(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】脳損傷を治療するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 7/00 20060101AFI20230629BHJP
A61F 7/02 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
A61F7/00 300
A61F7/00 331K
A61F7/02 Z
(21)【出願番号】P 2019548322
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(86)【国際出願番号】 US2018021752
(87)【国際公開番号】W WO2018165552
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-02-10
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-25
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519316058
【氏名又は名称】テクトラウム、インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(72)【発明者】
【氏名】ザック、ジョン・エフ、スリー
(72)【発明者】
【氏名】エーテル、ジェイソン・アール
(72)【発明者】
【氏名】マカロフ、セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】ボウル、デイヴィッド・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェレット、アレックス
(72)【発明者】
【氏名】スチュワート、ヴァージニア
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】倉橋 紀夫
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5871526(US,A)
【文献】国際公開第2016/025082(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/016610(WO,A1)
【文献】特開2006-288568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/00 - 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳損傷を治療するシステムであって、
ポンプ、
前記ポンプと流体連通関係にある熱交換器、
前記ポンプからの流体が前記熱交換器を迂回することを可能にするバルブ、
前記熱交換器と流体連通関係にあって頸動脈の上に配置されるブラダ、
前記熱交換器に関連して位置して、該熱交換器の下流で流体の温度を測定するように構成される温度計、そして、
前記温度計、前記バルブ、および熱交換器と電気通信関係にあるコントローラを含み、
前記コントローラが、前記温度計で測定される前記熱交換器の下流での流体の
温度である測定温度が、測定開始から10分時点から50分時点までの間の処理期間、2℃と10℃の間
の処理温度となるように、前記熱交換器に供給される電力を制御し、前記熱交換器を通る流体の流量を制御し、前記
温度計で測定される前記熱交換器の下流での流体の前記測定温度が予め定められた閾値以下の場合に、流体が前記熱交換器を迂回できるように前記バルブを開くように構成され、
第1の予め定められた温度閾値から前記処理温度までの後の下降傾斜期間と比較して、前記測定開始の初期温度から前記第1の予め定められた温度閾値への先の下降傾斜期間の方が、温度の変化が速くなるように、前記熱交換器に供給される電力および前記熱交換器を通る流体の流量を制御するように構成され、
前記初期温度が25℃未
満且つ15℃を超えるときに前記
先の下降傾斜期間及び前記後の下降傾斜期間からなる全体の下降傾斜期間が
7分と10分の間になるように、前記熱交換器に供給される電力または前記熱交換器を通る流体の流量を制御するように構成されている、
システム。
【請求項2】
前記ポンプ、前記熱交換器および前記温度計がケーシングに配置され、前記ブラダが流体管路で前記ケーシングに接続されている、請求項1のシステム。
【請求項3】
前記コントローラが、前記処理期間が経過したあと、電力がもはや供給されないか、または電力が前記熱交換器を通る流体を加熱するように供給されるように、前記熱交換器に供給される電力または前記熱交換器を通る
流体の流量を制御するように構成されている、請求項1のシステム。
【請求項4】
前記コントローラが、前記処理期間が経過したあと前記温度計で測定された流体の温度が少なくとも20℃になるまで、電力がもはや供給されないか、または電力が前記熱交換器を通る流体を加熱するように供給されるように、前記熱交換器に供給される電力または前記熱交換器を通る
流体の流量を制御するように構成されている、請求項3のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
米国特許公報第6183501号(B1)には、脳の外傷を軽減するために冷却可能な頭部及び頸部装置を有する冷却システムが開示されている。頭部装置は、各々が冷却を容易にする冷却素子を収容するパネルを含む。頭部装置は個々の患者の頭部に固定され、個々の患者の、脳に血液をもたらす頸動脈を覆い隠す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
個人がこの種の頭部冷却装置を着用する場合、快適さの問題(comfort problem)が生じる。冷たい飲み物、又はアイスクリームのような食べ物を素早く摂取した結果生じる不快感を多くの人はよく知っている。上述した頭部冷却装置の着用者は、類似の不快感を経験し得る。これらの頭部冷却装置の着用者が多大な不快感を経験する場合、着用者は、頭部冷却装置を着用する時間を短くするかも知れない。特定の最小時間閾値(threshold)を下回って処理時間を縮めると、脳の外傷を軽減するための治療の効果が減少することがある。
【課題を解決するための手段】
【0003】
前述に鑑みて、脳損傷を治療するための本発明の方法は、頸動脈に隣接して、又は頸動脈を覆って着用者の頸部に配置されるブラダ(bladder=袋体)に、熱交換器を通して流体をポンプで送り込むことを含む。この方法は、さらに、流体が熱交換器を通る際、流体から熱を取り去ること、そして、熱交換器より下流で流体の温度を測定すること、を含む。この方法はさらに、熱交換器に供給される電力(パワー)、及び熱交換器を通る流体の流れのうち少なくとも一方を制御(コントロール)することを含む。測定温度が熱交換器の下流で10分と50分の間、2℃と10℃の間にあるように、この方法は、熱交換器に供給される電力と流体の流量の少なくとも一方を制御することを含む。
【0004】
脳損傷を治療するシステムは、以下を含む:すなわち、ポンプ、熱交換器、ブラダ、温度計、そして、コントローラである。熱交換器は、ポンプと流体連通関係にある。ブラダは、頸動脈を覆って配置されるように構成されて、熱交換器と流体連通関係にある。温度計は、熱交換器に関連して位置し、熱交換器の下流で流体の温度を測定する。コントローラは、温度計および熱交換器と電気通信関係にある。コントローラは、電源が供給する電力または熱交換器を通る流量を、熱交換器の下流で温度計で測定される流体の温度が10分から50分の間、2℃と10℃の間にあるように、制御する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、人間の頭頸部の模式的な図示である。
【
図2】
図2は、脳損傷を治療するシステムの模式的な図示である。
【
図3】
図3は、
図2に表されるシステムのブラダおよびキャリアの斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に表されるシステムの温度対時間を表しているグラフである。
【
図5】
図5は、
図2に表されるシステムの冷却ユニットの模式的な図示である。
【
図6】
図6は、全体的下降傾斜期間での温度対時間の境界を表している他のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、額領域12を有し、頸部14により支持される人の頭部10を表す。
図2は、脳損傷を治療することに役立つシステム20を表す。システム20は、全体として、流体管路34、36、38、42を介してそれぞれの担体28、32により担持されるブラダ24、26(
図3)に接続される冷却ユニット22を具える。
【0007】
頸動脈は、頸部14の中を走って、血液を脳に送る。
図3を参照すると、下部のブラダ24は、頸部14の回りに配置されて、頸動脈を覆うように構成される。また、上部ブラダ26は、額領域12を包むことができる。フックおよびループ留め金具50を使用して頸部14および額領域12周辺で、ブラダ24、26を保持することができる。そして、その1つの実施例だけが
図3に示されている。脳冷却をもたらすべく、頸動脈による血液の流れを冷やし、また、額領域12を冷やすために、冷却ユニット22から冷たい流体が、ブラダ24、26にポンプ圧送される。
【0008】
図5は、冷却ユニット22を模式的に表す。冷却ユニット22は、ポンプ60、熱交換器62、コントローラ64、そして、温度計66を具える。ポンプ60、熱交換器62、コントローラ64および温度計66がケーシング68に配置され、
図5に、模式的に表される。冷却ユニット22は、冷却器入口72を有し、ブラダ24、26から比較的暖かい水を受け取る。ポンプ60は、冷却器入口72からの流体をポンプ圧送し、流体は熱交換器62で所望の温度まで冷やされることができ、それから冷却器放出口74を通してブラダ24、26の方へ送られる。望むならば、熱交換器62は、流体を加熱するために作動されることができる。冷却ユニット22は、バルブ76を含むことができ、それによって、ポンプ60からの流体が熱交換器62を迂回することができる。例示の実施例の冷却ユニット22は外部電源78から電力を受け取る。そして、それは電力を冷却ユニット22の各成構成要素へ供給できる。例えば、電源がバッテリまたはバッテリ・パックであるときは、電源78はケーシング68内に位置することもできる。冷却ユニット22は、オペレーターが冷却ユニット22を操作できるように、ディスプレーとそのインターフェイスを有することができるが、その図示は省略する。
【0009】
脳損傷を治療する方法は、
図2に表されるシステム20に関して、詳細に後述する。しかしながら、後述する手術を実行できる他のタイプのシステムによって、脳損傷を治療する方法が用いられることも可能である。この方法は、頸動脈に隣接して、または、それを覆って人の頸部に配置される下部のブラダ24に、熱交換器62(
図5)を通して流体をポンピングすることを含む。流体が熱交換器62を通過する際、流体から熱が取り去られる。温度計66は、熱交換器62を出る流体の温度を測定する。熱交換器62に供給される電力は、例えば、外部電源78から制御されることができ、または、流体の測定温度が熱交換器62の下流で10分と50分の間、2℃と10℃の間にあるように、熱交換器62による流れはコントローラ64により制御されることができる。より詳しくは、流体の温度が熱交換器62の下流で約20分から40分の間、4℃と8℃の間にあるように、熱交換器62に供給される電力は制御されることができ、または、流体の流量は、コントローラ64により制御されることができまる。より詳しくは、流体の測定温度が熱交換器62の下流で約30分間、約6℃であるように、熱交換器62または流体の流れに供給される電力はコントローラ64により制御されることができる。
【0010】
温度計66は、流体がケーシング68を出て行く前、熱交換器62から出てそれぞれ流体管路34、38に入る流体の温度を測定する。温度計66はコントローラ64と通信関係にあり、熱交換器62から出る流体の温度を測定する。測定温度に基づいて、コントローラ64は、例えば、パルス幅変調(PWM)を用いて、熱交換器62に供給される電力を調整できる。測定温度が所望の温度より高い場合、熱交換器62の冷却側に、より多くの電力を供給できる。熱交換器62への電力を制御することに加えて、または、その替わりに、コントローラ64がバルブ76を開閉することができる。例えば、測定温度が所望の温度より低い場合、バルブ76は開かれることができ、冷却器放出口74までのルートで熱交換器62を迂回することができる。例を挙げると、熱交換器を出る流体の温度があまりに冷たい(予め定められた閾値に基づく。)と温度計66が測定すると、コントローラ64は冷却器放出口74に送られる流体の温度を上げるためにバルブ76を開いて、熱交換器を迂回して熱交換器62の上流で比較的より暖かい流体を流すことができる。或いは、ポンプ60の流量は調整されることができ、例えば、低下でき、その結果、測定温度が所望の温度より低い場合、より少ない流体が熱交換器62に送られる。
【0011】
図4は、或る特定の処理サイクルについて、対時間での、熱交換器62の下流での流体の温度の特例を表す。
図4は1つの実施例であり、本発明を制限するものと解されてはならない。それは請求項により定められるものである。熱交換器62に供給される電力または熱交換器を通る流体の流れを制御して、熱交換器62を出る流体の測定温度が所望の処理期間88の間、2℃と10℃間の処理温度(
図4で6℃である。)であるようにすることができる。初期温度から第1の予め定められた温度閾値(
図4で10℃である。)まで、処理温度の初期温度(
図4で23℃である。)からの第1の変化率は、第1の予め定められた温度閾値から処理温度までの期間92の下降傾斜と比較して、第1の下降傾斜は、より急速である。
図4から分かるように、初期温度(
図4の23°C)から第1の予め定められた温度閾値(
図4の10℃)への曲線の傾斜は、第1の予め定められた温度閾値(
図4の10℃)から処理温度(
図4の6°C)への曲線の傾斜より非常に急である。これは、期間90の下降傾斜の間、第一の冷却をブラダ24、26の着用者にもたらして、第1の予め定められた温度閾値から処理温度までより長い馴化(acclimation)時間をもたらす。処理温度が外界温度より比較的低いとき、ブラダ内の流体の温度が非常に短い時間で処理温度に持ってこられると、ブラダ24、26の一部の着用者は不快感を経験する。期間90の第一の傾斜および期間92の第2の傾斜を含む一種の階段状馴化期間は、ブラダ24、26の着用者によって感じられることがある不快感を緩和する。期間90の第1の下降傾斜に続く期間92の第2の下降傾斜が10分未満であるように、電源への電力または熱交換器62による流れの量は更に制御されることができる。着用者が処理温度でブラダ24、26を着用する時間の十分量を、これは許容する。そして、それは
図4の6°Cであり、その結果、全体的処理期間(処理期間88に加えられる下降傾斜期間90、92)はあまり長くない。所望であれば、初期下降傾斜期間90の第2の下降傾斜期間92に加えられる期間は、15分未満または5分未満であり得る。
【0012】
図4は、第一の下降傾斜期間90と第2の下降傾斜期間92を表す。予め定められた傾斜を有する単一の下降傾斜期間または異なる傾斜を有する3つ以上の下降傾斜期間が設けられてもよい。初期温度から処理温度に下降するために、熱交換器62の下流での流体温度(温度計66で測定される。)のこのような期間は、全体の下降傾斜期間と呼ぶことができる。全体の下降傾斜期間が15分未満および好ましくは10分未満であることが望ましい。処理期間における全体的下降傾斜期間が、90分未満であり、好ましくは40分未満であることも望ましい。ブラダ24、26の着用者があまりにも長い間それらを着用しなければならない場合、使用規則(プロトコル)を固守することはないであろう。
【0013】
図6は、3本の曲線、すなわち、下側の下降境界線110、第1の上側下降境界線112および第2の上側下降境界線114である。下の作動領域116は、下の下降境界線110の下降傾斜と第1の上の下降境界線112の間の領域として定義される。上の作動領域118は、第1の上の下降境界線112と第2の上の下降境界線114の上の間の領域として定義される。
【0014】
システム20の流体の初期温度が通常の外気温度である15℃から25℃の間にあるとき、この方法の冷却ユニット22を全体的下降傾斜期間があまり長くないように(
図4に示される第2の下降傾斜期間92に付加される初期下降傾斜期間90と同様に)作動させることが望ましく、そして、減温は、初期温度から、下の作動領域116の中にある処理温度(
図6で約6°C)への線または曲線を時間とともにたどる。これは、境界線110の下側下降傾斜境界および境界線112の上側下降傾斜境界に囲まれている。
図6に示すように、全体の傾斜が約7分と約13分の間にあるように、コントローラ64は供給される電力または熱交換器62への流体の流れを制御する。これは、初期温度が25℃未満および15℃を超えるときである。コントローラ64も、時間とともに、温度の変化率を境界線110の下の下降傾斜と初期温度から処理温度への境界線112の第1の下降傾斜の間に線または曲線を維持するたように制御する。
図6を参照すると、初期温度が25°C未満および15°Cを超えるとき、全体的下降傾斜期間が13分未満であるように、そして、初期温度が25℃未満および15℃を超えるとき、全体的下降傾斜期間が8分未満であるように、コントローラ64はポンプ60、熱交換器62およびバルブ76の少なくとも1つを制御できる。
【0015】
下の下降傾斜境界110は、
図4に表される曲線の部分、すなわち、第1の下降傾斜期間90に加えられた第2の下降傾斜期間92に類似の経路をたどる。
図6において、15°Cから第1の予め定められた温度閾値(
図6の10°C)への下降境界線110の下降傾斜は、第1の予め定められた温度閾値(
図6の10°C)から処理温度(
図6の約6°C)への曲線の傾斜より急である。境界線112の第1の上側の下降傾斜は、0から3分まで25°Cで水平に続く。0から3分の25°Cのこの水平線は、冷却ユニット22の電気的ハードウェアをトリップし得るエネルギー源78(
図5)上のピークドローを回避することである。このことは、電力需要が最も高く初期温度が25°Cであるとき、冷却ユニット22が緩やかに冷却を始めること可能にする。境界線112の下降傾斜の0から3分への25°Cの水平状態がない場合、エネルギー源をトリップできる極端なシナリオを回避するより大きい電力および冷却ユニット22の他の電気ハードウェアが必要になり得る。そして、それは冷却ユニット22のコストに影響を与え得る。
【0016】
図6を続けて参照すると、システム20の流体の初期温度が25°Cを超えるときは、処理温度まで下降するにはより長くかかる。このことで、冷却ユニット22が、電力需要が最も高い時にゆっくり冷却し始めて、初期温度が25°Cを超えるときに、下降傾斜期間に入ることができる。コントローラ64は供給される電力または熱交換器62による流体の流れを制御し、全体の下降傾斜時間が21分未満であるようにする。そのとき、初期温度は25℃より高く、30℃未満である。コントローラ64も、時間とともに、温度の変化率を、初期温度から処理温度の間で、境界線112である下側の第1の下降傾斜境界と境界線114である上側の第2の下降傾斜境界の間で、線または曲線を維持するように制御する。
【0017】
図4に戻って参照すると、流体の測定温度が熱交換器62の下流で流体が熱交換器62の下流で10分と50分の間に処理期間88の間の処理温度である2℃と10℃の間の処理温度(
図4の6°C)であるように、供給される電力または熱交換器62による流れが制御されることもできる。
図4の処理期間88は、30分である。馴化の援助のために、処理期間88の直前の期間の曲線の傾斜は、初期の期間、すなわち、
図4の期間90の傾斜より急でないようにすることができる。
【0018】
電力がもはや供給されないように、熱交換器62(
図5)に供給される電力を制御することができ、或いは、処理期間が経過したあと、電力が熱交換器62を通過している流体に供給され得る。流体送出量が制御されることもでき、例えば、処理時間が経過したあと、流体が熱交換器62を迂回できるようにバルブ76が開かれることができる。電力がもはや供給されないように、熱交換器62に供給される電力を制御でき、または、測定温度が少なくとも20℃に等しくなるまで、処理期間が経過したあと、電力は熱交換器62を通過している流体に供給され得、その結果、十分な馴化がブラダ24、26の次の着用者にもたらされることができる。
【0019】
図1を参照して、着用者の頸部14上の甲状軟骨のまわりの領域は、特に感度が高くなり得る。バリアが、この領域の熱伝導度を減らすために設けられることができる。例えば、絶縁材94は、頸動脈の上の下部のブラダ24の設置の前に、甲状軟骨の上の皮膚につけられることが可能である。或いは、防護バリア96が下部のブラダ24を覆って取付けられることができ、防護壁バリア下部のブラダ24または下側キャリア28に結合できる。
図1を続けて参照すれば、コイルキャップまたはヘッドバンド98が、額の回りに上部ブラダ26の配置の前に、額領域12周辺に配置されることもできる。また、異なるタイプの絶縁バリアが、ヘッドバンド98の替わりに額領域12に取付けられることができる。同じ温度で冷却ユニット22から上部ブラダ26および下部のブラダ24まで流体をポンプで圧送することが望ましいことがある。しかしながら、ブラダ24、26の着用者が額領域12周辺と比較して、頸部14の回りにより冷えた温度を許容することが可能であることも分かった。可能な限り、頸動脈周辺で領域を冷却することが望ましいので、頸動脈が血液を脳にもたらすように、額領域12上の絶縁材料を用いることによって、非常に冷たい流体(例えば、約6°C)が冷却ユニット22から両方のブラダ24、26までポンプで圧送されることができる。そして、より多くの冷却が頸部14で起こることができると共に、額領域12の絶縁材料は、いくらかの安堵感(relief)を着用者に与えることができる。
【0020】
脳損傷を治療するための方法およびシステムが、以上に、詳しく説明された。修正および変更が、以上の詳細な説明を読んで理解されれば、即座に発生するであろう。しかしながら、本発明は、上記のシステムだけに限られていない。そうではなく、本発明は、添付の請求の範囲およびその等価物によって、全体として定められる。また、以下の請求項には、当業者によって、各種の現在思いがけないか予期しない変形例、修正、変種または改善が、その後になされることができるであろう。