(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】潤滑油マグネシウム清浄剤ならびにその製造方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
C10M 159/22 20060101AFI20230629BHJP
C10M 177/00 20060101ALI20230629BHJP
C10M 163/00 20060101ALI20230629BHJP
C10M 165/00 20060101ALI20230629BHJP
C10M 129/54 20060101ALN20230629BHJP
C10M 137/10 20060101ALN20230629BHJP
C10M 135/18 20060101ALN20230629BHJP
C10M 143/00 20060101ALN20230629BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20230629BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20230629BHJP
C10N 10/12 20060101ALN20230629BHJP
C10N 30/04 20060101ALN20230629BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20230629BHJP
C10N 30/10 20060101ALN20230629BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20230629BHJP
C10N 70/00 20060101ALN20230629BHJP
【FI】
C10M159/22
C10M177/00
C10M163/00
C10M165/00
C10M129/54
C10M137/10 A
C10M135/18
C10M143/00
C10N40:25
C10N10:04
C10N10:12
C10N30:04
C10N30:00 Z
C10N30:10
C10N30:06
C10N70:00
(21)【出願番号】P 2019571516
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(86)【国際出願番号】 IB2018054803
(87)【国際公開番号】W WO2019003176
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-23
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】598066514
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・エス.アー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボッファ、アリグザンダー ボウマン
(72)【発明者】
【氏名】ウォード、ジェイコブ ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ル デオール、クリストフ ペ.
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、ブレンダン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル、カーティス ベイ
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-532209(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02690165(EP,A1)
【文献】特開2012-117065(JP,A)
【文献】特表2011-508063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤であって、前記アルキル基が、1分子当た
り10
~40個の炭素原子を有し、か
つ0.1
~0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する異性化アルファオレフィンから誘導され、
ここで該異性化レベル(I)は、TopSpin3.2スペクトル処理ソフトウェアを使用して、400MHzでクロロホルム-d1にてBruker Ultrashield Plus 400で得た水素-1(1H)NMRにより決定され、ここで該異性化レベル(I)はI=m/(m+n)であり、式中、mは化学シフトが0.3±0.03~1.01±0.03ppmのメチル基のNMR積分値であり、nは化学シフトが1.01±0.03~1.38±0.10ppmのメチレン基のNMR積分値である、マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤。
【請求項2】
以下の構造(式1)を有する、請求項1に記載のマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤:
【化1】
式中、Rは、1分子当た
り10
~40個の炭素原子を有し
、0.1
~0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する異性化アルファオレフィンから誘導されるアルキル基であり、nは1~4の整数であり、yおよびzは独立して整数または小数の値である。
【請求項3】
以下を含む潤滑油組成物:
(a)主要量の潤滑粘度の油;および
(b)マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤であって、前記アルキル基が、1分子当た
り10
~40個の炭素原子を有し、か
つ0.1
~0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する異性化アルファオレフィンから誘導され、ここで該異性化レベル(I)は、TopSpin3.2スペクトル処理ソフトウェアを使用して、400MHzでクロロホルム-d1にてBruker Ultrashield Plus 400で得た水素-1(1H)NMRにより決定され、ここで該異性化レベル(I)はI=m/(m+n)であり、式中、mは化学シフトが0.3±0.03~1.01±0.03ppmのメチル基のNMR積分値であり、nは化学シフトが1.01±0.03~1.38±0.10ppmのメチレン基のNMR積分値である、マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤。
【請求項4】
以下を含む潤滑油組成物:
a)主要量の潤滑粘度の油;および
b)以下の構造(式1)を有するマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤:
【化2】
式中、Rは、1分子当た
り10
~40個の炭素原子を有し
、0.1
~0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する異性化アルファオレフィンから誘導され、ここで該異性化レベル(I)は、TopSpin3.2スペクトル処理ソフトウェアを使用して、400MHzでクロロホルム-d1にてBruker Ultrashield Plus 400で得た水素-1(1H)NMRにより決定され、ここで該異性化レベル(I)はI=m/(m+n)であり、式中、mは化学シフトが0.3±0.03~1.01±0.03ppmのメチル基のNMR積分値であり、nは化学シフトが1.01±0.03~1.38±0.10ppmのメチレン基のNMR積分値であるアルキル基であり、nは1~4の整数であり、yおよびzは独立して整数または小数の値である。
【請求項5】
以下を含む方法によって調製されるマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤:
(a)ヒドロキシ芳香族化合物を
、0.1
~0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有し、ここで該異性化レベル(I)は、TopSpin3.2スペクトル処理ソフトウェアを使用して、400MHzでクロロホルム-d1にてBruker Ultrashield Plus 400で得た水素-1(1H)NMRにより決定され、ここで該異性化レベル(I)はI=m/(m+n)であり、式中、mは化学シフトが0.3±0.03~1.01±0.03ppmのメチル基のNMR積分値であり、nは化学シフトが1.01±0.03~1.38±0.10ppmのメチレン基のNMR積分値である異性化アルファオレフィンを得るように異性化した、1分子当
り10
~40個の炭素原子を有する少なくとも1種のノルマルアルファオレフィンでアルキル化し、それによりアルキル化ヒドロキシ芳香族化合物を生成し;
(b)得られた前記アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物を、KOHまたはNaOHなどのアルカリ金属塩基で中和して、前記アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩を生成し;
(c)ステップ(b)からの前記アルカリ金属塩を、CO
2でカルボキシル化し、それによりアルキル化ヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を生成し;
(d)ステップ(c)で生成した前記塩を、酸で酸性化して、アルキル化ヒドロキシ安息香酸を生成し;
(e)前記アルキル化ヒドロキシ安息香酸を、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、または炭酸マグネシウムで中和し;そして
(f)任意選択的に、ステップ(e)で生成した前記マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエートを、CO
2の存在下でMgO、Mg(OH)
2、MgCO
3などのマグネシウム化合物で過塩基化し、それにより過塩基性マグネシウムアルキル化ヒドロキシベンゾエートを生成する。
【請求項6】
モリブデン含有化合物をさらに含む、請求項3に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
清浄剤をさらに含む、請求項3に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記清浄剤がサリチレート、フェネート、スルホネート、またはそれらの組み合わせである、請求項7に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記清浄剤がサリチル酸マグネシウムである、請求項7に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
非分散性オレフィンコポリマーVIIをさらに含む、請求項
3に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
第1級または第2級ジチオリン酸亜鉛化合物またはそれらの混合物をさらに含む、請求項
3に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
摩擦調整剤をさらに含む、請求項
3に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
前記摩擦調整剤がモリブデンジチオカルバメートである、請求項12に記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
TBNが、オイルフリー基準で10~450mgKOH/gmである、請求項1に記載のマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤。
【請求項15】
TBNがオイルフリー基準で10~450mgKOH/gmである、請求項5に記載のマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤。
【請求項16】
内燃機関の潤滑油の燃費性能を改善する方法であって、前記内燃機関を、以下を含む潤滑油組成物で作動させることを含む、方法:
(a)主要量の潤滑粘度の油;および
(b)マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤であって、前記アルキル基が、1分子当た
り10
~40個の炭素原子を有し、か
つ0.1
~0.4の前記ノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する異性化アルファオレフィンから誘導され、ここで該異性化レベル(I)は、TopSpin3.2スペクトル処理ソフトウェアを使用して、400MHzでクロロホルム-d1にてBruker Ultrashield Plus 400で得た水素-1(1H)NMRにより決定され、ここで該異性化レベル(I)はI=m/(m+n)であり、式中、mは化学シフトが0.3±0.03~1.01±0.03ppmのメチル基のNMR積分値であり、nは化学シフトが1.01±0.03~1.38±0.10ppmのメチレン基のNMR積分値である、マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2017年6月30日に提出された米国仮出願第62/527,152号の利益およびこれに対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
種々の性能要件を満たすために、エンジン油には種々の添加剤がブレンドされる。潤滑剤を配合する場合、多数の性能上の利点が得られると同時に、欠点を最小限に抑えることができる添加剤は極めて重要である。例えば、塩基価(BN)保持性を改善し、堆積物の形成を低減し、酸化を抑制し、そして摩擦特性を調整する能力を備えた清浄剤添加剤を開発することにより、これらの単一の性能上の利点のみが得られる追加的な添加剤の必要性を無くすかまたは限定的なものにすることができる。
エンジン油配合物の主要な目的は、上記のような利点を同時に達成する潤滑油組成物を開発することである。驚くべきことに、異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導されるマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤を配合した潤滑剤は、酸化低減、堆積物抑制、BN保持性、および摩擦性能において改善を示すことがわかった。
【発明の概要】
【0003】
開示の概要
マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤および前記清浄剤を含む潤滑油組成物を開示する。
【0004】
開示の詳細な説明
本発明は、種々の改変および代替的な形態を許容するが、本明細書では、その具体的な実施形態を詳細に記載する。しかしながら、本明細書における具体的な実施形態の記載によって、本発明を、開示した特定の形態に限定する意図はなく、それとは反対に、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲内に入るすべての改変、等価物、および代替物を含むものと理解されるべきである。
【0005】
本明細書に開示した主題の理解を容易にするために、本明細書で使用したいくつかの用語、略語または他の略記を以下に定義する。定義されていない用語、略語または略記は、本出願の提出と同時期の当業者によって使用される通常の意味を有するものと理解される。
【0006】
定義:
この明細書では、以下の言葉と表現は、使用する場合には、以下に示す意味を有する。
【0007】
「主要量」とは、組成物の50重量%を超えることを意味する。
【0008】
「より少ない量」とは、組成物の50重量%より少ないことを意味し、記載された添加剤に関して、および組成物中に存在するすべての添加剤の全質量に関して表され、1種または複数種の添加剤の活性成分として示される。
【0009】
「活性成分(active ingredients)」もしくは「活性成分(actives)」は、希釈剤または溶媒ではない添加物質を指す。
【0010】
記載されたすべての百分率は、断りがない限り、活性成分基準(すなわち、担体または希釈油なし)での重量%である。
【0011】
略語「ppm」は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、重量による百万分率を意味する。
【0012】
全塩基価(TBN)は、ASTM D2896に従って測定した。
【0013】
「過塩基性」という用語は、一般的に、金属部分の当量数と酸部分の当量数との比が1より大きい金属清浄剤を記述するために使用される。
【0014】
「非炭酸化」という用語は、清浄剤の説明に使用される場合、清浄剤の製造で中和ステップを実行した後、過塩基化剤でさらに処理されていない(炭酸化ステップを受けていない)清浄剤を指す。適切な過塩基化剤の例には、二酸化炭素、ホウ素源(すなわち、ホウ酸)、二酸化硫黄、硫化水素およびアンモニアである。最も好ましい過塩基化剤は二酸化炭素であるため、過塩基化剤による清浄剤の処理は「炭酸化」と呼ばれる場合もある。
【0015】
150℃での高温高剪断(HTHS)粘度は、ASTM D4863に従って測定した。
【0016】
100℃での動粘度(KV100)は、ASTM D445に従って測定した。
【0017】
-35℃でのコールドクランキングシミュレーター(CCS)粘度は、ASTM D5293に従って測定した。
【0018】
Noack揮発性は、ASTM D5800に従って測定した。
【0019】
金属-「金属」という用語は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの混合物を指す。
【0020】
オレフィン-「オレフィン」という用語は、多くのプロセスによって得られる、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素のクラスを指す。1つの二重結合を含むものはモノアルケンと呼ばれ、2つの二重結合を有するものはジエン、アルキルジエン、またはジオレフィンと呼ばれる。アルファオレフィンは、二重結合が1番目と2番目の炭素の間にあるため、特に反応性が高い。例には、1-オクテンおよび1-オクタデセンがあり、これらは中程度の生分解性界面活性剤の出発点として使用される。線状および分岐状オレフィンもまたオレフィンの定義に含まれる。
【0021】
ノルマルアルファオレフィン-「ノルマルアルファオレフィン」という用語は、炭化水素鎖のアルファまたはプライマリ位置に炭素-炭素二重結合が存在する直鎖非分岐炭化水素であるオレフィンを指す。
【0022】
異性化ノルマルアルファオレフィン-本明細書で使用される「異性化ノルマルアルファオレフィン」という用語は、異性化条件に供されて、その結果、存在するオレフィン種の分布が変更され、および/またはアルキル鎖に沿って分岐が導入されたアルファオレフィンを指す。異性化オレフィン生成物は、約10~約40個の炭素原子、好ましくは約20~約28個の炭素原子、好ましくは約20~約24個の炭素原子を含む線状アルファオレフィンを異性化することにより得ることができる。
【0023】
C10-40ノルマルアルファオレフィン-この用語は、10未満の炭素数のものが蒸留または他の分別方法によって除去されたノルマルアルファオレフィンの留分を定義する。
【0024】
本明細書で言及されるすべてのASTM標準は、本出願の出願日時点での最新バージョンである。
【0025】
一態様では、本開示は、アルキル基が1分子当り約10~約40個の炭素原子を有し、かつ約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する異性化アルファオレフィンから誘導される、アルキル置換マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤に関する。
【0026】
一態様では、マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は以下の構造(式1)を有する:
【化1】
式中、Rは、1分子当たり約10~約40個の炭素原子を有し、約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する異性化アルファオレフィンから誘導されるアルキル基であり、nは1~4の整数であり、yおよびzは独立して整数または小数の値である。
【0027】
本開示の一実施形態では、Rは、1分子当り約14~約28、約20~約28、約14~約18、または約20~約24の炭素原子を有する異性化アルファオレフィンから誘導されるアルキル基である。
【0028】
一実施形態では、アルファオレフィンの異性化レベル(I)は、約0.1~約0.4、好ましくは約0.1~約0.3、より好ましくは約0.12~約0.3である。
【0029】
一実施形態では、アルファオレフィンの異性化レベルは、約0.16であり、約20~約24個の炭素原子を有する。
【0030】
一態様では、本開示は、以下を含む潤滑油組成物に関する:
a)主要量の潤滑粘度の油;および
b)以下の構造(式1)を有するマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤:
【化2】
式中、Rは、1分子当たり約10~約40個の炭素原子を有し、約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する異性化アルファオレフィンから誘導されるアルキル基であり、nは1~4の整数であり、yおよびzは独立して整数または小数の値である。
【0031】
一態様では、本発明は、以下を含む方法によって調製されるマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤に関する:
(a)ヒドロキシ芳香族化合物を、約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する異性化アルファオレフィンを得るように異性化した、1分子当り約10~約40個の炭素原子を有する少なくとも1種のノルマルアルファオレフィンでアルキル化し、それによりアルキル化ヒドロキシ芳香族化合物を生成し;
(b)得られた前記アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物を、KOHまたはNaOHなどのアルカリ金属塩基で中和して、前記アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩を生成し;
(c)ステップ(b)からの前記アルカリ金属塩を、CO2でカルボキシル化し、それによりアルキル化ヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を生成し;
(d)ステップ(c)で生成した前記塩を、酸で酸性化して、アルキル化ヒドロキシ安息香酸を生成し;
(e)前記アルキル化ヒドロキシ安息香酸を、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、または炭酸マグネシウムで中和し;そして
(f)任意選択的に、ステップ(e)で生成した前記マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエートを、CO2の存在下でMgO、Mg(OH)2、MgCO3などのマグネシウム化合物で過塩基化し、それにより過塩基性マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエートを生成する。
【0032】
一実施形態では、マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、非炭酸化清浄剤であり得る。
【0033】
一実施形態では、マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、過塩基性清浄剤であり得る。
【0034】
一実施形態では、マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、サリチレート清浄剤であり得る。
【0035】
一実施形態では、マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、カルボキシレート清浄剤であり得る。
【0036】
一実施形態では、マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、活性成分基準で10~450、好ましくは50~450、100~450、100~400、150~350、200~350、250~350mgKOH/グラムのTBNを有する。
【0037】
一実施形態では、マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、オイルフリー基準で1~15、好ましくは1~10、1~8、2~8、4~8重量%のマグネシウム含有量を有する。
【0038】
芳香族化合物
少なくとも1種のヒドロキシ芳香族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物の混合物を本発明のアルキル化反応に使用することができる。好ましくは、少なくとも1種のヒドロキシ芳香族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物混合物は、フェノール、クレゾール、またはそれらの混合物などの単環式ヒドロキシ芳香族(化合物)の少なくとも1種を含む。さらに、少なくとも1種のヒドロキシ芳香族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物混合物は、2-ナフトールなどの二環式および多環式ヒドロキシ芳香族化合物を含んでもよい。より好ましくは、少なくとも1種のヒドロキシ芳香族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物混合物はフェノールである。
【0039】
芳香族化合物の供給源
本発明で使用される少なくとも1種のヒドロキシ芳香族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物の混合物は、当技術分野で周知の方法により調製される。
【0040】
オレフィン
オレフィンの供給源
本発明で使用するオレフィンは、線状、異性化線状、分岐状または部分的に分岐した線状であり得る。オレフィンは、線状オレフィンの混合物、異性化線状オレフィンの混合物、分岐状オレフィンの混合物、部分的に分岐した線状の混合物、または前述のいずれかの混合物であり得る。
【0041】
ノルマルアルファオレフィン
好ましくは、アルキル化反応に使用できる線状オレフィンの混合物は、分子当たり約10~約40個の炭素原子を有するオレフィンから選択されるノルマルアルファオレフィンの混合物である。より好ましくは、ノルマルアルファオレフィン混合物は、1分子当り約14~約28個、例えば約20~約28個または例えば約14~18個の炭素原子を有するオレフィンから選択される。最も好ましくは、ノルマルアルファオレフィン混合物は、1分子当り約20~約24個の炭素原子を有するオレフィンから選択される。
【0042】
本発明の一実施形態では、ノルマルアルファオレフィン(NAO)は、固体または液体触媒の少なくとも1種を使用して異性化される。NAO異性化プロセスは、均一触媒または不均一触媒を使用して、バッチ、セミバッチ、連続固定床、またはこれらのプロセスの組み合わせのいずれかであり得る。固体触媒は、少なくとも1種の金属酸化物および5.5オングストローム未満の平均細孔径を有することが好ましい。より好ましくは、固体触媒は、SM-3、MAPO-11、SAPO-11、SSZ-32、ZSM-23、MAPO-39、SAPO-39、ZSM-22またはSSZ-20などの一次元細孔系を有するモレキュラーシーブである。異性化に有用な他の可能な固体触媒には、ZSM-35、SUZ-4、NU-23、NU-87、および天然または合成フェリエライトが含まれる。これらのモレキュラーシーブは、当技術分野で周知であり、Rosemarie Szostak’s Handbook of Molecular Sieves(New York, Van Nostrand Reinhold,1992年)に説明されており、これを、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用する。使用できる液体タイプの異性化触媒は、鉄ペンタカルボニル(Fe(CO)5)である。
【0043】
ノルマルアルファオレフィンの異性化プロセスは、バッチモードまたは連続モードで実行できる。プロセス温度は、約50℃~約250℃の範囲であり得る。バッチモードで使用される一般的な方法は、攪拌オートクレーブまたはガラスフラスコであり、これを所望の反応温度に加熱することができる。連続プロセスは、固定床プロセスで最も効率的に行なわれる。固定床プロセスの空間速度は、0.1~10またはそれ以上の重量時空間速度の範囲であり得る。
【0044】
固定床プロセスでは、異性化触媒を反応器に装入し、真空下または不活性乾燥ガスを流しながら、約150℃の温度で活性化または乾燥させる。活性化後、異性化触媒の温度を所望の反応温度に調整し、オレフィンの流れを反応器に導入する。部分的に分岐した異性化オレフィンを含む反応器流出液を収集する。得られた部分的に分岐した異性化オレフィンは、非異性化オレフィンとは異なるオレフィン分布(すなわち、アルファオレフィン、ベータオレフィン、内部オレフィン、三置換オレフィン、およびビニリデンオレフィン)および異性化レベルを含み、所望のオレフィン分布および異性化レベルを得るために条件を選択する。
【0045】
酸触媒
典型的には、アルキル化芳香族化合物は、アルキル化触媒の存在下で調製することができる。有用なアルキル化触媒には、ルイス酸触媒、固体酸触媒、トリフルオロメタンスルホン酸、および酸性モレキュラーシーブ触媒が含まれる。適切なルイス酸触媒には、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三ヨウ化アルミニウム、三フッ化ホウ素、三臭化ホウ素、三ヨウ化ホウ素などが含まれる。
【0046】
適切な固体酸性触媒には、ゼオライト、酸性粘土、および/またはシリカ-アルミナが含まれる。触媒はモレキュラーシーブであってもよい。適格なモレキュラーシーブは、シリカ-アルミノホスフェートモレキュラーシーブまたは金属シリカ-アルミノホスフェートモレキュラーシーブであり、金属は、例えば、鉄、コバルトまたはニッケルであり得る。一実施形態では、固体触媒は、酸形態のカチオン交換樹脂、例えば、架橋スルホン酸触媒である。適切なスルホン化酸性イオン交換樹脂タイプの触媒には、Rohm and Hass(Philadelphia、Pa)から入手可能なAmberlyst36(登録商標)が含まれる。酸触媒は、バッチプロセスまたは連続プロセスで使用する場合、リサイクルまたは再生してもよい。
【0047】
アルキル化の反応条件は、使用する触媒の種類に依存し、アルキルヒドロキシ芳香族生成物への高い転化率をもたらす反応条件の適切なセットを使用することができる。典型的には、アルキル化反応の反応温度は約25℃~約200℃、好ましくは約85℃~約135℃の範囲である。反応圧力は一般的に大気圧であるが、これより高いまたはこれより低い圧力を使用することができる。アルキル化プロセスは、バッチ式、連続式、または半連続式で実施することができる。ヒドロキシ芳香族化合物と1種以上のオレフィンとのモル比は、通常、約10:1~約0.5:1の範囲であり、好ましくは約5:1~約3:1の範囲である。
【0048】
アルキル化反応は、非溶媒で(neat)、またはヒドロキシ芳香族化合物とオレフィン混合物の反応に不活性な溶媒の存在下で実施することができる。使用する場合、典型的な溶媒はヘキサンである。
【0049】
アルキル化芳香族化合物の調製プロセス
本発明の一実施形態では、アルキル化プロセスは、第1の量の少なくとも1種のヒドロキシ芳香族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物の混合物を、攪拌を維持しながら、反応器内で、Amberlyst36(登録商標)などの酸触媒の存在下で、異性化オレフィン化合物の混合物と反応させることにより実施され、それにより反応生成物を生成する。反応生成物はさらに処理されて、過剰の未反応ヒドロキシ芳香族化合物、および任意選択的に、所望のアルキレート生成物からのオレフィン化合物を除去する。さらに、過剰のヒドロキシ芳香族化合物を反応器(単数または複数)にリサイクルしてもよい。
【0050】
フッ化水素酸対オレフィン化合物の混合物の全装入モル比は、約1.0~1である。
【0051】
芳香族化合物とオレフィン化合物の混合物の全装入モル比は、約7.5~1である。
【0052】
多くのタイプの反応器形態を反応器ゾーンに使用することができる。これらには、非制限的に、バッチおよび連続攪拌タンク反応器、反応器ライザー形態、沸騰床反応器、および当技術分野で周知の他の反応器形態が含まれる。そのような反応器の多くは当業者に知られており、アルキル化反応に適している。撹拌は、アルキル化反応にとって重要であり、バッフル、スタティックミキサー、ライザーでの動的混合、または当技術分野で周知の他の撹拌装置の有無にかかわらず、回転インペラーによって提供することができる。
【0053】
アルキル化プロセスは、約0℃~約150℃の温度で実施することができる。このプロセスは、供給原料の95~99%の転化を可能にするのに十分な時間で行われる。
【0054】
反応器内の滞留時間は、オレフィンの大部分をアルキレート生成物に転化するのに十分な時間である。必要な時間は約30秒から約30分である。より正確な滞留時間は、アルキル化プロセスの反応速度を測定するバッチ攪拌タンク反応器を使用して、当業者によって決定することができる。
【0055】
少なくとも1種のヒドロキシ芳香族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物の混合物およびオレフィンの混合物は、反応ゾーンに別々に注入してもよく、または注入前に混合してもよい。単一および複数の反応ゾーンの両方を使用して、芳香族化合物および異性化オレフィンの混合物を1つ、いくつか、またはすべての反応ゾーンに注入することができる。反応ゾーンを同じプロセス条件に維持する必要はない。
【0056】
アルキル化プロセスへの炭化水素供給原料は、ヒドロキシ芳香族化合物の混合物および異性化オレフィンの混合物を含むことができ、ヒドロキシ芳香族化合物対異性化オレフィンのモル比は約0.5:1~約50:1またはそれ以上である。ヒドロキシ芳香族化合物対異性化オレフィンのモル比が1.0超過:1である場合、過剰量のヒドロキシ芳香族化合物が存在する。過剰のヒドロキシ芳香族化合物を使用して、反応速度を高め、生成物の選択性を改善することが好ましい。過剰のヒドロキシ芳香族化合物を使用する場合、反応器流出液中の過剰の未反応のヒドロキシ芳香族(化合物)を、例えば蒸留により分離して、反応器にリサイクルすることができる。
【0057】
本明細書に開示するように、異性化ヒドロキシ芳香族化合物は、ヒドロキシ芳香族化合物を、1分子当たり約12~約40個の炭素原子を有する異性化ノルマルアルファオレフィンと反応させることにより得ることができる。典型的には、アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物は、一置換異性体の混合物を含み、置換基の大部分はパラ位にあり、オルト位にあるものは非常に少なく、メタ位にあるものはほとんどない。フェノール官能基は実質的に立体障害とならないため、これにより、アルカリ土類金属塩基に対する反応性が比較的高くなる。
【0058】
中和ステップ
上記のアルキル化ヒドロキシ芳香族化合物は、非限定的に、リチウム、ナトリウムまたはカリウムの酸化物または水酸化物を含むアルカリ金属塩基を使用して中和される。好ましい実施形態では、水酸化カリウムが好ましい。別の好ましい実施形態では、水酸化ナトリウムが好ましい。アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物の中和は、好ましくは、トルエン、キシレン異性体、軽質アルキルベンゼンなどの軽質溶媒の存在下で起こり、アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩を形成する。一実施形態では、溶媒は水と共沸混合物を形成する。別の実施形態では、溶媒は、2-エチルヘキサノールなどのモノアルコールであってもよい。この場合、2-エチルヘキサノールはカルボキシル化の前に蒸留により除去される。溶媒の目的は、水の除去を促進することである。
【0059】
このステップは、水分を除去するのに十分な高温で行なわれる。一実施形態では、より低い反応温度を必要とするために、生成物を僅かな減圧下(slight vacuum)に置く。
【0060】
一実施形態では、キシレンを溶媒として使用し、反応を、130℃~155℃の温度で、800ミリバール(8×104Pa)の絶対圧力下で行なう。
【0061】
別の実施形態では、2-エチルヘキサノールを溶媒として使用する。2-エチルヘキサノールの沸点(184℃)はキシレン(140℃)よりも著しく高いため、反応は少なくとも150℃の温度で行う。
【0062】
水の蒸留反応を完了するために、圧力を徐々に大気圧よりも低下させる。好ましくは、圧力を70ミリバール(7×103Pa)以下に低下させる。
【0063】
操作を十分に高温で行い、反応器内の圧力を徐々に大気圧よりも低下させることにより、溶媒を加える必要なく、中和反応が行われ、この反応中に形成される水と共沸混合物を形成する。この場合、温度は200℃まで加熱され、その後、圧力を徐々に大気圧よりも低下させる。好ましくは、圧力を70ミリバール(7×103Pa)以下に低下させる。
【0064】
水の除去は、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも3時間にわたって行われる。
【0065】
使用する試薬の量は、以下のモル比に対応すべきである:アルカリ金属塩基:アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物は約0.5:1~1.2:1、好ましくは約0.9:1~1.05:1であり、溶媒:アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物(体積:体積)は約0.1:1~5:1、好ましくは約0.3:1~3:1である。
【0066】
カルボキシル化
カルボキシル化ステップは、前の中和ステップからの反応媒体中に二酸化炭素(CO2)を単にバブリングすることで行われ、出発物質のアルキル化ヒドロキシ芳香族化合物の少なくとも50%がアルキルヒドロキシベンゾエートに転化されるまで継続される(電位差測定により測定)。
【0067】
出発物質のアルキル化ヒドロキシ芳香族化合物の少なくとも50モル%、好ましくは75モル%、より好ましくは85モル%は、約110℃から200℃の間の温度で、略大気圧~約15bar(15×105Pa)、好ましくは1bar(1×105Pa)~5bar(5×105Pa)の範囲内の圧力下で、約1~8時間の期間、CO2を使用してアルキルヒドロキシルベンゾエートに転化される。
【0068】
カリウム塩を用いた一変形形態では、温度は、好ましくは約125℃~165℃、より好ましくは130℃~155℃であり、圧力は略大気圧~15bar(15×105Pa)、好ましくは略大気圧~4bar(4×105Pa)である。
【0069】
ナトリウム塩を用いた別の変形形態では、温度は、方向的には、好ましくは約110℃~155℃、より好ましくは約120℃~140℃の間でより低く、圧力は、約1bar~20bar(1*105~20*105Pa)、好ましくは3bar~15bar(3*105~15*105Pa)である。
【0070】
カルボキシル化は通常、炭化水素またはアルキレート、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの溶媒で希釈されて行なわれる。この場合、溶媒:ヒドロキシベンゾエート(すなわち、アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩)の重量比は、約0.1:1~5:1、好ましくは約0.3:1~3:1である。
【0071】
別の変形形態では、溶媒は使用されない。この場合、カルボキシル化は、粘度の高過ぎる物質を避けるために、希釈油の存在下で行われる。
【0072】
希釈油:アルキルヒドロキシベンゾエートの重量比は、約0.1:1~2:1、好ましくは約0.2:1~1:1、より好ましくは約0.2:1~0.5:1である。
【0073】
酸性化
次に、上記で生成されたアルキル化ヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を、アルカリ金属塩をアルキル化ヒドロキシ安息香酸に転化させることができる少なくとも1種の酸と接触させる。前述のアルカリ金属塩を酸性化する、このような酸は、当技術分野で周知である。
【0074】
中和
アルキル化ヒドロキシ安息香酸は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、または炭酸マグネシウムで中和され、非炭酸化マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤を形成する。
【0075】
過塩基化
マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤の過塩基化は、過塩基性マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤を製造する、当業者に知られている任意の方法により行なうことができる。
【0076】
本発明の一実施形態では、過塩基化反応は、アルキル化ヒドロキシ安息香酸を、CO2の存在下、芳香族溶媒(すなわち、キシレン)の存在下およびメタノールなどのヒドロカルビルアルコールの存在下で、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、および(または)炭酸マグネシウムと反応させることにより、反応器内で行われる。
【0077】
過塩基化の程度は、酸化マグネシウム、CO2、および反応混合物に添加される反応物の量、ならびに炭酸化プロセス中に使用される反応条件によって制御することができる。
【0078】
使用される試薬(メタノール、キシレン、MgO、CO2、および水)の重量比は、次の重量比に対応する。キシレン:MgOは約1.5:1~7:1、好ましくは約2:1~4:1である。メタノール:MgOは約0.25:1~4:1、好ましくは約0.4:1~1.2:1である。CO2:MgOのモル比は約0.5:1~1.3:1、好ましくは約0.7:1~1.0:1である。水:MgOのモル比は約0.2:1~5:1、好ましくは1:1~3:1である。
MgOはスラリーとして(すなわち、MgO、メタノール、キシレンの予備混合物として)添加され、CO2は約20℃~65℃の温度で1時間~4時間の期間にわたって導入される。
【0079】
過塩基化ステップは、促進剤の存在下で行うことができる。例えば、促進剤は低級カルボン酸であり得る。
低級カルボン系化合物または酸は、式:XCOOYで表され、式中、Xは-H、-CH2OH、-CH2Cl、-CH2Br、-CH2COCH3またはRであり、YはH、RまたはMnであり、Rは1~4個の炭素原子のアルキルラジカルであり、Rラジカルのすべての炭素原子の合計は5を超えず、Mnはアルカリまたはアルカリ土類金属原子であり、nは1または2の整数である。
【0080】
本発明の好ましい低級カルボキシル化合物は、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、グリシン、クロロ酢酸、ブロモ酢酸、グリコール酸、アセト酢酸エチル、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウムおよび酢酸マグネシウムなどの本質的に不油溶性の化合物である。これらの化合物は、個々に、または互いに組み合わせて使用することができるが、この場合、この促進剤の量は油溶性ヒドロキシ安息香酸の1当量当り0.5~5当量の範囲である。好ましくは、その量は0.7~1.3当量の範囲である。
【0081】
無水コハク酸(共促進剤)
無水コハク酸促進剤は、米国特許第4,647,387号に開示されている。
有用な無水コハク酸には、アルキルおよびアルケニル無水コハク酸、ならびに無水コハク酸誘導体が含まれる。好ましい実施形態は、ドデセニル無水コハク酸(DDSA)、テトラデセニル無水コハク酸、n-オクテニル無水コハク酸、ノネニル無水コハク酸、ポリイソブテニル無水コハク酸(PIBSA)などを含むアルケニル無水コハク酸である。適切な無水コハク酸誘導体には、酸、エステル、ハーフエステル、ダブルエステルおよび他の加水分解性誘導体が含まれる。約C70までの有機ラジカルを有する無水コハク酸が有用であり得るが、無水コハク酸またはその誘導体の有機ラジカルは好ましくはC6-C20、最も好ましくはC8-C18である。最も好ましいアルケニルコハク酸無水物はDDSAおよびPIBSAである。
【0082】
炭酸化混合物中の促進剤または共促進剤として必要な無水コハク酸または無水コハク酸誘導体の全量は、0.5~5.0重量%、好ましくは1.5~3.0重量%であることがわかった。
【0083】
任意選択的に、上記のプロセスのそれぞれについて、予備蒸留、遠心分離、および蒸留を利用して、溶媒および粗沈殿物を除去することができる。水、メタノール、およびキシレンの一部は、110℃~134℃に加熱することにより除去できる。これに続いて、未反応のMgOを除去するために遠心分離を行う。最後に、ASTM D93に記載されているPensky-Martens Closed Cup(PMCC)テスターで測定される、少なくとも約160℃の引火点に達するように、真空下で加熱することによりキシレンを除去することができる。
【0084】
潤滑油組成物
潤滑粘度の油
潤滑粘度の油(「ベースストック」または「基油」と呼ばれることがある)は、潤滑剤の主要な液体成分であり、例えば最終的な潤滑剤(または潤滑剤組成物)を製造するために、これに添加剤および可能な他の油がブレンドされる。基油は、濃縮物を製造するのに、およびそれから潤滑油組成物を製造するのに有用であり、天然および合成の潤滑油およびそれらの組み合わせから選択することができる。
【0085】
天然油には、動物性および植物性油、液体石油、ならびにパラフィン系、ナフテン系および混合パラフィン-ナフテン系の水素化精製された、溶媒処理された鉱物潤滑油が含まれる。石炭またはシェールに由来する潤滑粘度の油も有用な基油である。
【0086】
合成潤滑油には、重合および共重合(interpolymerized)オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン);アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン;ポリフェノール(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);およびアルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにそれらの誘導体、類似体、および同族体などの炭化水素油が含まれる。
【0087】
別の適切なクラスの合成潤滑油には、ジカルボン酸(例えば、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸およびアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、アジピン酸、リノール酸二量体、フタル酸)と種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とのエステルが含まれる。これらのエステルの具体的な例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ(2-エチルヘキシル)、フマル酸ジ-n-ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸二量体の2-エチルヘキシルジエステル、およびセバシン酸1モルとテトラエチレングリコール2モルおよび2-エチルヘキサン酸2モルとを反応させることにより形成される複合エステルが含まれる。
【0088】
合成油として有用なエステルには、C5~C12モノカルボン酸とポリオール、およびポリオールエーテル、例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールとから作られるものも含まれる。
【0089】
基油は、Fischer-Tropsch法により合成された炭化水素から誘導することができる。Fischer-Tropsch法で合成された炭化水素は、Fischer-Tropsch触媒を使用して、H2とCOを含む合成ガスから作られる。そのような炭化水素は、典型的には、基油として有用であるためには、さらなる処理を必要とする。例えば、炭化水素は、当業者に知られているプロセスを使用して、水素異性化;水素化分解および水素異性化;脱ろう;または水素異性化および脱ろうに供することができる。
【0090】
本発明の潤滑油組成物には、未精製油、精製油および再精製油を使用することができる。未精製油は、更なる精製処理をすることなく天然又は合成供給源から直接得られるものである。たとえば、レトルト処理操作から直接得られるシェール油、蒸留から直接得られる石油、またはエステル化プロセスから直接得られ、さらなる処理をすることなく使用されるエステル油が未精製油である。精製油は、1つ以上の特性を改善するために1つ以上の精製ステップでさらに処理されていることを除いて、未精製油に似ている。蒸留、溶媒抽出、酸または塩基抽出、ろ過および浸透などの多くのそのような精製技術は、当業者に知られている。再精製油は、既に使用されている精製油に適用され、精製油を得るために使用されるプロセスと類似のプロセスによって得られる。そのような再精製油は、再生油または再処理油としても知られており、多くの場合、使用済み添加剤および油分解生成物を除去(approval)するための技術によってさらに処理される。
【0091】
したがって、本潤滑油組成物を製造するのに使用できる基油は、米国石油協会(API)基油互換性ガイドライン(API出版物1509)で指定されているグループI-Vの基油のいずれかから選択できる。このような基油グループを、以下の表1にまとめる。
【表1】
【0092】
本明細書での使用に適した基油は、APIグループII、グループIII、グループIV、およびグループVの油ならびにそれらの組み合わせに対応する任意の種類、好ましくは、並外れた揮発性、安定性、ビスコメトリック性および清浄性の特性のためにグループIIIからグループVの油である。
【0093】
基油とも呼ばれる本開示の潤滑油組成物で使用するための潤滑粘度の油は、典型的には、主要量、例えば、該組成物の全重量に基づいて、50重量%を超える量、好ましくは約70重量%を超える量、より好ましくは約80~約99.5重量%、最も好ましくは約85~約98重量%の量で存在する。本明細書で使用される「基油」という表現は、単一の製造者により同じ仕様に(供給源や製造者の所在地とは無関係に)製造され、同じ製造者の仕様に適合し、且つ独自の配合、製品識別番号、又はその両方によって識別される潤滑剤成分であるベースストック又はベースストックのブレンドを意味するように理解されるものとする。本明細書で使用するための基油は、例えば、エンジン油、船舶用シリンダー油、機能性流体、例えば、油圧油、ギア油、トランスミッション流体などの任意のそして全てのこのような用途に対する潤滑油組成物を配合する際に使用される潤滑粘度の任意の現在知られている又は後に発見される油であり得る。加えて、本明細書で使用するための基油は、任意選択的に、粘度指数向上剤、例えば、ポリマー性アルキルメタクリレート;オレフィンコポリマー、例えば、エチレン-プロピレンコポリマー又はスチレン-ブタジエンコポリマーなど;およびそれらの混合物を含有し得る。
【0094】
当業者には容易に分かるだろうが、基油の粘度は、その用途に依存する。従って、本明細書で使用するための基油の粘度は、通常は、摂氏100度(100℃)で約2~約2000センチストークス(cSt)の範囲である。一般的に、エンジン油として個々に使用される基油は、100℃で約2cSt~約30cSt、好ましくは約3cSt~約16cSt、そして最も好ましくは約4cSt~約12cStの動粘度範囲を有し、所望の最終的な用途及び最終的な油中の添加剤に応じて選択され又はブレンドされて、所望のグレードのエンジン油、例えば、0W、0W-8、0W-12、0W-16、0W-20、0W-26、0W-30、0W-40、0W-50、0W-60、5W、5W-20、5W-30、5W-40、5W-50、5W-60、10W、10W-20、10W-30、10W-40、10W-50、15W、15W-20、15W-30、15W-40、30、40、50、60などのSAE粘度グレードを有する潤滑油組成物が得られる。
【0095】
一実施形態では、本明細書に記載のマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤を含む潤滑油組成物は、モリブデン含有化合物をさらに含む。
【0096】
有機モリブデン化合物
有機モリブデン化合物は、少なくともモリブデン、炭素および水素原子を含むが、さらに、硫黄、リン、窒素および/または酸素原子もまた含むことができる。適切な有機モリブデン化合物には、モリブデンジチオカルバメート、モリブデンジチオホスフェート、および種々の有機モリブデン錯体、例えば、モリブデンカルボキシレート、モリブデンエステル、モリブデンアミン、モリブデンアミドなどが含まれ、これらは、酸化モリブデンまたはモリブデン酸アンモニウムを脂肪、グリセリドもしくは脂肪酸、または脂肪酸誘導体(例えば、エステル、アミン、アミド)と反応させることによって得ることができる。「脂肪」という用語は、10~22個の炭素原子を有する炭素鎖を意味し、典型的には、炭素の直鎖を意味する。
【0097】
モリブデンジチオカルバメート(MoDTC)は、以下の構造(式1(2))で表される有機モリブデン化合物である
【化3】
式中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、互いに独立して、4~18個の炭素原子(例えば、8~13個の炭素原子)を有する線状または分岐状アルキル基である。
【0098】
モリブデンジチオホスフェート(MoDTP)は、以下の構造(式2(3))で表される有機モリブデン化合物である。
【化4】
式中、R
5、R
6、R
7およびR
8は、互いに独立して、4~18個の炭素原子(例えば、8~13個の炭素原子)を有する線状または分岐状アルキル基である。
【0099】
一実施形態では、モリブデンアミンは、モリブデンスクシンイミド錯体である。適切なモリブデン-スクシンイミド錯体は、例えば、米国特許第8,076,275号に記載されている。これらの錯体は、酸性モリブデン化合物を構造(式3(4))もしくは(式4(5))のポリアミンまたはそれらの混合物のアルキルまたはアルケニルスクシンイミドと反応させることを含むプロセスによって調製される:
【化5】
式中、Rは、C
24~C
350(例えば、C
70~C
128)アルキルまたはアルケニル基であり;R’は、2~3個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、xは1~11であり、yは1~10である。
【0100】
モリブデン-スクシンイミド錯体を調製するために使用されるモリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物または酸性モリブデン化合物の塩である。「酸性」とは、モリブデン化合物が塩基性窒素化合物と反応することを意味し、ASTM D664またはD2896で測定される。一般的に、酸性モリブデン化合物は六価である。適切なモリブデン化合物の代表例には、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウムおよび他のモリブデン酸アルカリ金属塩ならびに他のモリブデン塩、例えば水素塩、(例えば、モリブデン酸水素ナトリウム)、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6などが含まれる。
【0101】
モリブデン-スクシンイミド錯体を調製するために使用することができるスクシンイミドは、多数の文献に開示されており、当技術分野で周知である。「スクシンイミド」という技術用語に包含される特定の基本的な種類のスクシンイミドおよび関連物質は、米国特許第3,172,892号;第3,219,666号;および第3,272,746号に教示されている。「スクシンイミド」という用語は、当技術分野では、形成することができるアミド、イミド、およびアミジン種の多くもまた含むと理解される。しかしながら、主な生成物はスクシンイミドであり、この用語は、一般的に、アルキルまたはアルケニル置換コハク酸または無水物と窒素含有化合物との反応の生成物を意味するものとして受け入れられている。好ましいスクシンイミドは、約70~128個の炭素原子のポリイソブテニル無水コハク酸とトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、およびそれらの混合物から選択されるポリアルキレンポリアミンとを反応させることにより調製されるものである。
【0102】
モリブデン-スクシンイミド錯体を、適切な圧力および120℃を超えない温度にて硫黄源で後処理して、硫化モリブデン-スクシンイミド錯体を得ることができる。硫化ステップは、約0.5~5時間(例えば、0.5~2時間)行なうことができる。適切な硫黄源には、元素硫黄、硫化水素、五硫化リン、式R2Sxの有機ポリスルフィド(式中、Rはヒドロカルビル(例えば、C1~C10アルキル)であり、xは少なくとも3である。)、C1~C10メルカプタン、無機硫化物およびポリスルフィド、チオアセトアミド、ならびにチオ尿素が含まれる。
【0103】
一実施形態では、本明細書に記載のマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤を含有する潤滑油組成物には、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)化合物がさらに含まれる。
【0104】
耐摩耗剤
耐摩耗剤は、金属部品の摩耗を低減する。適切な耐摩耗剤には、式(式6)のジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)などのジヒドロカルビルジチオリン酸金属塩が含まれる:
Zn[S-P(=S)(OR1)(OR2)]2 式6
式中、R1およびR2は、1~18個(例えば、2~12個)の炭素原子を有し、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリールおよび脂環式ラジカルなどのラジカルを含むヒドロカルビルラジカルであり、同じかまたは(of)異なってもよい。R1およびR2基として特に好ましいのは、2~8個の炭素原子を有するアルキル基である(例えば、アルキル基は、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、2-エチルヘキシルであり得る)。油溶性を得るために、炭素原子の全数(すなわち、R1+R2)は少なくとも5である。したがって、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含むことができる。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、第1級、第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛、またはそれらの組み合わせである。
【0105】
ZDDPは、潤滑油組成物の3重量%以下(例えば、0.1~1.5重量%、または0.5~1.0重量%)で存在し得る。
【0106】
一実施形態では、本明細書に記載のマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤を含有する潤滑油組成物は、酸化防止剤化合物をさらに含む。一実施形態では、酸化防止剤はジフェニルアミン酸化防止剤である。別の実施形態では、酸化防止剤はヒンダードフェノール酸化防止剤である。さらに別の実施形態では、酸化防止剤は、ジフェニルアミン酸化防止剤とヒンダードフェノール酸化防止剤との組み合わせである。
【0107】
酸化防止剤
酸化防止剤は、使用中に鉱油が劣化する傾向を低減する。酸化劣化は、潤滑剤中のスラッジ、金属表面上のワニス状の堆積物、および粘度の増加によって証拠付けられ得る。適切な酸化防止剤には、ヒンダードフェノール、芳香族アミン、および硫化アルキルフェノール、ならびにそれらのアルカリおよびアルカリ土類金属塩が含まれる。
【0108】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、多くの場合、立体障害基としてセカンダリブチル基および/またはターシャリブチル基を含む。フェノール基は、ヒドロカルビル基(典型的には線状または分岐状アルキル)および/または別の芳香族基に結合する架橋基でさらに置換されていてもよい。適切なヒンダードフェノール酸化防止剤の例には、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール;および4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが含まれる。他の有用なヒンダードフェノール酸化防止剤には、CibaからのIRGANOX(登録商標)L-135などの2,6-ジアルキル-フェノールプロピオン酸エステル誘導体、および4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)および4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)などのビスフェノール系酸化防止剤が含まれる。
【0109】
典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、1つのアミン窒素に直接結合した少なくとも2つの芳香族基を有する。典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、少なくとも6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。本明細書で有用な芳香族アミン酸化防止剤の特定の例には、4,4’-ジオクチルジフェニルアミン、4,4’-ジノニルジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-(4-tert-オクチル(octy)フェニル)-1-ナフチルアミン、およびN-(4-オクチルフェニル)-1-ナフチルアミンが含まれる。
【0110】
酸化防止剤は、潤滑油組成物の0.01~5重量%(例えば、0.1~2重量%)で存在し得る。
【0111】
一実施形態では、本明細書に記載のマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤を含む潤滑油組成物は、分散剤をさらに含む。適切な分散剤は本明細書に記載されている。
【0112】
分散剤
分散剤は、エンジン作動中の酸化から生じる油に不溶性の物質を懸濁液中に維持し、これにより、スラッジの凝集および沈殿または金属部品上への堆積を防止する。本明細書で有用な分散剤には、ガソリンおよびディーゼルエンジンで使用する際の堆積物の形成を低減するのに有効であることが知られている窒素含有、無灰(金属を含まない)分散剤が含まれる。
【0113】
適切な分散剤には、ヒドロカルビルスクシンイミド、ヒドロカルビルスクシンアミド、ヒドロカルビル置換コハク酸の混合エステル/アミド、ヒドロカルビル置換コハク酸のヒドロキシエステル、ならびにヒドロカルビル置換フェノール、ホルムアルデヒドおよびポリアミンのマンニッヒ縮合生成物が含まれる。ポリアミンとヒドロカルビル置換フェニル酸の縮合生成物もまた適している。これらの分散剤の混合物もまた使用することがでる。
【0114】
基本的な窒素含有無灰分散剤は周知の潤滑油添加剤であり、その調製方法は特許文献に多く記載されている。好ましい分散剤は、アルケニル置換基が好ましくは40個を超える炭素原子の長鎖である、アルケニルスクシンイミドおよびスクシンアミドである。これらの物質は、ヒドロカルビル置換ジカルボン酸物質をアミン官能基含有分子と反応させることにより容易に生成される。適切なアミンの例は、ポリアルキレンポリアミン、ヒドロキシ置換ポリアミンおよびポリオキシアルキレンポリアミンなどのポリアミンである。
【0115】
特に好ましい無灰分散剤は、ポリイソブテニル無水コハク酸およびポリアルキレンポリアミン、例えば以下の式のポリエチレンポリアミンから形成されるポリイソブテニルスクシンイミドである:
NH2(CH2CH2NH)zH 式7
式中、zは1~11である。ポリイソブテニル基はポリイソブテンから誘導され、好ましくは700~3000ダルトン(例えば、900~2500ダルトン)の範囲の数平均分子量(Mn)を有する。例えば、ポリイソブテニルスクシンイミドは、900から2500ダルトンのMnを有するポリイソブテニル基から誘導されるビススクシンイミドであり得る。
【0116】
当該技術分野で知られているように、分散剤は(例えば、ホウ素化剤または環状カルボネートなどで)後処理されてもよい。
【0117】
窒素含有無灰(金属を含まない)分散剤は塩基性であり、追加的な硫酸化灰を導入することなく、それらが添加される潤滑油組成物のTBNに寄与する。
【0118】
分散剤は、潤滑油組成物の0.1~10重量%(例えば、2~5重量%)で存在し得る。
【0119】
一実施形態では、本明細書に記載のマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤を含む潤滑油組成物には、追加的な清浄剤がさらに含まれる。適切な清浄剤は本明細書に記載されている。
【0120】
追加的な清浄剤
本発明の潤滑油組成物は、活性成分基準で10~800、10~700、30~690、100~600、150~600、150~500、200~450mgKOH/gのTBNを有する1種以上の過塩基性清浄剤をさらに含むことができる。
【0121】
使用することができる清浄剤には、油溶性過塩基性スルホネート、硫黄非含有フェネート、硫化フェネート、サリキサレート、サリチレート、カルボキシレート、サリゲニン、複合清浄剤およびナフテネート清浄剤、ならびに金属、特にアルカリまたはアルカリ土類金属、例えば、バリウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、およびマグネシウムの他の油溶性アルキルヒドロキシベンゾエートが含まれる。最も一般的に使用される金属は、カルシウムおよびマグネシウム(これらは両方とも潤滑剤に使用される清浄剤に存在する)、ならびに、カルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムとの混合物である。
【0122】
過塩基性金属清浄剤は、一般的に、炭化水素、清浄剤酸、例えば、スルホン酸、アルキルヒドロキシベンゾエートなど、金属の酸化物または水酸化物(例えば、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウム)ならびに促進剤、例えばキシレン、メタノールおよび水の混合物を炭酸化することによって製造される。例えば、過塩基性スルホン酸カルシウムを調製するために、炭酸化において、酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムは気体二酸化炭素と反応して、炭酸カルシウムを形成する。スルホン酸は、過剰のCaOまたはCa(OH)2で中和されて、スルホネートを形成する。
【0123】
過塩基性清浄剤は、低過塩基性、例えば、活性成分基準で100未満のTBNを有する過塩基性塩であり得る。一実施形態では、低過塩基性塩のTBNは約30~約100であり得る。別の実施形態では、低過塩基性塩のTBNは約30~約80であり得る。過塩基性清浄剤は中過塩基性、例えば、約100~約300のTBNを有する過塩基性塩であり得る。一実施形態では、中過塩基性塩のTBNは約100~約250であり得る。別の実施形態では、中過塩基性塩のTBNは約125~約225であり得る。過塩基性清浄剤は、高過塩基性、例えば300を超えるTBNを有する過塩基性塩であり得る。一実施形態では、高過塩基性塩のTBNは、活性成分基準で約300~約800であり得る。
【0124】
一実施形態では、清浄剤は、1種以上のアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩であり得る。適切なヒドロキシ芳香族化合物には、1~4個、好ましくは1~3個のヒドロキシル基を有する単核モノヒドロキシおよびポリヒドロキシ芳香族炭化水素が含まれる。適切なヒドロキシ芳香族化合物には、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、クレゾールなどが含まれる。好ましいヒドロキシ芳香族化合物はフェノールである。
【0125】
アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩のアルキル置換部分は、約10~約80個の炭素原子を有するアルファオレフィンから誘導される。使用されるオレフィンは、線状、異性化線状、分岐状または部分的に分岐状の線状であり得る。オレフィンは、線状オレフィンの混合物、異性化線状オレフィンの混合物、分岐状オレフィンの混合物、部分的に分岐状の線状オレフィンの混合物、または前述のいずれかの混合物であり得る。
【0126】
一実施形態では、使用され得る線状オレフィンの混合物は、1分子当たり約10~約40個の炭素原子を有するオレフィンから選択されるノルマルアルファオレフィンの混合物である。一実施形態では、ノルマルアルファオレフィンは、固体または液体触媒の少なくとも1種を使用して異性化される。
【0127】
一実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ安息香酸のアルカリ土類金属塩清浄剤のアルキル基などのアルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩内に含まれるアルキル基の少なくとも約50モル%、少なくとも約75モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%は、C20以上である。別の実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩は、アルキル基がC20~約C28ノルマルアルファオレフィンであるアルキル置換ヒドロキシ安息香酸から誘導されるアルキル置換ヒドロキシ安息香酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩である。別の実施形態では、アルキル基は少なくとも2種のアルキル化フェノールから誘導される。少なくとも2種のアルキルフェノールのうちの少なくとも1種にあるアルキル基は、異性化アルファオレフィンから誘導される。別のアルキルフェノールにあるアルキル基は、分岐状または部分的に分岐状のオレフィン、高度に異性化されたオレフィンまたはそれらの混合物から誘導され得る。
【0128】
別の実施形態では、アルキル置換ヒドロキシ芳香族カルボン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩は、20~40個の炭素原子、好ましくは20~28個の炭素原子、より好ましくは20~24個の炭素原子を有する異性化NAO(isomerized 20-24 NAO)を有するアルキル基から誘導されるサリチレートである。
【0129】
一実施形態では、本明細書に記載の異性化NAOから誘導されるマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤を含有する潤滑油組成物は、異性化されていないオレフィンから誘導されるマグネシウムアルキルオキシベンゾエート清浄剤をさらに含む。例えば、このマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤は、C14-C18マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤であり得る。そのようなマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤の1つは、Infineum International Ltdから商品名「Infineum C9012」で入手可能である。
【0130】
スルホネートは、典型的には、アルキル置換芳香族炭化水素、例えば、石油の留分から又は芳香族炭化水素のアルキル化によって得られるもののスルホン化によって得られるスルホン酸から調製することができる。例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニル又はそれらのハロゲン誘導体をアルキル化することによって得られるものが含まれる。アルキル化は、触媒の存在下で、約3~70個を超える炭素原子を有するアルキル化剤を用いて行うことができる。アルカリールスルホネートには、通常、アルキル置換芳香族部分1つ当たり約9~約80個以上の炭素原子、好ましくは約16~約60個の炭素原子、好ましくは約16~30個の炭素原子、およびより好ましくは20~24個の炭素原子が含まれる。
【0131】
フェノールの金属塩および硫化フェノールの金属塩(硫化フェネート清浄剤である)は、酸化物または水酸化物などの適切な金属化合物との反応によって調製され、中性または過塩基性生成物は、当技術分野で周知の方法によって得ることができる。硫化フェノールは、フェノールを硫黄または硫化水素、一ハロゲン化硫黄または二ハロゲン化硫黄などの硫黄含有化合物と反応させることにより調製することができ、一般的には2つ以上のフェノールが硫黄含有ブリッジで架橋された化合物の混合物である生成物が形成される。
【0132】
硫化フェネートの一般的な調製に関する追加的な詳細は、例えば、米国特許第2,680,096号;第3,178,368号、第3,801,507号、および第8,580,717号に見出すことができ、これらの内容を参照により本明細書に援用する。
【0133】
ここで、本プロセスで使用される反応物および試薬を詳細に検討すると、先ず硫黄のすべての同素体形態を使用することができる。硫黄は、溶融硫黄として、または固体(例えば、粉末または微粒子)として、または適合性のある炭化水素液体中の固体懸濁液として使用することができる。
【0134】
例えば、酸化カルシウムと比べて取り扱いが便利であり、さらに優れた結果が得られるため、カルシウム塩基として水酸化カルシウムを使用することが望ましい。他のカルシウム塩基、例えばカルシウムアルコキシドもまた使用することができる。
【0135】
使用できる適切なアルキルフェノールは、アルキル置換基が、得られる過塩基性硫化カルシウムアルキルフェネート組成物を油溶性にするのに十分な数の炭素原子を含むものである。油溶性は、単一の長鎖アルキル置換体またはアルキル置換基の組み合わせによって得ることができる。典型的には、使用されるアルキルフェノールは、種々のアルキルフェノール、例えば、C20~C24アルキルフェノールの混合物である。
【0136】
一実施形態では、適切なアルキルフェノール化合物は、1分子当たり約10~約40個の炭素原子を有し、約0.1~約0.4のアルファオレフィンの異性化レベル(l)を有する異性化アルファオレフィンアルキル基から誘導される。一実施形態では、適切なアルキルフェノール化合物は、約9~約80個の炭素原子を有する分岐状オレフィンプロピレンオリゴマーまたはそれらの混合物であるアルキル基から誘導される。一実施形態では、分岐状オレフィンプロピレンオリゴマーまたはそれらの混合物は、約9~約40個の炭素原子を有する。一実施形態では、分岐状オレフィンプロピレンオリゴマーまたはそれらの混合物は、約9~約18個の炭素原子を有する。一実施形態では、分岐状オレフィンプロピレンオリゴマーまたはそれらの混合物は、約9~約12個の炭素原子を有する。
【0137】
一実施形態では、適切なアルキルフェノール化合物は、蒸留カシューナッツ殻液(CNSL)または水素化蒸留カシューナッツ殻液を含む。蒸留CNSLは、生分解性のメタヒドロカルビル置換フェノールの混合物であり、該ヒドロカルビル基は、線状かつ不飽和であり、カルダノールを含む。蒸留CNSLの接触水素化により、3-ペンタデシルフェノールが主に豊富なメタヒドロカルビル置換フェノールの混合物が生成される。
【0138】
アルキルフェノールは、パラアルキルフェノール、メタアルキルフェノールまたはオルトアルキルフェノールであり得る。p-アルキルフェノールは高度に過塩基性のカルシウム硫化アルキルフェネートの調製を促進すると考えられているため、過塩基性生成物を望む場合、アルキルフェノールは、好ましくは主にパラアルキルフェノールであり、オルトアルキルフェノールはアルキルフェノールの約45モルパーセント以下であり、より好ましくは、オルトアルキルフェノールはアルキルフェノールの約35モルパーセント以下である。アルキルヒドロキシトルエンまたはキシレン、および少なくとも1つの長鎖アルキル置換基に加えて1つ以上のアルキル置換基を有する他のアルキルフェノールもまた使用できる。蒸留カシューナッツ殻液の場合、蒸留CNSLの接触水素化により、メタヒドロカルビル置換フェノールの混合物が生成される。
【0139】
一実施形態では、1種以上の過塩基性清浄剤は、上記の少なくとも2種の界面活性剤から誘導される界面活性剤系を含む当技術分野で知られている複合またはハイブリッド清浄剤であり得る。
【0140】
一般的に、清浄剤の量は、潤滑油組成物の全重量に基づいて、約0.001重量%~約50重量%、または約0.05重量%~約25重量%、または約0.1重量%~約20重量%、または約0.01~15重量%であり得る。
【0141】
追加的な共添加剤
本潤滑油組成物は、摩擦調整剤、腐食防止剤、消泡剤(foam inhibitors)、粘度指数向上剤、流動点降下剤、防錆剤、抗曇り剤、解乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤(antifoaming agents)、共溶媒、多機能性剤、染料、極圧剤など、およびそれらの混合物を含む、他の一般的に使用される潤滑油性能共添加剤の1種以上を追加的に含むことができる。種々の添加剤が知られており、市販されている。これらの添加剤またはそれらの類似化合物は、通常のブレンド手順により本開示の潤滑油組成物の調製に使用することができる。
【0142】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例示するために提示されているが、記載された具体的な実施形態に本発明を限定する意図はない。断りがない限り、すべての部および百分率は重量による。すべての数値は近似値である。数値範囲が与えられる場合、記載した範囲外にある実施形態は依然として本発明の範囲内に含まれ得ることが理解されるべきである。各例で説明されている具体的な細目は、本発明の必要な特徴として解釈されるべきではない。
なお、下記[1]から[17]は、いずれも本発明の一形態又は一態様である。
[1]
マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤であって、前記アルキル基が、1分子当たり約10~約40個の炭素原子を有し、かつ約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する異性化アルファオレフィンから誘導される、マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤。
[2]
以下の構造(式1)を有する、[1]に記載のマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤:
【化6】
式中、Rは、1分子当たり約10~約40個の炭素原子を有し、約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する異性化アルファオレフィンから誘導されるアルキル基であり、nは1~4の整数であり、yおよびzは独立して整数または小数の値である。
[3]
以下を含む潤滑油組成物:
(a)主要量の潤滑粘度の油;および
(b)マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤であって、前記アルキル基が、1分子当たり約10~約40個の炭素原子を有し、かつ約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する異性化アルファオレフィンから誘導される、マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤。
[4]
以下を含む潤滑油組成物:
a)主要量の潤滑粘度の油;および
b)以下の構造(式1)を有するマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤:
【化7】
式中、Rは、1分子当たり約10~約40個の炭素原子を有し、約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する異性化アルファオレフィンから誘導されるアルキル基であり、nは1~4の整数であり、yおよびzは独立して整数または小数の値である。
[5]
以下を含む方法によって調製されるマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤:
(a)ヒドロキシ芳香族化合物を、約0.1~約0.4のノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する異性化アルファオレフィンを得るように異性化した、1分子当り約10~約40個の炭素原子を有する少なくとも1種のノルマルアルファオレフィンでアルキル化し、それによりアルキル化ヒドロキシ芳香族化合物を生成し;
(b)得られた前記アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物を、KOHまたはNaOHなどのアルカリ金属塩基で中和して、前記アルキル化ヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属塩を生成し;
(c)ステップ(b)からの前記アルカリ金属塩を、CO
2
でカルボキシル化し、それによりアルキル化ヒドロキシ安息香酸アルカリ金属塩を生成し;
(d)ステップ(c)で生成した前記塩を、酸で酸性化して、アルキル化ヒドロキシ安息香酸を生成し;
(e)前記アルキル化ヒドロキシ安息香酸を、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、または炭酸マグネシウムで中和し;そして
(f)任意選択的に、ステップ(e)で生成した前記マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエートを、CO
2
の存在下でMgO、Mg(OH)
2
、MgCO
3
などのマグネシウム化合物で過塩基化し、それにより過塩基性マグネシウムアルキル化ヒドロキシベンゾエートを生成する。
[6]
モリブデン含有化合物をさらに含む、[3]に記載の潤滑油組成物。
[7]
清浄剤をさらに含む、[3]に記載の潤滑油組成物。
[8]
前記清浄剤がサリチレート、フェネート、スルホネート、またはそれらの組み合わせである、[7]に記載の潤滑油組成物。
[9]
前記清浄剤がサリチル酸マグネシウムである、[7]に記載の潤滑油組成物。
[10]
非分散性オレフィンコポリマーVIIをさらに含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[11]
第1級または第2級ジチオリン酸亜鉛化合物またはそれらの混合物をさらに含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[12]
摩擦調整剤をさらに含む、[1]に記載の潤滑油組成物。
[13]
前記摩擦調整剤がモリブデンジチオカルバメートである、[12]に記載の潤滑油組成物。
[14]
TBNが、オイルフリー基準で10~450mgKOH/gmである、[1]に記載のマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤。
[15]
TBNがオイルフリー基準で10~450mgKOH/gmである、[5]に記載のマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤。
[16]
内燃機関の潤滑油の酸化性能を改善する方法であって、前記内燃機関を、以下を含む潤滑油組成物で作動させることを含む、方法:
(a)主要量の潤滑粘度の油;および
(b)マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤であって、前記アルキル基が、1分子当たり約10~約40個の炭素原子を有し、かつ約0.1~約0.4の前記ノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する異性化アルファオレフィンから誘導される、マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤。
[17]
内燃機関の潤滑油の燃費性能を改善する方法であって、前記内燃機関を、以下を含む潤滑油組成物で作動させることを含む、方法:
(a)主要量の潤滑粘度の油;および
(b)マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤であって、前記アルキル基が、1分子当たり約10~約40個の炭素原子を有し、かつ約0.1~約0.4の前記ノルマルアルファオレフィンの異性化レベル(I)を有する異性化アルファオレフィンから誘導される、マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤。
【実施例】
【0143】
以下の例示的な実施例は、非限定的であることを意図する。
異性化レベルはNMRによって測定した。
異性化レベル(I)およびNMR法
オレフィンの異性化レベル(I)は、水素-1(1H)NMRにより測定した。NMRスペクトルは、TopSpin3.2スペクトル処理ソフトウェアを使用して、400MHzでクロロホルム-d1にてBruker Ultrashield Plus 400で得た。
【0144】
異性化レベル(I)は、メチレン骨格基(-CH2-)(化学シフト1.01~1.38ppm)に結合したメチル基(-CH3)(化学シフト0.30~1.01ppm)の相対的な量を表し、以下に示す方程式(1)により定義される、
I=m/(m+n) 方程式(1)
式中、mは化学シフトが0.30±0.03~1.01±0.03ppmのメチル基のNMR積分値であり、nは化学シフトが1.01±0.03~1.38±0.10ppmのメチレン基のNMR積分値である。
【0145】
実施例Aおよび比較例A~Dの場合、TBNおよび金属は、オイルフリー基準ではなく、添加剤基準で示される。
【0146】
実施例A
MeOH(81.4グラム)およびキシレン(500グラム)中のMgO(82グラム)のスラリーを調製し、反応器に導入する。次に、異性化アルファオレフィン(C20-24、異性化レベル0.16)から作られたヒドロキシ安息香酸(1774グラム、キシレン中43%活性)を反応器に入れ、温度を15分間40℃に維持する。次に、温度を50℃まで上げながら、ドデセニル無水物(DDSA、7.6グラム)、続いてAcOH(37.3グラム)、次にH2O(69グラム)を反応器に30分間かけて導入する。次に強く攪拌しながら、CO2を反応器に導入する(96グラム)。次に、キシレン(200グラム)中のMgO(28グラム)からなるスラリーを反応器に導入し、さらなる量のCO2を混合物中で泡立たせる。CO2導入の終わりに、132℃に加熱することにより、溶媒を蒸留する。次に、500グラムの基油を反応器に導入する。次に、混合物を実験用遠心分離機で遠心分離して、未反応の酸化マグネシウムおよびその他の固体を除去する。最後に、混合物を真空下(15mbar)で170℃に加熱して、キシレンを除去し、異性化レベル0.16の異性化NAOから作られたC20-C24マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤として4.3%マグネシウムを含む最終的な生成物を得る。特性:TBN(mgKOH/g)=35重量%の希釈油中199
【0147】
実施例B
異性化レベルが0.11であることを除いて、実施例Aと同様に清浄剤を製造した。
【0148】
実施例C
異性化レベルが0.27であることを除いて、実施例Aと同様に清浄剤を製造した。
【0149】
比較例A
比較例Aは、アルファオレフィンから作られたC14-C18マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤である。特性:TBN(mgKOH/g)=236;Mg(重量%)=5.34。
【0150】
比較例B
比較例Bは、C14-C18カルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤であり、これは登録商標「Infineum M7121」でInfineum International Ltd.から入手可能である。特性:TBN(mgKOH/g)=225;Ca(重量%)=8.0%;Mg(重量%)=0.24。
【0151】
比較例C
比較例Cは、C14-C18マグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤であり、これは登録商標「Infineum C9012」でInfineum International Ltdから入手可能である。特性:TBN(mgKOH/g)=345;Mg(重量%)=7.45。
【0152】
比較例D
比較例Dは、C14-C18カルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤であり、ノルマルアルファオレフィンから作られた。特性:TBN(mgKOH/g)=175;Ca(重量%)=6.25%。
【0153】
ベースライン1
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤とを含有する重荷重自動車用潤滑油組成物を調製して、SAE 15W-40の最終的な油を得た:
(1)エチレンカルボネート後処理ビススクシンイミド分散剤;
(2)第1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛と第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛との混合物をリン含有量換算で990ppm;
(3)50ppmのモリブデンを提供するモリブデン(Moly)スクシンイミド錯体
(4)アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤;
(5)消泡剤をケイ素含有量換算で5ppm;
(6)9.5重量%非分散OCPVII(添加剤)および0.3重量%PPD;および
(7)残部、グループII基油(Chevron 220R)。
【0154】
ベースライン2
主要量の潤滑粘度の基油と以下の添加剤とを含有する乗用自動車用潤滑油組成物を調製して、SAE 5W-20の最終的な油を得た:
(1)エチレンカルボネート後処理ビススクシンイミド分散剤;
(2)ホウ素化ビススクシンイミド分散剤;
(3)第1級ジアルキルジチオリン酸亜鉛と第2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛との混合物をリン含有量換算で770ppm;
(4)800ppmのモリブデンを提供するMoDTC;
(5)アルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤;
(6)ヒンダードフェノール酸化防止剤;
(7)消泡剤をケイ素含有量換算で5ppm;
(8)1.5重量%非分散OCPVII(添加剤)および0.4重量%PPD;ならびに
(9)残部、グループIII基油(Yubase(登録商標)4と6の混合物)。
【0155】
実施例1
配合物ベースライン1に、実施例Aのマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をマグネシウム含有量換算で0.2100重量%添加した。
【0156】
実施例2
ベースライン1の配合物に、実施例Aのマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤と比較例Cのマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤との混合物をマグネシウム含有量換算で0.2100重量%添加した。
【0157】
比較例1
配合物ベースライン1に、比較例Aのマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をマグネシウム含有量換算で0.2100重量%添加した。
【0158】
比較例2
配合物ベースライン1に、比較例Bのカルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をカルシウム含有量換算で0.3500重量%添加した。
【0159】
比較例3
配合物ベースライン1に、比較例Cのマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をマグネシウム含有量換算で0.2100重量%添加した。
【0160】
比較例4
配合物ベースライン1に、比較例Dのカルシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をカルシウム含有量換算で0.3500重量%を添加した。
【0161】
比較例5
ベースライン1の配合物に、比較例Aのマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤と比較例Cのマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤との混合物をマグネシウム含有量換算で0.2160重量%添加した。
【0162】
実施例3
配合物ベースライン2に、実施例Aのマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をマグネシウム含有量換算で0.1080重量%添加した。
【0163】
実施例4
配合物ベースライン1に、実施例Bのマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をマグネシウム含有量換算で0.2100重量%添加した。
【0164】
実施例5
配合物ベースライン1に、実施例Cのマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をマグネシウム含有量換算で0.2100重量%添加した。
【0165】
比較例6
配合物ベースライン2に、比較例Aのマグネシウムアルキルヒドロキシベンゾエート清浄剤をマグネシウム含有量換算で0.1080重量%添加した。
【0166】
試験
TEOST 33C-ASTM 6335
TEOST 33試験を、500℃のターボチャージャーのコンポーネントに接触したエンジン油の堆積物形成傾向を評価するために実施した。ここで使用するTEOST 33試験は、D.W.FlorkowskiおよびT.W.Selbyによる「The Development of a Thermo-Oxidation Engine Oil Simulation Test(TEOST)」、SAE Paper 932837(1993年)およびStipanovicらによる「Base Oil and Additive Effects in the Thermo-Oxidation Engine Oil Simulation Test (TEOST)」、SAE Paper 962038 (1996年)に記載されている。
【0167】
装置は、酸化反応器と、外側管内で軸方向に整列した中空のデポジッターロッドで構成された堆積ゾーンとで構成された。反応器とデポジッターロッドの温度は独立して制御した。評価中の潤滑油組成物を、ナフテン酸鉄触媒として送達された100ppmの鉄と混合した後、反応器に添加した。次に、混合物を加熱して、100℃に維持した。この試料を、空気、亜酸化窒素、および水のガス流に曝した。TEOST 33試験全体を通して、油は、デポジッターロッドと外側ケーシングとの間の環状部を通して圧送され、ロッドはプログラムされた温度プロファイルでサイクル的に制御した。室温から200℃までの初期温度ランプを除き、温度サイクルは12回繰り返された。合計試験期間は、114分間であった。
【0168】
酸化サイクルの完了時に、油を収集してろ過した。機器を溶剤で洗浄し、その溶剤もろ過した。油の収集に使用したフィルターを乾燥させ、秤量し、フィルターの堆積物を測定した。デポジッターロッドを乾燥させ、秤量して堆積物の蓄積を測定した。堆積物の合計は、ロッドとフィルターの堆積物の合計であり、ミリグラムで記録した。試験の再現性は最初に、1.6mgの標準偏差+/-2.3mgとして得た。
これらの試験結果を以下の表2に示す。
【表2】
【0169】
オキシデーター(Oxidator)Bx試験
25gの試料を特別なガラスオキシデーターセルに秤量して入れた。触媒を添加した後、ガラススターラーを挿入した。次に、セルを密閉し、340°Fに維持しかつ酸素供給源に接続した油浴に入れた。スターラーで油試料を攪拌しながら、1リットルの酸素をセルに供給した。1リットルの酸素が試料によって消費されるまで試験を実行し、試料実行の合計時間(時間単位)を記録した。1リットルまでの時間が長い程、酸化性能がより良好であることを意味する。結果を以下の表3に示す。
【表3】
【0170】
Plint TE 77高周波摩擦機
実施例および比較例の境界摩擦係数の測定値を、Plint TE-77高周波摩擦機(Phoenix Tribologyから市販されている)を使用して得た。5mLの試験油の試料を各試験用装置に入れた。TE-77を100℃で実行し、56Nの荷重を試験片にかけた。往復速度を10Hz~1Hzでスイープし、摩擦係数データを試験の間、収集した。結果を表4に示す。
【表4】
【0171】
1~2Hzの往復速度でこれらの油について収集した摩擦係数データは、境界摩擦レジームにある。
【0172】
低粘度エンジン油の設計では、境界摩擦レジームは重要な考慮事項である。2つの表面を分離する流体膜が表面の凹凸の高さより薄くなると、境界摩擦が発生する。結果として生じる表面同士の接触は、エンジンに望ましくない高い摩擦と劣悪な燃費をもたらす。エンジンの境界摩擦は、高負荷、低エンジン速度、および低粘度油で発生し得る。基油ではなく添加剤が境界条件下での摩擦係数に影響するため、TE-77の境界条件下で摩擦係数がより低い添加剤によって、エンジンにおいて低粘度油で優れた燃費が得られる。
【0173】
実施例3からの境界摩擦レジームの結果に基づいて、異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導されるアルキルヒドロキシベンゾエートを含有する配合物は、異性化ノルマルアルファオレフィンから誘導されていない配合物よりも優れていることが明らかである。
【0174】
MTM試験
上記の組成物について、ミニトラクションマシン(MTM)ベンチ試験で摩擦性能を試験した。MTMはPCS Instrumentsによって製造され、回転ディスク(52100スチール)に対してボール(0.75インチ8620スチールボール)の荷重をかけて動作させる。条件は、約10~30ニュートンの荷重、約10~2000mm/sの速度および約125~150℃の温度を使用する。このベンチ試験では、転がり/滑り接触下での配合物の境界摩擦性能を、低速トラクション係数によって測定する。低速トラクション係数は、15~20mm/sの第二ストライベック(Stribeck)の平均トラクション係数である。低速トラクション係数が低い程、油の境界摩擦性能が良好であることを示す。結果を以下の表5に示す。
【表5】
【0175】
考察
本発明の実施例Aおよび実施例Aを含む配合物は、種々の利点をもたらす。Mg金属と異性化ノルマルアルファオレフィンのC20-24との組み合わせは、BN保持性、酸化、および摩擦における利点をもたらす。この属性の組み合わせは、より高い温度で作動するように設計されたより効率的なエンジンの燃費を改善するのに非常に効果的である。