・再分散性に優れ、美観にも優れたものとなる。
【実施例
【0050】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量。所謂純分)であり、特記しない限り「質量%」で表す。
【0051】
実施例1~42、比較例1~10
表に記した各成分(成分(A)~(D))を用い、実施例及び比較例の各化粧料組成物を常法により調製した。なお、油性成分のIOB値について、流動パラフィンは0、スクワランは0、ホホバ油は0.07、2-エチルヘキサン酸セチルは0.13、イソノナン酸イソノニルは0.2、メチルフェニルポリシロキサンは0.28、2-エチルヘキサン酸グリセリルは0.35、メチルポリシロキサンは0.4、ヒマシ油は0.43、アジピン酸ジイソプロピルは0.55である。
【0052】
(評価)
実施例及び比較例で得られた各化粧料組成物について以下の通り評価した。評価結果は表に記載した。なお、表中の「-」は、評価を行わなかったことを示す。
【0053】
(1)美観:エマルション粒子の沈降状態
実施例及び比較例で得られた各化粧料組成物約40mlをスクリュー管(透明、容量50ml)に充填し、常温で10分間静置した後、目視にて化粧料組成物を観察し、エマルション粒子の沈降状態について下記評価基準で判定した。結果を表に記載した。
[エマルション粒子の沈降状態]
○(良好):エマルション粒子が沈降している。
×(不良):少なくとも一部のエマルション粒子が沈降せずに浮遊したり、スクリュー管の壁面に付着したりしており、美観に劣る。
【0054】
(2)美観:油滴の有無
実施例及び比較例で得られた各化粧料組成物約40mlをスクリュー管(透明、容量50ml)に充填し、50℃で7日間静置した後、目視にて化粧料組成物を観察し、油滴の有無について下記評価基準で判定した。結果を表に記載した。
[油相形成]
○(良好):油滴が存在しない。
×(不良):油滴が存在し、美観に劣る。
【0055】
(3)再分散性
実施例及び比較例で得られた各化粧料組成物約40mlをスクリュー管(透明、容量50ml)に充填し、5℃で24時間静置した後、スクリュー管を上下反転させてから元に戻す(すなわち、倒立させてから正立状態に戻す)操作をゆっくりと3回繰り返した後、スクリュー管を倒立状態として、スクリュー管底面への粉体沈降層の残存の有無と、化粧料組成物の分散状態を目視にて確認し、粉体の再分散性について下記評価基準で判定した。結果を表に記載した。
[再分散性]
○(良好):底面に粉体沈降層がなく、かつ、粉体が均一に分散する。
×(不良):底面に粉体沈降層が残存している、または、粉体が均一には分散せず凝集物が存在する。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
表に示すように、本発明の化粧料組成物は、ピッカリングエマルションが形成され、美観及び再分散性に優れていた。一方、成分(B)を配合しない場合(比較例1)、及び質量比[成分(B)/成分(A)]が小さい場合(比較例2)、ピッカリングエマルションが形成されない、もしくは不充分に形成されることで、再分散性に劣っていた。また、質量比[成分(B)/成分(A)]が大きい場合(比較例3~5)、粉体に対して油性成分が過剰となり、油滴が存在し美観に劣っていた。また、成分(C)の含有割合が少ない場合(比較例6)、水相の比重が高く、一部のエマルション粒子が上層に存在していた。また、油性成分としてIOB値が高いものを用いた場合(比較例7)、油性成分が水相に溶解し、ピッカリングエマルションを形成することができず、再分散性に劣っていた。また、粉体として無水ケイ酸を用いた場合(比較例8)、ピッカリングエマルションを形成することができなかった。このため、再分散性に劣っていた。粉体として架橋ポリスチレンを用いた場合(比較例9)、粉体同士で凝集し、再分散性に劣っていた。粉体としてNε-ラウロイル-L-リジンを用いた場合(比較例10)、粉体同士で凝集して浮き、美観及び再分散性に劣っていた。
【0062】
(4)サラサラ感
さらに、実施例1、2、4~12、16~39で得られた各化粧料組成物をポンプディスペンサーに充填し、片方の前腕の外側に約0.15mlを噴霧塗布して手でなじませた。そして、塗布後の肌について、サラサラ感(粉が肌上に存在することによって、掌との摩擦が小さくなったような感触)を評価した。上記評価は、25℃、湿度50%RHの恒温恒湿の条件下で実施した。その結果、評価を行った全ての実施例について、サラサラ感を非常に感じると評価された。
【0063】
(5)白浮き
実施例1~29で得られた各化粧料組成物をポンプディスペンサーに充填し、片方の前腕の外側に約0.15mlを噴霧塗布した。なお、噴霧塗布後になじませる操作は行わなかった。そして、塗布後の肌について、白浮き(塗布部分が白く見える現象)の発生の有無を評価した。その結果、実施例1~23、26~29については塗布部分に白浮きが見られなかった。一方、実施例24、25には塗布部分にわずかな白浮きが見られ、実施例26には塗布部分に明らかな白浮きが見られた。ただし、実施例24~26の白浮きは、塗布後になじませる操作を行った場合には、生じないものであった。
【0064】
さらに、以下に、本発明の化粧料組成物の処方例を示す。
処方例1 デオドラントミスト
エタノール 50.0質量%
スクワラン 0.15質量%
オクテニルコハク酸デンプンAl 1.5質量%
イソプロピルメチルフェノール 0.2質量%
フェノールスルホン酸亜鉛 0.5質量%
メントキシプロパンジオール 0.1質量%
メントール 0.6質量%
香料 0.2質量%
水 残部
合計 100.0質量%
【0065】
処方例2 デオドラントロールオン
エタノール 70.0質量%
流動パラフィン 0.5質量%
オクテニルコハク酸デンプンAl 5.0質量%
トリクロサン 0.1質量%
クロルヒドロキシアルミニウム 5.0質量%
ヒドロキシプロピルセルロース 0.5質量%
メントール 0.3質量%
香料 0.15質量%
水 残部
合計 100.0質量%
【0066】
処方例3 シート化粧料
不織布1gに下記組成からなる拭き取り用シート組成物4gを含浸させて、拭き取り用シート化粧料とした。
(拭き取りシート組成物)
エタノール 40.0質量%
イソノナン酸イソノニル 0.8質量%
タルク 10.0質量%
メントール 0.6質量%
香料 0.1質量%
水 残部
合計 100.0質量%
【0067】
処方例4 シェービングローション
エタノール 75.0質量%
スクワラン 0.5質量%
オクテニルコハク酸デンプンAl 8.0質量%
メントール 0.1質量%
香料 0.1質量%
水 残部
合計 100.0質量%
【0068】
処方例5 頭髪化粧料
エタノール 30.0質量%
メチルポリシロキサン 1.0質量%
オクテニルコハク酸デンプンAl 8.0質量%
香料 0.3質量%
パンテノール 1.0質量%
水 残部
合計 100.0質量%